JP7846421B2 - 波長変換素子の製造方法 - Google Patents

波長変換素子の製造方法

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Description

本開示は、波長変換装置に使用される波長変換素子の製造方法に関する。
波長変換技術は、半導体レーザでは直接出力できない波長域、または出力できる波長域であっても半導体レーザでは得られない高出力な光が必要な用途において注目されている。波長変換装置に用いられる波長変換素子は、2次の非線形効果を有する光学結晶等を用いることによって実現される。2次の非線形効果を有する代表的な光学結晶としては、例えば、LiNbO(ニオブ酸リチウム)、KNbO(ニオブ酸カリウム)、LiTaO(タンタル酸リチウム)、またはKTiOPO(チタン酸リン酸カリウム)が挙げられる。特に、周期分極反転ニオブ酸リチウム(Periodically Poled Lithium Niobate、以下、PPLNという)を利用した光導波路は、光強度の増大及び疑似位相整合技術の利用による高い波長変換効率が実現可能な素子として注目されている。このPPLNは、光通信における光信号波長変換、光加工、医療、生物工学等の様々な分野で利用される、紫外域からテラヘルツ域に至るまでの幅広い光波長帯での応用に期待されている。
さらに、PPLNを用いることで、低雑音な光増幅が可能な位相感応増幅器(PSA)を構成するパラメトリック増幅素子及び励起光発生素子の作製が可能である。このため、PPLNは、高利得、低雑音な光増幅特性を実現し、次世代の光ファイバ通信分野で重要な役割を担うデバイスとして適用が検討されている。また量子コンピューティングの分野において、PPLNを利用した光導波路をファイバリング共振器内に挿入し、パラメトリック発振素子として使用することができる。この構成を用いて光コヒーレントイジングマシン装置を実現し、従来の計算機よりも高速に大容量の計算を実証した報告がなされている。
上述したLiNbO等の2次の非線形効果を有する光学結晶(以下、「非線形光学結晶」という。)の周期分極反転構造を有する非線形光導波路を用いる波長変換素子は、例えば、特許文献1に記載されている。
特許文献1には、リッジ型の光導波路を作製する例が開示されている。特許文献1には、リッジ型光導波路において、光の閉じ込め効果を向上させるため、周期分極反転構造を有する非線形光学結晶の第1の基板と、その第1の基板の屈折率より小さい屈折率を有する第2の基板を貼り合わせて波長変換素子を作製することが記載されている。
特許文献1では、さらに、第1の基板と第2の基板とを貼り合わせる工程の後に第1の基板の厚さを20μmになるまで研磨加工し、その後に基板をエッチングしてリッジ型の光導波路を作成している。光導波路となる非線形光学結晶膜の厚さを20μmとすることで高いパワー密度が光導波路中で得られるようにしている。
また、特許文献1には、接着剤の劣化や温度変化によるクラックを回避するために、第1の基板と同種の非線形光学結晶を第2の基板として使用し、第1の基板と第2の基板とに熱を加えて拡散接合させることも記載されている。これらの波長変換技術を利用する技術分野においては、更なる高性能化のために、より高い波長変換効率を有する波長変換装置を実現することが重要となっている。
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来のリッジ型の光導波路を用いた波長変換素子は、以下の課題を有する。
(a)プロセス工程順序の問題、周期分極反転を作製後、光導波路形状に加工するため、QPM周期を後プロセス工程で調整・制御できない課題について
上記の特許文献1などで示されているように、疑似位相整合条件を満たす光導波路構造を有する波長変換素子を作製する場合、光導波路コアとして用いる材料としては、大きな光非線形定数(感受率)を有する非線形光学結晶が用いられることが多く、例えば、LiNbO(ニオブ酸リチウム)、KNbO(ニオブ酸カリウム)、LiTaO(タンタル酸リチウム)、またはKTiOPO(チタン酸リン酸カリウム)のような材料が用いられる。
上記のような非線形光学結晶の場合、周期分極反転構造を形成するためには、分極反転のために、非常に大きな電界を局所的に印加することが必要となる。この電界印加は、一般に、非線形光学結晶基板に微細構造の金属電極パターンを形成した後に、大きな電圧を印加することにより行われている。このように、周期分極反転構造の形成には、微細かつ複雑な作製プロセスが必要になる。そのため、非線形光学結晶からなる光導波路コア層を光導波路コアの形状に加工した後に、当該光導波路コアに分極反転のための電界印加の際に用いる電極を形成することが困難であるのが現状である。
上記の周期分極反転構造を有する光導波路コアからなる波長変換素子の作製プロセスとしては、概ね一般的には、以下のプロセスとなる。
(1)まず、光導波路コア層の材料に、周期分極反転構造を予め形成する。
具体的には、光導波路コア層の材料により形成した平板状の光導波路コア基板の全面に、特定方向の高電界を印加させ、基板全体の誘電分極ドメインを揃える。次に、所望の設計値の分極反転構造に合わせたフォトマスクパターンとフォトリソ工程などを用いて、基板の表面に分極反転用電極パターンを作製し、高電界印加により一様な誘電分極の内部に反転分極構造を形成する。その後、フォトレジストや電極膜を除去することにより、周期分極反転構造が形成された光導波路コア基板を完成させる。
(2)次に、周期分極反転構造が形成された光導波路コア基板を、使用光波長において光導波路コアより低屈折率な基板に、貼り合わせ(接合)する。具体的には、両基板の貼り合わせ面を平坦かつ鏡面となるように研磨し、両基板の貼り合わせ面を熱接合やコロナ放電などにより接合する。
(3)この貼り合わせた基板を、研削、研磨装置などを用いて、後工程で実施するフォトレジストによるパターニングなどのフォト工程に使用できるウエハ形状などに加工する。このとき、光導波路コア層の膜厚については、形成する光導波路コアの膜厚となるように合わせて薄膜化加工を行う。
(4)次に、光導波路コア層を加工形成して光導波路コアを形成する。具体的には、フォトレジストなどを用いて、光導波路コア層に光導波路コア形状にパターニングを実施したのち、ドライエッチング法、ダイシング加工法や、プロトン交換法などによって、光導波路コアを形成する。
このようにして、周期分極反転構造を有する光導波路からなる波長変換素子が作製される。
上記の波長変換素子の作製工程では、周期分極反転構造が予め形成された光導波路コア基板を低屈折率な基板に接合して、薄膜化した後、光導波路コア構造が作成される。この光導波路コア層の薄膜化や、その後の光導波路コア加工時には、加工誤差が発生する。このような光導波路コアの加工時に発生する加工誤差の影響により後述の(式10)に示される各使用波長における光導波路コアの実効屈折率n1,n2,n3は一つの値とならず、加工誤差に起因する揺らいだ値となってしまう。このように、分極反転構造を形成した後の工程による加工誤差が、完成した波長変換素子の波長変換光の光スペクトル分布などの光学特性のバラつきの発生する要因となっている。
(b)ウエハ面内の膜厚分布が一様に加工できない課題について
上記のような波長変換素子の作製工程の場合には、光導波路コアの加工時に膜厚分布などの形状誤差が発生し易いという問題がある。
上記の作製工程には、光導波路コア基板より低屈折率な基板に、光導波路コア基板を貼り合わせ(接合)て接合基板を作製する工程が含まれている。この工程では、線熱膨張係数の異なる2つの基板を貼り合わせることになるため、貼り合せ基板に反りが生じ易い。そのため、本来、膜厚が均一でなくてはならない貼り合せ基板において、光導波路コア層の薄膜化加工の研削、研磨工程によって膜厚が均一にならなくなってしまう。
つまり、上記のような作製工程において発生する光導波路コア層の膜厚誤差により、作製された光導波路コアの屈折率が変動してしまい、光導波路の周期分極反転構造の位相整合条件にある程度の誤差が生じてしまう。このため、光差周波発生等の波長変換効率が低下し、波長変換素子から発生する波長変換光の中心波長や光強度などの光学特性が設計値とずれる原因となってしまう。
これらの発生した膜厚誤差は、光導波路コア層の加工後に判明するため、光導波路コア層を光導波路形成のために加工するときには、それにより作製される光導波路の周期分極反転構造は決まっているため、膜厚誤差などの加工誤差に応じた補正をするために修正できないのが現実であった。
なお、光導波路コアの実効屈折率を所望の設定値にするために、幅を膜厚の変動に合わせて変動させたフォトマスクパターンを用いてフォトリソグラフィ工程とドライエッチング加工などを行うことで、光導波路コアのコア幅を変動させて光導波路コアの実効屈折率をある程度補正することはできる。しかし実際には、光導波路コアの形成時にも加工誤差が発生するため、光導波路コアの実効屈折率を所望の設定値とするには限界がある。また、導波路コア幅の変動は、光導波路における光損失の増加要因となるため、制御光などの光強度が減少し、結果的に、波長変換装置としての効率を減少させてしまう。
(c)光導波路コア層を研削、研磨加工することによる膜厚精度の課題について
上述した波長変換素子の作製工程における光導波路コア層の薄膜化加工においても、必ず加工誤差は発生する。したがって、光導波路コア層の膜厚の絶対値自体にも、研削、研磨プロセス毎に加工深さが微妙に変動し、その結果作製される光導波路コアの膜厚バラつきが発生してしまう。つまり、同じ研削、研磨プロセスを経ても同一の膜厚になるとは限らない。また、サブミクロンオーダーでは、平均膜厚も変動するため光導波路コアの実効屈折率には一定のバラつきが生じる。そのため、個々の光導波路コアの疑似位相整合の条件もばらつくため、例えば差周波発生光の光波長の中心波長が変動する結果となってしまう。
(d)温度制御補正に限界がある課題について
波長変換素子は、ペルチェ素子などの温度制御素子を用いることによって、高精度な温度制御を行うことにより、光導波路の実効屈折率の温度分散を利用して、温度変化による光導波路の実効屈折率を変化させて疑似位相整合条件を調整し、例えば差周波発生による差周波光の中心波長をある程度制御することは可能である。
しかし、波長変換素子の膜厚誤差に対応して、温度制御により光導波路の実効屈折率をある程度平均的に補正することは可能であるが、局所的な膜厚分布に対応して補正をするには、光導波路コアの温度を局所的に制御する必要があり、温度制御素子や制御回路などが複雑化し、詳細な制御が必要になるなど困難を伴う。
また、実際は、波長変換素子全体が常に完全に同一温度であることはなく、温度制御素子との熱交換や環境温度と波長変換素子の温度差、波長変換素子や、実装構造の周囲からの輻射熱の状態などによっても、波長変換素子内部に温度分布が生じる。そのため、たとえ波長変換素子の光導波路コアの実効屈折率が全体的に一致した唯一の値を持っているとしても、ある一定幅で実効屈折率のバラつきが発生してしまう。
なお、波長変換装置の温度制御は、使用時の環境温度の変化を補正するときの制御方法としても重要であるため、膜厚や加工誤差の補正にのみ温度制御を用いることは困難である。また、波長変換素子の温度制御においては、直接熱伝導による熱拡散が発生するため、波長変換素子の局所的な温度制御には限界がある。以上のことから、波長変換素子の疑似位相整合条件の調整、例えば差周波発生による差周波光の中心波長制御に、温度制御を利用するにも限界がある。
以上説明したように、上述したような波長変換素子の作製工程では、光導波路コアを加工形成する工程よりも前の光導波路コア層の膜厚変動を原因とする光導波コアの実効屈折率の誤差を、光導波路コアを形成する工程で補正したり、温度制御により補償することには限界があるため、歩留まり向上に限界があった。
したがって、光導波路コア層の薄膜加工の研削、研磨工程や、光導波路コアの幅加工時の加工誤差の発生後に、それにより発生する誤差に対応して、光導波路コアの疑似位相整合条件を制御する方法が必要となっている。
具体的には、光導波路コアを形成する工程において、光導波路コアが有する周期分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に制御可能とする方法が必要となっている。
特許第3753236号
本開示は、上記の課題を解決するためになされるものであり、主には、光導波路コアを形成する工程において、光導波路コアが有する周期分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に制御することを目的とする。
本開示の一実施形態は、このような目的を達成するために、波長変換素子の製造方法において以下のような工程を含むことを特徴とする。
二次の非線形効果を有する少なくとも一つ以上の周期分極反転領域を有する光導波路コア基板を形成する第1の工程と、光導波路コア基板と、少なくとも使用光波長の範囲で光導波路コア基板よりも低い屈折率を有する基板とを接合して接合基板を形成し、光導波路コア基板を薄膜化して光導波路コア層を形成する第2の工程と、接合基板の光導波路コア層を加工して、光導波路コアを形成する第3の工程とを含む波長変換素子の製造方法であって、
第3の工程において、少なくとも1つ以上の周期分極反転領域に対する光導波路コアの形成位置を選択することにより、形成された光導波路コアが有する周期分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に調整する波長変換素子の製造方法。
本開示の製造方法により作製される波長変換素子の基本構成を示す斜視図である。 図1の基本構成として示した波長変換装置素子を実装した波長変換装置の実装構造の構成例を示す図である。 本開示の各実施形態において用いられる波長変換素子の製造方法の工程を示す図である。 本開示の第1の実施の形態の製造方法による光導波路コアの有する周期分極反転構造の分極反転周期を調整する原理を説明するための概略図である。 本開示の第1の実施形態の製造方法を説明するための概略図である。 本開示の第2の実施形態の製造方法を説明するための概略図である。 本開示の第2の実施形態の製造方法の別の態様を説明するための概略図である。 本開示の第2の実施形態の製造方法のうち、2つ目の態様を説明するための概略図である。 本開示の第3の実施形態の製造方法を説明するための概略図である。 本開示の第3の実施形態の製造方法の別の態様を説明するための概略図である。 本開示の第4の実施形態の製造方法を説明するための概略図である。 本開示の第4の実施形態の製造方法における光導波路コアを形成する位置の例を説明するための概略図である。 本開示の第4の実施形態の製造方法における光導波路コアを形成する位置の別の例を説明するための概略図である。 本開示の第4の実施の形態の製造方法の別の態様を説明するための概略図である。 本開示の第4の実施形態の製造方法のもう一つの態様を説明するための概略図である。 本開示の第2の実施例の波長変換素子を説明するための概略図である。
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、周期分極反転領域と光導波路コアの配置と、製造方法の作製プロセスを最適化することにより、光導波路コアの有する分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に選択することで疑似位相整合条件が調整できること、その結果波長変換発生光の光学特性が可変できることを見出したことにより、本発明を完成するに至った。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
(波長変換装置)
本開示の製造方法の各実施形態の説明に先立って、本開示の製造方法により作製される波長変換装置について説明する。
(2次非線形光学効果と位相整合条件の説明)
一般に、2次非線形光学結晶に波長の異なる信号光(Signal光)[波長:λ、周波数:ω]と励起光(Pump光)[波長:λ、周波数:ω]を入射したとき波長変換光(アイドラ光:Ider光とも呼ばれる)[波長:λ、周波数:ω]は、位相整合条件と呼ばれる関係に従った波長の光を発生させる。
まず、和周波発生、すなわち、ω=ω+ωの場合を考える。
光子の運動量はプランク定数hと波数kとにより、hk/(2π)と表されることから、波数不整合をΔk、信号光の波数をk1、励起光の波数をk2、波長変換光の波数をk3とすると、運動量保存則より、以下の関係が成り立つ。
hΔk/2π=h(k-k-k)/2π ・・・(式1)故に、
Δk=k-k-k ・・・(式2)
光が伝搬する2次非線形光学結晶の長さをL、伝搬方向をZ方向とすると、非線形分極Pz(ω+ω)は、exp[i(k+k)Z]で位相が変化するが、発生した波長変換光である和周波光E(ω)の位相はexp(ik・Z)であるから、両者の間にはつぎの(式3)の関係となる。
exp(ik・Z)-exp[i(k+k)・Z]
=exp[i(k-k-k)・Z]=exp[iΔk・Z]・・・(式3)
上記(式3)より、和周波光E(ω)と非線形分極Pz(ω+ω)とはΔk・Lの位相差が生じることになる。
この位相差がπを超えると、位相が反転し、エネルギーの流れる向きが逆転することになり、ω光子がωとωに分裂する過程が起こる。こうして、せっかくつくられた和周波成分の光波が減少に転じてしまう。
ここで位相が反転する距離
Lc= π/(|Δk|) ・・・(式4)
をコヒーレンス長という。
また、この位相差が2πを超える(つまり光の伝搬長が、コヒーレンス長の2倍を超える)と、再び、エネルギーの流れる向きが元に戻ることになり、非線形分極Pzは、コヒーレンス長の2倍の長さを周期として増減する(コヒーレンス長毎に増加・減少が入れ替わる)ことがわかる。そのため、波長変換光の発生効率を上げるためには、減衰が始まるコヒーレンス長を伝搬する結晶長より長くしなくてはならない。特に、波数不整合がなくなる条件Δk=0は、位相整合条件と呼ばれ、波長変換光の発生条件となる。
このとき、上記のように周波数ωと周波数ωの2つの光波を2次非線形材料に入力し、ω(=ω+ω)の光を発生させる場合は、和周波発生(SFG:Sum-Frequency Generation)と呼ばれる。一方、周波数ωとωの2光波を2次非線形材料に入力し、ω(=ω―ω)の光を発生させる場合は、差周波発生(DFG:Difference Frequency Generation)と呼ばれる。
また、光強度の強い周波数ωの光を入射し、周波数ωと周波数ωの2光波を発生させる現象は光パラメトリック効果を呼ばれる。ここで、結合するすべての光波が同じ方向に進む場合を考えると、波数不整合Δkは、
Δk=2π(n/λ-n/λ-n/λ) ・・・(式5)
と表されるため、位相整合条件は、
/λ=n/λ+n/λ ・・・(式6)
もしくは、
ω+ω=ω ・・・(式7)
となる。
上記の式において、n、n、nは、各波長λ、λ、λ(各周波数:ω、ω、ω)の光が伝搬する2次非線形材料の屈折率である。(式7)は、周波数を重みとしたnとnの重み付き平均がnに等しくなることを意味する。特に第2高調波発生で、結合する基本波光子の偏光が同じときは、基本波と2倍波の屈折率が等しいときに位相整合条件が満足される。ところが実際には、物質には必ず屈折率波長分散があるため、位相整合条件は簡単に満たされない。
(擬似位相整合の説明)
上記は波数不整合をなくす、すなわちΔk=0とする手法であるが、その代わりに波数不整合を許容し、非線形感受率を変調して位相ずれの効果を打ち消す疑似位相整合(Quasi-Phase-Matched、以下、QPMと記す)法がある。これは、1962年Armstrongらにより提案されたアイデアで、非線形感受率の符号を周期的に反転した構造により疑似的に位相整合を達成する技術である。上記の通り、非線形分極は、コヒーレンス長の2倍の長さを周期として増減するため、コヒーレンス長の2倍を分極反転周期とする(コヒーレンス長間隔で分極反転させる)ことで各点から発生した非線形分極波は互いに打ち消すことなく足し合わされていき、あたかも擬似的に位相不整合量を0にしたかのような効果を発生させることができる。
周期分極反転構造の分極反転周期をΛとすると、コヒーレント長の式(式4)より
Λ=2・Lc ・・・(式8)
とし、結合するすべての光波が同じ方向に進む場合を考えると、(式4)より、波数不整合はゼロではなく、
Δk=2π(n/λ-n/λ―n/λ)=2π/Λ ・・・(式9)
故に、
/λ-n/λ-n/λ-1/Λ=0 ・・・(式10)
であり、式(式10)がQPMの位相整合条件となる。ここで、nは波長λでの屈折率、nは波長λでの屈折率、nは波長λでの屈折率である。
このQPM法は、2次非線形結晶等の非線形感受率の最大成分となる材料方位を用いることができ、また分極反転周期の選択により動作波長域を設定できるという利点をもつとともに、光導波路化することにより狭い領域に光を高密度に閉じ込め長距離を伝搬させることができるため、高効率な波長変換の実現が可能である。
また、QPM法を利用した波長変換素子を作製する方法も上述したように、いくつか知られている。例えば、非線形光学結晶基板を周期分極反転構造とした後に、その周期分極反転構造を用いてプロトン交換導波路を作製する方法である。また例えば、同様に、非線形光学結晶基板を周期分極反転構造とした後に、フォトリソグラフィプロセス及びドライエッチングプロセスを利用してリッジ型光導波路を作製する方法である。
波長変換素子の光導波路コアに用いる材料としては、2次の非線形効果を有する光学結晶材料であることが望ましく、また、光導波路コアの材料からなる基板と接合される基板に用いる材料は、温度変化に対する熱応力に起因する破断などの影響を低減するため光導波路コア材料の線膨張係数が近い材料が望ましい。具体的には、光導波路コア、または、接合される基板に用いる材料としては、LiNbO(ニオブ酸リチウム)、KNbO(ニオブ酸カリウム)、LiTaO(タンタル酸リチウム)、LiNb(x)Ta(1-x)(0≦x≦1)(不定比組成のタンタル酸リチウム)、またはKTiOPO(チタン酸リン酸カリウム)、さらに、それらにMg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、Sc(スカンジウム)、またはIn(インジウム)から選ばれる少なくとも1つを添加物として含有している材料であることが望ましい。
(波長変換装置の構造)
図1は、本開示の一実施形態の波長変換装置の基本構成10を示す斜視図である。基本構成10は、本開示の製造方法により作製される波長変換素子に相当する。図1に示す基本構成10は、QPM法を利用して波長変換光を発生させる波長変換装置として適用される場合を示している
図1に示す波長変換装置の基本構成となる部材のみが示されており、波長変換素子13と合波器14および分波器15とが示されている。波長変換素子13は、光導波路コア11と基板12とを含み、光導波路コア11は、基板12の上に載置されている。光導波路コア12は、周期分極反転構造を有する非線形光学結晶により構成されている。
図1の基本構成において、波長変換装置の動作を説明する。図1に示すように、光強度が低い信号光1aおよび光強度の高い励起光1bは、合波器14に入射し合波される。励起光1bと合波した信号光1aは、波長変換素子13に向かって進行し、光導波路コア11の一方の端に入射する。信号光1aは、光導波路コア11中を伝搬する間に信号光1aと異なる波長を有する差周波光1cへと変換され、励起光1bと共に光導波路コア11の他方の端から出射される。光導波路コア11から出射した差周波光1cと励起光1bとは、分波器15に入射し、互いに分離される。基本構成10は、信号光1aが入力され、信号光1aと異なる波長の光を発生させる波長変換装置である。
図1に記載の基本構成10においては、波長変換素子は、強誘電体結晶、あるいは対称中心を欠く結晶の分極方向を周期的に180°反転させた周期分極反転構造を備え、疑似位相整合(QPM)条件を満たした光導波路コアを備えている。このとき、QPM法による波長変換素子を用いたSHG発生と光パラメトリック発振等が利用される。
具体的には、上記の疑似位相整合法で説明したように、QPMの条件と称される周期分極反転構造の分極反転周期を、コヒーレント長Lcの2倍としている。すなわち、このコヒーレント長Lc毎に非線形光学結晶の非線形光学定数dの符号を反転させている。
コヒーレント長Lcの2倍の分極反転周期の分極反転構造を備える光導波路コアでは、第2高調波の位相が反転して、コヒーレント長Lcからの合成第2高調波の位相を補正する形になるので、発生する第2高調波の光強度が加算されるようになり、第2高調波の振幅(強度)が増大し、2次高調波光が発生することになる。また、光和周波発生、光差周波発生においても上述したように、周期分極反転構造の分極反転周期を、コヒーレント長Lcの2倍とすることで、非線形分極波は互いに打ち消すことなく足し合わされ、非線形分極波は増幅される。
QPM法は、2次非線形結晶等の非線形感受率の最大成分となる材料方位を用いることができる。また、QPM法は、反転周期の選択により動作波長域を設定できるという利点をもつとともに、光導波路化することにより狭い領域に光を高密度に閉じ込め長距離を伝搬させることができる。
図1に示す基本構成10は、実用上、使用環境の変化により特性が劣化しないように、光の入出力が可能な入出力ポートを備えた金属筐体内に合波器及び分波器と共に収容されて光変換装置を構成することが知られている。さらに波長変換素子の波長変換効率は温度依存性を有しており、その波長変換効率を最大化するためは波長変換素子の温度を制御することが必要である。
(波長変換装置の実装構造)
次に、波長変換装置の実装構造について説明する。図2は、図1の基本構成10を実装した波長変換装置20の実装構造の構成例を説明する図である。
図2に示す波長変換装置20は、図1の基本構成10に加えて、さらに金属筐体底面部材28、蓋体部材29、温度制御素子26を備えている。金属筐体底面部材28と蓋体部材29は、波長変換装置の金属筐体を構成している。なお、図2においては、蓋体部材29は、その輪郭が鎖線で示されており、金属筐体内に収容される部材等が透視して示されている。金属筐体を構成する蓋体部材29には、光の入力ポート200、出力ポート201が設けられており、当該ポートは点線により示されている。
図2に示す波長変換装置20は、さらに、温度制御素子26を支持する支持部材27を備えている。支持部材27は、光導波路コア11及び基板12を含む波長変換素子13の全体の温度を均一に制御するための金属部材である。温度制御素子26は、支持部材27と金属筐体底面部材28との間に介挿されており、温度制御素子26と支持部材27、金属筐体底面部材28との間は、熱伝導に優れ、かつ固定位置を変動させにくい図示しない接合部材を用いて接着固定されている。なお、光導波路コア11、基板12、波長変換素子13、合波器14、分波器15、信号光1a、差周波光1cは、図1の説明したものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
また、強誘電体結晶などの非線形光学結晶を光導波路コア材料として用いた波長変換素子を波長変換装置に用いた場合、短い波長を有する光が照射されることによって光導波路コアの屈折率が変化して特性が低下する光損傷と呼ばれる現象が生じる。この光損傷による影響を抑制する方法として波長変換素子を高温で使用することが提案されている。このため、図2に示した波長変換装置20では、温度制御素子26を、波長変換素子13が結露しない範囲で、室温付近から部材を固定する接着剤が変質することのない温度範囲の環境下で動作するように、具体的には約20℃以上、約100℃以下の範囲の温度範囲となるように制御されている。
(波長変換素子の製造方法)
次に、図1および図2において説明した波長変換素子13の製造方法について説明する。図3は、光導波路コアの製造方法の工程を示す図である。
波長変換材料である非線形光学結晶により形成された平板状の光導波路コア基板の全面に、特定方向の高電界を印加させ、全体の誘電分極ドメインを揃える。(プロセス31)
その後、光導波路コア基板の所望の位置にフォトリソグラフィ法を用いて、形成する周期分極反転構造に対応したパターンの金属電極膜を作製し、直流高電界を印加することによって、周期分極反転構造を形成し、金属電極膜や絶縁膜を除去することにより、光導波路コア基板作製する。(プロセス32)
次に、使用光波長において光導波路コアよりも低屈折率の基板上に、周期分極反転構造が形成された光導波路コア基板を、プラズマ放電による表面活性化法や熱接合法を用いて貼り合わせた後、所望の膜厚に研削・研磨することによって、所望のコア層に加工することにより接合基板を作製する。(プロセス33)
接合基板上の光導波路コア層の表面に、フォトレジスト材料によって光導波路コアのパターンを形成し、例えばArプラズマ等による真空下でのドライエッチング法により、コア層を所望のリッジ形状の光導波路コアに加工し、ピラニア洗浄等により、光導波路コアの表面のレジスト残渣等を洗浄除去して、光導波路コアを形成する。(プロセス34)
(第1の実施形態)
図4は、本開示の第1の実施形態の波長変換素子の製造方法により、光導波路コアの有する周期分極反転構造の分極反転周期を調整する原理を説明するための概略図である。図4を参照して、プロセス31ないし33により、一定の周期の分極反転構造を有する周期分極反転領域が形成された光導波路コア層を有する接合基板に、本開示の第1の実施形態の製造方法におけるプロセス34により光導波路コアを形成する際の手順について説明する。
図4には、光導波路コア層に形成される周期分極反転領域41が示されている。図4中の分極反転領域41は、図の左から右に一次元に周期的に分極反転させた周期分極反転構造を備えるものである。このとき、図4に示される分極反転領域の各分極境界を形成する境界線を本明細書において「分極境界線」と呼ぶこととする。
従来は、プロセス34において、図4の破線で示す光導波路コア42の形成位置のように、直線状の光導波路コアを分極境界線に対して垂直に形成している。これに対して、この第1の実施形態では、プロセス34において、図4の実線で示した光導波路コア形成位置43のように、光導波路コアを分極反転領域に形成する。すなわち、この第1の実施形態は、プロセス34において、直線状の光導波路コアを分極境界線に対して垂直から一定の角度θを持たせて形成することを特徴としている。
本明細書では、この分極境界線に対して垂直から一定の角度θで光導波路の形成する場合の「分極境界線に対して垂直から一定の角度」を「分極反転領域に対する交差角度」または、「分極反転構造に対する交差角度」と呼ぶこととする。したがって、本明細書では、従来のように、分極境界線に対して垂直に光導波路コアを形成した場合には、その光導波路コアは、分極反転領域(構造)に対する交差角度が0度と表現され、上記のように分極境界線に対して垂直から一定の角度θで光導波路の形成する場合の光導波路コアは、分極反転領域(構造)に対する交差角度がθと表現されることになる。
このように分極反転領域(構造)に対する交差角度θで光導波路を形成することにより、疑似的に分極反転周期が、交差角度0度で形成される場合に比べて、1/COS(θ)倍に延伸させられたと同じ効果が発生する。このことから、プロセス34において、周期分極反転領域に形成する光導波路コアの分極反転領域に対する交差角度を調整することにより、同じ分極反転周期を有する周期分極反転領域を用いて、異なる分極反転周期の周期分極反転構造を備える光導波路コアを作製することが可能となることが理解できる。
原理的には、分極反転領域に対する交差角度は45度以上でも、疑似的に分極反転周期長を伸ばすことができるが、実際には、分極反転領域に対する交差角度が45度以上では、波長変換光発生の光スペクトル分布の鈍化、つまりピーク半値幅の増大が発生する。これは、分極反転周期の分極境界線が不鮮明になってくることが原因と考えられる。このように分極反転周期の分極境界線が不鮮明にならないためには、分極反転領域に対する交差角度θは小さい方が望ましく、実用的には30度以下であることが望ましい。
つぎに図5を参照して、本開示の第1の実施形態の製造方法を説明する。図5(a)には、図3のプロセス31~33により、コア層に分極反転周期Lを有する一つの周期分極反転領域51が形成された接合基板50が示されている。この例では、プロセス34において、図5の線52、53により示す光導波路コアの形成位置に光導波路コアをそれぞれ作成した場合を説明している。図5の周期分極反転領域51は、図4と同様に一つの分極反転周期で図面の左から右に一次元に分極反転させた周期分極反転構造を備えている。
光導波路コア基板、または、接合される基板に用いる材料としては、LiNbO(ニオブ酸リチウム)、KNbO(ニオブ酸カリウム)、LiTaO(タンタル酸リチウム)、LiNb(x)Ta(1-x)O(0≦x≦1)(不定比組成のタンタル酸リチウム)、またはKTiOPO(チタン酸リン酸カリウム)、さらに、それらにMg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、Sc(スカンジウム)、またはIn(インジウム)から選ばれる少なくとも1つを添加物として含有している材料であることが望ましい。
この例では、周期分極反転領域に形成する光導波路コアを分極反転領域に対する交差角度を角度θ2で形成した光導波路コア52と、角度θ1で形成した光導波路コア53と、角度0度で形成した光導波路コア54とを一つの接合基板の光導波路コア層の周期分極反転領域に形成した場合の各導波路コア層が形成される場所を各線により示している。
図5の線52ないし54で示される形成位置に形成された光導波路コア52,53,54は、図5(b)で示されるように、周期分極反転領域に形成される部分の分極反転領域に対する交差角度を異ならせることにより、分極反転周期Lとは異なる分極反転周期の周期分極反転構造を備える波長変換素子を製造することが可能となっている。
この説明から明らかなように、この第1の実施形態の製造方法では、図3のプロセス34において、光導波路コア層に形成する光導波路コアの分極反転領域に対する交差角度を選択して形成することにより分極反転周期Lとは異なる光導波路コアを持つ波長変換素子を形成可能である。したがって、例えば、図3のプロセス31~33において発生する加工誤差に対応して、プロセス34の段階で、分極反転領域の分極反転周期が調整された波長変換素子を作成することが可能となった。なお、これに限らず、分極反転領域に対する交差角度が異なる光導波路コアを複数有する波長変換素子を作製し、波長変換装置に実装する際に、そのうちのいずれかを選択することにより、離散的に分極反転周期を選択することが可能な波長変換素子を作成することも可能である。
(第2の実施形態)
図6は、本開示の第2の実施形態の製造方法について説明するための概略図である。本開示の第2の実施形態の製造方法では、図6に示すように、図3に示したプロセス32において、光導波路コア基板に少なくとも2つ以上の分極反転周期の異なる複数の周期分極反転領域を、分極境界線の方向にアレイ状に形成しておき、どの分極反転周期の周期分極反転領域を用いて光導波路コアを形成するかを、後の工程であるプロセス34において選択できるようにしたことを特徴としている。
なお、プロセス32において、例えば、光導波路コア基板の表面に複数の分極反転周期の異なる周期分極反転領域パターンに対応した電極を形成することで、複数の分極反転領域を一つの光導波路コア基板に形成することが可能である。
図6には、第2の実施形態の製造方法を説明するための例示として、光導波路コア層に3つの周期分極反転領域61,62,63が形成された接合基板60が示されている。各周期分極反転領域は、いずれも図の左から右に一次元に分極反転させた周期分極反転構造を備えている。この例では、各周期分極反転領域の分極反転周期は異なっており、周期分極反転領域61、62,63の分極反転周期長は、それぞれL1,L2、L3であり、各周期の関係は、L1<L2<L3に設定されている。
さらに、図6においては、接合基板60において、周期分極反転領域61上を通過して形成される光導波路コア64と、周期分極反転領域62上を通過して形成される光導波路コア65と、周期分極反転領域62上を通過して形成される光導波路コア66が形成される位置を、線64ないし66として示している。第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、プロセス31~33の後の工程であるプロセス34により光導波路コア64ないし66のいずれかの位置を選択して光導波路コアを形成している。
光導波路コア基板、または、接合される基板に用いる材料としては、LiNbO(ニオブ酸リチウム)、KNbO(ニオブ酸カリウム)、LiTaO(タンタル酸リチウム)、LiNb(x)Ta(1-x)O(0≦x≦1)(不定比組成のタンタル酸リチウム)、またはKTiOPO(チタン酸リン酸カリウム)、さらに、それらにMg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、Sc(スカンジウム)、またはIn(インジウム)から選ばれる少なくとも1つを添加物として含有している材料であることが望ましい。
この第2の実施形態では、プロセス34において、光導波路コアを形成する位置を選択すること、すなわち、光導波路コアが通過する周期分極反転領域を選択することにより、どの周期分極反転領域を用いて光導波路コア層を形成するかを選択することができる。その結果一つの基板により、異なる分極反転周期の周期分極反転構造を備える光導波路コアを備える波長変換素子を作製することが可能となる。
したがって、例えば、図3のプロセス31~33において発生する加工誤差に対応して、プロセス34の段階で、分極反転領域の分極反転周期が調整された波長変換素子を作成することが可能となった。
なお、所望の周期分極反転領域を選択するために光導波路コアを形成する位置を合わせる場合に、例えば位置合わせマーカを用いて、光導波路コアを形成する位置を合わせることもできる。また、これに限らず、光導波路コア64ないし66を複数有する波長変換素子を作製し、波長変換装置に実装する際に、そのうちのいずれかを選択することにより、離散的に分極反転周期を選択することが可能な波長変換素子を作成することも可能である。
以上のとおり、この第2の実施形態の製造方法を用いることで、歩留まりを高めて、所望の光学特性を有する波長変換素子を得ることが可能となる。
図6では、異なる分極反転周期をもつ周期分極反転領域の数が3つのものが例示されているが、周期分極反転領域の数は、少なくとも2つ以上であればよく、必要となる分極反転周期の調整範囲を離散的に調整できる分だけあればよい。この場合、周期分極反転領域の個数は、多い方がより微調整が可能であるため望ましい。また、各周期分極反転領域の分極反転周期長の間隔は、等間隔である必要はない。例えば、より微調整を必要とする周期範囲については、分極反転周期の周期長間隔が短い複数の周期分極反転領域を形成し、その他の周期範囲については、分極反転周期の周期長間隔を長く設定した複数の周期分極反転領域を形成することにより、実用的により、所望の分極反転周期に調整することが可能となる。
つぎに、図7を参照して、本開示の第2の実施形態の製造方法の別の態様を説明する。図7と図6との間で相違する点は、図6の例では、周期分極反転領域を選択するために形成される各光導波路コアはいずれも直線状に形成されており入出力端の形成位置が異なっているのに対して、図7の態様では、各光導波路コアの入出射端が形成される位置を固定している点である。
図7示す態様においても、図6と同様に、図3に示したプロセス32において、光導波路コア基板に少なくとも2つ以上の分極反転周期の異なる複数の周期分極反転領域を分極境界線の方向にアレイ状に形成しておき、どの分極反転周期の周期分極反転領域を用いて光導波路コアを形成するかを、後の作製工程であるプロセス34において選択するものである。
図7に示されている接合基板60は、図6と同じである。図7においても、接合基板60の光導波路コア層には、3つの周期分極反転領域61,62,63が形成されている。各周期分極反転領域は、いずれも図の左から右に一次元に分極反転させた周期分極反転構造を備えるものであり、周期分極反転領域61、62,63の分極反転周期は、それぞれL1,L2、L3であり、各周期の関係は、L1<L2<L3に設定されている。
図7の線74,75,76により示されているように、この態様では、プロセス34において光導波路コア74,75,76のいずれを形成する場合でも、形成される光導波路コアの入出力端の位置が同じとなるように形成される。
この態様の製造方法によれば、後工程プロセスであるプロセス34において、光導波路コアを形成する位置を選択、決定することにより分極反転周期の異なる周期分極反転構造を備えた光導波路コアを備えた波長変換素子を入出力光の位置が決まっている同じ光導波路チップ形状で実現することが可能となる。その結果、波長変換素子としての光学特性を所望の光学特性に、調整、制御することが可能となる。
図7の態様においても、周期分極反転領域の数や複数の周期分極反転領域間での分極反転周期長の間隔の設定についての考え方は図6の第2の実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
さらに、図8を参照して本開示の第2の実施形態のもう一つの態様を説明する。図6および図7と、図8の態様との相違は、図6および図7では、プロセス34において形成される光導波路コアは1つの周期分極反転領域上を通過するように形成されているのに対して、この図8の例は、複数の周期分極反転領域上を通過して形成されていることである。
この態様の製造方法も、図3に示したプロセス32において、光導波路コア基板に少なくとも2つ以上の分極反転周期の異なる複数の周期分極反転領域を分極境界線の方向にアレイ状に形成し配置しておき、どの分極反転周期の分極反転周期領域を用いて光導波路コアを形成するかを、後の作製工程であるプロセス34において選択するものである。
図8(a)に示すように、この例では、プロセス32において接合基板の光導波路コア層に複数の異なる分極反転周期をもつ周期分極反転領域81,82が形成されている。各周期分極反転領域は、いずれも図の左から右に一次元に分極反転させた周期分極反転構造を備えるものであり、周期分極反転領域81、82の分極反転周期は、それぞれL1,L2に設定されており、各周期の関係は、L1>L2に設定されている。
図8(a)の線84,85により示されているように、この例では、プロセス34において、光導波路コア84を形成する製造方法の例を示している。図8(a)の線84に示すように光導波路コア84を形成することにより、図8(b)のように、2つの異なる周期分極反転領域81、82を横断する個所では、若干の脈波的な分極反転周期の乱れが発生するものの、局所的に分極反転周期が異なる周期分極反転構造を有する光導波路コアを形成することが可能となる。
このように、一つの光導波路コアを複数の異なる分極反転周期をもつ周期分極反転領域上を通過するように形成することにより、光導波路コアが有する周期分極反転構造の局所的な分極反転周期の調整制御が可能となる。
図8の例では、説明を簡単にするために、2つの分極反転周期の異なる周期分極反転領域を形成した例を示したが、周期分極反転領域を3以上形成し、それぞれの周期分極反転領域間を横断するように形成してもよい。また、周期分極反転領域の数は、必要となる分極反転周期の調整範囲を離散的に調整できる分だけあればよい。この場合、周期分極反転領域の個数は、多い方がより微調整が可能であるため望ましい。また、各周期分極反転領域の分極反転周期の間隔は、等間隔である必要はない。
さらに、この例では、光導波路コア84は、周期分極反転領域82から81に横断し、その後81から82に横断するように形成しているが、横断回数や横断する場所についても、必要となる分極反転周期の調整範囲に応じて適宜設定すればよい。
以上のように、この例では、プロセス34において、光導波路コアを形成する位置を選択して、光導波路コアが通過する周期分極反転領域を局所的に選択して光導波路コア層を形成することができる。その結果一つの基板により、局所的に異なる分極反転周期の周期分極反転構造を備える光導波路コアを備える波長変換素子を作製することが可能となる。
したがって、例えば、図3のプロセス31~33において発生する加工誤差に対応して、プロセス34の段階で、分極反転領域の分極反転周期が局所的に調整された波長変換素子を作製することが可能となった。
(第3の実施形態)
図9は、本開示の第3の実施形態の製造方法を説明するための概略図である。本開示の第3の実施形態の製造方法では、図3に示したプロセス32において、光導波路コア基板に、異なる分極反転周期の分極反転構造を備える少なくとも4つ以上の周期分極反転領域を、分極境界線の方向だけでなく、分極境界線に対して垂直の方向にも複数形成した2次元アレイ状の配置となるように形成しておき、どの周期分極反転領域を用いて光導波路コアを形成するかを、後の作製工程であるプロセス34において選択するようにしたものである。
図9(a)には、第3の実施形態の製造方法を説明するための例示として、光導波路コア層に分極境界線の方向に3個、分極境界線に対して垂直の方向に3個の3×3で2次元アレイ状に配置した9個の周期分極反転領域911ないし913、921ないし923、および931ないし933が形成された接合基板90が示されている。各周期分極反転領域は、いずれも図の左から右に一次元に分極反転させた周期分極反転構造を備えている。この例では、それぞれの周期分極反転領域は、図中A~Cの各パターンで示すように、3つの異なる分極反転周期をもつ分極反転構造A、B,Cのいずれかで形成されている。分極反転構造A,B、Cは、それぞれ分極反転周期長がL1、L2、L3であり、各周期の関係は、L1<L2<L3に設定されている。
さらに、図9(a)においては、接合基板90において、周期分極反転領域911ないし913上を通過して形成される光導波路コア94と、周期分極反転領域921ないし923上を通過して形成される光導波路コア95と、周期分極反転領域931ないし933上を通過して形成される光導波路コア96が形成される位置を、線94ないし96により示している。第3の実施形態においても、プロセス31~33の後の工程であるプロセス34により光導波路コア94ないし96のいずれかを形成している。
光導波路コア基板、または、接合される基板に用いる材料としては、LiNbO(ニオブ酸リチウム)、KNbO(ニオブ酸カリウム)、LiTaO(タンタル酸リチウム)、LiNb(x)Ta(1-x)O(0≦x≦1)(不定比組成のタンタル酸リチウム)、またはKTiOPO(チタン酸リン酸カリウム)、さらに、それらにMg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、Sc(スカンジウム)、またはIn(インジウム)から選ばれる少なくとも1つを添加物として含有している材料であることが望ましい。
この例では、光導波路形成位置94ないし96により選択される周期分極反転領域911ないし913、921ないし923、および931ないし933は、それぞれ3つの分極反転周期が異なる分極反転構造A、B,Cより構成される領域を含んでおり、3つの分極反転構造A,B,Cからなる領域の図中の左から右の順番が互いに異なっている。
したがって、この実施形態によれば、プロセス34において、光導波路コアを形成する位置を選択することにより、分極反転領域911ないし913、921ないし923、または931ないし933を用いて光導波路コアを形成するかを選択することができる。その結果、一つの基板により、局所的に分極反転周期が異なる分極反転構造を備えた光導波路コアであって、分極反転周期の局所的分布が異なる光導波路コアを備える波長変換素子を作製することが可能となる。
図9(b)には、図9(a)で示される各線94ないし96に対応する位置に形成される光導波路コアの周期分極反転領域の分極反転周期の局所分布が同じ線の種類を用いて示されている。図9(a)の線94で示される位置が選択されて形成される光導波路コアは、図9(b)の線94により示される分極反転周期の局所分布を持つ。線95、96に示される位置を選択して形成される光導波路コア95、96の分極反転周期の局所分布も同様に示されている。
したがって、例えば、過去の製造工程における加工誤差から生じた光導波路コア層の膜厚分布データなどに基づいて、補正対象として想定される膜厚分布変動に対応して補正が必要となる局所的な分極反転周期に対応した複数のパターンの周期分極反転領域を基板上に2次元的に配置しておくことにより、加工誤差により生じることが想定される膜厚分布変動パターンに対応した分極反転周期の局所分布を備えた光導波路コアを有する波長変換素子を作製することが可能となった。また、この例においては、光導波路コアの形成位置を94ないし96のいずれを選択しても、形成される光導波路コアは、3種類の分極反転構造A,B,Cからなる領域が一つずつ含まれていることから、膜厚などの局所的変化がなく、光導波路コアの実効屈折率が、分極反転周期911~933で、全て同じであれば、各光導波路コア94~96で、同じ位相整合条件を満たすような光導波路が得られることになる。
図9では、接合基板90に配置される周期分極反転領域を3×3で2次元アレイ状に配置したものを示したが、接合基板90に配置される周期分極反転領域は、2×2の4個でもよく、それ以上であってもよいし、分極境界線方向(図の上下方向)と分極境界線方向と垂直な方向(図の左右方向)に配置する数は異なっていてもよい。接合基板90に配置される周期分極反転領域の数は、補正対象として想定される膜厚分布変動パターンに応じて適宜選択すればよい。図9では、分極反転周期長が異なる分極反転構造の種類を3種類としたものを示したが、4種類以上であってもよい。この際、分極反転周期長が異なる分極反転構造の種類を多く用意することで、膜厚分布パターンに対応して分極反転周期の局所分布を細かに調整することが可能となる。また、異なる分極反転周期の分極反転構造の種類間の分極反転周期長の間隔は、等間隔である必要はない。さらに、図9では、光導波路コアの形成位置により選択される周期分極反転領域は、いずれも3種類の分極反転周期の異なる分極反転構造からなる周期分極反転領域により構成されているものであったが、選択される周期分極反転領域を構成する分極反転構造の種類は同じでなくてもよい。また、予め用意されている分極反転周期構造の種類の中から、一部のものを選択して構成するようにしてもよい。図9では、光導波路コアを形成する位置は、94ないし96の3種類としているが、2種類以上であればよく、4種類以上であってもよい。なお、これに限らず、光導波路コア94ないし96を複数有する波長変換素子を作製し、波長変換装置に実装する際に、そのうちのいずれかを選択することにより、離散的に分極反転周期を選択することが可能な波長変換素子を作成することも可能である。
次に、図10を用いて第3の実施形態の製造方法の別の態様を説明する。図10と図9との間で相違する点は、図9の態様では、周期分極反転領域を選択するために形成される各光導波路コア94ないし96はいずれも直線状に形成されており入出力端の形成位置が異なっているのに対して、図10の態様では、各光導波路コアの入出射端が形成される位置を固定している点である。図10に示される接合基板90は、図9に示すものと同じものであり、同じ符号を付しているものは図9と同じであるので、ここでの説明は省略する。
図10の線104,105,106により示されているように、この態様の製造方法においては、プロセス34において光導波路コア104,105,106のいずれを形成する場合でも、形成される光導波路コアの入出力端の位置が同じとなるように形成される。この態様の製造方法によれば、図10と同様に、一つの基板により、局所的に分極反転周期が異なる分極反転構造を備えた光導波路コアであって、分極反転周期の局所的分布が異なる光導波路コアを備える波長変換素子を、入出力光の位置が決まっている同じ光導波路チップ形状で実現することが可能となる。図10においても、接合基板90に配置される周期分極反転領域の数や、用いられる周期の異なる分極反転構造の種類の数、配置順序などについての考え方は図9の第3の実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
(第4の実施形態)
図11は、本開示の第4の実施形態の製造方法を説明するための概略図である。本開示の第4の実施形態では、図3に示したプロセス32において、第3の実施形態と同様に、周期分極反転領域を2次元アレイ状の配置となるように形成しておき、プロセス34において、光導波路コアを形成する位置を選択して光導波路コアが通過する分極反転領域を決定することで、どの周期分極反転領域を用いて光導波路コアを製造するかを決定するようにしている。第4の実施形態では、プロセス34において、光導波路コアを形成する位置を、分極反転領域に対する交差角度を0度だけでなく所定の角度となる経路に決定することを特徴としている。
第2の実施形態や第3の実施形態では、選択される周期分極反転領域の分極反転周期長を直接利用するのみであった。これに対して、第4の実施形態では、第1の実施態様で説明したように、周期分極反転領域上を通過する光導波路コアの分極反転領域に対する交差角度θを変化させることによって、1/COS(θ)倍に分極反転周期を延伸させる効果を利用している。このように、第4の実施形態では、2次元アレイ状に配置した周期分極反転領域がそれぞれ有する分極反転周期を利用するだけでなく、離散的な周期分極反転領域間の分極反転周期の値の微調整をも行うことを可能としている。
図11では、接合基板110に、6×4の2次元アレイ状に、3種類の周期長L1,L2,L3の分極反転周期が異なる分極反転構造A,B,Cのいずれかにより構成される24個の分極反転領域を配置した例が示されている。この第4の実施形態の製造方法においても、図3に示したプロセス32により、光導波路コア基板に、図11に示す複数の周期分極反転領域を形成している。図11の24個の分極反転領域は、図から明らかなように、隣接する周期分極反転領域が、それぞれ異なる分極反転周期となるように配置されている。また図の上下方向(分極境界線に平行な方向)と左右方向(分極境界線と垂直の方向)に分極反転構造A,B,Cから構成される3種類の分極反転領域が、同じ繰り返しパターンとなるように配置している。これらの周期分極反転領域は、図面の左から右に一次元に分極反転させた周期分極反転構造を備えている。
さらに、図11においては、図3に示すプロセス34において、接合基板110の光導波路コア層に形成される光導波路コア114ないし116が形成される位置を、線114ないし116として示している。第4の実施形態の製造方法においても、第1ないし第3の実施形態の製造方法と同様に、プロセス31~33の後の工程であるプロセス34により光導波路コア114ないし116のいずれかを形成している。
光導波路コア基板、または、接合される基板に用いる材料としては、LiNbO(ニオブ酸リチウム)、KNbO(ニオブ酸カリウム)、LiTaO(タンタル酸リチウム)、LiNb(x)Ta(1-x)O(0≦x≦1)(不定比組成のタンタル酸リチウム)、またはKTiOPO(チタン酸リン酸カリウム)、さらに、それらにMg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、Sc(スカンジウム)、またはIn(インジウム)から選ばれる少なくとも1つを添加物として含有している材料であることが望ましい。
図11の線114で示す位置に形成される光導波路コア114は、同じ分極反転周期L3をもつ周期分極反転構造Cにより構成された周期分極反転領域を同じ分極反転領域交差角度で形成された分極反転構造を備えるものとして形成される。したがって、この場合には、分極反転領域交差角度がθである場合には、分極反転周期長がL3/COS(θ)の分極反転構造を有する光導波路コアを形成することが可能となる。また、図11の線115や116のように、周期分極反転領域を通過する光導波路コアの一部分のみの分極反転領域交差角度を所定の角度θとして光導波路コアの形成位置を選択するようにすることで局所的に分極反転周期が異なる周期分極反転構造を備える光導波路コアを形成することができる。
このように、本開示の第4の実施形態では、プロセス34において、光導波路コアを形成する位置を選択することで、光導波路コアを形成する周期分極反転領域を選択するとともに、選択された周期分極反転領域との分極反転領域交差角度θを調整することを可能としている。
本開示の第4の実施形態では、プロセス34において、光導波路コアの周期分極反転周期長の局所分布の調整をより自由に行うことが可能となる。例えば、図12(a)では、線124ないし126で示すように、各線124ないし126の形成位置は、それぞれ、光導波路コアの形成位置を同じ分極反転周期構造により構成された周期分極反転領域を光導波路コアが所定の分極反転領域に対する交差角度で通過するように光導波路コアを形成するように設定されている。例えば、線124の形成位置を選択することにより光導波路コアが形成される位置の周期分極反転領域は、いずれも分極反転周期がL1である分極反転構造Aにより構成されたものである。線124に示す位置に形成される光導波路コアは、分極反転領域に対する交差角度が所定角度θで形成される。線125および線126で示す位置に形成される光導波路コアは、それぞれ選択される分極反転領域の分極反転周期がL2、L3である点を除き、同様である。したがって、図12(b)の124ないし126で示されるように、線124ないし126の位置に形成される光導波路コア124ないし126は、分極反転周期が、各周期L1,L2、L3(L1<L2<L3)よりも、一定でかつ、大きな分極反転周期L4,L5、L6を示すことになる。
また、例えば、図13(a)の線134ないし136で示すように光導波路コアの形成位置を光導波路コアがなるべく分極反転領域交差角度が0度になるように周期分極反転領域上を通過するように選択してもよい。この場合、図に示すように、周期分極反転領域間においては、光導波路コアを形成する位置は、S字曲線でつなぐように選択される。
図13(b)には、プロセス34において、各線134ないし136に示す位置に形成された光導波路コア134ないし136の分極反転周期が示されている。図13(b)の134ないし136で示されるように、図13(a)の線134ないし136で示す位置に形成される光導波路コア134ないし136は、それぞれS字曲線の個所では、分極反転領域に対する交差角度が0度ではないから、若干の脈波的な分極反転周期の乱れが発生しているが、概ねそれぞれの分極反転周期をL1,L2,L3に設定されている。このように、周期分極反転領域間において光導波路コアを形成する位置をS字曲線でつなぐ場合は、分極反転領域に対する交差角度を0度以外の任意の角度に設定することも可能である。
なお、この実施形態では、接合基板110に配置される周期分極反転領域を6×4の2次元アレイ状に配置したものを示したが、接合基板に配置される周期分極反転領域の数は、それ以外であってもよい。接合基板110に配置される周期分極反転領域の数は、補正対象として想定される膜厚分布変動パターンに応じて適宜選択すればよい。また分極反転周期長が異なる分極反転構造の種類を3種類としたものを示したが、4種類以上であってもよい。この際、分極反転周期長が異なる分極反転構造の種類を多く用意することで、膜厚分布パターンに対応して分極反転周期の局所分布を細かに調整することが可能となる。また、異なる分極反転周期の分極反転構造の種類間の分極反転周期長の間隔は、等間隔である必要はない。
次に図14を参照して、本開示の第4の実施形態の製造方法の別の態様を説明する。図14(a)に示されているように、この態様では、接合基板140に、4×6の2次元アレイ状に、3種類の周期長L1,L2,L3の分極反転周期が異なる分極反転構造A,B,Cのいずれかにより構成される24個の分極反転領域が、図3のプロセス32において光導波路コア基板上に形成される。
図14に示す複数の周期分極反転領域は、隣接する周期分極反転領域が、それぞれ異なる分極反転構造となるように配置されている。また、図の上下方向(分極境界線に平行な方向)に分極反転構造A,B,Cから構成される3種類の分極反転領域が、A,B,Cで繰り返し、図の左右方向(分極境界線に垂直な方向)に、1つずつ上下にずれた2つの配列を左右方向に3組繰り返すパターンで設定されている。このような分極反転領域の配置を用いた場合には、図14(a)の線1441で示すようなジグザグに折れ曲がった導波路コアの形成位置を選択することにより、周期分極反転周期が同じ分極反転領域(線1441では分極反転構造Aから構成される分極反転領域)を通過し、分極反転領域に対する交差角度を概ね所定の角度とした経路を用いて光導波路コアを形成することができる。
このような経路の位置に形成された光導波路コアは、図14(b)の1441のように、光導波路コアの折れ曲がり部分では、若干の脈波的な分極反転周期の乱れは発生するが、概ね分極反転領域に対する交差角度に応じてL1よりも長い分極反転周期長を有するものとなる。図14(a)の線1442で示す導波路コアの形成位置を選択した場合には、線1441を選択した場合よりも分極反転領域に対する交差角度は小さくすることができる。図14(b)に示すように、この経路の位置に形成された光導波路コアの分極反転周期は、1441よりも小さな周期長を有するものとなる。1451、および1452,1461および1462についても分極反転周期の周期長の大きさが、L2,L3を基準に変化する点以外は同様である。
以上のとおり、この態様は、2次元アレイ状に配置した分極反転領域それぞれ有する分極反転周期を利用するだけでなく、離散的な各周期分極反転領域間の分極反転周期の値の微調整をも行うことを可能としている。
なお、この態様においても、図13で説明した例のように、周期分極反転領域間において光導波路コアを形成する位置をS字曲線でつなぐようにした経路を用いて、光導波路コアの形成位置を光導波路コアがなるべく周期分極反転領域交差角度が0度になるように周期分極反転領域上を通過するように選択するようにしてもよい。また、接合基板に配置される周期分極反転領域の数や分極反転周期の異なる周期分極反転構造の種類の数についての考え方や光導波路コア基板や接合される基板の材料については図11の実施形態の製造方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
さらに図15を参照して、本開示の第4の実施形態の製造方法のもう一つの態様を説明する。図15(a)に示されているように、この態様では、接合基板150に、8×11の2次元アレイ状に、3種類の周期長L1,L2、L3(L1<L2<L3)の分極反転周期が異なる分極反転構造A,B,Cのいずれかにより構成される88個の分極反転領域が、図3のプロセス32において光導波路コア基板上に形成される。
図15(a)に示す複数の周期分極反転領域は、3種類の周期分極反転領域が左から6番目の列151を中心として対称となるように配置している。また、この態様でも隣接する周期分極反転領域がそれぞれ異なる分極反転周期となるように配置するとともに、図の上下方向(分極境界線に平行な方向)に同じ繰り返しパターンとなるように、図の左右方向(分極境界線に垂直な方向)には、列151から左右方向に同じ繰り返しパターンとなるように配置している。例えば、基板材料とコア材料の弾性率(ヤング率)や熱膨張係数が異なり、プラズマや熱接合などの温度変化を経て貼り合せ基板を作製する場合、基板(ウエハ)の中心対称に反りが発生し易い。そのため、基板の研削、研磨後に、基板(ウエハ)の中心対称に膜厚変化する傾向が経験的に発生し易いため、図15(a)に示すように中心対称に近い配列にすることは、貼り合せ基板による波長変換素子の作製の際に有用である。
さらに、図15(a)においては、図3に示すプロセス34において、接合基板150の光導波路コア層に形成される光導波路コア154ないし156が形成される位置を、線154ないし156として示している。この態様の製造方法においても、上述の各実施形態の製造方法と同様に、プロセス31~33の後の工程であるプロセス34により光導波路コア154ないし156のいずれかを形成している。
図15(a)の線154ないし156で示す位置を選択して光導波路コアを形成することにより図15(b)に154で示すように、線154を選択して形成した光導波路コアは、中央部で下に凸の形状を有する分極反転周期の局所分布をもったものとなる。同様に、線155を選択して形成した光導波路コアは、中央部で上に凸の形状を有する分極反転周期の局所分布をもつものとなり、また線156を選択して形成した光導波路コアは、右側のみに上に凸の形状を有する分極反転周期の局所分布をもつ光導波路コアとなる。この例においても、接合基板に配置される周期分極反転領域の数や分極反転周期の異なる周期分極反転構造の種類の数についての考え方や光導波路コア基板や接合される基板の材料については図11の実施形態の製造方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
以上のとおり、本開示の第4の実施形態の製造方法では、接合基板を形成するプロセスにおいて、予め形成する周期分極反転領域の配置と、その後の光導波路を形成するプロセスにおいて、光導波路コアの形成位置を選択することによって、任意の分極反転周期の変化を、光導波路コア加工する後プロセスの段階で、選択、調整、制御することが可能となる。その結果一つの基板により、局所的に異なる分極反転周期の周期分極反転構造を備える光導波路コアを備える波長変換素子を作製することが可能となる。
したがって、例えば、図3のプロセス31~33において発生する加工誤差に対応して、プロセス34の段階で、分極反転領域の分極反転周期が局所的に調整された波長変換素子を作製することが可能となった。
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されない。
(実施例1)
実施例1として、本開示の第1の実施形態の製造方法により光波長変換素子を作製した。
実施例1では、図3のプロセス31,32により、図5(a)に示した分極反転領域を光導波路コア基板に形成した。具体的には、Z軸カットのLiNbO基板の表裏面を塩化リチウム水溶液に浸し、DC1kV以上に電圧印加することによって、LiNbOの分極ドメインを基板全面に揃え、一方の面に、30×30mm角の周期分極反転パターンの数μm厚のフォトレジストパターンを形成し、フォトレジストを形成した面の全面にAu金属膜を堆積した。その後、再度、表裏面を塩化リチウム水溶液に浸し、DC1kV以上に電圧印加することで分極反転させることによって、30×30mm角の大きさの周期分極反転領域を有するLiNbO基板(光導波路コア基板)を作製した。
その後、プロセス33で、接合基板を作製した。具体的には、上記のLiNbO基板を、Z軸カットLiTaO基板と貼り合せ、研削、研磨によって薄膜化することにより、部分的な30×30mm角の周期分極反転領域を有する光導波路コア層付き基板である接合基板を作製した。
そして、プロセス34で、図5(a)に例示される周期分極反転領域に対する交差角度を所定角度とした光導波路コアパターンをフォトレジストによって形成し、Arプラズマによるドライエッチング加工により、リッジ形状の光導波路を作製した。実施例1では、比較のために、光導波路を図5(a)の線52,53,54により示されるぞれぞれの位置に光導波路コアを作製した。
光導波路の光学特性の評価は、先端を先球加工した偏波保持ファイバを利用して光接続を行い、波長可変光源、SC光源、光スペクトルアナライザなどを用いて、1550nm付近の透過損失スペクトルと、775nm付近の2次高調波光(SHG光、(SHG:Second Harmonic Generation))の発光スペクトルを評価した。その結果、同じ周期分極反転領域により形成した光導波路であっても、分極反転領域に対する交差角度が異なる光導波路を比較した結果、交差角度が大きくなるに従い、SHG光波長も長波長化する結果が得られた。この結果から、光導波路コアを形成するプロセス34において分極反転領域に対する交差角度を選択することにより、波長変換光が制御できることが示された。したがって、光導波路コアの有する分極反転構造の分極反転周期を調整することにより誤差を補償することができることが示された。
(実施例2)
つぎに図16を参照して実施例2を説明する。実施例2として、第4の実施形態の製造方法により波長変換素子を製造した。図3のプロセス31,32において、図16の示す6×4の2次元アレイ状に24個の周期分極反転領域を光導波路コア基板に形成した。具体的には、上述した実施例1と同様に、Z軸カットのLiNbO基板の表裏面を塩化リチウム水溶液に浸し、DC1kV以上に電圧印加することによって、LiNbOの分極ドメインを基板全面に揃えた。
そして、一方の面に、面内サイズが10mm×5mmであり、図16に示すように、6×4の2次元アレイ状に、3種類の周期長L1,L2,L3の分極反転周期が異なる分極反転構造A,B,Cのいずれかにより構成される24個と、図16の導波路コア167を形成する位置に、比較対象として周期長L2を有する一つの分極反転領域に対応したパターンで配置した数μm厚のフォトレジストパターンを形成し、フォトレジストを形成した面の全面にAu金属膜を堆積した。
その後、再度、表裏面を塩化リチウム水溶液に浸し、DC1kV以上の電圧印加で分極反転させることによって、図16に示すような配置の複数の周期分極反転領域を備える40mm×30mm角の領域を有するLiNbO基板(光導波路コア基板)を作製した。但し、比較対象のため、基板の一部に、図16に示すように40mm×5mmの分極反転周期がL2周期分極反転領域も作製した。この実施例では、分極反転周期L1,L2,L3は、それぞれ16.9μm、17.0μm、17.1μmに設定した。
その後、プロセス33により、LiNbO基板を、Z軸カットLiTaO基板と貼り合せ、研削、研磨によって薄膜化することにより、約6μm厚の光導波路コア層付き基板(接合基板)を作製した。なお、この実施例の接合基板の光導波路コア層に形成された24個の分極反転領域の配置は、図11に示した配置と同じである。図16では、接合基板160上に形成される周期分極反転領域の分極反転構造の分極反転境界の線の向きは、基板の各辺に対して角度をもって形成されている点で、図11に示したものと相違している。この相違により、周期分極反転領域に対する交差角度を所定の角度で光導波路コアを形成する場合でも、直線状の光導波路コアパターンで形成することができる。
このようにして得られた接合基板を用いて、プロセス34で、図16に示されている光導波路コアの形成位置164、165、166のそれぞれの位置に対応した直線状光導波路コアのパターンをフォトレジストによって形成し、Arプラズマによるドライエッチング加工により、図15の線164、165、166の位置にリッジ形状の光導波路コアを作製した。また、比較用に線167の位置にリッジ形状の光導波路コアを作製した。
光導波路の光学特性の評価は、上記の実施例1と同様に、先端を先球加工した偏波保持ファイバを利用して光接続を行い、波長可変光源、SC光源、光スペクトルアナライザなどを用いて、1550nm付近の透過損失スペクトルと、775nm付近の2次高調波光(SHG光、(SHG:Second Harmonic Generation))の発光スペクトルを評価した。
その結果、実施例2においては、図16の線167の位置に形成された比較対象の光導波路の光導波路SHG光ピークよりも、図16の線165の位置に形成された光導波路のSHG光波長が長波長化する結果が得られた。これは、所定の周期分極反転領域に対する交差角度で形成された光導波路は分極反転周期が長周期化することによる。
また、線164、線165、線166のそれぞれの位置に形成された光導波路のSHG波長光も分極反転周期が、164<165<166と順次長波長化する結果が得られた。この結果から、光導波路コアを形成するプロセス34において、光導波路コアを形成する位置を選択することにより光導波路コアを形成する周期分極波長領域を選択し、さらに光導波路の周期分極反転領域に対する交差角度を調整することにより、波長変換光が制御できることが示された。したがって、光導波路コアの有する分極反転構造の分極反転周期を調整することにより誤差を補償することができることが示された。
以上説明したように、本開示によれば、光導波路コアを形成する工程の前の工程において生じる光導波路コア層の膜厚分布などを原因とする波長変換光の光学特性の変動を、光導波路コアを形成する工程の段階で補償することができるので、歩留まりに優れた波長変換装置の製造方法を実現することが可能となる。また、光導波路コアを形成する工程の段階で光導波路コアの有する分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に選択、調整することができることから、例えば、複数同じ波長変換特性が並んで必要なアレイ状波長変換装置を作製する場合に作製歩留まりを大きく向上できる。また、本開示の製造方法を利用して、複数の分極反転周期の異なる分極反転周期構造を有する光導波路を形成することで、より広帯域光波長帯で利用可能な波長変換装置を提供することができる。
本発明は、従来の製造方法に比べて、作製歩留まりを大きく向上できる波長変換素子の製造方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 二次の非線形効果を有する少なくとも一つ以上の周期分極反転領域を含む一本の光導波路コアが形成される光導波路コア形成領域を少なくとも1つ以上有する光導波路コア基板を形成する第1の工程と、前記光導波路コア基板と、少なくとも使用光波長の範囲で前記光導波路コア基板よりも低い屈折率を有する基板とを接合して接合基板を形成し、前記光導波路コア基板を薄膜化して光導波路コア層を形成する第2の工程と、前記接合基板の前記光導波路コア層を加工して、光導波路コアを形成する第3の工程とを含む波長変換素子の製造方法であって、
    前記第3の工程において、前記光導波路コア形成領域において、少なくとも1つ以上の周期分極反転領域に対する前記一本の光導波路コアの形成位置を選択することにより、形成された前記一本の光導波路コアが有する周期分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に調整することを特徴とする波長変換素子の製造方法。
  2. 前記第3の工程において、前記一本の光導波路コアの前記周期分極反転領域に対する交差角度を選択することにより、前記形成された前記一本の光導波路コアの有する周期分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に調整することを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
  3. 前記第1の工程において、前記光導波路コア基板の前記光導波路コア形成領域に少なくとも2つ以上の分極反転周期が異なる周期分極反転領域を分極境界線の方向にアレイ状に配置するように形成し、前記第3の工程において、前記少なくとも2つ以上の分極反転周期が異なる周期分極反転領域から前記一本の光導波路コアを形成する周期分極反転領域を選択することにより、前記形成された前記一本の光導波路コアの有する周期分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に調整することを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
  4. 前記第1の工程において、前記光導波路コア基板の前記光導波路コア形成領域に少なくとも4つ以上の分極反転周期が異なる周期分極反転領域を分極境界線に垂直な方向および平行な方向に2次元アレイ状に配置するように形成し、前記第3の工程において、前記少なくとも4つ以上の分極反転周期が異なる周期分極反転領域から前記一本の光導波路コアを形成する周期分極反転領域を選択することにより、前記形成された前記一本の光導波路コアの有する周期分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に調整することを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
  5. 前記第1の工程において、前記光導波路コア基板の前記光導波路コア形成領域に少なくとも4つ以上の分極反転周期が異なる周期分極反転領域を分極境界線に垂直な方向および平行な方向に2次元アレイ状に配置するように形成し、前記第3の工程において前記少なくとも4つ以上の分極反転周期が異なる周期分極反転領域から前記一本の光導波路コアを形成する周期分極反転領域を少なくとも1つ選択し、さらに前記一本の光導波路コアの前記選択された周期分極反転領域に対する交差角度を選択することにより、前記形成された一本の光導波路コアの有する周期分極反転構造の分極反転周期を少なくとも局所的に調整することを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子の製造方法。
  6. 前記光導波路コア基板、および、前記基板には、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、KNbO3(ニオブ酸カリウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、LiNb(x)Ta(1-x)3(0≦x≦1)(不定比組成のタンタル酸リチウム)、またはKTiOPO4(チタン酸リン酸カリウム)、さらに、それらにMg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、Sc(スカンジウム)、またはIn(インジウム)から選ばれる少なくとも1つを添加物として含有している材料が用いられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の波長変換素子の製造方法。
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