JPH0212712B2 - - Google Patents

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JPH0212712B2
JPH0212712B2 JP56167773A JP16777381A JPH0212712B2 JP H0212712 B2 JPH0212712 B2 JP H0212712B2 JP 56167773 A JP56167773 A JP 56167773A JP 16777381 A JP16777381 A JP 16777381A JP H0212712 B2 JPH0212712 B2 JP H0212712B2
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JP
Japan
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zirconia
sintered body
mol
tetragonal
cutlery
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JP56167773A
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JPS5871095A (ja
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Yoshiki Masaki
Keisuke Kobayashi
Kusuo Shimizu
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Publication date
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Publication of JPH0212712B2 publication Critical patent/JPH0212712B2/ja
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Description

【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野 この発明は、ジルコニア焼結体を使用した工業
用または民生用刃物に関する。 従来の技術 刃物には、工業用であるか民生用であるかを問
わず、初期の切れ味が高く、しかもその高い切れ
味を長く続けることができること、すなわち耐久
性が優れていること、耐蝕性が優れていること、
清浄化が容易であること、といつた特性が要求さ
れる。工業用刃物には、上述した特性に加えて耐
熱性が要求されることも多い。 さて、工業用刃物は、従来、そのほとんどが炭
素鋼、高速度鋼、合金工具鋼などの金属で作られ
ている。これらの金属製の刃物は、金属に特有の
性質として、かえりを発生するので刃立が難しい
という問題はあるが、概して初期の切れ味は高
い。しかしながら、金属は硬度や耐摩耗性が劣る
のですぐ切れなくなつてしまう。すなわち、耐久
性が劣る。また、使用中に温度が上昇すると、金
属特有の焼戻作用が起こり、切れ味が大幅に低下
してくる。また、金属は、水、酸、アルカリのい
ずれに対しても弱いので、耐触性が大幅に劣る。 民生用刃物もまた、炭素鋼やステンレス鋼など
の金属で作られているものが多い。民生用刃物に
要求される特性は、その程度において工業用刃物
ほどきびしくはないが、金属製であるので、上述
した工業用刃物と同様の問題をかかえている。も
つとも、ステンレス鋼製のものは錆る心配はな
い。しかしながら、その切れ味は炭素鋼製のもの
にくらべて格段に劣り、またその低下も大きい。 このように、金属製の刃物には一長一短があ
る。そこで、近年、金属の欠点をもたないジルコ
ニア焼結体が刃物材料として注目されているよう
になつてきた。 発明が解決しようとする問題点 この発明の発明者は、上述したジルコニア焼結
体の刃物材料としての有用性に着目し、種々検討
を重ねた結果、特定の結晶構造のジルコニアを特
定の割合で含み、かつ平均結晶粒子径と気孔率が
ともに特定の範囲にあるものを使用すると、それ
らの条件を満たしていないものを使用したときに
くらべていろいろな特性が大きく向上し、優れた
刃物が得られることを見い出したもので、その目
的とするところは、初期の切れ味が高く、しかも
その高に切れ味を長期にわたつて保つ続けること
ができ、また耐蝕性、耐熱性、清浄化の容易性な
どの特性が優れている刃物を提供するにある。 問題点を解決するための手段 上記目的を達成するために、この発明は、ジル
コニア焼結体からなる工業用または民生用刃物で
あつて、かつ、上記ジルコニア焼結体は、 a 正方晶ジルコニア(正方晶系の結晶構造をも
つジルコニア)を少なくとも70モル%含み、 b 単斜晶ジルコニア(単斜晶系の結晶構造をも
つジルコニア)を10モル%以下の範囲で含み、 c 立方晶ジルコニア(立方晶系の結晶構造をも
つジルコニア)を30モル%を超えない範囲で含
み、 d 安定化剤たるイツトリアを1〜5モル%の範
囲で含み、 e 平均結晶粒子径が0.2〜1μmの範囲にあり、 f 理論密度と実際の密度とから算出した気孔率
が3%以下である、 ことを特徴とする刃物を提供する。好ましい気孔
率は、1%以下である。 この発明において工業用または民生用刃物と
は、以下において説明するようなものである。た
だし、特殊な特性が要求される、手術用メスや剪
刀などの、いわゆる医療用刃物は含まないものと
する。 工業用刃物: 繊維、製紙、パルプ、合板、石油化学、合成
樹脂、段ボール・紙器、製鋼、金属などの諸工
業において使用するナイフ、スリツタ、鋏、鋸
などの刃物。 これらは、たとえば、繊維工業における糸条
巻取機や機械の糸カツタや糸切鋏、製紙工業や
パルプ工業、合板工業におけるリワインダ用の
トツプおよびボトムスリツタ、カツタ用のロー
タリーおよびペツトナイフ、カツタ用のトツプ
およびボトムスリツタ、ギロチングマシンやチ
ツパマシン用のナイフ、石油化学工業や合成樹
脂工業におけるストランドカツタ用のスリツタ
およびコームプレート、フイルムスリツタ用の
スリツタ、段ボール・紙器工業におけるコルゲ
ートマシンやプリンタスロツタ用のカツタナイ
フ、ロータリーカツタやロータリースリツタ用
のカツタナイフやスリツタ、製鋼工業や金属工
業におけるロータリーシヤ用のサーキユラーナ
イフなどである。 民生用刃物: 包丁(菜切包丁、出刃包丁、刺身包丁、牛
刀、ペテイナイフ、鎌形包丁、中華包丁、肉切
包丁、薄刃包丁など)、鋏(洋鋏、料理鋏、裁
鋏、採果鋏、生花鋏、剪定鋏、紙鋏、金切鋏な
ど)、ナイフ(紙ナイフ、シーナイフ、登山ナ
イフ、切出ナイフなど)等、主として家庭用ま
たは業務用として使用する刃物。 この発明を詳細に説明するに、この発明の刃物
は、その全体または刃部がジルコニア焼結体で構
成されているが、このジルコニア焼結体は、正方
晶ジルコニアを少なくとも70モル%含み、単斜晶
ジルコニアを10モル%以下の範囲で含み、立方晶
ジルコニアを30モル%を超えない範囲で含み、安
定化剤たるイツトリアを1〜5モル%の範囲で含
み、平均結晶粒子径が0.2〜1μmの範囲にあり、
理論密度と実際の密度とから算出した気孔率が3
%以下であるものである。以下、この点について
詳述する。 ジルコニア焼結体中におけるジルコニアの結晶
構造は、後述する原料粉末の純度、組成や、焼結
時の温度や時間、焼結後の冷却条件、安定剤の量
など、さまざまな条件によつて変わり、正方晶、
立方晶および単斜晶のうちの少なくともひとつの
結晶構造をとる。したがつて、製造にあたつては
これらの条件を厳密に制御し、少なくとも70モル
%の正方晶ジルコニアと、30モル%を超えない範
囲の立方晶ジルコニアと、10モル%以下の単斜晶
ジルコニアとを同時に含むジルコニア焼結体を得
る。 この発明が、少なくとも70モル%の正方晶ジル
コニアを含むジルコニア焼結体を使用する理由
は、次のとおりである。 すなわち、正方晶ジルコニアは、応力を受ける
と単斜晶ジルコニアに変態する。応力誘起変態で
ある。したがつて、そのような正方晶ジルコニア
を含むジルコニア焼結体が外部応力を受けると、
その一部が変態に費され、結果的に、変態に必要
なエネルギー分だけ小さな応力が加わつたことと
同じことになり、その分だけ焼結体の強度が向上
するわけである。しかして、70モル%以上もの大
量の正方晶ジルコニアが含まれていると、かかる
応力誘起変態機構による大きな強度向上効果が得
られる。強度が向上するということは、靭性や耐
摩耗性が向上するということでもある。これは、
刃物の初期の切れ味を向上させ、ま耐久性を向上
させるうえで極めて好都合である。正方晶ジルコ
ニアが70モル%に満たない場合には、強度的には
問題ない場合もあるが、靭性が不足するようにな
り、刃立加工時や使用時に刃先に多数の小さな欠
け(チツピング)を生じたり、また大きな欠けを
生じたりして、初期における高い切れ味が得られ
ず、また耐久性も低下して、この発明が目的とす
る刃物を得ることができない。 次に、立方晶ジルコニアを含むジルコニア焼結
体を使用する理由を説明する。 立方晶の結晶構造は、ジルコニアの、上述した
3つの結晶構造のなかで、熱に対する安定性が最
も高い。そのため、立方晶ジルコニアを含むジル
コニア焼結体を使用することにより、刃物の耐熱
性ないしは高温使用時における耐蝕性を大きく向
上させることができるようになる。 すなわち、少なくとも70モル%の正方晶ジルコ
ニアを含むジルコニア焼結体中の立方晶ジルコニ
アは、いわゆるマトリクスを形成している正方晶
ジルコニアの周囲および/または粒子間に分散し
て存在している。しかして、高温下で焼結体に水
分、酸、アルカリなどが作用すると、正方晶ジル
コニアの安定性が低下し、安定な単斜晶ジルコニ
アに変態して正方晶ジルコニアの粒界に微細な亀
裂ができ、この亀裂を起点として焼結体の破壊が
進行するようになる。しかしながら、立方晶ジル
コニアが存在していると、立方晶ジルコニアはそ
のような変態を伴わないので、破壊の進行が著し
く抑制され、耐熱性ないし耐蝕性が向上するよう
になる。このような耐熱性や耐蝕性の向上は、特
に、使用時における温度上昇が起こりやすい工業
用刃物にとつて大変好都合なことである。このよ
うな作用を有する立方晶ジルコニアは、正方晶ジ
ルコニアが少なくとも70モル%含まれ、単斜晶ジ
ルコニアが10モル%以下の範囲で含まれているこ
とから、30モル%を超えない範囲で含まれること
になる。 次に、この発明が単斜晶ジルコニアが含むジル
コニア焼結体を使用する理由を説明する。 上述したように、ジルコニア焼結体中の正方晶
ジルコニアは応力誘起変態機構をもつが、その変
態を起こさせるためには核が必要であると考えれ
ている。こ点、単斜晶ジルコニアを含んでいると
いうことは、それが正方晶ジルコニアから変態し
て生ずる際に焼結体に微細な亀裂や欠陥を作つて
いるということであり、その亀裂や欠陥が核の役
目をするのである。すなわち、単斜晶ジルコニア
は、正方晶ジルコニアに応力誘起変態を起こさせ
る核を生成するために必要なのである。 このように、単斜晶ジルコニアは正方晶ジルコ
ニアに応力誘起変態を起こさせるために必要なも
のである。しかしながら、一方で、単斜晶ジルコ
ニアの存在は焼結体に亀裂や欠陥があるというこ
とでもあり、これは焼結体の強度維持の面からは
決して好ましいことではない。すなわち、核は、
応力誘起変態のために必要なものではあるが、多
すぎると焼結体の強度を大きく低下させてしまう
わけである。そのため、この発明においては、応
力誘起変態の促進と強度維持とのバランスを考慮
し、単斜晶ジルコニアの量を10モル%以下に抑え
ている。 上記において、正方晶ジルコニア、立方晶ジル
コニアおよび単斜晶ジルコニアの量は、次のよう
にして求める。 すなわち、正方晶ジルコニアの量は、研磨した
刃物の表面をX線回折装置を用いて分析し、立方
晶ジルコニア400面、正方晶ジルコニア004面およ
び正方晶ジルコニア220面の回折パターンをチヤ
ート上に記録する。 次に、上記チヤートから立方晶ジルコニア400
面の回折パターンの面積強度を求め、さらにその
値を同じくチヤート上から読み取つた立方晶ジル
コニア400面の回折角θを用いてローレンツ因子
L[L=(1+cos22θ)/sin2θ・cosθ]で除し、
立方晶ジルコニア400面の回折強度IC400を求める。
全く同様にして、正方晶ジルコニア004面の回折
強度IT004および220面の回折強度IT220を求め、こ
れらの値から次式によつて正方晶ジルコニアの量
CT(モル%)を算出する。 CT=[(IT004+IT220) /(IC400+IT004 +IT220)]×100 単斜晶ジルコニアの量CM(モル%)もまた、全
く同様に、正方晶ジルコニア111面の回折強度
IT111と、単斜晶ジルコニア111面の回折強度IM111
と、単斜晶ジルコニア111面の回折強度IM11 1
から、次式によつて求める。 CM=[(IM111+IM11 ) /(IT111+IM11 1 +IM111)]×100 正方晶ジルコニアおよび単斜晶ジルコニアの量
が求まれば、残余が立方晶ジルコニアということ
になる。 次に、平均結晶粒子径が0.2〜1μmであるジル
コニア焼結体を使用するということについてであ
るが、これは、強度、さらには靭性、耐摩耗性の
高いジ焼結体、ひいては初期の切れ味が高く、し
かも優れた耐久性をもつ刃物を得るうえでの必要
条件である。 すなわち、上述した正方晶ジルコニアの応力誘
起変態は、結晶粒子径にも大きく依存し、粒子径
が0.2μm未満では変態が起こりにくくなる。これ
は、粒子径があまりにも微細すぎて変態を生起さ
せるのに必要な核が形成されず、また弾性歪エネ
ルギーが大きくなつて正方晶構造が安定してしま
うためであると考えられる。応力誘起変態が抑制
されたのでは、強度、さらには靭性や耐摩耗性の
向上、ひいては初期の切れ味や耐久性の向上はも
はや期待できない。一方、1μmを越えると、焼結
後、冷却する過程で正方晶から単斜晶への結晶構
造の変態が著しく促進されるようになり、単斜晶
ジルコニアの量が増大しすぎて10モル%を越える
ようになる。また、正方晶構造が極端に不安定に
なり、小さな応力でも応力誘起変態が起こつてし
まうようになる。したがつて、焼結体の強度は大
きく低下し、刃物の構成材料としてもはや使用し
得ない。また、熱や、水、酸、アルカリに対して
も不安定になり、刃物の耐熱性ないし耐蝕性を低
下させることにもなる。 次に、この発明においては、気孔率が3%以下
であるジルコニア焼結体を使用する。好ましいの
は、気孔率が1%以下である焼結体を使用するこ
とである。ここで、気孔率P(%)は、式、 P=[1−(実際の密度/理論密度)]×100 で表わされるもので、気孔率が低ければ低いほ
ど、焼結体の強度、さらには靭性や耐摩耗性、ひ
いては刃物の初期の切れ味や耐久性が向上する。 すなわち、ジルコニア焼結体の気孔は主として
結晶粒界に存在するため、気孔があると結晶粒子
間の結合面積が小さくなり、粒子同士の結合力が
小さくなる。また、力学上明らかなように、気孔
があるとそれに応力が集中するようになる。粒子
同士の結合力の低下は、当然、焼結体の強度を低
くするが、強度は、気孔に応力が集中し、その部
分が破壊すると、粒子間の結合力が弱いために破
壊が粒界を伝つて容易に拡がるようになつて加速
度的に低くなる。また、他の焼結体にはみられな
い、ジルコニア焼結体に特有の問題として、気孔
に応力が集中すると、結晶粒子に応力が十分に作
用しなくなり、上述した応力誘起変態機構が十分
に働かなくなる。したがつて、応力誘起変態によ
る強度の向上効果が期待できなくなる。このよう
な理由から、気孔率は低いほどよいといえるが、
後述する実施例にも示すように、3%以下であれ
ば事実上問題はない。また、気孔率が3%以下で
あるジルコニア焼結体を使用することにより、刃
物の耐熱性ないしは高温使用時における耐蝕性が
向上する。 すなわち、正方晶ジルコニアは常温で準安定状
態にあるが、焼結体に熱と水分が同時に作用する
と、それが引金となつて正方晶ジルコニアが単斜
晶ジルコニアに変態しやすくなり、単斜晶ジルコ
ニアの量が異常に増大してくる。これは、熱と水
分とが同時に作用すると、水分と、焼結体中の、
ジルコニアの安定化剤とが反応し、正方晶構造の
安定性が損われるためであると考えられる。ま
た、水分は気孔に最も作用しやすいから、その気
孔を起点とし、粒界を伝う破壊が起こりやすくな
るという問題もある。この点、気孔率が3%以下
であるジルコニア焼結体は、そのような不都合に
よる特性の低下が少ない。 また、気孔率が3%以下であると、刃先の表面
粗度、形状(刃先角、刃線幅など)、切断抵抗な
どの制御が容易になり、初期の切れ味が向上する
ようになるばかりか、被切断物が刃先に付着しに
くくなつてそれによる切れ味の低下をも防止でき
るようになる。また、被切断物が仮に付着して
も、ジルコニア焼結体はもともと表面自由エネル
ギーが低いこともあつて容易に除去、清浄化でき
るようになる。 加えて、気孔率が3%以下であるということ
は、製造上も大変有利なことである。 すなわち、ジルコニア焼結体の結晶構造は、後
述する焼結段階では、正方晶系と立方晶系との共
存状態にある。しかして、正方晶ジルコニアは焼
結後の冷却過程で単斜晶ジルコニアに変態しよう
とする。また、立方晶ジルコニアは正方晶ジルコ
ニアに、さらにその正方晶ジルコニアが単斜晶ジ
ルコニアに変態しようとするが、正方晶ジルコニ
アから単斜晶ジルコニアへの変態は粒子間の結合
状態にも依存し、結合力が低下してくる、気孔率
が3%を越える領域では、準安定な正方晶構造が
極めて容易に単斜晶構造に変わるようになる。ま
た、気孔は、粒子間に粒子同士が結合していない
自由空間を形成する結果、焼結体の弾性歪エネル
ギーが小さくなり、これがまた単斜晶ジルコニア
への変態を促進するようになる。これらの相乗作
用により、気孔率が3%を越えるようなジルコニ
ア焼結体では結晶構造の制御が極めて難しい。 このように、ジルコニア焼結体の気孔率は、刃
物の、単に強度、靭性、耐摩耗性といつた機械的
特性、ひいては初期の切れ味や耐久性のみなら
ず、耐熱性ないしは高温使用時における耐蝕性
や、清浄性、結晶構造の制御の容易性など、いろ
いろな特性に大きな関わりをもつているのであ
る。 この発明で使用する上記のようなジルコニア焼
結体は、ジルコニアに安定化剤としてイツトリア
を固溶させることによつて得る。ジルコニアの安
定化剤には、イツトリア以外にカルシアやマグネ
シアなどがあるが、イツトリアを使用すると、カ
ルシアやマグネシアを使用するときにくらべて低
温で焼結できるために焼結時に結晶粒子径が大き
く成長するのを抑制することができ、結晶構造や
粒子径の制御が容易に行えるようになる。そのよ
うなイツトリアは、1〜5モル%の範囲で固溶さ
せるが、この範囲のイツトリアに加えて、カルシ
アやマグネシアなどの他の安定化剤を固溶させる
ことも可能である。好ましいのは、カルシアであ
るが、イツトリアと他の安定化剤とを併用すると
きには、両者の和が2〜10モル%の範囲になるよ
うにする。もつとも、この安定化剤の量は、上述
したジルコニア焼結体を得るうえでの必要条件で
あるが、十分条件ではない。 すなわち、ジルコニア焼結体におけるジルコニ
アの結晶構造は、原料粉末の純度、組成や、焼結
時の温度、時間や、焼結後の冷却条件などの製造
条件にも依存する。結晶構造は、焼結段階では、
上述したように正方晶系と立方晶系との共存状態
にあるが、冷却過程では、正方晶系は単斜晶系に
変態し、立方晶系は正方晶系に、さらにその正方
晶系は単斜晶系に変態しようとする。しかるに、
イツトリアが1モル%未満では、製造条件を制御
しても、正方晶系から単斜晶系への変態速度が早
すぎて単斜晶ジルコニアを10モル%以下に抑える
ことができなくなる。また、イツトリアが5モル
%を超えると、立方晶構造が安定になりすぎて冷
却過程における正方晶系への変態が進まなくな
り、立方晶ジルコニアが過剰になつて正方晶ジル
コニアを70モル%以上にし得なくなる。 また、常温においては、イツトリアが1モル%
未満であると、準安定な正方晶構造が不安定にな
つてわずかな外部応力によつても正方晶系から単
斜晶系への結晶構造の変態が起こり、それに伴う
体積膨脹のために、焼結体、ひいては刃物が破壊
するようになる。一方、イツトリアが5モル%を
超えると、こんどは正方晶構造が安定になりすぎ
て単斜晶系への変態が十分に起こらなくなり、応
力誘起変態による強度、靭性、耐摩耗性の向上が
期待できなくなる。 この発明の刃物は、いろいろな方法によつて製
造することができる。次に、その一例を説明す
る。 すなわち、イツトリア粉末を所望の割合で含む
ジルコニア粉末を原料粉末として用い、ラバープ
レス法、金型成型形法などの周知の成形法を用い
て所望の刃物の形状をした成形体を得る。原料粉
末は、800〜1100℃で仮焼しておく。 次に、上記成形体を、20〜100℃/時の速度で
1500〜1650℃まで昇温し、その温度に数時間保持
して焼結した後、20〜180℃/時の速度で800℃程
度まで冷却し、さらに炉冷する。 このようにして得た、所望の刃物の形状をした
ジルコニア焼結体を研磨し、さらにホーニング加
工やラツピング加工によつて刃立をし、刃物とす
る。 上記において、刃物の種類によつては、原料粉
末から薄いシートを成形し、所望の刃物の形状に
打ち抜いて焼結するようにしてもよい。また、成
形体を1300〜1550℃で焼成した後、500〜3000
Kg/cm2の圧力下に1200〜1550℃で焼結する、いわ
ゆる熱間静水圧加圧焼結法(HIP法)を使用する
こともできる。 以下、実施例に基いてこの発明をさらに詳細に
説明する。 実施例 表に示すNo.1〜10のジルコニア焼結体を製造す
るため、純度が99.9%であるジルコニア粉末と、
純度が99.5%であるイツトリア粉末とをイツトリ
アの量が表に示す値になるように混合し、次いで
これを100℃/時の速度で900℃まで加熱し、その
温度に3時間保持して仮焼し、さらにウレタンを
内張りしたボールミルで粉砕し、かかる工程をも
う1回繰り返して、平均粒子径が0.07μmの原料
粉末を得た。 次に、上記原料粉末をラバープレス法を用いて
成形し、板状の成形体を得た。成形圧力は、1000
Kg/cm2とした。 次に、上記成形体を加熱炉に入れ、900℃まで
は50℃/時の速度で、それから上は30℃/時の速
度で昇温し、表に示す条件で焼結し、さらに冷却
して10種類のジルコニア焼結体を得た。 次に、上記焼結体について、正方晶ジルコニア
の量と、立方晶ジルコニアの量と、単斜晶ジルコ
ニアの量と、平均結晶粒子径と、気孔率とを求め
た。平均結晶粒子径は、後述する曲げ試験後の破
断面を走査型電子顕微鏡で観察することによつて
求めた。測定結果を表に示す。 次に、上記焼結体について、曲げ強度と破壊靭
性を測定した。曲げ強度は、JIS R1601によつ
た。また、破壊靭性の測定はMI法(微小圧子圧
入法)によつた。この方法は、焼結体の表面に荷
重20Kgでビツカース圧痕を入れ、そのとき発生す
る亀裂の長さを測定し、新原の式から計算により
求めるものである。測定結果を表に示す。 次に、上記焼結体を使用して刃物を作り、刃先
の欠けと、切れ味と、切れ味の持続性と、耐蝕性
と、熱安定性と、被切断物の付着性を測定した。 すなわち、焼結体を幅20mm、長さ40mm、厚さ
0.3mmに切り出し、#600〜#300までの粗さのダ
イヤモンド砥石で20゜の刃先角をもつ刃を付け、
刃物とした。しかして、刃先の欠けは、刃先(n
数=5)を光学顕微鏡で観察し、欠けの長さの最
大値の並均値Lと、新さの最大値の平均値Dとを
測定することによつた求めた。また、切れ味は、
上記刃物で、100m/分の速度で走行している、
厚み14.5μmのポリエステルフイルムを切断し、
100m切断後における切断面の凹凸の大きさ(切
断粗さ)と、刃の欠けの状態から、よい順に◎、
〇、△、×印でランク付することによつて評価し
た。さらに、切れ味の持続性は、刃物業界でよく
行われているように、上記焼結体を使用して刃長
40mm、厚み2.5mm、刃先角60゜のはさみを作り、包
装用ポリプロピレンバンドを切断し、ガーゼが切
れなくなるまでの切断回数で評価した。また、耐
蝕性は、上記焼結体を、20mm角で、厚さが3mm、
刃先角が60゜の刃物に加工し、これを蒸気滅菌器
に入れて120℃、1.2気圧の下に保持し、刃先から
5μm付近に刃先とほぼ平行に延びる亀裂ができる
までの時間として評価した。さらに、熱安定性
は、焼結体を300℃で加熱した後の曲げ強度が、
当初の値の50%になるまでの時間として評価し
た。さらにまた、付着性は、切れ味の評価に使用
したのと同じ刃物で走行中の低密度ポリエチレン
フイルムを切断し、500m切断後におけるフイル
ムの付着状態から、付着が少ない順に◎、〇、
△、×印でランク付することによつて評価した。
測定結果を表に示す。
【表】
【表】 上表から、正方晶ジルコニアを少なくとも70モ
ル%含み、単斜晶ジルコニアを10モル%以下の範
囲で含み、立方晶ジルコニアを30モル%を超えな
い範囲で含み、安定化剤たるイツトリアを1〜5
モル%の範囲で含み、平均結晶粒子径が0.2〜
1μmの範囲にあり、理論密度と実際の密度とから
算出した気孔率が3%以下であるジルコニア焼結
体を使用したもの、すなわちNo.1、3、5および
9のものは、これらのいずれかひとつの条件を欠
いている他のものにくらべて、曲げ強度、破壊靭
性、欠け、切れ味、切れ味の持続性、耐蝕性、熱
安定性および付着性の総合特性において大変優れ
た刃物であることがわかる。 発明の効果 この発明の刃物は、正方晶ジルコニアを少なく
とも70モル%含み、単斜晶ジルコニアを10モル%
以下の範囲で含み、立方晶ジルコニアを30モル%
を超えない範囲で含み、安定化剤たるイツトリア
を1〜5モル%の範囲で含み、平均結晶粒子径が
0.2〜1μmの範囲にあり、理論密度と実際の密度
とから算出した気孔率が3%以下であるジルコニ
ア焼結体をその構成材料として使用したものであ
るからして、実施例に示したように、強度、靭
性、耐摩耗性などの機械的特性に優れ、初期の切
れ味が大変高いばかりか、その高い切れ味を長く
保ち続けることができる。また、耐熱性や高温使
用時の耐蝕性に大変優れている。さらに、被切断
物が仮に付着しても容易に除去、清浄化すること
ができる。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 ジルコニア焼結体からなる工業用または民生
    用刃物であつて、かつ、上記ジルコニア焼結体
    は、 a 正方晶系の結晶構造をもつジルコニアを少な
    くとも70モル%含み、 b 単斜晶系の結晶構造をもつジルコニアを10モ
    ル%以下の範囲で含み、 c 立方晶系の結晶構造をもつジルコニアを30モ
    ル%を超えない範囲で含み、 d 安定化剤たるイツトリアを1〜5モル%の範
    囲で含み、 e 平均結晶粒子径が0.2〜1μmの範囲にあり、 f 理論密度と実際の密度とから算出した気孔率
    が3%以下である、 ことを特徴とする刃物。 2 気孔率が1%以下であることを特徴とする特
    許請求の範囲第1項に記載の刃物。
JP56167773A 1981-10-20 1981-10-20 刃物 Granted JPS5871095A (ja)

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