JPH012644A - 眼科用インプラントとその製造方法 - Google Patents

眼科用インプラントとその製造方法

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JPH012644A
JPH012644A JP63-87088A JP8708888A JPH012644A JP H012644 A JPH012644 A JP H012644A JP 8708888 A JP8708888 A JP 8708888A JP H012644 A JPH012644 A JP H012644A
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hema
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pmma
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ユージーン ピー.ゴールドベルグ
デイヴィッド シー.オズボーン
ジー.スデシュ クマール
ジェフリー エー.ラルソン
ジョン ダブリュー.シーツ
ジェイムズ ダブリュー.バーンズ
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ユニヴァーシティ オブ フロリダ
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Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、眼科用インプラントとその製造方法に関する
ものである。
従来の技術 研究の結果によると、眼内レンズ(IOL)などの眼科
用インプラントを外科手術によって移植する場合には、
このインプラントと内皮が接触しないように十分注意し
ないと角膜内皮組織がかなり失われてしまうことがわか
っている。たいていの眼科用インプラントは、親水性の
ポリメチルメタクリレ−) (PMMA)ポリマーで構
成されている。なぜなら、このポリマーは、光学的特性
が優れており、生物分解に対する抵抗力があるからであ
る。しかし、PMMAは偶然に接触しただけでも表面が
内皮細胞に付着し、このPMMA表面を内皮細胞から剥
がすとこのPMMA表面に付着して内皮細胞が引き裂か
れる。他の眼球組織、例えば虹彩との似たような付着作
用によってもやはり組織に好ましくないダメージが与え
られる。眼科用インプラントとして現在使用されている
、または提案されてきた他の親水性ポリマー(例えば、
ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネ
ート、ポリシロキサン)も眼球組織に付着するので組織
はダメージを受ける。
PMMA表面が傷を与えない程度に角膜内皮と短い時間
接触してもこの内皮がかなりのダメージを受ける点がP
MMA製のIOLに固有の重大な欠点であることが従来
の文献に明記されている。
インプラント表面と内皮の接触に関する問題についての
議論は、例えば1.ボアン(Bourne)他のAm。
J、 Ophthalmol、第81巻、482〜48
5ページ、(1976年)、フォルスター(Forst
or)他のTrans、 Am。
Acad、 Ophthalmol、 Otolary
ngol、 第83巻、0P−195〜0P−203ペ
ージ、(1977年)、カッッ(Katz)他のTra
ns、Am、 Acad、Ophthalmol、 O
tolaryngol、第83巻、0P−2(14〜0
F−212ページ、(1977年)、カラ77 :/ 
(Kaufman)他の5cience第198巻、5
25〜527ページ、(1977年)、シュガー(Su
gar)他のArch。
Ophthalmol、 第96巻、449〜450ペ
ージ、(1978年)に記載されている。
外科手術中にインプラント表面と内皮が全く接触しない
ようにすることは極めて難しいため、PMMA製の眼科
用インプラント表面を改質させて角膜内皮に対する付着
力を小さくすることによってこのインプラント表面が角
膜内皮に与えるダメージを少なくする努力が続けられて
いる。
発明が解決しようとする課題 眼科用インプラント表面と内皮組繊細胞の間の付着力を
小さくするためには、様々な親水性ポリマー溶液、また
は、メチルセルロースやポリビニルピロリドン(カッッ
他の上記文献、および、ナイト(Knight)他のC
hem、 Abs、第92巻、203547 f 。
(1980年)〕などの−時的に可溶性の被覆でインプ
ラント表面を被覆することが行われている。この方法を
用いると一時的にはいくぶんの保護効果が得られるが、
完全に満足のゆくものではないことがわかっている。と
いうのは、このような被覆があると外科手術が難しくな
るだけでなく、この被覆はインプラント表面に十分に付
着せず、移植後にはずれたり劣化したりし、手術中また
は手術の直後に急速に分解して消え去り、手術後に合併
症を引き起こす可能性があるからである。さらに、この
ような被覆の厚さと均一性を制御することは困難である
ヤo ン(Yalon)他は、[:Acta+第XXI
V回国際眼科会議(International Co
ngress of 0phthal+mology)
、ボールヘンキンド(paul Henkind)編、
(1983年)〕PMMA製インブラフィンブランT線
照射によりビニルピロリドンを重合させて保護被覆を形
成することを試みた(ナイト他の上記文献も参照のこと
)。
しかし、この試みは完全に成功したわけではなかった。
というのは、被覆の光学特性や保護特性を制御する問題
がやはり残っていたからである。彼らの方法では処理条
件およびパラメータ(例えばモノマーの濃度、γ線の照
射線量と照射率)が特定されていなかった。得られた被
覆は品質が悪く機械的安定性が一定ではなかった。本発
明の目的は、上記の従来の問題点を解決して、改良され
た表面を有する眼科用インプラント装置を提供すること
である。
課題を解決するための手段 本発明は、ポリメチルメタクリレ−) (PMMA)を
含む材料で構成された眼科用インプラントの表面に、γ
線照射によりN−ビニルピロリドン(NVP) 、NV
Pと2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)
の混合物またはHEMAを重合して、PVPSNVPと
HEMAのコポリマーP (NVP−HEMA)または
PHEMAを化学的にグラフトさせることにより親水性
のある薄い被覆を形成する際の特定の処理条件とパラメ
ータを発見したこと、さらに、ポリプロピレン(PP)
、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリカーボネー
ト(PC)またはシリコーンポリマー(PSi)を含む
材料で構成した眼科用部品の    ゛表面に、γ線照
射による重合でPVPSP (NVP−HEMA)また
はPHEMAがグラフトされた薄い被覆を形成する際の
別の特定の処理条件とパラメータを発見したことに基づ
いている。
この被覆により、インプラント表面の親水性が大きくな
るとともに、敏感な眼球組織である例えば角膜内皮や虹
彩とこの表面との接着力が最小になる。この結果、イン
プラント表面と眼球組織が接触することによって引き起
こされる組織のダメージと手術後の併発症の発生の可能
性が最小になる。本発明の改良された方法を用いて製造
した被覆は薄く、しかも再現性よく−様な厚さにするこ
とができる。さらに、この被覆はインプラント表面に化
学的に結合しているため、従来の方法で製造した被覆と
比べてはるかに耐久性があり、はずれにくく、手術中ま
たは手術後に分解したり変質したすすることがより少な
い。
本発明によるN−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒ
ドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはNV
PとHEMAの混合物のγ線照射によるグラフト重合に
よってポリメチルメタクリレ−)  (PMMA)で構
成される眼科用インプラント材料の表面をPVPSPH
EMAまたはP (NVP−HEMA)のグラフトポリ
マーで改質する方法は、上記のグラフト重合を以下の条
件下で水溶液中で行うことを特徴としている: a)モノマーの濃度を約0.5〜約50重量%にし、b
)r線の全照射線量を約0.01〜約0.50メガラド
にし、 c)r線の照射率を約10〜約2.500ラド/分にし
、 d)溶液中の上記ポリマーの分子量を約250.000
〜約5.000.000に維持する。
さらに、上記方法は、以下の一つ以上の条件下で行うこ
ともできる: e)遊離した酸素を上記のグラフト重合用水溶液から実
質的に除去する、 f)上記PVPまたはP (NVP−HEMA)のグラ
フトポリマー被覆層の厚さを約100Å〜100μmに
維持する、 g)上記のグラフト重合用水溶液中にフリーラジカル捕
捉剤を含有させる、 h)上記のグラフト重合用水溶液中に上記PMMAまた
はその他ポリマーの基材表面の膨潤溶媒を含有させる。
PP、PVDFSPCまたはPSiで構成される眼科用
インプラントの表面をγ線照射によりNVPSNVPと
HEMAの混合物、または、HEMAをグラフト重合さ
せて得られる最適なPVPまたはP (NVP−HEM
AIのグラフトポリマーによる眼科用インプラントの改
質方法も、PMMAに対する上記の処理パラメータを特
定の方法で組み合わせて実行することができる。さらに
、遊離酸素を上記の重合用溶液から除去するという条件
下で実行して眼科用インプラント表面を改質するのも好
ましい。
本発明には、上記の方法に従って製造された眼科用イン
プラント材料や眼科用インプラントも含まれる。
作用 本発明は、NVP、HEMA、または、NVP−HEM
Aをγ線照射によるグラフト重合によって形成さるPM
MAやこれ以外の眼球材料用ポリマーの表面上のPVP
を含む改質表面の性質および機能が、モノマーの濃度、
溶解度、厚さ、機械的安定性および耐摩耗安定性、親水
性、組織のダメージなどの多数の処理条件とパラメータ
を制御することにより、大きな差をもつようになるとい
う発見に基づいている。
ヤロン他(上記文献)とナイト他(上記文献)は、N−
ビニルピロリドン(NVP) と2−ヒドロキシエチル
メタクリレート(HEMA)にγ線を照射することによ
りPMMA上に被覆を形成した場合に、この被覆の(摩
耗に対する)動的な角膜保護特性がよくないことを開示
している。ポリビニルアルコール(PVA)からなる不
溶性被覆は、ナイト達(上記文献)によって1OLに最
適であるとみなされていた。そこでPVAで被覆された
IOLが商業ベースでの開発が試みられたが、臨床での
結果は満足のゆくものではなかった二上記の文献に記載
された方法ではγ線により重合させて表面を改質させる
実験をモノマーの濃度、溶媒、照射線量、照射率を特定
せずに実施したため、品質が悪く直ちに摩耗する被覆し
か得られなかった。有効で耐久性のあるPVPまたはP
HEMA被覆をPMMA製のIOLの表面に形成する条
件は従来の文献には記載されていない。ナイト達やヤロ
ン達の文献のほか、γ線によるグラフト重合について記
載のある過去30年の文献には、眼科用インプラントの
表面に有効な被覆を形成するための複雑な下記のような
要件を達成するための処理条件は記載されていない: a)薄くて耐久性があり、光学的に透明であり、均質な
眼科用グラフト化被覆であること。一般に文献に記載さ
れている条件で行うと、γ線の照射線量が大きいため(
1メガラドより大)非水溶性溶媒を用いると、一般に基
板が変形して劣化し、厚く、不透明で、−様ではない被
覆が得られる。
(例えば、シャピロ(Chapiro) の「ポリマー
系における放射’a化学(Radiation Che
mistry of Polyme、ricSyste
ms) 、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(Joh
n Wiley and 5ons、  Inc、) 
 社、ニューヨーク、1962年と、ヘングライン(H
eng le in)他のAngew。
Chem、  第15巻、461ページ、(1958年
)を参照のこと)。
b)目の中で長期にわたって生体適合性があること。(
例えば、ウサギの目のインプラントにおいて少なくとも
1年にわたって満足のゆく挙動を示すこと)。
C)水または水中の気泡に対する接触角が小さいこと(
湿潤性がよく、接触角の値が30°よりも小さいこと)
d)組織に対する付着性がないこと(角膜に対する付着
力が150mg/cut未満であること)。
e)角膜にダメージを与えないこと(イン・ビトロでの
接触テストでダメージを受けるものが約20%未満であ
ること)。
f)ESCAまたはFT−I R分析によりグラフト化
被覆を測定することが可能であること。
g)濡れ状態で(動的)摺動摩擦テストにより調べた摩
耗に対する抵抗力(接触角)がグラフト化被覆を行う前
後で変化がないこと。
h)急速に水和すること。すなわち、水中に浸漬した場
合の乾燥状態から濡れた潤滑状態への変化が早い(5分
未満)こと。
ヤロン他(上記文献)は、角膜のダメージをイン・ビト
ロで測定する方法を開示している。PMMAに対する結
果がこの方法を説明するのに使用されている。モノマー
の濃度が高いほどPVP被覆が細胞に与えるダメージを
小さくすることが明らかにされたが、実験条件(すなわ
ち、放射線の照射線量、照射率など)は記載されておら
ず、方法と生成物の間の臨界関係も示されていない。
γ線照射でグラフト重合をしてPVP、P (NVP−
HEMA)またはPHEMAを形成することにより改質
させた表面を有する有効な眼科用インプラントポリマー
を製造するのに必要な本発明の改良された処理条件とパ
ラメータには、モノマーの濃度(%)、T線の照射線量
、照射率、重合前に基板内にモノマーが侵入する時間ま
たは膨潤時間、脱酸素(脱気)操作が含まれる。他の最
適処理条件の中には、触媒、フリーラジカル捕捉剤、P
MMA膨潤溶媒、温度が含まれる。ポリマー溶液の分子
量とその分布、転化率(%)、残留モノマーの量、グラ
フトしたポリマーの厚さ、表面特性などは、処理条件が
変わるとともに大きく変化する可能性のある処理結果で
ある。例えば、照射線量0.1メガラドを照射し、かつ
、10%のモノマーを用いた場合でも、分子量を大きく
するには照射率が小さい(重合が遅い)ことが好ましい
ため、大きな照射率ではなくて小さな照射率にするとP
MMA上のPVPに対する表面の改質状態は異なるであ
ろう。同様に、脱ガスにより酸素が除去された反応媒体
では、はるかに低い照射率で優れたグラフト化が行なえ
る。銅または鉄の塩、または、有機還元剤(例えばアス
コルビン酸)などのフリーラジカル捕捉剤が存在してい
ると、他の処理パラメータが大きな影響を受ける。すな
わち、一般にはモノマーの濃度が大きいときにポリマー
溶液の分子量が小さくなり、溶液のゲル化が防止される
上記の各処理条件とパラメータは、本発明の表面改質さ
れた眼球部品用ポリマーを得るのに特に好ましい特定の
組み合わせを実現するために、以下の範囲内で変化させ
ることができる:a)モノマーの濃度:モノマーの濃度
を大きくするとグラフト用溶液中のポリマーの分子量が
増加し、接触角(C,A、 )が小さくなる。すなわち
、表面がより親水性になる。例えば、NVPの濃度が約
3〜15%の範囲のときには、照射線量が0.1メガラ
ドで、照射率が309ラド/分の場合には、PVPの粘
性率が大きくなって分子量(MV)が560.000か
ら2.700.000に増加し、グラフトしたPMMA
の接触角は29°から21°へと小さくなる。
しかし、この効果は照射率と全照射線量に敏感である。
例えば、NVPの濃度が1〜10%で照射率が64ラド
/分と小さくなった場合には、分子量は4、000.0
00から4.590.000に増加し、接触角は49゜
から18°へと小さくなる。
一般に、モノマーの濃度を他のパラメータに応じて0.
5〜50%にすることが好ましい。例えばモノマーの濃
度が0.5%よりも小さいと照射率を低くしても高くし
てもグラフトは不十分であり、接触角を30〜40°よ
りも小さくすることはできない。
モノマーの濃度が20〜30%よりも大きいと、ゲル化
させずにポリマー溶液を効果的にグラフトさせるには照
射量を小さくし、かつ、フリーラジカル捕捉剤を用いる
必要がある。モノマーの濃度を50%よりも大きくする
ことも可能であるがそれは好ましくない。というのは、
この場合にはフリーラジカル捕捉剤の濃度を大きくする
必要があるが、フリーラジカル捕捉剤を使用することに
よってポリマーの分子量が低(なり、モノマーの転化率
がかなり小さくなるからである。PHEMA被覆を生成
させるためには、HEMAの濃度を0.5〜10重量%
にするだけで十分である。
b)照射線量ニー酸に、T線の全照射線量を大きくする
と、ポリマーの分子量が大きくなり接触角は小さくなる
。しかし、照射線量をより大きくし、照射率をより小さ
くし、モノマーの濃度をより大きくすると、反応媒体は
極めて粘性が大きくなってゲルを形成する。このため、
”洗浄で除去することが非常に難しいという実用上の大
きな限界が存在している(例えば、全照射線量が0.2
5メガラドよりも大きく、NVPの濃度が10%で、照
射率が309ラド/分のとき)。
C)照射率:照射率を小さくするとPVP溶液の分子量
が大きくなる。例えば、NVPの濃度が10%で全照射
線量が0.1メガラドのときに照射率を1235ラド/
分から49ラド/分に減らすと、分子量は1.150.
000から5.090.000になる。接触角もやはり
照射率を小さくすると小さくなる。すなわち、値が31
°から15°になる。
d)ポリマー溶液の分子量:分子量Mvを大きくすると
一般に接触角の小さいグラフトが生成する。しかし、分
子量M、が5.000.000よりも大きいポリマーま
たはゲルは洗浄の問題があるために一般にグラフトさせ
るのには適していない。
e)脱ガス:吸引および/または不活性ガス(アルゴン
での掃気)によりグラフト用溶液から酸素を除去するこ
とが重要である。このとき、全照射線量を小さくする必
要がある(実際のグラフトは全照射線量の値を0.1メ
ガラド未満にして行う)。脱ガスは、PVPの分子量M
vとモノマーの転化率(%)に大きな影響がある。例え
ば、照射線量が0.05メガラドでNVPの濃度が10
%のときには、脱酸素操作を行うことによりPP上にP
VPがうまくグラフトする(接触角15°)。脱ガス操
作を行わないと、このような条件下ではグラフトが起こ
らない。基板となるポリマーがPP。
PVDFまたはPSlのときにグラフトにより表面の親
水性を変化させるのには脱酸素操作を行うことが極めて
重要な役割を演じる。酸素の存在下でこのような材料を
基板として用いる場合にはグラフト重合が不完全にしか
起こらないことが知られている。また、脱酸素操作を行
うことはPMMA基板やPC基板に対しても好ましい。
というのは、酸素の存在下でこれらポリマーをグラフト
させる場合と比較するとはるかに少ない照射線量(0,
01〜0.05メガラド)で効果があるからである。
f)グラフトの厚さ:Nさが100〜200人未満のグ
ラフト表面は非付着性かつ親水性ではあり、有用である
が、このグラフト表面は、より厚い被覆と比較すると、
組織との接触による外傷を減らすことに関して機械的な
「柔らかさ」、すなわちゲルの程度が不足する可能性が
ある。厚さが約300〜500A(すなわち0.03〜
0.05 p m)よりも厚く50μm以上になるよう
なグラフト化被覆は、滑らかで、均質であり、光学面が
光学的に透明で、迅速に水和するのであれば様々に応用
するのにより好ましい。
膨潤溶媒を使用せず、照射前に基板をモノマーに長くは
接触させない場合の、好ましい処理条件のもとての所望
のインプラント特性を示すグラフト表面の厚さは約0.
1〜5μmである。しかし、酢酸エチルなどの膨潤剤を
用いると、PMMA上にグラフトしたポリマーを100
μm以上の厚さにすることができる。A、C0角、p、
c、嚢(bag)、溝(sulcus)、または、虹彩
と接触するIOLの触覚繊維(haptics)に対し
ては、より厚い20〜100μmの「スポンジ状」の被
覆が好ましい。
g)フリーラジカル捕捉剤ニ一般には還元剤であるCu
” 、Fe”、アスコルビン酸などを利用するフリーラ
ジカル捕捉剤は、溶液中でのラジカル重合を抑制するこ
とが知られている。従って、(特に、T線の照射線量が
大きく、照射率が大きく、モノマーの濃度が大きいとき
に〉グラフト中に溶液がゲル化するのを遅らせるのに都
合がよい。しかし、実際のグラフト条件では、フリーラ
ジカル捕捉剤を用いると、分子量が小さく、反応しなか
ったモノマーの濃度が大きく、分子量の分布が大きくな
る。最大限の生体適合性が厳密に要求される場所には金
属塩を用いることは好ましくない。
好ましいグラフト条件にする際には、大抵の場合、ラジ
カル捕捉剤は使用されない。しかし、ILOをPVP、
P (NVP−HEMA)またはPHEMAのグラフト
で被覆するに好ましい条件はアスコルビン酸を用いてグ
ラフト用ポリマー溶液の粘性が大きくなってゲル化する
のを抑制することである。この場合、モノマーの濃度を
大きくする(50%まで)。ここで膨潤溶媒(0,5〜
5%)として酢酸エチルを用いるとより厚いグラフト被
覆が得られる。
h)膨潤溶媒ニゲラフト用モノマー水溶液中で基板ポリ
マー用の溶媒を用いると、r線による重合の前と重合中
でのポリマーの膨潤とポリマー内ヘモツマ−の拡散が容
易になる。モノマーが基板内に侵入するとグラフト被覆
が厚くなり、このモノマーと表面の結合が促進される。
NVPなどのモノマーには膨潤性と拡散性がかなりある
が、酢酸エチルなどの溶媒を用いることによりPMMA
に対してこの処理を極めて行いやすくなることがわかっ
ている。
NVPとHE M Aの混合物を使用してP (NVP
−HEMA)のコポリマーからなるグラフト化被覆を形
成するときには、この混合物はこのモノマー混合物の重
量に対してHEMAを約50重量%まで含むことができ
る。しかし、HEMAはゲル化を促進するため、HEM
Aが20〜30%を越える場合にはラジカル捕捉剤を使
用し、かつ、モノマーの濃度を低くしてゲル化を防ぐ必
要がある。
当業者であれば、PVPSP (NVP  HEMA)
またはPHEMAからなる本発明のグラフト化被覆を様
々なイオン性モノマーと共重合させることによって変化
させることができるということは理解できよう。さらに
、親水性のイオン性モノマーの混合物を上記のグラフト
化被覆と共重合させることができる。例えば、ビニルス
ルホン酸、または、アクリル酸、クロトン酸、メタクリ
ル酸などのビニルカルボン酸が関与するグラフト共重合
ではアニオン性の表面改質を行うことができる。
同様に、アミノ基を有するモノマーである例えばビニル
ピリジン、アミノスチレン、アミノアクリレート、また
は、ジメチルアミノエチルメタクリレートやジメチルア
ミノスチレンなどのアミノメタクリレートは、カチオン
性の表面改質を行うことができる。
先に例示した臨界パラメータ、例えばモノマーの全濃度
やポリマーの分子量を維持した状態で、イオン性モノマ
ーの量を全モノマーの20重量%まで使用することがで
きる。
また、当業者であれば、使用しやすいよう、グラフト被
覆を施す眼科用インプラントをPMMA。
PP、PVDF、PCまたはPSi以外の材料を用いて
構成することが考えられよう。さらに、当業者であれば
、このような材料の少なくとも一部をグラフトにより変
化させたポリマー表面にすることによって、インプラン
ト材料としての特性を改善することが考えられよう。
本発明によりグラフトさせて親水性のポリマー表面に変
化させることは眼内レンズ(前眼房、後眼房、水晶体)
に特に好都合であるだけでなく、他の眼科用インプラン
ト、例えば角膜用インレー、人工角膜、上角膜水晶体(
epikeratophakia)部材、緑内障用ドレ
イン、網膜用ステープノ吠強膜用バックルなどに対して
組織の保護性と生体適合性を向上させるのにも極めて大
きな意味がある。
実施例 上記の考察と処理方法に関する多くの研究に基づいて、
眼科用部品の基板となるポリマーに対する好ましい実施
例を例として以下に示す。キーポイントのうちのいくつ
かを以下のようにまとめることができよう。
a)好ましい処理条件には範囲がある。「最良」の処理
条件を選択するにあたっては以下の要因が関与する。す
なわち、基板の分子構造と被覆の厚さの所望の値とが関
係する。一般に、溶液の粘性が極端に大きな値になって
ゲル化するとか、溶媒の応力によりIOLポリマーに亀
裂またひびが発生する条件(例えば、酢酸エチルなどの
PMMAの膨潤溶媒に対して約10%を越える高濃度)
は避けるべきである。以下の4通りの処理条件が、表面
が改良された眼科用インプラントを製造するのに実際上
鏝も適当であろう: (1)モノマー水溶液の濃度5〜20%(好ましくは1
0%)。
照射線量: 0.05〜0.20メガラド(好ましくは
0.10メガラド) 照射率=20〜15.000ラド/分(好ましくくは5
0〜2.000ラド/分)。
接触角:〈30°。
PVP(7)分子量: >250.000゜(2)系か
ら酸素を除去する(吸引または不活性ガスであるアルゴ
ン用いた掃気)ことを除いては(1)と同じ操作を行い
、照射線量:0.旧〜0.15メガラド(好ましくは0
.05メガラド)。NVPの濃度:1〜15%(好まし
くは5〜10%)。一般にこの系は(1)よりも好まし
い。
(3)膨潤溶媒(例えば、PMMAに対する酢酸エチル
)を用い、あとは(1)、(2)と同じにすると、基板
にモノマーがより多く侵入し、グラフトが厚くなる。
(4)モノマーの濃度を太きく L (25〜50%)
、膨潤溶媒として酢酸エチルを5.0%未満用い、照射
線量を0.10〜0.20メガラドにし、照射率を20
〜5.000 ラド7分にし、ラジカル重合抑制剤とし
てアスコルビン酸(0,1〜1.0ミ’1モル)を利用
する。
特別の記載がないかぎりは実施例中の割合はすべて重量
%を表す。
特別の記載がないかぎりは、γ線によるグラフト重合で
得られたすべてのサンプルの接触角の値とそれ以外の表
面特性は、本発明の方法により得られた改良されたグラ
フト表面を室温またはそれよりも高い温度で水または水
−アルコールで洗浄して可溶性残留モノマーとグラフト
しなかったモノマーとを除去したサンプルについてのも
のである。得られたグラフトポリマーは安定であり、長
い期間使用される眼科用インプラントとして耐久性があ
り、水性媒体により分解しない。
実施例1 この実施例は、γ線を照射してグラフトさせることによ
りPVPでPMMAの表面を改質させる際の上記の処理
条件と重合パラメータを変えた結果として生ずる重要な
効果を示すものである。
超音波洗浄器を用いて板状のPMMAサンプルを石鹸溶
液と蒸留水で1回ずつ洗浄する。その後、サンプルに様
々な条件でT線を照射する。T線の照射により表面が変
化したPMMAサンプルを水で数回洗浄した後に評価し
た。
重合したNVPのグラフト用溶液またはゲルを真空中で
凍結乾燥させた。溶液のPVPサンプルの分子量を、粘
性率の測定により(Mv)、または、ゲル透過クロマト
グラフィーにより(M、)評価した。粘性率により分子
量(Mv)を決定するた必、PVPを蒸留水に溶解させ
、細管粘度計を用いて30℃で固有粘性率〔η〕を測定
した。
水滴または水中の気泡の接触角の測定によりPVPがグ
ラフトしたPMMAサンプルを評価した。
極めて親水性のある表面に対しては気泡を用いた方法の
ほうが信頼性が高いと考えられる。気泡法での接触角の
測定に際しては、グラフトしたPMMAを蒸留水中で水
平に保持した。約0.8μβの気泡を形成してテスト面
の下に位置させた。対称性を保証するため気泡の両端の
角度測定した。各サンプルに対して普通は測定を5回行
った。結果を以下の第1表にまとめて示す。
第1表 濃度;10%NVP水溶液 全照射線量:0.1メガラド PVP溶液の粘性率の測定により照射率の効果を評価し
た。上記の結果から、全吸収線量を同じにして照射率を
低下させるとラジカルの形成速度が低下するとともにそ
の割合が少なくなって重合に時間がかかるようになるた
めに分子量が大きくなったことがわかる。この実験にお
ける最小照射率である(コバルト60γ線源から10イ
ンチの距離で〉49ラド/分のときにPVPポリマーの
分子量がMV=5.09 x106と最大になった。
第2表 濃度:10%NVP水溶液 照射率:309ラド/分(”Co線源がら4インチの距
離)*ゲル化したポリマー溶液 第2表には、分子量に対するγ線の全照射線量の効果が
照射率が309ラド/分の場合について示されている。
全照射線量が0.25メガラド以上のときにポリマーが
ゲル化した。この第2表の結果から、照射線量が大きい
とPVPポリマーがゲル化すなわち架橋することがわか
る。
第3表 全照射線量:0.1メガラド 照射率  =309ラド/分 子線の照射時間:5時間24分 上記の結果は、全照射線量と照射率が一定のときのNV
Pモノマーの濃度とPVPの分子量の間の関係を示して
いる。この結果から、NVPの濃度が大きいと分子量の
大きなポリマーが得られることがわかる。照射率が49
ラド/分と低いときに分子量が5.0X10’になるの
と比較すると、照射率が309ラド/分のときにはNV
Pの濃度が15%であってもPVPの分子量が2.7X
10’にしかすぎないことから照射率が重要であること
がわかる。
第4表 濃度:10%NVP 全照射線量=0.1メガラド 第4表の結果からは、親水性のPVPがグラフトするこ
とによってPMMAの接触角が小さくなることと、照射
率を小さくすることによって接触角が小さくなることが
わかる。これは、照射率を小さくするとPVP溶液の分
子量が大きくなることと矛盾しない。
第5表 濃度:10%NVP水溶液 照射率:309ラド/分 *はゲル化したポリマー溶液 上記の結果は、T線照射によってPVPをグラフトさせ
たPMMAの接触角の全照射線量に対する変化を示して
いる。照射率が309ラド/分のときには、全照射線量
が0.05メガラドを越えると接触角はほとんど変化し
なかった。
第6表 全照射線量=0.1メガラド 照射率二309ラド/分 接触角を測定することにより、r線照射にょってPVP
を表面にグラフトさせたPMMAに対するモノマーの濃
度変化の効果を評価した。NVPの濃度が3%で全照射
線量が“0.1メガラドのときでも、グラフトしていな
いPMMAと比較すると親水性が増加した。接触角はモ
ノマーの濃度が3%を越えるとわずかに小さくなった。
第7表 全照射線量:0.1メガラド 照射率  二64ラド/分 上記の結果は、照射率が64ラド/分のときのNVPモ
ノマーの濃度とPVPの分子量の間の関係を示している
PVPの分子量は、NVPモノマーの濃度が大きくなる
と著しく大きくなる。
第8表 全照射線量;0,1メガラド 照射率:64ラド/分 照射率64ラド/分でPVPをグラフトさせた後のPM
MAの接触角を様々な濃度のNVP溶液について評価し
た。この結果から、PVPがグラフトしたPMMAの接
触角はNVPモノマーの濃度が大きくなるにつれて小さ
くなることがわかる。
照射率が64ラド/分でのこの結果は、照射率が309
ラド/分の場合の結果(第6表)と傾向が似ている。モ
ノマーの濃度が10%のときの親水性は、照射率が低い
ほうが優れている(接触角が18°と25°)。
親水性のあるモノマーのグラフト重合には、極性有機溶
媒または極性水性溶媒の混合物を用いるとよい。このよ
うな有機溶媒の典型例としては、メタノール、エチレン
、グリコール、ポリエチレングリコール、ジオキサンな
どのアルコールやエーテルを挙げることができる。しか
し、これら有機溶媒がラジカル捕捉剤またはラジカル連
鎖移動剤として機能するときには、濃度を50%未満に
して使用するか、または、濃度の大きな(すなわち25
%よりも大きな)親水性モノマーとともに使用する必要
がある。例えば、メタノールにはラジカル捕捉剤として
の機能が幾分かあるが、水とメタノールの混合物中でモ
ノマーの濃度が10%のときに照射線量を0.1メガラ
ドにしてPVPをT線により表面にグラフトさせるPM
MAの場合 (第9表)にはメタノールを50〜60%
まで用いることができる。モノマーの濃度が10%のと
きにはメタノールによるラジカル連鎖移動には低い照射
率が必要であるが、親水性のあるグラフトが実現するっ
第9表 濃度:50%MeOH中にNVPが10%全照射線量=
0.1メガラド 実施例2 この実施例は、本発明により表面を変化させる方法にお
ける膨潤溶媒の効果を示している。
γ線を照射して基板であるPMMA上に親水性のあるグ
ラフトを形成するにあたっては、例えば膨潤溶媒である
酢酸エチル(EtOAc)をモノマー水溶液に添加する
とモノマーをより効果的にPMMAの表面に拡散させる
ことができる。酢酸エチルは水にはあまりよく溶けない
が、NVPなどのモノマーの存在下では均一な反応媒体
を得ることができる。
ポリマーがグラフトして変化した表面の厚さは、酢酸エ
チルの濃度を大きくシ、−かつ、照射の前に拡散を長時
間行う、すなわち予備膨潤の時間を長くすることによっ
て厚くすることができる。一般に、脱酸素を行わない場
合には、十分にグラフトさせるのにγ線の照射線量を0
.10〜0.15メガラドにするのがよい。
NVP−酢酸エチル−水の溶媒系はPVPに対する溶媒
でもあり、ポリマー溶液を均一に保つ機能がある。
P M M A表面にPVPを「埋め込みグラフトする
」ことは、PMMAをモノマー−膨潤溶媒−水の混合物
に数回浸した後にT線を照射することによって可能にな
る。
この方法を用いた実験では、サンプルを10%石鹸溶液
中で超音波洗浄した後に蒸留水で洗浄した。
表面を変化させる前にPMMAサンプルを真空デシケー
タ内で18時間かけて乾燥させ、重量を測定した。NV
Pモノマーを減圧蒸留により精製して4℃で保管した。
T線照射によりグラフトさせるため、PMMA基板をモ
ノマーと溶媒の水溶液に浸漬させてT線を照射した。原
則として、洗浄した基板をNVP−酢酸エチル−水の混
合物中に浸漬させて600キユリーのCO線源を用いて
照射を行った。サンプルをモノマー溶液に浸漬させる時
間はいろいろに変えた。ここでの実験においてはγ線の
照射線量をO9旧〜0.15メガラドにした。照射線量
の値はフリッケ線量計を用いて測定した。照射率も変え
た。
照射後、T線を照射したポリマー溶液からサンプルを取
り出して蒸留水で数回洗浄し、脱イオン水を撹拌してい
る中で洗浄した。濾紙で表面の水を吸い取ってから24
時間真空デシケータ内で乾燥させたいくつかのサンプル
について重量を測定した。
重合した溶液は、透明で粘性のある溶液からゲルに変化
した。以下のパラメータを測定した。
重量の増加から以下の式で表されるグラフト率パラメー
タが得られた。
(ただし、WoはPMMAの初期重量であり、W+はグ
ラフトしたPMMAの重量である。)同様にして、水和
率を以下の式により計算した。
(ただし、Wwは(水を吸い取ってから)水中で平衡さ
せた後のPMMAの初期重量であり、Wdは(デシケー
タで乾燥させた後の)乾燥サンプルの重量である。)た
いていの場合、水の吸収は12時間後に最大になった。
捕獲された気泡とn−オクタンの接触角をT線照射によ
りグラフトしたPMMAの表面について測定し、変化し
た表面の親水性を評価した。レイムーハート(Rame
−Hart)式接触角ゴニオメータを用いて静的接触角
を測定した。各サンプルの異なる領域で少なくとも5回
の測定を行った。
全反射率を減衰させたパーキン−エルマー(Perki
n−Elmer) %デル283BIRスペクトロメー
タを用いて、グラフトした表面とグラフトしていない表
面のATR−IR表面分析を行った。
X線源としてマグネシウムにαを利用したクラ)ス(K
ratos)  ES 300 ESCAスペクトロメ
ータを用いて、面積がlcdのグラフトした表面を有す
るサンプルとグラフトしていない表面を有するサンプル
を分析した。グラフトの分析においてはN/C比を決定
する。
PVPポリマー溶液の分子量は、アベルホード(Ubb
elhode)粘度計を用いて30℃で溶液の固有粘性
率を測定することにより決定した。
照射線量は0.01〜0.15メガラドであり、モノマ
ーの濃度は5〜15%であった。
膨潤剤として酢酸エチルを用いてPVPをPMMAの表
面にグラフトさせることに関するデータを第10表に示
す。この例では予備膨潤時間を確保していないため、酢
酸エチルとモノマーが表面に拡散して侵入するのはT線
の照射中である。予備照射膨潤時間をいくらか確保して
お(ことが好ましい。この系はモノマーの拡散を制御し
た反応に典型的な挙動を示す。PMMAに対する膨潤溶
媒である酢酸エチルが存在しているため、最初のうちに
NVPモノマーをPMMAの疏水性表面に分配すること
が好ましい。
グラフトさせる基板に対して膨潤溶媒(すなわち酢酸エ
チル)を使用することにより、NVP−酢酸エチル−水
の系がPMMAの表面層を膨潤させる。すると、T線照
射によりこの表面の近傍に誘起されたラジカル種の近く
でモノマー分子が直ちにグラフト重合する。このとき、
照射線量を小さくし、溶媒で膨潤した表面にグラフトさ
せるポリマーをさらに深く侵入させることにより、より
効果的にグラフトさせることができる。
NVP−酢酸エチル−水(1: 1 : 8)の系の中
でPMMAが膨潤する割合の時間変化を測定することに
より、12時間後に約6%が膨潤することがわかる。こ
の系では、グラフト層の厚さはT線照射を行う前にモノ
マーを拡散させる時間を変えることにより制御すること
ができ、従ってグラフト領域の厚さを制御することが可
能であった。第11表は、NVPを15%含む酢酸エチ
ル−水(1:9)の系の中でPMMAを24時間予備膨
潤させた後のグラフト状態を示している。この表のデー
タを第10表の(膨潤時間がゼロである)データと比較
してみると、予備膨潤させたPMMAのほうが明らかに
グラフト率が大きいことがわかる。酢酸エチルの濃度を
固定して考えると、この差は一般にモノマーの濃度が低
いほど、例えばモノマーの濃度が15%ではなく5%の
ときにより顕著になる。
第11表 PMMA上へのNVPのグラフト重合 膨潤時間:24時間 溶媒: 水:酢酸エチル=9:1/15%NVPこの系
では、NVPはモノマーであるが、それと同時に、互い
にほとんど混和しない溶媒、すなわち酢酸エチルと水に
対する相互溶剤としても機能して両者を均一相に維持す
る。モノマーの濃度を固定して考えると(例えば10%
)、ミクロエマルジョンに相分離しないようにするため
には酢酸エチルの濃度を10%未満に保っておく必要が
ある。
膨潤剤である酢酸エチルの濃度が変化するとグラフト率
に影響する。第12表には、酢酸エチルの濃度のみを変
化させて他のパラメータは一定にした場合の結果がまと
められている。この表からは、酢酸エチルの濃度が大き
くなるとグラフト率が高くなることがわかる。照射線量
を低くした膨潤溶媒モノマー系でグラフト率が大きくな
り接触角が小さくなっていることからもグラフト効率が
改善されていることがわかる。例えば照射線量が0.0
5メガラドまでは、単なるモノマー水溶液の系ではほと
んどグラフトしない。これに対して(第11表の24時
間予備膨潤した場合には)照射線量がほんの0,01メ
ガラドでも接触角は小さくなって35°になり、照射線
量が0,03メガラドだと接触角は23゜になる。
第12表 膨潤時間=12時間、10%NVP、照射率309ラド
/分一般に、バルク状ポリマーの化学的分析に用いられ
る方法は、ポリマーの表面の分析にはあまり適していな
い。バルクと比べて構造および/または化学的性質が大
きく異なっている表面領域は、ポリマー全体のほんのわ
ずかの割合でしかない。
従って、従来の化学的分析法は十分なものではない。表
面領域は、グラフトと、基板と、架橋した基と、連鎖移
動生成物との複合混合物であるため、グラフトコポリマ
ーに対しては特別な表面分析法が必要とされる。スペク
トロスコピーによる2つの方法、すなわちATR−IR
とESCAがこの目的に現在使用できる最適の方法であ
り、グラフトした表面のキャラクタリゼーションに利用
されている。
第13表 *水と酢酸エチル混合物中のNVPを5%含む反応合物
(水と酢酸エチルの比は9:1)照射率 : 1065
ラド/分。
膨潤時間:17時間。
第13表に示したATR−IR(減衰全反射赤外線スペ
クトロスコピー)の結果から、T線の全照射線量が0.
01メガラドから0.10メガラドに変化すると表面の
C=0基(エステル)とC−N基(イミド)の間の比が
7.67から1.68へと変化し、全照射線量がそれ以
上になるとこの比の値は一定になっていることがわかる
。この結果は、PMMAの表面にPVPがグラフトした
ことと矛盾しない。
第14表 PVPがグラフトしたPMMAサンプルのESCA分析
“ *水と酢酸エチル混合物中のNVPを5%含む反応合物
(水と酢酸エチルの比は9:1)照射率 : 1065
ラド/分。
膨潤時間:17時間。
ESCA分析の結果が第14表に示されている。
この表の結果によると、PVPのグラフト化から予想さ
れるように、照射線量(従ってグラフト率)が大きくな
ると窒素組成物が増えることがわかる。
グラフト化したサンプルの表面の構造を電子走査顕微鏡
により調べた。被覆された表面は倍率を10、000倍
にしてもすべて滑らかであった。ポリマーの表面をグラ
フト化して変化させるとPMMA基板の表面が均一に被
覆されると思われる。このことは、眼内レンズなどの光
学的インプラントの光学特性を優れた状態に保つのに重
要である。
この実施例から得られる主な結論は以下の通りである。
−基板としてPMMAを使用した場合には、NVP−酢
酸エチル−水の系を用いることによりグラフトの侵入度
を制御することのできる親水性のある均一なグラフトポ
リマー表面が得られる。
−モノマー−酢酸エチル−水の系のグラフト進行面は徐
々に基板内に侵入する。この進行面は、膨潤剤の濃度と
予備膨潤時間を変えることにより制御することができる
−PVPグラフト面の存在は、重量および接触角の測定
、ATR−I RとESCA測定により確S忍された。
−意外なことに、十分にグラフトさせるには照射線量を
少なくする必要がある。従って、γ線の照射によって表
面または基板に与えられる可能性のあるダメージは最小
になる。
実施例3 以下の実験は、酸素がγ線照射による重合とグラフト化
に極めて重大な影響を与えており、酸素が実質的に存在
していないとグラフト重合を実施するのに好都合である
ことを示している。
γ線照射により誘起されるNVPの重合を、NVPを1
0%含む水溶液中にて以下の条件で実施した。
(a)酸素(空気)の存在下での重合、(b)アルゴン
で脱ガスして酸素を除去した状態での重合、 (C)酸素なしでの重合。
(a)の場合は、空気の存在下で10%NVP水溶液に
照射率213ラド/分でそれぞれ全照射線量が0.01
.0,05.0.10.0.20.0.25メガラドの
照射を行った。(b)の場合には、アルゴンで10分間
掃気を行った。(C)の場合には、脱ガスするために真
空凍結−溶解(FT)法を用いた。この凍結−溶解法で
は、モノマー溶液を液体窒素中で凍結させ、減圧(0,
3mmHg)下で酸素を除去した。
次に、凍結させた溶液を室温に戻して溶解させた後、γ
線の照射を行った。サンプルによっては凍結−溶解サイ
クルを3回繰り返した(3FT)。
同じ実験を繰り返して再現性を確かめた。
γ線照射によるグラフト化と重合に対する脱酸素の効果
を調べるため、照射率213ラド/分で全照射線量が0
゜01〜0.25メガラドの照射を行った様々なNVP
溶液についてモノマーの転化率と分子量を測定した。
γ線照射によって反応しなかったNVPは以下の方法で
決定した。すなわち、アセトニトリル50m1を用いて
γ線を照射されたNVP溶液を5ml抽出した。NVP
はアセトニトリルに溶けるが、PvPはそうではない。
PVP沈殿物を遠心分離し、上澄み液を分析してNVP
を求めた。NVPモノマー溶液(10%NVP水溶液)
を比較用に用いた。
NVPの分析は以下のようにして行った。まず、10重
量%の水溶液をアセトニトリルを用いて希釈し、適当な
濃度にした(0.5μg/d 〜5.Ojig/ml)
。各溶液について波長32311mでの紫外線吸収率を
測定し、N V’Pの濃度と紫外線吸収率の間の基準曲
線を求めた。この曲線に対する回帰係数は0.99であ
った。分子量の測定にはGPCを用いた。
その結果、分子量Mwのほか分子量分布が判明した。
NVPの転化率(反応したモノマーの看)は、アルゴン
の掃気による脱酸素操作とFT法による脱酸素操作によ
り大きな影響を受ける。照射線量が0.01メガラドと
極めて小さい場合には、酸素(空気)が除去されていな
い溶液中ではほとんど重合が起こらない。しかし、アル
ゴンの掃気による脱酸素操作やIFT、3FTを行った
サンプルでは、それぞれ転化率が46%、61%、63
%になった。照射線量が0.10メガラドでも、脱酸素
の系ではほとんどすべてのモノマーが転化した(99%
)のに対し、空気中で照射を行ったサンプルのモノマー
の転化率はほんの90%(反応しなかったNVPモノマ
ーが10%)であった。反応しなかったモノマーが毒と
して極めて好ましくない挙動を示す可能性があるため、
生体インプラントにとってはこの点は重要である。
脱酸素を行った系でγ線の照射線量を少なくしてPMM
A上にPVPをより効果的にグラフトさせることができ
ることを示すため、10%NVP水溶液をアルゴンで掃
気して酸素を除去した後にPMMAサンプルに照射率1
57ラド/分で全照射線量0.05メガラドのγ線照射
を行った。この結果として親水性をもつように変化した
表面は、接触角が20°であり、機械的摩耗に対して安
定であった(接触角の変化がない)。先に指摘したよう
に、機械的に安定かつ極めて親水性が大きくなるように
PVPをPMMA上にグラフトさせるには、モノマーの
転化率を太きく L (98%)、ポリマー溶液の重合
度を大きくする(1.65 Xl06重量平均分子量〉
。空気(酸素)の存在下で接触角が小さく、かつ、転化
率と分子量が大きくなるようにするためには、照射線量
を太きく(0,1メガラドよりも大きく)することおよ
び/またはモノマーの濃度を太きく(15%以上)する
ことが必要である。γ線照射によりモノマーを重合させ
て他のポリマー基板、例えばポリプロピレン、フッ化炭
素(例えばPTFE、PVDF) 、または、シリコー
ンに親水性のグラフトを形成するときには、脱酸素によ
る好ましい効果がより大きく現れる。γ線照射によるグ
ラフト化を促進するためには、基板の膨潤溶媒と、フリ
ーラジカル抑制剤、例えば酸化可能な金属の塩または有
機化合物(例えばアスコルビン酸)とを組み合わせて使
用することにより酸素を除去することもできる。
PVPの分子量はやは、り酸素を除去することにより大
きく影響を受ける。アルゴンによる掃気を行ったサンプ
ルとFTを施したサンプルでは、照射線量がほんの0.
01メガラドでも分子量が約1.6×106のPVPポ
リマーが得られる。これとは対照的に、脱ガス操作を行
っていないサンプルでは、測定にかかるようなポリマー
が形成されない。照射線量が0,05メガラドだと、空
気中でのサンプルでは分子量が約0.35 X 10’
のPVPポリマーしか得られないのに対し、脱酸素操作
を行ったサンプルでは分子量が約1.65〜1.8X1
0’のPVPポリマーが得られる。照射線量が0.10
メガラドだと、全サンプルの分子量が約1.8〜2.0
X10’になる。
実施例4 以下の実験は、特にモノマーの濃度が大きい場合につい
て、グラフト重合を実施している間のゲル化を抑制する
フリーラジカル捕捉剤の好ましい効果を証明するため(
と行った。
実施例1と同様にして、γ線照射を行ってPMMAサン
プルの表面にPVPをグラフトさせた。
この実施例における実験ではラジカル抑制剤としてアス
コルビン酸(AscA)を使用した。照射条件が以下の
第15表にまとめられている。
第15表 *初期照射線量は0.1メガラドであり、サンプルを洗
浄して七ツマ−と可溶性ポリマーを除去した後に0.1
メガラドをさらに照射した。
第15表に掲載したPMMAサンプルの接触角はすべて
18〜24°の範囲内にあり、この値は極めて親水性が
強いグラフトであることを示している。
照射率は33ラド/分であった。(b)に対しては照射
率を667ラド/分にした実験も行った。アスコルビン
酸などのラジカル抑制剤を使用しないのであれば、ポリ
マー溶液のゲル化がこの表に記載した濃度(30〜50
%)で起こる。接触角だけでなく、ESCAとFT−A
TR,−IR分析によりPVPのグラフト状態を確かめ
た。この結果、表面に窒素とPVPイミドカルボニル基
が存在していることがわかった。摩耗テストの結果、摩
耗後に接触角または表面の窒素がほとんど変化していな
いことから、機械的特性が(憂れていることが証明され
た。
実施例5 この実施例では、γ線照射によりグラフトさせて親水性
をもつように表面を変化させると組織への付着力が小さ
くなるという極めて好ましい効果が現れることを、角膜
皮質への付着力と細胞への付着力を繊維芽細胞を用いて
測定することによって証明する。この付着力は、グラフ
ト化により親水性をもつように変化させた本発明の表面
によって生体適合性が向上し、組織が刺激されたりダメ
ージを受けたりすることが最も少なくなることを証明す
るのに重要なパラメータである。
相互に接触するポリマーと組織の表面の間の付着力(m
g/cffl)を測定する装置を用いてウサギの角膜皮
質とポリマーの表面の間の付着力を決定した。PMMA
と、眼科用インプラントに適する親水性ポリマーである
例えばシリコーンやポリプロピレンの間の付着力の測定
値は約250〜400mg/ClTlであった。好まし
い処理条件のもとてγ線照射によりグラフトさせて親水
性を改善した表面は付着力がはるかに小さい。その値は
150mg/c++を未満であり、100mg/cff
lよりも小さいことも多い。この結果、SEMでわかる
ように皮質細胞が受けるダメージが大きく減る。PMM
Aまたはシリコーンの場合には約50〜80%がダメー
ジを受けるのに対して、好ましい処理条件のもとてγ線
照射によりグラフトさせた本発明の表面は20%以下が
ダメージを受けるだけである。
また、γ線照射を行ってグラフトさせることにより変化
させた本発明の表面の細胞付着力が大きく減ることは、
ニワトリの胚の繊維芽剤11a(CEF)の生きた培養
細胞の中にこの表面をさらすことにより証明することが
できる。実験によると、PVPをグラフトさせることに
より変化させたPMMAと比べるとPMMAには3〜4
倍多いCEF細胞が付着することがわかる。例えば15
%NVPを用い、かつ、照射線量を0.1メガラドにし
て形成したグラフトに付着するCEF細胞の数は、PM
MAの場合と比べてほんの35%になった。同様に、P
MMAの場合と比べて付着するCEF細胞の数は、PM
MAにグラフトしたPHEMAではほんの38%になり
、NVP : HEMAの割合が15:1(NVPとH
E M Aを合わせた濃度が16%)の場合にはほんの
20%になった。
実施例に の実施例は、PMMA上へのHEMAグラフト重合と、
NVPとHEMAの混合物のグラフト重合を示している
16%NVP/HEMA (15: 1)水溶液を用い
、照射率を約1300ラド/分、照射線量を0.10メ
ガラドにして実施例1の方法を繰り返した。PVP−P
HEMAにより表面を変化させたPMMAは接触角が1
7°であった。似たような条件で、7%NVP/HEM
A (5: 2)溶液は接触角が23°であり、2.5
%HEMA溶液は接触角が18°であった。
実施例7 この実施例はアニオンモノマーまたはカチオンモノマー
と本発明の親木性モノマーをグラフト共重合させる場合
である。ここでは、NVPとイオン性モノマーを用いる
PMMA基板と、コモノマーとして15%NVPに1〜
5重量%のアクリル酸(AA)またはクロトン酸(CA
)を添加したものとを用い、照射率を1235ラド/分
、照射線量を0.1メガラドにして実施例1の方法を繰
り返した。接触角は18〜22゜であり、皮質の付着力
は変化していないP M M Aの付着力の約半分以下
であった。従って、良好な親水性グラフト被覆が形成さ
れていることがわかる。同じような結果が、ジメチルア
ミノエチルアクリレートを用いてカチオン性グラフト被
覆を形成する場合に得られる。
実施例8 この実施例はポリプロピレン(PP)の表面ニ親水性モ
ノマーをグラフトさせる場合であり、表面を効果的に変
化させるには脱酸素が重要であることを示している。
ポリプロピレンの表面に親水性のグラフトを形成するに
は、酸素の存在下でNVP水溶液にγ線を照射するだけ
では不十分である。実施例1の条件のもとでは、γ線の
照射線量が0.1メガラドよりも大きくモノマーの濃度
が10%よりも低い場合でも表面がほとんど親水性にな
らず、接触角もほとんど減少しない。しかし、脱酸素媒
体中では、10%NVPにおいて照射率を157ラド/
分にして照射線量を0.旧〜0.05メガラドにすると
接触角が約15゛になった。従って、極めて親水性の大
きなPPグラフトを脱酸素条件で容易に製造することが
できる。このグラフトは、機械的摩耗テストにより機械
的に安定であることが確かめられる。このことは、PM
MA製の視東およびPP製の触覚繊維を備えるILOの
表面をγ線によりグラフトにより変化させるのに重要で
ある。
実施例9 眼科用インプラントに対してはポリカーボネートが工学
用プラスチックとして役に立つ。脱酸素状態のNVP水
溶液にγ線を照射することによって極めて容易にポリカ
ーボネートの表面を変化させることができる。例えばグ
ラフト化の条件は、脱酸素状態の10%NVP水溶液、
γ線の照射率93ラド/分、照射線量0.05メガラド
である。この場合、接触角は19°になる。
実施例10 γ線を照射した場合に、シリコーン(Psi)はPMM
Aはど容易にはNVPがグラフトしないが、脱酸素状態
の10%NVP溶液を用いることにより281表面が変
化した。照射率93ラド/分で照射線量を0.05メガ
ラドにすると、接触角が約45°になる。これは表面の
親水性がかなり大きいことを意味する。照射線量を大き
くし、膨潤剤を用い、モノマーの濃度を大きくし、様々
な親水性モノマーを用いると、親水性が向上する。例え
ばγ線の照射率が157ラド/分で照射線量を0.10
メガラドにしてNVP/HAMA (10: 1)をグ
ラフトさせると、脱酸素操作を施さなくともグラフトが
形成されて接触角が30°になる。
実施例11 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は眼科用インプラン
ト、特に角膜に有用な別のポリマーである。NVP水溶
液、NVP/水−メタノール溶液、または、酢酸エチル
−水の系にγ線を照射して表面を変化させることができ
る。接触角が約30°の親水性グラフトが、照射率32
6ラド/分で照射線量を0.20メガラドにすることに
より形成される。
しかし、PVDFは脱酸素処理条件のもとてグラフト化
することが好ましい。lO%NVP水溶液を用い、照射
率157ラド/分で照射線量を0.05メガラドにする
と接触角が17@のPVPグラフトが形成される。NV
PモノマーはPVDFに対する効果的な膨潤溶媒でもあ
るので、グラフトの特性を向上させるためには予備照射
膨潤時間を確保しておくことが好ましい。例えば、7%
NVPを用い、照射率94ラド/分で照射線量を0.1
0メガラドにして5時間予備膨潤を行うと接触角が14
°と小さくなる。
実施例12 材料を組み合わせる場合のグラフト条件様々なポリマー
からなる触覚繊維を備えるレンズ本発明の重要な特徴の
1つは、ある特定のグラフト処理条件のもとでは眼科用
インプラントのレンズ/触覚繊維対として用いることの
できる組み合わせ材料を用いて表面を変化させることが
できるという知見に基づいている。材料を組み合わせた
構成のILOの表面のグラフト化は1段階の同時グラフ
トで実現することができる。この結果、より生体適合性
のある表面が得られる。PMMA。
PCSPSiなどのレンズ用材料は、本発明の特定の条
件のもとてグラフトさせることができ、PVDFJPP
Pなどの触覚繊維材料がうまくグラフトする。第16表
に、改良されたPVPグラフトを得るだめの好ましいレ
ンズ/触覚礒維の組み合わせが相互グラフト化条件とと
もに何通りか示されている。
PMMA/PPとPMMA/PVDF 10%NVPを用いて脱酸素条件のもとてγ線の照射率
157ラド/分で照射線量を0.05メガラドにすると
、PMMAとPPをグラフトさせることができることが
わかっている。この条件では、PMMAに対しては接触
角が20°となり、PPに対しては接触角が15°とな
る。さらに、この条件のもとでは機械的に安定なグラフ
トが得られる。脱ガス操作を施さないPPはPMMAと
似た条件では効果的にグラフト化しない。というのは、
酸素がPP表面のグラフト化を妨げる効果を及ぼすから
である。
PVDFのグラフト表面の研究により、脱酸素の重要性
も明らかにされている。脱ガスした10%NVP水溶液
に照射率157ラド/分で照射線量を0.05メガラド
にしたγ線照射を行うとPMMAとPVDFの両方に親
水性の優れたグラフトを形成することができる。詳しく
は第16表を参照されたい。
PC/PPとPC/PVDF NVC溶液の脱ガスを行うと、似たようなγ線照射条件
下でPCとPPがグラフトする。10%NVP水溶液に
照射率157ラド/分で照射線量を0.05メガラドに
したγ線照射を行うと、両方のポリマーに親水性の優れ
たグラフトが生成する。この結果、接触角がそれぞれ1
9°と15°になる。
PVDFとPCはどちらも、P C/P PおよびPM
MA/PPの組み合わせと同じ条件でグラフト化する。
すなわち、脱ガスした10%NVP水溶液に照射率15
7ラド/分で照射線量を0.05メガラドにしたγ線照
射を行う。PVDFはNVP中で膨潤するので、予備膨
潤時間の後にγ線でグラフトさせるとPVPのPVDF
に対する結合性が向上する。条件は、ILO,または、
先に示したような2種類以上のポリマーで構成された他
の眼科用インプラントに対する親水性ポリマーのグラフ
ト条件と同じである。詳しくは第16表を参照されたい
第16表 第 16  表(続き) *接触角を25°末渦にするための条件本本LDR:3
0〜300ラド/分 実施例13 眼内レンズ(ILO)の表面を上記の実施例に記載され
たいくつかの条件を用いて変化させ、1年以内の期間ウ
サギの目に移植した。その結果、本発明の処理条件に従
ってγ線を照射して重合させることにより表面が親水性
をもつように変化したILO眼科用インプラントは、生
体適合性が優れていることが判明した。例えば、シンス
キー(Sinskey)型037Jループレンズ(PM
MA視束/PP触覚繊維)の表面をPVPを用いて変化
させた後にエチレンオキシドで殺菌してからニューシー
ラントの白ウサギの前眼房に移植し、PMMA製可撓性
触覚礒維と一体化したILOを後眼房に移植した。IL
Oの表面を変化させるための処理には以下の操作が含ま
れる。
a)15%NVPSr線の照射線量0.10メガラド、
照射率30ラド/分と12ラド/分、接触角20〜25
°。
b)実施例4の第15表のa、b、d0定期的に目の細
隙灯顕微鏡検査を行い、移植したレンズを1年後に(グ
ラフトしていない比較用PMMA!!ILOと比較して
)組織病理学的に顕微鏡で調べたところ、本発明のグラ
フトにより親水性をもつように変化したポリマー表面は
生体適合性がよく正常な挙動を示すことが判明した。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の眼科用インプラントの実施例を示す。 第1図は、一体構成の眼内レンズの平面図である。 第2図は、視束とは異なるポリマー基板を有する触覚繊
維を備える眼内レンズの平面図である。 第3図は、人工角膜の平面図である。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. (1)ポリメチルメタクリレート(PMMA)によって
    構成された表面上に、γ線照射によってN−ビニルピロ
    リドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレー
    ト(HEMA)またはNVPとHEMAの混合物を重合
    して〈1〉ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)、〈
    2〉ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート(PH
    EMA)または〈3〉NVPとHEMAのコポリマー〔
    P(NVP−HEMA)〕を化学的にグラフトさせた薄
    い親水性被覆を形成することにより眼科用インプラント
    材料の表面を変化させる方法において、上記γ線照射に
    よる上記グラフト重合を実質的に水溶液中で以下の条件
    : a)モノマーの濃度を約0.5〜約50重量%にし、b
    )γ線の全照射線量を約0.01〜約0.50メガラド
    未満にし、 c)γ線の照射率を約10〜約2,500ラド/分にし
    、 d)溶液中の上記ポリマーの分子量を約250,000
    〜約5,000,000に維持した条件のもとで実施す
    ることを特徴とする方法。
  2. (2)以下の条件、 e)遊離酸素を上記のグラフト重合用水溶液から実質的
    に除去し、 f)上記ポリマー被覆層の厚さを約100Å〜100μ
    mに維持し、 g)上記のグラフト重合用水溶液中にフリーラジカル捕
    捉剤を含有させ、 h)上記のグラフト重合用水溶液中に上記PMMA表面
    の膨潤溶媒を含有させる の1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記
    載の方法。
  3. (3)上記眼科用インプラント材料が眼内レンズである
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. (4)上記眼科用インプラント材料が角膜用インレーで
    あることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  5. (5)上記眼科用インプラント材料が人工角膜であるこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  6. (6)ポリプロピレン(PP)、フッ化ポリビニリデン
    (PVDF)、ポリカーボネート(PC)またはシリコ
    ーンポリマー(PSi)によって構成された眼科用イン
    プラント材料の表面上で、γ線照射によってN−ビニル
    ピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリ
    レート(HEMA)またはNVPとHEMAの混合物の
    重合して〈1〉ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)
    、〈2〉ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート(
    PHEMA)または〈3〉NVPとHEMAのコポリマ
    ー〔P(NVP−HEMA)〕を化学的にグラフトさせ
    た薄い親水性被覆を形成することにより上記表面を改質
    させる方法において、 上記のγ線照射によるグラフト重合を、実質的に水溶液
    中で、以下の条件: a)モノマーの濃度を約0.5〜約50重量%にし、b
    )γ線の全照射線量を約0.01〜約0.50メガラド
    未満にし、 c)γ線の照射率を約10〜約2,500ラド/分にし
    、 d)溶液中の上記ポリマーの分子量を約250,000
    〜約5,000,000に維持し、 e)上記のグラフト重合用水溶液から遊離酸素を実質的
    に除去した条件のもとで実施することを特徴とする方法
  7. (7)以下の条件: f)上記ポリマー被覆層の厚さを約100Å〜約100
    μmに維持し、 g)上記のグラフト重合用水溶液中にフリーラジカル捕
    捉剤を含有させ、 h)上記のグラフト重合用水溶液中に上記PMMA表面
    の膨潤溶媒を含有させる の1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項6に記
    載の方法。
  8. (8)請求項1、2、6、7のいずれか1項に記載の方
    法において、 上記のNVA、HEMAまたはNVAとHEMAの混合
    物が、上記条件下で、イオン性モノマーまたはその混合
    物と一緒にγ線を照射により共重合され、 上記溶液中の全モノマー濃度を約1〜約50重量%にし
    、得られたNVA、HEMAまたはNVAとHEMAの
    混合物と上記イオン性モノマーまたはその混合物とのコ
    ポリマーの溶液中での分子量を約250,000〜約5
    ,000,000に維持することを特徴とする方法。
  9. (9)上記イオン性モノマーがビニルスルホン酸または
    ビニルカルボン酸であることを特徴とする請求項8に記
    載の方法。
  10. (10)上記ビニルカルボン酸が、アクリル酸、メタク
    リル酸またはクロトン酸であることを特徴とする請求項
    9に記載の方法。
  11. (11)上記イオン性モノマーがアミノ基を有するモノ
    マーであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  12. (12)アミノ基を有する上記モノマーが、ビニルピリ
    ジン、アミノスチレン、アミノアクリレートまたはアミ
    ノメタクリレートであることを特徴とする請求項11に
    記載の方法。
  13. (13)請求項1、2、6、7、8のいずれか1項に記
    載の方法に従って製造した眼科用インプラント材料。
  14. (14)眼内レンズ、角膜用インレー、人工角膜、上角
    膜水晶体装置、緑内障用ドレイン、網膜用ステープル、
    または、強膜用バックルであることを特徴とする請求項
    13に記載の材料を用いた眼科用インプラント。
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