JPH0218085B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は微量血液採取容器に用いられる血液採
取具すなわち採血具に関する。

（従来の技術） 当該技術分野の実務者には周知のように、最近
の医療用分析機器の進歩により、ごく微量の血液
試料を用いて各種の血液学的診断を行うことが可
能となつている。この理由から、例えば患者の指
あるいは耳たぶを刺して刺し傷（以下本明細書に
いては刺創と呼称する）を形成し、この刺創から
流出するごく少量の血液試料を微量採取管の中に
採取して種々の分析に供することが可能であり、
従つて従来のように患者から大量の静脈血を採取
する必要はない。

しかしながら、そのような血液採取方法を用い
る場合には刺創からの血液が凝固する前にこれを
迅速に採取管に移送しなければならない。

過去においては、刺創からの血液を採取容器の
中へ移送するための毛細管と、これと一体に形成
され微量採取容器の頂部に取り付けられるように
形成されたキヤツプと、を有する採血装置が提供
された。しかしながらそのような装置では毛細管
の先端を刺創に対して正確に近接して配置しなけ
ればならず、また装置全体で、毛細管を通つた血
液が採取管の内壁面と接触して微量採取管の底面
に向かつて流れるように、配置されなければなら
なかつた。もし正確な配置がなされなければ毛細
管作用が開始されないかあるいは血液の移動が遅
くなり、結果的には血液の凝固すなわち凝血が生
じてしまう。毛細管を利用した型の採血装置は、
1977年５月24日発行の米国特許第4024857号明細
書に開示されている。

（発明が解決しようとする課題） 本願発明の目的は、上述の如き従来技術の毛細
管を用いる形式の採血装置の欠点を解消し、導血
部先端の刺創に対する厳密な位置決めを必要とせ
ず、また血液の採血容器への迅速な移動を可能な
らしめる採血具を提供することである。

（課題を解決するための手段） 上記目的のため、本願発明においては、微量採
取容器に用いられる採血具を、微量採取容器の開
口端部に係合するキヤツプ部と、該キヤツプ部を
貫通して刺創の周部に係合する外側端から血液を
微量採取容器の中に排出する内側端まで長手方向
に伸びこれら両端を前記キヤツプ部の両側に位置
させるとともに内部に血液移送路を有する略管状
の導血部と、前記キヤツプ部に形成される空気排
出用の通気孔と、前記導血部の一側部を形成する
上側壁と、から構成し、前記上側壁を前記内側端
から、前記外側端から間隔を置いた点まで、伸長
せしめて前記導血部の外側端部付近に部分的な管
状断面を提供し、前記外側端の端面を部分円形状
になしている。

（作用および発明の効果） 上述のように、本願発明の採血具においては、
刺創からの血液を微量採取容器の中へ移送するた
めの導血部を刺創の周部に係合する外側端から血
液を微量採取容器の中に排出する内側端まで伸び
る部分円形状になし、前記外側端の端面を略弧状
となすことにより、刺創の周部に対する比較的広
い係合面を提供すると共に比較的大きな血液の移
送路を提供する。従つて、刺創の周部との係合点
を正確に位置決めする必要はなく、また比較的大
きな移送路により導血部から採取容器への血液の
迅速な移送が可能となる。本願発明のこれらの利
点は、毛細管を用いた上述の如き従来技術の採血
装置においては望めなかつたのである。

（実施例） すべての図面において同一の符合は同一の部分
を示す図面を参照しながら説明を加える。

第１図において、本発明の採血具１０は同心円
状に隔置され頂部壁１８によつて接合されている
環状のスカート１２および１４を有するキヤツプ
部１５を含んでいる。隔置されたスカート１２お
よび１４によつて形成されている環状の空間１６
は微量採取容器の頂部の開口縁を圧着的に受け入
れるための空間を形成する。第１図に見られるよ
うに、刺創の周部と係合して血液を受け入れるた
めの導血部２０がキヤツプ部の中に組み込まれて
おり、導血部はキヤツプ部の中を通つて刺創の周
部と係合する外側端２４から内側端２６へ伸長し
ており、採血具１０が採取容器の頂部縁の上に置
かれた時に内側端２６は採取容器内部へ伸長しこ
の採取容器の隣接する表面と係合する。

導血部２０の上側壁２８は、第１図に示す如
く、導血部２０の外側の端２４までは伸長しな
い。上側壁２８は点すなわち端部４２で終結し外
側端２４から上側壁の端部４２まで伸長する傾斜
した上側縁２２を形成する。上側壁２８はキヤツ
プ部１５を貫通する通気孔３０を部分的に形成す
る隔壁の役割を果たす。通気孔は、血液が導血部
２０を通つて採取容器の中に導入される際にこの
採取容器から空気を排出するために設けられてい
る。第２図に示す如く、導血部２０の下部壁３２
は外側端２４において符号４０で示す角度範囲に
わたつて延在する。毛細管作用を引き起こすため
に刺創の周部と係合する毛細管の角度的範囲より
も実質的により大きな係合面を形成するために角
４０は約120゜になつている。

上側壁２８および半円形状の下部壁３２は迅速
に多量の血液を採取容器中に移送するための比較
的広い血液移送路７０を画成する。第２図に示す
如く血液移送路７０の内側端２６は、上側壁２８
の側縁７２および７４で形成される半円状の係合
面を有しこの面は採取容器の内面と約220゜の周方
向範囲で接する。

次に第４図を参照すると、本発明の採血具１０
は管状の微量採取容器４４の上縁部４６の上に圧
着されている。後述するように、採血具１０が微
量採取容器４４の上縁部と係合・連結するための
他の手段を講ずることができる。加えて、微量採
取容器および採血具を前述の米国特許第４，024，
857号明細書に説明されたものとほぼ同様に一体
物として形成することが可能である。当該技術分
野の実務者によつて察知される如く、本発明の採
血具の導血部が、図示されるように、刺創の周部
と係合し、この係合部から採取容器４４の内面へ
迅速に血液を移送するための広い係合端２４を有
するように形成されている限りにおいては、キヤ
ツプ部は別の形態に作ることができる。更にキヤ
ツプ部は採取した血液を容器４４の中へ迅速に導
入するための空気排出用の通気孔３０を有してい
る。第４図に示すように上側壁２８は、キヤツプ
部１５の頂部壁１８の上方にある点４２から該頂
部壁の下方の内側端２６まで伸長している。従つ
て通気孔３０が採取した血液の溢流あるいは逆流
によつて閉塞されることを防止する。

第５ａ図および第５ｂ図に従来の毛細管型の微
量採取容器を図示する。第５ａ図には指５６にあ
る刺創５８から血液を採取している採血具５０を
示す。採血具は容器４４に取り付けられたキヤツ
プ５２と、これと一体となつて形成されている毛
細管５４とによつて形成されている。第５ａ図に
示されるように、毛細管内を流下した血液６０
は、実際には微量採取容器４４の内側表面に比較
して非常に小さな角度範囲で接触する点（２つの
円が一致する点での接触面積）を有する、毛細管
の内側端にある移送点６２に達する。

第５ａ図はこのような採血具５０を適正に位置
決めしたものを示すのに対して、第５ｂ図は適正
に位置した決めされない場合を示す。第５ａ図に
図示する採血具が第５ｂ図に示す如く位置決めさ
れたならば、点６２における毛細管の内側端と採
取容器４４の内側表面との間の接触面積がほとん
どないかあるいは全くないために毛細管作用は緩
慢となる。このような従来技術の血液採取装置に
おいては毛細管作用を起こさせるために第５ａ図
に示すように装置を適正に位置決めすることが重
要である。

これに対して第５ｃ図には、採取容器４４に取
り付けられた状態の、本発明の採血具１０を示
す。導血部２０の外側端２４は約120゜の周方向範
囲にわたつて伸長している部分円形状の係合面を
有している。従つて採取容器４４の中へ血液を迅
速に採取・移送するために外側端２４を適正に位
置させるべく採取容器の相対的角度をそう正確に
位置決めする必要はない。加えて移送領域６２は
血液が容器４４の内側表面に沿つて迅速に流れる
ように採取容器４４の内側表面と係合するために
約220゜の広い接触角度範囲を備えている。当業者
には明らかなように、このような少量の採取され
た血液を採取容器の中へ迅速に移送することは最
も重要なことである。さもなければその血液は凝
結してしまう。このことは毛細管を利用した装置
においては特に重要である。なぜならば、もし微
量採取容器の内側端と採取容器の内側表面が適正
に連絡されていなければ毛細管の中の血液が凝固
してしまうからである。

本発明の採血具の導血部は、自身に通気孔を形
成し、これをキヤツプ部の中へ挿入できるように
独立して構成することができるが、導血部はキヤ
ツプ部に含まれた一体構造となつて組み込まれる
のが好ましい。導血部は例えばポリエチレンのよ
うな透明で型成形された熱可塑性プラスチツクで
作られのが好ましい。当業者には明らかなように
ポリプロピレンおよびポリ塩化ビニールのような
種々の熱塑性プラスチツクを含む他の材質を用い
ることができる。キヤツプ部はI.C.I.U.S.A.社（I.
C.I.、U.S.A.、Wilmington、Delaware）によつ
て供給される陽イオン性シロキサン湿潤剤アトマ
645（Atmer645）で処理されたデユポンのポリエ
チレン系統のアラソン20−6064（Alathon20−
6064）で形成可能である。微量採取容器は、容器
の中へ導入される血液の流れを促進するためにそ
の内側表面が親水性となるように適正に処理され
たポリプロピレンの如き透明な熱可塑性プラスチ
ツク材で作られるのが好ましい。容器の内側表面
にはまたシリコン・コーテイング（L520、ユニ
オンカーバイド社製）の如き界面活性剤を用いる
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の採血具の側方立面図である。
第２図は第１図の平面図。第３図は第１図におけ
る採血具の右側面図。第４図は第１図乃至第３図
に示す本発明の採血具を採取容器に取り付けた状
態を長手方向の断面で示す側方立面図。第５ａ図
は、毛細管を利用した従来技術の採血具を用いて
採血している状態を多少図解的に示す断面図であ
る。第５ｂ図は第５ａ図の採血具を異なつた位置
においた場合を示す。第５ｃ図は、第５ａ図およ
び第５ｂ図と同様に採血に用いられている本発明
の採血具を示す。 １０……採血具、１２，１４……スカート、１
６……環状の空間、１８……頂部壁、２０……導
血部、２４……外側端、２６……内側端、２８…
…上側壁、３０……通気孔、４４……微量採取容
器、４６……上縁部、５６……指、５８……刺
創、７０……血液移送路。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 微量採取容器に用いられる採血具であつて、
   微量採取容器の開口端部に係合するキヤツプ部
   と、該キヤツプ部を貫通して刺創の周部に係合す
   る外側端から血液を微量採取容器の中に排出する
   内側端まで長手方向に伸びこれら両端を前記キヤ
   ツプ部の両側に位置させるとともに内部に血液移
   送路を有する略管状の導血部と、前記キヤツプ部
   に形成される空気排出用の通気孔と、前記導血部
   の一側部を形成する上側壁と、を備えて成り、前
   記上側壁は前記内側端から、前記外側端から間隔
   を置いた点まで、伸長して前記導血部の外側端部
   付近に部分的な管状断面を提供し、前記外側端の
   端面には部分円形状をなしていることを特徴とす
   る採血具。 ２ 前記導血部の外側端の端面が約120゜の角度に
   わたつて周方向に伸びる弧であることを特徴とす
   る特許請求の範囲第１項記載の採血具。 ３ 前記内側端の端面が部分円形状をなしている
   ことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の採
   血具。 ４ 前記導血部の内側端の端面が約220゜にわたつ
   て周方向に伸びる弧であることを特徴とする特許
   請求の範囲第３項に記載の採血具。 ５ 前記キヤツプ部が、互いに隔置されて微量採
   血容器の端面に係合する面を画成する内側及び外
   側の同心円状の環状スカート部と、これら同心円
   状のスカート部の一端部を接合する頂部壁と、を
   備えていることを特徴とする特許請求の範囲第１
   項記載の採血具。 ６ 前記導血部及び通気孔が前記キヤツプ部にお
   いて隣接して設けられかつ前記上側壁により分離
   されており、前記導血部及び前記通気孔が共に環
   状の横断面を有しており、更に隣接する前記環状
   の導血部及び通気孔の長手方向延長部が前記内側
   スカート部を画成することを特徴とする特許請求
   の範囲第５項記載の採血具。