以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
すなわち、本明細書では、インクジェット記録装置の一例として、産業用インクジェットプリンタについて説明するが、ここに開示する技術は、インクジェット記録装置および産業用インクジェットプリンタという名称に関わらず、粒子状のインクを飛翔させてワークに着弾させるインクジェットを用いた一般の機器に適用することができる。
また、本明細書においては、インクジェット記録装置による印字について説明するが、ここでいう「印字」には、文字の印刷、図形のマーキング等、インクジェットを応用したあらゆる加工処理が含まれる。
<全体構成>
図1はインクジェット記録システムSの全体構成を例示する図である。また、図2はインクジェット記録装置Iの概略構成を例示する図であり、図3はインクジェット記録装置Iにおける吐出ヘッド1の概略構成を例示する図である。そして、図4は、インクジェット記録装置Iにおけるインクおよび補充液(溶剤)の経路を例示する図であり、インクはインクカートリッジ104aにより、また補充液は補充液カートリッジ105aにより、必要に応じて個別に供給可能になっている。補充液カートリッジ105aに収容された補充液が、インクジェット記録装置用補充液である。また、インクカートリッジ104aに収容されたインクが、インクジェット記録装置用インクである。また、インクカートリッジ104aに収容されたインクと、補充液カートリッジ105aに収容された補充液とにより、インクと補充液の組み合わせが構成される。インクおよび補充液の供給の詳細は後述する。
図1に例示する自動印字システムSは、例えば工場等の搬送ラインLに設置されており、その搬送ラインLを流れる各ワーク(印字対象物)Wに対し、順番に印字を施すように構成されている。なお、本開示の適用対象は、自動印字システムSには限定されない。自動以外の方法を用いた印字システムに適用することもできる。搬送ラインLは、例えばベルトコンベア等で構成することができるが、ベルトコンベアに限定されない。
自動印字システムSは、粒子状のインク(インク粒)をワークWに着弾させることで印字を行うインクジェット記録装置Iと、インクジェット記録装置Iに接続される操作用端末800及び外部機器900と、インクジェット記録装置Iに接続されて吐出ヘッド1の洗浄を行う洗浄載置部200と、を備えている。洗浄載置部200は、洗浄液を用いて吐出ヘッド1を洗浄する際に吐出ヘッド1が載置されるように構成されたものである。なお、洗浄載置部200、操作用端末800および外部機器900は、必須ではない。
図1~図3に例示するインクジェット記録装置Iは、インク粒をノズル12から吐出するとともに、そのインク粒をワークWに着弾させる吐出ヘッド1と、この吐出ヘッド1に対し制御信号、インクおよび補充液を供給するコントローラ100と、を備えている。コントローラ100が吐出ヘッド1に制御信号を供給することで、インク粒の吐出開始および停止、吐出したインク粒の軌跡を制御する。
本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、いわゆるコンティニュアス方式のインクジェットプリンタ(Continuous Ink Jet printer:CIJ)として構成されている。すなわち、インクジェット記録装置Iは、インクの揮発に起因した目詰まり(特に、ノズル12の目詰まり)等を防止するために、印字を実行していないときであっても、インクジェット記録装置Iが稼働状態であれば、インクジェット記録装置Iの内部を常にインクが循環している。コンティニュアス方式を採用することで、インクによる目詰まりを招くことなく、速乾性のインクを用いることができるようになる。
インクの循環を実現するために、吐出ヘッド1は、インクまたは補充液を吐出するノズル12に加えて、そのノズル12から吐出されたインクの一部または補充液を回収するガター16を備えている(図3参照)。ガター16で回収されたインクまたは補充液は、コントローラ100へ送り戻されて再利用される。このようなインクの流路には、インクと接触する部分にシール材が設けられている場合がある。シール材の材料としては、主にEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等が使用されている。
操作用端末800は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)および記憶装置を有しており、コントローラ100に接続されている。この操作用端末800は、印字における加工条件を設定するとともに、印字に関連した情報をユーザに示すための端末として機能する。
操作用端末800により設定される加工条件は、コントローラ100に出力されて、その記憶部102に記憶される。コントローラ100の記憶部102に加えて、または、この記憶部102に代えて、操作用端末800が加工条件を記憶してもよい。加工条件には、印字されるべき文字列等の内容等が含まれる。
なお、操作用端末800は、例えばコントローラ100に組み込んで一体化することができる。この場合は「操作用端末」という呼称ではなく、コントロールユニット等の呼称が用いられることになる。
外部機器900は、必要に応じてコントローラ100に接続される。図1および図2に示す例では、外部機器900として、ワーク検出センサ901、搬送速度センサ902およびプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)903等が設けられている。
具体的に、ワーク検出センサ901は、搬送ラインLにおけるワークWの有無を検出し、その検出結果を示す信号(検出信号)をコントローラ100へ出力する。ワーク検出センサ901から出力される検出信号は、印字を開始するためのトリガー(印字トリガ)として機能する。
搬送速度センサ902は、例えばロータリエンコーダから構成されており、ワークWの搬送速度を検出することができる。搬送速度センサ902は、その検出結果を示す信号(検出信号)をコントローラ100へ出力する。コントローラ100は、搬送速度センサ902から入力された検出信号に基づいて、吐出ヘッド1からインク粒を吐出するタイミング等を制御する。
またPLC903は、図2に例示するように、コントローラ100と電気的に接続されている。PLC903は、予め定めたシーケンスに従ってインクジェット記録システムSを制御するために用いられる。
<コントローラ100>
コントローラ100は、吐出ヘッド1を制御するとともに、インクおよび補充液を吐出ヘッド1へ供給することができるように構成されている。具体的に、本実施形態に係るコントローラ100は、制御に関連した構成要素として、加工条件を記憶する記憶部102と、コントローラ100および吐出ヘッド1の各部を制御する制御部101と、ユーザによる操作を受け付けるとともに、ユーザへ情報を表示する操作表示部103と、外部から供給される電力を制御部101へ導く電源供給部121とを備えている。
コントローラ100は、インク等の供給に関連した構成要素として、吐出ヘッド1のノズル12にインクを供給するインク供給部104と、このノズル12およびインク供給部104に補充液を供給する補充液供給部105と、を備えている。
制御部101と、インク供給部104及び補充液供給部105とは、別ユニットで構成されていてもよい。記憶部102も、インク供給部104及び補充液供給部105とは、別ユニットで構成されていてもよい。操作表示部103も、インク供給部104及び補充液供給部105とは、別ユニットで構成されていてもよい。これらの場合も、構成要素を合わせてコントローラ100とすることができる。
(記憶部102)
記憶部102は、後述の操作表示部103、または、操作用端末800を介して設定された加工条件を記憶するとともに、外部からの制御信号に基づいて、記憶された加工条件を制御部101へと出力するように構成されている。
具体的に、記憶部102は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等を用いて構成されており、加工条件を示す情報を一時的または継続的に記憶することができる。なお、操作用端末800をコントローラ100に組み込んだ場合には、操作用端末800が記憶部102を兼用してもよい。
(制御部101)
制御部101は、記憶部102に記憶された加工条件に基づいて、コントローラ100におけるインク供給部104および補充液供給部105と、吐出ヘッド1におけるノズル12、帯電電極13および偏向電極15と、を制御する。制御部101が各部を制御することにより、ワークWへの印字が所定のタイミングで実施される。
具体的に、制御部101は、例えばCPU、メモリ、入出力バス等を有しており、操作表示部103または操作用端末800を介して入力された情報を示す信号と、記憶部102から読み込んだ加工条件を示す信号と、に基づいて制御信号を生成する。制御部101は、そうして生成した制御信号をコントローラ100およびインクジェット記録装置Iの各部へと出力する。
例えば制御部101は、ワークWに印字するときには、記憶部102に記憶されたワークWへの印字内容を読み込んで、その印字内容に基づいた制御信号を生成する。そして、制御部101は、その制御信号を帯電電極13へと出力することで、印字内容に対応した着弾位置を実現するようにインク粒の飛翔方向を設定する。
(操作表示部103)
図1に示すように、操作表示部103は、例えばコントローラ100を構成する筐体等に設けることができる。この操作表示部103は、インクジェット記録装置Iに関連した種々の情報を表示する表示部103aと、例えば、タッチ式操作パネルやボタン、スイッチ等からなる操作部103bと、を備えている。表示部103aは、例えば液晶表示パネルや有機EL表示パネル等で構成されており、制御部101によって制御され、後述するようなユーザインターフェース等も表示可能に構成されている。
ユーザが操作表示部103の操作部103bを操作すると、その操作情報が制御部101に入力され、制御部101はどのような操作が行われたか検知することができる。例えば、操作部103bを操作することで、インクジェット記録装置Iの電源ON/OFF等を切替えることや、各種設定、情報の入力等を行うことができる。なお、操作用端末800をコントローラ100に組み込んだ場合には、操作用端末800が操作表示部103を兼用してもよい。操作表示部103の表示部103aは、ユーザに各種情報を通知する通知部であり、また、操作部103bは各種情報を入力可能な入力部である。
この操作表示部103は、前述の操作用端末800と同様に、印字における加工条件を設定することもできる。操作表示部103により設定される加工条件は、コントローラ100に出力されて、その記憶部102に記憶される。以下の記載では、ユーザが操作表示部103を操作するケースを前提に説明するが、操作表示部103の代わりに操作用端末800を用いることもできる。
(インク供給部104)
図4に示すように、インク供給部104は、主たる構成要素として、インクを収容したインクカートリッジ104aと、このインクカートリッジ104aからインクが供給されるメインタンク104bと、インク流通経路104cと、インク受入部104dとを有している。インクカートリッジ104a、メインタンク104bおよび吐出ヘッド1は、インク流通経路104cを介して流体的に接続されている。
このうち、図5Aにも示すように、インクカートリッジ104aは、コントローラ100に対して着脱自在に構成されており、これを付け替えることで、メインタンク104bにインクを補充することができる。インクカートリッジ104aをコントローラ100に取り付ける際には、まず、図5Cに示すようにインク受入部104dをコントローラ100の外方へ向くように配置しておき、その後、図5Dに示すようにインクカートリッジ104aをインク受入部104dに保持させ、最後に、図5Eに示すようにインクカートリッジ104aがコントローラ100内に収容されるように、インク受入部104dを回動させる。
インクカートリッジ104aに収容されているインクは、図6に示すように、インク着色剤と、バインダと、溶剤とを含有している。溶剤は、2成分以上の混合溶剤であり、ケトンと、当該ケトンよりも高い揮発性を有するアルコールとが混和したものである。ケトンは、インク溶解用ケトンであり、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトンおよびメチルプロピルケトンを含む群の中から選択された1種または任意の2種以上である。この実施形態では、アルコールは工業用アルコール(変性エタノール)であり、変性剤として、1-プロパノール,イソプロピルアルコールを加えたものである。その他の変性剤としては、例えばメタノール、メチルエチルケトン等があり、いずれの変性剤を加えてもよい。また、ケトンよりも高い揮発性を有するアルコールであればエタノール以外のアルコールを用いてもよいし、エタノールと、ケトンよりも高い揮発性を有するアルコールとを混和してもよい。耐アルコール性が高く強接着性を有する高機能インクは、例えばC5ケトンのなかで許容濃度の比較的高いジエチルケトンと入手性の比較的高い変性エタノールとが混和した混合溶剤を含んでもよい。
インクカートリッジ104a内のインクは、溶剤を70~85質量パーセント含有している。溶剤の含有量の下限は、70質量パーセント以上とすることができ、また75質量パーセント以上とすることもできる。溶剤の含有量の上限は、85質量パーセント以下とすることができ、また80質量パーセント以下とすることもできる。溶剤の含有量の下限を70質量パーセント未満にすると、インクにおけるインク着色剤とバインダとを含む固形分の含有量が多くなるため、固形分が溶剤に溶解しきれなくなる。固形分の溶解性が悪化すると、温度変化での固形分の析出が増えてしまい、印字安定性や後述するフィルタFが詰まり易くなるなどの問題が起こり得る。さらに、溶剤が揮発した際にインクの粘度が高まり易くなり、後述するポンプでの吸引が困難になる粘度域にすぐに達してしまうおそれもある。よって、インクカートリッジ104a内のインクにおける溶剤の含有量の下限を70質量パーセント以上としている。
また、インクカートリッジ104a内のインクにおける溶剤の含有量の上限を85質量パーセントよりも高くすると、固形分の比率が下がるため、所望の付着性を有する高機能なインクを設計することが困難になる。さらにまた、インクカートリッジ104a内のインクにおける溶剤の含有量の上限を85質量パーセントよりも高くすると、固形分の比率が下がるため、インクの溶剤におけるケトンの濃度が一定であったとしても、インクにおけるケトンの濃度が高まるために、例えばインクジェット記録装置Iで使用されているシール材(EPDM)の膨潤量が増加してしまい、シール材の寿命へ悪影響を与える可能性が高まる。よって、インクカートリッジ104a内のインクにおける溶剤の含有量の上限を85質量パーセント以下としている。
蒸気圧が高いほど揮発性が高く、また蒸気圧が低いほど揮発性が低くなるので、ケトンよりも高い揮発性を持ったアルコールは、ケトンよりも高い蒸気圧のアルコールということもできる。より詳細には、インクジェット記録装置I内において想定される温度域での蒸気圧が高いほど揮発性が高く、この温度域での蒸気圧が低いほど揮発性は低いことになる。ここで想定される温度域は、例えば0℃~50℃程度である。また、多くの場合、沸点が低いほど揮発性が高く、また沸点が高いほど揮発性が低くなるので、ケトンよりも高い揮発性を持ったアルコールは、ケトンよりも低い沸点のアルコールということもできる。
インクカートリッジ104a内のインクの溶剤のうち、ケトンを主溶剤(溶剤A)とし、アルコールを副溶剤(溶剤B)とした場合に、10℃における溶剤Aの蒸気圧/溶剤Bの蒸気圧の値と、50℃における溶剤Aの蒸気圧/溶剤Bの蒸気圧の値とが異なる溶剤の組み合わせであってもよい。
インクカートリッジ104a内のインクは、インク着色剤とバインダとを含む固形分を15質量パーセント以上含有している。インク中の固形分の下限は、20質量パーセント以上とすることもできる。インク中の固形分の上限は、30質量パーセント以下、または、25質量パーセント以下とすることができる。インク中の固形分を15質量パーセント以上含有させることで、インクがワークWへ付着して乾燥した後に、例えば除菌用アルコール等が印字面(インクが固化した面)に付着したとしても、インクの溶解や印字剥がれが抑制される。
このような印字面の耐アルコール性は、乾燥した後のインクのアルコール溶解度で規定することができる。インクの固形分は、吐出ヘッド1から吐出されワークWに付着して乾燥した後のアルコール溶解度が5%以下となるように、当該固形分の成分が設定されている。乾燥した後のインクのアルコール溶解度は、例えば4%以下であってもよい。アルコール溶解度とは、重量100の物を純度99.9%の無水エタノールに浸漬させた際に溶液側に拡散する量であり、例えばアルコール溶解度5%とは、重量100の固形分を純度99.9%の無水エタノールに浸漬させた際に重量が95になることを言う。
インク着色剤は、染料系の着色剤であってもよいし、顔料系の着色剤であってもよい。染料系のインク着色剤は、上記溶剤に溶解した状態でインク内に存在する。一方、顔料系のインク着色剤は、上記溶剤に溶解することなく、インク内に分散した状態で存在する。
インク着色剤の色は、例えば黒を挙げることができるが、黒に限られるものではなく、黄色や白色の顔料系着色剤等であってもよい。バインダは、いわゆる接着剤であり、インク着色剤をワークWの印字面に固定するものである。バインダは、溶剤に溶解した状態でインク中に存在しており、ワークWの印字面に付着した後、溶剤が揮発することでインクを印字面に固定する。本実施形態では、乾燥後のバインダのアルコール溶解度が上記範囲となるものを使用することができる。
図5Cにも示すように、インク受入部104dはコントローラ100に設けられており、インクカートリッジ104aを受け入れることが可能に構成されている。インク受入部104dは、例えば、インクカートリッジ104aを外部から収容可能に構成されるとともに、収容されたインクカートリッジ104aを取り出すことも可能に構成されている。インクカートリッジ104aを外部から収容することを「インクカートリッジ104aの受け入れ」と呼ぶことができる。
インク受入部104dは、インクカートリッジ104aを受け入れるだけではなく、インクカートリッジ104aに収容されたインクも受け入れ可能に構成されている。具体的には、インクカートリッジ104a内に連通する吸引管等をインク受入部104dが有していて、インクカートリッジ104aに収容されたインクを吸引管等から吸引することが可能に構成されている。インクカートリッジ104aに収容されたインクを吸引することを「インクの受け入れ」と呼ぶことができる。インクカートリッジ104aの受け入れと、インクの受け入れとは別であり、詳細は後述するが、インク受入部104dがインクカートリッジ104aを受け入れたとしても、インクを受け入れない場合もあり得る。なお、インク受入部104dがインクカートリッジ104aを受け入れなければ、インクを受け入れることはできないように構成されている。
図4に示すように、インク供給部104は、インクカートリッジ104aが装着されているか否かを検知するためのインク装着検知スイッチ104fを更に備えている。インク装着検知スイッチ104fは、インク受入部104dに設けることができ、例えばマイクロスイッチや近接スイッチ等で構成されている。インク受入部104dの正規の位置にインクカートリッジ104aが受け入れられた場合にのみ、インク装着検知スイッチ104fがONになり、それ以外の場合にはインク装着検知スイッチ104fがOFFになるように、インク装着検知スイッチ104fが配設されている。インク装着検知スイッチ104fは制御部101に接続されており、インク装着検知スイッチ104fの検知結果は、制御部101に出力される。
図5Aにも示すように、インクカートリッジ104aには、インク情報記憶部(第1の記憶媒体)104eが取り付けられている。インク情報記憶部104eは、インクに関する情報を記憶する不揮発性メモリ等で構成されている。インクに関する情報には、種別の情報、製造年月日の情報、ケトンの濃度の情報が含まれている。インク情報記憶部104eには、例えば図7Aに一例として示すような形態で情報が記憶される。すなわち、複数のアドレスがあり、各アドレスには、項目として情報種別とデータとが関連付けられている。情報種別は、例えば「インク/補充液」、「製造年月日」、「ケトン濃度」等の項目に区別されている。「インク/補充液」は、インクカートリッジ104aに収容されている液体がインクであるか、補充液であるかを示す項目であり、後述するが、補充液カートリッジ105aと区別するための情報であり、インク情報記憶部104eの場合、インクカートリッジ104aに取り付けられるものであることから、データは「インク」である。
また、「製造年月日」は、インクカートリッジ104aに収容されているインクが製造された日またはインクカートリッジ104aが製造された日を特定する項目である。インクが製造された日と、インクカートリッジ104aへのインクの充填日はほぼ同じであることから、「製造年月日」はインクカートリッジ104aへの充填日と言うこともできる。製造年月日をインク情報記憶部104eに記憶させている理由は、製造後(またはインクカートリッジ104aへの充填後)のインクに含まれる溶剤は、微量であるがインクカートリッジ104aの外部へ揮発していくことは避けられないことによる。したがって、製造年月日が早ければ早いほど、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤成分が減少していると推定される。詳細は後述するが、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤成分の濃度を推定する情報として、製造年月日をインクの吸引時に利用している。
また、インク情報記憶部104eに記憶される「ケトン濃度」は、インクカートリッジ104aに収容されているインクの溶剤におけるケトン濃度を示す項目である。ケトン濃度は、インクカートリッジ104aに充填する直前のインクを核磁気共鳴装置(NMR)等で分析して得られたケトン濃度であり、その数値をデータとしてインク情報記憶部104eに記憶させておくことができる。インクは、ケトン濃度が一定になるように製造されているが、アルコールとケトンの混合量が多少ばらつくこともあり、全てのインクカートリッジ104aでケトン濃度が同じであるとは限らない。よって、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤におけるケトン濃度を測定してインク情報記憶部104eに記憶しておくことで、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤成分の濃度を推定する情報として、後述するインクの吸引時に利用することができる。尚、図6に示すように、インクの溶剤におけるケトン濃度とは、インクIn中の溶剤SVに着目したときの当該溶剤SVに含まれるケトンKinの質量パーセント濃度であり、インクIn全体を対象にした濃度ではない。
インク供給部104は、インク情報記憶部104eにアクセスするインク情報アクセス部(第1アクセス部)104gをさらに備えている。インク情報アクセス部104gは、インク情報記憶部104eに記憶されている情報を読み取り可能なリーダ等で構成することができる。インク情報アクセス部104gは、制御部101に接続されており、インク情報アクセス部104gにより読み取ったインクに関する情報は、制御部101に出力される。
このように、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、いわゆる“カートリッジ式”のインクジェットプリンタとして構成されているが、この構成には限定されない。例えば、手動で開閉可能なタンクを設けるとともに、そのタンクに対してインクを補充するように構成してもよい。
メインタンク104bは、ノズル12へ供給されるインクを蓄える容器であり、具体的にはインクと補充液とを混合して吐出されるインクの粘度が所望の粘度となるように調整するための混合容器である。つまり、補充液によって粘度調整されたインクがメインタンク104bに収容される。
また、インク流通経路104cは、メインタンク104b内の粘度調整後のインクを吐出ヘッド1に供給するインク吐出経路と、ガター16で吸引されたインクをメインタンク104bに戻すための回収経路とを含む経路であり、調整インク流路を構成している。このインク流通経路104cによって、吐出ヘッド1とコントローラ100との間でインクを循環させることができる。
後述の如く、インク流通経路104cには、第1バルブV1をはじめとする複数の電磁弁と、インクポンプP1をはじめとする複数のポンプと、が設けられている。このうち、各電磁弁は、制御部101から出力された制御信号を受けて開閉し、インクの流れを制御することができる。一方、各ポンプは、制御部101から出力された制御信号を受けてインクを圧送し、電磁弁と同様に、インクの流れを制御することができる。
(補充液供給部105)
補充液供給部105は、主たる構成要素として、補充液を収容した補充液カートリッジ105aと、コンディショニングタンク105bと、補充液流通経路105cと、補充液受入部105dとを有している。補充液カートリッジ105a、コンディショニングタンク105bおよび吐出ヘッド1は、補充液流通経路105cを介して流体的に接続されている。補充液が流通する補充液流通経路105cは、複数の経路からなり、そのうちの一部は、ガター16からインクを送り戻す経路により兼用されている。
図5Bに示すように、補充液カートリッジ105aは、コントローラ100に対して着脱自在に構成されている。この補充液カートリッジ105aを付け替えることで、コントローラ100に補充液を補充することができる。補充液カートリッジ105aのコントローラ100への取り付け方法は、インクカートリッジ104aのコントローラ100への取り付け方法と同じである。
本実施形態の補充液は溶剤である。具体的には、図6に示すように、2成分以上の混合溶剤であり、ケトンと、当該ケトンよりも高い揮発性を有するアルコールとが混和したものである。ケトンは、補充用ケトンであり、インクカートリッジ104aに収容されているインクに含まれるインク溶解用ケトンと同様に、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトンおよびメチルプロピルケトンを含む群の中から選択された1種または任意の2種以上で構成されている。また、補充液に含まれるアルコールは、インクカートリッジ104aに収容されているインクに含まれるアルコールと同じものである。補充液に含まれるアルコールは、ケトンよりも高い揮発性を有するアルコールであればエタノール以外のアルコールを用いてもよいし、エタノールと、ケトンよりも高い揮発性を有するアルコールとを混和して用いてもよい。耐アルコール性が高く強接着性を有する高機能インクに対応した補充液は、例えばC5ケトンのなかで許容濃度の比較的高いジエチルケトンと入手性の比較的高い変性エタノールとが混和した混合溶剤を含んでもよい。
補充液におけるケトンの質量パーセント濃度は、インクカートリッジ104aに収容されているインクの溶剤におけるケトンの質量パーセント濃度よりも低く設定されている。具体的には、補充液のケトンの濃度は、インクカートリッジ104aに収容されているインクの溶剤におけるケトン濃度よりも質量パーセント濃度が5~15ポイント低く設定されている。また、補充液のケトンの濃度は、インクカートリッジ104aに収容されているインクの溶剤におけるケトン濃度よりも質量パーセント濃度が8~12ポイント低く設定されていてもよい。補充液のケトン濃度がインクのケトン濃度よりも低く設定されている理由およびそのことによる作用効果については後述する。
補充液を収容した補充液カートリッジ105aは、ケトン濃度が対応するインクを収容したインクカートリッジ104aと組み合わせとして提供されてもよく、ケトン濃度が対応するインクとともに使用するものとして単独で提供されてもよい。例えば、補充液とともに使用するインクを、インク型式やケトン濃度により指定する形で補充液が提供されてもよい。
インクを収容したインクカートリッジ104aは、ケトン濃度が対応する補充液を収容した補充液カートリッジ105aと組み合わせとして提供されてもよく、ケトン濃度が対応する補充液とともに使用するものとして単独で提供されてもよい。例えば、インクとともに使用する補充液を、補充液型式やケトン濃度により指定する形でインクが提供されてもよい。
図5A及び図5Bに示すように、インクカートリッジ104aと補充液カートリッジ105aとは略同一の形状を有していてもよい。また、インクカートリッジ104aにインク情報記憶部(第1の記憶媒体)104eが装着され、補充液カートリッジ105aに補充液情報記憶部(第2の記憶媒体)105eに装着されて提供されてもよく、この場合、インク情報記憶部(第1の記憶媒体)104eと補充液情報記憶部(第2の記憶媒体)105eとはそれぞれ、共通のインクジェット記録装置Iにおいて読み取り可能なフォーマットで各々の収容物に関する情報を保持する。収容物に関する情報としては、例えばインクや補充液等の収容物の型式、収容物の残量、製造年月日、ケトン濃度等である。
図5Cに示すように、インクジェット記録装置Iにおけるインク受入部104dと補充液受入部105dとは略同一の形状であってもよく、この場合、インクカートリッジ104aと補充液カートリッジ105aとは、少なくともインクジェット記録装置Iにおけるインク受入部104dまたは補充液受入部105dと接触する部分において略同一の形状であってもよい。例えば、インクカートリッジ104aと補充液カートリッジ105aとの誤挿入を防止する程度に形状を相違させ、インク受入部104dまたは補充液受入部105dと接触する部分における残りの形状は共通化するようにしてもよい。
補充液受入部105dは、インク受入部104dとは別に、コントローラ100に設けられており、補充液カートリッジ105aを受け入れることが可能に構成されている。補充液受入部105dは、例えば、インク受入部104dと同様に構成されている。補充液カートリッジ105aを外部から収容することを「補充液カートリッジ105aの受け入れ」と呼ぶことができる。
補充液受入部105dは、補充液カートリッジ105aを受け入れるだけではなく、補充液カートリッジ105aに収容された補充液も受け入れ可能に構成されている。具体的には、補充液カートリッジ105a内に連通する吸引管等を補充液受入部105dが有していて、補充液カートリッジ105aに収容されたインクを吸引管等から吸引することが可能に構成されている。補充液カートリッジ105aに収容された補充液を吸引することを「補充液の受け入れ」と呼ぶことができる。補充液カートリッジ105aの受け入れと、補充液の受け入れとは別であり、詳細は後述するが、補充液受入部105dが補充液カートリッジ105aを受け入れたとしても、補充液を受け入れない場合もあり得る。なお、補充液受入部105dが補充液カートリッジ105aを受け入れなければ、補充液を受け入れることはできないように構成されている。
補充液供給部105は、補充液カートリッジ105aが装着されているか否かを検知するための補充液装着検知スイッチ105fを更に備えている。補充液装着検知スイッチ105fは、補充液受入部105dに設けることができ、インク装着検知スイッチ104fと同様に、補充液受入部105dの正規の位置に補充液カートリッジ105aが受け入れられた場合にのみ、補充液装着検知スイッチ105fがONになり、それ以外の場合には補充液装着検知スイッチ105fがOFFになるように配設されている。補充液装着検知スイッチ105fは制御部101に接続されており、補充液装着検知スイッチ105fの検知結果は、制御部101に出力される。
補充液カートリッジ105aには、補充液情報記憶部(第2の記憶媒体)105eが取り付けられている。補充液情報記憶部105eは、補充液に関する情報を記憶する不揮発性メモリ等で構成されている。補充液に関する情報には、インクに関する情報と同様に、種別の情報、製造年月日の情報、ケトンの濃度の情報が含まれており、補充液情報記憶部105eには、例えば図7Bに一例として示すような形態で情報が記憶される。「インク/補充液」の項目は、補充液情報記憶部105eの場合、補充液カートリッジ105aに取り付けられるものであることから、データは「補充液」である。
また、「製造年月日」は、補充液カートリッジ105aに収容されている補充液が製造された日または補充液カートリッジ105aが製造された日を特定する項目である。補充液が製造された日と、補充液カートリッジ105aへ補充液の充填日はほぼ同じであることから、「製造年月日」は補充液カートリッジ105aへの充填日と言うこともできる。製造年月日を補充液情報記憶部105eに記憶させている理由は、インクの場合と同様であり、補充液カートリッジ105a内の補充液の溶剤成分の濃度を推定する情報として、製造年月日を補充液の吸引時に利用している。
また、補充液情報記憶部105eに記憶される「ケトン濃度」は、補充液カートリッジ105aに収容されている補充液のケトン濃度を示す項目である。ケトン濃度は、インクの場合と同様に、充填前に測定して得られたケトン濃度であり、その数値をデータとして補充液情報記憶部105eに記憶させておくことができる。補充液は、ケトン濃度が一定になるように製造されているが、アルコールとケトンの混合量が多少ばらつくこともあり、全ての補充液カートリッジ105aでケトン濃度が同じであるとは限らない。よって、補充液カートリッジ105a内の補充液のケトン濃度を測定して記憶しておくことで、補充液カートリッジ105a内の補充液のケトン濃度を推定する情報として、後述する補充液の吸引時に利用することができる。尚、図6に示すように、補充液におけるケトン濃度とは、補充液Re中の溶剤に着目したときの当該溶剤に含まれるケトンKreの質量パーセント濃度であるが、補充液Reはほぼ溶剤で構成されるため、補充液Re全体を対象にしたケトンKreの質量パーセント濃度であってもよい。
補充液供給部105は、補充液情報記憶部105eにアクセスする補充液情報アクセス部(第2アクセス部)105gをさらに備えている。補充液情報アクセス部105gは、補充液情報記憶部105eに記憶されている情報を読み取り可能なリーダ等で構成することができる。補充液情報アクセス部105gは、制御部101に接続されており、補充液情報アクセス部105gにより読み取った補充液に関する情報は、制御部101に出力される。
補充液カートリッジ105aの代わりに補充液タンクを設けてもよい。なお、補充液供給部105は、補充液カートリッジ105a内の補充液が空になったか否か、又は、補充液が残り少なくなったか否かを検知する機能を有する。補充液カートリッジ105aに収容されている補充液は、インクの濃度調整に用いられるとともに、インクが流通する経路等を洗浄する洗浄剤としても使用される。
コンディショニングタンク105bは、洗浄に用いられた補充液を収容するように構成されている。洗浄に用いられた補充液にはインクが含まれている。前述のように、ノズル12から吐出された補充液は、インクと同様にガター16によって回収される。
また、補充液流通経路105cは、吐出ヘッド1およびメインタンク104b等に補充液を供給し、ガター16で吸引された補充液をメインタンク104bに戻すための経路である。
後述の如く、補充液流通経路105cには、第16バルブV16をはじめとする複数の電磁弁と、補充液ポンプP2をはじめとする複数のポンプと、が設けられている。このうち、各電磁弁は、制御部101から出力された制御信号を受けて開閉し、補充液の流れを制御することができる。一方、各ポンプは、制御部101から出力された制御信号を受けて補充液を圧送し、電磁弁と同様に、補充液の流れを制御することができる。
なお、補充液流通経路105c、および、前述のインク流通経路104cという分類は、説明を簡潔にするためになされた便宜上の分類に過ぎない。補充液流通経路105cおよびインク流通経路104cは、相互に接続されていたり、一方が他方を兼ねていたりするため、実質的に不可分となっている。
(電源供給部121)
電源供給部121は、商用電源700と制御部101の間に介在しており、商用電源700)から供給される電力を中継し、これを制御部101へと供給することができる。
(他の構成要素)
コントローラ100には、制御信号を送受するための電気配線と、インクを送受するためのチューブ(具体的には、インク流通経路104cを区画するチューブ)と、補充液を送受するためのチューブ(具体的には、補充液流通経路105cを区画するチューブ)と、が束になって被覆された接続ケーブル107が設けられている。この接続ケーブル107は可撓性を有しており、吐出ヘッド1の上端部に接続されている(図1を参照)。コントローラ100と吐出ヘッド1は、この接続ケーブル107を介して電気的にかつ流体的に接続されている。
<吐出ヘッド1>
吐出ヘッド1は、コントローラ100から供給される制御信号、インクおよび補充液に基づいて粘度調整されたインクを粒子状のインク粒として吐出する。吐出ヘッド1は、そうして吐出されたインク粒の飛翔方向を偏向せしめるとともに、偏向されたインク粒をワークWの表面に着弾させることで、そのワークWに対して印字を実行することができる。
具体的には、図3に示すように、本実施形態に係る吐出ヘッド1は、インクに振動を与えることでインク粒を生成する加振器11と、加振器11により加振されたインクを吐出するノズル12と、ノズル12から吐出された粒子状のインクを帯電させる帯電電極13と、インクの帯電状態を監視する帯電検出センサ14と、帯電電極13により帯電されたインクの飛翔方向を偏向させる偏向電極15と、偏向電極15により非偏向とされたインク、または、ノズル12から吐出された補充液を回収するガター16と、を備えている。
吐出ヘッド1は、加振器11、ノズル12、帯電電極13、帯電検出センサ14、偏向電極15およびガター16を内部に収容し、かつ、インク粒の飛翔空間S1を区画する筐体10を備えている。吐出ヘッド1の筐体10の下面には、偏向電極15により偏向されたインクを外部に吐出するための開口部Aが形成されている。インクは、この開口部Aから筐体10の下方へ向けて吐出されるようになっている。
図1に示すように、印字時における吐出ヘッド1は、例えば支持部材2によって支持されている。支持部材2によって支持された状態の吐出ヘッド1は、その吐出孔AがワークWの印字面に対して上方向から対向するように配置される。
以下、吐出ヘッド1をなす各部について、順番に説明をする。なお、以下の記載において「上下方向」とは、鉛直方向に沿った方向を指す。例えば、図3の紙面上方が「上方向」に相当し、同図の紙面下方が「下方向」に相当する。他の図においても、これに対応する方向を「上下方向」という。
(加振器11)
図3に例示するように、加振器11は、ノズル12に設けられている。本実施形態に係る加振器11には、インクに上下振動を付与(加振)するためのデバイス(例えばピエゾ素子)が内蔵されている。この加振器11は、接続ケーブル107を介してインクが供給されるように構成されており、そうして供給されたインクを加振することができる。加振器11によって加振されたインクは、ノズル12へと供給される。なお、図示は省略したが、本実施形態に係る加振器11は接地されている。
(ノズル12)
図3に例示するように、ノズル12の本体部分は、加振器11の下端部に接続されている。ノズル12の下端面には、加振器11により振動が与えられたインクが吐出する吐出口(図示せず)が下に向けて開口するように形成されている。ノズル12内の流路には、インク供給部104を構成している吸引経路27(図4等に示す)が接続されており、ノズル12内の流路に負圧を作用させることができるようになっている。ノズル12内の流路は、ノズル12内のインクを吸引するためのものである。吸引経路27は、例えば立下時に吐出ヘッド1内部の圧力を抜くためのリターン経路としても機能する。吸引経路27を通じて、ノズル12から補充液を吸引させることもできる。
加振器11によって加振されずにノズル12から吐出されたインクは、軸状のいわゆる“インク軸”となって流れる。一方、加振されたインクは、ノズル12から吐出された直後に粒子化されて、いわゆる“インク粒”となる。ノズル12から吐出されたインクは、ノズル12から吐出された直後は軸状であるが、ノズル12から離れるに従って粒子状になる。この粒子状になる位置をブレークポイントと呼ぶ。ノズル12から吐出されたインク(インク粒)は、後述する帯電電極13を通過する。
なお、吐出ヘッド1を洗浄すべく供給された補充液は、加振器11とノズル12を順番に通過して、ノズル12の先端部から吐出される。そうして吐出される補充液は、軸状に流れて、帯電電極13を通過する。
(帯電電極13)
図3に例示するように、帯電電極13は、一対の伝導性を有する金属板によって構成されており、ノズル12の下方に配置されている。帯電電極13を構成する一対の金属板は、それぞれの長手方向を上下方向に沿わせた姿勢で、かつ互いに水平方向に向い合うような姿勢で筐体10に固定されている。ノズル12から吐出されたインクが一対の金属板の間を通過することになる。
本実施形態に係る帯電電極13には、少なくとも印字動作を実行するときに電位(正電位)が印加される。これにより、加振器11と帯電電極13との間に電位差を生じさせ、帯電電極13を通過するインク粒を帯電させることが可能となる。各インク粒を帯電させるために、本実施形態に係る帯電電極13は、ノズル12から吐出されたインクが粒子化するブレークポイント付近に配置される。
帯電電極13には、コントローラ100によって制御可能なパルス電位が印加される。ここで、帯電電極13に対して相対的に高い電圧を印加した場合は、それよりも低い電圧を印加した場合に比して、各インク粒の帯電量(負の電荷の大きさ)が大きくなる。各インク粒は、その帯電量が大きい場合には、それが小さい場合に比して、偏向電極15によって大きく偏向される。コントローラ100がパルス電位の大きさを調整することで、インク粒の偏向量を制御することができる。帯電電極13によって帯電されたインク粒は、帯電検出センサ14の側方を通過した偏向電極15へ至る。また、ノズル12から吐出される補充液は、帯電されることなく偏向電極15へ至る。
(帯電検出センサ14)
図3に例示するように、帯電検出センサ14は、帯電電極13の下方に配置されている。詳しくは、帯電検出センサ14は、帯電電極13を構成する金属板(図3に示す例では、紙面右側の金属板)の下方において、インク粒が飛翔する際の軌跡と交わらないように配置されている。帯電検出センサ14をこのように配置することで、インク粒と帯電検出センサ14との衝突を避けることが可能となる。
また、本実施形態に係る帯電検出センサ14は、筐体10の内部に設けた回路基板に接続されている。帯電検出センサ14は、その側方を通過するインク粒の帯電状態を検出することができる。帯電検出センサ14による検出結果は、検出信号として制御部101に出力される。この検出信号に基づいて、制御部101は、各インク粒が適切に帯電しているか否かを判定することができる。
(偏向電極15)
図3に例示するように、偏向電極15は、一対の伝導性を有する金属板(いわゆる「対向電極」)によって構成されており、帯電電極13および帯電検出センサ14の下方に配置されている。ここで、一対の金属板は、それぞれの長手方向を略上下方向に沿わせた姿勢で、かつ互いに水平方向に向い合うような姿勢で筐体10に固定されている。帯電電極13を構成する一対の金属板の間を通過したインク粒は、偏向電極15を構成する一対の金属板の間を通過することになる。
偏向電極15には、コントローラ100によって制御可能な電圧が印加される。これにより、偏向電極15を構成する一対の金属板の間には電位差が生じることになる。この電位差によって、インク粒の帯電量に応じて、そのインク粒の飛翔方向を偏向させることができる。インク粒の飛翔方向は、偏向電極15を構成する一対の金属板の並び方向に沿って偏向され得る。
すなわち、帯電電極13および偏向電極15のそれぞれに印加される電圧を介して、インク粒の飛翔方向を制御することができる。そうして飛翔方向が制御されるインク粒には、偏向電極15により偏向されたものと、偏向電極15により偏向されないもの(非偏向とされたもの)と、が含まれる。このうち、偏向電極15により偏向されたインク粒がワークWの印字に関与する。偏向電極15により偏向されたインク粒は、筐体10の下面に設けた開口部Aから吐出されて、ワークWに着弾する。
一方、偏向電極15により非偏向とされたインク粒は、ワークWの印字に関与しない。こうしたインク粒、または、そもそも粒子化されていない軸状のインクは、図3において鎖線で例示したように、ガター16の中に到達する。同様に、吐出ヘッド1におけるノズル12等の洗浄に用いられて偏向電極15を通過した補充液もまた、ガター16の中に至る。
(ガター16)
図3に例示するように、ガター16は、その開口端を上方に向けた曲管によって構成されており、偏向電極15の下方に配置されている。本実施形態に係るガター16は、ワークWの印字に関与しないインクと、ノズル12を通過した補充液(具体的には、ノズル12から吐出された補充液)と、を回収することができる。
本実施形態においては、ガター16の開口端(上流端)と、ノズル12の開口端とが互いに向い合うように配置されており、ガター16の開口端の真上にノズル12の開口端が位置している。このように配置することで、ノズル12の開口端から鉛直方向に沿って流れた流体を、ガター16の開口端から受け入れることが可能になる。ガター16によって回収されたインクまたは補充液は、回収流路を介してコントローラ100のメインタンク104bに還流されるようになっている。
以下、ガター16によるインクまたは補充液の回収について、図4を用いて説明する。なお、図4において符号Fが付された構成要素は、フィルタを例示している。以下の記載では、フィルタFの配置、構成等の説明を省略する。
<インクおよび補充液の経路について>
インク流通経路104cは、ノズル12へのインクの供給に関連した経路として、インクカートリッジ104aおよび第1分岐部51を接続する第1インク経路21と、第1分岐部51(詳細には、第2インク経路22における中途の部位)、および、第2分岐部52を接続する第6インク経路26と、第2分岐部52およびメインタンク104bを接続する第8インク経路28と、メインタンク104bおよびノズル12を接続する第4インク経路24と、を有している。ここで、本実施形態に係る第6インク経路26は、後述の第5インク経路25を介して第2分岐部52と接続されるようになっている。
インク受入部104dで受け入れたインクは、第1インク経路21、第1分岐部51、第2インク経路22、第6インク経路26、第2分岐部52及び第8インク経路28によってメインタンク104bに送られる。つまり、インク受入部104dで受け入れたインクを送るインク流路は、第1インク経路21、第1分岐部51、第2インク経路22、第6インク経路26、第2分岐部52及び第8インク経路28で構成されている。
また、インク供給部104は、粘度計53を有している。インクにおける溶剤の濃度に応じてインクの粘度は変化する。つまり、固形分と溶剤の比率に応じてインクの粘度は変化し、固形分の比率が高くなるほどインクの粘度は高くなる。このことを利用し、インクの粘度を測定することによってインクにおける溶剤の濃度を推定することができる。図8に模式的に示すように、粘度計53は、上側容器53aと下側容器53bとを備えている。上側容器53aには所定量のインクが導入されるようになっている。上側容器53aの底部には、内部のインクを滴下させるための滴下孔53cが設けられている。下側容器53bは、滴下孔53cから滴下したインクを受けるように配置されている。下側容器53b内のインクは、メインタンク104bに戻されるようになっている。上側容器53a内のインクがHレベルからLレベルまで変化する時間に基づいてインクの粘度を算出できるとともに、インクにおける溶剤の濃度を推定できる。
インク流通経路104cは、粘度計53による粘度測定に関連した経路として、第1分岐部51およびメインタンク104bを接続し、かつ粘度計53が介設された第2インク経路22と、この第2インク経路22とは独立して設けられ、メインタンク104bおよび第1分岐部51を接続する第3インク経路23と、を有している。
また、インク流通経路104cは、ガター16によるインクの回収に関連した経路として、ガター16およびメインタンク104bを接続する第5インク経路25を有している。第5インク経路25は、ガター16にインク粒が回収された場合には、回収されたインク粒をインク供給部104へと導く回収流路を構成している。ガター16に補充液が吸引された場合には、補充液が第5インク経路25によって回収される。
ここで、第2インク経路22には、循環ポンプP4と、第11バルブV11と、粘度計53と、が順番に設けられている。循環ポンプP4は、吸引経路27に負圧を作用させるポンプである。吸引経路27はノズル12内の流路に接続されているので、循環ポンプP4を作動させると、ノズル12内のインクを、吸引経路27を介して吸引することができる。
第4インク経路24には、インクポンプP1と、減圧弁と、圧力計と、第14バルブV14と、が順番に設けられている。第5インク経路25には、第10バルブV10と、ガターポンプP3と、第2分岐部52と、が順番に設けられている。ガターポンプP3は、第5インク経路25を負圧にすることで、ガター16にインク粒が回収された場合にはインク粒を吸引し、ガター16に補充液が回収された場合には補充液を吸引する吸引ポンプである。
一方、補充液流通経路105cは、ノズル12への補充液の供給に関連した経路として、補充液カートリッジ105aおよびノズル12を接続する第1補充液経路31を有している。
また、補充液流通経路105cは、補充液カートリッジ105aに収容された補充液によるインクの粘度調整に関連した経路として、第1補充液経路31における中途の部位、および、第1分岐部51を接続する第2補充液経路32を有している。第2補充液経路32は、補充液受入部105dで受け入れた補充液を送る補充液流路を構成する部分である。
また、補充液流通経路105cは、第1分岐部51とコンディショニングタンク105bを接続する第3補充液経路33を有している。なお、インク流通経路104cとして例示された第5インク経路25は、ガター16による補充液の回収に関連している。前述のように、「インク流通経路104c」および「補充液流通経路105c」という分類は、便宜上の分類に過ぎない。
第1補充液経路31には、光学式空検知機構44と、補充液ポンプP2と、第16バルブV16と、第12バルブV12と、が順番に設けられている。第1補充液経路31には、補充液噴射部としての洗浄ノズル19が接続されている。洗浄ノズル19は、吐出ヘッド1における加振器11、ノズル12の外部(吐出口12a周辺)、帯電電極13、偏向電極15等に補充液を噴射することによってそれらを洗浄するためのノズルであって、洗浄液としての補充液を噴出することができる。洗浄ノズル19から第1補充液経路31に至る途中には、第15バルブV15が設けられている。
ここで、第1分岐部51は、第3インク経路23および第2インク経路22の間を開閉する第5バルブV5と、第1インク経路21および第2インク経路22の間を開閉する第8バルブV8と、第3補充液経路33および第2インク経路22の間を開閉する第9バルブV9と、第2補充液経路32および第2インク経路の間を開閉する第13バルブV13と、を有している。
また、第2分岐部52は、第6インク経路26および第8インク経路28の間を開閉する第1バルブV1と、第6インク経路26およびコンディショニングタンク105bの間を開閉する第3バルブV3と、第6インク経路26および廃液タンク(図4において、「廃液」と図示)の間を開閉する第4バルブV4と、を有している。
制御部101は、第11バルブV11など、各経路に設けられたバルブに制御信号を出力したり、第1分岐部51および第2分岐部52をなす各バルブに制御信号を出力したりすることで、コントローラ100内に所望の流路を構成することができる。
例えば、第8バルブV8と第1バルブV1を開くことで、インクカートリッジ104aからメインタンク104bにインクを補充することが可能になる。メインタンク104bへのインクの補充は、例えばメインタンク104bに、インクレベルを検出するレベルセンサを設けておき、この検出センサからの出力信号に基づいて行えばよい。レベルセンサは、例えば5段階等の複数段階でインクレベルを検出可能に構成されている。レベルセンサで検出されたインクレベルが第1の所定レベル以下になると、メインタンク104bへインクを補充する補充処理を実行し、第1の所定レベルよりも高い第2の所定レベルに達すると、インクの補充処理を停止する。
メインタンク104bへのインクの補充は、例えば立上処理中に行ってもよいし、立上処理が完了して印字可能な状態になってから行ってもよい。立上処理中にインクを補充する場合には、処理開始の最初のステップにおいてインクレベルを検出し、必要に応じて補充処理を実行すればよい。
また、本来の循環動作ではないが、第5バルブV5と第11バルブV11を開くことで、第2インク経路22と、メインタンク104bと、第3インク経路23と、の間でインクを循環させて、粘度計53によってインクの粘度を測定することが可能になる。
補充液に関連した経路についても同様である。例えば、第13バルブV13と、第1バルブV1と、を開くことで、補充液カートリッジ105aに収容された補充液をメインタンク104bに供給し、メインタンク104bに蓄えられたインクの粘度を調整することができるようになる。また、第9バルブV9と、第1バルブV1と、を開くことで、コンディショニングタンク105bに貯蔵されたインク混じりの補充液が、第3補充液経路33、第1分岐部51、第6インク経路26、第2分岐部52および第8インク経路28を通過して、メインタンク104aに供給される。
コントローラ100は、空気の流通に関連した経路も有している。例えば、メインタンク104bには、不図示の排気口に通じる第1排気管41が接続されている。同様に、コンディショニングタンク105bには、前記排気口に通じる第2排気管42が接続されている。
空気の流通に関連した経路の別例として、コントローラ100は、ノズル12および第1分岐部51を接続する吸引経路27を有している。吸引経路27には第6バルブV6が設けられていて、この第6バルブV6と、前述の第5バルブV5を開くことで、吸引経路27、第1分岐部51、第6インク経路26、第2分岐部52、第8インク経路28、メインタンク104bおよび第1排気管41を介してノズル12を大気と連通させることができる。これにより、ノズル12から吐出されるインク粒の噴射圧を調整することができるようになる。
また、印字を実施する際には、第14バルブV14を開くことで、メインタンク104bから第4インク経路24を介してインクが供給される。第14バルブV14は、圧抜きバルブV2と、ノズル12の溜まり部12bとの間に設けられており、ノズル12に対するインクの供給を制御する供給バルブである。
インク供給部104の第4インク経路24にはメインタンク104bに至る分岐経路24aが設けられている。分岐経路24aには、制御部101によって制御される圧抜きバルブV2が設けられている。圧抜きバルブV2は、制御部101によって閉じられると、第4インク経路24内のインク圧を保持する一方、制御部101によって開かれると、第4インク経路24内のインク圧を減圧する。圧抜きバルブV2が開いている時間によって第4インク経路24内のインク圧を調整することができる。
また、第14バルブV14を開くことにより、第4インク経路24を介して供給されたインクは、加振器11の加振力により粒子状のインク粒となってノズル12から吐出される。ノズル12から吐出されたインク(インク粒)のうち、印字に関与しないインク、および、ノズル12等の洗浄に用いられた補充液は、ガター16に回収されて、第5インク経路25を通じてコントローラ100に還流される。その場合、メインタンク104bに還流されるべきインクは、第1分岐部51から、第6インク経路26、及び、第2分岐部52における第1バルブV1、および、第8インク経路28を介してメインタンク104bへ流れる。一方、コンディショニングタンク105bへ送られる補充液は、第5インク経路25から、第2分岐部52における第3バルブV3を介して送られる。
ガター16によるインクまたは補充液の回収は、例えば、インクジェット記録装置Iの立上処理および立下処理と関連して行われるようになっている。ここで、「立上処理」とは、インクジェット記録装置Iへの電源投入時に、印字を開始する前に実行される処理をいう。一方、「立下処理」とは、インクジェット記録装置Iの電源遮断時に、同装置の動作を停止する前に実行される処理をいう。
詳しくは、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、電源スイッチがONにされても、印字を直ちには開始しない。インクジェット記録装置Iは、印字を開始する前に所定の立上処理を実行する。この立上処理においては、補充液を用いて吐出ヘッド1を洗浄した後に、インクの吐出が開始される。立上処理の開始直後に吐出されるインクは、前述したインク軸を形成し、ガター16によって回収される。
同様に、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、電源スイッチがOFFにされようとしたときには、その動作を直ちには停止しない。インクジェット記録装置Iは、動作を停止する前に、ノズル洗浄などからなる所定の立下処理を実行する。この立下処理においては、ノズル12から補充液を吐出させて、これに残存したインクを洗浄および回収することができる。補充液の吐出に伴ってノズル12から排出されたインクは、立上処理におけるインク軸と同様に、ガター16によって回収される。
なお、本実施形態における「電源スイッチ」には、物理的な押し釦に加えて、操作表示部103等に表示されるタッチ式操作パネルで構成されるスイッチ類も含む。そして、電源スイッチのOFF操作とは、押し釦等を物理的に押下する操作に加えて、操作用端末800、操作表示部103等を通じて指令されるシャットダウン操作も指す。電源スイッチのON操作についても同様である。
以下、インクジェット記録装置Iの立上処理および立下処理について詳細に説明する。
<インクジェット記録装置Iの基本動作>
図9は、インクジェット記録装置Iの基本動作を例示するフローチャートである。このフローチャートは、立上処理をはじめとするインクジェット記録装置Iの基本動作を例示している。
まず、図9のステップSA1では、インクジェット記録装置Iの電源スイッチがOFFFからONにされて、インクジェット記録装置Iに電源が投入される。
ステップSA1から続くステップSA2において、制御部101が立上処理を実行する。後述するように、立上処理において洗浄動作を行うことができる。
図10は、インクジェット記録装置Iの立上処理を例示するフローチャートである。このフローチャートは、図9におけるステップSA2の詳細を例示している。すなわち、図10における4つのステップSB1、SB2、SB3、SB4が、図9のステップSA2を構成している。
また、図11は立上処理における工程Aを説明するための図であり、図12は立上処理における工程Bを説明するための図であり、図13は立上処理における工程Cを説明するための図である。
図10に示すフローチャートのステップSB1においては、制御部101が工程Aを実行し、インクジェット記録装置Iにおけるインクおよび補充液の経路を昇圧する。この工程Aにおいては、補充液を準備するために、制御部101は、第16バルブV16を開いた状態で、第12バルブV12を閉状態で待機させる。その状態で補充液ポンプP2が作動することで、補充液カートリッジ105aに収容された補充液が、第1補充液経路31を介して第12バルブV12付近まで供給される(図11の太線を参照)。
また、インクを準備するために、制御部101は、第14バルブV14を閉状態で待機させる。その状態で、第4インク経路24にインクを送るインクポンプP1が作動することで、第4インク経路24内のインクの圧力が上昇する(図11の太線を参照)。
また、ガター16を準備するために、制御部101は、第10バルブV10および第1バルブV1を開状態で待機させる。その状態でガターポンプP3が作動することで、ガター16によって回収されたインクまたは補充液を、第5インク経路25および第2分岐部52を介してメインタンク104bまで送り戻すことができるようになる(図11の太線を参照)。
工程Aにおいて、制御部101には、圧力計の検知信号が入力される。制御部101は、そうした検知信号に基づいて、第4インク経路24の圧力が規定値以上になるまで待機する。
ステップSB1から続くステップSB2では、制御部101が工程Bを実行し、ノズル12から補充液を吐出させる。この工程Bにおいては、制御部101が第12バルブV12を開くことで、ノズル12から補充液が吸い出されて吐出される。そうして吐出された補充液は、ガター16によって回収される。この工程Bは、1秒未満の短期間にわたって実行されるため、他の工程に比して、少量の補充液が吐出されることになる。そのため、工程Bにおいて吐出される補充液は、第1バルブV1を介して第5インク経路25からメインタンク104bに送り戻される(図12の太線を参照)。
なお、工程Bにおいて多量の補充液が噴射される場合は、第1バルブV1ではなく第3バルブV3が開放されて、第5インク経路25からコンディショニングタンク105bへ補充液が送り戻される。
ステップSB2から続くステップSB3では、制御部101が工程Cを実行し、ノズル12からインクを吐出させる。この工程Cにおいては、インクを吐出させるために、制御部101は、第12バルブV12を閉じて第14バルブV14を開く。これにより、ノズル12から軸状のインク(インク軸)が吐出される。吐出されたインクは、ガター16によって回収され、第1バルブV1を介して第5インク経路25からメインタンク104bに送り戻される(図13の太線を参照)。
ステップSB3から続くステップSB4では、制御部101が、ノズル12から吐出されるインクへの加振、並びに、帯電電極13および偏向電極15への印加を開始させる。これにより、インクを粒子化させたり、帯電させたり、偏向させたりすることが可能となる。
ステップSB4に示す処理が終了すると、図10に示す制御プロセスから図9に示す制御プロセスに戻る。そして、制御部101が、ステップSA2から続くステップSA3を実行する。ステップSA3において、制御部101は、粒子状のインク(インク粒)をワークWに着弾させることで、そのワークWに対して印字を行う。
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、コンティニュアス方式のインクジェットプリンタであるため、立上処理後の印字可能状態(インクジェット記録装置Iの稼働状態)にあっては、印字を実行しないときであっても、ノズル12からインクが吐出され続けるようになっている。このときに吐出されるインクは、偏向電極15によって偏向されない(換言すれば、「非偏向」とされる)。非偏向とされたインクは、印字に関与することなく、ガター16により回収されて装置内部を循環し、再利用される。
印字が完了し、インクジェット記録装置Iが正常にシャットダウンされる場合には、ステップSA3において、インクジェット記録装置Iの電源スイッチがONからOFFに切り替えられる。この場合、ステップSA4に進み、制御部101が立下処理を実行する。この立下処理においても洗浄動作を実行することができる。
図14は、インクジェット記録装置Iの立下処理を例示するフローチャートである。このフローチャートは、図9におけるステップSA4の詳細を例示している。すなわち、図14における5つのステップSC1~ステップSC5が図9のステップSA4を構成している。
また、図15は立下処理における工程Dを説明するための図であり、図16は立下処理における工程Eを説明するための図であり、図17は立下処理における工程Fを説明するための図である。
図14に示すフローチャートのステップSC1においては、制御部101が、ノズル12から吐出されるインクへの加振、並びに、帯電電極13および偏向電極15への電圧印加を停止する(インクの粒子化、帯電、偏向:ON→OFF)。これにより、インクの粒子化、帯電および偏向が停止され、ノズル12からは軸状のインク軸が吐出されるようになる。
ステップSC1から続くステップSC2では、制御部101が、インク軸の吐出を停止させる(インクの吐出停止)。具体的に、このステップSC2では、インクの吐出を停止するために、制御部101は、第14バルブV14を閉じる。これにより、ノズル12からインクが吐出されないようになる。
ステップSC2から続くステップSC3では、制御部101が、補充液を間欠的に吐出させるために、図15に例示する工程Dと、図16に例示する工程Eと、を交互に実行する。補充液を間欠的に吐出することで、インクジェット記録装置I、特にノズル12を洗浄することができる。以下、この動作を「間欠噴出動作」という。
このうち、図15に示す工程Dにおいては、制御部101は、第16バルブV16と、第12バルブV12と、第10バルブV10と、第1バルブV1と、を開く。その状態で補充液ポンプP2およびガターポンプP3を作動させることで、補充液カートリッジ105aに収容された補充液が、第1補充液経路31を介してノズル12から吐出されてガター16により回収される。ガター16により回収された補充液は、第5インク経路25および第2分岐部52を介してメインタンク104bに送り戻される(図15の太線を参照)。
図14に示す処理を開始した直後は、第5インク経路25に多くのインクが残存していると考えられるため、図15に示す工程Dにおける補充液は、コンディショニングタンク105bではなく、メインタンク104bへ送り戻されるようになっている。
また、図16に示す工程Eにおいては、制御部101は、第12バルブV12を閉じて、第6バルブV6を開く。そうすると、循環ポンプP4が及ぼす負圧によって、ノズル12に残存した補充液が、吸引経路27、第1分岐部51、第6インク経路26、第1バルブV1、第8インク経路28を介してメインタンク104bに吸い込まれるようになる(図16の太線を参照)。
なお、図16に示す工程Eにおいては、第12バルブV12を閉じずに、開いたままとしてもよい。その場合、補充液カートリッジ105aからノズル12へ補充液が供給されつつも、そうして供給された補充液がそのまま、吸引経路27から吸い込まれるようになる。こうすることで、第6バルブV6を流れる補充液の流量を向上させ、より十分に洗浄することができるようになる。
図15に示す工程Dと図16に示す工程Eとは、複数回(例えば数セット)にわたって繰り返される。ここで、ステップSC3において工程Dを実施する時間(例えば1秒未満)は、工程Eを実施する時間(例えば数秒程度)よりも短い。
また、工程Eにおいて第12バルブV12を閉じた後に、工程Dにおいて第12バルブV12を開くことで、補充液が間欠的に噴射されるようになる。工程Dから工程Eへ移行する際に、数秒程度にわたって第12バルブV12を閉じてもよい。こうすることで、第12バルブV12付近における補充液の圧力を高めることができ、第12バルブV12を開いたときに、補充液を勢いよく吐出することができるようになる。
ステップSC3から続くステップSC4において、制御部101が図15に示す工程Dのみを実行し、ノズル12から補充液を吐出させる。このステップSC4において工程Dを実施する時間は、例えば30秒程度であり、ステップSC3において工程Dを実施する時間よりも長い。このステップSC4を実行することで、主に、ガター16に通じる第5インク経路25を洗浄することができる。
ステップSC4から続くステップSC5において、制御部101が図17に示す工程Fを実行し、吐出ヘッド1から補充液を回収する。具体的に、この工程Fにおいて、制御部101は、第10バルブV10および第3バルブV3を開く。その状態でガターポンプP3が作動することで、ノズル12に残存した補充液が、第5インク経路25および第2分岐部52を介してコンディショニングタンク105bに吸引される(図17の太線を参照)。このステップSC5を実行することで、洗浄に用いた補充液を回収することができる。
ステップSC5が実行される前に、ステップSC4において補充液を吐出させたため、第5インク経路25には相対的に多くの補充液が残存していると考えられる。そのため、工程Fにおける補充液は、メインタンク104bではなく、コンディショニングタンク105bへと送り戻されるようになっている。
ステップSC5に示す処理が終了するとリターンされて、図14に示す制御プロセスから図9に示す制御プロセスに戻る。そして、ステップSA4から続くステップSA5では、インクジェット記録装置Iへの電源供給が遮断され、インクジェット記録装置Iは、その動作を停止する。
(粘度調整処理)
メインタンク104b内のインクの溶剤は時間の経過に従って揮発するので、固形分の比率が高まり、メインタンク104b内のインクの粘度は高まる。本実施形態では、メインタンク104b内のインクの粘度を調整する粘度調整処理を実行可能に構成されている。粘度調整処理は、図9に示すフローチャートのステップSA2の立上処理が完了した後、ステップSA4の立下処理が完了するまでの間、継続して実行される。
粘度調整処理の一例を図18に示すフローチャートに基づいて説明する。このフローは、上述したメインタンク104bへのインクの補充処理を必要に応じて実行した後に、スタートさせてもよいし、運転開始から所定の時間が経過したタイミングでスタートさせてもよい。
スタート後のステップSD1では図8に示す粘度計53を用いてメインタンク104b内のインクの粘度測定を開始する。ステップSD2では、制御部101が、図4に示す第5バルブV5と第11バルブV11を開き、第2インク経路22と、メインタンク104bと、第3インク経路23と、の間でインクを循環させる。この循環動作により、図8に示すようにメインタンク104b内のインクを上側容器53aのHレベルまで供給する。上側容器53a内のインクの液面高さは図示しないセンサ等によって検出することができ、制御部101が各バルブV5、V11を制御して上側容器53a内のインクの液面がHレベルとなった時点で上側容器53aへのインクの供給を停止する(ステップSD3)。
次いで、ステップSD4では、インクの供給を停止した直後から上側容器53a内のインクの液面がLレベルを切るまでの時間を測定する。インクの液面がLレベルを切るまでの時間とインクの粘度との関係は、事前に試験等によって得ることができるので、粘度計53を用いることで、時間の測定結果に基づいてインクの粘度を算出できる(ステップSD5)。粘度計53で算出されたインクの粘度は、制御部101に出力される。尚、粘度計53は一例であり、他のセンサ等を用いてインクの粘度を測定してもよい。
ステップSD6では、ステップSD5で算出した実測粘度と目標粘度との差を求め、その差が所定値以上であるか否かを判定する。目標粘度は、高品質な印字が正常に行える粘度であり、これも事前に試験等によって得ることができ、記憶部102等に予め記憶させておくことができる。ステップSD6における所定値は、例えば、0.1cP、または0.2cP等に設定することができるが、これに限られるものではない。
ステップSD6でNOと判定されて実測粘度と目標粘度との差が所定値未満であれば、メインタンク104b内のインクが、高品質な印字を正常に行える粘度であるということである。この場合には、ステップSD1に戻り、上記各ステップSD2~SD6を実行する。一方、ステップSD6でYESと判定されて実測粘度と目標粘度との差が所定値以上であれば、メインタンク104b内のインクの粘度が高すぎるということであり、この場合には、ステップSD7に進む。
ステップSD7では、制御部101が、第13バルブV13と、第1バルブV1と、を開く。これにより、補充液カートリッジ105aに収容された補充液がメインタンク104bに供給される。1回のステップSD7でメインタンク104bに供給される補充液の量は、粘度が目標粘度を下回らないように設定しておけばよい。ステップSD5で算出された実測粘度に基づいて、ステップSD7における補充液の供給量を設定してもよく、実測粘度が高ければ高いほど補充液の供給量を増やすことができる。
その後、ステップSD8に進む。ステップSD8では、メインタンク104b内のインクの粘度が安定するまで所定時間待つ。すなわち、補充液を供給した直後は、メインタンク104b内の部位によって粘度が異なっている場合があるので、メインタンク104b内のインクが均一な粘度となるまでの時間待つことで、その後の行われるステップSD1~SD6の処理が的確なものになる。このように、立上処理後にメインタンク104b内のインクの粘度を調整して所定の範囲内にすることができるので、インク着色剤及びバインダの溶解性を良好に保って高い印字品質を得ながら、不具合の発生を未然に防止できる。
したがって、本実施形態の制御部101は、粘度計53により測定されたメインタンク104b内のインクの粘度に基づいて、メインタンク104b内のインクの粘度が所定の範囲内となるように、インク受入部104dを介してメインタンク104b内に供給するインクと補充液受入部105dを介してメインタンク104b内に供給する補充液との流量を制御する粘度調整処理を実行する部分である。尚、粘度調整処理中、立下処理の実行が開始されると、制御部101は、このフローは中断して立下処理を実行する。
本実施形態では、上述したように、インクの溶剤がケトンとアルコールとを含む混合溶剤であり、アルコールの揮発性がケトンよりも高いことから、仮に、インクの溶剤と同じ比率のケトン及びアルコールを補充液として用いると、粘度調整処理を繰り返した後のメインタンク104b内のインク中のケトン濃度が初期濃度よりも高まってしまう。
例えば、図19に示すように、インクの溶剤におけるケトン濃度を50質量パーセント濃度とし、補充液のケトン濃度を50質量パーセント濃度とした場合に、上記粘度調整処理を長時間継続して行うと、メインタンク104bの周囲の温度が40℃の場合にはメインタンク104b内のインクの溶剤におけるケトン濃度が65質量パーセント濃度まで上昇し、35℃の場合には55~57質量パーセント濃度まで上昇し、25℃の場合には59~62質量パーセント濃度まで上昇し、0℃の場合には54%まで上昇する。その後、ケトン濃度は平衡状態になった。平衡状態とは、これ以上、粘度調整処理を継続してもメインタンク104b内のインクの溶剤におけるケトン濃度が変化しない状態のことである。
初期濃度で正常に動作することを前提としているインクジェット記録装置Iに、図19に示すように初期濃度よりも高い濃度のケトンを含むインクを使用すると、意図しない不具合が発生する懸念がある。インクジェット記録装置Iの不具合としては、例えばインクジェット記録装置Iにシール材等として使用されているゴムの膨潤や、インクの析出によるノズル詰まり等である。
粘度調整処理を繰り返すことによってメインタンク104b内のインクのケトン濃度が次第に高まっていくことに対し、本実施形態では、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤と同じ比率のケトン及びアルコールを補充液として用いるのではなく、補充液におけるケトンの質量パーセント濃度を、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤におけるケトンの質量パーセント濃度よりも低く設定している。
本発明者は、例えば図20に示すように、インクカートリッジ104aのインクの溶剤におけるケトンの質量パーセント濃度を74質量パーセント濃度とし、補充液におけるケトンの質量パーセント濃度を70質量パーセント濃度、66質量パーセント濃度、62質量パーセント濃度とした時、周囲温度が0から40℃の広い温度域において、補充液におけるケトンの質量パーセント濃度の+10~12ポイントの範囲に、インクの溶剤におけるケトンの質量パーセント濃度が収束することを見い出した。図20における「濃度差」は、インクの飽和ケトン濃度から補充液のケトン濃度を差し引いたものである。
図20に示す結果より、インクカートリッジ104aのインクの溶剤におけるケトンの濃度をある範囲に安定させることが可能な補充液のケトン濃度を求めることができる。また、高機能なインク溶液の設計、例えば乾燥後のインクの溶解性の設計や、インクジェット記録装置Iに使用されているゴム製シール材の膨潤度合いの見極めが容易に可能になる。
要するに、補充液のケトン濃度の質量パーセント濃度が、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤におけるケトンの質量パーセント濃度よりも8~12ポイント低いことで、インクカートリッジ104aのインクの溶剤におけるケトンの濃度を初期の濃度およびその近傍sに保つことができる。言い換えると、インクジェット記録装置Iが所定の周囲温度範囲(0~40℃)で動作している時に、メインタンク104b内のインクの粘度の調整が複数回繰り返されても、当該メインタンク104b内の溶剤におけるケトン濃度が初期濃度に対して±1ポイント以内に維持されるように、補充液のケトン濃度は、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤におけるケトン濃度よりも質量パーセント濃度が低くなっている。
また、本実施形態では、補充液のケトンの濃度は、インクカートリッジ104aに収容されているインクの溶剤におけるケトン濃度よりも質量パーセント濃度が5~15ポイント低く設定されており、インクカートリッジ104aに収容されているインクの溶剤におけるケトンの濃度を初期の濃度およびその近傍に保つことができるので、インクの固形分の比率が高い高機能インクであっても、固形分が溶解しきれずに析出してしまうおそれが低下する。つまり、例えばケトンと比較的入手性の高いエタノール等のアルコールの混合溶媒の場合、補充液を比較的入手性の高いエタノール等のアルコールの比率を高くしたとしても、インクジェット記録装置Iのメインタンク104bにおいて高機能インクの固形分が溶解しきれずに析出してしまうおそれが低下する。高機能インクとして、例えば、有機則非該当溶剤であって許容濃度が比較的高いジエチルケトンと、入手性の高い変性エタノールの混合溶媒を使用したインクや、アルコール溶解度の低く塗膜厚が厚い耐アルコール強接着インクに適用することができる。
また、別の観点として、補充液のケトンの濃度は、インクカートリッジ104aに収容されているインクの溶剤におけるケトン濃度よりも質量パーセント濃度が5~15ポイント低く設定されており、インクカートリッジ104aのインクの溶剤におけるケトンの濃度を初期の濃度およびその近傍に保つことができるので、ゴム製シール材の寿命の短縮を回避できるとともに、耐アルコール性の高いインクなどの高機能なインクの安定的な使用が可能になる。すなわち、上記5ポイント未満の場合、初期のインクの溶剤におけるケトン濃度が上昇するため、幅広いケトン濃度に適合したインク設計やゴム製シール材の設計が必要になるが、そのような設計要件を満たせないケースが多いため、シール材の寿命やインクの安定性が低下してしまう。一方、上記15ポイントよりも大きい場合、ケトン濃度が大きく低下するケースがあるために、耐アルコール性の高いインクなどの高機能なインクの固形分が溶解しきれずに析出してしまうおそれがある。安定的なインクが要求される場合、溶解性を優先してインクの耐アルコール性などの機能を低下させざるを得なくなる。
(管理部)
図2に示すように、制御部101には、インク受入部104dを介したインクの受け入れと、補充液受入部105dを介した補充液の受け入れとの少なくとも一方を規制する管理部101aが設けられている。
すなわち、上述したように、メインタンク104b内の溶剤のケトン濃度を初期濃度およびその近傍で保つためには、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤におけるケトン濃度と、補充液カートリッジ105a内の補充液におけるケトン濃度とが重要であり、仮に、これらのケトン濃度が想定とは異なっていると、メインタンク104b内の溶剤のケトン濃度は初期濃度から乖離してしまう。このことを防止するために管理部101aが設けられている。
管理部101aは、インクカートリッジ104a内のインクを供給する際に、図21のフローチャートで示す処理を実行する。スタートのステップSE1では、インク装着検知スイッチ104fがONであるか否かを判定する。NOと判定されてインク装着検知スイッチ104fがOFFである場合には、インクカートリッジ104aがインク受入部104dに受け入れられていないということであり、ONになるまで待つ。YESと判定されてインク装着検知スイッチ104fがONである場合には、インクカートリッジ104aがインク受入部104dに受け入れられたということであり、ステップSE2に進む。ステップSE2では、インク情報アクセス部104gがインク情報記憶部104eにアクセスしてインクに関する情報を読み取る。
その後、ステップSE3に進み、ステップSE2で読み取ったインクに関する情報に基づいて、インクカートリッジ104a内のインクの溶剤におけるケトン濃度を推定する。例えば、溶剤の混合バラツキや、製造後の揮発などにより、供給されるインクの溶剤におけるケトン濃度が変化することがあり、それをステップSE3で補正する。具体的には、図7Aに示すように、インクに関する情報には、製造年月日が含まれているので、製造年月日と現在の年月日とを比較する。製造年月日が古いほど、ケトンに比べて揮発し易いアルコールの濃度が減少してケトン濃度が高まるので、製造年月日が古いほどケトン濃度が高まるようにステップSE3で補正する。補正量は、実験等によって事前に得ておくことができる。
また、インクに関する情報には、インクカートリッジ104aに充填された時のインクの溶剤におけるケトン濃度が含まれている。このケトン濃度と、製造年月日とに基づいて、現在のインクカートリッジ104a内のインクの溶剤におけるケトン濃度をステップSE3で補正し、推定することができる。
ステップSE4では、ステップSE3で推定したインクカートリッジ104a内のインクの溶剤におけるケトン濃度が所定範囲内にあるか所定範囲外にあるかを判定する。所定範囲は、例えば74~78質量パーセント濃度とすることができ、この範囲外であれば、ステップSE6に進んでエラー処理を行い、インクの供給、即ちインクの受け入れを行わないように規制する。一方、ステップSE3で推定したインクカートリッジ104a内のインクの溶剤におけるケトン濃度が所定範囲内にあると判定された場合には、ステップSE5に進み、インクの受け入れを規制しない。この場合、必要に応じてインクカートリッジ104a内のインクを吸引してメインタンク104bに供給することが可能になる。
また、管理部101aは、補充液カートリッジ105a内の補充液を供給する際に、図22のフローチャートで示す処理を実行する。スタートのステップSF1では、補充液装着検知スイッチ105fがONであるか否かを判定する。NOと判定されて補充液装着検知スイッチ105fがOFFである場合には、補充液カートリッジ105aが補充液受入部105dに受け入れられていないということであり、ONになるまで待つ。YESと判定されて補充液装着検知スイッチ105fがONである場合には、補充液カートリッジ105aが補充液受入部105dに受け入れられたということであり、ステップSF2に進む。ステップSF2では、補充液情報アクセス部105gが補充液情報記憶部105eにアクセスして補充液に関する情報を読み取る。
その後、ステップSF3に進み、ステップSF2で読み取った補充液に関する情報に基づいて、補充液カートリッジ105a内の補充液におけるケトン濃度を推定する。例えば、溶剤の混合バラツキや、製造後の揮発などにより、供給される補充液におけるケトン濃度が変化することがあり、それを補正する。図7Bに示すように、補充液に関する情報には、製造年月日が含まれているので、製造年月日が古いほどケトン濃度が高まるように補正する。補正量は、実験等によって事前に得ておくことができる。
また、補充液に関する情報には、補充液カートリッジ105aに充填された時の補充液におけるケトン濃度が含まれている。このケトン濃度と、製造年月日とに基づいて、現在の補充液カートリッジ105a内の補充液におけるケトン濃度を補正し、推定することができる。
ステップSF4では、ステップSF3で推定した補充液カートリッジ105a内の補充液におけるケトン濃度が所定範囲内にあるか所定範囲外にあるかを判定する。所定範囲は、例えば10~12質量パーセント濃度とすることができ、この範囲外であれば、ステップSF6に進んでエラー処理を行い、補充液の供給、即ち補充液の受け入れを行わないように規制する。一方、ステップSF3で推定した補充液カートリッジ105a内の補充液におけるケトン濃度が所定範囲内にあると判定された場合には、ステップSF5に進み、必要に応じて補充液カートリッジ105a内の補充液を吸引してメインタンク104bに供給する。
(ゴム製シール材の膨潤抑制)
インクの溶剤におけるケトン濃度が高まるほど、インクジェット記録装置Iで使用されているゴム製シール材の膨潤量が大きくなり、寿命が短縮するおそれがあるので、上述したように、インクの溶剤におけるケトン濃度を初期濃度およびその近傍で維持するようにしている。一方、本発明者が、インクの固形分(非溶剤成分)の割合と、ゴム製シール材の膨潤量との関係を考察してみると、固形分の割合を増やすことで、ゴム製シール材の膨潤量が低下することを見い出した。
図23に示すように、インクの溶剤のケトンとアルコールの比率を70:30とし、固形分を0%、10%、20%に変化させると、シール材の重量変化率(シール材の膨潤量に相当)が低下していく。ここで、ケトンはジエチルケトンが選択され、シール材はEPDMが選択されている。図23に示す結果に基づけば、図24に示すように、インクの溶剤におけるケトン濃度が高くなってしまう場合であっても、固形分を多くすることで、インク全体におけるケトン濃度を抑えられ、シール材の膨潤量を抑制でき、補充液側の膨潤量とほぼ等しい状態にすることができる。よって、シール材の寿命短縮を抑制できる。
(立上処理の変形例)
立上処理や印字時等に、ノズル12や偏向電極15には少量のインクが付着し、その結果、印字乱れが発生する場合がある。また電源OFF状態で長期間放置されると揮発により高粘度になったインクが流路に溜まってしまい、インクの吸引不良の原因になることもある。このことを抑制するために、上述したように補充液でノズル12や偏向電極15を洗浄するのであるが、洗浄に使用された補充液をメインタンク104bに流入させてしまうと、粘度調整処理時の平衡点におけるケトン濃度の変動比率が±1%に収まっているにも関わらず、流入した補充液によってメインタンク104b内のインクの溶剤におけるケトン濃度が5~10%程度変動してしまうおそれがある。
このことに対して、本実施形態では、例えば洗浄工程を実施した後にはコンディショニングタンク105bに洗浄液を回収するようにして、メインタンク104bへ過度な補充液が流入しないように制御している。インク軸の調整が行われた場合にも同様に制御することができる。
以下、その制御内容について図25のフローチャートに基づいて説明する。スタート後のステップSG1では、残液回収が必要であるか否かを判定する。本フローチャートの処理に入る前に例えば洗浄工程が行われた場合には、残液回収が必要であると判定する。また、本フローチャートの処理に入る前に例えばインク軸の調整が行われた場合には、残液回収が必要であると判定する。YESと判定されて残液回収が必要である場合には、ステップSG2に進み、残液を、第5経路25から第2分岐部52における第3バルブV3を介してコンディショニングタンク105bに回収する。その後、ステップSG3に進み、上述した通常の立上処理を実行する。ステップSG1でNOと判定された場合も、ステップSG3に進み、上述した通常の立上処理を実行する。
(インク析出物による印字品質低下及びノズル詰まりの防止処理)
本実施形態のインクのように、耐アルコール性インクでエタノール含有していると溶解度の余裕度が下がるため、周囲温度の低下や長期間放置などの微妙な外乱により極微量な析出物が発生することがある。極微量であっても析出物がノズル12に到達すると、インク粒切れのタイミングが局所的に大きく変化し、印字品質が大きく低下するおそれがある。また、析出の度合いが大きいとノズル12が詰まることも考えられる。
極微量な析出物は、図4等に示すフィルタFでろ過可能ではあるが、立上げ処理完了後初期は、フィルタFの2次側の液が吐出される。長期間放置された場合、フィルタFの2次側の液は濾過されてから長期間経過しているため、上記のような現象が発生し得る。
このインク析出物による印字品質低下及びノズル詰まりの防止処理として、図26のフローチャートに示す別の変形例に係る立上処理を制御部101が実行する。スタート後のステップSH1では、ノズル12からインクを吐出することなく、インクを循環させてフィルタFで濾過する。循環時のインクの流量は、印字に比べて多く設定されており、これにより、析出物を高速に濾過できる。その後、ステップSH2では、ノズル12や偏向電極15等を補充液で洗浄する。その後、ステップSH3に進み、上述した通常の立上処理を実行する。
ステップSH1は、例えば、周囲温度が所定温度以下になった場合に開始してもよいし、電源OFFからの経過時間が所定時間以上である場合に開始してもよい。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、固形分を15質量パーセント以上含有したインクを用いてワークWへの印字を行うので、例えば、乾燥後のインクにおける塗膜厚が増えて、付着性が上がりやすい。この場合、塗膜厚を増やして付着性を補強するので、塗膜厚が薄いときには所望の付着性を満たさないものもインクの固形分として採用することができる。アルコールに溶解しにくい塗膜を形成するものを固形分として採用すると、乾燥後のインクの耐アルコール性が高くなり、例えば除菌用アルコール等が付着したときのインクの剥がれが抑制される。また、インクに固形分を15質量パーセント以上含有することで、付着性が補強された高機能なインクを容易に設計することができる。
また、ケトンと比較的安価なアルコールとが混和した2成分以上の混合溶剤を含んだインクを使用することで、インクのコストが低減される。メインタンク104b内のインクの粘度が溶剤の揮発によって経時的に高まった場合、メインタンク104bに補充液が送られてインクと混ぜ合わされることによってインクの粘度が調整される。このとき混ぜ合わされる補充液におけるケトンの質量パーセント濃度が、インクの溶剤におけるケトンの質量パーセント濃度よりも低いので、粘度調整後の溶剤におけるケトンの比率が初期比率に近づく。よって、経時的に溶剤におけるケトンの比率が変化し難くなる。これにより、意図しない装置の不具合が発生し難くなる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。