JPH0212242Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、内燃機関における動弁装置に関す
る。

（従来技術） 車両用内燃機関における動弁装置にあつては往
復動及び稼動する部分の重量軽減は、慣性マツス
を少にしてバルブを閉弁方向に付勢するバネの不
必要な荷重の過大化を防ぐ意味で、基本的に望ま
しいことである。

そこで最近、重量軽減を図つた動弁装置とし
て、カムをバルブ直上に位置させて、カムの回転
運動をバルブにほぼ直接的に伝達させるOHC式
（頭上カム軸式）動弁装置が、機械加工の高精度
化が可であること、そしてエンジンの高速回転
化、高性能化につれて反応性のよいシンプル構造
であることから特に普及する傾向にある。

このOHC式動弁装置の一例を第１図に基づい
て説明すると、シリンダヘツド１に固定されたバ
ルブガイド２にバルブ３のステムが貫挿され、そ
の頭上にカム４が回動自在に配設され、そしてそ
の下方のシリンダヘツド１の部分に形成してある
凹穴部５内にバネ６が位置し、このバネ６により
カム４に向けて閉弁方向に弾発付勢されたバルブ
リテーナ７が、バルブ３の頭部に割テーパ体８を
介して取付けられている。しかもバルブ３の上部
に天井付円筒形状のバルブリフタ９が嵌まり、バ
ルブ３頂端とバルブリフタ９の天井面が結合した
状態でバルブリフタ９が凹穴部５上部の丸孔部５
ａに摺動自在に嵌つている。さらに閉弁状態にお
いてカム４がバルブリフタ９に接触しない間隙す
なわちバルブクリアランスを0.2mm程度に保つた
め、バルブリフタ９の天井面に調整板１０が嵌合
した形で取付けられている。

この調整板１０の取付は、バルブリフタ９等の
加工精度のバラツキ、位置による撓み誤差、摩耗
等を考慮して選択嵌合する必要があるが、１室４
バルブ等のダブルOHCエンジンにあつては、ス
ペース小なる中での取付作業は困難であり、加え
てバルブ傾斜によるバルブフエース部の干渉から
チエーン掛け構成で取替えねばならない実情にあ
る。さらに調整板１０を設けても依然としてシリ
ンダヘツド１とバルブ３のステムの熱膨張差分だ
けはバルブ３の伸びが生じて、閉弁状態でバルブ
リフタ９がカム４の基円部に当接してバルブ３の
フエース部が弁座１１から離れてガス漏れのおそ
れがあるという問題があつた。

またバルブクリアランスを零設定する手段に、
いわゆる油圧タペツト方式なるものもあるが、こ
れはOHC式エンジンではそれを設けるスペース
がない点から適用しえないものである。

すなわち、従来のOHC式エンジンでは、バル
ブクリアランスを一定にかつ微小に設定すること
は望まれるが、軽量化、コンパクト化の条件下で
はうまい手段が見出されていなかつた。

（考案の目的） 本考案は上記問題を解決するためのものであ
り、バルブクリアランスを容易に一定にかつ微小
に設定しうる動弁装置を提供することを目的とす
る。

（考案の構成） かかる目的を達成するため、本考案の内燃機関
の動弁装置は、シリンダヘツドに固定したバルブ
リフタガイドの内周面に摺接して案内されるバル
ブリフタを備えた内燃機関の動弁装置において、
前記バルブリフタガイドの内周面にバルブリフタ
ガイドの縦方向に溝を設けると共にバルブリフタ
ガイドの下部に位置し前記溝を設けた内周面以外
の部分に段部を形成し、一方前記バルブリフタの
下端に前記バルブリフタガイドの溝に沿つて挿入
可能でかつ前記バルブリフタガイドの段部に係合
する鍔部を形成し、前記バルブリフタガイドの溝
に嵌入しバルブリフタガイドの内周面と面一にな
るスペーサを設けたものである。

（実施例） 以下、本考案の一実施例を図に従つて説明す
る。

動弁装置を示す第２図および第３図において、
シリンダヘツド１２に装着されたバルブガイド１
３にバルブ１４のステム部が摺動自在に貫挿され
ており、その頭上にカム１５が回転自在に配設さ
れ、カム１５下方のシリンダヘツド１２部分に凹
穴部１６が形成されている。凹穴部１６の上壁面
は円周面に高精度加工されており、この部分に円
筒状のバルブリフタガイド１７が、焼き嵌めか冷
し嵌めかのいずれかによる温度差嵌めにより圧入
セツトされ、外周端部が例えばビーム溶接により
シリンダヘツド１２に必要強度で一体化固定され
ている。１８はビーム溶接部を示す。

このバルブリフタガイド１７は鋳造品であつ
て、その鋳造時に下部に円弧状の一対の当金１９
を対向して円周面に臨んで鋳ぐるみ、当金１９を
平面焼入研磨等して当金１９を含めた下側に環状
段部２０を形成している。しかも第４図に示すよ
うに、バルブリフタガイド１７の内周面には、バ
ルブリフタ２１の一対の鍔部２２を滑合内挿させ
て案内する一対の溝２３が、一対の当金１９間の
空隙部から上方に延びて対向した位置に形成され
ている。

天井付円筒状のバルブリフタ２１は鋳造品であ
つて、その鋳造時に、下端周縁部の周方向に延び
る鍔部２２の上面に当金２４を鋳ぐるみ、当金２
４の表面を耐摩耗可のように平面研削加工してな
るものである。このバルブリフタ２１は、その一
対の鍔部２２をバルブリフタガイド１７の対応す
る溝２３に滑合内挿させてリフタガイド１７内に
挿入し、そして環状段部２０に鍔部２２が位置し
たときに、バルブリフタ２１を軸心周りに90゜回
転させることにより、バルブリフタ２１に内装し
たバルブリテーナ２５をカム１５に向けて弾発付
勢するバネ２６の弾発力を受けて、鍔部２２の当
金２４が環状段部２０の当金１９に圧接した状態
で係止される。しかもバルブリフタガイド１７の
各溝２３内に、バルブリフタガイド１７の内周面
と面一になる円弧状に湾曲したスペーサ２７を冷
し嵌め圧入することにより、バルブリフタ２１の
離脱防止が図られている。

このスペーサ２７は、合成樹脂あるいは金属製
であることができ、バルブリフタ２１の摺動面と
もなりうるものであり、またバルブリフタガイド
１７の下端に至る長さのものは、バルブリフタ２
１の廻り止め機能を持つことができる。

なおバルブリフタ２１のバルブリフタガイド１
７への組付時に、カム１５の作動を伝達しやすく
するため、バルブリフタ２１の頂部は、バルブリ
フタガイド１７の上面より突出した高さとする。
また鍔部２２の大きさは、大きくとるほどバネ２
６の弾発力との関係で受圧荷重を極めて小とし耐
久信頼性を向上させるため、大きくするのが好ま
しい。２１ａはピン穴で押圧状態でバルブリフタ
２１を回転させる工具を位置決めさせるものであ
る。

バルブリテーナ２５は、その形状が変化してバ
ルブ１４の熱膨張による延びを吸収するためのも
のであり、第５図に示すように弾性が増すよう円
盤状の板バネの外周部に複数の切欠２５ａを形成
して、原の形状に復元可能な形状とされており、
バルブ１４の頂部に取付けられた割テーパ体２８
をその外形形状に合わせた内面を持つ中央孔に嵌
挿係止させ、さらにその周縁部をバルブリフタ２
１の内頂面から一段上つた段部２１ｂに当接さ
せ、その周縁部にリング２９を介してバネ２６の
弾発力を受けうるようになつている。３０は、バ
ルブリテーナ２５上面とバルブリフタガイド１７
の天井部との間の空隙に介装されたおどり防止用
の軽荷重でセツトされた樹脂弾性体シートであ
る。

上述の構成からなる動弁装置では、回転するカ
ム１５のノーズ部がバルブリフタ２１の頂面に当
接すると、バルブリフタ２１はバネ２６の弾発力
に抗して押下げられることになり、これとともに
バルブ１４が弁座３１から離間する。カム１５が
さらに回転してノーズ部がバルブリフタ２１の頂
面から離反するのに従つて、バルブリフタ２１は
バネ２６の弾発力によつて上動することになり、
これとともにバルブ１４も上動し、上死点近傍に
達したところでバルブ１４のフエースが弁座３１
に当接し、バルブ１４の上動は停止することにな
る。このときバルブリフタ２１の鍔部２２の当金
２４がバルブリフタガイド１７の段部２０の当金
１９に当り、所定のバルブクリアランスが維持さ
れる。なお当金１９，２４は高荷重受圧可かつ耐
摩性の大きい金属材料からなり研磨仕上げされて
なるものであるので、両者は当接時に密接状態に
保たれる。

そして内燃機関の運転により燃焼室の高温によ
りバルブ１４は熱膨張によつてその軸方向に若干
延伸しても、その延び量をバルブリテーナ２５自
体の撓み変形により吸収するので、バルブクリア
ランスは常に一定に維持される。従つて正常な内
燃機関の運転が確保される。

なお、上記実施例にあつては、バルブリフタ２
１における鍔部２２は２ケ所構成とされている
が、これは周方向に間隔あけて３ケ所でもよく、
特に実施例のものに限定されない。この場合バル
ブリフタガイド１７の溝２３は、バルブリフタ２
１の鍔部２２の数、位置に合わせて設ける。

なお、本例では製作しやすいようにバルブリフ
タガイド１７をシリンダヘツド１２部分に組付
後、ビーム溶接して一体化する方法を示している
が、シリンダヘツド１２にバルブリフタガイド１
７を組付けることなく、若干加工は複雑になるが
バルブリフタガイド１７の内面形状に合わせた形
状にシリンダヘツド１２の凹穴部１６の上部円周
壁面を形成しておき、バルブリフタ２１をこの凹
穴部１６の上部内に直接摺動自在に嵌挿させるよ
うにしてもよい。

又、バルブリフタガイド１７の環状段部２０と
バルブリフタ２１の鍔部２２との間の当接部が摩
耗し、バルブクリアランスがなくなつた場合は、
スペーサ２７を取り外して、バルブリフタ２１を
取替える。

これにより、バルブクリアランスは、所定のク
リアランスになる。

（考案の効果） 以上詳述した通り本考案によれば、バルブリフ
タの鍔部とバルブリフタガイドの段部との当接に
より、バルブクリアランスを得るようにしたの
で、熱膨脹に影響されることなく常に一定のバル
ブクリアランスを得ることができ、ガス漏れする
ことはない。

そして、バルブリフタは、バルブリフタガイド
に設けた溝にバルブリフタの鍔部を嵌合して挿入
し、バルブリフタを回わしてバルブリフタの鍔部
とバルブリフタガイドの段部とを係合し、溝部に
スペーサを挿入するようにして組立てるようにし
たので、組立て分解が容易になる。

そのため、バルブリフタの鍔部が摩耗したとき
は、バルブリフタの取替えが容易になり、その作
業性を向上すると共に、バルブクリアランスは、
バルブリフタを取替えるだけでその調整が不要に
なり、バルブクリアランスの調整・維持を飛躍的
に向上することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のOHC式動弁装置を示す断面図、
第２図は本考案の一実施例に係るOHC式動弁装
置を示す断面図、第３図は第２図のもののバルブ
リフタガイドとこれに嵌合させているバルブリフ
タの取付状態を示す平面図、第４図はバルブリフ
タガイド、バルブリフタおよびスペーサを分解し
た状態を示す斜視図、第５図はバルブリテーナを
示す平面図である。 １２……シリンダヘツド、１４……バルブ、１
５……カム、１６……凹穴部、１７……バルブリ
フタガイド、１９……当金、２０……環状段部、
２１……バルブリフタ、２２……鍔部、２３……
溝、２４……当金、２５……バルブリテーナ、２
６……バネ、２７……スペーサ、３１……弁座。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダヘツドに固定したバルブリフタガイド
   の内周面に摺接して案内されるバルブリフタを備
   えた内燃機関の動弁装置において、前記バルブリ
   フタガイドの内周面にバルブリフタガイドの縦方
   向に溝を設けると共にバルブリフタガイドの下部
   に位置し前記溝を設けた内周面以外の部分に段部
   を形成し、一方前記バルブリフタの下端に前記バ
   ルブリフタガイドの溝に沿つて挿入可能でかつ前
   記バルブリフタガイドの段部に係合する鍔部を形
   成し、前記バルブリフタガイドの溝に嵌入しバル
   ブリフタガイドの内周面と面一になるスペーサを
   設けたことを特徴とする内燃機関の動弁装置。