JPH027315Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 技術分野 本考案は、ドラムブレーキ用のホイールシリン
ダ、特に、ドラムブレーキの組立時あるいはブレ
ーキライニング摩耗時において、ドラムとブレー
キライニングとの間の隙間を適当な寸法に調節す
ることが可能なホイールシリンダに関するもので
ある。

従来技術 ドラムブレーキの組立に際して、あるいはブレ
ーキライニングの摩耗に際して、ドラムとブレー
キライニングとの間の隙間、すなわちシユークリ
アランスを適当な寸法に調節することが望まれ
る。

このため、バツキングプレートに固設されたシ
リンダ本体と、そのシリンダ本体の一端に開口す
る嵌合穴内に摺動可能に嵌合されて前記バツキン
グプレートに取り付けられるブレーキシユーの一
端を外周側へ押し出すピストンと、前記シリンダ
本体の嵌合穴開口縁部とそのピストンとの間に設
けられてそれらの摺動部を覆う環状かつ弾性材料
製のダストブーツと、前記ピストンに設けられて
ブレーキシユーの一端と係合する係合部材と前記
ダストブーツの外側表面に隣接する位置に配設さ
れてその係合部材の該ピストンに対する突き出し
量を調節するアジヤスタホイールとを有する係合
位置調節装置とを備え、その係合位置調節装置の
アジヤスタホイールを前記バツキングプレートに
設けられた貫通口を通して差し込まれた工具にて
回転させることにより、前記係合部材の突き出し
量を調節する形式のドラムブレーキ用ホイールシ
リンダが考えられている。このような形式のホイ
ールシリンダにおいては、バツキングプレートに
設けられた小さな貫通口を通してねじ回し工具の
ような棒状工具を差し込み、ホイールシリンダ内
に設けられたアジヤスタホイールをその工具によ
つて回転させることにより、シユークリアランス
が調節される。

考案が解決すべき問題点 しかし、このようにシユークリアランスを調節
する場合には、バツキングプレート上に固設され
たホイールシリンダをドラムブレーキ外部から目
視できないため、工具の先端がアジヤスタホイー
ルと係合しかつそのアジヤスタホイールを回転さ
せるように工具を手先の感じを頼りにして操作し
なければならない。このため、ホイールシリンダ
に設けられたダストブーツに工具の先端が触れて
ダストブーツが破損する場合があつた。

これに対し、たとえば実公昭60−18674号公報
に記載されているように、ダストブーツの外周側
取付部がシリンダ本体から抜けるのを防止するた
めのブーツプロテクターに、調節工具がダストブ
ーツに干渉するのを防止するための舌片を設ける
ことが考えられるが、この場合において、ダスト
ブーツの外周側取付部を自身の弾性復帰力により
シリンダ本体の外周面に形成された環状溝内に嵌
め着けるだけでそのダストブーツの外周側取付部
のシリンダ本体からの抜けを好適に防止し得る場
合には、上記舌片を有するブーツプロテクターを
設けることによつてホイールシリンダの部品点
数、組立作業工数、および重量が増大するという
問題がある。また、上記舌片はリング状のブーツ
プロテクターの周方向一部に設けられているの
で、そのブーツプロテクターをシリンダ本体に装
着する際には舌片がバツキングプレートの調整用
孔に対応する位置に位置するように軸心まわりに
位置決めせねばならず、ホイールシリンダの組立
作業が煩雑となるとともに、車両走行中の振動等
によりブーツプロテクターが回転した場合には舌
片によるダストブーツの損傷防止機能が損なわれ
る虞がある。

問題点を解決するための手段 本考案は以上の事情を背景として為されたもの
であつて、その目的とするところは、アジヤスタ
ホイール回転用の工具によるダストブーツの破損
を防止するに際して部品点数、組立作業工数、重
量の増大等を抑制し得るドラムブレーキ用ホイー
ルシリンダを提供することにある。

かかる目的を達成するために、本考案は、上記
のような形式のドラムブレーキ用ホイールシリン
ダにおいて、ダストブーツの外側表面に、そのダ
ストブーツの軸心まわりにおいて円環状を成す凸
条を所定の間隔で複数一体成形により設けたこと
を特徴とする。

作用および考案の効果 このようにすれば、前記フランジ状のアジヤス
タホイールを回転させるために前記バツキングプ
レートに設けられた貫通口を通して差し込まれた
工具がダストブーツの外側表面に円環状の凸条が
複数形成されているので、工具によるダストブー
ツの破損を防止し得る。しかも、それら複数の円
環状の凸条はダストブーツに一体成形にて設けら
れているため、ホイールシリンダの部品点数およ
び組立作業工数を増大させることなく且つホイー
ルシリンダの重量をそれ程増大させることなく上
記効果が得られる。また、複数の円環状の凸条は
ダストブーツの軸心まわりにおいて所定間隔毎に
形成されているので、ダストブーツをシリンダ本
体とピストンとの間に装着する際にそのダストブ
ーツを軸心まわりにおいて位置決めする必要がな
いとともに、ダストブーツのシリンダ本体に対す
る軸心まわりの相対位置に拘わらず工具によるダ
ストブーツの破損を防止し得る一方、ダストブー
ツのたわみやすさを阻害することがないのであ
る。

実施例 以下、本考案の一実施例を図面に基づいて詳細
に説明する。

第１図は、本考案が適用されたドラムブレーキ
用ホイールシリンダを備えた２リーデイング型ド
ラムブレーキを示したものである。また、第２図
は第１図のダストブーツ周辺を拡大して示した図
である。バツキングプレート１０上にはホイール
シリンダ１２が固設されている。ホイールシリン
ダ１２は、バツキングプレート１０上に固定され
たシリンダ本体１６と、シリンダ本体１６の一端
に開口する嵌合穴１８内に摺動可能に嵌合されて
いるピストン２０と、前記嵌合穴１８の開口縁部
とピストン２０との間に設けられたゴム等の弾性
材料製のダストブーツ２４と、外周に多数の係合
歯が形成されたフランジ状のアジヤスタホイール
２６を有してピストン２０に軸まわり相対回転可
能に嵌合されている調節部材３６と、その調節部
材３６と螺合する係合部材２２とを備えている。
係合部材２２の頭部にはその軸心と直交する方向
の溝３８が形成されており、その溝３８内にブレ
ーキシユー１４の一端が嵌め入れられることによ
り係合部材２２の軸まわりの回転が阻止されるよ
うになつている。ここで、調節部材３６が軸まわ
りに回転させられるに伴つて上記係合部材２２が
軸心方向へ移動するので、本実施例では係合部材
２２とアジヤスタホイール２６は係合位置調節装
置を構成している。なお、シリンダ本体１６のピ
ストン２０が嵌合されている側と反対側の端部に
は、ブレーキシユー１４と対をなすブレーキーシ
ユー２８が当接するアンカ部３０が設けられてい
る。

そして、ダストブーツ２４は、従来のダストブ
ーツと同様の形状であるダストブーツ本体４２
と、そのダストブーツ本体４２の外面に所定の間
隔で一体成形により形成されている複数の円環状
の凸条３４とから構成されている。この円環状の
凸条３４はピストン２０の軸心と同心であつて、
その高さ、幅、および相互間隔は、ダストブーツ
２４のピストン２０の往復運動に伴う変形が阻害
されないように決定されている。

以下、本実施例の作用について説明する。

バツキングプレート１０に設けられている貫通
口３２から棒状の工具、たとえばねじ回し用のド
ライバーを差し入れ、その先端をアジヤスタホイ
ール２６外周の係合歯と係合させてそれを円周方
向に回転させると、ピストン２０はシール部材４
０によつて回転摩擦力が大きく、また係合部材２
２はブレーキシユー１４と係合させられているた
め、調節部材３６のみが回転する。

このため、調節部材３６に螺合されている係合
部材２２が軸まわりに回転することなく軸方向に
移動する。このようにして、係合部材２２を、第
１図の場合には左方に突き出して、係合部材２２
のピストン２０に対する突き出し量を増加させる
と、ブレーキシユー１４と図示しないブレーキド
ラムとの隙間、すなわちシユークリアランスが減
少する。逆に、アジヤスタホイール２６を上記の
方向とは逆方向に回転させると、係合部材２２は
第１図でいう右方に軸方向に移動し、シユークリ
アランスが増加する。このような工具操作によ
り、ドラムブレーキ組立時あるいはライニング摩
耗時に、シユークリアランスを調節する。

以上の操作において、バツキングプレート１０
やこの前面を覆うドラムに阻まれてバツキングプ
レート１０上に固設されているホイールシリンダ
１２を目視することができないので、手先の感じ
を頼りにして工具先端を動かさねばならない。こ
のため、工具先端はアジヤスタホイール２６外周
の係合歯に係合するとは限らず、その係合歯から
外れてダストブーツ２４に当たる場合がある。し
かし、ダストブーツ２４に複数の円環状の凸条３
４が設けられているため、工具の先端がダストブ
ーツ２４に隣接しているアジヤスタホイール２６
を回転させようとしてダストブーツ２４に接触す
ることがあつても、円環状の凸条３４に阻まれて
直接ダストブーツ本体４２に触れることがなく、
ダストブーツ２４を破損することがないのであ
る。

このように、本実施例によれば、ブレーキシユ
ー１４とブレーキドラムとの間のシユークリアラ
ンスを調整する際に、たとえ工具先端がダストブ
ーツ２４に接触してもそのダストブーツ２４の外
側表面に設けられた複数の円環状の凸条３４の存
在によりダストブーツ２４が破損するのを防止す
ることができる。しかも、それら複数の円環状の
凸条３４はダストブーツ２４に一体成形にて形成
されているため、ホイールシリンダ１２の部品点
数および組立作業工数を増大させることなく且つ
ホイールシリンダ１２の重量をそれ程増大させる
ことなく上記効果が得られる。また、複数の円環
状の凸条３４はダストブーツ２４の軸心まわりに
おいて所定間隔毎に形成されているので、ダスト
ブーツ２４をシリンダ本体１６とピストン２０と
の間に装着する際にダストブーツ２４も軸心まわ
りにおいて位置決めする必要がないとともに、ダ
ストブーツ２４のシリンダ本体１６に対する軸心
まわりの相対位置に拘わらず工具によるダストブ
ーツ２４の破損を防止することができる一方、ダ
ストブーツ２４の柔軟性が損なわれないのであ
る。

なお、上記実施例においては、２リーデイング
型ドラムブレーキのホイールシリンダについて説
明したが、本考案は他の型式のドラムブレーキ、
たとえばリーデイング・トレーリング型、デユオ
サーボ型のホイールシリンダ等にも適用し得るも
のである。

また、上記実施例では、調節部材３６がピスト
ン２０に相対回転可能に嵌合され、係合部材２２
が調節部材３６に螺合されていたが、調節部材３
６をピストン２０に螺合し係合部材２２を調節部
材３６に螺合するかあるいは軸まわりに相対回転
可能に嵌合してもよいのである。

その他、本考案は、その精神を逸脱しない範囲
において、当業者の知識に基づいて種々の変更を
加え得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のドラムブレーキ用ホイールシ
リンダを側面から見た一部切欠図である。第２図
は、第１図のダストブーツ周辺を拡大した要部断
面図である。 １０……バツキングプレート、１２……ホイー
ルシリンダ、１４……ブレーキシユー、１６……
シリンダ本体、２０……ピストン、２４……ダス
トブーツ、｛２２……係合部材、２６……アジヤ
スタホイール｝（係合位置調節装置）、３４……凸
条、３６……調節部材、４２……ダストブーツ本
体。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 バツキングプレートに固設されたシリンダ本体
   と、該シリンダ本体の一端に開口する嵌合穴内に
   摺動可能に嵌合され、前記バツキングプレートに
   取り付けられるブレーキシユーの一端を外周側へ
   押し出すピストンと、前記シリンダ本体の嵌合穴
   開口縁部と該ピストンとの間に設けられてそれら
   の摺動部を覆う環状かつ弾性材料製のダストブー
   ツと、前記ピストンに設けられて前記ブレーキシ
   ユーの一端と係合する係合部材と前記ダストブー
   ツの外側表面に隣接する位置に配設されて該係合
   部材の該ピストンに対する突き出し量を調節する
   アジヤスタホイールとを有する係合位置調節装置
   とを備え、前記アジヤスタホイールを前記バツキ
   ングプレートに設けられた貫通口を通して差し込
   まれた工具にて回転させることにより、前記係合
   部材の突き出し量を調節する形式のドラムブレー
   キ用ホイールシリンダにおいて、 前記ダストブーツの外側表面に、該ダストブー
   ツの軸心まわりにおいて円環状を成す凸条を所定
   の間隔で複数一体成形により設けたことを特徴と
   するドラムブレーキ用ホイールシリンダ。