JPH0311875Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は摺動変圧器の改良に関する。

まず、第１図及び第２図を参照しながら、従来
の摺動変圧器の一例について説明する。

第１図において、例えば方向性けい素鋼の薄板
をスパイラル状に巻いて形成したリングコア１
に、絶縁銅線を１層巻いて筒状のトロイダルコイ
ル２が形成される。このコイル２の上面２ａの絶
縁被膜を一部除去して導体露出部分を設け、その
上を回転摺動子３の接点３ａが摺動する構造にな
つている。

第２図の等価回路に示すように、コイル２の両
端に設けた１対の入力端子４ａ，４ｂ間に商用電
源電圧Vinを供給し、摺動子３とコイル２の一端
とにそれぞれ接続された出力端子５ａ，５ｂから
任意の電圧Voutを取出すことができる。

上述のような、従来の回転摺動変圧器は、長い
摺動行程を有するものの、巻線機によるトロイダ
ルコイル２の巻線時、所要量の銅線が装填された
シヤトル（shuttle、杼）をこのリングコア１の
透孔１ｗ中を通過させる必要から、このコア１の
透孔１ｗは或程度の大きさが要求されるため、摺
動変圧器の電力容量VAが小さくてよい場合で
も、その小型化は困難であつた。また、特殊な巻
線機を用いなければならず、巻線工数も多いの
で、コスト高になるという欠点もあつた。

これに対して、通常のソレノイド型コイルと、
通常の組合せコアとを用いて、小型化、低コスト
化を図る場合、コアの寸法によつてソレノイドコ
イルの巻幅、即ち摺動子の行程が制限される。ま
た、一般に電源変成器では、電力容量VAが小さ
くなつてコアの断面積が小さくなる程コイルの鎖
交磁束が減少するので、単位電圧当りのコイルの
巻数を増大しなければならず、従つてコイルの総
巻数は増大する。このため、所要の電圧変動率を
確保するため、所要直径の銅線を用いれば、上述
のコア寸法によるコイル巻幅の制限から、ソレノ
イドコイルは多層巻の構造を採らなければならな
くなる。この場合、電圧調節用の摺動子はコイル
の最外層だけと接触するので、摺動子の行程に対
応する電圧調節範囲は入力電圧をコイルの層数で
除いた値程度に狭くなる。

そこで、細線を用いてコイルの１層当りの巻数
を大きくして、電圧調節範囲を拡大すれば、巻線
の抵抗の増大による電圧変動率の劣化及び銅損に
よる発熱の増大という問題が生じる。

かゝる点に鑑み、本考案の目的は、小型かつ廉
価で、広い電圧調節範囲を有し、電圧変動率の小
さな摺動変圧器を提供することにある。

以下、第３図及び第４図を参照しながら、本考
案による摺動変圧器の一実施例について詳細に説
明する。

第３図に本考案の一実施例の構成を示す。第３
図において、１１は方向性けい素鋼の薄板をＥ字
形及びＩ字形に打抜いて積層した組合わせコアで
あつて、コア１１の中央脚部１１Ａに筒状コイル
１２が挿通されて外鉄型の構造となつている。第
３図では、このコイル１２は、その一部を切除し
た形で図示され、絶縁被覆導線の太線を用いた複
数（図示では２個）の内層コイル１３Ａ，１３Ｂ
と、細線が多数回巻かれた外層コイル１４とから
構成される。そして、外層コイル１４の外周面上
の適宜の場所に、その軸に平行に導体露出部分を
設け、この上を摺動子１５が摺動するようになつ
ている。また、外層コイル１４には、摺動子１５
が接触しない側に内層コイルの層数から１を減じ
た数の中間タツプ（図示を省略）が設けてある。

本実施例の変圧器の等価回路を第４図に示す。
各内層コイル１３Ａ，１３Ｂは、コイル１３Ａの
巻終りAfとコイル１３Ｂの巻始めBsとの接続に
よつて、直列に接続される。第１の内層コイル１
３Ａの巻始めAsと外層コイル１４の巻始め１４
ｓとが一方の入力端子４ａに接続され、第２の内
層コイル１３Ｂの巻終りBfと外層コイル１４の
巻終り１４ｆとが他方の入力端子４ｂに接続さる
と共に、両内層コイル１３Ａ及び１３Ｂの接続中
点が外層コイル１４の中間タツプ１４ｔに接続さ
れる。各内層コイル１３Ａ，１３Ｂの巻回数は外
層コイル１４の中間タツプ１４ｔによる分割区間
の巻回数とそれぞれ等しく設定されているので、
両内層コイル１３Ａ，１３Ｂ及び外層コイル１４
は電気的に並列となり、一体化され、摺動子１５
及びコイル１３Ｂ，１４の巻終りBf，１４ｆに
それぞれ接続された出力端子５ａ及び５ｂから任
意の出力電圧Voutが取り出される。

上述した本実施例では、摺動子１５と接触する
外層コイル１４に細線を使用しているので、コア
寸法に制限された巻幅内に多数回巻回することが
できて、広い範囲の出力電圧の調節が可能とな
る。また、中間タツプによつて分割された外層コ
イル１４の各区間に、太線を使用した内層コイル
１３Ａ，１３Ｂがそれぞれ並列に接続されている
ので、コイル全体１２としての抵抗が小さくなつ
て、電圧変動率及び銅損による発熱は減小する。

次に、第５図及び第６図を参照にしながら、本
考案による摺動変圧器の他の実施例について説明
する。

第５図に本考案の他の実施例の要部の構成を示
す。第５図において、２１及び２２はそれぞれ１
次コイル及び２次コイルであつて、２次コイル２
２は太線を使用した複数（図示では３個）の内層
コイル２３Ａ，２３Ｂ及び２３Ｃ並びに細線を使
用した外層コイル２４から構成される。外層コイ
ル２４には、前述の実施例と同じく、中間タツプ
が設けられると共に、導体露出部分が設けられ、
その上を摺動子１５が摺動するようになつてい
る。

本実施例の変圧器の等価回路を第６図に示す。
第６図において、１次コイル２１の両端が入力端
子４ａ，４ｂに接続されて、１次コイル２１に商
用電源電圧Vinが供給される。２次コイル２２の
複数の内層コイル２３Ａ，２３Ｂ及び２３Ｃは、
前述の一実施例の場合と同様に、巻線の向きを揃
えて直列に接続される。直列接続された内層コイ
ル２３Ａ〜２３Ｃの両端がそれぞれ外層コイル２
４の両端に接続されると共に、各内層コイルの接
続中点が外層コイル２４の中間タツプにそれぞれ
接続される。各内層コイル２３Ａ〜２３Ｃの巻回
数は前述の一実施例の場合と同様に設定されてい
るので、内層コイル２３Ａ〜２３Ｃと外層コイル
２４とは電気的に並列になり、２次コイル２２が
形成され、摺動子１５及び２次コイル２２の一端
にそれぞれ接続された出力端子５ａ及び５ｂから
任意の出力電圧Voutが取出される。

本実施例では、複巻変成器構造としたので、出
力側回路が商用電源から絶縁されて高い安全性が
得られると共に、出力側回路を任意に接地するこ
とができて、外来雑音を抑圧することができる。

また、出力電圧を広範囲に調節し得ること、並
びに電圧変動率及び銅損による発熱を減少し得る
ことは前述の実施例と同様である。

以上、外鉄型構造の場合について説明したが、
本考案はUI形コアやＣ型コア等を用いた内鉄型
構造の場合も適用し得ることは言うまでもない。
更に内鉄型構造において、複巻変成器の１次コイ
ルと２次コイルとをそれぞれコアの両脚に分離す
れば、２次コイルの外径が小さくなり、全体をよ
り薄型にすることができる。

以上詳述のように、本考案によれば、小型かつ
廉価で、広い電圧調節範囲を有し、電圧変動率の
小さい摺動変圧器が得られる。

尚、筒状コイルの形状は円筒形、楕円筒形、四
角筒形等の任意の形状が可能である。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は従来の摺動変圧器の構成例
を示す分解斜視図及び結線図、第３図及び第４図
は本考案による摺動変圧器の一実施例を示す斜視
図及び結線図、第５図及び第６図は本考案の他の
実施例を示す要部断面図及び結線図である。 １，１１はコア、２，１２はコイル、３，１５
は摺動子、２１は１次コイル、２２は２次コイル
である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. コアと、該コア上に配設された筒状コイルと、
   該筒状コイル上を摺動する摺動子とを具備し、該
   摺動子と上記筒状コイルの一端との間から出力交
   流電圧を取出すようにした摺動変圧器において、
   上記筒状コイルを導線の細線を巻回して中間タツ
   プを設けた外層コイルと、上記中間タツプによつ
   て分割された上記外層コイルと同一巻回数の太線
   を巻回した複数の内層コイルとにより構成し、上
   記複数の内層コイルを上記中間タツプによつて分
   割された上記外層コイルにそれぞれ並列に接続す
   ると共に、上記外層コイルの外周面上を上記摺動
   子が摺動するようにして成る摺動変圧器。