JPH0217751Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、消耗電極式アーク溶接に係り、更に
詳細には消耗電極式アーク溶接の溶接トーチに係
る。

炭酸ガスアーク溶接やMIG溶接の如き消耗電
極式アーク溶接に於ては、送給ローラにより一定
速度にて送給される消耗電極ワイヤ（溶接ワイ
ヤ）に当接するコンタクトチツプによつて該消耗
電極ワイヤに電流が供給され、該消耗電極ワイヤ
と被溶接物との間に形成されたアークによつて消
耗電極ワイヤが溶融され、溶着金属となつて被溶
接物に移行することにより、被溶接物の溶接が行
われるようになつている。従つて消耗電極式アー
ク溶接を良好に実施するためには、コンタクトチ
ツプから消耗電極ワイヤへの給電が適宜に行われ
ることが必須の要件となる。

かかる消耗電極式アーク溶接に使用される従来
の溶接トーチに於ては、一般に、消耗電極ワイヤ
はその消耗電極ワイヤの直径より幾分か大きい内
径を有するワイヤ挿通孔を有するコンタクトチツ
プに挿通され、ワイヤ挿通孔の壁面と何点かに於
て接触することにより、その接触部に於てコンタ
クトチツプより給電されるようになつている。し
かし消耗電極ワイヤはワイヤ送給ローラによつて
連続的に送給されるため、コンタクトチツプのワ
イヤ挿通孔の壁面との接触点が常に変動し、これ
により消耗電極ワイヤへの給電点が不規則に変動
して、アークが不安定になるという欠点がある。
かかる給電不安定の問題は、消耗電極ワイヤによ
つてコンタクトチツプのワイヤ挿通孔の壁面が摩
耗され、その内径が大きくなればなるほど顕著に
なる。

上述の如きコンタクトチツプ式の溶接トーチに
於ける給電不良の問題を緩和すべく、溶接トーチ
本体に枢支されたレバー部材の一端にコンタクト
チツプを固定し、その他端に設けられた圧縮コイ
ルばねによつてコンタクトチツプが消耗電極ワイ
ヤに対し押し付けられるよう構成された消耗電極
式アーク溶接トーチが既に実用化されている。し
かしかかる型式の溶接トーチに於ては、コンタク
トチツプはレバー部材の枢支点の周りにしか運動
し得ないため、コンタクトチツプと消耗電極ワイ
ヤとの接触が点接触になり易く、消耗電極ワイヤ
への給電が不充分となることがある。また消耗電
極ワイヤの先端部がコンタクトチツプの溶融池と
短絡した場合には、ワイヤ送給ローラによつて一
定速度にて送給されているワイヤはコンタクトチ
ツプと接触した部分に於て一時的に撓み、圧縮コ
イルばねのばね力に抗して該圧縮コイルばねを圧
縮する方向へレバー部材を枢動させるが、その場
合コンタクトチツプがアークの再発生によつて瞬
間的に元の直線状態に戻る消耗電極ワイヤの挙動
に追従し得ないことがあり、かかる場合にはコン
タクトチツプが消耗電極ワイヤより瞬間的に離
れ、これによりこれらの間にスパークが生じると
いう問題がある。

また特公昭56−39992号公報に記載されている
如く、消耗電極ワイヤと接触して該消耗電極ワイ
ヤへ給電するコンタクトチツプと、消耗電極ワイ
ヤをコンタクトチツプに対し押圧する加圧ローラ
と、該加圧ローラを消耗電極ワイヤに対し付勢す
る付勢手段とを有するアーク溶接トーチが既に知
られている。消耗電極式アーク溶接に於ては、一
般に、消耗電極ワイヤはそれが巻取られたスプー
ルより順次巻戻されながら溶接トーチへ送給され
るようになつているため、ワイヤは完全に直線の
状態にてトーチ内の送給経路を移動するのではな
く、ワイヤ自身の塑性変形及び弾性変形に起因し
て波打つた状態にてトーチ内を通過する。そのた
め上述の如きアーク溶接トーチに於ては、加圧ロ
ーラは波打つた状態にて移動するワイヤに追従す
るが、ワイヤとコンタクトチツプとの接触点は不
規則に変動し、その結果給電不良が生じ易いとい
う問題がある。またかかる給電不良を解消すべく
加圧ローラによる加圧力を比較的高い値に設定す
ると、ワイヤの送給抵抗が増大し、そのためワイ
ヤ送給手段の大型化や消費エネルギの増大が避け
られず、またワイヤの送給不良が生じ易くなると
いう問題がある。

また上述の特公昭56−39992号公報に記載され
た溶接トーチに於て、コンタクトチツプに相当す
る部材をガイド部材として機能させ、加圧ローラ
を介してワイヤに給電を行うことが考えられる
が、ローラはワイヤに実質的に点接触した状態に
あるため、この場合にも給電不良が生じ易く、ま
た回転運動するローラへの給電が困難であるた
め、このことによつても給電不良が生じ易い。

本考案は従来の消耗電極式アーク溶接トーチに
於ける上述の如き不具合に鑑み、消耗電極ワイヤ
への給電を常に良好に行い得るよう構成された改
良された消耗電極式アーク溶接トーチを提供する
ことを目的としている。

かかる目的は、本考案によれば、消耗電極ワイ
ヤと実質的に線接触して該消耗電極ワイヤへ給電
するコンタクトチツプと、前記ワイヤと前記コン
タクトチツプとの間の接触領域に対し前記ワイヤ
とは反対の側にて前記コンタクトチツプを枢動可
能に支持するコンタクトチツプ支持部材と、実質
的に前記ワイヤに垂直な方向に前記コンタクトチ
ツプを前記ワイヤに対し前記支持部材を介して押
し付ける付勢手段とを有していることを特徴とす
る消耗電極式アーク溶接トーチによつて達成され
る。

本考案による消耗電極式アーク溶接トーチによ
れば、コンタクトチツプはワイヤとコンタクトチ
ツプとの間の接触領域に対しワイヤとは反対の側
にてコンタクトチツプ支持部材によつて枢動可能
に支持されており、また付勢手段により実質的に
ワイヤに垂直な方向にワイヤに対し押付けられて
いるので、コンタクトチツプはワイヤに倣つて支
持部材に対し相対的に枢動可能であり、従つて消
耗電極ワイヤの塑性変形及び弾性変形に起因して
それが波打つた状態にて送給される場合や短絡な
どによつて消耗電極ワイヤが撓んだ場合にも、コ
ンタクトチツプはワイヤの変形に適宜に追従して
常にワイヤと実質的に線接触した状態を維持し、
これにより従来技術の消耗電極式アーク溶接トー
チに於ける如き給電不良を確実に防止することが
できる。またコンタクトチツプは枢動するが回転
運動するわけではないので、コンタクトチツプに
直接通電用の電気接続を行うことができ、従つて
加圧ローラにより消耗電極ワイヤへ給電する場合
の如き給電不良を確実に防止することができる。

以下に添付の図を参照しつつ、本考案を実施例
について詳細に説明する。

添付の第１図は本考案による消耗電極式アーク
溶接トーチの要部を一部断面にて示す解図的正面
図、第２図は第１図の線−による解図的縦断
面図である。

図に於て、１は溶接トーチ本体であり、その軸
線２に沿つて図には示されていないワイヤ送給ロ
ーラにより送給される消耗電極ワイヤ３を実質的
に直線状態にて案内するセラミツク製のワイヤガ
イドチユーブ４と先端ガイド５とを有している。
ワイヤガイドチユーブ４と先端ガイド５との間に
は、消耗電極ワイヤと接触して該消耗電極ワイヤ
へ給電するコンタクトチツプ６が配置されてい
る。このコンタクトチツプは軸線２に沿つて延在
する断面円弧状の溝７を有しており、この溝部に
て消耗電極ワイヤ３と接触するようになつてい
る。またこのコンタクトチツプ６には枢支部８が
設けられており、ピン９によつて支持バー１０の
一端に設けられた二つのブラケツト１１及び１２
の間に枢支されている。

支持バー１０の他端にはビス１３によつて板ば
ね１４の一端が剛固に取付けられている。板ばね
１４の他端は、レバー部材１５の一端にビス１６
によつて剛固に取付けられている。レバー部材１
５は、軸線２の両側にて溶接トーチ本体１に設け
られたブラケツト１７に固定された枢軸１８の周
りに枢動可能に支持されている。

レバー部材１５の他端１９は二股状に構成され
ており、それぞれの端部には軸線２の両側にて溶
接トーチ本体１にねじ込まれたボルト２０が挿通
されている。従つてこのボルト２０を回動してレ
バー部材１５の傾斜を変化させることにより、コ
ンタクトチツプ６が板ばね１４により消耗電極ワ
イヤ３に対し押し付けられる力を調整することが
できる。

尚、これら支持バー１０及びレバー部材１５は
カバー２１内に収納されており、またコンタクト
チツプ６には図には示されていないパワーケーブ
ルによつて電流を供給されるようになつている。

第３図は本考案による消耗電極式アーク溶接ト
ーチの他の一つの実施例の要部を示す第１図と同
様の解図的正面図である。尚、この第３図に於
て、第１図に示された部材と実質的に同一の部材
には同一の符号又はダツシユ付きの符号が付され
ている。

この実施例に於ては、コンタクトチツプ６はレ
バー部材１５′の一端に直接枢支されている。ま
たレバー部材１５′の他端は圧縮コイルばね２２
によつて図にて反時計周り方向に付勢されてお
り、これによりコンタクトチツプ６が消耗電極ワ
イヤ３に対し押し付けられるようになつている。

かくしてこれらの実施例によれば、コンタクト
チツプ６は支持部材としての支持バー１０又はレ
バー部材１５′によりワイヤ３とコンタクトチツ
プとの間の接触領域に対しワイヤとは反対の側に
て枢動可能に支持されており、また付勢手段とし
ての板ばね１４又は圧縮コイルばね２２により実
質的にワイヤ３に垂直な方向にこれに対し押付け
られているので、ワイヤが変形した状態にて通過
してもコンタクトチツプはワイヤの変形に適宜に
追従し、常にワイヤと実質的に線接触した状態を
維持する。従つてコンタクトチツプとワイヤとの
接触が点接触であり、ワイヤの変形に起因して接
触点が不規則に変動する従来の溶接トーチに於け
る如き給電不良を確実に防止することができる。

以上に於ては炭酸ガスやアルゴンの如きシール
ドガスが溶接トーチとは別の供給ノズルにより供
給される型式の消耗電極式アーク溶接トーチの二
つの実施例について詳細に説明したが、本考案に
よる消耗電極式アーク溶接トーチはシールドガス
供給導管を組込まれた溶接トーチとしても構成可
能である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による消耗電極式アーク溶接ト
ーチの一つの実施例の要部を一部断面にて示す解
図的正面図、第２図は第１図の線−による解
図的縦断面図、第３図は本考案による消耗電極式
アーク溶接トーチの他の一つの実施例を示す第１
図と同様の解図的正面図である。 １…溶接トーチ本体、２…軸線、３…消耗電極
ワイヤ、４…ワイヤガイドチユーブ、５…先端ガ
イド、６…コンタクトチツプ、７…溝、８…枢支
部、９…ピン、１０…支持バー、１１，１２…ブ
ラケツト、１３…ビス、１４…板ばね、１５…レ
バー部材、１６…ビス、１７…ブラケツト、１８
…枢軸、１９…他端、２０…ボルト、２１…カバ
ー、２２…圧縮コイルばね。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 消耗電極ワイヤと実質的に線接触して該消耗電
   極ワイヤへ給電するコンタクトチツプと、前記ワ
   イヤと前記コンタクトチツプとの間の接触領域に
   対し前記ワイヤとは反対の側にて前記コンタクト
   チツプを枢動可能に支持するコンタクトチツプ支
   持部材と、実質的に前記ワイヤに垂直な方向に前
   記コンタクトチツプを前記ワイヤに対し前記支持
   部材を介して押し付ける付勢手段とを有している
   ことを特徴とする消耗電極式アーク溶接トーチ。