JPH0251860B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔発明の背景〕 本発明は、耐火性能の優れた組成物に関する。 耐火性能の優れた物質は、従来から耐火性の要
求される各種分野において広く採用されてきた。
特に、建築用途に使用される場合には耐火被覆材
として次のような性質が要求される。即ち、(1)不
燃性であること、(2)加熱されたとき断熱性があ
り、塗付した組成物の裏面温度が一定基準以下の
温度に保たれること、(3)耐炎性があること、(4)耐
熱水性があること、(5)耐衝撃性があること、な
ど。更に付加的な要素として耐火の被覆厚み又は
被覆重量を小さくすること、対象下地への付着性
が良いこと、ある程度の化粧水を有することなど
が要求されているが、従来からの岩綿系の吹付耐
火被覆材や膨張バーミキユライト系の吹付耐火被
覆材では係る目的に合致しないことは既に本発明
者等が再三再四繰り返し述べてきた所である。 本発明者等は、上記性質の耐火被覆材を始めと
する耐火性能の優れた組成物については相当以前
から研究をしており、既にいくつかの有用な発明
を完成した。それらの多くは、水可溶性アルカリ
金属珪酸塩、その硬化剤、発泡剤及び発泡安定剤
を必須成分とするもので、当該成分系単独或いは
これにシリカダスト、石膏や水化度の大きい物質
を配合したり、特殊な微粉体を添加配合したりし
て一旦ペースト状態にした後に任意の塗付工法に
より被覆層を形成せしめていた。他方、本発明者
等は、上記成分系の内発泡剤を使用しないものに
ついても引続き検討し、いくらかの有益な組成物
を発明することにも成功した。しかしながら、上
記耐火性能の優れた組成物の場合には、たとえ強
固な硬化被覆層を形成することができたとして
も、尚いくらかの問題を残している。即ち、アル
カリ度の高い水可溶性アルカリ金属珪酸塩を使用
する為に生じる作業性の問題、耐候性がさほど良
くない為に外部で使用し難い問題、被覆層がかな
りのアルカリ性である為に化粧性が劣る問題、被
覆層の重量がかなり大きくなる問題、また発泡被
覆層の場合には被覆層の厚みがかなり大きくなる
問題、作業の不手際による発泡均一性のおそれ等
であつた。 〔発明の目的〕 本発明の目的は、特に耐火被覆材として要求さ
れる要件を多数具備する耐火性能の優れた組成物
を提供することである。 本発明の他の目的は、より優れた安全作業性、
化粧性向上、硬化被覆層薄膜化の可能な耐火性能
の優れた組成物を提供することである。 また、本発明の目的は、耐熱性、耐炎性、耐衝
撃性、耐熱水性などの優れた耐火性能の優れた組
成物を提供することである。 本発明の目的は、その殻（コア）内に相当量の
水を含有する一定の条件下で調製された骨材の有
効成分として含む組成物を調合したときに、特に
これを建築耐火被覆用途に使用されるときには極
めて優秀な耐火性能を発揮するものである。 本発明者等の研究により次のことが明らかにな
つた。即ち、吸水性ポリマーに多量自由水として
の水を担持せしめ、これを外部的処理によつて封
じ込め、外殻を特性の結合剤で固定した骨材は、
比較的それ自体耐熱性の良好な無機質バインダー
と混合し硬化せしめることによつて、熱及び／又
は火炎と接した時に、硬化殻内の水が吸熱作用を
営みながら逸散し、これによつてかなりの耐火性
能を発揮し、必要に応じて耐火性充填材を更に配
合することによつて、耐火被覆材として要求され
る要件をほぼ満足する程度に具備することができ
るようになつたことである。 〔発明の構成〕 本発明における特定の骨材調製に使用される吸
水性ポリマーとは、ポリアクリルアミド系、ポリ
アクリル酸ソーダ系等の重合体で、架橋により水
に不溶となり、自重の略100〜1000倍程度の水を
吸収するもので、本発明の骨材調製用としては、
粒子形状をとるものが望ましく、例えば住友化学
工業社製「スミカゲルＮ−100」、荒川化学工業社
製「アラソーブ」、日本触媒化学工業社製「アク
アリツク」、製鉄化学社製「アクアキープ」等を
例示できる。次に、水及び／又は湿気により硬化
する結合剤としては、水硬性石灰、ポルトランド
セメント、アルミナセメント、石灰混合セメン
ト、混合ポルトランドセメント、高硫酸塩スラグ
セメント等の水硬性セメントや石膏、ドロマイ
ト、マグネシアセメント等の気硬性セメントのご
とき水の作用を通して結合性を発揮する無機質の
結合剤、またその結合内にイソシアネート、シア
ノアクリレートのような構造を有して空気中の湿
気又は湿気を有する物体の表面で硬化反応を生じ
るオリゴマー、プレポリマー又は比較的低分子量
のポリマーのごとき有機質の結合剤が例示され
る。 骨材の調製方法について要述すると、吸水性ポ
リマーを粒子を水中に浸漬して所望の大きさに
し、場合によつては塩化ナトリウム水溶液を用い
て吸水率を一定にしておいたものを、無機質の結
合剤の場合は直接その粉体をまぶす（吸水性ポリ
マー中の水分を吸収して硬化する作用により硬
化）、予めペーストにして塗布するなどの適宜方
法により、また有機質結合剤の場合は直接現液を
塗布する、予め溶液にしてから塗布するなどの方
法によつて吸水性ポリマー表面に皮膜を形成せし
せる。無機質結合剤と有機質結合剤は単独で使用
しても又は交互に使用して複合層を形成しても良
い。このようにして調製される骨材は、比較的強
固な殻を形成し、それ単独でも数時間〜数月間は
殻内に水を封じ込み、初期の状状を維持し、下記
に詳述する水硬性無機物質又は水硬性無機物質と
可溶性アルカリ珪酸塩との複合系バインダーに混
合して被覆層を形成するとその水封じ込み時間は
飛躍的に延長される。特に有機質結合剤を単独で
又はこれと無機質結合剤と複合した時には係る効
果は大きい。引続き、該骨材表面を合成高分子の
溶液又は分散体もしくは無溶剤液で被覆硬化せし
めることによつても保水持続時間は相当延長され
る。蓋し、係る構成高分子の骨材表面被覆硬化に
際しては、吸水性ボリマーを侵しにくい脂肪族炭
化水素をその溶媒又は分散媒とするものが好まし
く、実験上からもこれが確認された。 次に本発明に使用される水硬性無機物質又は複
合系バインダー（以下、本発明バインダーとい
う）は、上記骨材と共に使用され、比較的それ自
体耐熱性の良好なものであつて、上記骨材に使用
の水硬性セメント又は本発明者等が以前より使用
している可溶性アルカリ珪酸塩と該水硬性セメン
トとの複合系バインダーを用いる。係る複合系バ
インダーを使用するときの水硬性無機物質と可溶
性アルカリ珪酸塩との配合比率は、可溶性アルカ
リ珪酸塩100重量部に対して水硬性無機物質15〜
350重量部とするものである。 本発明は、上述特定骨材と本発明バインダーよ
り構成されるもので、その配合比率は概ね本発明
バインダー100重量部に対して骨材20〜200重量部
程度とするものであるが、実際に使用する本発明
バインダーの種類や骨材の粒度等によつて異な
る。 本発明においては、より一層耐火性能を向上す
る手段として、給水性ポリマーが吸収する水に水
溶性の難燃剤、たとえば炭酸水素ナトリウムのよ
うな炭酸水素酸塩、リン酸アンモニウムのような
アンモニウム塩等を予め溶解しておき、これを吸
水ポリマー中に含有せしめておくと、該難燃剤の
加熱時の分解作用により相乗的耐火性能向上に繁
がる。又一方、本発明者等が以前より係る目的に
使用し続けている水化度の大きい物質を配合する
こともできる。即ち、水化度の大きい物質とは、
100℃の恒温時点を100重量部とし、600℃加熱に
よりその内の約15重量部以上が脱水、減少する物
質をいい、このような物質としては、アルミニウ
ム酸化物の水和物質（水酸化アルミニウム、ギブ
サイト鉱物、ベーマイト、ダイアスポア等）、沸
石系物質（チヤバザイト、ヒユーランダイト、モ
ルデナイト等）、シリカ−アルミナ系物質（アロ
フエン、ハロイサイト、未膨脹バーミキユライト
等）、マグネシア系物質（ブルーサイト、アタパ
ルジヤイト）、その他（サチンホワイト、エトリ
ンジヤイト等）などを例示することができる。 本発明においては、上述必須成分及び補助剤と
しての水溶性難燃剤や水化度の大きい物質の外
に、必要に応じて、更に、増量材として耐火性粘
土、耐火性酸化物、珪砂、石灰等の粉体、被覆硬
化層の亀裂防止や組成物の粘性調整材として石
綿、ガラス繊維、岩綿繊維等の繊維状物や界面活
性剤などを適量配合できる他、組成物のタレ防止
材や配合物の分離防止材や粘度調整材としてセル
ロース系可溶性樹脂や合成高分子分散体（液体、
粉末を含む）等も、耐火性能を阻害せず、機械的
強度や付着性を低下せずに逆に若干良くする形態
で適量配合できる。 本発明の耐火性能の優れた組成物を使用するに
際しては、本発明の特定の骨材、本発明バインダ
ーの混合物に適当量の水を混合し、常法に従つ
て、例えばこて、スプレー等の手段により被覆す
べき対象下地（鉄骨、構造木材等）に被覆すれば
よい。 〔発明の実施態様〕 以下、本発明を実施例により示す。但し、下記
実施例における各種性能は次の試験方法で求め
た。 (1) かさ比重（気乾）：JIS Ａ 1161による (2) 圧縮強度：JIS Ａ 1161による（単位はKg／
cm²） (3) 耐火性：70mm角の成形体の中心部に熱電対を
設置し、周囲を1000℃以下の炉内に曝し、その
中心温度が350℃になるまでの時間（分）を測
定する。その時間により耐火性能の度合を判定
する。 (4) 室内放置後の耐火性：供試体を標準状態下の
屋内に３カ月曝露した後、上記(3)の試験を行
う。 (5) 塗料化粧性：試験片の表面にJIS Ｋ 5663に
規定される外部用合成樹脂エマルシヨンペイン
トを塗付し、屋外に１カ月曝露した後、表面状
態を観察する。 実施例 １ 〔骨材Ａの調製〕 住友化学工業社製ポリアクリル酸ソーダ系重合
体吸水性ポリマー「スミカゲルＮ−100」10ｇを
２の水中に浸漬して、２時間後に自重の200倍
吸水した吸水ポリマーを、網篭に入れて振動しな
がら、ポルトランドセメントを落下してその表面
全体にに付着せしめた後、１日室内に放置した。
セメント層は硬化して強固な殻を形成しており、
粒子径は３〜５mmであつた。セメント硬化殻を破
砕すると水が多量に含まれていることが確認され
た。 〔骨材Ｂの調製〕 骨材Ａの表面を、湿気硬化性のイソシアネート
溶液で吹付け法により被覆し、２時間後に硬化し
た。この骨材は、一層殻が強固になり該殻を破砕
すると水が多量に含まれていることが確認され
た。 〔骨材Ｃの調製〕 住友化学工業社製ポリアクリル酸ソーダ系重合
体吸水性ポリマー「スミカゲルＮ−100」20ｇを
１の0.5％食塩水溶液中に浸漬して、２時間後
に自重の50倍吸水した吸食塩水ポリマーを、網篭
に入れて振動しながら、湿気硬化性のイソシアネ
ート溶液で吹付け法により被覆し、２時間後に硬
化皮膜層が形成された。引続き、その表面を半水
石膏のペーストで吹付け法により被覆し、３時間
後に骨材Ｃを得た。その表面は硬化して強固な殻
を形成しており、粒子径は４〜６mmであつた。石
膏硬化殻を破砕すると食塩水が多量に含まれてい
ることが確認された。 〔骨材Ｄの調製〕 骨材Ｃの調製において、0.5％食塩水溶液に変
えて、１％炭酸水素ナトリウム水溶液を使用した
以外は、骨材Ｃの調製方法と同じ方法によつて骨
材Ｄを得た。その表面は硬化して強固な殻を形成
しており、粒子径は４〜６mmであつた。石膏硬化
殻を破砕すると炭酸水素ナトリウム水溶液か多量
に含まれていることが確認された。 〔耐火性能の優れた組成物〕 上記骨材Ａ〜Ｄを用い、第１表に配合の耐火性
能の優れた組成物を調製し、これに水を加えてペ
ースト状にした後、成形容器に入れて放置する。
成形容器の寸法は、JIS Ａ 1161の寸法のものを
使用した。試験結果も第１表に示す。 実施例 ２〜６ 実施例１の方法により、第１表に記載の配合の
耐火性能の優れた組成物を調製し、試験を行い、
第１表に記載の試験結果を得た。 比較例 １〜４

【表】

【表】

【表】 第２表に記載の配合から成る耐火性能の優れた
組成物を調製し、実施例と同様の方法で試験を行
つて、第２表に示す結果を得た。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 適度に吸水している吸水性ポリマー粒の表面
   に、水及び／又は湿気により硬化する結合剤を被
   覆硬化せしめて含水粒状物となした骨材と、水硬
   性無機質物質又は水硬性無機質物質と可溶性アル
   カリ珪酸塩との複合系バインダーとからなる耐火
   性能の優れた組成物。 ２ 水により硬化する結合剤は、水硬性石灰、天
   然セメント、ポルトランドセメント、アルミナセ
   メント、石灰混合セメント等の水硬性セメント、
   又は石膏、マグネシアセメント等の気硬性セメン
   トである特許請求の範囲第１項に記載の耐火性能
   の優れた組成物。 ３ 湿気により硬化する結合剤は、イソシアネー
   ト、シアノアクリレート等の構造を有するオリゴ
   マー、プレポリマー又は比較的低分子量のポリマ
   ーである特許請求の範囲第１項に記載の耐火性能
   の優れた組成物。 ４ 水により硬化する結合剤と湿気により硬化す
   る結合剤とで複合被覆硬化層を形成した骨材を使
   用する特許請求の範囲第１項に記載の耐火性能の
   優れた組成物。 ５ 水及び／又は湿気により硬化する結合剤を被
   覆硬化せしめて含水粒状物となした骨材の表面
   を、更に合成高分子の溶液又は分散体もしくは無
   溶剤液で被覆硬化せしめたものを使用する特許請
   求の範囲第１項に記載の耐火性能の優れた組成
   物。 ６ 合成高分子の溶液又は分散体が、脂肪属炭化
   水素を溶媒又は分散媒とする特許請求の範囲第５
   項に記載の耐火性能の優れた組成物。 ７ 複合系バインダーを使用するときの水硬性無
   機物質と可溶性アルカリ珪酸塩との配合比率は、
   可溶性アルカリ珪酸塩100重量部に対して水硬性
   無機物質が15〜350重量部である特許請求の範囲
   第１項に記載の耐火性能の優れた組成物。 ８ 吸水性ポリマー粒が含有する水に水溶性難燃
   剤が配合されて成る特許請求の範囲第１項に記載
   の耐火性能の優れた組成物。 ９ 更に、100℃の恒温時点を100重量部とし、
   600℃加熱によりその内の約15重量部以上が脱水、
   減少する水化度の大きい物質を含有してなる特許
   請求の範囲第１項に記載の耐火性能に優れた組成
   物。 １０ 水化度の大きい物質が、ギブサイト、ベー
   マイト、ダイアスポア、水酸化アルミニウム、チ
   ヤバザイト、ヒユーランダイト、モルデナイト、
   アロフエン、ハロイサイト、ブルーサイト、アタ
   パルジヤイト、サチンホワイト、未膨張バーミキ
   ユライト及びエトリンジヤイトから選ばれる少な
   くとも１種の粉粒物質である特許請求の範囲第９
   項に記載の耐火性能の優れた組成物。 １１ 水化度の大きい物質が、結晶水乃至吸着水
   を含有するアルミニウム酸化物である特許請求の
   範囲第９項又は第１０項に記載の耐火性能の優れ
   た組成物。