以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る加工装置の構成例について説明する。図1は、切削装置2を示す斜視図である。切削装置2は、環状の切削ブレードで被加工物を切削する加工装置である。なお、図1において、X軸方向(加工送り方向、左右方向、第1水平方向)とY軸方向(割り出し送り方向、前後方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、高さ方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
切削装置2は、切削装置2を構成する各構成要素を支持又は収容する直方体状の基台4を備える。基台4の前端側の角部には、矩形状の開口4aが設けられている。開口4aの内側には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台6が設けられている。カセット支持台6の上面上には、切削装置2による加工の対象物である複数の被加工物11を収容可能なカセット8が配置される。なお、図1ではカセット8の輪郭のみを二点鎖線で示している。
図2(A)は、被加工物11を示す斜視図である。例えば被加工物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面(第1面)11a及び裏面(第2面)11bを備える。被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。
ストリート13によって区画された複数の領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス15が形成されている。被加工物11をストリート13に沿って分割することにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。
図2(B)は、被加工物11の一部を拡大して示す平面図である。被加工物11の表面11a側には、電極、配線、端子、回路等の構造物が設けられている。例えばデバイス15は、デバイス15を構成する電極等の構造物を含む。また、ストリート13上には、デバイス15を構成する薄膜(導電膜、絶縁膜)の一部、デバイス15を検査するためのTEG(Test Element Group)等の構造物が残存している。これらの構造物の配列によって、被加工物11の表面11a側に規則的なパターンが形成される。
切削装置2で被加工物11を加工する際には、被加工物11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、被加工物11が環状のフレーム17によって支持される。フレーム17はSUS(ステンレス鋼)等の金属でなり、フレーム17の中央部にはフレーム17を厚さ方向に貫通する円形の開口17aが設けられている。なお、開口17aの直径は、被加工物11の直径よりも大きい。
被加工物11及びフレーム17には、円形のテープ19が貼付される。例えばテープ19は、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含む。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなる。また、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層には、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型の樹脂を用いてもよい。
被加工物11をフレーム17の開口17aの内側に配置し、テープ19の中央部を被加工物11の裏面11b側に貼付するとともにテープ19の外周部をフレーム17に貼付すると、被加工物11がテープ19を介してフレーム17によって支持される。そして、被加工物11はフレーム17によって支持された状態で、カセット8(図1参照)に収容される。
なお、被加工物11の種類、材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等)、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板であってもよい。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
さらに、被加工物11は、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板であってもよい。例えばパッケージ基板は、実装基板上に実装された複数のデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で封止することによって形成される。パッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップをそれぞれ備える複数のパッケージデバイスが製造される。
図1に示すように、開口4aの後方には、長手方向がX軸方向に沿うように形成された矩形状の開口4bが設けられている。開口4bの内側には、被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)10が設けられている。また、チャックテーブル10には、チャックテーブル10をX軸方向に沿って移動させる移動ユニット(移動機構)12が連結されている。
移動ユニット12は、例えばボールねじ式の移動機構であり、X軸方向に沿って配置されたX軸ボールねじ(不図示)と、X軸ボールねじを回転させるX軸パルスモータ(不図示)とを備える。また、移動ユニット12は、チャックテーブル10を囲むように設けられた平板状のテーブルカバー14を備える。テーブルカバー14の両側には、X軸方向に沿って伸縮可能な蛇腹状の防塵防滴カバー16が設けられている。テーブルカバー14及び防塵防滴カバー16は、開口4bの内部に配置された移動ユニット12の構成要素(X軸ボールねじ、X軸パルスモータ等)を覆うように設けられる。
チャックテーブル10の上面は、水平方向(XY平面方向)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面10aを構成している。保持面10aは、チャックテーブル10の内部に設けられた流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
チャックテーブル10には、チャックテーブル10をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。また、チャックテーブル10の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム17を把持して固定する複数のクランプ18が設けられている。
開口4a,4bの近傍には、被加工物11をカセット8とチャックテーブル10との間で搬送する搬送ユニット(不図示)が設けられている。被加工物11は、搬送ユニットによってカセット8から引き出され、チャックテーブル10に搬送される。そして、被加工物11は、テープ19を介してチャックテーブル10の保持面10a上に配置される。また、フレーム17が複数のクランプ18によって把持される。この状態で、保持面10aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がテープ19を介してチャックテーブル10によって吸引保持される。
チャックテーブル10の上方には、被加工物11に切削加工を施す加工ユニット(切削ユニット)20A,20Bが設けられている。加工ユニット20A,20Bにはそれぞれ、後述の切削ブレード58(図3参照)が装着される。
基台4の上面上には、加工ユニット20A,20Bを支持する門型の支持構造22が、開口4bを跨ぐようにY軸方向に沿って設けられている。支持構造22の前面側の両側端部には、加工ユニット20AをY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させる移動ユニット(移動機構)24Aと、加工ユニット20BをY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させる移動ユニット(移動機構)24Bとが設けられている。移動ユニット24A,24Bは、支持構造22の前面側にY軸方向に沿って配置された一対のY軸ガイドレール26に装着されている。
移動ユニット24Aは、平板状のY軸移動プレート28Aを備える。Y軸移動プレート28Aは、一対のY軸ガイドレール26にスライド可能に装着されている。また、Y軸移動プレート28Aの裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、Y軸ガイドレール26と概ね平行に配置されたY軸ボールねじ30Aが螺合されている。Y軸ボールねじ30Aの端部には、Y軸パルスモータ32が連結されている。Y軸パルスモータ32によってY軸ボールねじ30Aを回転させると、Y軸移動プレート28AがY軸ガイドレール26に沿ってY軸方向に移動する。
Y軸移動プレート28Aの表面(前面)側には、一対のZ軸ガイドレール34AがZ軸方向に沿って固定されている。一対のZ軸ガイドレール34Aには、平板状のZ軸移動プレート36Aがスライド可能に装着されている。Z軸移動プレート36Aの裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、Z軸ガイドレール34Aと概ね平行に配置されたZ軸ボールねじ38Aが螺合されている。Z軸ボールねじ38Aの端部には、Z軸パルスモータ40Aが連結されている。Z軸パルスモータ40AによってZ軸ボールねじ38Aを回転させると、Z軸移動プレート36AがZ軸ガイドレール34Aに沿ってZ軸方向に移動する。
同様に、移動ユニット24Bは、平板状のY軸移動プレート28Bを備える。Y軸移動プレート28Bは、一対のY軸ガイドレール26にスライド可能に装着されている。また、Y軸移動プレート28Bの裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、Y軸ガイドレール26と概ね平行に配置されたY軸ボールねじ30Bが螺合されている。Y軸ボールねじ30Bの端部には、Y軸パルスモータ32が連結されている。Y軸パルスモータ32によってY軸ボールねじ30Bを回転させると、Y軸移動プレート28BがY軸ガイドレール26に沿ってY軸方向に移動する。
Y軸移動プレート28Bの表面(前面)側には、一対のZ軸ガイドレール34BがZ軸方向に沿って固定されている。一対のZ軸ガイドレール34Bには、平板状のZ軸移動プレート36Bがスライド可能に装着されている。Z軸移動プレート36Bの裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、Z軸ガイドレール34Bと概ね平行に配置されたZ軸ボールねじ38Bが螺合されている。Z軸ボールねじ38Bの端部には、Z軸パルスモータ40Bが連結されている。Z軸パルスモータ40BによってZ軸ボールねじ38Bを回転させると、Z軸移動プレート36BがZ軸ガイドレール34Bに沿ってZ軸方向に移動する。
加工ユニット20A,20Bはそれぞれ、Z軸移動プレート36A,36Bの下部に固定されている。また、加工ユニット20Aに隣接する位置には、撮像ユニット42が設けられている。
撮像ユニット42は、CCD(Charged-Coupled Devices)センサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備え、チャックテーブル10によって保持された被加工物11等を撮像する。撮像ユニット42の種類に制限はなく、例えば可視光カメラや赤外線カメラが用いられる。なお、撮像ユニット42は、撮像時に被写体を照らす照明(光源)を備えていてもよい。
撮像ユニット42によって取得された画像は、チャックテーブル10によって保持された被加工物11と加工ユニット20A,20Bとの位置合わせ(アライメント)等に用いられる。また、後述の通り、撮像ユニット42によって取得された被加工物11の画像に基づいて、カーフチェックが実施される。
開口4bの後方には、円形の開口4cが設けられている。開口4cの内側には、被加工物11を洗浄する洗浄ユニット44が設けられている。洗浄ユニット44は、被加工物11を保持して回転するスピンナテーブル(チャックテーブル)46と、スピンナテーブル46によって保持された被加工物11に洗浄用の液体(洗浄液)を供給するノズル48とを備える。
スピンナテーブル46の上面は、水平方向(XY平面方向)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面46aを構成している。保持面46aは、スピンナテーブル46の内部に設けられた流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、スピンナテーブル46には、スピンナテーブル46をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
ノズル48は、スピンナテーブル46の保持面46aに向かって洗浄液を供給する。洗浄液としては、純水等の液体や、液体(純水等)と気体(エアー等)とを混合することによって生成された混合流体等を用いることができる。
加工ユニット20A又は加工ユニット20Bによって加工された被加工物11は、搬送ユニット(不図示)によってスピンナテーブル46に搬送され、テープ19を介してスピンナテーブル46の保持面46a上に配置される。この状態で、保持面46aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がテープ19を介してスピンナテーブル46によって吸引保持される。そして、スピンナテーブル46を回転させつつノズル48から被加工物11に向かって洗浄液を滴下すると、洗浄液が被加工物11の上面側を伝って流動し、被加工物11が洗浄される。
基台4の上側には、基台4上に配置された切削装置2の構成要素を覆うカバー50が設けられている。図1では、カバー50の輪郭のみを二点鎖線で示している。
カバー50の前面側には、切削装置2に関する各種の情報を表示する表示ユニット(表示部、表示装置)52が設けられている。例えば表示ユニット52として、タッチパネル式のディスプレイが用いられる。この場合、表示ユニット52は、切削装置2に各種の情報を入力するための入力部(入力ユニット、入力装置)としても機能し、オペレーターは表示ユニット52のタッチ操作によって切削装置2に加工条件等の情報を入力できる。すなわち、表示ユニット52がユーザーインターフェースとして機能する。
カバー50の上部には、オペレーターに情報を報知する報知ユニット(報知部、報知装置)54が設けられている。例えば、報知ユニット54として表示灯(警告灯)が設けられ、切削装置2で異常が発生すると表示灯が点灯又は点滅してオペレーターに異常を知らせる。なお、報知ユニット54は、音又は音声でオペレーターに情報を報知するスピーカーであってもよい。
切削装置2を構成する構成要素(カセット支持台6、チャックテーブル10、移動ユニット12、クランプ18、加工ユニット20A,20B、移動ユニット24A,24B、撮像ユニット42、洗浄ユニット44、表示ユニット52、報知ユニット54等)は、制御ユニット(制御部、制御装置)56に接続されている。制御ユニット56は、切削装置2の各構成要素に制御信号を出力することにより、切削装置2の稼働を制御する。
例えば制御ユニット56は、コンピュータによって構成され、切削装置2の稼働に必要な演算を行う演算部と、切削装置2の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを含む。演算部は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
カセット8に収容された被加工物11は、搬送ユニット(不図示)によって1枚ずつチャックテーブル10に搬送される。そして、被加工物11は、チャックテーブル10によって吸引保持された状態で、加工ユニット20A又は加工ユニット20Bによって切削される。その後、被加工物11は搬送ユニット(不図示)によって洗浄ユニット44に搬送され、洗浄される。洗浄後の被加工物11は、再度カセット8に収容される。
図3は、加工ユニット20Aを示す斜視図である。加工ユニット20Aには、被加工物11を切削する環状の切削ブレード58が装着される。
加工ユニット20Aは、中空の円柱状のハウジング60を備える。ハウジング60には、Y軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル62が収容されている。スピンドル62の先端部(一端部)はハウジング60から露出しており、スピンドル62の基端部(他端部)にはスピンドル62を回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
スピンドル62の先端部には、切削ブレード58を支持するブレードマウント64が固定されている。ブレードマウント64は、円盤状のフランジ部66と、フランジ部66の表面66aの中心部から突出する円柱状のボス部(支持軸)68とを備える。フランジ部66の外周部の表面66a側には、表面66aから突出する環状の凸部66bがフランジ部66の外周縁に沿って設けられている。凸部66bの先端面は、表面66aと概ね平行な平坦面であり、切削ブレード58を支持する支持面66cを構成している。また、ボス部68の外周面には、ねじ溝68aが形成されている。
ブレードマウント64には、被加工物11を切削する環状の切削ブレード58が装着される。切削ブレード58は、アルミニウム合金等の金属でなる環状の基台58aと、基台58aの外周縁に沿って形成された環状の切り刃58bとを備える。また、切削ブレード58の中心部には、切削ブレード58を厚さ方向に貫通する円柱状の開口58cが設けられている。
切り刃58bは、基台58aの外周縁から基台58aの半径方向外側に向かって突出するように形成される。例えば切り刃58bは、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒と、砥粒を固定するニッケルめっき層等の結合材とを含む。なお、砥粒の材質、砥粒の粒径、結合材の材質等に制限はなく、被加工物11の材質等に応じて適宜選択される。
ボス部68のねじ溝68aには、切削ブレード58を固定するための環状の固定ナット70が締結される。固定ナット70の中心部には、固定ナット70を厚さ方向に貫通する円柱状の開口70aが設けられている。また、開口70aの内部で露出する固定ナット70の内周面には、ボス部68のねじ溝68aに対応するねじ溝が形成されている。
切削ブレード58は、開口58cにボス部68が挿入されるようにブレードマウント64に装着される。この状態で、固定ナット70をボス部68のねじ溝68aに螺合して締め付けると、切削ブレード58がフランジ部66の支持面66cと固定ナット70とによって挟持される。このようにして、切削ブレード58がスピンドル62の先端部に装着される。そして、切削ブレード58は、回転駆動源からスピンドル62及びブレードマウント64を介して伝達される動力により、Y軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
なお、上記では加工ユニット20Aの構成について説明したが、加工ユニット20B(図1参照)も加工ユニット20Aと同様に構成される。そして、加工ユニット20A,20Bには、一対の切削ブレード58が互いに対面するように装着される。すなわち、切削装置2は、所謂フェイシングデュアルスピンドルタイプの切削装置である。ただし、切削装置2が備える加工ユニットの数は1組であってもよい。
上記の切削装置2によって、被加工物11が切削される。例えば、切削ブレード58で被加工物11をストリート13に沿って切削することにより、被加工物11が複数のデバイスチップに分割される。以下では一例として、加工ユニット20Aに装着された切削ブレード58によって被加工物11が切削、分割される場合について説明する。ただし、被加工物11は加工ユニット20Bに装着された切削ブレード58によって切削されてもよい。
切削装置2で被加工物11を加工する際は、まず、被加工物11をチャックテーブル10で保持する。例えば被加工物11は、表面11a側が上方に露出し裏面11b側(テープ19側)が保持面10aに対面するように、チャックテーブル10上に配置される。また、複数のクランプ18によってフレーム17が固定される。この状態で、保持面10aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がテープ19を介してチャックテーブル10によって吸引保持される。
次に、被加工物11を切削ブレード58でストリート13(図2(A)参照)に沿って切削する。具体的には、まず、チャックテーブル10を回転させ、所定のストリート13の長さ方向をX軸方向に合わせる。また、切削ブレード58が所定のストリート13の延長線上に配置されるように、加工ユニット20AのY軸方向における位置を調整する。さらに、切削ブレード58の下端が被加工物11の裏面11b(テープ19の上面)よりも下方に配置されるように、加工ユニット20Aの高さを調整する。このときの被加工物11の表面11aと切削ブレード58の下端との高さの差が、切削ブレード58の被加工物11への切り込み深さに相当する。
そして、切削ブレード58を回転させつつ、チャックテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。これにより、チャックテーブル10と切削ブレード58とがX軸方向に沿って相対的に移動し(加工送り)、切削ブレード58がストリート13に沿って被加工物11に切り込む。その結果、被加工物11がストリート13に沿って切削、分割される。その後、同様の手順を繰り返し、全てのストリート13に沿って被加工物11を切削する。
図4(A)は、切削後の被加工物11を示す斜視図である。上記のように切削ブレード58で被加工物11を切削すると、被加工物11の表面11aから裏面11bに至る加工痕(カーフ)11cがストリート13に沿って形成される。そして、全てのストリート13に沿って加工痕11cが形成されることにより、被加工物11がストリート13に沿って分割され、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。
図4(B)は、切削後の被加工物11の一部を拡大して示す平面図である。例えば加工痕11cは、ストリート13の幅方向における中央(隣接するデバイス15の中間点)に、ストリート13の長さ方向に沿って線状に形成される。なお、ストリート13上にTEG等の構造物が存在する場合には、該構造物も被加工物11とともに切削される。
被加工物11の加工後には、被加工物11の加工された領域を観察して加工品質、加工精度等を検査するカーフチェックと呼ばれる工程が実施されることがある。カーフチェックでは、加工後の被加工物11の加工された領域を撮像ユニット42で撮像し、得られた画像から加工不良(被加工物11の欠け、加工痕11cの蛇行、加工痕11cの位置ずれ等)の有無が検査される。
カーフチェックを実施する際には、加工後の被加工物11が写る画像から加工痕(カーフ)11cを特定する必要がある。従来、加工ユニット20A,20bで被加工物11を切削した直後に撮像ユニット42の視野の中央付近に加工痕11cを位置付け、被加工物11を撮像ユニット42で撮像することによって被加工物11の画像を取得し、画像に写る各要素の境界線を抽出しやすくする画像処理を画像に実行し、加工痕11cのエッジを検出することで加工痕11cを特定していた。
しかしながら、被加工物11には被加工物11の種類ごとに異なる複雑なパターン(電極、配線、端子、回路等)が形成されており、被加工物11に形成される加工痕11cの大きさ、位置等も被加工物11の種類ごとに異なる場合がある。また、被加工物11を撮像する際の被加工物11の位置及び角度のばらつき、照明の光量及び色彩のばらつき等に起因して、被加工物11の画像に含まれる像のパターン、濃淡等にもばらつきが生じ得る。
このように、様々な種類の被加工物11が様々な条件下で加工される切削装置2においては、加工後の被加工物11を撮像して得られた画像に対して画一的な画像処理したのでは加工痕11cを高精度で特定することが難しい。そのため、加工痕11cの形成位置や形状を高精度に特定することは容易ではなかった。
また、加工痕11cの検出精度を向上させるために、被加工物11の撮像前に被加工物11の位置及び角度、照明の光量及び色彩等を調節し、撮像条件を揃える作業を行うことも考えられる。しかしながら、このような作業が被加工物11の撮像のたびに実施されると、加工痕11cの特定に要する工程及び時間が増大し、切削装置2による被加工物11の加工効率が低下してしまう。
そこで、本実施形態においては、加工痕11cが形成された被加工物11の表面11aを撮像ユニット42で撮像させて得られた画像から境界線を検出し、画像に写る境界線に関する情報を作成する制御ユニット56を用いる。そして、この境界線に関する情報が入力されるとその境界線が被加工物11に形成された加工痕11cのエッジであるか否かを示す判定結果を出力するように機械学習によって構成された学習済みモデルを用いる。
これにより、様々な条件下で撮像されて取得された画像に写る境界線の特徴が適切に抽出され、画像に写る境界線が加工痕11cのエッジであるか否か精度よく判定される。そして、その結果に基づいて加工痕11cを特定し、画像に基づいてカーフチェックを実施する。そのため、加工痕11cのエッジでない境界線を加工痕11cのエッジであると判定する誤判定が防止され、適切なカーフチェックを実施できる状態となる。
図5は、制御ユニット56を示すブロック図である。図5には、制御ユニット56の機能的な構成を示すブロックに加えて、チャックテーブル10、撮像ユニット42、表示ユニット52、及び報知ユニット54を模式的に図示している。画像に写る境界線が加工痕11cのエッジであるか否かの判定は、制御ユニット56によって実行される。制御ユニット56は、画像処理部74と、情報作成部76と、境界線がカーフエッジか否かを判定する判定部80と、を含む。
撮像ユニット42で被加工物11を撮像すると、被加工物11の拡大画像である画像72が取得され、画像処理部74に送られる。画像処理部74は、画像72を画像処理して処理済み画像72aを作成する。そして、情報作成部76は、処理済み画像72aを利用して画像72に写る境界線を特定し、判定対象となる境界線に関する情報78a,78bを作成する。そして、判定部80には境界線に関する情報78a,78bが入力され、判定部80は、情報78a,78bに基づいて判定対象となる境界線がカーフエッジか否かを判定し、判定結果を出力する。
また、制御ユニット56は、各種の情報(データ、プログラム等)を記憶可能な記憶部82と、判定部80による判定の結果を報知部(表示ユニット52、報知ユニット54等)に報知させる報知制御部84とを含む。判定部80の判定結果は、記憶部82及び報知制御部84に出力される。
制御ユニット56が備える各構成と、判定の流れについて詳述する。図6(A)は、撮像ユニット42が加工済みの被加工物11を撮像して形成した画像72を模式的に示す平面図である。なお、説明の便宜の為、図6(A)では、一方向に沿って加工され加工痕11cが形成された状態の被加工物11の表面11a側が拡大されて示されている。以下、画像72に写る当該方向に沿った各境界線が、それぞれ、被加工物11に形成された加工痕11cのエッジであるか否かを判定する過程について説明するが、以下の説明は、他の方向に沿った各境界線に関する判定についても参照できる。
図6(A)に示す通り、加工後の被加工物11の表面11a側が写る画像72には、被加工物11に形成された加工痕11cのみならず、デバイス15を構成する各層(各薄膜)や、ストリート13に形成されたTEGや電極等の構造物が写る。そして、画像72には、加工痕11cのエッジ(カーフエッジ)のみならず、デバイス15を構成する各層の輪郭や、ストリート13に形成された構造物の輪郭が境界線21a,21b,21c,21d,21e,21f,21gとして写る。
特に、画像72において、ある境界線を挟んだ両側の色彩や質感が近似している場合、画像72から境界線を検出するのは容易ではない。そこで、切削装置(加工装置)2の制御ユニット56が備える画像処理部74は、撮像ユニット42が被加工物11を撮像して形成した画像72を境界線の抽出がしやすいように境界線を強調する画像処理を画像72に実施する。形成された処理済み画像72aは、境界線強調画像ともいえる。
例えば、画像処理部74は、画像72において色(色相、明度、彩度)がほぼ同じである連続する領域を一つの領域として捉えた際に、色(色相、明度、彩度)の異なる互いに隣接する二つの領域の間を境界線として強調し、画像72において境界線以外の領域を強調しないことで、線で描写された処理済み画像を作成する。ここで、同じ領域として許容される色の差の程度を調整することにより、境界線として強調される画素の調整が可能である。換言すると、境界線の検出感度の調整が可能である。
または、画像処理部74は、画像72を構成する各画素に対しその周囲の画素との色の差を評価し、その差の大きい画素を境界線に対応する画素として強調することで処理済み画像を作成する。ここで、境界線に対応する画素として強調する画素であるか否かの基準となるその周囲の画素との色の差の大きさは、調整可能である。換言すると、境界線の検出感度の調整が可能である。
ただし、画像処理部74が画像72に実施する画像処理にはこれらに限定されず、特に制限はない。図6(B)は、画像処理部74が画像72に対して画像処理をすることで得られた処理済み画像72aを模式的に示す平面図である。図6(B)に示す処理済み画像72aでは、境界線に対応する画素が白で、それ以外の画素が黒で着色されている。この処理済み画像72aでは、境界線を容易に検出できる。
切削装置(加工装置)2の制御ユニット56が備える情報作成部76は、例えば、処理済み画像72aに基づいて、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bを作成する。ただし、制御ユニット56は画像処理部74を備えていなくてもよく、情報作成部76は、撮像ユニット42が被加工物11を撮像して形成された画像72から直接的に境界線に関する情報を作成してもよい。
以下、情報作成部76が処理済み画像72aに基づいて境界線に関する情報78a,78bを作成する場合を例に説明を続ける。ここで、境界線に関する情報78a,78bとは、後述の通り、当該境界線が加工痕11cのエッジであるか否か判定部80が判定する際に有用となる情報である。
例えば、画像に写る境界線に関する情報78a,78bは画像72における境界線を構成する各点の位置情報であり、より詳細には、画像72におけるこの各点の座標である。または、例えば、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bは、画像72における境界線の位置と、該境界線の伸長方向に垂直な方向における該境界線を構成する各点の変位またはばらつきの大きさと、の結合である。これを換言すると、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bは、ストリート13に沿った線分である基準線の位置と、ストリート13に垂直な方向における該境界線を構成する各点の変位またはばらつきの大きさと、の結合である。これらの情報には、各境界線の形状が反映される。
ここで、画像72における境界線の形状と、その境界線の形成過程と、の間に相関関係が存在することについて説明する。被加工物11を切削ブレード58でストリート13に沿って切削して形成される加工痕11cは、ストリート13に沿って直線状に形成される。しかしながら、加工痕11cのエッジには微小な欠け等がランダムに発生するため、微視的な視点で観察すると加工痕11cのエッジは直線状にはならず、無数の凹凸形状により構成された形状となる。
その一方で、被加工物11に形成された各層や構造物等に形状のばらつき等が生じると、被加工物11から切り出されて形成されたデバイスチップの性能にばらつきが生じる場合や、デバイスチップが適切に機能しなくなる場合が考えられる。そこで、デバイス15を構成する各層(各薄膜)や、ストリート13に形成されたTEG等の構造物は、一般的にはフォトリソグラフィー工程等により精密に被加工物11に形成される。
このような事情により、デバイス15を構成する各層(各薄膜)やTEG等の構造物の輪郭は、無秩序さのない直線、折れ線、及び曲線により構成される。そして、それらの輪郭を微視的な視点で観測したとき、加工痕11cのエッジとは異なり、ランダムな凹凸形状が現れることはない。
このように、加工痕11cのエッジと、デバイス15を構成する各層(各薄膜)やTEG等の構造物の輪郭と、では形態に有意な差が存在する。逆に言えば、画像72における境界線の形状と、その境界線の形成過程と、の間には相関関係がある。そのため、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bで示される境界線の形状に基づいて、その境界線が加工痕11cのエッジであるか否かの判定が可能である。
なお、情報作成部76が作成する境界線に関する情報78a,78bは、境界線の形状を特定できる情報に限定されない。例えば、情報作成部76は、画像72における各境界線の直進性を直接的に評価してもよく、境界線に関する情報78a,78bとしてその評価結果を出力してもよい。画像72における当該境界線の直進性が低ければ、当該境界線が加工痕11cのエッジであると判定できる。
また、情報作成部76が作成する境界線に関する情報78a,78bは、当該境界線の形状に関する情報に限定されない。例えば、情報作成部76は、画像72における境界線を挟んだ両領域のコントラスト比の大きさを評価してもよく、境界線に関する情報78a,78bとしてこのコントラスト比の大きさを出力してもよい。
ここで、画像72における境界線を挟んだ両領域のコントラスト比の大きさと、その境界線の形成過程と、の間に相関関係が存在することについて説明する。被加工物11の表面11aに到達した光は、被加工物11の表面11aに形成された金属材料や被加工物11により反射され、撮像ユニット42に到達する。画像72に写る各構造物等の色は、光を反射する金属材料等の種別や表面形状等により決まり、また、各構造物に重なる絶縁膜等の種別やそれぞれの厚さ等により決まる。
いずれにせよ、撮像ユニット42には、被加工物11の表面11aに形成された各構造物等により反射した光が到達する。その一方で、被加工物11に形成された加工痕11cには、表面11aの高さに光を反射する構造物が存在しない。撮像ユニット42の焦点は被加工物11の表面11aに合わせられるため、通常、画像72において加工痕11cは極めて暗く写る。
そのため、加工痕11cのエッジでは、被加工物11の表面11aに形成された各構造物の輪郭と比較して、分けられた両領域のコントラスト比が大きくなりやすい。逆に言えば、画像72に写る境界線のうち、この境界線を挟んだ両領域のコントラスト比の大きさが所定の値を超えているものは、加工痕11cのエッジとして判定されることも可能である。そのため、情報作成部76がこのコントラスト比の大きさを出力すると、境界線が加工痕11cのエッジであるか否かを判定する上で有用となる。
以上に境界線に関する情報78a,78bの一例を示したが、境界線に関する情報78a,78bはこれらに限定されない。また、境界線に関する情報78a,78bはこれらのうち一つに限定される必要はなく、これらのうち複数の要素が組み合わされたものでもよい。また、例示した情報の一部は、情報作成部76が作成する境界線に関する情報78a,78bに含まれなくてもよく、代わりに画像72に写る境界線を検出するための検出条件として利用されてもよい。情報作成部76は、処理済み画像72a等から境界線を検出し、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bを作成して出力する。
切削装置(加工装置)2の制御ユニット56が備える判定部80は、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bを情報作成部76から受領し、画像72に写る境界線が加工痕11cのエッジであるか否かを判定する学習済みモデル90を備える。学習済みモデル90は、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bが入力されると、その境界線が加工痕11cのエッジ(カーフエッジ)であるか否かを示す判定結果を出力するように、機械学習によって構成されている。
なお、学習済みモデル90の種類に制限はなく、サポートベクタマシン(SVM)、ロジスティック回帰、k近傍法、決定木、ニューラルネットワーク等を用いることができる。以下では一例として、学習済みモデル90がニューラルネットワークNNである場合について説明する。
ニューラルネットワークNNは、階層型のニューラルネットワークであり、データが入力される入力層92と、データを出力する出力層94と、入力層92と出力層94との間に設けられた複数の隠れ層(中間層)96とを含む。入力層92、出力層94、隠れ層96はそれぞれ、複数のニューロン(ユニット、ノード)を含む。入力層92のニューロンは第1層目の隠れ層96のニューロンに接続され、出力層94のニューロンは最終層の隠れ層96のニューロンに接続されている。また、隠れ層96のニューロンは、入力層92又は前層の隠れ層96のニューロンと、出力層94又は後層の隠れ層96のニューロンとに接続されている。
入力層92、出力層94、隠れ層96に含まれるニューロンの数、各ニューロンの活性化関数、各ニューロン間の接続関係等に制限はない。また、隠れ層96の層数にも制限はない。2層以上の隠れ層96を含むニューラルネットワークNNは、ディープニューラルネットワーク(DNN)と呼ぶことができる。また、ディープニューラルネットワークの学習は、深層学習と呼ぶことができる。
ニューラルネットワークNNは、入力層92に画像72に写る境界線に関する情報78a,78bが入力されると出力層94から当該境界線が加工痕11cのエッジ(カーフエッジ)であるか否かを示す判定結果を出力するように学習されている。なお、ニューラルネットワークNNの学習方法に制限はない。ニューラルネットワークNNの学習方法の具体例については後述する。
チャックテーブル10によって保持された被加工物11が加工ユニット20A,20Bで加工された後、撮像ユニット42によって撮像されて画像72が取得される。そして、画像72に写る境界線が加工痕11cのエッジである否かを判定する際には、画像処理部74によって境界線を強調する画像処理が画像72に実施され、処理済み画像72aが作成される。次に、処理済み画像72aに基づいて情報作成部76により画像72に写る境界線が検出され、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bが作成される。
その後、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bがニューラルネットワークNNに入力され、ニューラルネットワークNNの推論によってその境界線が加工痕11cのエッジであるか否かが判定される。具体的には、情報78a,78bを入力データとして用いた演算が、入力層92、隠れ層96、出力層94において順に行われ、その境界線が加工痕11cのエッジであるか他の境界線であるかの分類結果に対応するデータが出力層94から出力される。これにより、自動で判定がされる。
例えば出力層94は、活性化関数としてソフトマックス関数が適用された2個のニューロンを含む。そして、各ニューロンはそれぞれ、判定対象となる境界線が加工痕11cのエッジである確率に対応する数値(第1出力値)と、判定対象となる境界線が加工痕11cのエッジではない他の境界線である確率に対応する数値(第2出力値)と、を出力する。
また、判定部80は、学習済みモデル90による判定の結果を処理する判定結果処理部98を含む。例えば判定結果処理部98は、ニューラルネットワークNNの出力層94から出力される第1出力値と第2出力値とを比較する。
そして、第1出力値が第2出力値よりも大きい場合には、判定結果処理部98は判定対象となる境界線が加工痕11cのエッジである旨を示す信号(第1判定信号)を出力する。一方、第2出力値が第1出力値よりも大きい場合には、判定結果処理部98は判定対象となる境界線が加工痕11cのエッジではない他の境界線である旨を示す信号(第2判定信号)を出力する。第1判定信号及び第2判定信号が、判定部80による判定の結果に相当する。
ただし、判定結果処理部98による処理の内容に制限はない。例えば判定結果処理部98は、第1出力値及び第2出力値と、予め設定された閾値(下限値)とを比較することによって、判定対象となる境界線が加工痕11cのエッジであるか否かを判定してもよい。
具体的には、第1出力値が閾値以上である場合には、判定結果処理部98は第1判定信号を出力する。一方、第2出力値が閾値以上である場合には、判定結果処理部98は第2判定信号を出力する。なお、第1出力値及び第2出力値と比較される閾値は、要求される判定精度に応じて適宜設定できる。例えば閾値は、0.6以上(60%以上)、好ましくは0.8以上(80%以上)に設定される。
制御ユニット56の判定部80は、判定対象となるすべての境界線に対し学習済みモデル90による判定を実施し、判定結果に対して判定結果処理部98による処理を実施させる。すなわち、学習済みモデル90には判定対象となる各境界線に関する情報78a,78bが入力され、そのそれぞれに対応する第1出力値及び第2出力値が出力される。また、判定結果処理部98は、それぞれの境界線に対応する第1出力値及び第2出力値を処理し、第1判定信号又は第2判定信号等を出力する。なお、判定結果処理部98は、学習済みモデル90から入力された各境界線に対応する第1出力値をそのまま出力してもよい。
なお、加工痕11cは、加工痕11cの一方の側壁側と、他方の側壁側と、に合計二つのエッジを備える。このことが判定結果処理部98による処理に利用されてもよい。例えば、判定対象となる一部の境界線について、第1出力値及び第2出力値がいずれも閾値未満である場合でも、各境界線に対応する第1出力値又は第2出力値を比較することでいずれの境界線が加工痕11cのエッジであるかを判定してもよい。
より具体的には、判定結果処理部98は、第1出力値が上位2つのどちらかである境界線について当該境界線が加工痕11cのエッジである旨を示す信号(第1判定信号)を出力する。または、第2出力値が下位2つのどちらかである境界線について当該境界線が加工痕11cのエッジである旨を示す信号(第1判定信号)を出力する。そして、判定結果処理部98は、その他の境界線について当該境界線が加工痕11cのエッジではない他の境界線である旨を示す信号(第2判定信号)を出力する。
さらに、判定結果処理部98は、第1出力値が閾値以上となる境界線の数が3を超えるとき、判定部80で実施されている一連の判定を中止するべき旨を示す信号(第3判定信号)を出力してもよい。または、すべての境界線について第2出力値が閾値以上となるとき、第3判定信号を出力してもよい。
これらの場合、画像72自体に問題があるか、画像72が取得された際の撮像ユニット42の視野等に問題があることが考えられる。そこで、制御ユニット56は、判定結果処理部98から第3判定信号が出力された場合、チャックテーブル10及び加工ユニット20A,20Bを相対的に移動させ、別の視野をもって撮像ユニット42に画像72を再取得させるとよい。そして、制御ユニット56は、一連の処理をやり直すとよい。または、制御ユニット56は、判定結果処理部98から第3判定信号が出力された場合、すべての処置を停止してエラーをオペレーターに報知してもよい。
判定部80による判定の結果は、記憶部82に記憶される。記憶部82は、ROM、RAM等のメモリを含んで構成される、コンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体に相当する。そして、記憶部82は、判定部80の判定結果を画像72とともに記憶する。これにより、画像72と判定結果とを含むデータセットが記憶部82に蓄積される。
また、報知制御部84は、判定部80の判定結果をオペレーターに報知する。例えば報知制御部84は、判定部80の判定結果を表示ユニット52に表示させるための制御信号を生成し、表示ユニット52に出力する。これにより、判定部80の判定結果が表示ユニット52に表示され、オペレーターに通知される。図7(A)及び図7(B)に、表示ユニット52に表示される表示画面の例を示す。
図7(A)は、加工痕11cのエッジであると判定された境界線が図示された判定結果表示画面52aを表示する表示ユニット52を示す正面図である。例えば表示ユニット52が表示する判定結果表示画面52aには、画像72と、加工痕11cのエッジであると判定された境界線を示す表示欄52bと、が含まれる。表示欄52bには、当該境界線が加工痕11cのエッジ(カーフエッジ)であることを示す文字列(メッセージ)、コード、図形、記号等が表示される。
図7(B)は、判定対象となった各境界線についてそれが加工痕11cのエッジである確率が図示された判定結果表示画面52cを表示する表示ユニット52を示す正面図である。例えば表示ユニット52が表示する判定結果表示画面52cには、画像72と、各境界線についてそれが加工痕11cのエッジである確率を示す表示欄52dと、が含まれる。例えば、学習済みモデル90から出力された各境界線の第1出力値に対応する値が、この確率として表示欄52dに百分率で表示される。
表示ユニット52に表示欄52b,52dともに画像72が表示されると、オペレーターは画像72と判定結果とを同時に確認して見比べることができる。これにより、学習済みモデル90による判定が妥当であるか否かをオペレーターが自己の判断に基づいて確認することが可能になる。
なお、学習済みモデル90は、ソフトウェアとハードウェアのいずれによって実現されてもよい。例えば、ニューラルネットワークNNの入力層92、出力層94、隠れ層96における演算がプログラムによって記述され、このプログラムが記憶部82に記憶される。また、同様に制御ユニット56の画像処理部74及び情報作成部76等についても、ソフトウェアとハードウェアのいずれによって実現されてもよい。例えば、画像処理部74及び情報作成部76等が実施する処理がプログラムによって記述され、このプログラムが記憶部82に記憶される。
そして、画像72に写る境界線から加工痕11cのエッジを特定する際には、記憶部82からこれらのプログラムが読み出され、制御ユニット56によって実行される。これにより、学習済みモデル90に各境界線に関する情報78a,78bを入力する処理と、学習済みモデル90の演算を実行する処理と、がコンピュータによって実行され、各境界線が加工痕11cのエッジであるか否かが判定される。
画像72に写る各境界線が加工痕11cのエッジであるか否かの判定は、被加工物11の加工後に、制御ユニット56で実施されるカーフチェックに先立ち、所定のタイミングで実施される。そして、制御ユニット56は、画像72に写る加工痕11cのエッジと判定される2つの境界線で挟まれた領域を加工痕11cとして特定し、特定された加工痕11cに対してカーフチェックに係る所定の処理を実施する。
ここで、画像72に写る各境界線から加工痕11cのエッジと判定される2つの境界線が定まらず、画像72に写る加工痕11cの特定に至らない場合は、報知制御部84は表示ユニット52及び報知ユニット54に警告を発信させてもよい。また、画像72に写る加工痕11cが特定された場合においても、カーフチェックが実施された結果、加工痕11cが所定の品質で形成されていないことが確認された場合、報知制御部84は表示ユニット52及び報知ユニット54に警告を発信させてもよい。
例えば報知制御部84は、表示ユニット52に制御信号を出力し、異常の発生及び内容を知らせるメッセージを表示ユニット52に表示させる。また、報知制御部84は、報知ユニット54に制御信号を出力し、報知ユニット54を所定の色又はパターンで点灯させる。これにより、被加工物11の加工状況の異常がオペレーターに通知され、オペレーターが異常の内容に応じた措置をとることが可能になる。
以上のように、本実施形態に係る切削装置2には、被加工物11の画像(画像72)に写る各境界線について、該境界線が加工痕11cのエッジであるか否かを判定可能な学習済みモデル90を備える制御ユニット56が搭載される。これにより、カーフチェックに先立って画像72に写る加工痕11cを高精度且つ迅速に特定し、加工痕11cの誤検出や、不適切なカーフチェックを防止できる。
また、機械学習によって構成された学習済みモデル90は、様々な撮像条件下で取得された被加工物11の画像72に写る境界線について、各境界線に関する情報78a,78bの特徴を抽出して該境界線が加工痕11cのエッジであるか否かを判定でき、汎用性が高い。そのため、被加工物11の表面11a側に形成されている各種の構造物、加工痕11cの大きさ、位置等が被加工物11の種類ごとに異なる場合にも、境界線に関する情報78a,78bの特徴が適切に抽出され、いずれの境界線が加工痕11cのエッジであるかが高精度で特定される。
また、機械学習によって構成された学習済みモデル90は、様々な撮像条件下で取得された被加工物11の画像72によって生成される。そのため、被加工物11の撮像前に撮像条件を揃える作業(被加工物11の位置及び角度の調節、照明の光量及び色彩の調節等)を省略しても、各境界線が加工痕11cのエッジであるか否かが正しく判定される。これにより、画像72に写る加工痕11cのエッジを高精度且つ迅速に判定することが可能になる。
ここで、以上に説明した通り構成される本実施形態に係る切削装置2でカーフチェックを実施する方法について説明し、本実施形態に係る切削装置2について小括する。切削装置2は、被加工物11を切削(加工)して被加工物11にストリート13に沿った加工痕11cを形成する。そして、加工痕11cが形成された被加工物11の表面11aを図5に示す通り撮像ユニット42で撮像し、画像72を得る。
その後、制御ユニット56は、画像72に所定の画像処理を実施して処理済み画像72aを生成し、この処理済み画像72aを利用して画像72に写る境界線を検出する。そして、制御ユニット56は、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bを作成し、これを学習済みモデル90に入力する。そして、これらの境界線が被加工物11に形成された加工痕11cのエッジ(カーフエッジ)であるか否かを示す判定結果を学習済みモデル90に出力させる。
これにより、様々な条件下で撮像されて取得された画像72に写る境界線の特徴が適切に抽出され、画像72に写る境界線が加工痕11cのエッジであるか否か精度よく判定される。そのため、加工痕11cのエッジでない境界線を加工痕11cのエッジであると判定する誤判定が防止され、適切なカーフチェックを実施できる状態となる。
すなわち、学習済みモデル90により加工痕11cのエッジと判定された2つの境界線の間の領域は、画像72における加工痕(カーフ)11cが写る領域である可能性が高い。そこで、制御ユニット56は画像72に写る加工痕11cについてカーフチェックを実施し、加工痕11cの状態や加工の精度等を評価するとよい。
なお、学習済みモデル90による判定の結果、加工痕11cのエッジと判定される境界線が画像72から検出されない場合、制御ユニット56は、撮像ユニット42で撮像する被加工物11の領域を変更して一連の処理を再実施する。または、制御ユニット56は、表示ユニット52及び報知ユニット54に警告を発信させてもよい。
なお、切削装置2に学習済みモデル90を搭載する方法に制限はない。例えば、切削装置2の製造者(メーカー)は、学習済みモデル90を生成して切削装置2に組み込んだ後、切削装置2を使用者に提供する。また、切削装置2の製造者は、使用者が使用している従来型の切削装置(学習済みモデル90を未搭載の切削装置)に学習済みモデル90を配信することにより、学習済みモデル90を搭載した切削装置2を使用者に事後的に提供することもできる。
図8は、切削装置2Aに学習済みモデル90を提供する学習済みモデル提供システム100を示す模式図である。学習済みモデル提供システム100は、学習済みモデル90を配信する配信部102と、配信部102と使用者が使用する複数の切削装置2とを接続するネットワーク104とを含む。
配信部102は、切削装置2の製造者によって管理されるサーバ等に相当し、有線又は無線でネットワーク104に接続されている。また、切削装置2Aは、使用者が使用している従来型の切削装置であり、学習済みモデル90を内蔵していない。なお、切削装置2Aの構成は、学習済みモデル90の有無を除いて切削装置2(図1参照)と同様である。そして、切削装置2Aの制御ユニット56は有線又は無線でネットワーク104に接続されている。
切削装置2の製造者は、配信部102を管理し、配信部102からネットワーク104を介して学習済みモデル90を切削装置2Aに配信する。具体的には、まず、切削装置2の製造者は、機械学習によって学習済みモデル90を生成し、学習済みモデル90を記述するプログラム106を作成する。プログラム106には、画像処理部74及び情報作成部76の機能をコンピュータに実行させる処理が含まれてもよい。
プログラム106は、学習済みモデル90に境界線に関する情報78a,78bを入力する処理と、学習済みモデル90の演算を実行する処理と、をコンピュータに実行させるプログラムである。さらに、プログラム106は、画像72に画像処理を実施する処理と、画像72に写る境界線に関する情報78a,78bを作成する処理と、をコンピュータに実行させてもよい。
そして、切削装置2の製造者は、使用者の要求に応じて、プログラム106を切削装置2Aにネットワーク104を介して供給する。配信部102によって配信されたプログラム106は、切削装置2Aによって受信され、切削装置2Aの制御ユニット56に記憶される。これにより、学習済みモデル90を搭載した切削装置2が製造される。そして、切削装置2の制御ユニット56は、所定のタイミングでプログラム106を読み出して実行することにより、画像72に写る境界線が加工痕11cのエッジであるか否かを判定する(図5参照)。
また、切削装置2の製造者は、記録メディア108を用いてプログラム106を提供することもできる。具体的には、切削装置2の製造者は、プログラム106が記憶された記録メディア108を切削装置2Aの使用者に提供する。なお、記録メディア108は、光ディスク、フラッシュメモリ等の、コンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体である。そして、切削装置2Aの使用者は、記録メディア108に記憶されたプログラム106を制御ユニット56に読み取らせて記憶する。
上記のように、ネットワーク104又は記録メディア108を用いてプログラム106を配信することにより、使用者が使用中の切削装置2Aに学習済みモデル90を事後的に導入することができる。また、学習済みモデル90が更新された場合には、切削装置2の製造者は、更新後の学習済みモデル90を記述するプログラム、又は、更新後の学習済みモデル90のパラメータに相当するデータを、ネットワーク104又は記録メディア108を用いて配信できる。これにより、最新の学習済みモデル90を搭載した切削装置2が使用者に提供される。
次に、本実施形態に係る学習済みモデルの生成方法の具体例について説明する。例えば学習済みモデル90は、画像に写る加工痕のエッジである境界線に関する情報と、加工痕のエッジではない境界線に関する情報と、を用いた教師あり学習を実施することによって生成される。図11は、本実施形態に係る学習済みモデルの生成方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。以下では一例として、切削装置2を用いた学習済みモデルの生成方法について詳述する。
図9は、学習済みモデル90の生成時における切削装置2を示すブロック図である。学習済みモデル90を生成する際は、まず、加工された被加工物11に対応し加工痕11cが形成されたサンプル(画像取得用被加工物、学習用被加工物)23を撮像することにより、画像を取得する(画像取得ステップS10)。
サンプル23は、切削装置2によって加工される予定の被加工物11と同一又は類似の構成を有する被加工物である。例えばサンプル23は、被加工物11と同一の材質でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面(第1面)23a及び裏面(第2面)23bを備える。また、サンプル23は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって複数の領域に区画されており、ストリートによって区画された複数の領域の表面23a側にはそれぞれデバイスが形成されている。
デバイスの構造、寸法、配列等は、被加工物11のデバイス15(図2(A)参照)と同様である。また、サンプル23の表面23a側には、電極、配線、端子、回路等の構造物が設けられており、規則的なパターンが形成されている。
サンプル23は、環状のフレーム29の開口の内側に配置され、テープ31を介してフレーム29によって支持される。フレーム29及びテープ31の材質、構造等はそれぞれ、フレーム17及びテープ19(図2(A)参照)と同様である。そして、サンプル23は、フレーム29によって支持された状態でカセット8(図1参照)に収容される。
画像取得ステップS10では、まず、カセット8(図1参照)に収容されたサンプル23をチャックテーブル10に搬送し、チャックテーブル10によって保持する。なお、サンプル23が搬送、保持される際の切削装置2の動作は、被加工物11が搬送、保持される場合と同様である。
次に、サンプル23を加工する。例えば、サンプル23を切削ブレード58(図3参照)でストリートに沿って切削し、複数のチップに分割する。なお、サンプル23を切削する際の切削装置2の動作は、被加工物11の切削の場合と同様である。サンプル23を加工すると、表面23aから裏面23bに至る加工痕(カーフ)がストリートに沿ってサンプル23に形成される。そして、画像取得ステップS10では、撮像ユニット42によってサンプル23の表面23a側が撮像され、加工済みのサンプル23の画像が取得される。
図10(A)は、加工痕23cを含むサンプル23の画像(撮像画像、学習用画像)110Aを示す画像図である。なお、説明の便宜の為、図10(A)では、一方向に沿って加工され同方向に沿った加工痕23cが形成された状態のサンプル23の表面23a側が拡大されて示されている。サンプル23に形成される加工痕23cは、他の方向に沿ったストリートにも形成されてもよい。
図10(A)に示す通り、加工後のサンプル23の表面23a側が写る画像110Aには、サンプル23に形成された加工痕23cのみならず、デバイス27を構成する各層(各薄膜)や、ストリート25に形成されたTEGや電極等の構造物が写る。そして、画像110Aには、加工痕23cのエッジ(カーフエッジ)のみならず、デバイス27を構成する各層の輪郭や、ストリート25に形成された構造物の輪郭が境界線33a,33b,33c,33d,33e,33f,33gとして写る。
また、画像取得ステップS10では、移動ユニット24A(図1参照)によって撮像ユニット42をZ軸方向に沿って昇降させて撮像ユニット42の撮像範囲及び焦点位置を変化させつつ、サンプル23を複数回撮像してもよい。これにより、倍率やぼかしの程度が異なる複数の画像110Aが取得される。
さらに、撮像ユニット42は、撮像時にサンプル23を照らす照明を備えていてもよい。この場合、画像取得ステップS10では、照明からサンプル23に照射される光の光量又は色彩を変えつつサンプル23を複数回撮像することにより、明度又は彩度が異なる複数の画像110Aを取得してもよい。上記のように加工済みのサンプル23を複数回撮像することにより、例えば1000枚以上2000枚以下の画像110Aが取得される。
次に、画像取得ステップS10で取得された画像110Aから、画像110Aに写る境界線を検出する検出ステップS20が実施される。検出ステップS20では、まず、制御ユニット56の画像処理部74により、画像110Aを境界線の抽出がしやすいように境界線を強調する画像処理を画像110Aに実施する。形成された処理済み画像は、境界線強調画像ともいえる。
画像処理部74が画像110Aにする画像処理は、画像処理部74が画像72(図6(A)参照)にする画像処理と同様である。そのため、ここでは説明を省略する。図10(B)は、画像処理部74が画像110Aに対して画像処理をすることで得られた処理済み画像110Bを模式的に示す平面図である。すなわち、検出ステップS20では、境界線を強調する画像処理を画像110Aに実施して処理済み画像110Bを作成することが好ましい。図10(B)に示す処理済み画像110Bでは、境界線に対応する画素が白で、それ以外の画素が黒で着色されている。
検出ステップS20では、画像110Aに写る境界線がこの処理済み画像110Bに基づいて検出される。例えば、制御ユニット56の情報作成部76は、処理済み画像110Bに基づいて画像110Aに写る境界線を検出する。その後、検出ステップS20で検出された各境界線について、境界線に関する情報を取得する情報取得ステップS30が実施される。情報取得ステップS30では、主に情報作成部76の機能により画像110Aに写る境界線に関する情報が作成される。
ここで、情報作成部76が画像110Aに写る境界線に関する情報を作成する手順は、情報作成部76が画像72(図6(A)参照)に写る境界線に関する情報78a,78b(図5参照)を作成する手順とほぼ同様であるため、重複する説明を省略する。
なお、情報作成部76が作成する画像110Aに写る境界線に関する情報は、次に説明する学習ステップS40において教師あり学習に教師データとして使用される。そのために、情報取得ステップS30において、画像110Aに写る各境界線に関する情報には、当該境界線がサンプル23に形成された加工痕23cのエッジであるか否かを示すラベル情報が付加される。
図10(B)は、処理済み画像110Bを模式的に示す平面図である。図10(B)には、画像110Aに写る検出された境界線に対するラベルの一例が示されている。各ラベルは、例えば、切削装置2を使用するオペレーターにより作成される。この場合、制御ユニット56は、画像110A又は処理済み画像110Bと、検出された境界線と、を表示ユニット52に表示する。
そして、オペレーターは、検出された各境界線を順次確認しつつ“カーフエッジ”か“他の境界線”のラベル(分類情報)を入力していく。例えば、図10(A)及び図10(B)に示すように、境界線33a,33bに対しては“カーフエッジ”のラベルを付し、境界線33c,33d,33e,33f,33gに対しては“他の境界線”のラベルを付す。
こうして、画像110Aに写る境界線に関する各情報にラベルが付加され、境界線情報78c,78dが作成され、境界線情報78c,78dが記憶部82に含まれる学習情報記憶部82aに蓄積される。より詳細には、情報取得ステップS30では、加工痕23cのエッジに相当する境界線に関する第1の境界線情報78cと、該加工痕のエッジに相当しない境界線に関する第2の境界線情報78dと、が作成され取得される。取得された第1の境界線情報78c及び第2の境界線情報78dは、教師データとして学習情報記憶部82aに蓄積される。
ここで、情報取得ステップS30で取得される第1の境界線情報78cは、例えば、画像110Aにおける加工痕23cのエッジに相当する境界線を構成する各点の位置情報を含む。または、画像110Aにおける加工痕23cのエッジに相当する該境界線の位置及び加工痕23cのエッジに相当する該境界線の伸長方向に垂直な方向における該境界線を構成する各点の変位を含んでもよい。さらに、画像110Aにおける加工痕23cのエッジに相当する該境界線の直進性の評価結果を含んでもよく、画像110Aにおける加工痕23cのエッジに相当する該境界線を挟んだ両領域のコントラスト比の大きさを含んでもよい。そして、第1の境界線情報78cは、これらのうち一つまたは複数を含む。
また、情報取得ステップS30で取得される第2の境界線情報78dは、例えば、画像110Aにおける加工痕23cのエッジに相当しない境界線を構成する各点の位置情報を含む。または、画像110Aにおける加工痕23cのエッジに相当しない該境界線の位置及び加工痕23cのエッジに相当しない該境界線の伸長方向に垂直な方向における該境界線を構成する各点の変位を含んでもよい。さらに、画像110Aにおける加工痕23cのエッジに相当しない該境界線の直進性の評価結果を含んでもよく、画像110Aにおける加工痕23cのエッジに相当しない該境界線を挟んだ両領域のコントラスト比の大きさを含んでもよい。そして、第2の境界線情報78dは、これらのうち一つまたは複数を含む。
なお、次に説明する学習ステップS40において判定精度の高い学習済みモデルを生成するために、ここまで説明した画像取得ステップS10、検出ステップS20、及び情報取得ステップS30は、繰り返し実施されてもよい。そして、第1の境界線情報78c及び第2の境界線情報78dが数多く取得されてもよい。例えば、1000枚以上2000枚以下の画像110Aが取得された場合、各画像110Aに画像処理が実施され、各画像110Aに写る境界線が検出され、第1の境界線情報78c及び第2の境界線情報78dが取得される。
また、切削装置2によって材質、構造、寸法等が異なる複数の種類の被加工物11が加工される場合には、各被加工物11に対応する複数の種類のサンプル23を用いて画像取得ステップS10、検出ステップS20、及び情報取得ステップS30が実施される。これにより、第1の境界線情報78c及び第2の境界線情報78dがサンプル23の種類ごとに収集される。
さらに、教師データとして使用される第1の境界線情報78c及び第2の境界線情報78dは他の方法によって収集してもよい。例えば、過去に取得された加工後の被加工物11の画像がデータベース等に蓄積されている場合には、被加工物11の画像から第1の境界線情報78c及び第2の境界線情報78dが作成され取得されてもよい。
次に、加工された被加工物を撮像して得られた画像に写る境界線に関する情報が入力されると該境界線が加工痕のエッジであるか否かを示す判定結果を出力する学習済みモデルを生成する学習ステップS40について説明する。学習ステップS40では、第1の境界線情報78c及び第2の境界線情報78dを用いた機械学習によって学習済みモデルが生成される。
例えば学習ステップS40では、境界線が“カーフエッジ”であるとの分類情報を含む第1の境界線情報78cと、境界線が“他の境界線”であるとの分類情報を含む第2の境界線情報78dと、を教師データとして用いた教師あり学習が行われる。具体的には、第1の境界線情報78c及び第2の境界線情報78dが、ニューラルネットワークNNに入力されるとともに、正解ラベルとして“カーフエッジ”か“他の境界線”の分類情報がニューラルネットワークNNに入力される。
そして、ニューラルネットワークNNの出力と正解ラベルとの誤差が小さくなるように、ニューラルネットワークNNのパラメータ(ニューロンの重み及びバイアス等)が更新される。これにより、ニューラルネットワークNNは、入力層92に境界線に関する情報が入力されると出力層94から当該境界線が加工痕のエッジ(カーフエッジ)であるか否かを示す判定結果を出力するように再構成される。学習のアルゴリズムとしては、例えば誤差逆伝播法を用いることができる。
学習済みのニューラルネットワークNNは、制御ユニット56に記憶される。これにより、学習済みモデル90を搭載した切削装置2が得られる。なお、ニューラルネットワークNNの学習のための演算は、切削装置2の外部に設けられた大規模且つ高性能な計算機によって実行されてもよい。この場合には、学習済みのニューラルネットワークNN(又は学習済みのニューラルネットワークNNのパラメータ)が制御ユニット56に入力され、記憶される。
上記の通り、本実施形態に係る学習済みモデルの生成方法では、加工痕23cが形成されたサンプル23の撮像、境界線の検出、境界線に関する情報の作成、境界線の分類情報の付加、を連続して実施することにより、学習に使用される境界線情報78c,78dが大量に取得される。これにより、学習済みモデル90の生成に必要な大量の学習用データを効率的に収集できる。
そして、学習済みモデル90によると、加工された被加工物11が写る画像72に写る境界線であって、加工痕のエッジでない境界線を加工痕のエッジであると判定する誤判定が防止される。そのため、被加工物11に形成された加工痕11cを高精度且つ迅速に検出して適切なカーフチェックが可能になる。
なお、上記実施形態では、加工された被加工物11が写る画像72において、一つの方向に沿った境界線について、学習済みモデル90を用いてそれが加工痕11cのエッジ(カーフエッジ)であるか否かを判定する場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されず、画像72に写る他の方向に沿った境界線について、学習済みモデル90を用いてそれが加工痕11cのエッジ(カーフエッジ)であるか否かを判定してもよい。
そして、学習済みモデル90は、加工された被加工物11が画像72写る第1の方向に沿った境界線と、第2の方向に沿った境界線と、のいずれに対してもそれが加工痕11cのエッジ(カーフエッジ)であるか否かを判定する判定結果を出力してもよい。この場合、学習済みモデル90は、画像72写る第1の方向に沿った境界線と、第2の方向に沿った境界線と、のいずれも判定対象とできるように上述と同様の機械学習により生成されるとよい。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。