JPH0242568B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はロール成形による角形金属素管の製造
方法に関するものである。

従来角形金属管は予め通常の円断面に一旦成形
溶接された管を、引続き四角形のプロフイールを
有するロール等により上下、左右から加圧して角
形断面に再加工して製品としたり、あるいは角形
管のコーナーとなるべき四個所をプレスによつて
一個所ずつ折り曲げたのち、板の左右両端部を突
き合わせて、角形管の一辺に継目がくるようにし
て、継目を溶接して角管とするなどの方法により
製造されている。

しかしながら近年、建築、土木の分野で角形金
属管の需要が増し、寸法、形状、材質に関する
様々な要求に容易に応じられる高能率な角形金属
管製造方法の開発が望まれている。

かかる実情に鑑み本出願人は先に、特願昭55−
32537号（特公昭63−17527号公報）「角形鋼管の
製造方法」において、帯鋼板をロール成形して一
辺に溶接継目がある角形鋼管の製造方法を提起
し、更に特願昭55−84451号（特公昭64−3568号
公報）「凹ロールによる角形金属管の製造方法」
により、コーナー曲げの施された角管材素材を、
所望の円弧に成形するロールから構成される溶接
用ロールに導入して、溶接エツジのラツプの発生
を有効に防止する方法を提示した。

即ち特願昭55−32537号の発明は、加工エネル
ギは少なく済む、ロールスタンド数が少なく済む
等の特長を持つが、各辺が平坦な状態で上辺を溶
接用ロールにより溶接するものであるため（特に
上辺が平坦である点が最も影響が大きい）、溶接
用ロールにおける溶接時に、エツジにラツプが生
じ易く、また、エツジに良好な溶接条件としての
十分なアツプセツト量を与えることができず（す
なわち、角管材素材に周方向の強い圧縮力を与え
て大きなアツプセツト量を得ようとするとエツジ
に折れ込みが生じる）、このため必ずしも高い溶
接品質が得られない、という問題があつた。

一方、特願昭55−84451号の発明においては、
溶接用ロールのプロフイールを円弧状にすること
により、溶接時にエツジに特願昭55−32537号と
比較して、より大きなアツプセツト量を与えるこ
とが可能となり、これにより溶接品質を向上させ
ることができる。しかしこの場合、フインパスロ
ールから溶接ロールに至る角管材素材のエツジの
軌跡が必ずしも良好にならない。良好な溶接のた
めには、溶接用ロールへのＶスロートアングル
（左右のエツジが溶接用ロールに導かれる際に左
右のエツジで形成するＶ型またはその角度）が適
切であることが必要であるが、このＶスロートア
ングルが必ずしも適切に得られないという問題が
あつた。

本発明は上記提案における問題を改良して、良
好な溶接品質を確保するためになされたものであ
り、溶接時に角管材素材のエツジを溶接用ロール
に適切なＶスロートアングルでもつて導くことを
可能にして、エツジにラツプあるいは折れ込みを
生じさせることなく十分なアツプセツト量を与え
ることのできる角形金属素管の製造方法である。
即ち本発明は溶接用ロールに導入する角管材素材
を上辺コーナー曲げロール及びフインパスロール
により、各辺が外側に凸形の所望の円弧を有する
形状に予成形することにより、信頼性の高い溶接
品質を得ようとするものであり、金属帯板をピン
チロールを通して、蛇行を防止しながら送りをか
けて上辺コーナー曲げロールへ送る第一工程、金
属帯板を両端上辺に円弧カリバーを有する上辺コ
ーナー曲げロールの上下のロールの間を通し、左
右両端部に角形金属管の上辺を構成する長さを設
けて、ロール中心に対して左右対称の位置で上辺
コーナーを曲げると同時に、金属帯板に円弧形を
付加して角管材素材とする第二工程、左右の上辺
が円弧形に成形された素材を下辺コーナー曲げロ
ールの上下ロールの間を通して左右の上辺コーナ
ーの内側でロール中心に対して左右対称の位置で
下辺コーナーを曲げる第三工程、上辺コーナーと
下辺コーナーが曲げられた素材をフインパスロー
ルに導入し、上辺、左右辺及び下辺を所望の円弧
断面に絞り成形して、各辺が外側に凸形の円弧を
有する形状に予成形する第四工程からなる角形金
属管の製造方法である。

なお、本発明は最終的には各辺が平坦な角形管
を得るための方法であるが、エツジを溶接する工
程の前工程において一旦各辺を円弧状に成形する
ことを指して、予成形と称している。

以下本発明に言う角形金属素材のロール成形方
法の一例を図面で説明する。

使用材料は本方法のロール成形の連続加工の利
点を充分発揮さすためには、金属帯板が好適であ
る。

製造すべき角形金属管のサイズに合わせて、所
要の幅の金属帯板はアンコイラーで巻きほぐされ
１ないし２パスのピンチロール２（第１図）によ
つて送りをかけられる。帯板の蛇行を防止するた
めピンチロールにはつば付きのロールを使用する
か、或いは縦ロールと組合せるとよい。

帯板はピンチロールからまず上辺コーナー曲げ
ロール３（第３図）に送りこまれる。

本明細書で上辺コーナーとは角形管の断面にお
いて、上辺と左右両辺とが交叉する角隅部を言
い、下辺コーナーとは下辺と左右両辺とが交叉す
る角隅部をいう。

上辺コーナー曲げロール３は、第２図に示すよ
うに上ロール４ａと下ロール４ｂとからなり、上
ロール４ａのエツジ４ｃは凸形の円弧カリバーが
形成され、下ロール４ｂのエツジ４ｄの凹形の円
弧カリバーと相対して、帯板１に所望の曲率を付
与すると同時に、角形管にしたとき左右の上辺コ
ーナーとなるべき位置５，５で帯板を曲げ角度ａ
を70゜±10゜まで曲げるプロフイールを有してい
る。円弧曲率半径R₁は角管製品の辺長の３〜５
倍が望ましい。

帯板は継目を溶接したとき角形管の上辺の長さ
になるように、両端部の幅L₁，L₂を残して位置
５，５で曲げられる。曲げ位置５，５はロール中
心ｃ，ｃに対して左右対称の位置とする。

次いで第３図に示す粗成形ロール６に導入され
て上ロール６ａと下ロール６ｂにより前記左右の
上辺コーナーの内側で下辺コーナーとなる位置２
ａ，２ｂでコーナー曲げ角度ｂを約70゜±10゜まで
曲げられ、五角形の頂点が開いた断面形状に組成
形される。

上辺コーナーおよび下辺コーナーが中間角度ま
で曲げられた角管材素材１′は、次に第４図ａに
示すフインパスロール９に送られる。

フインパスロール９は、駆動または無駆動の上
下一対の成形ロール９ａ，９ｂ及び無駆動の左右
一対の成形ロール９ｃ，９ｄからなり、上ロール
９ａは更に上辺の円弧R₁を保持する９ｅ，９ｅ、
フインロール９ｆとから成る。

又下ロール９ｂ、左右ロール９ｃ，９ｄは、そ
れぞれ所望の円弧R₂，R₃をうるようロール面に
カリバーが設けられている。

なお、前記円弧R₂と円弧R₃とを同じ曲率とし
てもよい。また、前記円弧R₁を前記円弧R₂また
は円弧R₃の一方と同じ曲率（R₂＝R₃の場合は当
然両者と同じ）としても差し支えない。

かくしてコーナー部の曲げ角度α、βを85゜±
5゜と進行させ、同時に角管材素材１′の両エツジ
端面をフインロール９ｆの側面に当て、角管材素
材外周からロールによつて圧縮力を加えて、角管
材素材１′に0.5〜1.5％のリダクシヨンを与える。

第４図ｂは第４図ａに示すフインパスロール３
Ｆにおいて粗成形されたロール直下の角管材素材
詳細図である。

図においてO₁，O₂，O₃は各辺上辺、下辺、左
右辺の円弧中心、R₁，R₂，R₃は曲率半径である。
曲げ角度α−３は角管材素材１の下辺円弧R₂の
中央接線と左右円弧R₃の中央接線とのなす角度
を意味し、β−３は上辺の円弧R₁のエツジの接
線と左右辺円弧R₃の中央接線とのなす角度を意
味する。

なお、一般に冷間ロール成形において管にリダ
クシヨンを与えるとは、ロールにより管の外周面
全体に圧力を加えて、管の断面が小さくなる（管
径が小さくなる）ように絞り成形することであ
り、この場合、管外周面全体に加わつた圧力が管
の周方向に沿つての圧縮力として作用して、管の
断面を縮小させる。そして、本発明のごとき角管
材素材１′に対するフインパスロールによる圧縮
成形では、角管材素材１′の左右のエツジが、フ
インパスロールのフインロールに突き当たつた状
態で角管材素材１′の周方向に沿つての圧縮力を
受け、角管材素材１′の断面が縮小する。この場
合における断面の縮小率すなわちリダクシヨンｒ
は次のようにして計算される。

ｒ＝（S₁−S₂）／S₁×100％ ただし、 S₁：角管材素材のフインパスロール入側での周方
向長さ S₂：角管材素材のフインパスロール出側での周方
向長さ 上記リダクシヨンによつて角管材素材１′の上
辺、左右辺及び下辺をそれぞれ上ロール９ａ、下
ロール９ｂ、左右ロール９ｃ，９ｄのカリバーに
沿わせることにより、所望の円弧曲率半径R₁，
R₂，R₃を得るものである。

このようにして角管材素材１′の各辺に予成形
を施こした後、引続き第５図に示す円弧のロール
プロフイールを有する溶接用ロール１０に導入
し、電縫溶接により継目２０が溶接され造管され
る。

溶接用ロール１０の円弧曲率半径Ｒはフインパ
スロール９の円弧R₁，R₂，R₃のいずれかに一致
させることが望ましい。

上記の工程により得られた円弧状の４辺を持つ
角形金属素管は、後段のサイジングロールに送ら
れ、このサイジングロールにより各辺が平坦な金
属角形管に成形される。

なお、本発明は上述の通り、前記サイジングロ
ールに送り込む前段階としての角形金属素管を得
る方法である。

実施例 板厚12mmの帯板をつば付き下ロールをもつピン
チロールを用いて上辺コーナー曲げロールに送給
し、L₁＝L₂＝152mmに曲率R₁＝700mmを付与し、
位置５，５（第２図）において角度ａ＝70゜に曲
げた。

ついで粗成形ロールでコーナー角曲げ角度ｂ＝
63゜（第３図）に成形した。

更にフインパスロールに導入してリダクシヨン
0.5％、R₁＝R₂＝R₃＝700mmで絞り成形し、コー
ナー部の曲げ角度α＝80゜、β＝80゜に予成形し
た。

予成形された角管材素材を、Ｒ＝700mmの曲率
を与えられた溶接用ロールにおいて電縫溶接し、
定形ロールで成形して辺寸法300mmの角形鋼管を
得たが、各辺が円弧状に予成形されているので、
突き合わせ溶接で十分なアツプセツト量が確保さ
れ、ビード形状の良い溶接金属が得られた。

本発明者らの実験によると、溶接用ロールによ
り十分なアツプセツト量をエツジに与えて、エツ
ジのラツプあるいは折れ込みのない良質の溶接品
質を得るに当り、フインパスロールから溶接用ロ
ールに至る角管材素材のエツジの軌跡を適正なも
のとすること、すなわち、左右のエツジの適正な
Ｖスロートアングル（左右のエツジが溶接用ロー
ルに導かれる際に、左右のエツジで形成するＶ形
またはその角度）でもつて溶接用ロールに導くこ
とがきわめて重要であるが、本発明のように各辺
を円弧状に予成形する方法によれば、特に上辺に
関して、予成形していない平坦な上辺を溶接用ロ
ールに導いて、そのエツジを突き合わせる従来の
方法と比較して、いわば両エツジを突き合わせる
準備がある程度できている状態となつており、両
エツジの突き合わせに際して、十分なアツプセツ
ト量を与えることのできる所望の適切なＶスロー
トアングルを、安定して得ることができる。

このように、溶接品質を低下させるエツジ部の
不整合を発生させないという大きな効果を奏す
る。また、各辺が円弧状に予成形されていること
で、溶接用ロールにおいてエツジに十分なアツプ
セツト量を与えるための適切なリダクシヨンを加
えることが可能となつており、この面でも良好な
溶接品質を得ることができる。

なお以上の説明は、ほゞ正方形断面を有する角
形管の製造法を示す図面に基いてなされたが、本
発明はこれに限定されるものではなく、矩形断面
の角形管の製造にも適用可能であることはいうま
でもない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明法のピンチロールの説明図、第
２図及び第３図は上辺及び下辺コーナー曲げロー
ルの説明図、第４図ａはフインパスロールの説明
図、同ｂは角管材素材の詳細図、第５図は溶接用
ロールの説明図である。 １：金属帯板、１′：角管材素材、３：上辺コ
ーナー曲げロール、６：粗成形ロール、９：フイ
ンパスロール、１０：溶接用ロール。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 金属帯板をロール成形し、継目を溶接して角
   形金属素管を製造する方法において、金属帯板１
   をピンチロール２に通して上辺コーナー曲げロー
   ル３へ送る第一工程、該金属帯板を両端上辺に円
   弧カリバーを有する上辺コーナー曲げロールの上
   下のロールの間を通し、左右両端部に角形金属管
   の上辺を構成する長さを設けて、上辺コーナーを
   曲げると同時に、前記金属帯板の上辺部分に円弧
   形を付加して角管材素材とする第二工程、左右の
   上辺が円弧形に成形された素材を、下辺コーナー
   曲げロール６の上下ロールの間を通して、左右の
   上辺コーナーの内側で下辺コーナーを曲げる第三
   工程、上辺コーナーと下辺コーナーが曲げられた
   前記素材をフインパスロール９に導入し、上辺、
   左右辺及び下辺を所望の円弧断面に絞り成形して
   各辺が外側に凸形の円弧を有する形状に予成形す
   る第四工程からなる角形金属素管の製造方法。