以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1,図2は、本実施の形態の吊り天井の耐震補強構造となる吊り天井構造1の構成を説明するための図である。
吊り天井構造1は、例えば体育館、集会場、災害応急対策の拠点となる公共施設、ビルなどの様々な建物に設けられる。また、2013年8月5日に一部が改正された建築基準法施行令で定義された「建築物における天井の脱落防止」の対応義務が課される「特定天井」や、それ以外の吊り天井に対しても、耐震性能を向上させるために適用することができる。さらに、本実施の形態の吊り天井の耐震補強構造は、既存の吊り天井に対しても、新設される吊り天井に対しても適用することができる。
図1に示すように、建物の構造体となる床スラブ11の下面や梁には、間隔を置いて複数の吊りボルト13が吊り下げられており、吊り部材となる吊りボルト13の下端のハンガー131に野縁受け部14が吊り下げられる。
また、図2に示すように、野縁受け部14の軸方向に間隔を置いて、略直交する方向に向けて野縁部15が取り付けられる。さらに野縁部15の下面には、石こうボードなどの天井板16が取り付けられる。
なお、この吊り天井が「特定天井」に該当する場合は、図1に示すように、天井板16の端部16aを建物の壁面12から6cm以上離隔させて、地震時の揺れで端部16aが壁面12に押し付けられて損傷するのを防ぐことができる。
本実施の形態では、防振ハンガー7を備えた吊りボルト13によって吊り下げられた既存の吊り天井に対して、遮音性を損なわないような形態でブレースなどの斜め部材を配置して耐震補強を行なう場合について説明する。
本実施の形態の吊り天井構造1は、図2に示すように、野縁受け部14の軸方向に沿って側面視略V形に配置された一対の野縁受け方向の斜め部材としてのブレース8,8と、野縁部15の軸方向に沿って側面視略V形に配置された一対の野縁方向の斜め部材としてのブレース8,8とを備えている。
ブレース8の上端は、取付金物81を介して吊りボルト13の上部に固定される。一方、野縁受け部14と野縁部15との交差部17Aには、本実施の形態の遮音性耐震補強金具が配置される。この遮音性耐震補強金具は、交差部17Aに取り付けられる耐震補強金具3と、耐震補強金具3とブレース8の下端との間に介在させる遮音性金具2とによって構成される。
耐震補強金具3は、図3-図5に示すように、野縁受け部14と野縁部15との交差部17Aに取り付けられる。そして、この耐震補強金具3には、遮音性金具2を介してブレース8の下端が接続されることになる。
吊りボルト13のハンガー131が引っ掛けられる野縁受け部14は、図3に示すように、例えば略水平面の上端面を形成する上フランジ141と、それに略平行な下フランジ142と、上フランジ141と下フランジ142との側縁間を繋ぐ略鉛直面のウェブ143とによって、断面視略コ字形に形成されている。
一方、野縁受け部14に固定される野縁部15は、底部153と、その両側から立ち上がる側壁部152,152と、側壁部152,152のそれぞれの上縁から内側に2度屈曲させたリップ部151,151とによって形成される。すなわち野縁部15には、リップ部151,151を有する断面視略U字形の鋼材が使用できる。また、リップ部151は、上面と垂下面とによって横向きの断面視略L字形に形成される。
そして耐震補強金具3は、図3-図5に示すように、上方に配置される野縁受け部14に固定される第1金具4と、第1金具4に跨らせて野縁部15に固定される第2金具5と、第1金具4と第2金具5とを接合させる一体化手段とによって主に構成される。
第1金具4は、中央に設けられて野縁受け部14に跨らせる折曲げ部41と、野縁部15が嵌合可能となるように下部に形成された切欠き部42と、第1金具4を野縁受け部14に固定する接合手段としてのビス材43とによって主に構成される。
折曲げ部41は、図3に示すように、野縁受け部14を上方から覆うように、断面視略門形に形成される。要するに折曲げ部41は、野縁受け部14の上フランジ141及びウェブ143の両側方を覆う形状に形成される。
そして、折曲げ部41の下部には、野縁部15の上部が嵌合可能となる形状に切り欠かれた切欠き部42が設けられる。要するに切欠き部42によって、野縁部15の上方及び両側方が囲まれることになる。
このように形成された折曲げ部41を野縁受け部14の上フランジ141に載せるとともに、切欠き部42をその下方の野縁部15に嵌めることで、側壁部152,152の上端に第1金具4を載せる。
また、折曲げ部41を挟んだ両側では、野縁受け部14のウェブ143と第1金具4とにビス材43,43を連続して貫通させて、両者を接合させる。この結果、第1金具4は野縁受け部14に固定される。
このように第1金具4を野縁受け部14に固定するための接合手段を、双方を貫通させるビス材43とすることで、ビス材43のせん断抵抗による強固な接合とすることができる。要するに、野縁受け部14のウェブ143に第1金具4を貫通させたビス材43が直接、ねじ込まれていれば、野縁受け部14と第1金具4との間にずれが生じない強固な接合とすることができる。そしてこの状態であれば、仮に野縁受け部14と野縁部15とが接合されていないとしても、野縁部15の軸方向以外の方向への第1金具4の移動は制限されることになる。
さらに、第1金具4の野縁受け部14の軸方向の両側縁には、野縁部15の軸方向と略平行となる方向に向けてリブ44,44が張り出される。このリブ44,44によって、鋼板などの板材を折り曲げ加工することで製作される第1金具4の剛性を高めることができる。
このようにして野縁受け部14に取り付けられた第1金具4の上方から第2金具5を跨らせる。この第2金具5は、野縁部15の片方のリップ部151を挟んで対向させる一対の板部(51,52)を有している。
一対の板部(51,52)は、いずれも野縁受け部14を跨ぐことができるように、中央に溝部511,521が設けられた鋼板等によって形成される。ここで、リップ部151側(野縁部15の内側)に配置される板部をリップ部側板部51とし、野縁部15の外側に配置される板部を止め板部52とする。
また、リップ部側板部51の下部には、図3,図4に示すように側面視略レ字形の引掛け部512が設けられる。この引掛け部512は、リップ部151に下方から引っ掛けられる位置に設けられる。引掛け部512は、リップ部側板部51の下部の一部に対して、長方形の上辺及び両側辺に切り込みを入れてリップ部151側に倒し込むことによって形成される。
一方、引掛け部512の上方には挿通孔513が穿孔されており、リップ部151を挟んでボルト部54が貫通される。このボルト部54は、リップ部側板部51から止め板部52の挿通孔523に向けて貫通されて、止め板部52側に突出される先端にはナットが装着される。
これに対してボルト部54の頭部側には、図6に示すように長方形(略正方形)の鋼板等によって形成される座金部55が配置される。すなわちボルト部54を締め付けることによってリップ部側板部51と止め板部52との間に導入される締結力は、座金部55とリップ部側板部51とが接触する面を通して伝達される。
そして、この座金部55の回転を制限させるために、リップ部側板部51の側縁からは、図4に示すように制限リブ部514が張り出される。詳細には、リップ部側板部51の野縁部15の軸方向の両側縁には、野縁受け部14の軸方向と略平行となる方向に向けて制限リブ部514,514が張り出される。この制限リブ部514,514によって、鋼板などの板材を折り曲げ加工することで製作されるリップ部側板部51の剛性を高めることができる。
さらに、図6に示すように、止め板部52の野縁部15の軸方向の両側縁にも、野縁受け部14の軸方向と略平行となる方向に向けてリブ部522,522が張り出されて剛性が高められている。
ボルト部54によって板部(51,52)間に締結力が導入されると、リップ部151が圧潰して第2金具5が野縁部15に固定される。すなわち、ボルト部54の締結力が座金部55を介してリップ部側板部51に伝達されると、それに接するリップ部151が変形して押しつぶされる。
そして、導入された締結力と変形したリップ部151とによって圧着された第2金具5は、野縁部15の軸方向への移動が制限されることになる。また、門形に成形されて第1金具4及び野縁受け部14に跨るリップ部側板部51及び止め板部52によっても、第2金具5の野縁部15の軸方向への移動は制限される。
また、図4に示すように、リップ部側板部51の溝部511の一方の縁部からは、接合片515が張り出される。このリップ部側板部51から略直交するように突出されて第1金具4の折曲げ部41の外側面に沿って配置される接合片515には、第1金具4と第2金具5とを接合させる一体化手段としての複数のビス材31,31がねじ込まれる(図10参照)。接合片515には、ビス材31をねじ込むための孔515aを予め穿孔しておくこともできる。
さらに、一対の板部(51,52)には、それぞれの上縁から反対方向に、野縁受け部14の上端面となる上フランジ141に接しながら延伸されて平面を形成するステージ部53A,53Bが設けられる。ここで、リップ部側板部51に設けられる平面をステージ部53Aとし、止め板部52に設けられる平面をステージ部53Bとする。
ステージ部53Aには、野縁受け部14を跨がせるためにリップ部側板部51の中央に設けられる溝部511に連続する凹部532Aが形成される。一方、ステージ部53Bには、野縁受け部14を跨がせるために止め板部52の中央に設けられる溝部521に連続する凹部532Bが形成される。
一対のステージ部53A,53Bのそれぞれに設けられる凹部532A,532Bは、図5に示すように連続した長方形の空間を形成する。この凹部532A,532Bによって形成される空間には、第1金具4の折曲げ部41の上面が収容される。要するに、ステージ部53A,53Bと折曲げ部41の上面とによって、略面一の長方形の広い平面が野縁受け部14上に形成されることになる。
この一対のステージ部53A,53Bによって上フランジ141から張り出すように形成される広い長方形の平面には、例えば隅角部付近に、上下方向に貫通する取付孔531が穿孔される。
このようにして野縁受け部14と野縁部15との交差部17Aは、剛性の高い耐震補強金具3によって固定することができる。この耐震補強金具3を取り付けることで、交差部17Aの接合強度が高められて補強される。ここで、第1金具4と第2金具5との一体化手段を複数本のビス材31とすることで、1本のビス材で一体化させた場合に比べて接合強度が増加して両者の一体性をさらに高めることができる。
また、後述する遮音性金具2を介してブレース8からの力が伝達される耐震補強金具3のステージ部53A,53Bは、野縁受け部14の上フランジ141に接しているので、上から荷重が作用しても、野縁受け部14の反力によって支持することができる。
一方、図2に示すように、耐震補強金具3が取り付けられた交差部17A以外の交差部には、補強クリップ6やクリップ61が取り付けられる。補強クリップ6は、耐震補強金具3が取り付けられていない野縁受け部14と野縁部15との交差部に取り付けられる通常のクリップ61よりも、強固に野縁受け部14と野縁部15とを連結させることができる。
本実施の形態の遮音性耐震補強金具のもう一方を構成する遮音性金具2は、図7及び図8に示すように、耐震補強金具3に固定される内部材21と、ブレース8の端部が接続される外部材22と、内部材21と外部材22との間に介在される遮音性機能部となる防振材23とによって主に構成される。
内部材21は、図7に示すように、平板部211の中央に柱状に形成されたシャフト部212を備えている。すなわち内部材21は、正方形などの平面視長方形の平板部211と、平板部211の中央に上方に向けて突出させるシャフト部212とを備えている。平板部211とシャフト部212の両方が平面視正方形の場合の位置関係は、隅角部の向きが一致する位置から45°回転させた相対的位置関係とする。
平板部211の隅角部には、それぞれボルト孔214が穿孔される。このボルト孔214は、内部材21を耐震補強金具3に固定するための孔である。内部材21のシャフト部212は、例えば四角筒状の角形鋼管などによって形成することができる。また、角形鋼管の上端開口を上蓋部213で塞ぐことによって、シャフト部212の剛性を高めることができる。
この内部材21のシャフト部212の周囲には、図9,図10に示すように、防振材23が貼り付けられる。防振材23は、防振ゴムなどによって形成される。この防振材23は、長方形のシート状に形成されてシャフト部212の4つの側面にそれぞれ貼り付けられる。なお、防振材23は、四角筒状に形成されていてもよい。
防振材23は、シャフト部212の高さ方向の一部に貼り付けられていればよい。後述するように、内部材21と外部材22との高さ方向の相対的な位置関係は変化することになるが、使用範囲において内部材21と外部材22とがどのような位置関係になったとしても、内部材21と外部材22との間に防振材23が介在される構成となっていればよい。
内部材21のシャフト部212及び防振材23の周囲を囲繞する筒状に形成される外部材22は、図8に示すように、四角筒状のさや管部221と、ブレース8の下端を取り付けるための複数の取付片222とによって主に構成される。
さや管部221は、角形鋼管によってシャフト部212よりも短く形成される。すなわちシャフト部212は、さや管部221よりも長くなるように形成されている。そして、さや管部221のそれぞれの側面の上部には、ネジ部材がねじ込めるように雌ねじ溝が刻まれたネジ孔224が設けられる。
ネジ孔224は、一つの側面に対して高さ方向に間隔を置いて複数、設けられる。図8に示したさや管部221には、1側面に付き3個のネジ孔224が、側面の幅方向の中央に1列に設けられている。このネジ孔224には、図9及び図10に示したように、シャフト部212の側面に対して先端を接触させられるネジ部材となる支持ネジ25が装着される。
また、さや管部221の下部には、複数の取付片222が設けられる。図8に示した外部材22では、さや管部221の隅角部からそれぞれ4つの取付片222が延伸されている。この4つの取付片222の延伸方向は、図9に示すように、野縁受け部14の軸方向と野縁部15の軸方向に一致している。また、取付片222には、固定用のボルトなどを挿入する取付孔223が穿孔される。
詳細については後述するが、吊り天井構造1の常時の状態では、外部材22のさや管部221の下端面と内部材21の平板部211の上面との間には、隙間を発生させて音響的な絶縁を図る。
一方、シャフト部212の外周面とさや管部221の内周面との間には防振材23が介在されるので、ブレース8と耐震補強金具3との間で微振動などが伝達されるのを抑えることができる。
図9-図11は、耐震補強金具3に遮音性金具2を取り付けた本実施の形態の遮音性耐震補強金具を説明するための平面図及び断面図である。すなわち、交差部17Aに取り付けられた耐震補強金具3のステージ部53A,53Bに、遮音性金具2が取り付けられる。
遮音性金具2の下部を構成する内部材21の平板部211の隅角部には、ステージ部53A,53Bの取付孔531と重なる位置に、それぞれボルト孔214が穿孔されている(図7参照)。このボルト孔214と取付孔531(図6参照)にボルト24を通してナット241で締結することで、内部材21を耐震補強金具3に固定する。なお、ステージ部53A,53Bの取付孔531に雌ねじ溝が刻まれている場合は、ナットを使用せずに上からねじ込んだボルト24によって内部材21を固定することができる。
内部材21のシャフト部212を囲繞するように装着される外部材22の取付片222は、外部材22のさや管部221のそれぞれの隅角部から、野縁受け部14と野縁部15の軸方向にそれぞれ延伸される。
そして、図10及び図11に示すように、それぞれの軸方向に延びた取付片222に対して、アーム材82がボルト821によって斜めに取り付けられる。このアーム材82には、ブレース8の下端が接合される。
アーム材82は、ブレース8の下端を取り付けるための断面視略L字形に形成されている。2方向にそれぞれ側面視略V形に配置された4本のブレース8の下端は、1箇所の遮音性金具2に集約して取り付けることができる。
そして、遮音性金具2を介在させることで、床スラブ11などの構造体側で発生した振動や音が、ブレース8を介して天井板16下方の空間に伝達されるのを防ぐことができる。反対に、天井板16の下方空間で発生した音が、ブレース8を介して上階などに伝達されるのも防ぐことができる。
また、野縁受け部14と野縁部15との交差部17Aに取り付けられる耐震補強金具3に遮音性金具2を設けることで、設置箇所が集約されるので、使用する部品数が少なくなり施工性に優れている。すなわち、4本のブレース8のそれぞれに防振部材を介在させる場合と比べて、交差部17Aの1箇所に遮音性金具2を設置するだけでよいため、部品数を大幅に削減することができ合理的である。
続いて、遮音性金具2の支持ネジ25の使い方について説明する。図13は、吊り天井構造1と遮音性金具2の状態を模式的に示した図である。弾性の軸力材である吊りボルト13によって吊り下げられる吊り天井構造1は、吊りボルト13やブレース8を軸剛性によって設定されるモデルとして表すことができる。
図13の左側に図示した状態は、天井下地となる野縁受け部14に支持される野縁部(図示省略)に天井板16が貼り付けられる前の状態をモデル化している。ここで、吊りボルト13の全体の軸剛性は、軸剛性k3の低い防振ハンガー7を挟んだ軸剛性2k1の吊り材の直列接合として設定され、ブレース8の軸剛性の鉛直成分はk2vに設定される。ここで、左図の拡大図に示すように、ブレース8と天井下地との接続は、遮音性金具2の介在を前提としている。
そして、通常の施工手順において、このような状態で床スラブ11から吊り下げられた天井下地に対して天井板16が貼り付けられて重量Wが加わると、天井下地はδだけ沈下することになる。この際の吊りボルト13の抵抗をr1とし、防振ハンガー7の抵抗をr3とし、1本のブレース8の抵抗の鉛直成分をr2v/2とする。
こうした天井板16の貼り付け後の遮音性金具2の状態は、図13の右側の拡大図に示したように、内部材21に対して外部材22は離隔しており、内部材21と外部材22との間に介在し得るのは、防振材23のみの状態になる。すなわち、内部材21と外部材22との間は、音響的な絶縁が図れた状態になり、ブレース8と野縁受け部14との間に遮音性金具2を介在させることで、遮音性が確保できると言える。併せて、内部材21とブレース8とは力学的にも絶縁状態にあるため、図13中に鉛直成分の抵抗r2v/2として例示したようなブレース8の抵抗は、ゼロになる。
このように天井板16の貼り付け前後において、内部材21と外部材22の高さ方向の相対的な位置関係は変化するので、それを考慮して支持ネジ25を使用することになる。まず、交差部17Aに取り付けられた耐震補強金具3のステージ部53A,53Bに対して、内部材21の平板部211を載せてボルト24とナット241で固定する。
そして、防振材23が貼り付けられたシャフト部212に対して、外部材22のさや管部221を被せる。外部材22は、さや管部221の下端面が平板部211の上面に接する位置まで下ろす。このように外部材22を平板部211に載せた状態であれば、さや管部221の水平が確保できたことになる。
この状態でさや管部221の高さ方向の中央のネジ孔224に支持ネジ25をねじ込んで、支持ネジ25の先端をシャフト部212の側面に接触させる。この支持ネジ25の締め付けは、シャフト部212を挟んだ少なくとも一対のさや管部221の側面から行われる。要するに、シャフト部212を挟んだ両側から支持ネジ25を突出させることで、さや管部221の中空に対してシャフト部212を偏らせることなく配置することができる。
支持ネジ25の締め付けによってシャフト部212に固定された外部材22は、ブレース8の接続作業時に作用する剛体回転しようとする力の抵抗になるので、安定した状態で外部材22の取付片222にブレース8の下端を接続していくことができるようになる。本実施の形態では、さや管部221の4つの側面のすべてに支持ネジ25が装着されているので、より確実に剛体回転を抑えることができる。
4つの取付片222に対して順番に4本のブレース8を固定していく作業が終了した後に、すべての支持ネジ25を緩める。この際、支持ネジ25の先端とシャフト部212とは、完全な離隔状態にありつつ、可能な限り近接する位置関係となるように緩める。
そして、野縁部15の下面側に天井板16を貼り付ける。この際、支持ネジ25による拘束がなければ、天井板16等の重量によって内部材21の位置が下がることになる。すなわち、さや管部221のシャフト部212に対する相対的な位置関係が、上方に移動することになる。
シャフト部212の長さは、天井板16の貼り付けによる移動が生じてもシャフト部212の上端がさや管部221の上端より上方に突出した状態が保たれる長さに形成されている。
このような構成にすることで、地震時に例えば図12に図示した右方向の水平力Qが作用すると、シャフト部212が矢印H1の方向にせん断変位してさや管部221に接触する。この接触によって生じる力に抵抗するために、右側の圧縮力を入力するブレース8と左側の引張力を出力するブレース8とが効き始め、さや管部221は時計回りの回転を始めることになる。要するに、最上段の支持ネジ25がシャフト部212を右方向に、最下段の支持ネジ25がシャフト部212を左方向に押し出すことになる。
また、両者の合力は、矢印H2としてシャフト部212に作用し、耐震補強金具3を反時計回りに回転させるロッキングモーメントMRを誘発する力となる。なお、防振材23の介在がある場合には、これらがせん断変位(矢印H1)によりさや管部221と接触するため、そこから伝わる力も矢印H2で示した反力の成分となる。
これに対して、反力(H2)の作用位置より高い位置となる最上段の支持ネジ25による押し出す力によって、天井板16を野縁部15に固定する留付けビス161の位置との長さLをアームとした時計回りのモーメントが発生する。
このモーメントは、ロッキングモーメントMRを相殺することができ、アームの長さLが長い方が相殺の効率は良くなる。要するに、シャフト部212の長さを長くして、最上段の支持ネジ25の位置を高い位置にすることで、効率的に野縁部15の軸方向に沿ったロッキングモーメントMRを相殺することができるようになる。
ここで、この相殺モーメントは、ロッキングモーメントMRと同程度になるようにアームの長さLを調整することが求められるため、図8に図示したように、さや管部221には多くのネジ孔224が設けられた方が微妙な調整がしやすくなる。
また、さや管部221とシャフト部212との間の力の伝達が防振材23を介してだけ行われる構成では、剛性が低い防振材23の影響を受けて全体の剛性も低くなってしまう。これに対して、さや管部221に取り付けられた支持ネジ25の先端をシャフト部212の側面に接触させて金属同士で力が伝達されるようにすることで、遮音性金具2の剛性を高めることができる。
さらに、さや管部221とシャフト部212の間に防振材23を介在させただけでは、接触と離間に伴って残留変位が生じてしまうが、さや管部221とシャフト部212とを支持ネジ25を介して連続させることで、残留変位の発生を抑えることができるようになる。
次に、本実施の形態の遮音性耐震補強金具及び吊り天井構造1の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の遮音性耐震補強金具は、野縁受け部14とリップ部151を有する野縁部15との交差部17Aにおいて吊り天井構造を補強する。
この遮音性耐震補強金具では、野縁受け部14に固定される第1金具4に野縁部15に固定される第2金具5を跨らせ、2つの金具を一体化手段となる2本のビス材31で接合させる。そして、第2金具5には、野縁部15のリップ部151を挟んで対向させる一対の板部(51,52)のリップ部側板部51から制限リブ部514が張り出されており、この制限リブ部514によってボルト部54の座金部55の回転が制限される。
すなわち、この制限リブ部514がなければ、ボルト部54を締め付ける際に座金部55が共回りしてしまい、座金部55の全面をリップ部側板部51に接触させられない状態になることがある。この両者の接触面積が減ると、その分ボルト部54から導入される締結力が減少するので、リップ部151を圧潰させる力、換言すると第2金具5が野縁部15に固定される力(固定度)が減少するおそれがある。
これに対して座金部55が正確な向きで配置されて座金部55の全面がリップ部側板部51に接触していれば、ボルト部54による締結力が設計通りの所望した大きさで導入されて、リップ部151を設計した範囲で圧潰させることができる。ここで、リップ部側板部51にボルト部54を通すための孔には、雌ねじ溝を設けてボルト部54とリップ部側板部51との接合強度を増加させることもできる。また、単なる挿通孔としても、座金部55が正確な向きで配置されていれば、所望する設計力を導入することができる。
さらに、座金部55の回転を制限させる制限リブ部514が、リップ部側板部51の両方の側縁から張り出されていれば、リップ部側板部51自体の曲げに対する剛性も高めることができる。この結果、高い剛性及び耐震性能の吊り天井構造1にすることができる。
さらに、第2金具5の上面に取り付けられる遮音性金具2は、柱状のシャフト部212の周囲をさや管部221で覆い、シャフト部212とさや管部221との間に防振材23を介在させる構成となっている。また、さや管部221には、ブレース8の端部を接続させるための複数の取付片222が設けられている。
このように野縁受け部14側に固定されたシャフト部212を、防振材23を介してブレース8の下端が接続されたさや管部221で囲繞する構成であれば、ブレース8が天井板16の重量を負担しないので、吊りボルト13の防振ハンガー7などの遮音性能を充分に発揮させることができる。
要するに、地震が発生していない常時においては、野縁受け部14とブレース8との間の振動伝搬が絶縁された状態にすることができる。また、例えば4方向からブレース8が集約している箇所に遮音性金具2を介在させることで、1つの金具で4本のブレース8に遮音機能を付与することができる。
また地震時には、ブレース8からの力が遮音性金具2及び耐震補強金具3を介して交差部17Aに伝わり、天井板16に伝達されることになる。要するに、側面視略V形に配置されたブレース8の下端を耐震補強金具3に接続させるのであれば、耐震補強金具3から真下の野縁部15の軸方向(材軸方向)に力が伝達され、野縁部15と天井板16とを接合させる留付けビス161の位置において天井板16に伝達されることになるので、効果的に軸力を伝達させることができる。
そして、側面視略V形に配置されたブレース8の下端を、遮音性金具2と耐震補強金具3によって構成される遮音性耐震補強金具に取り付ける吊り天井構造1であれば、効率的に耐震性と遮音性を高めることができる。特に、2方向にそれぞれ側面視略V形に配置されたブレース8の下端を、遮音性耐震補強金具に集約して取り付ける耐震補強構造であれば、施工性がよく効率的に構築することができる。
以下、前記した実施の形態の遮音性耐震補強金具とは別の形態について、図14-図20を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
本実施例1の遮音性耐震補強金具は、耐震補強金具3Aと遮音性金具2Aとによって構成される。ここで、耐震補強金具3Aの構成については、大部分が前記実施の形態で説明した耐震補強金具3と同じであるため、相違点についてのみ説明する。
図14に、耐震補強金具3Aの第2金具5Aのリップ部側板部51Aを説明するための斜視図を示した。このリップ部側板部51Aのステージ部53Aには、凹部532Aに隣接した縁部側に上下方向に貫通する平面視長方形の貫通孔516が穿孔される。この貫通孔516は、後述する突起部215を通すための孔で、ステージ部53B側にも設けられる。
一方、遮音性金具2Aは、図15,図16,図18に示すように、耐震補強金具3Aに固定される内部材21Aと、ブレース8の端部が接続される外部材22Aと、内部材21Aと外部材22Aとの間に介在される遮音性機能部となる防振材23とによって主に構成される。
内部材21Aは、図15に示すように、正方形などの平面視長方形の平板部211と、平板部211の中央に上方に向けて突出させる柱状のシャフト部212Aとを備えている。シャフト部212Aは、例えば四角筒状の角形鋼管などによって前記実施の形態で説明したシャフト部212よりも短い長さに形成される。また、シャフト部212Aは、溶接部216によって、平板部211及び上蓋部213と強固に接合される。
一方、平板部211の縁部には、シャフト部212Aを挟んで一対の突起部215,215が設けられる。突起部215は、平板部211の一部を平面視コ字形に切り込んで、下方に向けて垂直に折り曲げることで突出させる(図15(b)参照)。
内部材21Aのシャフト部212A及び防振材23の周囲を囲繞する筒状に形成される外部材22Aは、図16に示すように、四角筒状のさや管部221Aと、ブレース8の下端を取り付けるための複数の取付片222Aとによって主に構成される。
さや管部221Aは、図18,図19に示すように、角形鋼管によってシャフト部212Aよりも短く形成される。すなわちシャフト部212Aは、さや管部221Aよりも長くなるように形成されている。
一方、図16に示すように、外部材22Aのさや管部221Aの隅角部からそれぞれ水平方向に延伸される4つの取付片222Aの側縁には、さや管部221Aの下端面より下方に突出する部分を有する突出片部225が設けられる。すなわち図19に示すように、さや管部221Aにブレース8を取り付ける前の平板部211の上面とさや管部221Aの下端面とを接触させたときに、平板部211より下方に突出片部225の下縁が突出するように設けられている。ここで、取付片222Aの側縁は、図16(b)に示すように、溶接部217によってさや管部221Aの隅角部に強固に接合されている。
このような取付片222Aの構成とすることで、平面視(図17参照)や立面視(図19参照)で時計回りや反時計回りの回転する力が作用した場合でも、突出片部225が平板部211の側端面に接触して回転を阻止することができる。
上述したようにブレース8の接続作業時には、取付片222Aが設けられた外部材22Aには剛体回転しようとする力が作用するが、この複数の突出片部225による平板部211に対する嵌合が抵抗になって、安定した状態でブレース8の下端を接続することができるようになる。一方、この突出片部225は、ブレース8の取り付け後に天井板16を貼り付けた際に耐震補強金具3A側が沈下するのを妨げることはなく、図18に示したように、さや管部221Aと平板部211とが非接触の状態になる。
また、図20に示すように、ステージ部53A,53Bの下方に突出させた突起部215は、側面が第1金具4のリブ44に接触する位置に配置される。このような突起部215とリブ44との位置関係にすることで、一方のブレース8から入力された軸力が他方のブレース8から出力されるような力(図12参照)が作用して、図20(a)に示すような時計回りの回転が遮音性金具2Aに起きたときに、突起部215の側面がリブ44に接触して回転を阻止することができるようになる。要するに、野縁受け部14の軸方向に沿った回転に対して、野縁受け部14に固定された第1金具4のリブ44と突起部215との接触が抵抗となる。
また、地震時に作用する水平力Q(図12参照)によってロッキングモーメントMRを誘発しそうになっても、取付片222Aの突出片部225が早い段階で耐震補強金具3Aのステージ部53A,53Bに接触することで、圧縮側のブレース8(図12の右側のブレース8参照)が直にロッキングを抑え込むことができるようになる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以下、前記した実施の形態及び実施例1の遮音性耐震補強金具とは別の形態について、図21-図23を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
本実施例2の遮音性耐震補強金具は、前記実施の形態と実施例1で説明した2種類の遮音性耐震補強金具のハイブリッド型となる。すなわち、2種類の遮音性金具2,2Aの特徴的な構成を足し合わせた遮音性金具2Bを、実施例2の遮音性耐震補強金具は備えている。
図21は、実施例2の遮音性耐震補強金具の構成を説明するための平面図で、図22は図21のE-E矢視方向で見た断面図で、図23は図21のF-F矢視方向で見た断面図である。
遮音性金具2Bは、耐震補強金具3Aに固定される内部材21Bと、ブレース8の端部が接続される外部材22Bと、内部材21Bと外部材22Bとの間に介在される遮音性機能部となる防振材23とによって主に構成される。
内部材21Bは、正方形などの平面視長方形の平板部211と、平板部211の中央に上方に向けて突出させる柱状のシャフト部212とを備えている。シャフト部212及び防振材23は、前記実施の形態で説明した構成と同様のため詳細な説明は省略する。また、平板部211の縁部には、シャフト部212を挟んで一対の突起部215,215が設けられる。
内部材21Bのシャフト部212及び防振材23の周囲を囲繞する筒状に形成される外部材22Bは、四角筒状のさや管部221と、ブレース8の下端を取り付けるための複数の取付片222Aとによって主に構成される。
すなわち、外部材22Bを構成するさや管部221は前記実施の形態で説明した構成と同様となり、取付片222Aは前記実施例1で説明した構成と同様となる。要するに外部材22Bの取付片222Aの側縁には、さや管部221の下端面より下方に突出する部分を有する突出片部225が設けられる。
このように構成された実施例2の遮音性耐震補強金具であれば、さや管部221に取り付けられた支持ネジ25の先端をシャフト部212の側面に接触させて金属同士で力が伝達されるようにしているので、遮音性金具2Bの剛性を高めることができる。
また、さや管部221の高さ方向の最上段のネジ孔224にねじ込まれた支持ネジ25の先端をシャフト部212の側面に接触させることで、野縁部15の軸方向に沿ったロッキングモーメントMRを相殺できるような抵抗を確保することができる。
また、突起部215の側面を第1金具4のリブ44に接触させることで、遮音性金具2Bの野縁受け部14の軸方向に沿った回転を阻止することができる。さらに、取付片222Aの突出片部225が早い段階で耐震補強金具3Aのステージ部53A,53Bに接触して圧縮側のブレース8が直に効くことで、ロッキングを抑え込むこともできる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態及び実施例では、直方体のシャフト部212,212Aの周囲を四角筒状のさや管部221,221Aで囲繞する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、円柱状や多角柱状のシャフト部の周囲を円筒状や多角筒状のさや管部で囲繞する構成であってもよい。
また、前記実施の形態及び実施例では、V字状に配置されるブレース8を例に説明したが、これに限定されるものではなく、1本の斜め部材となるブレースやX字状に配置されるブレースを接続する構成であってもよい。
さらに、前記実施の形態及び実施例では、さや管部221,221Aの隅角部にブレース8の端部を接続するための取付片222,222Aを設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、さや管部の側面に取付片の側縁を固定することもできる。
また、前記実施の形態及び実施例では、シャフト部212,212Aの外周面とさや管部221,221Aの内周面との間に防振材23を介在させる構成について説明したが、これに限定されるものではなく、シャフト部の外周面とさや管部の内周面との間は単なる空隙であっても良い。