JPH0213098B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はセル型水中構造物の構築方法に関する
ものである。

セル型水中構造物とは、鋼矢板を水底に順次打
ち込んで閉合させて円筒状のセルを構成し、その
内部に土砂を中詰めした構造物である。

施工方法として従来は、(イ)現地の海上で鋼矢板
の継手をかみ合せて１枚づゝ打ち込む方法、(ロ)セ
ル自体を陸上や波浪の少ない海上で組み立てこれ
を現地まで運搬して多数のバイブロハンマ群を用
いて一時に打ち込む方法、が利用されている。

しかし前者の方法は施工に長い日時を要し、か
つ設計どうりの正しい形状を確保するのは困難で
あり、気象の影響を受けやすい、といつた欠点を
有する。

後者の方法は施工時間は短かいが大規模な設備
や船団を要し、曳航中は不安定な状態にあるとい
つた欠点を有する。

また両工法とも海上に打ち込み足場や設置用足
場を設けねばならずこの足場設置作業だけでも大
規模な工事となる。

本発明は上記のような欠点を改善するためにな
されたもので下記のような構築方法を提供するこ
とを目的とする。

＜イ＞ 施工に際して大規模な作業船団を必要と
しない構築方法 ＜ロ＞ 正確な重直性、正しい平面形状の得られ
る構築方法 ＜ハ＞ 組立て現場から沈設地への曳航中もきわ
めて安定に行うことのできる構築方法 ＜ニ＞ 短時間に所定深度までの根入れを行うこ
とのできる構築方法 ＜ホ＞ セル中詰作業中も安全に作業を行うこと
のできる構築方法 次に実施例について説明する。

＜イ＞ 浮作業台 浮作業台Ｆは平面形状が環状、多角形状等の
浮体であり、中央には円形、多角形等の作業域
Ｗが開設してある。

そして浮作業台Ｆは水平面にて上下に分割さ
れた上フロート１と下フロート２とよりなり両
者を連結材３によつて分離可能に連結してあ
る。

更に上下各フロート１，２は複数のブロツク
に分割可能なように連結材によつて連結してあ
る。

下フロート２の下面の外縁にはグラウト用ス
カート４を全周にわたつて下向きに突設する場
合がある。

また上フロート１の上面にはクレーン走行レ
ール５を敷設すると作業に便利である。

この浮作業台Ｆを海上のセル組立て位置に、
係留索６によつて係留する。

＜ロ＞ セルの１段目組立て 陸上のヤードで製作された、セルの１段目の
ユニツト７を台船８によつて浮作業台Ｆまで連
搬する。

走行レール５に載置したクレーンによつてユ
ニツト７を浮作業台Ｆ内の作業域Ｗ内に吊り込
み（第３図）、円形の作業域Ｗの壁面に沿つて
組み立てる。（第４図） ユニツト７と下フロート２とは結合装置９に
よつて一体に結合する。

ユニツト７と上フロート１とは一体に結合は
せず、上下方向のスライドのみ自由な状態のハ
ンガー１０に係合する。

＜ハ＞ セルの２段目以降の組立て（第５図） 上フロート１と下フロート２の間の連結材３
を解体し、上下フロート１，２を分離する。

そして下フロート２に注水して、２段目のセ
ルユニツト１１の作業域Ｗ内での組み立てが容
易な位置まで１段目のセルユニツト７と共に沈
降させる。

１段目のセルユニツト７は円筒状に下フロー
ト２に固定しているから、沈降に際しては上フ
ロート１がガイドとなつて正確に垂直方向に沈
降する。

１段目のセルユニツト７の沈降後、その上方
に２段目のセルユニツト１１をクレーンを用い
てやはり環状に組み立て順次上下方向を結合し
てゆく。

以下同様に下フロート２と組立て後のセルユ
ニツトの沈降作業、その上方への組立て作業、
をくり返してゆく。

＜ニ＞ 曳 航（第６図） 組立て完了後のセルは下部に下フロート２
を、水面部に上フロート１を結合している。

この状態で洩き船や押し船で設置現場へ曳航
する。

勿論組立て場所と設置現場とが同一ならば曳
航工程は不要である。

＜ホ＞ セル下端の圧入（第７図） 現場到着後、上フロート１を係留索６によつ
て仮固定する。

そして下フロート２の１ブロツクに土砂など
を中詰めして荷重を与えると、そのブロツクに
固定してあつたセル７は下降し、その先端は海
底に圧入される。

更に荷重を与えるために上フロート１をセル
に沿つて水面上に引き上げ、上フロート１内に
注水を行なう。

上フロート１の引き上げはウインチやジヤツ
キなどの昇降装置１２によつて行なう。

下フロート２への土砂の投入量の調整、上フ
ロート１への注水量、排水量の調整、などによ
つてセルの圧入量、圧入位置の微妙な調整、制
御が可能であり、正確な平面形状、垂直性が得
られる。

その結果セル７下端は所定の深度まで海底に
圧入され、必要根入れ長を確保することができ
る。

同様の作業を全ての下フロート２のブロツク
について行ない、完了後に下フロート２と海底
との間にモルタル注入１３を行う。モルタル１
３はスカート４に阻止され海中に散逸すること
はない。

その結果、下フロート２は浮体の役目を失な
い、セル７と一体の構造体となる。

＜ヘ＞ セル内の中詰（第８図） 海底に下端を圧入されたセル内に、土砂及
び／またはコンクリートを投入して中詰めを行
なう。

このとき上フロート１の上面は再び作業足場
として利用できる。

更に必要ならばクレーンを使つてセル内側に
抗１４を打設することもできる。

＜ト＞ 上フロートの回収（第９図） 上フロート１を内の水を排水し、昇降装置１
２により海面まで降下させ、上フロート１とセ
ル７との係合を解除すれば、上フロート１はブ
ロツクごとに分割して海面に浮かべることがで
きる。これを曳航して回収する。

上フロートを回収せずそのままセルに固定し
ておけば完成後の利用面積の拡大がはかれ、ま
た防舷材としても利用できる。

＜チ＞ 他の実施例 以上は上下フロートの二段に分割する構造で
あるが、三段以上のフロートに分割する構造を
採用すれば水中におけるより微妙なバランスの
調整が可能であり、より大水深の構造物の施工
が可能となる。

また作業域はフロートの内部に限らずその外
部を使用することができるわけであり、要はフ
ロートの周囲に作業水域が存在すればよい。

またセルとしては鋼矢板状の物の他に、リン
グを重ねてゆく方式、あるいはコンクリート製
の矢板を使用する方式等公知の材料、工法を広
く利用できる。

本発明は上記したように上下のフロートの役目
を次のように分担させた。

すなわち上フロートは浮体であると共に足場で
ありセル組立てのガイドでありかつセル圧入の荷
重として利用できる。

下フロートは浮体であると共にセル組立てのガ
イドであり、セル圧入時の荷重であり最終的には
構造体の一部となる。

従つて次のような効果を期待できる。

＜イ＞ 足場および構造体の一部を、最初はフロ
ートとして利用できる。

従つて従来のように別に多数の作業船による
船団を編成する必要がなくきわめて経済的であ
る。

＜ロ＞ 曳航中のセルは海面位置に浮体を、最下
端に浮力調整可能な重りを各々設けた状態にあ
るから大型構造物でありながら最も安定した吃
水状態を簡単迅速に選択でき、波や風に対して
きわめて安定性が高い。

＜ハ＞ 鋼矢板を１枚づゝ打ち込む工法と比較し
て本工法によれば一時に多量のセルに載荷して
圧入できるから作業が迅速であり、気象条件の
きびしい海上作業において有効である。

＜ニ＞ 多数枚の鋼矢板群に多数のバイブロハン
マ群を取り付けて一時に打ち込む工法も存在す
るが、本工法の打込み荷重はそれまで曳航用の
浮体であつたフロートに中詰め注水するだけで
あるからバイブロハンマのような機械をまつた
く必要とせず比較にならぬほど経済的である。

また上記の工法では鋼矢板群、バイブロハン
マ群を支持する巨大な作業船が必要となるが本
発明の工法では前記したようにフロート自体が
載荷重となり足場となるのであるから設備がき
わめて簡易である。

＜ホ＞ セルが中空の状態にあると、波浪に対し
て不安定であるが本工法によれば上フロート１
を下降させて係留索によつて固定しておけば簡
単に暴風や波浪に対する安定性を確保できる。

＜ヘ＞ 従来の工法ではセルの真円性、垂直性を
確保することが容易ではなく、そのために多く
の作業日数と労力を要している。

本発明の方法によればセル圧入時における上
フロートへの注水や排水量、下フロートへのコ
ンクリート及び／または土砂の投入量、の調
整、制御によつて正確でかつ迅速に精度の高い
設置作業を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図：浮作業台の全体の斜視図、第２図〜第
９図：施工順序の説明図、 Ｆ：浮作業台、Ｗ：作業水域、１：上フロー
ト、２：下フロート。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 水上に浮いており上下に分割できるフロート
   の周囲の作業水域においてセルを組み立て、 下フロートを沈めてセルの下部に固定し、 下フロートにコンクリートまたは砂利等を中詰
   めした荷重、及び上フロートを水面から上げて注
   水した荷重によつてセルを水底に圧入することを
   特徴とするセル型水中構造物の構築方法。