JPH0121175Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、燃料噴射装置の改良に関し、更に詳
しくは、燃料噴射装置の特にその燃料通路に発生
するまたは発生しようとする気泡を、次の噴射行
程の前までに消去または発生を抑制することによ
り、前記気泡によるキヤビテイーシヨンエロージ
ヨンの発生を防止するように改良した燃料噴射装
置に関する。

［従来の技術］ 通常デイーゼルエンジンにおいて燃料は、燃料
タンクから送油ポンプにより燃料フイルタを介し
て燃料管路で燃料噴射ポンプに送られ、、該燃料
噴射ポンプで加圧した後、燃料通路を介して燃料
噴射ノズルに送られるが、前記噴射ポンプから前
記噴射ノズルまでの燃料通路が長いために、燃料
噴射ポンプでの吐出終了に伴う圧力の伝播が遅れ
て噴射ノズルの針弁の閉時期が遅れ、燃料の「切
れ」が悪くなつてエンジンの性能を悪化させるこ
とがある。そこで従来から、燃料噴射装置内にデ
リベリバルブを設け、このバルブによつて、噴射
ポンプの吐出終了時にノズル方向へ送られていた
燃料をポンプ側に吸い戻し、これによる負圧を利
用して上記燃料の「切れ」を改善するようにして
いる。

［考案が解決しようとする問題点］ しかし、このようにデリベリバルブを設ける
と、キヤビテイーシヨンエロージヨンによつて燃
料通路となるパイプに亀裂が発生することがあ
る。

このキヤビテイーシヨンエロージヨンの発生原
因について推測してみると、燃料噴射ポンプによ
り高圧力に加圧された燃料がデリベリバルブの吸
い戻し作用により急激に圧力降下を起こした時に
燃料内に気泡が発生し、続いてこの気泡が次の噴
射行程で燃料噴射ポンプが再び燃料を高圧力に加
圧する時に急激に潰されることになり、この気泡
が潰される時に極めて高い衝撃波が生じ、この衝
撃波によつて燃料通路となるパイプが損傷するも
のと考えられる。

従つて、キヤビテイーシヨンエロージヨンを防
ぐためには、デリベリバルブを取り除けばよいわ
けてあるが、前述した理由によりデリベリバルブ
を排除するわけにはいかない。

本考案に関連するデイーゼルエンジン用の燃料
噴射装置としては、例えば、特開昭54−101017
号公報や実開昭53−37817号公報が提案されて
いる。

前記の発明は、ノズル本体に一定圧力で燃料
が還流する一方向弁と、高圧配管内の圧力のピー
クを吸収する圧力作動器とを設け、従来の装置で
必要としていた洩れ燃料戻し用の長い配管を不要
とするものである。

しかし、この装置はリークオフ通路を一方弁を
介して燃料タンク側低圧配管に連通する構成を有
せず、リーク燃料を高圧配管を介して燃料噴射ポ
ンプ側に戻す構成及び圧力作動器の設置により、
その作動時において前記高圧配管内の残圧が変化
して次の噴射量が変化し、このためエンジンの同
一回転数に対して定量の燃料噴射量が得られない
という問題がある。

前記の考案は、燃料噴射ポンプと燃料噴射ノ
ズルとを結ぶ噴射管に補給管を接続し、こ補給管
に噴射管側に開口するチエツクバルブを設けたも
ので、燃料の噴射が終了し、補給管が負圧になつ
た時にこの補給管より燃料を補給して負圧に伴つ
て発生するキヤビテーシヨンエロージヨンと２次
噴射、３次噴射を招く反射波を防止するものであ
る。

しかし、この考案はチエツクバルブを設けた補
給管を噴射管に連結するために、補給管の噴射管
との連結部からチエツクバルブに至るまでの容積
分だけ噴射管側のデツドボリユームが増大すると
いう問題がある。そのため、噴射管と補給管との
間に保有される燃料量がかなりの量となるので、
燃料噴射終了後に噴射管を負圧とするための燃料
噴射ポンプの吸込量が増大するとともに、噴射管
が負圧となつた時に素早くこれと解消するように
燃料が補給されないという問題がある。

本考案は、上記不具合に鑑み案出されたもの
で、燃料噴射ポンプによる燃料噴射終了後にデリ
ベリバルブの吸い戻し作用により燃料通路に急激
な圧力降下が生じても、設定圧に保持されたリー
クオフ通路内燃料を瞬時に前記燃料通路内に流入
させて、燃料通路の残圧を一定に保持しつつ燃料
通路内負圧及びそれに伴うキヤビテイーシヨンエ
ロージヨンの発生を防止するようにし、その際高
圧配管内の残圧の変化を生ずることがなく、また
燃料通路のデツドボリユームを増大しない燃料噴
射装置を提供することを目的とする。

［問題点を解決するための手段］ 上記問題点を解決するために、本考案の燃料噴
射装置は燃料タンクから燃料フイルタを介して燃
料噴射ポンプに送られた燃料を該燃料噴射ポンプ
からデリベリバルブを経て燃料通路によりエンジ
ンの各シリンダに属する燃料噴射ノズルに送るよ
うにした燃料噴射装置の、前記燃料通路を前記燃
料噴射ノズルに向かう主通路と燃料噴射ノズルの
リークオフ通路に連結する副通路に分岐し、前記
各燃料噴射ノズルのリークオフ通路を燃料タンク
側へ設定開弁圧で開弁する第１の一方弁を備えた
貯溜室を有する戻り管を介して前記燃料フイルタ
のオーバフロー通路と連結するとともに、前記主
通路と前記リークオフ通路との間に、燃料通路側
へ第１の一方弁より低い設定開弁圧で開弁する第
２の一方弁を設けてなるものである。

［作用］ 燃料フイルタ２９のオーバーフロー通路３１か
ら戻り管２６及びリークオフ通路２０内に燃料が
供給されており、また燃料の圧力により針弁１６
が上昇する時に、該針弁１６と弁案内孔１５との
極めてわずかな隙間から燃料がリークして、リー
クオフ通路２０に流入するが、一つの燃料噴射ノ
ズル１０の針弁１６の上昇によつてそのリークオ
フ通路２０内の燃料は、戻り管２６に送り出され
る。前記リークオフ通路２０、戻り管２６、貯溜
室３１及びオーバーフロー通路３２内において
は、第１の一方弁２５の開弁圧力P₁に相当する
圧力に保持されている。またこの時、第２の一方
弁２４には燃料通路２１の高圧力が作用している
ので該弁は開かない。

燃料噴射が終了してデリベリバルブ６の作用に
より、燃料通路２１内の圧力が急降下してそこに
気泡が発生し、もしくは気泡が発生しようとして
いる時、リークオフ通路２０の圧力と燃料通路２
１内の圧力との差圧で、リークオフ通路２０内の
燃料が第２の一方弁２４を押し開いて燃料通路２
１内に流入し、これにより燃料通路２１内の圧力
は上昇し、発生した気泡は消去され、発生しよう
としている気泡は成長しなくなる。

そして、続いて、噴射ポンプ１により次の高圧
の燃料が燃料通路２１に流入するが、この時に
は、すでに気泡が消滅しているためキヤビテーシ
ヨンエロージヨンを起こすことがない。

［実施例］ 次に図面により本考案の実施例を説明する。

第１図において、１は燃料噴射ポンプで、燃料
タンク２７内の燃料が送油ポンプ２８により燃料
フイルタ２９を介して燃料管路３０で送り込ま
れ、該燃料噴射ポンプ１の作動によつて燃料通路
２１でエンジンの各シリンダに属する燃料噴射ノ
ズル１０に送られるように構成されている。

上記燃料噴射ポンプ１は、第２図に示し、また
周知の如く、ポンプ室２内を図示しないカムによ
り往復動するプランジャ３が下がつた時に吸込み
ポート４より燃料を吸込み、プランジャ３が上つ
て、プランジャ３の外面により吸込みポート４を
塞ぐところから加圧が始まつて吐出し、プランジ
ャ外面に形成した溝５と吸込みポート４が連通し
た時に加圧吐出が終了するように構成され、この
ようにして燃料を吐出する噴射ポンプ１の吐出側
にはデリベリバルブ６が配置されており、このデ
リベリバルブ６は、スプリング７で上方から押圧
されたカラー８を持つ弁８′と、この弁８′が摺動
するシリンダ９とにより形成され、燃料の吐出時
に、その圧力により弁８′がシリンダ９内を上昇
してカラー８が離脱し、燃料の吐出終了時にはス
プリング７により弁８′が下降してカラー８が再
びシリンダへ進入するようになつている。

一方、燃料噴射ノズル１０は、第２図に示すよ
うに、ノズル本体１１に噴射口１２を有する噴射
室１３を形成し、またその噴射室１３の上部に弁
加圧室１４を形成し、更に、弁加圧室１４の上部
に弁案内孔１５を設けて、この弁案内孔１５に針
弁１６を上下動自在に嵌合し、この針弁１６の上
部を、前記ノズル本体１１の上方に取付けたホル
ダー１７内でスプリング１８により下方に押圧さ
れるロツド１９下端に連結し、更にロツド１９の
周囲のホルダー１７内にリークオフ通路２０を設
けたものである。

更に、各燃料噴射ノズル１０の前記リークオフ
通路２０の上端は、第１の一方弁２５を設けた貯
溜室３１を有する一端閉止の戻り管２６により連
結され、該戻り管２６の開放端は前記燃料フイル
タ２９のオーバーフロー通路３２に連結されてい
る。

上記のように構成された燃料噴射ポンプ１と燃
料噴射ノズル１０は、デリベリバルブ６を介して
燃料通路２１により連通されており、本考案の燃
料噴射装置では上記燃料通路２１は、前記ホルダ
ー１７及びノズル本体１１内で、燃料噴射ノズル
１０の弁加圧室１４に向う主通路２２と、リーク
オフ通路２０と連通する副通路２３に分岐されて
形成され、その分岐点に近い前記副通路２３にリ
ークオフ通路２０から燃料通路２１側に開弁する
第２の一方弁２４が設けられている。従つて、リ
ークオフ通路２０と高圧の燃料が供給される燃料
通路２１が接続される部分には少量の燃料しか保
有されないような構造となつている。

なお、前記２つの一方弁２４，２５は、第１の
一方弁２５の開弁圧力P₁が副通路２３の第２の
一方弁２４の開弁圧力P₂よりも高くなるように
設定されている。

上述のように構成された本考案の燃料噴射装置
の作用は次の通りである。

先ず、燃料噴射ポンプ１のプランジャ３の上昇
により加圧吐出された燃料がデリベリバルブ６の
弁８′を押し上げて燃料通路２１に到ると、副通
路側は第２の一方弁２４で塞がれているので、主
通路２２を経て弁加圧室１４に流れ、この弁加圧
室１４において針弁１６を上方に押し上げて、噴
射室１３から噴射口１２を経て図示しないエンジ
ンの燃焼室に噴射される。

そして、燃料噴射ポンプ１のプランジャ３の溝
５が吸込みポート４と連通すると、この時、燃料
の加圧吐出が終了してデリベリバルブ６の弁８′
がスプリング７の力により押し戻され、そのカラ
ー８は急速にシリンダ９内に進入する。これによ
りカラー８のシリンダ９への進入容積に匹敵する
分の燃料が燃料通路２１から噴射ポンプ１側に吸
い戻される。従つて、燃料通路２１内の圧力は急
速に下がるので、この作用により、スプリング１
８により押されて下がろうとしていた針弁１６の
下降速度を早めることになる。その結果、噴射ポ
ンプ１の燃料の吐出終了とほとんど時間差なく噴
射ノズル１０から噴射される燃料の切れを良くす
ることができる。

一方、燃料フイルタ２９のオーバーフロー通路
３１から戻り管２６及びリークオフ通路２０内に
燃料が供給されており、燃料の圧力により針弁１
６が上昇する時に、該針弁１６と弁案内孔１５と
の極めてわずかな隙間から燃料がリークして、リ
ークオフ通路２０に流入するが、一つの燃料噴射
ノズル１０の針弁１６の上昇によつてそのリーク
オフ通路２０内の燃料は、戻り管２６に送り出さ
れる。リークオフ通路２０、戻り管２６、貯溜室
３１及びオーバーフロー通路３２内においては、
第１の一方弁２５の開弁圧力P₁に相当する圧力
に保持されている。この時、第２の一方弁２４に
は燃料通路２１の高圧力が作用しているので該弁
は開かない。

燃料噴射が終了してデリベリバルブ６の作用に
より、燃料通路２１内の圧力が急降下してそこに
気泡が発生し、もしくは気泡が発生しようとして
いる時、リークオフ通路２０の圧力と燃料通路２
１内の圧力との差圧で、リークオフ通路２０内の
燃料が第２の一方弁２４を押し開いて燃料通路２
１内に流入し、これにより燃料通路２１内の圧力
は適正に上昇し、発生した気泡は消去され、発生
しようとしている気泡は成長しなくなる。

そして、続いて、噴射ポンプ１により次の高圧
の燃料が燃料通路２１に流入するが、この時に
は、すでに気泡が消滅しているためキヤビテーシ
ヨンエロージヨンを起こすことがない。

燃料通路２１内の圧力の変化状態を第３図ａ，
ｂに示すと、従来装置においては、第３図ａのよ
うに負圧部分が生じるのに対し、本考案装置にお
いては、実質的に負圧部分は生じることはなく燃
料通路２１内の圧力が最も低い状態でも第１の一
方弁２５の弁開圧力P₁を維持することになり、
前述した説明では、説明の関係上気泡ができるも
のとして説明したが実質的には燃料通路２１等に
気泡が発生することがない。

以上のようにして燃料通路に発生しようとする
気泡が素早く抑制され、キヤビテーシヨンエロー
ジヨンを防止することができ、従つて燃料通路の
損傷が防止される。

［考案の効果］ 上述の如く本考案の燃料噴射装置は、燃料タン
クから燃料フイルタを介して燃料噴射ポンプに送
られた燃料を該燃料噴射ポンプからデリベリバル
ブを経て燃料通路によりエンジンの各シリンダに
属する燃料噴射ノズルに送るようにした燃料噴射
装置の、前記燃料通路を前記燃料噴射ノズルに向
かう主通路と燃料噴射ノズルのリークオフ通路に
連結する副通路に分岐し、前記各燃料噴射ノズル
のリークオフ通路を燃料タンク側へ設定開弁圧で
開弁する第１の一方弁を備えた貯溜室を有する戻
り管を介して前記燃料フイルタのオーバフロー通
路と連結するとともに、前記主通路と前記リーク
オフ通路との間に、燃料通路側へ第１の一方弁よ
り低い設定開弁圧で開弁する第２の一方弁を設け
てなるので、燃料噴射終了後にデリベリバルブの
吸い戻し作用により急激な圧力降下が生じても、
第１の一方弁によつて設定圧に保持されたリーク
オフ通路内等に溜つている燃料を第２の一方弁を
介して瞬時に燃料通路内に流入せしめ、燃料通路
内に発生しようとする気泡を抑制し、キヤビテー
シヨンエロージヨンを防止でき、これにより燃料
噴射ポンプや燃料通路の損傷が避けられ、燃料噴
射装置の耐久性、信頼性を向上できる効果があ
る。

また、本考案の燃料噴射装置では、リークオフ
通路等内の燃料は燃料フイルタのオーバーフロー
通路を通じ補給されるので、リークオフ通路内に
針弁側からリークする燃料が少なくても空気が混
入することもなく、またリークオフ通路内の圧力
を所望圧力に設定できる。

また、本考案の燃料噴射装置では、リークオフ
通路等内の燃料圧力が第１の一方弁の開弁圧力を
越えたときは、第１の一方弁を介して燃料タンク
側即ち低圧側へ戻し、高圧の燃料通路を経て燃料
噴射ポンプへ戻すことがないので、リークオフ通
路等内の燃料の戻り量の変化による燃料噴射終了
後の燃料通路内残圧の変化が避けられて、エンジ
ンの同一回転に対する燃料噴射量を常に一定にで
きる効果がある。

更に、本考案の燃料噴射装置では、燃料通路の
主通路とリークオフ通路との間に、第２の一方弁
を設け、この第２の一方弁を介してリーク通路に
連通するのみで、新たに燃料吸い戻し用燃料通路
を連結することがないので、燃料通路のデツドボ
リユーム増大に伴う燃料噴射終了後の燃料吸い戻
し量の増大が避けられ、燃料噴射終了後の燃料の
吸い出し作用をより迅速に行ない得、これにより
気泡の発生及びキヤビテーシヨンエロージヨンの
発生をより効果的に防止できる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例を示す全体図、第２図
は要部の断面図、第３図ａ，ｂは従来装置と本考
案装置とを比較するための燃料通路内の圧力線図
である。 １……燃料噴射ポンプ、２……ポンプ室、３…
…プランジャ、６……デリベリバルブ、１０……
燃料噴射ノズル、１１……ノズル本体、１２……
噴射口、１３……噴射室、１４……弁加圧室、１
６……針弁、１７……ホルダー、１９……ロツ
ド、２０……リークオフ通路、２１……燃料通
路、２２……主通路、２３……副通路、２４……
第２の一方弁、２５……第１の一方弁、２６……
戻り管、２７……燃料タンク、２８……送油ポン
プ、２９……燃料フイルタ、３０……燃料管路、
３１……貯溜室、３２……オーバーフロー通路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 燃料タンクから燃料フイルタを介して燃料噴射
   ポンプに送られた燃料を該燃料噴射ポンプからデ
   リベリバルブを経て燃料通路によりエンジンの各
   シリンダに属する燃料噴射ノズルに送るようにし
   た燃料噴射装置の、前記燃料通路を前記燃料噴射
   ノズルに向かう主通路と燃料噴射ノズルのリーク
   オフ通路に連結する副通路に分岐し、前記各燃料
   噴射ノズルのリークオフ通路を燃料タンク側へ設
   定開弁圧で開弁する第１の一方弁を備えた貯溜室
   を有する戻り管を介して前記燃料フイルタのオー
   バフロー通路と連結し、前記主通路と前記リーク
   オフ通路の間に燃料通路側へ第１の一方弁より低
   い設定開弁圧で開弁する第２の一方弁を設けてな
   る燃料噴射装置。