JPH025987Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本考案は、軸筒内に収納した繊維集束体等より
なるインキ吸蔵体の前方部に、インキ通路を有す
るペン先の後端を埋入してなる筆記具であつて、
媒体に対して溶解しない着色剤、即ち顔料を用い
たインキを使用するものに関する。

「従来の技術」 顔料インキを使用する筆記具は染料インキを使
用する筆記具よりも耐光性等に優れた筆跡を付与
することができる。そこで最近、一般的使い捨て
筆記具に見られるインキ吸蔵体方式の筆記具にも
顔料インキを使用したものが市販されるようにな
つている。

「考案が解決しようとする問題点」 インキ吸蔵体方式の筆記具は顔料インキ使用に
本来不向きである。なぜならば、繊維集束体にせ
よ、他の適宜多孔質体にせよ、インキ吸蔵体は毛
細管力を利用してインキを貯蔵するものであるか
ら、インキに慣性による自由な運動を与え難く、
それゆえ、顔料が媒体より分離し固化する傾向に
対し再分散させ難い。

いつたん、ペン先のインキ通路内で上述の如き
顔料の固化が生じると、その回復は極めて困難と
なる。本考案は、このペン先内における顔料固化
の問題を低減することを目的とする。

「問題点を解決するための手段」 インキ吸蔵体の、ペン先の後端に接するか近接
する後方位置に遮蔽体を配置する。この遮蔽体は
ペン先のインキ通路を遮蔽するものではなく、イ
ンキ中の顔料粒子のうち、少くとも径の大きなも
のに対し不通過性を示すものである。

「作用」 遮蔽体によつて、インキ中の顔料粒子のうち、
比較的径の小さなものが選択的にペン先のインキ
通路へ供給される。

「実施例」 添付第１図に第１実施例を示す。参照符号は１
が空気孔１ａを有する軸筒、２がペン先３を保持
するチツプ、４がインキ吸蔵体、５が遮蔽体であ
る。ここで、ペン先３は、顔料固化が最も生じ易
いと思われる長い貫通孔をインキ通路３ａとして
有するもの、例えば押出成形による合成樹脂製ペ
ン先を意識して描いてあるが、繊維集束体のよう
なものでもあり得る。

本例の遮蔽体５は平板状物であり、ペン先３の
後端３ｂとの間で僅かの距離を保つている。尚、
遮蔽体５はインキ吸蔵体４にスリツトを設けて挾
み入れたり、前後２部品よりなるインキ吸蔵体４
に介挿させたりして配置される。

遮蔽体５は、この遮蔽体５を境とする前後のイ
ンキ吸蔵体４を完全に分離するものでなく、か
つ、ペン先３のインキ通路３ａを完全に遮断する
ものでない限り、無孔性のものでもよい。これ
は、通常、ペン先が下向きに使用され、径の大き
な顔料粒子の少くとも一部は、その際、ペン先３
のインキ通路３ａへと横移動するより、インキ吸
蔵体４の先端部に溜るよう縦移動することによ
る。

即ち、本例の遮蔽体５は無孔性のものでもあり
得る訳であり、逆に、後端３ｂの端面が平面状と
された本例のペン先３に対し、遮蔽体５が接する
よう配置される場合には多孔性のものを使用しな
ければならない。従つて、配置には往々にして位
置のずれを生じることを考えると、遮蔽体５とし
ては多孔性のものを使用するのが賢明であろう。
また、多孔性の遮蔽体５としては、メンブランフ
イルターとして市販されているものを使用する
と、孔径等が厳密に制御できる。

次に第２図に第２実施例を示す。前例と同一部
位には同一の参照符号を付したが、本例は遮蔽体
５がペン先３の後端と接する場合の一例である。

予め錐状に形成しておいた遮蔽体５をペン先３
の後端に被せ、これをインキ吸蔵体４に埋入する
とか、織布、不織布等変形可能な遮蔽体５をイン
キ吸蔵体４の先端に位置させておき、ペン先３を
埋入させるとかと、本例は製造容易性の長所、並
びにインキ吸蔵体４の外側へのインキ滲み出しを
防止するための後処理の必要性を全く考えなくて
よい長所を有する。但し、遮蔽体５として多孔性
のものを使用しなければならない、あるいは、図
示のように、ペン先３の後端３ｂにおいてインキ
通路３ａが側方開口するようペン３の後端３ｂ形
状を整えることで遮蔽体５の無孔性を許容するよ
うなさねばならない等の制限を受ける。

「考案の効果」 ペン先３にとつて遮蔽体５はあたかも傘のよう
に役立ち、ペン先３のインキ通路３ａに供給され
る顔料粒子はインキ吸蔵体４におけるより平均粒
径が小さなものとなつている。顔料固化は顔料粒
子が大きい程に生じ易いものであるから、従つ
て、本考案によれば顔料固化の問題は低減でき
る。

具体的な例を示すと次の通り。

セロフアンで側面を被覆したアクリル繊維の集
束体よりなるインキ吸蔵体４と、ポリアセタール
樹脂の押出成形によつて製造した最大毛管径0.08
mmのインキ通路３ａを有するペン先３とを有する
添付第１図の如き筆記具を準備した。インキ吸蔵
体４へのペン先３の後端埋入量は７mm、また、イ
ンキ吸蔵体４の先端から９mmのところにセロフア
ン上から切り込みを入れて配置した遮蔽体５は孔
径0.3μmのメンブランフイルター（東洋濾紙(株)
製）である。下記調合した顔料インキを充填した
この準備筆記具をキヤツプ後、ペン先を下向きに
４ケ月放置した後、筆記したところ、鮮明な筆記
状態が維持された。

〔顔料インキの調合〕

カーボンブラツク 10.0重量部 プロピレングリコール 5.0 〃 エチレングリコール 15.0 〃 セラツク（分散向上剤） 2.0 〃 アセトアミド（湿潤剤） 20.0 〃 ラベリン（第一工業製薬(株)製、アニオン界面活
性剤） 0.1 〃 エマルゲン931 0.1 〃 （花王アトラス(株)製、ノニオン界面活性剤） ペンタクロロフエノールナトリウム （防腐剤） 0.1 〃 水 47.7 〃 上記成分中、水とアセトアミドの溶液にセラツ
クを加えて撹拌し溶解させた後、残り成分も順次
加え、ボールミルにて十分に撹拌並びに摩砕し、
更に、遠心分離により粗大粒子を除去し黒色顔料
インキとした。

一方、メンブランフイルターを使用しない以外
はすべて同様にして準備した筆記具は、顔料イン
キ充填後、前述同様に４ケ月放置後に筆記してみ
たが、固化された顔料の一部が紙面に残つただけ
であつた。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図はそれぞれ本考案の第１、第２
実施例を示す要部縦断面図である。 １……軸筒、２……チツプ、３……ペン先、３
ａ……インキ通路、３ｂ……ペン先の後端、４…
…インキ吸蔵体、５……遮蔽体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 軸筒内に収納したインキ吸蔵体の前方部に、イ
   ンキ通路を有するペン先の後端を埋入してなる筆
   記具であつて、顔料インキを使用するものにおい
   て、インキ中の顔料粒子のうち、少くとも径の大
   きなものに対して不透過性を示す遮蔽体を、前記
   インキ吸蔵体の、前記ペン先の後端に接するか近
   接する後方位置に配置してなることを特徴とする
   筆記具。