JP7846401B2 - 圧縮機用モータ、圧縮機及び冷凍装置 - Google Patents

圧縮機用モータ、圧縮機及び冷凍装置

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Description

本開示は、圧縮機用モータ、圧縮機及び冷凍装置に関するものである。
モータの出力トルクは、マグネットトルクとリラクタンストルクとから構成される。通常、マグネットトルクが最大となる電流位相と、リラクタンストルクが最大となる電流位相とは異なるので、モータの出力トルクは、マグネットトルクのピーク値とリラクタンストルクのピーク値との合計よりも低くなる。
特許文献1には、複数の永久磁石を有する永久磁石型回転子部と、複数の突極部を有するリラクタンス型回転子部とを持つ回転子を備えた電動機において、永久磁石回転子部とリラクタンス型回転子部との間にずれ角を持たせ、各回転子部が最大トルクを発生する電流位相を合わせることによって、出力トルクを大きくすることが開示されている。
特開2003-18777号公報
しかし、特許文献1の電動機では、永久磁石型回転子部及びリラクタンス型回転子部に最大トルクを発生させる電流位相を合わせているため、合わせた電流位相ではトルクが大きくなるが、当該電流位相からずれると、トルクが小さくなる。すなわち、特許文献1の電動機には、出力トルクが最大となる電流位相から外れた運転をする場合に、出力トルクが低下してしまうという問題がある。
本開示の目的は、電流位相の広い範囲で出力トルクの低下を抑制できる圧縮機用モータを提供することにある。
本開示の第1の態様は、回転軸心(O)を中心に一方向に回転するロータ(31)と、前記ロータ(31)と径方向に対向するように配置されたステータ(21)とを備えた圧縮機用モータ(20)である。前記ロータ(31)は、ロータコア(32)と磁石(33)とを備え、周方向に極性が交互に並ぶ。前記ステータ(21)は、ステータコア(22)と巻線(23)とを備える。前記ロータ(31)における前記磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置を第1位置(P1)とし、前記第1位置(P1)と前記回転軸心(O)とを通るように仮想的に引いた直線を磁極中心線(CL)としたとき、軸方向から見て、前記磁石(33)又は前記ロータコア(32)の少なくとも一部分は前記磁極中心線(CL)に対して非対称に構成される。前記ロータ(31)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置を第2位置(P2)として、前記第2位置(P2)は、前記第1位置(P1)に対して前記ロータ(31)の回転方向の後進側にずれている。
第1の態様では、ロータ(31)の周方向において、磁気抵抗が最大となる第2位置(P2)が、磁石(33)による磁束が最大となる第1位置(P1)に対し、回転方向の後進側にずれているため、マグネットトルクが最大となる電流位相とリラクタンストルクが最大となる電流位相との差が大きくなり、電流位相の広い範囲で出力トルクの低下を抑制できる。
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記磁石(33)により前記巻線(23)に誘起される交流電圧の位相と、前記巻線(23)に供給される交流電流の位相との差を位相差とし、前記位相差が、前記磁石(33)と前記交流電流とによって生ずるマグネットトルクがゼロとなり且つ前記交流電流による磁束の向きが前記磁石(33)による磁束の向きと逆の向きとなる位相差であるとき、前記ロータコア(32)と前記交流電流とによって生ずるリラクタンストルクが正の値となる。
第2の態様では、マグネットトルクがゼロとなる位相差つまり電流位相が大きい領域でも、リラクタンストルクが正の値となるので、電流位相が大きい領域で出力トルクを増大させることができる。
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記ロータ(31)は、前記ロータコア(32)と前記磁石(33)とを備えた第1ロータ部(31a)と、前記第1ロータ部(31a)と軸方向に隣り合って配置され、前記ロータコア(32)を備え且つ前記磁石(33)を備えない第2ロータ部(31b)とを備える。前記第1ロータ部(31a)における前記磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置を第3位置(P3)とし、前記第2ロータ部(31b)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置を第4位置(P4)としたとき、前記第4位置(P4)は、前記第3位置(P3)に対して前記ロータ(31)の回転方向の後進側にずれている。
第3の態様では、第1ロータ部(31a)が発生するマグネットトルクが最大となる電流位相と、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクが最大となる電流位相との差が大きくなるので、電流位相の広い範囲で出力トルクの低下を抑制できる。
本開示の第4の態様は、第3の態様において、軸方向から見て、前記第1ロータ部(31a)の前記ロータコア(32)の形状は、前記第2ロータ部(31b)の前記ロータコア(32)の形状と略同一であり、前記第2ロータ部(31b)の前記ロータコア(32)は、前記第1ロータ部(31a)の前記ロータコア(32)に対して前記ロータ(31)の回転方向の後進側にずれて配置される。
第4の態様では、第1ロータ部(31a)のロータコア(32)と第2ロータ部(31b)のロータコア(32)とが同じ形状を有するため、ロータ(31)の製作が容易になる。
本開示の第5の態様は、第3又は第4の態様において、前記第1ロータ部(31a)は、前記ステータ(21)と径方向に対向しない領域を有する。
第5の態様では、第1ロータ部(31a)が発生するマグネットトルクを増大させることができるので、出力トルクが増大する。
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、前記磁石(33)の少なくとも一部は、前記磁極中心線(CL)に対して非対称に構成される。
第6の態様では、ロータ(31)が単一構造である場合にも、電流位相の広い範囲で出力トルクの低下を抑制できる。
本開示の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つの圧縮機用モータ(20)を備える圧縮機である。
第7の態様では、電流位相の広い範囲で出力トルクの低下を抑制できる圧縮機用モータ(20)を用いるため、圧縮機(10)のエネルギー効率が向上する。
本開示の第8の態様は、第7の態様の圧縮機(10)を備える冷凍装置である。
第8の態様では、エネルギー効率に優れた圧縮機(10)を用いるため、冷凍装置(1)の消費電力を低減することができる。
図1は、モータの基本構成を示す縦断面図である。 図2は、図1に示すモータにおけるステータの横断面図である。 図3は、実施形態1のモータの縦断面構成の概略を示す模式図である。 図4Aは、実施形態1のモータにおける第1ロータ部の横断面構成の概略を示す模式図である。 図4Bは、実施形態1のモータにおける第2ロータ部の横断面構成の概略を示す模式図である。 図5Aは、ロータにおける磁石による磁束が最大となる周方向の位置を特定するための測定環境の構成を示す模式図である。 図5Bは、図5Aに示す測定環境により測定された結果を示す模式図である。 図5Cは、図5Bに示す測定結果から特定された、ロータにおける磁石による磁束が最大となる周方向の位置を示す模式図である。 図6Aは、ロータにおける磁気抵抗が最大となる周方向の位置を特定するための測定環境の構成を示す模式図である。 図6Bは、図6Aに示す測定環境により測定された結果を示す模式図である。 図6Cは、図6Bに示す測定結果から特定された、ロータにおける磁気抵抗が最大となる周方向の位置を示す模式図である。 図7Aは、実施形態1のモータにおいて、第1ロータ部における磁石による磁束が最大となる周方向の位置と、第2ロータ部における磁気抵抗が最大となる周方向の位置とをずらさなかった場合のトルク特性を示す図である。 図7Bは、実施形態1のモータのトルク特性を示す図である。 図7Cは、図7Aに示すトルク特性と、図7Bに示すトルク特性とを対比して示す図である。 図8Aは、実施形態1のモータに大電流を流した場合おける電流位相の小さい範囲でのトルク特性を示す図である。 図8Bは、実施形態1のモータに小電流を流した場合おける電流位相の小さい範囲でのトルク特性を示す図である。 図9Aは、実施形態1の変形例1のモータにおいて、磁石による磁束が最大となる周方向の位置と、磁気抵抗が最大となる周方向の位置とをずらさなかった場合のロータの横断面構成の概略を示す模式図である。 図9Bは、実施形態1の変形例1のモータにおけるロータの横断面構成の概略を示す模式図である。 図10Aは、実施形態1の変形例1のモータにおいて、磁石による磁束が最大となる周方向の位置と、磁気抵抗が最大となる周方向の位置とをずらさなかった場合のトルク特性を示す図である。 図10Bは、実施形態1の変形例1のモータのトルク特性を示す図である。 図10Cは、図10Aに示すトルク特性と、図10Bに示すトルク特性とを対比して示す図である。 図11は、実施形態1の変形例2のモータの縦断面構成の概略を示す模式図である。 図12Aは、実施形態1の変形例2のモータにおいて、第1ロータ部における磁石による磁束が最大となる周方向の位置と、第2ロータ部における磁気抵抗が最大となる周方向の位置とをずらさなかった場合のトルク特性を示す図である。 図12Bは、実施形態1の変形例2のモータのトルク特性を示す図である。 図12Cは、図12Aに示すトルク特性と、図12Bに示すトルク特性とを対比して示す図である。 図13は、実施形態2の圧縮機の構成の一例を示す縦断面図である。 図14は、実施形態3の冷凍装置の構成の一例を示す配管系統図である。
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、図面において、同一の符号は同一の構成要素を表わすが、長さ、幅、厚さ、深さ等の図面上の寸法は、図面の明瞭化及び簡略化のために実際の尺度から適宜変更されており、実際の相対寸法と対応しない場合がある。
(実施形態1)
<モータの基本構成>
図1及び図2に示すように、モータ(20)は、ステータ(21)及びロータ(31)を有する。モータ(20)は、圧縮機用モータ(20)である。モータ(20)は、インナーロータ型に構成される。ステータ(21)は、ステータコア(22)及び複数の巻線(23)を有する。ステータコア(22)は、ロータ(31)と径方向に対向するように配置される。ロータ(31)は、駆動軸(40)と共に回転可能に構成される。ロータ(31)は、駆動軸(40)の軸心(以下、回転軸心(O)という)を中心に所定の方向に回転する。ロータ(31)は、ロータコア(32)及び複数の磁石(33)を有し、周方向に極性が交互に並ぶ。
尚、本開示では、回転軸心(O)の延びる方向を「軸方向」と記載し、「軸方向」と直交する方向を「径方向」と記載し、回転軸心(O)回りの方向を「周方向」と記載する。また、「軸方向」に沿う断面を「縦断面」と記載し、「軸方向」と直交する断面を「横断面」と記載する。
ステータコア(22)は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることで形成される。ステータコア(22)は、環状のバックヨーク(24)及び複数のティース(25)を有する。複数のティース(25)は、バックヨーク(24)の内周面から径方向内方に延びる。複数の巻線(23)は、複数のティース(25)に巻回される。
ロータコア(32)は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されることで形成される。複数の磁石(33)は、ロータコア(32)の内部に配置される。複数の磁石(33)は、例えばフェライト磁石等の永久磁石である。複数の磁石(33)は、ロータコア(32)の周方向に並ぶと共にロータコア(32)を軸方向に貫通するように設けられる。
尚、図1及び図2に示すモータ(20)の構成は例示であり、モータ(20)の極数、ステータコア(22)の形状、ティース(25)や磁石(33)の数、巻線(23)の巻き回し方法等は特に限定されない。また、図示はしていないが、ロータコア(32)の軸方向の上端及び下端に、端板を配置し、当該端板及びロータコア(32)を軸方向に貫通するボルトを設け、ロータコア(32)を構成する積層鋼板を軸方向に締め付けることによって、モータ(20)の特性を向上させてもよい。
<ロータの構成>
実施形態1のモータ(20)では、図3に示すように、ロータ(31)は、ロータコア(32)と磁石(33)とを備えた第1ロータ部(31a)と、ロータコア(32)を備え且つ磁石(33)を備えない第2ロータ部(31b)とを備える。第1ロータ部(31a)と第2ロータ部(31b)とは、軸方向に隣り合って配置される。
図4A及び図4Bに示すように、第1ロータ部(31a)及び第2ロータ部(31b)の径方向中央には、駆動軸(40)が軸方向に挿入される貫通穴(30)が設けられる。軸方向から見て、第1ロータ部(31a)のロータコア(32)の形状と、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)の形状とは略同一である。具体的には、第1ロータ部(31a)及び第2ロータ部(31b)において、ロータコア(32)には、径方向に並ぶ2つの孔部(34)が、周方向に等間隔で6組設けられている。孔部(34)は、第1ロータ部(31a)及び第2ロータ部(31b)をそれぞれ軸方向に貫通するように形成される。第1ロータ部(31a)では、孔部(34)に磁石(33)が配置される一方、第2ロータ部(31b)では、孔部(34)に磁石(33)が配置されない。
第1ロータ部(31a)及び第2ロータ部(31b)では、1つの磁極に対し、径方向に並ぶ2つの孔部(34)が配置されると共に、6つの磁極と対応する孔部(34)は、貫通穴(30)を囲むように等間隔で周方向に配列される。孔部(34)はそれぞれ、軸方向から見て径方向内側に凸となる円弧状を有する。孔部(34)の端部は、軸方向から見てロータコア(32)の外周近傍に位置する。第1ロータ部(31a)では、1つの磁極の孔部(34)のそれぞれに、磁気的に直列に並ぶ磁石(33)が嵌め込まれる。
第1ロータ部(31a)は、磁石(33)によってマグネットトルクを発生する。また、ロータコア(32)が、周方向の位置によって磁束の通りやすさが異なる形状を持つことにより、第1ロータ部(31a)及び第2ロータ部(31b)は、リラクタンストルクを発生する。
尚、図4A及び図4Bに示す本例では、ロータ(31)の極数が6極の場合を示しているが、ロータ(31)の極数は特に限定されない。また、本例では、各磁極に対し2つの孔部(34)を配置したが、各磁極に対応する孔部(34)の配置数は特に限定されない。
実施形態1のモータ(20)では、図4A及び図4Bに示すように、ロータ(31)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第1位置(P1))、つまり、第1ロータ部(31a)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第3位置(P3))と、回転軸心(O)とを通るように仮想的に引いた直線を磁極中心線(CL)としたとき、軸方向から見て、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)つまり孔部(34)は磁極中心線(CL)に対して非対称になっている。また、図4Bに示すように、ロータ(31)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第2位置(P2))、つまり、第2ロータ部(31b)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第4位置(P4))は、第1位置(P1)(第3位置(P3))に対してロータ(31)の回転方向の後進側にズレ角θxでずれている。尚、図4A及び図4Bでは、1つの磁極の磁極中心線(CL)を回転の基準0°としている。
本例では、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)を、第1ロータ部(31a)のロータコア(32)に対してロータ(31)の回転方向の後進側にずらして配置することにより、軸方向から見て、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)を磁極中心線(CL)に対して非対称にしている。しかし、これに代えて、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)つまり孔部(34)の形状自体を変えることにより、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)を磁極中心線(CL)に対して非対称にしてもよい。或いは、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)を磁極中心線(CL)に対して非対称にする代わりに、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)の孔部(34)に磁石(33)を磁極中心線(CL)に対して非対称に配置してもよい。
<磁石による磁束が最大となる周方向の位置>
「ロータ(31)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第1位置(P1))」は、例えば、モータ(20)の端子を開放した状態でロータ(31)を回転させ、ロータ(31)の角度と巻線(23)に発生する誘起電圧とを測定し、その測定結果を評価することで特定できる。
具体的には、図5Aに示すように、測定対象のモータ(測定モータ)を、当該測定モータを一定の回転速度で回転させるための他のモータ(負荷モータ)に接続し、測定モータのU相及びV相と、回転位置センサとをオシロスコープに接続する。次に、負荷モータによって測定モータを回転させながら、オシロスコープによって、U相とV相との間の線間電圧Vuvを取得すると共に、回転位置センサで計測された測定モータの回転位置情報を取得する。次に、取得した線間電圧Vuvをフーリエ変換して、図5Bに示すような基本波波形を取得し、線間電圧Vuvの基本波波形の最大値での回転位置情報を確定する。次に、線間電圧Vuvの回転位置情報をU相電圧の回転位置情報に変換するために、線間電圧Vuvの回転位置情報に(30/極対数)°分の位相を加え、さらに、U相電圧の回転位置情報をU相磁束の回転位置情報に変換するために、U相電圧の回転位置情報から(90/極対数)°分の位相を減じる。このようにして得られたU相磁束の回転位置情報にロータ位置を合わせることによって、例えば図5Cに示すように、「磁石による磁束が最大となる周方向の位置」が特定される。図5Cに示す例では、U相コイル(巻線(23))と磁石(33)とが対向する位置が、「ロータ(31)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第1位置(P1))」、つまり、「第1ロータ部(31a)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第3位置(P3))」となる。尚、図5Cにおいて、図1~図3、図4Aと同じ構成要素には同じ符号を付す。
<磁気抵抗が最大となる周方向の位置>
「ロータ(31)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第2位置(P2))」は、インダクタンスを測定することで特定できる。ロータ(31)の角度ごとにロータ(31)をロックした状態で、二つの端子に交流電圧を印加して交流電流を測定し、交流電圧及び交流電流から計算によってインダクタンスを得ることができる。「インダクタンスが最小となる周方向の位置」が、「ロータ(31)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第2位置(P2))」である。
具体的には、図6Aに示すように、測定対象のモータ(測定モータ)を、当該測定モータの固定位置を変えるための他のモータ(負荷モータ)に接続し、測定モータのU相及びV相をパワーメーター及び電源に接続すると共に、回転位置センサをオシロスコープに接続する。次に、負荷モータによって測定モータが回転しないように固定しながら、U相及びV相に交流電圧を印加して、U相とV相との間の線間電圧実効値及び相電流実効値をパワメータによって取得すると共に、回転位置センサで計測された測定モータの回転位置情報をオシロスコープによって取得する。以上の測定を、負荷モータで測定モータの回転位置を変更しながら電気角半周期分について繰り返し行う。次に、U相とV相との間の線間電圧実効値Vuv及びU相電流実効値Iu、電源の角周波数ωps、一相分の電機子抵抗Raを用いて、U相とV相との間のインダクタンスLuvを下記の式
Luv=√((Vuv/Iu)2-(2Ra)2)/ωps
に基づき電気角半周期分について繰り返し求める。次に、得られたU相とV相との間のインダクタンスLuvをフーリエ変換して、図6Bに示すような基本波波形を取得し、U相とV相との間のインダクタンスLuvが最小となる回転位置情報を確定する。次に、U相とV相との間のインダクタンスLuvの回転位置情報をU相のインダクタンスの回転位置情報に変換するために、U相とV相との間のインダクタンスLuvの回転位置情報に(30/極対数)°分の位相を加える。このようにして得られたU相のインダクタンスの回転位置情報にロータ位置を合わせることによって、例えば図6Cに示すように、「磁気抵抗が最大となる周方向の位置」が特定される。図6Cに示す例では、U相コイル(巻線(23))と孔部(34)とが対向する位置が、「ロータ(31)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第2位置(P2))」、つまり、「第2ロータ部(31b)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第4位置(P4))」となる。尚、図6Cにおいて、図1~図3、図4Bと同じ構成要素には同じ符号を付す。
<トルク特性>
前述の通り、実施形態1のモータ(20)では、図4A及び図4Bに示すように、ロータ(31)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第1位置(P1))、つまり、第1ロータ部(31a)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第3位置(P3))と比較して、ロータ(31)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第2位置(P2))、つまり、第2ロータ部(31b)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第4位置(P4))をロータ(31)の回転方向の後進側にずらしている。これにより、図7A及び図7Bに示すように、第1ロータ部(31a)が発生するマグネットトルクがピーク値となる電流位相と、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相とが離れるように、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相を大きくすることができる。その結果、図7Cに示すように、電流位相が大きい領域においてロータ(31)の出力トルク(合計トルク)を向上させることができる。
詳しくは、図7Aは、実施形態1のモータ(20)において第3位置(P3)に対し第4位置(P4)をずらさなかった場合(比較例)のトルク特性を示し、図7Bは、実施形態1のモータ(20)において第3位置(P3)に対し第4位置(P4)をロータ(31)の回転方向の後進側にズレ角θxでずらした場合のトルク特性を示し、図7Cは、比較例の出力トルクと実施形態1の出力トルクとを対比して示す。図7A及び図7Bにおいて、第1ロータ部(31a)が発生するリラクタンストルクを「永久磁石型ロータ部のリラクタンストルク」とし、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクを「リラクタンス型ロータ部のリラクタンストルク」としている。
図7Aに示す「リラクタンス型ロータ部のリラクタンストルク」がピーク値となる電流位相をθa、図7Aに示す「マグネットトルク(第1ロータ部(31a)が発生するマグネットトルク)」がピーク値となる電流位相をθbとし、図7Bに示す「リラクタンス型ロータ部のリラクタンストルク」がピーク値となる電流位相θa’として、ズレ角θxは、
45°<θa’-θb
θa’=(θx×極対数)+θa
を満たすように決定される。言い換えると、図7Aに示す「リラクタンス型ロータ部のリラクタンストルク」がピーク値となる電流位相θaと比較して、図7Bに示す「リラクタンス型ロータ部のリラクタンストルク」がピーク値となる電流位相θa’が、「ズレ角θx×極対数」だけ大きくなるように、ズレ角θxが決定される。これにより、第1ロータ部(31a)が発生するマグネットトルクがピーク値となる電流位相と、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相とが離れるように、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相を大きくし、その結果、電流位相が大きい領域においてロータ(31)の出力トルク(合計トルク)を向上させることができる。
尚、本開示では、「電流位相」とは、「磁石(33)により巻線(23)に誘起される交流電圧の位相」を基準(0°)とする「巻線(23)に供給される交流電流の位相」である。言い換えると、「磁石(33)により巻線(23)に誘起される交流電圧の位相」と、「巻線(23)に供給される交流電流の位相」との「位相差」が、「電流位相」である。従って、図7A及び図7Bに示す「マグネットトルク」がピーク値となる電流位相θbは0°となり、図7Aに示す「リラクタンストルク(永久磁石型ロータ部及びリラクタンス型ロータ部)」がピーク値となる電流位相θaは45°となり、図7Bに示す「リラクタンストルク(リラクタンス型ロータ部)」がピーク値となる電流位相θa’は45°よりも大きくなる。
実施形態1のモータ(20)では、図7Bに示すように、マグネットトルクが0となる電流位相90°(巻線(23)に供給される交流電流による磁束の向きが、磁石(33)による磁束の向きと逆の向きとなる電流位相)で、巻線(23)に供給される交流電流とロータコア(32)とによって生ずるリラクタンストルク(リラクタンス型ロータ部)は正の値となる。従って、図7Cに示すように、出力トルク(合計トルク)も電流位相90°で正の値となる。それに対して、図7Aに示す比較例では、リラクタンストルク(永久磁石型ロータ部及びリラクタンス型ロータ部)は、マグネットトルクと同様に電流位相90°で0となるので、出力トルク(合計トルク)も電流位相90°で0となってしまう。
<実施形態1の特徴>
実施形態1のモータ(20)では、ロータ(31)の周方向において、磁気抵抗が最大となる第2位置(P2)が、磁石(33)による磁束が最大となる第1位置(P1)に対し、回転方向の後進側にずれている。このため、マグネットトルクが最大となる電流位相とリラクタンストルクが最大となる電流位相との差が大きくなり、電流位相の広い範囲で出力トルクの低下を抑制できる。
実施形態1のモータ(20)において、磁石(33)により巻線(23)に誘起される交流電圧の位相と、巻線(23)に供給される交流電流の位相との差を位相差とし、当該位相差が、磁石(33)と交流電流とによって生ずるマグネットトルクがゼロとなり且つ当該交流電流による磁束の向きが磁石(33)による磁束の向きと逆の向きとなる位相差であるとき、ロータコア(32)と交流電流とによって生ずるリラクタンストルクが正の値となるように構成してもよい。このようにすると、マグネットトルクがゼロとなる位相差つまり電流位相が大きい領域でも、リラクタンストルクが正の値となるので、電流位相が大きい領域で出力トルクを増大させることができる。従って、電流位相が大きい領域で電圧が上がらないように弱め磁束制御を行うことができる。
一般に、空気調和装置では、圧縮機用モータの低速領域において最大トルク制御を行う。最大トルク制御では、出力トルクが最大となるように電流位相が調整される。この場合、電流位相が45°以下の小さい領域で運転が行われる。しかし、最大トルク制御では、磁石磁束により電圧が飽和してしまうことが原因で、高速領域での運転を行うことができない。それに対して、弱め磁束制御を行うことによって、高速領域での運転が可能となる。弱め磁束制御では、電流位相を90°に近づけることによって、磁石磁束を弱めて、電圧上昇を抑制することで、高速領域まで運転可能とする制御が行われる。
尚、電流位相が小さい領域において、図7Bに示す「リラクタンス型ロータ部のリラクタンストルク」が負値となる結果、図7C及び図8Aに示すように、実施形態1のモータ(20)の出力トルクは、比較例の出力トルクよりも低下してしまう。しかし、実施形態1のモータ(20)(圧縮機用モータ)が適用される空気調和装置において電流位相が小さい領域で運転が行われる場合は、低トルク、低電流であるため、図8Bに示すように、出力トルクの低下量は小さくなる。これは、低電流になるほど、リラクタンストルクの割合が小さくなり、リラクタンストルクの低下の影響が小さくなるためである。尚、図8Aに示すトルク特性は、30Aの大電流により得られた特性であり、図8Bに示すトルク特性は、10Aの大電流により得られた特性である。
実施形態1のモータ(20)において、ロータ(31)は、ロータコア(32)と磁石(33)とを備えた第1ロータ部(31a)と、第1ロータ部(31a)と軸方向に隣り合って配置され、ロータコア(32)を備え且つ磁石(33)を備えない第2ロータ部(31b)とを備えてもよい。ここで、第1ロータ部(31a)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置を第3位置(P3)とし、第2ロータ部(31b)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置を第4位置(P4)としたとき、第4位置(P4)は、第3位置(P3)に対してロータ(31)の回転方向の後進側にずれている。これにより、第1ロータ部(31a)が発生するマグネットトルクが最大となる電流位相と、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクが最大となる電流位相との差が大きくなるので、電流位相の広い範囲で出力トルクの低下を抑制できる。この場合、軸方向から見て、第1ロータ部(31a)のロータコア(32)の形状は、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)の形状と略同一であり、第2ロータ部(31b)のロータコア(32)は、第1ロータ部(31a)のロータコア(32)に対して、ロータ(31)の回転方向の後進側にずれて配置されてもよい。このようにすると、第1ロータ部(31a)のロータコア(32)と第2ロータ部(31b)のロータコア(32)とが同じ形状を有するため、ロータ(31)の製作が容易になる。
一方、特許文献1のモータのように、永久磁石型回転子部が最大トルクを発生する電流位相と、リラクタンス型回転子部が最大トルクを発生する電流位相とを合わせた場合、合わせた電流位相及びその近傍の電流位相が小さい領域では出力トルクが大きくなるが、電流位相が大きい領域で出力トルクが小さくなってしまう。
(実施形態1の変形例1)
前記実施形態1では、図3、図4A及び図4Bに示すように、ロータ(31)は、ロータコア(32)と磁石(33)とを備えた第1ロータ部(31a)と、ロータコア(32)を備え且つ磁石(33)を備えない第2ロータ部(31b)とから構成された。
それに対して、本変形例では、ロータコア(32)と磁石(33)とを備えた単一構造のロータ(31)(図1参照)を有し、当該ロータ(31)において、図9Bに示すように、軸方向から見て、複数の磁石(33)のうちの少なくとも一部は、磁極中心線(CL)に対して非対称に構成される。本変形例のモータ(20)は、前記実施形態1の第2ロータ部(31b)のような、リラクタンス型ロータ部は有していない。
磁石(33)が磁極中心線(CL)に対して対称に構成された場合、図9Aに示す比較例のように、磁極中心線(CL)上に、「磁石(33)による磁束が最大となる周方向の第1位置(P1)」と、「磁気抵抗が最大となる周方向の第2位置(P2)」とが存在する。
それに対して、図9Bに示す本変形例のロータ(31)では、各磁極を構成する磁石(33)のうち、外周側の孔部(34)に配置される磁石(33)をロータ(31)の回転方向の前進側にずらして、当該磁石(33)を磁極中心線(CL)に対して非対称に構成する。内周側の孔部(34)に配置される磁石(33)については、磁極中心線(CL)に対して対称に構成してもよい。このように、少なくとも一部の磁石(33)の位置をずらすことによって、磁石磁束の界磁方向がずれるので、「磁気抵抗が最大となる周方向の第2位置(P2)」を、「磁石(33)による磁束が最大となる周方向の第1位置(P1)」に対してロータ(31)の回転方向の後進側にずらすことができる。
尚、図9A及び図9Bにおいて、図3、図4A及び図4Bに示す前記実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付す。また、図9A及び図9Bでは、ロータ(31)における磁石(33)による磁束の向きをdm軸とし、ロータ(31)における磁気抵抗が最大となる向きをdr軸としている。図9Aに示す比較例では、ロータ(31)の外周部では、dm軸及びdr軸が磁極中心線(CL)と一致し、ロータ(31)の内周部では、dm軸及びdr軸が磁極中心線(CL)と一致しない。図9Bに示す本変形例では、ロータ(31)の外周部でも、dr軸が磁極中心線(CL)と一致しない。
前述の通り、本変形例のモータ(20)では、図9Bに示すように、ロータ(31)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第1位置(P1))と比較して、ロータ(31)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第2位置(P2))をロータ(31)の回転方向の後進側にずらしている。これにより、図10A及び図10Bに示すように、ロータ(31)が発生するマグネットトルクがピーク値となる電流位相と、ロータ(31)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相とが離れるように、ロータ(31)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相を大きくすることができる。その結果、図10Cに示すように、電流位相が大きい領域においてロータ(31)の出力トルク(合計トルク)を向上させることができる。
詳しくは、図10Aは、本変形例のモータ(20)において第1位置(P1)に対し第2位置(P2)をずらさなかった場合(比較例)のトルク特性を示し、図10Bは、本変形例のモータ(20)において第1位置(P1)に対し第2位置(P2)をロータ(31)の回転方向の後進側にズレ角θxでずらした場合のトルク特性を示し、図10Cは、比較例の出力トルクと実施形態1の出力トルクとを対比して示す。
図10Aに示す「リラクタンストルク」がピーク値となる電流位相をθa、図10Aに示す「マグネットトルク」がピーク値となる電流位相をθbとし、図10Bに示す「リラクタンストルク」がピーク値となる電流位相θa’として、ズレ角θxは、
45°<θa’-θb
θa’=(θx×極対数)+θa
を満たすように決定される。言い換えると、図10Aに示す「リラクタンストルク」がピーク値となる電流位相θaと比較して、図10Bに示す「リラクタンストルク」がピーク値となる電流位相θa’が、「ズレ角θx×極対数」だけ大きくなるように、ズレ角θxが決定される。これにより、ロータ(31)が発生するマグネットトルクがピーク値となる電流位相と、ロータ(31)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相とが離れるように、ロータ(31)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相を大きくし、その結果、電流位相が大きい領域においてロータ(31)の出力トルク(合計トルク)を向上させることができる。
尚、図10A及び図10Bに示す「マグネットトルク」がピーク値となる電流位相θbは0°となり、図10Aに示す「リラクタンストルク」がピーク値となる電流位相θaは45°となり、図10Bに示す「リラクタンストルク」がピーク値となる電流位相θa’は45°よりも大きくなる。
本変形例のモータ(20)では、図10Bに示すように、マグネットトルクが0となる電流位相90°(巻線(23)に供給される交流電流による磁束の向きが、磁石(33)による磁束の向きと逆の向きとなる電流位相)で、巻線(23)に供給される交流電流とロータコア(32)とによって生ずるリラクタンストルクは正の値となる。従って、図10Cに示すように、出力トルク(合計トルク)も電流位相90°で正の値となる。それに対して、図10Aに示す比較例では、リラクタンストルクは、マグネットトルクと同様に電流位相90°で0となるので、出力トルク(合計トルク)も電流位相90°で0となってしまう。
以上に説明したように、本変形例では、ロータ(31)が単一構造である場合にも、前記実施形態1と同様に、電流位相の広い範囲で出力トルクの低下を抑制できる。
(実施形態1の変形例2)
前記実施形態1では、図3に示すように、ロータ(31)は、ロータコア(32)と磁石(33)とを備えた1つの第1ロータ部(31a)と、ロータコア(32)を備え且つ磁石(33)を備えない1つの第2ロータ部(31b)とから構成された。
それに対して、本変形例では、図11に示すように、ロータ(31)は、2つの第1ロータ部(31a)と、1つの第2ロータ部(31b)とから構成され、軸方向において2つの第1ロータ部(31a)が1つの第2ロータ部(31b)を挟むように配置される。ここで、各第1ロータ部(31a)は、ステータ(21)と径方向に対向しない領域を有する。言い換えると、各第1ロータ部(31a)は、軸方向においてステータ(21)よりも突出したオーバーハングを有する。各第1ロータ部(31a)の横断面構成は、図4Aに示す前記実施形態1の第1ロータ部(31a)の横断面構成と同様であり、第2ロータ部(31b)の横断面構成は、図4Bに示す前記実施形態1の第2ロータ部(31b)の横断面構成と同様である。
尚、ステータと径方向に対向しないロータ部分は、マグネットトルクしか発生しないため、本変形例のロータ(31)では、軸方向両端のステータ(21)と対向しない領域に、永久磁石型ロータ部である第1ロータ部(31a)を配置している。
前述の通り、本変形例のモータ(20)では、図4A及び図4Bに示す前記実施形態1と同様に、ロータ(31)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第1位置(P1))、つまり、第1ロータ部(31a)における磁石(33)による磁束が最大となる周方向の位置(第3位置(P3))と比較して、ロータ(31)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第2位置(P2))、つまり、第2ロータ部(31b)における磁気抵抗が最大となる周方向の位置(第4位置(P4))をロータ(31)の回転方向の後進側にずらしている。これにより、図12A及び図12Bに示すように、第1ロータ部(31a)が発生するマグネットトルクがピーク値となる電流位相と、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相とが離れるように、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクがピーク値となる電流位相を大きくすることができる。その結果、図12Cに示すように、電流位相が大きい領域においてロータ(31)の出力トルク(合計トルク)を向上させることができる。
詳しくは、図12Aは、本変形例のモータ(20)において第3位置(P3)に対し第4位置(P4)をずらさなかった場合(比較例)のトルク特性を示し、図12Bは、本変形例のモータ(20)において第3位置(P3)に対し第4位置(P4)をロータ(31)の回転方向の後進側にズレ角θxでずらした場合のトルク特性を示し、図12Cは、比較例の出力トルクと本変形例の出力トルクとを対比して示す。図12A及び図12Bにおいて、第1ロータ部(31a)が発生するリラクタンストルクを「永久磁石型ロータ部のリラクタンストルク」とし、第2ロータ部(31b)が発生するリラクタンストルクを「リラクタンス型ロータ部のリラクタンストルク」としている。
尚、図12A及び図12Bでは、第1ロータ部(31a)にオーバーハングを設けなかった場合のマグネットトルクの特性も示している。図12A及び図12Bに示す出力トルク(合計トルク)の特性は、第1ロータ部(31a)にオーバーハングを設けた場合の特性である。図12Cに示す出力トルクの特性は、比較例については第1ロータ部(31a)にオーバーハングを設けなかった場合の特性であり、本変形例については第1ロータ部(31a)にオーバーハングを設けた場合及び設けなかった場合の両方の特性である。
本変形例では、第1ロータ部(31a)がオーバーハング(ステータ(21)と径方向に対向しない領域)を有することにより、図12A及び図12Bに示すように、オーバーハング無しの場合と比較して、第1ロータ部(31a)が発生するマグネットトルクを増大させることができるので、図12Cに示すように、出力トルク(合計トルク)が増大する。
尚、本変形例において、第1ロータ部(31a)を軸方向の両側に配置する場合に、当該両側の第1ロータ部(31a)の軸方向長さは異なっていてもよいし、一方の第1ロータ部(31a)にオーバーハングを設けなくてもよい。或いは、第1ロータ部(31a)の軸方向全体が、ステータコア(22)と対向しなくてもよい。言い換えると、第2ロータコア部(32b)の軸方向の端部が、ステータコア(22)と径方向に対向しなくてもよい。或いは、前記実施形態1と同様に、第1ロータ部(31a)を1つ設け、当該第1ロータ部(31a)にオーバーハングを設けてもよい。
(実施形態2)
図13に示すように、実施形態2の圧縮機(10)は、ロータリ式圧縮機である。圧縮機(10)は、ケーシング(11)、前記実施形態1のモータ(20)、駆動軸(40)及び圧縮機構(50)を有する。以下の説明において、「上」、「下」、「右」及び「左」は、圧縮機(10)を正面から見た場合の方向を指す(図13の矢印参照)。「上」及び「下」は駆動軸(40)の軸方向でもある。「右」及び「左」は、軸方向に直交する向きであり、モータ(20)(又はケーシング(11))の径方向でもある。
ケーシング(11)は全密閉型の容器である。ケーシング(11)の内部は、圧縮機構(50)から吐出された高圧の冷媒で満たされる。ケーシング(11)は、金属材料で構成される。ケーシング(11)は、胴体(12)、底部(13)及び頂部(14)を有する。胴体(12)は、上下方向に延びる筒状の部材である。胴体(12)の筒軸方向は鉛直である。底部(13)は胴体(12)の下端を閉塞し、頂部(14)は胴体(12)の上端を閉塞する。ケーシング(11)は、上から順にモータ(20)、駆動軸(40)及び圧縮機構(50)を収容する。
モータ(20)は、インバータ装置によって回転数が制御される。言い換えると、圧縮機(10)は、回転数が可変なインバータ式である。モータ(20)のステータ(21)は、胴体(12)の内周面に固定される。モータ(20)のロータ(31)は、前記実施形態1で述べたように、回転軸心(O)を中心に回転する。駆動軸(40)は、モータ(20)から下方に向かって延びる。駆動軸(40)は、モータ(20)によって回転駆動される。駆動軸(40)は、モータ(20)の下方に設けられた軸受け(41)によって回転可能に支持される。
圧縮機構(50)は、シリンダ(51)と、シリンダ(51)の内部に設けられるピストン(52)とを有する。シリンダ(51)の内周面とピストン(52)の外周面との間にシリンダ室(53)が形成される。シリンダ室(53)では、駆動軸(40)によって駆動されるピストン(52)が流体を圧縮する。
圧縮機(10)は、吸入管(15)及び吐出管(16)を有する。吸入管(15)は、胴体(12)を径方向に貫通し、シリンダ室(53)と連通する。吸入管(15)を介して低圧冷媒がシリンダ室(53)に吸い込まれる。吐出管(16)は、頂部(14)を軸方向に貫通し、ケーシング(11)の内部空間と連通する。圧縮機構(50)で圧縮された冷媒は、モータ(20)のコアカット(図示省略)等を流れた後、吐出管(16)より吐出される。
実施形態2の圧縮機(10)は、電流位相の広い範囲で出力トルクの低下を抑制できる前記実施形態1のモータ(20)を備えるため、エネルギー効率が向上する。
尚、図13に示す圧縮機(10)の構成は例示であり、圧縮機(10)はロータリ式の圧縮機に限定されない。圧縮機(10)は、スイング式、スクロール式、スクリュー式、ターボ式、その他の方式の圧縮機であってもよい。
(実施形態3)
図14に示すように、実施形態3の冷凍装置(1)は、空気調和機である。空気調和機(1)は、冷房専用であってもよいし、暖房専用であってもよい。空気調和機(1)は、冷媒が充填された冷媒回路(1a)を有する。冷媒回路(1a)は、前記実施形態2の圧縮機(10)、放熱器(2)、膨張弁(3)及び蒸発器(4)を有する。冷媒回路(1a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。空気調和機(1)は、冷房と暖房を切り換える空気調和機であってもよい。この場合、空気調和機(1)は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)をさらに有する。
冷凍サイクルでは、圧縮機(10)によって圧縮された冷媒が、放熱器(2)において空気に放熱する。放熱した冷媒は、膨張弁(3)によって減圧され、蒸発器(4)において蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(10)に吸入される(図14の矢印参照)。
放熱器(2)では、放熱器(2)を流れる冷媒と、第1モータ(M1)により駆動される第1送風機(BL1)が送風する空気とが熱交換される。蒸発器(4)では、蒸発器(4)を流れる冷媒と、第2モータ(M2)により駆動される第2送風機(BL2)が送風する空気とが熱交換される。
実施形態3の空気調和機(冷凍装置)(1)は、エネルギー効率に優れた前記実施形態2の圧縮機(10)を有するため、消費電力の低減が可能となる。
尚、図14に示す冷凍装置(1)の構成は例示であり、冷凍装置(1)は空気調和機に限定されない。冷凍装置(1)は、給湯器、チラーユニット、又は庫内の空気を冷却する冷却装置等であってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫又はコンテナ等の内部の空気を冷却する。
(その他の実施形態)
前記実施形態1及びその変形例2では、第1ロータ部(31a)及び第2ロータ部(31b)の各磁極に、径方向に並ぶ2つの孔部(34)を設けたが、1つ又は径方向に並ぶ3つ以上の孔部(34)を設けてもよい。また、前記実施形態1の変形例1では、ロータ(31)の各磁極に、径方向に並ぶ2つの孔部(34)を設けたが、1つ又は径方向に並ぶ3つ以上の孔部(34)を設けてもよい。
前記実施形態1及びその変形例2では、第2ロータ部(31b)の孔部(34)には磁石(33)を設けなかった。しかし、第1ロータ部(31a)に含まれる磁石(33)の軸方向の単位長さ当たりの体積が、第2ロータ部(31b)に含まれる磁石(33)の軸方向の単位長さ当たりの体積よりも大きければ、第2ロータ部(31b)の孔部(34)に磁石(33)を設けてもよい。
前記実施形態1、その変形例1及び2では、孔部(34)を、軸方向から見て径方向内側に凸となる円弧状に形成したが、孔部(34)の形状は、特に限定されるものではない。孔部(34)の横断面形状は、直線状に延伸する部分を含んでもよい。孔部(34)は、軸方向から見て径方向に垂直な線状を有する第1部分と、当該第1部分の両端からロータコア(32)の外周面近傍まで延伸する第2部分とを有してもよい。孔部(34)は、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状以外の他の形状、例えば、軸方向から見て径方向外側に凸となる円弧状、軸方向から見て径方向に垂直な線状、軸方向から見て径方向に延びる線状、軸方向から見て径方向に開いた略V字状を有してもよい。
以上、変形例を含む実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、明細書及び特許請求の範囲の「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
以上に説明したように、本開示は、圧縮機用モータ、圧縮機及び冷凍装置について有用である。
1 冷凍装置
10 圧縮機
20 圧縮機用モータ
21 ステータ
22 ステータコア
23 巻線
31 ロータ
31a 第1ロータ部
31b 第2ロータ部
32 ロータコア
33 磁石
34a 第1孔部
35a 外側孔部(第3孔部)
35b 内側孔部(第3孔部)
36a 第1外側コア領域(第1コア領域)
37a 第2孔部
38a 第4孔部
39a 第2外側コア領域(第2コア領域)
O 回転軸心
CL 磁極中心線
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
P4 第4位置

Claims (7)

  1. 回転軸心(O)を中心に一方向に回転し、ロータコア(32)と磁石(33)とを備え、周方向に極性が交互に並ぶロータ(31)と、
    前記ロータ(31)と径方向に対向するように配置され、ステータコア(22)と巻線(23)とを備えたステータ(21)と、
    を備えた圧縮機用モータ(20)であって、
    前記ロータ(31)の外周面のうちで、前記磁石(33)磁束が最大となる位置の、周方向における位置を第1位置(P1)とし、
    前記ロータ(31)の外周面のうちで、前記巻線(23)のインダクタンスが最小となる位置の、周方向における位置を第2位置(P2)とし、
    前記第1位置(P1)と前記回転軸心(O)とを通るように仮想的に引いた直線を磁極中心線(CL)としたとき、
    軸方向から見て、前記磁石(33)又は前記ロータコア(32)の少なくとも一部分は前記磁極中心線(CL)に対して非対称に構成され、前記第2位置(P2)は前記第1位置(P1)に対して前記ロータ(31)の回転方向の後進側にずれており、
    前記磁石(33)により前記巻線(23)に誘起される交流電圧の位相と、前記巻線(23)に供給される交流電流の位相との差を位相差とし、
    前記位相差が、前記磁石(33)と前記交流電流とによって生ずるマグネットトルクがゼロとなり且つ前記交流電流による磁束の向きが前記磁石(33)による磁束の向きと逆の向きとなる位相差であるとき、前記ロータコア(32)と前記交流電流とによって生ずるリラクタンストルクが正の値となる、
    圧縮機用モータ。
  2. 請求項1の圧縮機用モータ(20)において、
    前記ロータ(31)は、
    前記ロータコア(32)と前記磁石(33)とを備えた第1ロータ部(31a)と、
    前記第1ロータ部(31a)と軸方向に隣り合って配置され、前記ロータコア(32)を備え且つ前記磁石(33)を備えない第2ロータ部(31b)と
    を備え、
    前記第1ロータ部(31a)の外周面のうちで、前記磁石(33)磁束が最大となる位置の、周方向における位置を第3位置(P3)とし、
    前記第2ロータ部(31b)の外周面のうちで、前記巻線(23)のインダクタンスが最小となる位置の、周方向における位置を第4位置(P4)としたとき、
    前記第4位置(P4)は、前記第3位置(P3)に対して前記ロータ(31)の回転方向の後進側にずれている、
    圧縮機用モータ。
  3. 請求項2の圧縮機用モータ(20)において、
    軸方向から見て、前記第1ロータ部(31a)の前記ロータコア(32)の形状は、前記第2ロータ部(31b)の前記ロータコア(32)の形状と略同一であり、
    前記第2ロータ部(31b)の前記ロータコア(32)は、前記第1ロータ部(31a)の前記ロータコア(32)に対して前記ロータ(31)の回転方向の後進側にずれて配置される、
    圧縮機用モータ。
  4. 請求項2の圧縮機用モータ(20)において、
    前記第1ロータ部(31a)は、前記ステータ(21)と径方向に対向しない領域を有する、
    圧縮機用モータ。
  5. 請求項1の圧縮機用モータ(20)において、
    前記磁石(33)の少なくとも一部は、前記磁極中心線(CL)に対して非対称に構成される、
    圧縮機用モータ。
  6. 請求項1~5のいずれか1項の圧縮機用モータ(20)を備える、
    圧縮機。
  7. 請求項6の圧縮機(10)を備える、
    冷凍装置。
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