JPH024656Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は治療用マツト、特に寝たきり老人や重
病人の寝床に適したマツトに関するものである。

（従来の技術） 従来より寝たきり老人や重症患者等の長期療養
患者に生じる褥瘡を防止するために種々の治療用
マツトが開発されているがいづれのマツトにおい
ても充分な褥瘡防止効果を得ることができなかつ
た。しかしながら最近褥瘡の発生原因が(1)腰、踵
等の骨隆起部が持続的な圧迫を受けてその部位の
毛細血管の流れが阻害されて局部的な細胞の壊死
を招くこと。(2)患者の発汗による湿気と体熱とに
よつて壊死を起した部位に細菌が増殖すること。
などに起因することが解明された。その結果患者
の圧迫部位への体重による加重を分散化させると
ともに患者の皮膚を乾燥させることが褥瘡の予防
ないし治療に効果があることがわかり、かかる加
重分散と皮膚乾燥に適したマツトの一つとして上
部に微細孔を有する多数の空気室を並列に配列し
た空気マツトを用い、奇数列の空気室と偶数列の
空気室とに交互に空気を供給することにより空気
室に穿設された細孔から微風を漏出させながら奇
数列の空気室と偶数列の空気室を交互に膨張、収
縮させる治療用マツトが提案されている（実公昭
55−18008号など）。

（考案が解決しようとする課題） 上記治療用マツトは褥瘡の防止に優れた効果を
有しているが、このマツトは空気室から微風を漏
出しつつ奇数列の空気室と偶数列の空気室を交互
に膨張、収縮させるため患者の体重をマツト表面
の半分でささえることになる。そのため膨張させ
た空気室にはかなり大きな圧力を付与させる必要
があり、また一度収縮させた空気室を再度膨張さ
せるためには高容量の空気ポンプを用いざるを得
ず、空気ポンプが高価なことから必然的にマツト
が高価となるという問題があつた。さらに空気マ
ツトは患者の体重により圧力が増加するためマツ
トが固く、寝心地が悪くなるとともに、空気室内
に封入された空気が体重により過度に偏在するた
め安定性が劣るという問題もあつた。また各空気
室の上面に多数の微風漏出孔を穿設しているた
め、多数の空気室を配列してマツトを構成すると
微風の漏出位置を変えることができず、しかも患
者の体重による圧力増加のため体重が加わる空気
室では細孔が拡大して空気の均一な漏出が困難と
なるという問題があつた。

したがつて本考案の目的は従来の治療用マツト
の上記問題点を解消するとともに使用者の快適感
を著しく高め、かつ褥瘡予防及び褥瘡治療に適し
た治療用マツトを提供することにある。

（課題を解決するための手段） 本考案は一端に空気供給口と他端に空気排出口
を設け、かつ内部に弾性体が収納された細長状の
多数の空気袋を配列してマツトを構成し、偶数列
の空気袋の空気供給口に第１の給気管を接続し、
奇数列の空気袋に第２の給気管を接続して、それ
ぞれの給気管の端部をポンプ装置に連結し、さら
に該偶数列の空気袋と、奇数列の空気袋のそれぞ
れ少くとも一つの空気排出口に、多数の細孔が穿
設された細管を接続して、該細管を空気袋と空気
袋との間に配置するとともに、該ポンプ装置に連
結された第１の給気管と第２の給気管を交互に開
閉して、細管から微風を漏出させながら偶数列の
空気袋と奇数列の空気袋を交互に膨張、収縮させ
る治療用マツトである。

（作用） 本考案の治療用マツトは弾性体が収納された多
数の細長状の空気袋を並列に配置して構成された
マツトの偶数列の空気袋と奇数列の空気袋を、該
空気袋に接続された細管から微風を漏出させなが
ら交互に膨張・収縮させるため、空気袋へ供給さ
れる空気量が少なく、しかも比較的低い圧力であ
つても患者の体重は空気袋内に収納された弾性体
で支えられるため安価な低容量の空気ポンプが使
用できる。また偶数列の空気袋の収縮時には患者
の体重は、奇数列の空気袋と偶数列の空気袋内に
収納された弾性体、言い換えればマツトの全領域
で患者の体重が支えられるため体重の分散効果が
大で、かつ空気袋内に封入された空気の偏在がな
く安定性も優れている。さらに空気袋に適宜脱着
可能で、かつ多数の細孔が穿設された細管から微
風を漏出させるようにしたため微風の漏出場所を
最適位置に設定することができるとともに、細孔
の大きさや細孔ピツチの異なる多数の細管を用意
すると、患者の症状にあつた最適な風量の微風を
最適位置に漏出させることができ優れた治療効果
が得られる。

（実施例） 次に本考案の治療用マツトの一実施例を図面に
て説明する。第１図は本考案の治療用マツトの斜
視図であり、第２図は一部断面図である。該治療
用マツトは弾性体２を収納した細長状の多数の空
気袋１から構成されたマツトＡと、該マツトを構
成する偶数列の空気袋の空気供給口３に接続され
た第１の給気管４と、奇数列の空気袋の空気供給
口に接続された第２の給気管５と、各空気袋に空
気を送入する空気ポンプ装置６及び多数の細孔１
１が穿設され、かつ空気袋の空気排出口８に着脱
可能に接続された細管７を主要部としている。

空気袋１は、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチ
レンなどのプラスチツクシートやゴムシートまた
はそれらの布等を被覆したシートなどから成形さ
れた気密性の袋状体であり、その一端部には空気
供給口３が設けられている。また他端部には空気
排出口８が設けられている。この空気袋は通常膨
張時の直径が10〜16cm、長さが50〜150cmの円筒
状の袋状体である。

上記空気は一体に連接され約100〜200cmの長さ
及び約50〜100cmの巾を有するマツトが構成され
る。例えば上記空気袋を正方形または長方形の布
またはプラスチツクフイルムからなるベースシー
ト上に一定の間隔を置いて重ね合された帯状の布
またはプラスチツクフイルムをベースシートの一
辺に平行に一定間隔で線状に接合して形成された
連続する多数の空胴内に空気袋を挿入することに
よりマツトを構成することができる。第１図では
重ね合わせた２枚の細長いシート９を一定間隔で
接合して複数の空胴を形成し、該空胴内に空気袋
を挿入してマツトを構成している。

上記空気袋１の内部には空気袋が収縮したとき
に患者の体重をささえる程度の弾性を有する弾性
体２が収納されている。この弾性体としては、例
えば、 (1) ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどのプラス
チツクシートやゴムシートなどから気密性の細
長状の袋体を成形し、その内部に空気、水ある
いはゲルなどを注入して成形したもの、 (2) ポリウレタンフオームやフオームラバーなど
の連続気泡の発泡体、あるいは上記発泡体とポ
リエチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、エ
チレン−酢酸ビニル共重合体の発泡体などの独
立気泡の発泡体との積層体を細長状に成形した
もの、 (3) 独立した小さな多数の空気室を凸状に有する
プラスチツクシート、あるいは上記フイルムの
裏面に独立気泡の発泡体シートを重ねたシート
を小さな多数の空気室が外側となるように丸棒
状に巻回したもの、 (4) 発泡スチロールやプラチツク管などの弾力性
に乏しい自己保持性のプラスチツク芯体の周囲
に弾力性を有するポリウレタンフオームなどを
巻回したもの などを用いることができる。中でも実公昭50−
17706号、同50−2172号などに記載された独立し
た小さな多数の空気室を有するプラスチツクシー
トに弾性発泡材料を重ね合せて巻回した弾性体は
保温性及び断熱効果に優れ、かつ弾力性を任意に
調節でき好ましく使用される。この弾性体は通常
直径５〜15cm、長さ50〜100cmである。上記空気
袋に収納される弾性体は全て同一のものでも、ま
た偶数列と奇数列の空気袋に収納される弾性体の
素材、形状等が異なつていてもよい。

上記マツトを構成する偶数列の空気袋の空気供
給口には第１の給気管４の分岐を連結して給気可
能とする。また奇数列の空気袋の空気供給口には
第２の給気管５の分岐を連結して給気可能として
いる。また少くとも一つの偶数列の空気袋及び少
くとも一つの奇数列の空気袋の空気排出口には
0.01〜0.5mmの多数の細孔１１が穿設され、かつ
先端が閉塞された細管７が連結されて空気袋と空
気袋との間に配置される。空気袋への空気の供給
を停止し、かつ空気袋内の空気を細管に穿設され
た細孔１１から漏出させることにより空気袋１が
収縮するため細管を偶数列の空気袋と奇数列の空
気袋の少くとも一つにそれぞれ連結することが重
要である。細管は全ての空気袋の排出口に連結し
てもよいが、患者の肩部や腰部などの床擦れが発
生しやすい部位の空気袋に細管を接続して、この
部位にのみ微風を漏出させるようにしてもよい。
この場合細管を接続していない空気袋の排出口は
密栓１０により閉塞しておく必要がある。上記細
管は円筒状の空気袋の頂部に配置すると患者に細
管が押し潰されて空気の漏出が妨げられるため隣
接する２つの空気袋の間に形成された凹部に配置
する必要がある。かかる凹部に配置することによ
り細管が圧迫されて閉塞することなく全ての細孔
から均一に空気が漏出できる。

第１の給気管４及び第２の給気管５の端部には
空気ポンプ装置６が連結されている。偶数列の空
気袋と奇数列の空気袋へはこのポンプ装置から間
欠的に空気が供給される。そのための一つの方法
としてこのポンプに空気溜槽を連結し、空気溜槽
の圧力が上限設定値、例えば1.5Kg／cm²に達する
と第１の給気管４に取着された弁が開いて第１の
給気管４から偶数列の空気袋へ空気が供給されて
偶数列の空気袋を膨張させる。その間奇数列の空
気袋は収縮する。空気溜槽の圧力が下限設定値、
例えば0.5Kg／cm²まで下ると第１の給気管に取着
された弁を閉じて偶数列の空気袋への空気の供給
を停止させ、空気溜槽に空気を溜める。すると偶
数列の空気袋内に残留する空気は該空気袋に連結
された細管に穿設された細孔から漏出して偶数列
の空気袋も収縮する。偶数列の空気袋が収縮中に
上記空気溜槽に空気が溜まつて、該空気溜槽の圧
力が上限設定値に達すると、第２の給気管に取着
された弁が開いて奇数列の空気袋に空気を供給し
て膨張させる。上記空気溜槽の圧力の上下限の検
出により第１及び第２の給気管に取着された弁の
開閉を繰り返すことで奇数列の空気袋と偶数列の
空気袋を交互に膨張、収縮させることができる。

他の方法としては第１の給気管と第２の給気管
に取着された弁を交互に一定時間毎に開閉させる
こともできる。例えば遅速回転体を用い、該回転
体の周囲に上記２つの弁に開閉信号を発信する２
個の近接スイツチを適当な間隔で配置して、回転
体により該２個のスイツチを順次作動させること
により第１及び第２の給気管に取着された弁を交
互に開閉させることができる。

次に本考案の治療用空気マツトの作動について
説明する。まず第３図に示すように偶数列の空気
袋２０，２２，２４…に第１の給気管から空気が
供給され、第２の給気管からの空気の供給が停止
している間は偶数列の空気袋は各排出口（図示せ
ず）に接続され、かつ隣接する空気袋間に配設さ
れた細管７に穿設された細孔１１から空気を漏出
させながら膨張する。そして偶数列の空気袋が膨
張すると患者の体重は膨張した偶数列の空気袋２
０，２２，２４…でささえられる。この間奇数列
の空気袋２１，２３…は、該空気袋に接続された
細管に穿設された細孔１１から空気袋内に残留す
る空気を漏出させながら収縮する。

次に第１の給気管からの空気の供給が停止さ
れ、第２の給気管から奇数列の空気袋２１，２３
…への空気の供給が開始されると、第４図に示す
ように偶数列の空気袋２０，２２，２４…内に残
留する空気が該空気袋に接続された細管に穿設さ
れた細孔１１から漏出するため偶数列の空気袋は
収縮する。一方奇数列の空気袋２１，２３…は該
空気袋に接続された細管に穿設された細孔から空
気を漏出させながら膨張する。そして患者の体重
は膨張した奇数列の空気袋によつてささえられ
る。

上記偶数列の空気袋と奇数列の空気袋がともに
膨張・収縮中であるときには患者の体重は空気袋
内に収納された弾性体２でささえられる。

本考案の治療用マツトにおいては、患者の支持
領域は偶数列の空気袋→偶数列と奇数列の空気袋
内に収納された弾性体→奇数列の空気袋へと順次
移動する。かかる支持領域の移動によ患者にマツ
サージ作用を与えるとともに偶数列と奇数列の空
気袋が膨張・収縮中の時には患者は偶数列と奇数
列の空気袋内に収納された弾性体、いい換えれば
マツトの全領域でささえられるため空気袋が膨
張、収縮しているにもかかわらず極めて寝心地が
よい。

特に空気袋を３〜10分のサイクルで膨張、収縮
を行うと上記患者の支持領域が短時間で移動する
ためマツサージ作用が強められ患者の快適感がさ
らに高められる。

（考案の効果） 以上のように本考案の治療用マツトは偶数列と
奇数列の空気袋の膨張、収縮を一定時間毎に交互
にくり返し行うことにより患者の圧迫部位への体
重による加重が分散化できるとともに、細管から
常に細孔を通じて空気を漏出させるため患者のマ
ツトとの接触表面を乾燥させて褥瘡を防止でき、
さらに患者の支持領域が移動するため優れたマツ
サージ効果を有している。また空気袋へ供給する
空気量が少くてよいため安価な空気ポンプが使用
できて、安価な空気マツトが提供できるなど実用
上極めて有用である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の治療用マツトの斜視図であ
り、第２図は一部断面図であり、第３図及び第４
図は上記治療用マツトの作動を示す説明図であ
る。 １……空気袋、２……弾性体、３……空気供給
口、４……第１の給気管、５……第２の給気管、
６……ポンプ装置、７……細管、８……空気排出
口。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 一端に空気供給口と他端に空気排出口を設け、
   かつ内部に弾性体が収納された細長状の多数の空
   気袋を配列してマツトを構成し、偶数列の空気袋
   の空気供給口に第１の給気管を接続し、奇数列の
   空気袋に第２の給気管を接続して、それぞれの給
   気管の端部をポンプ装置に連結し、さらに該偶数
   列の空気袋と奇数列の空気袋のそれぞれ少くとも
   一つの空気排出口に、多数の細孔が穿設された細
   管を接続して、該細管を空気袋と空気袋との間に
   配置するとともに、該ポンプ装置に連結された第
   １の給気管と第２の給気管を交互に開閉して細管
   から微風を漏出させながら偶数列の空気袋と奇数
   列の空気袋を交互に膨張、収縮させることを特徴
   とする治療用マツト。