JPH0316070Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は複合磁性体で構成された特殊な感磁要
素の機能を利用する新規なアナログ−デジタル変
換器に関する。

本考案の目的は交流線路におけるアナログ的な
電流変化を、コード化した信号出力で与えること
のできるアナログ−デジタル変換器を提供するこ
とにある。

従来、強磁性体を利用しパルス信号を発生させ
る手段として、例えば米国特許第3820090号に示
された“Self−Nucleating Magnetic Wire”
（自己−核形成磁気線）と称するもの、あるいは
公開特許公報昭和47年第028850号のパルス発生装
置等が知られている。

これに適用される強磁性線は、その外周部に比
較的保磁力の高い外殻を有し比較的保磁力の低い
線心部を包被する構成になつている。そしてこれ
に外部磁界を作用させて全体を一方向に磁化し、
その外部磁界を消勢する過程で線心部の磁化方向
のみが外殻の磁力線の帰磁路を形成する方向に反
転せしめられる。この反転時の磁束変化にもとず
きパルスを誘起させようとするものであるが、概
して出力が小さく、またパルスの発生時点を正確
に制御し難いという欠点があつた。

しかるに本考案に用いる感磁要素は、次に述べ
るように外部磁界を所定の順序で作用させた時、
極めて大きい安定したパルスを誘発するという特
徴をもつ。

そこでまず、本考案を理解するため、感磁要素
の特殊な性状について説明する。

例えば、保磁力の比較的大きい線心部と、保磁
力の小さい外周部とを有する複合磁性線から成
り、その線軸方向に単軸異方性を備えた感磁要素
は、次のような性状をもつ。

すなわち、あらかじめ感磁要素の保磁力の比較
的大きい線心部と保磁力の小さい外周部とを共に
線軸に対し正方向（例えば右方向）に磁化して、
一つの安定状態を形成する。

この状態において、保磁力の小さい前記外周部
のみを負方向（左方向）に反転させる程度の負方
向磁界を作用させた後、これに正方向（右方向）
磁界を作用させると前記保磁力の小さい外周部は
逆転されるが、これは正方向に磁気配向させてあ
る保磁力の大きい線心部と同方向への転位である
ため急速な逆転現象を生じる。この時の磁束変化
に基づき前記感磁要素の近くに配置された出力コ
イルに急峻なパルス信号を誘起する。

本考案のアナログ−デジタル変換器は、このよ
うな感磁要素を用い、電流線路に結合した変流比
の異なる複数の変流器と、その各２次電流を通電
する複数の励磁コイルおよびパルス検出用の出力
コイルをそれぞれ前記感磁要素に捲回して構成し
たことを特徴とするものである。

以下に添付図面にもとずき本考案の動作原理と
実施例について説明する。

第１図において、まず感磁要素１の全体を正方
向（例えば線軸に対し右方向）に磁化しておく。
その方法は感磁要素１の外側から全体を包被する
ように巻回したコイル２に、直流またはダイオー
ド３を通した電流I₁を流して発生させた正方向
（右方向）磁界H₁を作用させて磁化する。この
H₁の消勢後、感磁要素の外周部の磁化方向のみ
を反転させるため、コイル４に電流−I₂を通電し
て負方向（左方向）磁界H₂を作用させる。

この状態でさらに−I₂と同等もしくはそれ以上
の大きさをもつ正方向の電流＋I₂を通電すること
により、再びH₁と同方向の磁界H₃を作用させ
る。この時点で生じる感磁要素１の外周部の磁化
方向の逆転は極めて急速であるから、従つてこの
転位に伴う磁束変化は極めて大きい。

故にこの磁束変化と鎖交するように配したコイ
ル５には極て急峻かつ大きいパルス起電力Vsを
誘発するという特異性がある。

以後はH₃がH₁の作用をも兼ねることになるの
で、H₂の次にH₃が作用した時点のたび毎に特異
なパルス起電力Vsを誘発させることができる。

この場合、従来の強磁性体においては、鎖交磁
束の変化割合が極端に小さいような場合には誘起
起電力が小さくなり、例えば超低周波の鎖交磁束
に対しては遂に起電力を発生しなくなるものとさ
れてきた。

しかるに本考案に適用した感磁要素は、上述の
ように正負の励磁手順に従つて、ある大きさの磁
界が鎖交しさえすれば、その変化割合には殆ど無
関係に、一定以上の波高値のパルス起電力が確実
に発生するという特徴がある。

第２図は、本考案のアナログ−デジタル変換器
（Ａ／Ｄ変換器）の実施例である。

すなわち、図に例示したように同一特性を有す
る幾組かの感磁要素１と、それらに捲回した出力
コイル６，７，８，……ｎおよび励磁コイル１７
を配列する。そしてアナログ回路Ｐの電流Ｉを変
流比の異なる複数の変流器の２次コイル１０，１
１，１２，１３から、それぞれ励磁コイル１７に
通電するように構成する。

電流Ｉが小さいときは、変流器の巻数の最も多
い２次コイル１０の電流による磁界が、まず感磁
要素１を励磁して出力コイル６にパルス起電力を
誘発する。そして電流Ｉの増加に伴つて順次７，
８，……にパルス起電力を誘発する。

故にアナログ電流Ｉの増大に伴つて順次デイジ
タル的にパルス出力が与えられる。１４は補償抵
抗その他の電流調整器である。

なおこれらのデジタル出力は符号化回路１５に
入力させることにより論理的にコード化した出力
１６として与えることができる。

依つてこのような手段を適用することによりア
ナログ量のデジタル積算計として動作させること
ができる。

いずれにしても本考案のアナログ−デジタル変
換器は、その中枢をなす感磁要素を小さく作るこ
とができる。例えば強磁性線の場合は直径として
0.2〜1.0mm、長さは出力コイルが応動する適当な
長さであればよいから、要素全体を小型かつ軽量
に製作することができる。さらに薄膜化した複合
磁性層の感磁要素を適用すれば一層の小型化が可
能であるうえに、動作の正確性、迅速性および経
済的な効用をはかることが考えられる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に用いる感磁要素の動作原理解
説用線図、第２図は本考案の実施例を示す配線図
である。 符号１：感磁要素、２，４：励磁コイル、３：
ダイオード、５，６，７，８：出力コイル、１
０，１１，１２，１３：２次コイル、１４：電流
調整器、１５：符号化回路、１６：出力、７：励
磁コイル。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 線軸方向に単軸磁気異方性を備え、その線心部
   付近に保磁力の大きい部分を有し、これと隣接す
   る外周部に保磁力の小さい部分を有する複合強磁
   性体の感磁要素を用い、電流線路に結合した変流
   比の異なる複数の変流器と、その各２次電流を通
   電する複数の励磁コイルおよびパルス検出用の出
   力コイルをそれぞれ前記感磁要素に捲回して構成
   したアナログ−デジタル変換器。