JP7868614B2 - 粉体塗料、塗装物品の製造方法、及び、塗装物品 - Google Patents

粉体塗料、塗装物品の製造方法、及び、塗装物品

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Description

本発明は、粉体塗料、塗装物品の製造方法、及び、塗装物品に関する。
近年、塗料分野において、環境保全の点から、揮発性有機化合物(VOC)を含まない粉体塗料が注目されている。中でも、耐候性等を向上させる塗料として、含フッ素重合体を含む粉体塗料の開発がなされている。
特許文献1には、ステンレス鋼等の金属基材の表面を、水酸基等の反応性基を有する含フッ素重合体、硬化剤、ワックス成分及びエポキシ樹脂等を含む粉体塗料を用いて塗装する方法が開示されている。
特開平07-041699号公報
粉体塗料を用いて得られた塗膜を有する塗装物品は、塩水が付着する環境下で用いる場合や、折り曲げて使用する場合がある。特に、基材が、橋梁、高潮堤(防波堤)、海岸近辺のホテルその他の観光施設等の建造に用いる鉄筋コンクリート中の鉄筋母材である場合、鉄筋母材の折り曲げによる塗膜の剥がれや、塗膜の腐食が顕著になることがある。
本発明者らが、特許文献1に記載されているような粉体塗料について検討したところ、腐食耐性、及び、曲げ時の塗膜密着性の少なくとも一方について、改善の余地があることを知見した。
本発明は、上記課題に鑑みて、腐食耐性及び曲げ時の密着性に優れた塗膜を形成できる粉体塗料、上記粉体塗料を用いた塗装物品の製造方法、及び、塗装物品の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が解決できるのを見出した。
[1]フルオロオレフィンに基づく単位を有し、エポキシ基と反応する反応性基を有する含フッ素重合体と、ビニルアルコールに基づく単位を有する非フッ素重合体と、エポキシ基を有する化合物と、を含む、粉体塗料。
[2]前記含フッ素重合体におけるエポキシ基と反応する反応性基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、加水分解性シリル基、又は、酸無水物基である、[1]の粉体塗料。
[3]前記含フッ素重合体が、ヒドロキシ基を有する単量体に基づく単位を含み、前記ヒドロキシ基を有する単量体に基づく単位の含有量が、前記含フッ素重合体が含む全単位に対して、1~40モル%である、[1]又は[2]の粉体塗料。
[4]前記非フッ素重合体におけるビニルアルコールに基づく単位の含有量が、前記非フッ素重合体が含む全単位に対して、1~40モル%である、[1]~[3]のいずれかの粉体塗料。
[5]前記非フッ素重合体が、ポリビニルブチラールである、[1]~[4]のいずれかの粉体塗料。
[6]前記エポキシ基を有する化合物として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、を含む、[1]~[5]のいずれかの粉体塗料。
[7]前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有量に対する、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量の質量比が、1.0よりも大きい、[6]の粉体塗料。
[8]前記非フッ素重合体の含有量に対する、前記含フッ素重合体の含有量の質量比が、1.0以上である、[1]~[7]のいずれかの粉体塗料。
[9]前記含フッ素重合体の含有量に対する、前記エポキシ基を有する化合物の含有量の質量比が、1.0よりも大きく、前記非フッ素重合体の含有量に対する、前記エポキシ基を有する化合物の含有量の質量比が、1.0よりも大きい、[1]~[8]のいずれかの粉体塗料。
[10]前記含フッ素重合体と前記非フッ素重合体と前記エポキシ基を有する化合物とを同一粒子内に含む粒子を含む、[1]~[9]のいずれかの粉体塗料。
[11]前記[1]~[10]のいずれかの粉体塗料を基材の表面に塗装して塗装層を形成し、前記塗装層を溶融硬化させて塗膜を形成する、塗装物品の製造方法。
[12]前記基材の材質が金属である、[11]の塗装物品の製造方法。
[13]基材と、前記基材の表面上に配置された[1]~[10]のいずれかの粉体塗料から形成されてなる塗膜と、を有する、塗装物品。
[14]前記基材の材質が金属である、[13]の塗装物品。
本発明によれば、腐食耐性及び曲げ時の密着性に優れた塗膜を形成できる粉体塗料、上記粉体塗料を用いた塗装物品の製造方法、及び、塗装物品を提供できる。
本発明における用語の意味は以下の通りである。
(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの総称である。同様に、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びメタクリル酸の総称である。また、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートに基づく単位を主とする重合体からなる樹脂を意味する。
加水分解性シリル基とは、加水分解反応してシラノール基を形成し得る基を意味する。 重合体における単位とは、単量体の重合により直接形成された、上記単量体1分子に由来する原子団と、重合後に上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、重合体を核磁気共鳴スペクトル法により分析して求められる。
粒子の平均粒子径は、レーザー回折法を測定原理とした公知の粒度分布測定装置(Sympatec社商品名Helos-Rodos等)を用いて測定される粒度分布より体積平均を算出して求められる50%径の値である。
酸価及び水酸基価はそれぞれ、JIS K 0070-3(1992)の方法に準じて測定される値である。
数平均分子量及び重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値である。数平均分子量はMnともいい、重量平均分子量はMwともいう。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定される中間点ガラス転移温度である。ガラス転移温度はTgともいう。
溶融粘度は、回転式レオメータを用いて、周波数1Hzで、10℃/分の昇温条件にて130℃から200℃まで重合体を昇温した際の、所定温度における溶融粘度の値である。
膜厚は、渦電流式膜厚計(サンコウ電子社商品名EDY-5000等)を用いて測定される値である。
本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独で使用してよく、2種以上を使用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を使用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、2種以上の物質の合計含有量を意味する。
本発明の粉体塗料(以下、本塗料ともいう。)は、フルオロオレフィンに基づく単位を有し、エポキシ基と反応する反応性基を有する含フッ素重合体(以下、含フッ素重合Aともいう。)と、ビニルアルコールに基づく単位を有する非フッ素重合体(以下、単に非フッ素重合体ともいう。)と、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう。)と、を含む。
本塗料によれば、腐食耐性及び曲げ時の密着性に優れた塗膜を形成できる。この理由の詳細は必ずしも明らかではないが、以下のように推測できる。
本塗料を用いた塗膜(以下、本塗膜ともいう。)を基材上に形成する際、エポキシ化合物のエポキシ基は、非フッ素重合体のビニルアルコールに基づく単位のヒドロキシ基、及び、含フッ素重合体Aの反応性基と反応する。これにより、緻密な塗膜が形成されて、含フッ素重合体Aとエポキシ化合物との反応物の作用によって、腐食耐性が向上したと推測される。また、非フッ素重合体とエポキシ化合物との反応物の作用によって、塗膜の柔軟性が増す結果、本塗膜が基材に追従しやすくなり、曲げ時の密着性が向上したと推測される。また、詳細は後述するが、本塗料がエポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを含む場合、二層分離性に優れた塗膜が得られる。
含フッ素重合体Aは、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、単位A1ともいう。)を有し、エポキシ基と反応する反応性基を有する。
フルオロオレフィンは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。フルオロオレフィンの炭素数としては、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~4が更に好ましい。
フルオロオレフィンの具体例としては、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CHF、CH2=CF2、CF2=CFCF3、CF2=CHCF3、CF3CH=CHF、CF3CF=CH2、式CH2=CXf1(CF2)n1Yf1(式中、Xf1及びYf1は、独立に水素原子又はフッ素原子であり、n1は2~10の整数である。)で表される単量体が挙げられる。
フルオロオレフィンとしては、本塗膜の耐候性の点から、CF2=CF2、CH2=CF2、CF2=CFCl、CF3CH=CHF、及び、CF3CF=CH2が好ましく、CF2=CF2、CH2=CF2及びCF2=CFClがより好ましく、CF2=CFClが更に好ましい。
フルオロオレフィンは、2種以上を併用してもよい。
単位A1の含有量は、本塗膜の耐候性の点から、含フッ素重合体Aが含む全単位に対して、20~80モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~60モル%が更に好ましい。
含フッ素重合体Aは、さらに、フルオロオレフィン以外のフッ素原子を含む単量体に基づく単位を含んでもよい。
含フッ素重合体Aは、エポキシ基と反応する反応性基を有する。かかる反応性基は、含フッ素重合体Aを構成する単位中に存在することが好ましい。
含フッ素重合体Aが有する反応性基の具体例としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、加水分解性シリル基、酸無水物基が挙げられ、ヒドロキシ基、カルボキシ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
含フッ素重合体Aが1分子中に有する上記反応性基の数は、1又は2以上であってもよい。また、含フッ素重合体Aは、上記反応性基の2種以上を有していてもよい。
含フッ素重合体Aは、エポキシ基と反応する反応性基を有する単位(以下、単位A2ともいう。)を含むことが好ましく、ヒドロキシ基を有する単位(以下、単位A21ともいう。)、又は、カルボキシ基を有する単位(以下、単位A22ともいう。)を含むことがより好ましく、単位A21を含むことが更に好ましい。単位A2は、フッ素原子を有さないのが好ましい。
単位A21の具体例としては、ヒドロキシ基を有する単量体に基づく単位、及び、含フッ素重合体が側鎖に有する反応性基の少なくとも一部が、ヒドロキシ基に変換されてなる単位(例えば、アルコキシ基等の保護基を脱保護して得られるヒドロキシ基を有する単位)が挙げられる。単位A21は、フッ素原子を有さないのが好ましい。
ヒドロキシ基を有する単量体の具体例としては、アリルアルコール、又は、ヒドロキシ基を有する、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
ヒドロキシ基を有する単量体の具体例としては、CH2=CHO-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHCH2O-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHOCH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2OH、CH2=CHOCH2CH2CH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2CH2CH2OHが挙げられる。ヒドロキシ基を有する単量体としては、フルオロオレフィンとの共重合性の点から、CH2=CHCH2OCH2CH2OH、及び、CH2=CHOCH2CH2CH2CH2OHが好ましい。
なお、「-cycloC6H10-」はシクロへキシレン基を表し、「-cycloC6H10-」の結合部位は、通常1,4-である。
ヒドロキシ基を有する単量体は、2種以上を併用してもよい。
単位A22の具体例としては、カルボキシ基を有する単量体に基づく単位が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、不飽和カルボン酸が挙げられ、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシ基を有する単量体のヒドロキシ基にカルボン酸無水物を反応させて得られる単量体が好ましい。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、CH2=CHCOOH、CH(CH3)=CHCOOH、CH2=C(CH3)COOH、HOOCCH=CHCOOH、CH2=CH(CH2)n11COOHで表される単量体(ただし、n11は1~10の整数を示す。)、CH2=CHO(CH2)n12OC(O)CH2CH2COOHで表される単量体(ただし、n12は1~10の整数を示す。)が挙げられる。
単位A2の含有量は、含フッ素重合体Aが含む全単位に対して、1~40モル%が好ましく、3~25モル%がより好ましく、5~15モル%が更に好ましい。
含フッ素重合体Aは、本塗膜の塗膜物性を調節するために、エポキシ基と反応する反応性基を有さず、かつフッ素原子を有さない単位(以下、単位A3ともいう。)を更に含むのが好ましい。
単位A3は、上記反応性基を有さず、かつフッ素原子を有さない単量体(以下、単量体A3ともいう。)に基づく単位が好ましい。
単量体A3としては、アルケン、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
単量体A3としては、フルオロオレフィンとの重合性の点から、ビニルエーテル及びビニルエステルが好ましい。
単量体A3の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、エチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ネオデカン酸ビニルが挙げられる。
単量体A3は、2種以上を併用してもよい。
単量体A3は、含フッ素重合体AのTgが向上し、本塗料の耐ブロッキング性が向上する点から、少なくとも一部は式X1-Z1で表される単量体A31が好ましい。
X1は、CH2=CHC(O)O-、CH2=C(CH3)C(O)O-、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHCH2OC(O)-、CH2=CHO-、又は、CH2=CHCH2O-である。
X1は、フルオロオレフィンとの重合性の点から、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHCH2OC(O)-、CH2=CHO-、及び、CH2=CHCH2O-が好ましく、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHO-、及び、CH2=CHCH2OC(O)-がより好ましい。
Z1は、式-C(ZR1)3で表される炭素数4~8のアルキル基(ただし、3個のZR1はそれぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基である。)、炭素数6~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のシクロアルキルアルキル基、炭素数6~10のアリール基、又は、炭素数7~12のアラルキル基である。中でも、本塗膜の耐候性の点から、式-C(ZR1)3で表される炭素数4~8のアルキル基及び炭素数6~10のシクロアルキル基が好ましい。
式-C(ZR1)3で表される基は、この式で明示された「C(炭素原子)」に3個の式ZR1で表される基が結合した3級炭素原子を有する構造を有しており、上記基が式X1で表される基に直接結合している。3個のZR1は、3個ともにメチル基であるか、1個がメチル基であり、残りの2個がそれぞれ独立に炭素数2~5のアルキル基であるか、2個がメチル基であり、1個が炭素数3~5のアルキル基であるのが好ましい。1個がメチル基であり、残りの2個がそれぞれ独立に炭素数2~5のアルキル基である場合、3個のZ1のうちの残りの2個の炭素原子の総数は、4~6が好ましい。式-C(ZR1)3で表される基は、tert-ブチル基、及び、ZR1で表される基の2個がメチル基でありかつ1個が炭素数3~5のアルキル基である3級アルキル基がより好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が好ましい。
シクロアルキルアルキル基としては、シクロヘキシルメチル基が好ましい。
アラルキル基としては、ベンジル基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基及びナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
なお、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基、アラルキル基の水素原子は、アルキル基で置換されていてもよい。この場合、置換基としてのアルキル基の炭素数は、シクロアルキル基、アリール基の炭素数には含めない。
単量体A31の具体例としては、シクロヘキシルビニルエーテル、ピバル酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、安息香酸ビニル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単量体A31は、2種以上を併用してもよい。
含フッ素重合体Aが単位A3を含む場合の単位A3の含有量は、含フッ素重合体AのTgが向上する点から、含フッ素重合体Aが含む全単位に対して、5~60モル%が好ましく、20~50モル%がより好ましく、30~45モル%が更に好ましい。
含フッ素重合体Aは、含フッ素重合体Aが含む全単位に対して、単位A1と単位A2と単位A3とを、この順に20~80モル%、1~40モル%、5~60モル%含むのが好ましく、40~60モル%、5~15モル%、30~45モル%含むのがより好ましい。
含フッ素重合体AのTgは、本塗料の耐ブロッキング性及び本塗膜の表面平滑性が向上する点から、20~120℃が好ましく、20~80℃がより好ましく、30~60℃が更に好ましく、35~50℃が特に好ましい。
含フッ素重合体Aが水酸基価を有する場合、含フッ素重合体Aの水酸基価は、腐食耐性がより優れる点で、0mgKOH/g超150mgKOH/g未満が好ましく、5~100mgKOH/gがより好ましく、15~70mgKOH/gが更に好ましく、30~60mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体Aが酸価を有する場合、含フッ素重合体Aの酸価は、腐食耐性がより優れる点で、0mgKOH/g超10mgKOH/g未満が好ましく、2~8mgKOH/gがより好ましく、3~7mgKOH/gが更に好ましい。
含フッ素重合体Aは、公知の方法で製造できる。
含フッ素重合体Aの製造方法としては、溶媒とラジカル重合開始剤の存在下、各単量体を共重合させる方法が挙げられ、具体例としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合が挙げられる。製造における反応温度、反応圧力及び反応時間は、適宜調整されればよい。
含フッ素重合体Aの含有量は、本塗料の全質量に対して、18.0~40.0質量%が好ましく、23.0~35.0質量%がより好ましく、28.0~33.5質量%が更に好ましい。含フッ素重合体Aの含有量が18.0質量%以上であれば、本塗膜の二層分離性により優れる。
非フッ素重合体は、ビニルアルコールに基づく単位を有し、フッ素原子を有しない。非フッ素重合体は、エポキシ基を有しないことが好ましい。
ビニルアルコールに基づく単位の含有量は、エポキシ化合物との反応性に優れる点で、非フッ素重合体が含む全単位に対して、1~40モル%が好ましく、5~35モル%がより好ましく、10~25モル%が更に好ましい。
非フッ素重合体は、アセタール基を有する単位を含むことが好ましい。アセタール基を有する単位は、例えば、アルデヒド類を用いたポリビニルアルコールのアセタール化によって得られる。
アセタール基を有する単位としては、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとのブチラール反応によって得られるブチラール基を有する単位であるのが好ましい。
アセタール基を有する単位の含有量は、非フッ素重合体の製造が容易になる点で、非フッ素重合体が含む全単位に対して、5~35モル%が好ましく、10~25モル%がより好ましい。
非フッ素重合体は、酢酸ビニルに基づく単位を含むことが好ましい。
酢酸ビニルに基づく単位の含有量は、粉体塗料の耐ブロッキング性がより優れる点で、非フッ素重合体が含む全単位に対して、5~35モル%が好ましく、10~25モル%がより好ましい。
非フッ素重合体の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールが挙げられる。ここで、ポリビニルアセタールは、ビニルアルコールに基づく単位と、アセタール基を有する単位と、酢酸ビニルに基づく単位と、を含む重合体である。
非フッ素重合体は、本塗膜の曲げ時の密着性及び耐アルカリ性等により優れる点で、ポリビニルアセタールが好ましく、アセタール基を有する単位がブチラール基を有する単位であるポリビニルブチラールがより好ましい。
非フッ素重合体は、市販品を用いてもよく、具体例としては、ポリビニルブチラールであるMowital(モビタール)シリーズ(クラレ社製)が挙げられる。
非フッ素重合体のMnは、10000~30000が好ましく、15000~20000がより好ましい。
非フッ素重合体のMwは、20000~70000が好ましく、30000~60000がより好ましい。
非フッ素重合体の含有量は、本塗料の全質量に対して、5~35質量%が好ましく、10~25質量%がより好ましい。非フッ素重合体の含有量が5質量%以上であれば、本塗膜の曲げ時の密着性がより優れる。非フッ素重合体の含有量が35質量%以下であれば、本塗膜の二層分離性がより優れる。
エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物であり、1分子中にエポキシ基を2個以上有するのが好ましく、100個以下有するのが好ましい。エポキシ化合物は、フッ素原子を有しないことが好ましい。
エポキシ化合物の具体例としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、フェノールとフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノールのグリシジルエーテル化物、アルコールのジグリシジルエーテル化物、トリグリシジルイソシアヌレートが挙げられる。
中でも、エポキシ化合物は、芳香族環を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、本塗膜の硬度をより向上できる点から好ましく用いられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、本塗膜の柔軟性をより向上できる点から好ましく用いられる。
本塗料は、本塗膜の二層分離性がより優れる点で、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、を含むことが好ましい。
ここで、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と比較して、含フッ素重合体A及び非フッ素重合体との反応性に優れる。そのため、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を単独で用いた場合、含フッ素重合体Aと非フッ素重合体とが十分に相分離する前に塗装層が硬化するので、本塗膜の二層分離性が不十分になる場合がある。この問題に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、を併用すれば、含フッ素重合体Aと非フッ素重合体とが十分に相分離した後に塗装層が硬化するので、二層分離性に優れた塗膜が得られる。
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、を併用することで、両成分の機能が良好に発現して、本塗膜の曲げ時の密着性及び耐アルカリ性等にもより優れる。
本塗料がエポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを含む場合、本塗料における、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有量に対する、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量の質量比(ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量/ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有量)は、上層(含フッ素重合体Aを主として含む層)が劣化しにくくなる点で、1.0よりも大きいことが好ましく、2.0以上がより好ましい。
上記質量比は、架橋性がより優れる点で、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。
エポキシ化合物のエポキシ当量は、本塗膜の腐食耐性及び曲げ時の密着性がより優れる点で、500~2000g/epが好ましく、700~1500g/epがより好ましく、900~1300g/epが更に好ましい。なお、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物の質量を意味し、JIS K7236(電位差滴定法)に記載の方法により測定できる。
エポキシ化合物の含有量は、本塗料の全質量に対して、25~65質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましく、45~55質量%が更に好ましい。エポキシ化合物の含有量が40質量%以上であれば、本塗膜の二層分離性がより優れる。
本塗料における、非フッ素重合体の含有量に対する、含フッ素重合体Aの含有量の質量比(含フッ素重合体Aの質量/非フッ素重合体の含有量)は、本塗膜の腐食耐性及び曲げ時の密着性がより優れる点で、1.0以上が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、2.0~4.0が更に好ましく、2.5~3.6が特に好ましい。
本塗料における、含フッ素重合体Aの含有量に対するエポキシ化合物の含有量の質量比(エポキシ化合物の含有量/含フッ素重合体Aの含有量)は、本塗膜の二層分離性がより優れる点で、1.0よりも大きいのが好ましく、1.0超3.0以下がより好ましく、含フッ素重合体Aが塗膜の上部で完全に連続した層(すなわち、島状になっていない連続膜)を形成しやすくなる点から、1.5~2.5が更に好ましく、1.5~2.2が特に好ましい。
特に、本塗膜の二層分離性がより優れる点から、本塗料における、含フッ素重合体Aの含有量に対するエポキシ化合物の含有量の質量比が1.0よりも大きく、かつ、非フッ素重合体の含有量に対するエポキシ化合物の含有量の質量比が1.0よりも大きいことが好ましく、含フッ素重合体Aの含有量に対するエポキシ化合物の含有量の質量比が1.5~2.2であり、かつ、非フッ素重合体の含有量に対するエポキシ化合物の含有量の質量比が2.2~3.6であることがより好ましい。
本塗料における、非フッ素重合体の含有量に対する、エポキシ化合物の含有量の質量比(エポキシ化合物の含有量/非フッ素重合体の含有量)は、本塗膜の曲げ時の密着性及び耐アルカリ性がより優れる点で、1.0よりも大きいことが好ましく、2.0以上がより好ましい。
上記質量比は、本塗膜の二層分離性がより優れる点で、4.0以下が好ましく、3.6以下がより好ましい。
本塗料である粉体塗料は、上記3成分(含フッ素重合体A、非フッ素重合体及びエポキシ化合物)のそれぞれを含む3種の粒子を含む粉体であってもよく、上記3成分の2成分を同一粒子内に含む粒子と他の成分を含む粒子とを含む粉体であってもよく、上記3成分を同一粒子内に含む粒子からなる粉体であってもよい。
具体的には、例えば、含フッ素重合体Aの粒子と非フッ素重合体の粒子とエポキシ化合物の粒子とを含む粉体、含フッ素重合体Aと非フッ素重合体とを同一粒子内に含む粒子とエポキシ化合物の粒子とを含む粉体、含フッ素重合体Aと非フッ素重合体とエポキシ化合物とを同一粒子内に含む粒子からなる粉体、が挙げられる。
本塗料としては、含フッ素重合体Aと非フッ素重合体とエポキシ化合物とを同一粒子内に含む粒子からなる粉体であることが好ましい。
本塗料は、更に添加剤を含んでもよい。
添加剤の具体例としては、顔料、硬化剤、触媒(硬化触媒等)、上記以外の重合体(例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂)、フィラー(樹脂ビーズ等)、光安定剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、表面調整剤、脱ガス剤、流動剤、熱安定剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、低汚染化処理剤、可塑剤、接着剤等が挙げられる。
本塗料が添加剤を含む場合、添加剤は粒子として本塗料に含まれていてもよく、前記含フッ素重合体A等の本塗料を構成する粒子に含まれていてもよい。
本塗料は、溶媒(水、有機溶媒等)を含んでも含まなくてもよく、溶媒を含まないのが好ましい。溶媒の含有量は、本塗料の全質量に対して、1質量%未満が好ましく、1質量ppm以下がより好ましく、0質量%が更に好ましい。
本塗料における、ASTM D 4242-02に従って測定されるペレットフローは、30~150mmが好ましく、31~45mmがより好ましく、32~45mmが更に好ましい。
本塗料である粉体の平均粒子径は、1~100μmが好ましく、10~80μmがより好ましい。
本塗料が複数の種類の粒子を含む場合、それぞれの粒子の平均粒子径(それぞれの粒子からなる粉体の平均粒子径)は異なっていてもよいが、いずれも、1~100μmであることが好ましく、10~80μmであることがより好ましい。具体的には、例えば、含フッ素重合体Aの粒子と非フッ素重合体の粒子とエポキシ化合物の粒子とを含む粉体の場合、含フッ素重合体Aを含む粉体Aの平均粒子径と、非フッ素重合体を含む粉体Bの平均粒子径と、エポキシ化合物を含む粉体Cの平均粒子径とは異なっていてもよいが、いずれも、1~100μmであることが好ましく、10~80μmであることがより好ましい。また、各粉体の平均粒子径は大きく異なることがないことがより好ましい。
本塗料は、含フッ素重合体A、非フッ素重合体、エポキシ化合物、及び、必要に応じて添加剤を混合して製造できる。混合する含フッ素重合体A、非フッ素重合体、エポキシ化合物、添加剤等は、それぞれ独立した粉体状又はペレット状であってよい。
本塗料の製造方法の一態様としては、含フッ素重合体A、非フッ素重合体、エポキシ化合物、及び、必要に応じて添加剤を、溶融混練し、冷却し、次いで粉砕して粉体塗料を得る方法が挙げられる。この場合、含フッ素重合体A、非フッ素重合体及びエポキシ化合物が同一粒子内に含まれる。溶融混練の温度としては、80~130℃が好ましい。
また、全成分の一部でかつ複数の成分を上記のように溶融混練し、冷却し、粉砕して粉体とし、得られた粉体と他の成分の粉体とを混合して粉体塗料を得ることもできる。例えば、含フッ素重合体Aと非フッ素重合体とを溶融混練し、冷却し、粉砕して粉体とし、得られた粉体とエポキシ化合物を含む粉体Cと必要に応じて用いられる添加剤の粉体とを混合して、粉体塗料を得ることができる。この場合、得られた粉体塗料は、含フッ素重合体Aと非フッ素重合体とを同一粒子内に含む粒子と、エポキシ化合物の粒子と、用いられた添加剤の粒子を含む。
また、本塗料がエポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを含む場合、両エポキシ樹脂を溶融等で混合し粉砕して粉体化して得られた粉体Cを用いることもできる。
また、本塗料の製造方法の一態様としては、含フッ素重合体Aを含む粉体Aと、非フッ素重合体を含む粉体Bと、エポキシ化合物を含む粉体Cと、必要に応じて添加剤の粉体とを混合して粉体塗料を得る方法が挙げられる。この方法はドライブレンドとも称され、混合に際して溶融混練を行わない方法である。このドライブレンド法により得られた粉体塗料は、含フッ素重合体Aを含む粒子と非フッ素重合体を含む粒子とエポキシ化合物を含む粒子と必要に応じて用いられた添加剤を含む粒子とを含む。
また、本塗料がエポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを含む場合、両エポキシ樹脂のそれぞれの粉体を粉体Cとして用いることもできる。この場合、ドライブレンド法により得られた粉体塗料は、2種類のエポキシ化合物の粒子を含む。
各粉体はペレット状等の原材料を粉体化して使用することができ、また、市販の粉体を使用することもできる。
粉体化のための粉砕は、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて行えばよい。粉砕を行った後は、粉砕物を分級して、得られる粉体の粒子径を揃えるのが好ましい。
本塗料としては、本塗膜の二層分離性により優れる点で、含フッ素重合体A、非フッ素重合体、エポキシ化合物、及び、必要に応じて添加剤を、溶融混練し、冷却し、次いで粉砕して粉体塗料を得る方法により製造された、含フッ素重合体Aと非フッ素重合体とエポキシ化合物とを同一粒子内に含む粒子からなる粉体であることが好ましい。
本塗膜は、本塗料を基材上に付与して形成される。
また、本発明の塗装物品は、基材と、基材上に配置された本塗料から形成されてなる塗膜とを有する。
基材の材質の具体例としては、無機物、有機物、有機無機複合材が挙げられる。
無機物の具体例としては、コンクリート、自然石、ガラス、金属(鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等)が挙げられる。
有機物の具体例としては、プラスチック、ゴム、接着剤、木材が挙げられる。
有機無機複合材の具体例としては、繊維強化プラスチック、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリートが挙げられる。
また、基材は、公知の表面処理(化成処理等)が施されていてもよい。また、基材の表面には、プライマー等を塗布して形成される樹脂層(ポリエステル樹脂層、アクリル樹脂層、シリコーン樹脂層等)等を予め有してもよい。
基材の材質としては、金属が好ましく、鉄、鉄を含む合金(例えば、炭素鋼、ステンレス鋼)、アルミニウムがより好ましい。
基材の形状の具体例としては、平板状、球状、棒状が挙げられる。中でも、基材は、棒状の鉄筋母材であるのが好ましく、JIS G3112に規定されている公称直径10~60mmの鉄筋コンクリート用棒鋼が好ましい。
本塗膜の膜厚は、20~1,000μmが好ましく、20~500μmがより好ましい。
本発明の塗装物品は、本塗料を基材の表面に付与(塗装)して塗装層を形成し、得られた塗装層を加熱処理し、次いで冷却して得るのが好ましい。
塗装層の形成方法としては、静電塗装法、静電吹付法、静電浸漬法、流動浸漬法、吹付法等の塗装法等が挙げられ、粉体塗装ガンを用いた静電塗装が好ましい。
粉体塗装ガンの具体例としては、コロナ帯電型塗装ガン、摩擦帯電型塗装ガンが挙げられる。コロナ帯電型塗装ガンは、粉体塗料をコロナ放電処理して吹き付ける塗装ガンである。摩擦帯電型塗装ガンは、粉体塗料を摩擦帯電処理して吹き付ける塗装ガンである。
加熱処理時の加熱温度は、120~250℃が好ましい。加熱維持時間は、通常2~60分間である。加熱処理後は、20~25℃まで冷却するのが好ましい。加熱処理及び冷却によって塗装層が溶融及び硬化(溶融硬化)し、本塗膜が形成される。
本塗膜は、非フッ素重合体とエポキシ化合物との反応物Xを主として含む層Xと、含フッ素重合体Aとエポキシ化合物との反応物Yを主として含む層Yと、を有することが好ましい。これにより、本発明の効果がより優れる。
層Xは基材側に配置されるのが好ましく、層Yは本塗膜の表面側に配置されるのが好ましい。
層Xに含まれる反応物Xの含有量は、層Xの全質量に対して、50質量%超100質量%以下であるのが好ましい。
層Yに含まれる反応物Yの含有量は、層Yの全質量に対して、50質量%超100質量%以下であるのが好ましい。
層Xが速く形成され、層Yが遅く形成されることにより、二層分離性が良好となる。
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの例に限定されない。なお、例1~6は実施例であり、例7~10は比較例である。
(使用した成分の名称及び略称)
CTFE:クロロトリフルオロエチレン
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル
HBVE:4-ヒドロキシブチルビニルエーテル
F1:後述の製造方法で製造された含フッ素重合体
P1:Mowital B20H(ポリビニルブチラール、クラレ社商品、ビニルアルコールに基づく単位の含有量:23モル%)
E1:JER 1005F(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社商品、エポキシ当量:950~1,050g/ep)
E2:JER 4005P(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社商品、エポキシ当量:950~1,200g/ep)
レベリング剤:BYK360P(BYK社商品)、粉体
触媒1:IBMI1(イミダゾール系触媒、三菱ケミカル社商品)、液体
触媒2:ジブチルチンジラウレート、液体
硬化剤1:B1530(イソシアネート系硬化剤、EVONIK社商品)、粉体
硬化剤2:JER171N(フェノール樹脂系硬化剤、三菱ケミカル社商品)、粉体
(含フッ素重合体の製造)
オートクレーブに、炭酸カリウム(12.3g)を仕込み、真空脱気した。次に、キシレン(503g)、エタノール(142g)、CTFE(387g)、CHVE(326g)及びHBVE(84.9g)をオートクレーブ内に導入して昇温し、重合開始剤としてtert-ブチルペルオキシピバレートの50質量%キシレン溶液(20mL)を連続的に添加して、重合を行った。11時間後にオートクレーブを水冷して重合を停止し、オートクレーブ内溶液をろ過して、含フッ素重合体F1を含む溶液を得た。
得られた溶液を、65℃にて24時間真空乾燥して溶媒を除去し、更に130℃にて20分間真空乾燥して、ブロック状の含フッ素重合体F1を得た。
含フッ素重合体F1は、含フッ素重合体F1が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位、CHVEに基づく単位、HBVEに基づく単位を、この順にそれぞれ、50モル%、39モル%、11モル%含む重合体であった。含フッ素重合体F1のTgは52℃であり、Mnは10,000であり、水酸基価は50mgKOH/gであった。
(粉体塗料の製造)
ブロック状の含フッ素重合体F1を粉砕機(FRITSCH社製、製品名:ロータースピードミルP14)を用いて25℃で粉砕し、150メッシュの網を用いて分級して、平均粒子径が約40~60μmである粉末状の含フッ素重合体F1を得た。得られた粉末状の含フッ素重合体F1と、他の各塗料成分とを、表1に示す配合で混合し、100℃で溶融混練した。その後冷却し、粉砕して平均粒子径が60μmである粉体塗料を得た。
(試験片の作製と評価)
各粉体塗料を用いて、クロメート処理を行ったアルミニウム基材(150mm×70mm)又は鉄基材(150mm×70mm)の一面に、静電塗装機(小野田セメント社商品名、GX3600C)を用いて静電塗装を行い、基材上に粉体塗料層(塗装層)を形成した。得られた粉体塗料層付き基材を、加熱処理として200℃の雰囲気中で20分間保持して溶融硬化させた後、25℃まで冷却し、膜厚約200μmの各塗膜付き基材を得た。得られた塗膜付き基材を試験片として、それぞれ評価した。評価結果を表1に示す。
(評価)
<曲げ密着性>
各例で得られた塗膜付きアルミニウム基材を、70mm×20mmに切断して試験片として用い、JIS K 5600-5-1に準拠して、規定された直径の円筒形マンドレルに試験片を巻き付けたときの塗膜の曲げ密着性について、塗膜の割れが生じない円筒形マンドレルの直径の最低値(mm)で評価した。円筒形マンドレルの直径の最低値が小さいほど、曲げ密着性に優れる。
<腐食耐性>
各例で得られた塗膜付き鉄基材を試験片として用い、ASTM B117に準拠して腐食耐性試験を行った。具体的には、塗膜に対し鉄基材に達するようにカッターでクロスカット傷を入れ、10%食塩水を噴霧して168時間静置した。次に、イオン交換水を用いて、塩水噴霧処理が施された試験片を水洗した後乾燥させ、試験片を目視観察し、以下の基準に従って評価した。
A:塗膜表面に変化なし。
B:クロスカット部分に多少の変化が見られる。
C:塗膜に腐食又は割れが見られる。
<二層分離性>
試験片を切断し、走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)によって、塗膜断面の元素マッピングを行った画像を得た。測定は、以下の条件にて行った。
装置名:Hitachi S-4800
加速電圧:20kV
倍率:500
上記の装置によって得られた画像に基づき、以下の基準で判定した。
A:画像において、上下層の明確な界面が視認され、かつ、上層が完全に連続していること(すなわち、塗膜の膜厚方向と直交する方向で上層が途切れていないこと)が確認された。
B:画像において、上下層の明確な界面が視認されたが、上層が完全に連続していないこと(すなわち、塗膜の膜厚方向と直交する方向で上層が途切れていること)が確認された。
C:画像において、上下層の明確な界面が視認されなかった。
<耐アルカリ性>
各例で得られた塗膜付きアルミニウム基材を試験片として用い、下記2つの方法によって評価した。
・スポット試験
イオン交換水及び試薬特級の水酸化ナトリウムを用いて、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を調製し、試験片の塗膜上に1滴を滴下して、12時間静置した。その後、塗膜表面を拭き取り、滴下箇所の変化を目視で評価した。
・浸漬試験
イオン交換水及び試薬特級の水酸化ナトリウムを用いて、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を調製し、試験片の塗膜上に5mLを滴下して、1週間静置した。その後、塗膜表面を拭き取り、滴下箇所の変化を目視で評価した。
A:いずれの試験でも変化なし。
B:いずれの試験でも塗膜表面にわずかな変化が観測される。
C:いずれの試験でも塗膜表面に明らかなふくれや白化が観測される。
<耐酸性>
各例で得られた塗膜付きアルミニウム基材を試験片として用い、下記2つの方法によって評価した。
・スポット試験
イオン交換水及び試薬特級の硫酸を用いて、10質量%硫酸水溶液を調製し、試験片の塗膜上に1滴を滴下して、12時間静置した。その後、塗膜表面を拭き取り、滴下箇所の変化を目視で評価した。
・浸漬試験
イオン交換水及び試薬特級の塩酸を用いて、10質量%塩酸水溶液を調製し、試験片の塗膜上に5mLを滴下して、1週間静置した。その後、塗膜表面を拭き取り、滴下箇所の変化を目視で評価した。
A:いずれの試験でも変化なし。
B:いずれの試験でも塗膜表面にわずかな変化が観測される。
C:いずれの試験でも塗膜表面に明らかなふくれや白化が観測される。
表1中、(E1+E2)/F1は、含フッ素重合体の含有量に対するエポキシ化合物の含有量の質量比を意味し、(E1+E2)/P1は、非フッ素重合体の含有量に対するエポキシ化合物の含有量の質量比を意味し、F1/P1は、非フッ素重合体の含有量に対する含フッ素重合体の含有量の質量比を意味し、E1/E2は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有量に対するビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量の質量比を意味する。
表1に示す通り、含フッ素重合体Aと、ビニルアルコールに基づく単位を有する非フッ素重合体と、エポキシ化合物とを含む粉体塗料を用いた場合、腐食耐性及び曲げ時の密着性に優れた塗膜を形成できるのが確認された。
なお、2021年06月22日に出願された日本特許出願2021-103428号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (14)

  1. フルオロオレフィンに基づく単位を有し、エポキシ基と反応する反応性基を有する含フッ素重合体と、
    ビニルアルコールに基づく単位を有する非フッ素重合体と、
    エポキシ基を有する化合物と、を含む、粉体塗料。
  2. 前記含フッ素重合体におけるエポキシ基と反応する反応性基が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、加水分解性シリル基、又は、酸無水物基である、請求項1に記載の粉体塗料。
  3. 前記含フッ素重合体が、ヒドロキシ基を有する単量体に基づく単位を含み、
    前記ヒドロキシ基を有する単量体に基づく単位の含有量が、前記含フッ素重合体が含む全単位に対して、1~40モル%である、請求項1又は2に記載の粉体塗料。
  4. 前記非フッ素重合体におけるビニルアルコールに基づく単位の含有量が、前記非フッ素重合体が含む全単位に対して、1~40モル%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体塗料。
  5. 前記非フッ素重合体が、ポリビニルブチラールである、請求項1~4のいずれか1項に記載の粉体塗料。
  6. 前記エポキシ基を有する化合物として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の粉体塗料。
  7. 前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有量に対する、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量の質量比が、1.0よりも大きい、請求項6に記載の粉体塗料。
  8. 前記非フッ素重合体の含有量に対する、前記含フッ素重合体の含有量の質量比が、1.0以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粉体塗料。
  9. 前記含フッ素重合体の含有量に対する、前記エポキシ基を有する化合物の含有量の質量比が、1.0よりも大きく、
    前記非フッ素重合体の含有量に対する、前記エポキシ基を有する化合物の含有量の質量比が、1.0よりも大きい、請求項1~8のいずれか1項に記載の粉体塗料。
  10. 前記含フッ素重合体と前記非フッ素重合体と前記エポキシ基を有する化合物とを同一粒子内に含む粒子を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の粉体塗料。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の粉体塗料を基材の表面に塗装して塗装層を形成し、前記塗装層を溶融硬化させて塗膜を形成する、塗装物品の製造方法。
  12. 前記基材の材質が金属である、請求項11に記載の塗装物品の製造方法。
  13. 基材と、前記基材の表面上に配置された請求項1~10のいずれか1項に記載の粉体塗料から形成されてなる塗膜と、を有する、塗装物品。
  14. 前記基材の材質が金属である、請求項13に記載の塗装物品。
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