JPH0311452Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、アウタケーシングにインナケーブル
を摺動自由に挿通して押し引き両方向若しくはい
ずれか一方向の操作力を伝達するようにしたコン
トロールケーブルに関し、特に、アウタケーシン
グの補強金属線の外周に被覆されるジヤケツトの
材質に改良を加えたコントロールケーブルに関す
る。

従来の技術及び考案が解決しようとする問題点 例えば、自動車のトランスミツシヨンケーブル
に用いられるコントロールケーブルは、第１図及
び第２図に示すように、合成樹脂製のライナ２の
外周に複数本の鋼線３を螺旋状に密着巻きして、
その外周を合成樹脂製のジヤケツト４で被覆した
アウタケーシング１内に、撚り線からなるインナ
ケーブル６を摺動自由に挿通した構造になり、ジ
ヤケツト４を剥離して鋼線３が剥き出しとなつた
アウタケーシング１の端末に、金属製の内筒８の
外周に防振ゴムを介して同じく金属製の外筒９を
嵌着した固定具７を嵌装して、内筒８を鋼線３及
びジヤケツト４の外側の部分の２箇所でかしめ付
けて固着し、この固定具７をミツシヨンケースに
取り付けるとともに、アウタケーシング１の端末
から突出したインナケーブル６の端末を、固定具
７の先端に首振り自由に支持したスリーブ１０内
に摺動自由に嵌装したロツド１１に固定して、ロ
ツド１１の先端に設けた取付孔１２内に変速機の
操作軸に突設した連結ピンを嵌合し、インナケー
ブル６の他端に連結した操作レバーでインナケー
ブル６を押し引き運動させることによつて、変速
機の操作軸を駆動するようになつている。

ところで、このようなコントロールケーブルの
アウタケーシング１のジヤケツト４の素材には、
一般に、合成樹脂の中でも耐熱性に優れるナイロ
ン−６等のポリアミドが用いられるが、このポリ
アミドは、柔軟性及び密着性に劣る欠点があり、
例えば、コントロールケーブルを回曲して配索し
た場合に、鋼線３がジヤケツト４から遊離してジ
ヤケツト４の端末から突出し、鋼線３の端末にか
しめ付けにより固着された固定具７が押されて位
置ずれを起こしたり、また、これに伴なつて固定
具７とジヤケツト４の部分が緩んで外れる不具合
があつた。

このため従来は、ジヤケツト４の素材に、ポリ
アミドにエラストマーを重合した合成樹脂を用
い、これによりジヤケツト４の柔軟性及び密着性
を高めて、上記の不具合を回避する方策が採ら
れ、かなりの実効を得ていたが、近時、機器を小
嵩にまとめる上から、コントロールケーブルを大
きな曲率で配索する傾向にあり、柔軟性及び密着
性により優れたジヤケツトが希求されるようにな
つた。

なお、トランスミツシヨンケーブルに用いるコ
ントロールケーブルには、上記の第１図及び第２
図に示した構造のものの他に、第３図に示すよう
に、アウタケーシング１ａを、合成樹脂製のライ
ナ２ａの外周に複数本の鋼線３ａを螺旋状に疎巻
きし、その外周を合成樹脂製のジヤケツト４ａで
被覆した構造としたもの、あるいは、アウタケー
シングが、ライナの外周に平鋼線を螺旋状に密着
巻きしてその外周をジヤケツトで被覆した構造と
なつているものもあるが、ジヤケツトに柔軟性及
び密着性が希求されることについては、このよう
な構造のものについても同様である。

本考案は、上記した事情を背景として成された
ものであつて、ジヤケツトの材質に改良を加え
て、ジヤケツトの柔軟性及び密着性をより高める
ことができるようにしたコントロールケーブルを
提供することを目的とする。

実施例 次に、本考案の好適な実施例を示す。

この実施例は、アウタケーシング１のジヤケツ
ト４の材質が、ポリアミドにエラストマーである
変性エチレン共重合体をグラフト重合した熱可塑
性合成樹脂に、商品名「サーリン」、「ハイミラ
ン」で販売されているアイオノマー樹脂を４〜48
重量％混入した合成樹脂からなり、好適な例とし
ては、70重量％のナイロン−６に、エチレンとプ
ロピレンの共重合体に無水マレイン酸をグラフト
重合した15重量％の変性エチレン共重合体をグラ
フト重合し、さらにこに、15重量％のアイオノマ
ー樹脂を混入したものが挙げられる。

このように、ジヤケツト４をアイオノマー樹脂
を混入した素材で形成すると、ジヤケツト４と鋼
線３の密着性が高くなるとともに柔軟性が高くな
り、従来のポリアミドに変性エチレン共重合体を
グラフト重合した合成樹脂のみでジヤケツトを形
成した場合と比較して、アウタケーシング１を同
じ曲率で回曲した場合に、鋼線３のジヤケツト４
の端末からの突出量が数分の１に低減することが
確認された。

また、上記のように、ジヤケツト４を、ポリア
ミドに変性エチレン共重合体をグラフト重合した
熱可塑性合成樹脂に、アイオノマー樹脂を混入し
た合成樹脂で形成すると、さらに以下に述べるよ
うな効果が得られるのが確認された。

その第１は、路面に散布された凍結防止剤が飛
び散つて付着した場合のジヤケツト４のひび割れ
防止効果であり、この凍結防止剤には通常塩化カ
ルシウムが用いられ、濃度が50重量％で、温度が
80℃の塩化カルシウム溶液にジヤケツトを浸漬さ
せることにより耐塩試験を行なつたところ、従来
のナイロン−６単味で形成したジヤケツトは２〜
３時間で亀裂が発生したのに対して、本実施例の
構成になるジヤケツト４では、96時間経過しても
亀裂の発生は見られなかつた。

また、プツシユプルタイプのコントロールケー
ブルにおいて、コントロールケーブルが回曲して
配索されていると、インナケーブル６を引き運動
したときにアウタケーシング１には軸線方向の圧
縮過重が作用し、逆に、押し運動したときには引
張過重が作用するのであり、アウタケーシング１
が第１図及び第２図に示した構造であると、圧縮
過重が作用した場合には各鋼線３が互いにぶつか
り合うことから圧縮変形しにくく、引張過重が作
用した場合には、各鋼線３の撚りが戻るように作
用して伸び変形し易いのであつて、一般には、イ
ンナケーブル６を押し運動したときの操作効率
が、引き運動したときよりも７〜８％程度劣るの
であるが、本実施例のように、ジヤケツト４の密
着性を高めたことによつて、アウタケーシング１
が引張過重を受けたときの鋼線３の撚りの戻りが
抑制され、従つて、アウタケーシング１の伸び変
形を小さく抑えことができて、インナケーブル６
を押し運動した場合と引き運動した場合の操作効
率の差を３％以内に抑えることが可能となる。

なお、本考案は、第３図に示すような構造のコ
ントロールケーブル、あるいは、アウタケーシン
グがライナの外周に平鋼線を螺旋巻きしてその外
周をジヤケツトで被覆した構造のコントロールケ
ーブルにも適用することが可能であり、また、押
し引き両方向の操作力を伝達するプツシユプルタ
イプのコントロールケーブルに限らず、押し引き
いずれか一方向の操作力を伝達するタイプのコン
トロールケーブルにも同様に適用し得る。

考案の構成及び作用効果 上記実施例によつて具体的に説明したように、
本考案のコントロールケーブルは、補強金属線の
外周を合成樹脂製のジヤケツトで被覆したアウタ
ケーシングにインナケーブルを摺動自由に挿通し
て押し引き両方向若しくはいずれか一方向の操作
力を伝達するようにしたコントロールケーブルに
おいて、前記ジヤケツトを、ポリアミドに変性エ
チレン共重合体をグラフト重合した熱可塑性合成
樹脂に、アイオノマー樹脂を混入した合成樹脂で
形成したことを要旨とするものであつて、ジヤケ
ツトの柔軟性及び密着性がさらに向上することに
よつて、コントロールケーブルを部分的に小さな
曲率半径で配索し、または、全長にわたる曲げ角
度の総和が大きくなるように配索しても、金属補
強線のアウタケーシングの端末からの突き出しを
小さく抑えることができ、また、凍結防止剤が付
着した場合のジヤケツトの割れを長期にわたつて
防止することができる効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のコントロールケーブルの一実
施例の端末構造を示す断面図、第２図はそのコン
トロールケーブルの断面図であり、第３図はコン
トロールケーブルの他の実施例の断面図であ。 １，１ａ：アウタケーシング、３，３ａ：鋼
線、４，４ａ：ジヤケツト、６：インナケーブ
ル。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 補強金属線の外周を合成樹脂製のジヤケツト
   で被覆したアウタケーシングにインナケーブル
   を摺動自由に挿通して押し引き両方向若しくは
   いずれか一方向の操作力を伝達するようにした
   コントロールケーブルにおいて、前記ジヤケツ
   トを、ポリアミドに変性エチレン共重合体をグ
   ラフト重合した熱可塑性合成樹脂に、アイオノ
   マー樹脂を混入した合成樹脂で形成したことを
   特徴とするコントロールケーブル。 ２ 前記変性エチレン共重合体が、エチレンとプ
   ロピレンの共重合体に無水マレイン酸をグラフ
   ト重合したものであることを特徴とする実用新
   案登録請求の範囲第１項記載のコントロールケ
   ーブル。