JP7728675B2 - 光触媒材 - Google Patents

光触媒材

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Description

本発明は、可視光による水の光分解が可能な水素発生用光触媒粒子および酸素発生用光触媒粒子を含む光触媒層が基材に固定化されてなる光触媒材に関する。
可視光応答型光触媒は、太陽光に多く含まれる可視光線を利用可能な光触媒である。この可視光応答型光触媒は、有機物の光分解や、水の光分解による水素製造に応用されている。中でも、水素の製造を目的とした水分解用光触媒は、再生可能エネルギーを利用した水素製造方法に用いられる光触媒として注目されている。高い活性を有する水分解用光触媒への要求は益々高まっている。
特開2017-124393号公報(特許文献1)には、基材と、当該基材に固定化されてなる光触媒層とを含んでなる光触媒材であって、前記光触媒層が、水素発生用可視光応答型光触媒粒子と酸素発生用可視光応答型光触媒粒子と導電性粒子とを含む光触媒材が開示されている。この光触媒材によれば、導電性粒子により、水素発生用可視光応答型光触媒粒子と酸素発生用可視光応答型光触媒粒子との接続が可能とされる。また、導電性粒子として、導電性ワイヤーを含む光触媒材も開示されている。導電性ワイヤーは、棒状あるいは針状の形態を持つアスペクト比が大きい粒子である。このような導電性粒子を用いた光触媒材により、高い水素発生能を実現している。その一方で、光触媒材の可視光照射による水の分解能の更なる向上が求められている。
特開2017-124393号公報
本発明者らは、今般、水素発生用可視光応答型光触媒粒子と酸素発生用可視光応答型光触媒粒子とを含む光触媒層に、導電性繊維をさらに含有させることにより、光触媒層全体における電子輸送の効率を飛躍的に高めることができることを見出した。その結果、可視光照射下で非常に高い光触媒活性を発現可能な光触媒材を得ることができるとの知見を得た。すなわち、水を非常に高効率に光分解可能であり、とりわけ水素発生能が著しく向上した光触媒材を得ることができるとの知見を得た。本発明は斯かる知見に基づくものである。
したがって、本発明は、可視光照射下で非常に高い水素発生能を有する光触媒材の提供をその目的としている。
本発明による光触媒材は、基材と、当該基材に固定化されてなる光触媒層とを含んでなる光触媒材であって、前記光触媒層が、水素発生用可視光応答型の第1の光触媒粒子と、酸素発生用可視光応答型の第2の光触媒粒子と、前記第1の光触媒粒子と前記第2の光触媒粒子との間に設けられ、前記第1の光触媒粒子の価電子帯上端の電子エネルギー準位よりも負な位置であり、前記第2の光触媒粒子の伝導帯下端の電子エネルギー準位よりも正な位置にフェルミ準位を有する、電子および正孔を貯蔵可能な導電性繊維と、を含んでなり、前記導電性繊維が、前記第1の光触媒粒子と前記第2の光触媒粒子とを接続していることを特徴とするものである。
本発明による光触媒材によれば、可視光照射下で高い光触媒活性を発現し、水を高効率に光分解可能である。したがって、水素発生能が高められた光触媒材を得ることができる。
本発明による光触媒材を示す模式断面図である。 本発明に係る第1の光触媒粒子10、第2の光触媒粒子20および導電性繊維30の電子エネルギー順位の相関を示しつつ、光触媒材による水の光分解のメカニズムを説明するための模式断面図である。 本発明による光触媒材を示す模式断面図である。 本発明による光触媒材を示す模式断面図である。 本発明による光触媒材を示す模式断面図である。 本発明による光触媒材2の光触媒層の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察画像である。
定義
本明細書において、「可視光」とは、人間の目で視認可能な波長の電磁波(光)を意味する。好ましくは、波長380nm以上の可視光線を含む光、より好ましくは、波長420nm以上の可視光線を含む光を意味する。また、可視光線を含む光としては、太陽光、集光してエネルギー密度を高めた集光太陽光、あるいはキセノンランプ、ハロゲンランプ、ナトリウムランプ、蛍光灯、発光ダイオード等の人工光源を光源として用いることが可能である。好ましくは、地球上に無尽蔵に降り注いでいる太陽光を光源として用いる。これにより、太陽光線の約52%を占める可視光線を利用可能であり、水から水素及び酸素を効率的に取り出すことが可能となる。
本明細書において、「水素発生用可視光応答型光触媒粒子」とは、可視光による水の光分解反応により水素を発生可能な光触媒粒子を意味する。「酸素発生用可視光応答型光触媒粒子」とは、可視光による水の光分解反応により酸素を発生可能な光触媒粒子を意味する。
本明細書において、光触媒粒子同士が「接続する(couple)」とは、該粒子間において正孔および/または電子が移動可能なように複数の粒子が配置される状態を少なくとも意味する。例えば、粒子同士は物理的に接触して(contact)いないが正孔および/または電子が移動可能なよう配置される態様も含む。一方、光触媒粒子同士が「接触する(contact)」とは、粒子の一部同士が接して(contact)配置される状態を意味する。光触媒粒子同士が「接触する(contact)」態様には、粒子の一部同士が接する(contact)ことにより、該粒子間において正孔および/または電子が移動可能となっている状態、つまり粒子同士が電気的に接続している状態が含まれる。また、光触媒粒子同士が「接合する(bind)」とは、粒子同士が、「接触する(contact)」場合よりも強固に接して(contact)配置される状態を意味する。「接合する」とは、例えば、化学的に結合された状態を含む。
また、本明細書において、光触媒粒子と導電性繊維とが「接触する(contact)」とは、これらの一部同士が接して(contact)配置される状態を意味する。光触媒粒子と導電性繊維とが「接触する(contact)」態様には、これらの一部同士が接する(contact)ことにより、これらの間において正孔および/または電子が移動可能となっている状態、つまり両者が電気的に接続している状態が含まれる。また、光触媒粒子と導電性繊維とが「接合する(bind)」とは、これら同士が、「接触する(contact)」場合よりも強固に接して(contact)配置される状態を意味する。
光触媒材
本発明による光触媒材の全体構成について図1を参照しつつ説明する。
光触媒材100は、基材90と、基材90に固定化されてなる光触媒層70とを含む。光触媒層70は、水素発生用可視光応答型の第1の光触媒粒子10(以下、単に「第1の光触媒粒子」ともいう)と、酸素発生用可視光応答型の第2の光触媒粒子20(以下、単に「第2の光触媒粒子」ともいう)と、導電性繊維30とを含む。光触媒層70において、導電性繊維30は、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20とを接続している。本発明による光触媒材100は、上述したような構成を有することにより、可視光照射下で高い光触媒活性を発現することができる。したがって、高い効率で水を光分解することが可能となり、非常に高い水素発生能を有する。
基材
本発明による光触媒材に含まれる基材90は、その表面に光触媒層70を固定化し得るものであればよい。このような基材90の具体例としては、有機基材や、無機基材が挙げられる。有機基材には、例えば、プラスチック基材が挙げられる。また有機基材としては、例えば、50℃以上の加熱によって軟化しにくい基材を用いることが好ましい。70℃以上の加熱によって軟化しにくい基材を用いることがさらに好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂等を用いることが好ましい。樹脂基材を用いる場合、その厚みは特に制限されないが、取り扱い易さの観点から、厚みが薄いものが好ましい。具体的には、樹脂基材の厚みは10mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。さらに、樹脂基材として、より薄板状のもの、具体的には、厚みが1mm以下の薄板状のものを用いることが可能である。例えば、フィルム状、シート状の樹脂基材が挙げられる。無機基材には、例えば、アルミナ基板などのセラミックス基材、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラスなどのガラス基材、石英基材が挙げられる。また無機基材としては、例えば、250℃以上の加熱によって分解されにくい基材を用いることが好ましい。300℃以上の加熱によって分解されにくい基材を用いることがさらに好ましい。光透過性を有する基材を用いてもよい。
また、基材90として金属基材を用いてもよい。金属の具体例としては、チタン、アルミニウム、鉄、ステンレス等が挙げられる。実用上、金属よりも上記有機物あるいは無機物が好ましい。
なお、本発明による光触媒材において、基材90として、絶縁性基材を用いることができる。
基材90は、その表面に乾燥または焼成によって光触媒層70が固定化され得る形状を有するものであればよい。このような基材90の具体例としては、平滑表面を有する平板体(例えばガラス基板、アルミナ基板等)、あるいは表面多孔性の平板体(例えば陽極酸化アルミナ)、多孔体(例えばポーラスセラミックス)、繊維体(例えばガラスファイバー、炭素繊維)、中空体等を好ましく用いることができる。繊維体としては、より好ましくは、光透過性の高いガラスファイバーを用いることができる。これにより、繊維体の光照射面よりも層内部への光透過が可能となり、光吸収量の増大が期待できる。また、基材90の表面形状は、波打った形状、くし型の形状、繊維状、メッシュ状であってもよい。
基材90は、複数の空孔を有していてもよい。それぞれの空孔の径は、例えば、0.1~30μmであることが好ましい。例えば、これらの空孔は連続気孔として配置されることが好ましい。これにより、例えば、光触媒層70の内部に配置される光触媒粒子(10、20)の表面で水分解反応により生成した水素ガスが、光触媒層70内部の細孔71(後述)を拡散した後、例えば、この細孔71より大きい開口部をもつこれら空孔を通して光触媒層70の外部に到達することが可能となり、より効率的な水素ガスの発生が可能となる。
光触媒層
図1に示すように、光触媒材100において、導電性繊維30は、その表面の任意の部位で、第1の光触媒粒子10および第2の光触媒粒子20の双方と線接触または面接触している。光触媒層70において、導電性繊維30の表面は、第1領域30aと、第2領域30bと、第3領域30cと、を有する。第1領域30aにおいて、導電性繊維30と第1の光触媒粒子10とが接触している。第2領域30bにおいて、導電性繊維30と第2の光触媒粒子20とが接触している。第3領域30cは、導電性繊維30の表面において、第1領域30a及び第2領域30b以外の領域である。すなわち、第3領域30cにおいて、導電性繊維30は、第1の光触媒粒子10及び第2の光触媒粒子20のいずれとも接触しない。
光触媒層70において、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20とが、導電性繊維30を介して接続されているため、第1の光触媒粒子10の価電子帯VB10で生成する励起正孔と、第2の光触媒粒子20の伝導帯CB20で生成する励起電子との導電性繊維30を介した電気的接続の程度がより強くなる。そのため、光触媒材100においては、導電性繊維30における光励起正孔と光励起電子との間の後述する電荷再結合反応がより確実に起こる。その結果、光触媒層70の光触媒活性をより確実に高めることができ、光触媒層70の水素発生能がより確実に向上する。なお、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20とは、単一の導電性繊維30により接続されていてもよく、複数の導電性繊維30により接続されていてもよい。例えば、複数の導電性繊維30が寄り集まることにより単一の導電性繊維30よりも長くなり、離れた第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20とが接続されることが可能となる。
本発明において、光触媒層70は、緻密な連続層であってもよい。光触媒層70は、例えば、不連続な部分を有していてもよい。例えば、光触媒層70は基材90の表面に島状に離散して存在していてもよい。光触媒層70は、波状、くし型状、ファイバー状、メッシュ状などの状態であってもよい。
光触媒層70は、例えば、水、水素及び酸素ガスが拡散可能な細孔71を有する。細孔71は、例えば、第1の光触媒粒子10、第2の光触媒粒子20、及び導電性繊維30の間に配置される。この細孔71を介することにより、光触媒層70の表面だけでなく、その内部に位置する光触媒粒子も、水及び光と接触することが可能となる。
本発明において、光触媒層70の厚みは、0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。より好ましい光触媒層70の厚みは0.2μm以上30μm以下である。
ここで、光触媒層70の厚みは、例えば、光触媒材断面の走査型電子顕微鏡観察により求めることができる。詳細には、例えば、基材90の表面のある点における水平方向の接線から、この接線に対する垂線における光触媒層70の最上部までの距離である。例えば、基材90が図1などに示されるような平板の場合、光触媒層70の厚みは基材90の表面から鉛直方向に光触媒層70の最上部までの距離である。また、基材90の表面がファイバーのようなものである場合、光触媒層70の厚みはファイバーの表面のある点における水平方向の接線から、この接線に対する垂線における光触媒層70の最上部までの距離である。
水素発生用可視光応答型光触媒粒子(第1の光触媒粒子)
第1の光触媒粒子10は、光学的バンドギャップを有する半導体粒子である。第1の光触媒粒子10が可視光を吸収することで、第1の光触媒粒子10におけるバンド間遷移等の電子遷移により、伝導帯あるいはバンドギャップ内に存在する電子アクセプター準位に励起電子を生じ、かつ価電子帯あるいはバンドギャップ内に存在する電子ドナー準位に励起正孔を生じる。第1の光触媒粒子10とは、この励起電子および励起正孔のそれぞれが反応対象物を還元および酸化することが可能な光触媒材料である。つまり、第1の光触媒粒子10は、例えば、可視光線を照射することで生成する励起電子が、水を還元して水素を生成可能な光触媒材料である。第1の光触媒粒子10の伝導帯あるいはバンドギャップ内に存在する電子アクセプター準位は、例えば、水の還元電位(0V vs.NHE(標準水素電極電位)at pH=0)よりも負な位置にある。また、第1の光触媒粒子10の価電子帯あるいはバンドギャップ内に存在する電子ドナー準位は、例えば、第2の光触媒粒子の伝導帯位置よりも正な位置にある。
第1の光触媒粒子10の好ましい例としては、RhドープSrTiO(SrTi1-xRh:x=0.002~0.1)、IrドープSrTiO(SrTi1-xIrO3:x=0.002~0.1)、CrドープSrTiO(SrTi1-xCr:x=0.002~0.1)、Cr及びTaドープSrTiO(SrTi1-x―yCrTa:x=0.002~0.1、y=0.002~0.1)、La及びRhドープSrTiO(Sr1-xLaTi1―yRh:x=0.005~0.2、y=0.005~0.2)等の遷移金属あるいは貴金属の少なくとも1種類がドープされたペロブスカイト型SrTiO、CuO、CuO、CaFe、NiO、Bi、BiOX(X=Cl,Br,I)、GaN-ZnO固溶体、LaTiON、BaTaON、BaNbON、TaON、Ta、Ge等の遷移金属あるいは典型金属を含有する酸窒化物あるいは窒化物、CuGaS、CuInS、Cu(Ga,In)S、CuGaSe、CuInSe、Cu(Ga,In)Se、CuZnSnS(CZTS)、CuZnSn(S,Se)等のGa、In、Al等の典型金属を含む銅複合硫セレン化物、LaTiCuS、LaTiAgS、LaTiCuSe、LaTiAgSe等の酸硫セレン化物からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
第1の光触媒粒子10のより好ましい例としては、RhドープSrTiO(SrTi1-xRhO3:x=0.005~0.05)、IrドープSrTiO(SrTi1-xIrO3:x=0.005~0.05)、CrドープSrTiO(SrTi1-xCr:x=0.002~0.1)、Cr及びTaドープSrTiO(SrTi1-x―yCrTa:x=0.002~0.1、y=0.002~0.1)、La及びRhドープSrTiO(Sr1-xLaTi1―yRh:x=0.005~0.2、y=0.005~0.2)等の遷移金属あるいは貴金属の少なくとも1種類がドープされたペロブスカイト型SrTiO、CuO、CuO、CaFe、NiO、Bi、BiOX(X=Cl,Br,I)、GaN-ZnO固溶体、LaTiON、BaTaON、BaNbON、TaON、Ta、Ge、CuGaS、CuInS、Cu(Ga,In)S、CuGaSe、CuInSe、Cu(Ga,In)Se、CuZnSnS(CZTS)、CuZnSn(S,Se)4、LaTiCuSおよびその金属ドープ化合物、LaTiAgSおよびその金属ドープ化合物等の酸硫化物からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
第1の光触媒粒子10の最も好ましい例としては、RhドープSrTiO(SrTi1-xRh:x=0.01~0.04)、CrドープSrTiO(SrTi1-xCr:x=0.002~0.1)、Cr及びTaドープSrTiO(SrTi1-x―yCrTa:x=0.002~0.1、y=0.002~0.1)、La及びRhドープSrTiO(Sr1-xLaTi1―yRh:x=0.005~0.2、y=0.005~0.2)等の遷移金属あるいは貴金属の少なくとも1種類がドープされたペロブスカイト型SrTiO、TaON、Ta、からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
第1の光触媒粒子の平均一次粒子径
第1の光触媒粒子10の平均一次粒子径は1000nm以下であることが好ましい。このような小さな粒径を有することで、第1の光触媒粒子10において、水と接触可能な単位重量当たりの表面積が大きくなる。これにより、水の還元反応サイトが増加し、その結果、高効率な水素発生が可能となる。より好ましくは、第1の光触媒粒子10の平均一次粒子径は、30nm以上である。
酸素発生用可視光応答型光触媒粒子(第2の光触媒粒子)
第2の光触媒粒子20は、光学的バンドギャップを有する半導体粒子である。第2の光触媒粒子20が可視光を吸収することで、第2の光触媒粒子20におけるバンド間遷移等の電子遷移により、伝導帯に励起電子を生じ、かつ価電子帯に励起正孔が生じる。第2の光触媒粒子20とは、この励起電子および励起正孔のそれぞれが反応対象物を還元および酸化することが可能な光触媒材料である。つまり、第2の光触媒粒子20は、例えば、可視光線を照射することで生成する励起正孔が、水を酸化して酸素を生成可能な光触媒材料である。第2の光触媒粒子20の価電子帯は、例えば、水の酸化電位(+1.23V vs.NHE(標準水素電極電位)at pH=0)よりも正な位置にある。また、第2の光触媒粒子20の伝導帯は、例えば第1の光触媒粒子の価電子帯位置よりも負な位置にある。
第2の光触媒粒子20の好ましい例としては、BiVO、XドープBiVO(X:Mo,W)、SnNb、WO、BiWO、FeTiO、Fe、BiMoO、GaN-ZnO固溶体、LaTiON、BaTaON、BaNbON、TaON、Ta、Ge等の遷移金属あるいは典型金属を含有する酸窒化物あるいは窒化物からなる群から選択される一種以上が挙げられる。
第2の光触媒粒子20のより好ましい例としては、BiVO、XドープBiVO(X:Mo,W)、SnNb、WO、BiWO、BiMoO、Fe、GaN-ZnO固溶体、LaTiON、BaTaON、BaNbON、TaON、Ta、Geからなる群から選択される一種以上が挙げられる。
第2の光触媒粒子20の最も好ましい例としては、BiVO、MoドープBiVO、WO、SnNb、BiWO、BaTaON、Feからなる群から選択される一種以上が挙げられる。
第2の光触媒粒子の平均一次粒子径
第2の光触媒粒子20の平均一次粒子径は、好ましくは1000nm以下である。このような小さな粒径を有することで、第2の光触媒粒子20において、水と接触可能な単位重量当たりの表面積が大きくなる。これにより、水の酸化反応サイトが増加し、その結果、高効率な酸素発生が可能となる。より好ましくは、第2の光触媒粒子20の平均一次粒子径は、30nm以上である。
第1および第2の光触媒粒子の平均一次粒子径の評価手法
第1の光触媒粒子10および第2の光触媒粒子20の平均一次粒子径の評価手法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテク製、SU-8220、以下「SEM」ともいう。)により、倍率40000倍で観察した際の無作為に抽出した結晶粒子50個の円形近似による平均値で定義することが可能である。
導電性繊維
本発明において、導電性繊維とは、導電性を有する繊維状の物質を意味する。
「繊維状」の物質とは、細く、適度な長さを有する物質(例えば、細い糸状の物質)であり、且つ、適度な柔軟性を有する物質を意味する。「繊維状」の物質とは、好ましくは適度な凝集性を有する物質を意味する。また「繊維状」とは、剛直ではないことを意味する。「柔軟性」とは、しなやかさ、或いは柔らかさを意味する。導電性繊維は、光触媒粒子と線接触または面接触が可能な程度に長いことが好ましい。また、1本の導電性繊維に複数の光触媒粒子が線接触または面接触が可能な程度に長いことがさらに好ましい。導電性繊維は、光触媒粒子の表面形状に沿って接触することが可能なしなやかさを有することが好ましい。導電性繊維の「しなやかさ」を示す指標として、例えば後述する曲率半径が挙げられる。
本発明にあっては、導電性繊維を用いることで、導電性繊維と個々の光触媒粒子との接触(または接合)確率および接触面積を増大させることができるとともに、導電性繊維は光触媒層全体にわたって網目状構造のネットワークを構築することができる。網目状構造のネットワークは、光触媒層全体にわたって水素発生用可視光応答型光触媒粒子と酸素発生用可視光応答型光触媒粒子との接触確率を増大させることができる。これにより、光触媒層全体における電子輸送の効率を飛躍的に高めることができると考えられる。その結果、可視光照射下で非常に高い光触媒活性を発現可能な、すなわち水を非常に高効率に光分解可能であり、とりわけ水素発生能が著しく向上した光触媒材を得ることができる。
導電性繊維は、細長く、柔軟性を有するため、例えば図1に示すように、光触媒層70内において湾曲することができる。これにより、導電性繊維は光触媒粒子(10、20)の表面に線接触する又はまとわりつく又は絡みつくことができる。その結果、導電性繊維30を光触媒粒子(10、20)の表面に高い確率で接触させることができるとともに、導電性繊維30と光触媒粒子(10、20)との接触面積を増大させることができる。
導電性繊維30が細長く、しなやかさを有するため、光触媒層70内に離れて存在する第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子とを接続することが可能となる。その結果、導電性繊維30は、近くに存在する第1の光触媒粒子10および第2の光触媒粒子だけでなく、離れて存在する第1の光触媒粒子10および第2の光触媒粒子も接続することが可能となる。これにより、光触媒層70全体にわたる第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子との接続が可能となる。
また、導電性繊維30は、凝集性を有するため、複数の導電性繊維30が寄り集まることができる。また、導電性繊維30は湾曲しながらより密に寄り集まることができる。したがって、複数の導電性繊維30は、寄り集まることにより、凝集体31を形成することができる。導電性繊維30は寄り集まることができるため、網目(またはネット)状構造を形成することができる。このような導電性繊維30の凝集体31は、光触媒粒子(10、20)表面だけでなく、光触媒粒子(10、20)が存在しない領域にも形成される。これにより、導電性繊維30の光触媒粒子(10、20)表面への接触確率をさらに増大させることができ、また導電性繊維30は光触媒粒子(10、20)の表面に面接触することもできる。その結果、導電性繊維30と光触媒粒子(10、20)との接触確率および接触面積を一層増大させることができる。
複数の導電性繊維30は相互に接続し、さらに多数の第1の光触媒粒子10と多数の第2の光触媒粒子20とが接続されたネットワークを形成することができる。これにより、光触媒層70の広範囲にわたって第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子間における非常に効率的な正孔および/または電子の移動を可能とする。その結果、本発明による光触媒材は、可視光照射下で非常に高い光触媒活性を発現可能であり、すなわち水を非常に高効率に光分解可能であり、水素発生能を著しく向上させることができる。
なお、導電性繊維30により光触媒粒子(10、20)の表面全体が覆われると、光触媒粒子(10、20)が水と接触できなくなるため、導電性繊維30により光触媒粒子(10、20)の表面全体が覆われる態様が本発明の範囲に属さないことは言うまでもない。
(材料)
導電性繊維30の好ましい材料の例として、カーボンナノファイバーが挙げられる。より好ましい材料は、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)である。CNTとして、単層CNT、多層CNTを用いることができる。
CNTは導電性が高いため、光触媒粒子(10、20)による高効率での水素生成が可能となる。
また、CNTは不安定な物質である。CNT同士は分子間力により、凝集し易い。凝集する(例えば、編み込まれる、寄り集まる)ことにより、凝集の程度に応じて、CNTと光触媒粒子(10、20)との接触確率および接触面積が増大する。その結果、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子との間における非常に効率的な正孔および/または電子の移動が可能となる。また、凝集したCNTは、その近くに存在する光触媒粒子(10、20)と吸着することができる。CNTと光触媒粒子(10、20)が吸着すると、両者が接続されるとともに、CNTが安定化されるとの利点がある。
(長軸の長さ)
本発明において、導電性繊維30の長軸の長さ(長軸長)は、300nm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。長軸の長さがこの範囲内であることにより、導電性繊維30の近くに存在する光触媒粒子(10、20)だけでなく、遠くに離れた光触媒粒子(10、20)とも接続することができる。したがって、導電性繊維30の光触媒粒子(10、20)に対する接続可能性を高めることができ、光触媒粒子(10、20)による高効率での水素生成が可能となる。導電性繊維30の長軸長は、例えば、走査型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテク製、SU-8220)を用いて光触媒材100を観察することにより求めることができる。本発明における導電性繊維30の長軸長は、光触媒材100の断面を走査型電子顕微鏡により10000倍の倍率で観察した際のランダムに選んだ30本の各導電性繊維30の長軸長を求め、これらの平均値を用いることができる。
(短軸の直径)
本発明において、導電性繊維30の短軸の直径(短軸径)は、3nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。短軸の直径がこの範囲内であることにより、上記した導電性繊維30の好ましい長軸の長さとの関係において、導電性繊維30を所望の細長い形状とすることができる。直径が50nm以下であることにより、導電性繊維30は、しなやかとなり、光触媒粒子(10、20)にまとわりつき易く(あるいは絡みつき易く)なるため、光触媒粒子(10、20)による高効率での水素生成が可能となる。導電性繊維30の短軸径は、例えば、走査型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテク製、SU-8220)を用いて光触媒材100を観察することにより求めることができる。本発明における導電性繊維30の短軸径は、光触媒材100の断面を走査型電子顕微鏡により20万倍の倍率で観察した際のランダムに選んだ30本の各導電性繊維30の短軸径を求め、これらの平均値を用いることができる。
(導電率・体積抵抗率)
導電性繊維30の導電率は、0.1Scm-1以上であることが好ましい。導電性繊維30の体積抵抗率は、例えば、10Ωcm以下であることが好ましい。
(曲率半径)
導電性繊維30の曲率半径は、5nm以上1000nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、10nm以上500nm以下、さらにより好ましくは、15nm以上300nm以下である。これにより、導電性繊維30は、光触媒粒子(10,20)にまとわりつき易く(あるいは絡みつき易く)なるため、光触媒粒子(10、20)による高効率での水素生成が可能となる。本発明において、曲率半径は例えば下記の方法により求めることができる。光触媒材100の断面をSEMにより倍率45000倍で観察する。観察面において、観察される導電性繊維30のうち、光触媒粒子の表面と接触し、かつ曲線部分を有する10個の導電性繊維30を選択する。なお、ここで曲線部分を有さないもの、つまり粒子状や直線状の本発明における導電性繊維でないものは、曲率半径の測定不可と判断する。これらの導電性繊維30において、曲線部分のうち、最も曲がった(湾曲した)部分を特定する。この特定した部分に合う円の半径を得、これを各導電性繊維の曲率半径とする。10個の導電性繊維の曲率半径の平均値を本発明における導電性繊維30の曲率半径とする。
(含有量)
本発明において、光触媒材100は、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20との間における所望の電気的接続を満たす程度の量の導電性繊維30を含むことが好ましい。また、光触媒材100は、第1の光触媒粒子10及び第2の光触媒粒子20の光吸収を妨げない程度の量の導電性繊維30を含むことが好ましい。つまり、その含有量は、光触媒粒子による高効率での水分解が可能となる程度において、第1の光触媒粒子10、第2光触媒粒子20及び導電性繊維30の合計含有量に対して、導電性繊維30を、0.1wt%以上10wt%以下含むことが好ましく、さらに好ましくは0.3wt%以上5wt%以下含む。光触媒材100に含まれる導電性繊維30の含有量は、光触媒層70をX線光電子分光法(XPS)にて測定することで求めることができる。例えば、導電性繊維30がCNTの場合は、光触媒層70をX線光電子分光法(XPS)にて測定し、炭素―炭素二重結合の量から求めることができる。
(フェルミ準位)
導電性繊維30は、第1の光触媒粒子10の価電子帯VB10上端の電子エネルギー準位よりも負な位置であり、第2の光触媒粒子20の伝導帯CB20下端の電子エネルギー準位よりも正な位置にフェルミ準位を有する。このため、導電性繊維30は、第1の光触媒粒子10の価電子帯VB10で生成する励起正孔と、第2の光触媒粒子20の伝導帯CB20で生成する励起電子とを貯蔵可能であり、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20との間で正孔および/または電子の移動を可能とする。導電性繊維30が、このような特定のフェルミ準位を有することにより、後述するメカニズムによって光触媒材100による水の光分解を顕著に向上させることができる。なお、導電性繊維のフェルミ準位に関しては、電子エネルギー準位の換わりに電位を基準として用い表現することもでき、この場合、導電性繊維30は、第1の光触媒粒子10の価電子帯VB10上端よりも負な電位であり、第2の光触媒粒子20の伝導帯CB20下端よりも正な電位にフェルミ準位を有する。
(水の光分解のメカニズム)
光触媒材100による水の光分解のメカニズムについて、図2を参照しつつ説明する。
図2に示すように、可視光線を照射することにより、第1の光触媒粒子10の価電子帯VB10で生成する励起正孔は、第1の光触媒粒子10の表面に拡散し、価電子帯VB10上端の電子エネルギー準位より負な位置にフェルミ準位を有する導電性繊維30内に移動すると考えられる。また、可視光線を照射することにより、第2の光触媒粒子20の伝導帯CB20で生成する励起電子は、第2の光触媒粒子20の表面に拡散し、伝導帯CB20下端の電子エネルギー準位より正な位置にフェルミ準位を有する導電性繊維30内に移動すると考えられる。そして、導電性繊維30内に貯蔵される第1の光触媒粒子10の価電子帯VB10で生成した光励起正孔と、第2の光触媒粒子20の伝導帯CB20で生成した光励起電子とが反応して、電荷再結合反応が起こり、これら2つの励起キャリアは消滅すると考えられる。この電荷再結合反応により、従来水の光分解反応に関与することがなく、むしろ水の光分解反応における個々の粒子の光触媒活性を低下させる傾向にあった光励起正孔および光励起電子を高効率で消滅させることが可能となり、これにより水の光分解反応が効率的に起こることを可能にすると考えられる。つまり、電荷再結合反応による第1の光触媒粒子10内で生成した光励起正孔および第2の光触媒粒子20内で生成した光励起電子の消滅は、第1の光触媒粒子10の伝導帯CB10で生成した光励起電子による水の還元反応の効率を高めることを可能にすると考えられる。その結果、導電性繊維30により電気性に接続された第1の光触媒粒子10および第2の光触媒粒子20は高い光触媒活性を発現することが可能となり、水素発生能の向上が実現されると考えられる。なお、図2において、fは導電性繊維30のフェルミ準位を仮想的に表す。また、以上の説明は仮説であり、本発明はこれにより限定的に理解されるものではない。
(仕事関数)
本発明において、導電性繊維30のフェルミ準位は、真空準位とフェルミ準位とのエネルギー差である仕事関数を用いて見積もることができる。仕事関数は、例えばケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)を用いた電位測定により求めることができる。
図3および図4に、本発明におけるさらに好ましい態様の光触媒材の模式断面図を示す。これらの図において、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20は導電性繊維30により接続されている。第1の光触媒粒子10の表面に助触媒40が担持されている。この助触媒40の表面に助触媒シェル層50が形成されている。第2の光触媒粒子20の表面に助触媒40が担持されている。この助触媒40の表面に助触媒シェル層50が形成されている。導電性繊維30は第1の光触媒粒子10と接触する第1領域30aを有する。導電性繊維30は第2の光触媒粒子20と接触する第2領域30bを有する。導電性繊維30は、いずれの光触媒粒子(10、20)とも接触していない第3領域30cを有する。親水性被覆部60は、導電性繊維30の表面、光触媒粒子(10、20)の表面、助触媒シェル層50の表面を覆っている。
親水性被覆部
本発明において、光触媒材100の光触媒層70は、導電性繊維30の第3領域30cの少なくとも一部を覆う親水性被覆部60をさらに含むことが好ましい。導電性繊維30の第3領域30cの少なくとも一部に親水性被覆部を設けることにより、例えば、後述する逆反応を防止したり、第3領域30cに付着した水素ガスおよび酸素ガスの離脱を促進したりすることができる。その結果、水素生成の効率の低下を抑制することができる。
本発明において、上述したとおり、導電性繊維30としてCNTを用いることが好ましい。ところが、CNTの表面は疎水性であるため、水を光分解して生成された、同じく疎水性の水素ガスおよび酸素ガスの気泡がCNTの表面に留まり或いは吸着してしまうおそれがある。CNT表面への気泡の吸着は、気泡の効率的な回収の妨げとなる。したがって、疎水性であるCNTの表面に親水性被覆部を設けることにより、CNTの表面への気泡の吸着を抑制することができ、もって光触媒層外への気泡の離脱を促進することができる。その結果、気泡を効率的に回収することが可能となる。
また、発生した水素ガスおよび酸素ガスは、CNTを触媒として(すなわち、CNTに貯蔵される電子および正孔を利用して)反応し、水を生成する逆反応を生じるおそれがある。逆反応により、水素生成の効率は低下する。したがって、疎水性であるCNTの表面に親水性被覆部を設けることにより、光触媒層内で発生した水素ガスおよび酸素ガスをCNTの表面へ拡散させることができ、CNTの表面で逆反応が生じるのを防ぐことができる。
親水性被覆部60は、導電性繊維30の第3領域30cのほぼすべてを覆っていることが好ましく、すべてを覆っていることがより好ましい。
本発明において、親水性被覆部60は、第1の光触媒粒子10の外表面および第2の光触媒粒子20の外表面を覆っていることが好ましい。第1の光触媒粒子10の外表面とは、第1の光触媒粒子10の表面のうち、導電性繊維30及び第2の光触媒粒子20など、光触媒層70に含まれる粒子と物理的に接触している部分以外の表面である。また、第2の光触媒粒子20の外表面とは、第2の光触媒粒子20の表面のうち、導電性繊維30及び第1の光触媒粒子10など、光触媒層70に含まれる粒子と物理的に接触している部分以外の表面である。本発明において、親水性被覆部60は、助触媒40の表面および/または助触媒シェル層50の表面を覆っていることが好ましい。これにより、助触媒40の表面にプロトンと水分子とを拡散させることが可能となる。また、助触媒40の表面で生成した水素ガスまたは酸素ガスが親水性被覆部60から離脱した後に再度助触媒表面に拡散することを抑制できる。親水性被覆部60は、光触媒粒子(10、20)の可視光の吸収が阻害されない範囲において、光触媒層を覆っていることがより好ましく、光触媒層の表面全体を覆っていることがさらにより好ましい。ただし、光触媒層に形成されている細孔が埋まると水やガスの拡散が困難になるため、細孔が埋まらない程度に親水性被覆部60が形成されていることが好ましい。また、親水性被覆部60は、層として形成されることが好ましい。
親水性被覆部60を形成する材料は、水分解により発生する水素及び酸素ガスの吸着および逆反応を抑制可能なものであればよい。親水性被覆部60は金属元素を含む酸化物、水酸化物、リン酸塩から選択される1種以上を含むことが好ましい。金属元素としては、例えば、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、マグネシウム(Mg)が挙げられる。酸化物としては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ZrO、TiO等の材料が好ましく用いられる。材料は、非晶質であることが好ましい。非晶質酸化物および水酸化物の混合物がより好ましい。なお、本発明において、材料がチタンの非晶質酸化物および水酸化物の混合物の場合はTiOと表記し、ジルコニアの非晶質酸化物および水酸化物の混合物の場合はZrOと表記する。親水性被覆部の厚みは、1nm以上50nm以下が好ましく、より好ましくは、2nm以上20nm以下である。
本発明において、親水性被覆部60は金属元素を含んでおり、光触媒層の単位面積(cm)あたりに含まれる金属元素の金属換算濃度が0.1μmol/cm以上20μmol/cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは2μmol/cm以上10μmol/cm以下である。これにより、水分解により発生した水素および酸素ガスの導電性繊維表面への吸着、導電性繊維表面での逆反応の発生をより効果的に抑制することができる。これにより、水素生成の効率の低下を効果的に抑制することができる。また、光触媒層に含まれる導電性繊維の量が少ない場合であっても、親水性被覆部に含まれる金属元素の金属換算濃度が上記範囲内にあることで、高い水素生成能が得られることを本発明者らは実験により確認している。本発明において、親水性被覆部に含まれる金属元素の金属換算濃度は、下記の方法により求められる。まず、SEM-EDXを用い、光触媒材100において親水性被覆部が形成されていることを確認する。次に、この光触媒層を誘導プラズマ発光質量分析測定(ICP-MS)による元素分析により親水性被覆部に含まれる金属元素の金属換算濃度を求める。その後、金属元素の濃度と光触媒層の面積から、光触媒層の単位面積あたりに含まれる金属元素の金属換算濃度を求めることができる。なお、ICP-MSによる元素分析の際、光触媒層を酸エッチングし、溶かした溶液をICP-MSによる元素分析を行うことにより親水性被覆部に含まれる金属元素の金属換算濃度を求めることもできる。
光触媒粒子の助触媒
本発明において、第1の光触媒粒子10および第2の光触媒粒子20を用いて水を光分解する場合、これら光触媒粒子の表面に助触媒を担持させることができる。これにより、水の還元および酸化反応が促進され、水素および酸素の生成効率が向上する。助触媒は、例えば第1の光触媒粒子10の外表面(第1の光触媒粒子10の表面のうち、導電性繊維30及び第2の光触媒粒子20など、光触媒層70に含まれる粒子と物理的に接触している部分以外の部分)、及び/または第2の光触媒粒子20の外表面(第2の光触媒粒子20の表面のうち、導電性繊維30及び第1の光触媒粒子10など、光触媒層70に含まれる粒子と物理的に接触している部分以外の部分)の一部に設けられる。
第1の光触媒粒子10の助触媒としては、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、クロム等の金属粒子からなる群から選択される1種以上、あるいは、酸化ルテニウム、酸化ニッケル等の酸化物粒子からなる群から選択される1種以上、あるいは、これらの金属粒子あるいは酸化物粒子を混合させたもの、あるいは、ロジウム及びクロムを含む複合水酸化物もしくは複合酸化物を好ましく用いることがでる。より好ましくは、白金、ルテニウムの金属粒子、これらの酸化物粒子、あるいはロジウム及びクロムを含む複合水酸化物もしくは複合酸化物を用いることができる。この助触媒を、粒子形状で第1の光触媒粒子10の表面に担持させることにより、水の還元反応における活性化エネルギーを減少させることが可能となるため、速やかな水素の発生が可能となる。
第2の光触媒粒子20の助触媒としては、Mn、Fe、Co、Ir、Ru、Ni、Cr等の金属からなる群から選択される1種以上、あるいは、これらの金属を混合させた金属酸化物、金属水酸化物もしくは金属リン酸塩からなる粒子を好ましく用いることができる。より好ましくは、Mn、Fe、Co、Ruから選択される1種以上を含む金属酸化物粒子あるいは金属水酸化物粒子を用いることができる。この助触媒を、粒子形状で第2の光触媒粒子20の表面に担持させることにより、水の酸化反応における活性化エネルギーを減少させることが可能となるため、速やかな酸素の発生が可能となる。
本発明において、第1および第2の各光触媒粒子(10、20)の表面に担持された助触媒の表面のうち、第1および第2の各光触媒粒子(10、20)と物理的に接触している部分以外の表面の少なくとも一部を助触媒シェル層で被覆することも可能である。
助触媒シェル層を設けることにより、より速やかな水素および酸素の発生が可能となる。
助触媒シェル層に含まれる金属元素としては、例えば、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)などが好ましく、クロムが最も好ましい。
本発明において、第1の光触媒粒子10および/または第2の光触媒粒子20の表面に、助触媒40および助触媒シェル層50の双方が設けられている態様においては、光触媒粒子(10、20)の表面に助触媒40が担持され、その表面に助触媒シェル層50が設けられていることが好ましい。また、助触媒40および親水性被覆部60の双方が設けられている態様にあっては、これら光触媒粒子(10、20)の表面に助触媒40が担持され、その上に親水性被覆部60が設けられていることが好ましい。さらに、光触媒粒子(10、20)の表面に助触媒40、助触媒シェル層50、および親水性被覆部60が設けられている場合には、光触媒粒子(10、20)の表面に助触媒40が担持され、その表面に助触媒シェル層50が設けられ、さらにその表面に親水性被覆部60が設けられることが好ましい。助触媒の担持および/または助触媒シェル層の形成により、水素および/または酸素を速やかに発生させ、担持された助触媒の表面に設けられた親水性被覆部により、発生した水素および/または酸素の吸着および逆反応を抑制することができ、水素生成能の低下が抑制される。
これら助触媒の平均一次粒子径は10nm未満であることが好ましく、さらに好ましくは5nm以下である。平均一次粒子径を小さくすることにより、水素および酸素発生反応の活性点として効率的に機能させることができ、助触媒として十分な機能を発揮させることが可能となる。
助触媒の担持方法としては、含浸法や吸着法などが好ましく挙げられる。含浸法や吸着法は、光触媒粒子(10、20)を助触媒前駆体が溶解した溶液に分散させて、光触媒粒子(10、20)の表面に助触媒前駆体を吸着させる方法である。助触媒の担持方法として、さらにドロップキャスト法が好ましく挙げられる。ドロップキャスト法は、光触媒粒子(10、20)に助触媒前駆体が溶解した溶液を滴下あるいは噴霧することにより、光触媒粒子(10、20)の表面に助触媒前駆体を担持させる方法である。助触媒前駆体としては、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケル等の金属の塩化物、硝酸塩、アンミン塩等が挙げられる。
また、光触媒粒子10の表面に助触媒前駆体を担持させる場合、金属の状態とすることで活性が高くなる。そこで、助触媒前駆体を光触媒粒子10の表面上で還元させて金属を含む状態で析出させることが好ましい。助触媒前駆体の還元方法としては、光還元法、化学還元法等が好ましく用いられる。光還元法は、光触媒粒子への紫外光あるいは可視光の照射により、光触媒粒子10内に生成する励起電子によって、光触媒粒子10に吸着した助触媒前駆体を還元させる方法である。また、化学還元法は、400℃以下、好ましくは300℃以下の水素ガス気流下で、助触媒前駆体を還元する方法である。このような方法で担持された助触媒は粒子形状である。第1の光触媒粒子10の表面に助触媒を担持させることにより、水の還元反応における活性化エネルギーを減少させることが可能となるため、速やかな水素の発生が可能となる。
光触媒粒子の表面に担持される助触媒の量は、助触媒の存在により光触媒粒子への照射光が遮蔽されないような範囲で適宜決定することができる。助触媒の量は少量であることが好ましい。具体的には、本発明において、助触媒の量は各光触媒粒子の重量に対し金属換算で0.1wt%以上5wt%以下であることが好ましく、0.2wt%以上3wt%以下であることがさらに好ましい。
なお、光触媒粒子の表面に担持された助触媒の表面に助触媒シェル層がさらに設けられている場合、助触媒シェル層は、各光触媒粒子の重量に対し、金属換算濃度が0.01wt%以上2wt%以下であることが好ましく、各光触媒粒子の重量に対し金属換算濃度が0.02wt%以上1wt%以下であることがさらに好ましい。助触媒および助触媒シェルの量は、光触媒層を誘導プラズマ発光質量分析測定(ICP-MS)により元素分析することにより求めることができる。
助触媒シェル層の形成方法としては、上述のドロップキャスト法が好ましく挙げられる。
本発明において、光触媒層70は、上記に記載した材料以外のものを含んでいても良い。例えば、親水性被覆部60とは異なる親水性材料を含むことができる。親水性材料を含むことにより、水分解により生成する疎水性の水素ガスおよび酸素ガスの光触媒層からの脱離を促進することが可能になる。親水性材料としては、親水性繊維を用いることが好ましい。ここで、親水性繊維とは、親水性を有する繊維状の物質を意味する。また、「繊維状」の物質との用語の意味については、導電性繊維に関する記載中において既に説明したとおりである。親水性繊維として、金属酸化物または金属水酸化物からなるナノファイバーを含むことが好ましい。親水性材料として、親水性繊維を用いることにより、(i)水分解により生成する疎水性の水素ガスおよび酸素ガスの光触媒層からの脱離を促進すること、またこれらガスの逆反応の発生を抑制することが可能になる。親水性繊維は、繊維状の物質であるため、光触媒層70内において広範囲に張り巡らされた状態で存在することができ、例えば、光触媒層70内に親水性被覆部が形成されていない態様にあっては、親水性被覆部と同じ又はそれ以上の上記(i)の作用効果を発揮することができる。また、光触媒層70内に親水性被覆部が形成されている態様にあっては、親水性被覆部と協同して上記(i)の作用効果をより高く発揮することができる。
図5に、光触媒層70が親水性繊維を含む一つの態様を示す。親水性繊維80は、繊維状の物質であるため、光触媒層70内において各光触媒粒子10、20と絡み合うことができ、また親水性繊維80は、例えばその端部が基材90の表面に線接触することができる。すなわち、親水性材料として、親水性繊維80を用いることにより、上記(i)の作用効果に加え、(ii)親水性繊維80が各光触媒粒子10、20と絡み合うことにより、光触媒層70内での各光触媒粒子10、20の脱離を抑制し、光触媒層70の膜強度を高めることが可能となるとともに、(iii)親水性繊維80が基材90の表面に線接触することにより、光触媒層70と基材90との密着性、つまり光触媒層70の剥離強度を高めることが可能となる。ここで、光触媒層70の剥離強度とは、光触媒層70が基材から剥離する際の強度を意味する。また、各光触媒粒子10、20の脱離とは、光触媒層70から光触媒粒子が落ちる等離れてしまうことを意味する。特に、本発明の基材として、厚みが薄い樹脂基材を用いる場合、光触媒材の軽量化により取扱いがより容易になるメリットが得られ、この場合、光触媒層は、厚みの薄い樹脂基材の柔軟な曲げに追従可能な可とう性を備えていることが好ましい。本発明の光触媒材にあっては、光触媒層70が親水性繊維80を含むことで、光触媒層70に含まれる各粒子間の結合力および光触媒層70と基材90との密着力が高まる。したがって、基材を能動的に曲げた場合、あるいは外気との温度差などの温度変化に起因して基材が伸縮する等、基材が受動的に曲げられた場合でも、光触媒層からの光触媒粒子の脱離が抑制され、また光触媒層の崩壊または基材からの光触媒層の剥離もしくは脱落が抑制され、その結果、安定かつ持続的に水分解をすることが可能である。
親水性繊維の好ましい材料の例として、可視光域に吸収を持たない透明な材料が好ましく、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ZrO、TiO等の材料が好ましく用いられる。これらのなかでもアルミナを用いることがさらに好ましい。これにより、親水性と透明性を両立でき、かつ低コスト化が可能となる。
親水性繊維は、透明であることが好ましい。具体的には、親水性繊維の光透過率は可視光領域で10%以下であることが好ましい。これにより、紫外光あるいは可視光領域での親水性繊維による光吸収を抑制し、親水性繊維による各光触媒粒子への光照射の阻害を抑制できる。
親水性繊維のアスペクト比(平均長軸径/平均短軸径)は、10以上100000以下が好ましく、より好ましくは50以上10000以下である。これにより、親水性繊維が各光触媒粒子とより絡み合うことができ、光触媒層の膜強度をより高めたり、光触媒層と基材との密着性、すなわち光触媒層の剥離強度をより高めたりすることが可能となる。
親水性繊維の平均短軸径は1nm以上500nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、2nm以上100nm以下である。また、平均長軸径は100nm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以上10μm以下である。これにより、親水性繊維が各光触媒粒子とより絡み合うことができ、光触媒層の膜強度をより高めたり、光触媒層と基材との密着性、すなわち光触媒層の剥離強度をより高めたりすることが可能になるとともに、親水性繊維による光散乱を抑制することが可能になるため、光触媒性能の低下を抑制できる。
親水性繊維は、光触媒層に含まれる光触媒粒子の全重量に対して、0.01重量%以上50重量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは0.1重量%以上10重量%である。これにより、各光触媒粒子の光吸収を妨げず、光触媒層中への水の拡散と生成ガスの脱離を促進できる。さらに、光触媒層の膜強度や、光触媒層と基材との密着性、すなわち光触媒層の剥離強度をより高めることが可能となる。
このように、本発明による光触媒材100は、親水性繊維80を含むことにより、水分解により生成する水素ガスおよび酸素ガスの光触媒層70からの脱離が促進されるとともにこれらガスの逆反応の発生が抑制され、水素生成の効率を高めることができ、さらに光触媒層70の膜強度および光触媒層70と基材90との密着性、すなわち光触媒層70の剥離強度を高めることができ、また親水性を向上させることができる。
光触媒材の製造方法
本発明による光触媒材100の製造方法としては、基材90に、第1の光触媒粒子10と、第2の光触媒粒子20と、前記第1の光触媒粒子10と前記第2の光触媒粒子20とを電気的に接続する導電性繊維30とを含む光触媒層70を固定化して、上記構造を形成することができる方法を用いることができる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による光触媒材100の製造方法としては、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20と導電性繊維30とを混合し湿式分散させた分散液を、基材90に塗布して、乾燥する方法を用いることができる。なお、分散液としては、例えばペースト状のものを用いることができる。
本発明において、湿式分散の方法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば大きなせん断応力をかけない緩やかな条件で分散することが好ましい。超音波照射やボールミルおよびビーズミル等の分散メディアを用いた機械分散法は用いない方が好ましい。
本発明において、液体媒体としては、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20と導電性繊維30を分散することが可能な溶媒を用いることができる。本発明の好ましい態様によれば、このような溶媒として、水あるいはエタノール等の有機溶剤や、α―テルピネオール等の有機ビヒクル溶剤を用いることができる。また、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20と導電性繊維30の溶媒中での分散性を向上させるため、溶媒に分散剤を添加してもよい。
本発明において、分散液を基材90へ塗布する方法としては、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法、ドクターブレード法、電気泳動法、スクリーン印刷法等を好ましく利用することができる。また、塗布方法は、基材90の形状や種類に応じて適宜選択することができる。
本発明において、第1の光触媒粒子10と第2の光触媒粒子20と導電性繊維30はこれらを含む分散液を乾燥させることにより、好ましくは乾燥および焼成することにより、基材90へ固定化される。焼成温度は、溶媒や分散剤等の加熱分解温度以上であり、さらに、基材90と第1の光触媒粒子10、第2の光触媒粒子20および導電性繊維30、あるいは導電性繊維30と第1の光触媒粒子10および第2の光触媒粒子20、あるいは第1の光触媒粒子10、第2の光触媒粒子20および導電性繊維30同士の焼成が促進可能な温度であることが好ましい。具体的には、有機基材を用いる場合は、焼成温度は、好ましくは、50℃以上300℃以下であり、より好ましくは、60℃以上250℃以下であり、さらにより好ましくは、80℃以上220℃以下である。また無機基材を用いる場合は、焼成温度は、好ましくは、50℃以上700℃以下であり、より好ましくは、100℃以上600℃以下であり、さらにより好ましくは200℃以上400℃以下である。この範囲の温度で焼成することで、長期安定性の可視光応答型水分解用光触媒材を得ることが可能となる。また、焼成雰囲気は、大気、窒素、還元ガス(アンモニア、水素)のいずれの雰囲気であってもよい。
水分解用光触媒モジュール
本発明による水分解用光触媒モジュールは、上述の光触媒材を含む。本発明の好ましい態様によれば、本発明による水分解用光触媒モジュールは、概ね透明な光入射面を有し、モジュール内部に設置した光触媒材に光が入射する構造を有する。また、光触媒材が常に水と接触可能なように、水を封入可能な密閉パネル形状を有している。また、本発明のより好ましい態様によれば、本発明による水分解用光触媒モジュールは、水分解反応の進行により減少する水を遂次的に追加供給可能な通水孔等の機構をさらに有することが好ましい。このような構成の水分解光触媒モジュールとすることで、実用的に利用可能な水素を製造することが可能となる。
水素製造システム
本発明による水素製造システムは、前記水分解用光触媒モジュールを含む。本発明の好ましい態様によれば、本発明による水素製造システムは、水の供給装置、水中の不純物をある程度除去するためのろ過装置、水分解光触媒モジュール、水素分離装置、および水素貯蔵装置からなるものである。このような構成の水素製造システムとすることで、再生可能エネルギーである太陽光と水から水素を実用的に製造可能なシステムを実現することが可能となる。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
原料
原料として用いた第1の光触媒粒子、第2の光触媒粒子、導電性繊維および導電性粒子について説明する。
第1の光触媒粒子1(4atm%RhドープSrTiO 3 粒子)の作製
4atm%RhドープSrTiO3(SrTi0.96Rh0.04O3)粒子を固相法により作製した。具体的には、SrCO3(和光純薬製,99.9%)、TiO2(高純度化学研究所製,99.99%)、およびRh2O3(和光純薬製)を1.05:0.96:0.04のモル比でアルミナ製乳鉢に入れ、メタノールを添加した後、2時間混合した。次いで、得られた混合物をアルミナ製るつぼに入れて、900℃で1時間仮焼きした後、1050℃で10時間本焼成した。焼成後、焼成体を室温まで放冷させた後、解砕して、4atm%RhドープSrTiO3(SrTi0.96Rh0.04O3)粒子からなる粉末を作製した。
(平均一次粒子径)
SEM観察により4atm%RhドープSrTiO3粒子(第1の光触媒粒子1)の平均一次粒子径を算出した。具体的には、SEM(株式会社日立ハイテク製、SU-8220)により、倍率40000倍で観察した際の無作為に選択した結晶粒子50個の円形近似による平均値を一次粒子径とした。その結果、4atm%RhドープSrTiO3粒子の平均一次粒子径は約500nmであった。
(バンド構造)
4atm%RhドープSrTiO3粒子のバンド位置は、Wang et al., J.Catal. 305-315, 328 (2015)を参照して以下のとおりとみなした。
価電子帯上端:-6.6eV (vs.真空準位)
伝導帯下端:-4.1eV (vs.真空準位)
なお、4%RhドープSrTiO3粒子における価電子帯上端とは、SrTiO3のバンドギャップ内に生じた、ドープされたRh3+由来のドナー軌道の上端に由来するものであると考えられる。
助触媒を担持した4atm%RhドープSrTiO 3 粒子の作製
助触媒としてルテニウムを担持した4atm%RhドープSrTiO3粒子を下記の含浸法により作製した。まず、4atm%RhドープSrTiO3粒子 100mgと、ルテニウム(Ru)換算で0.25~4mgとなるように塩化ルテニウム・n水和物を溶解させた超純水0.2mlとを混合し、1分間超音波分散処理を行い、懸濁液を作製した。その後、この懸濁液を入れた蒸発皿を、100℃に加熱したホットプレート上に置いて、ガラス棒で攪拌しながら、水を徐々に蒸発させた。水が完全に蒸発した後、磁性るつぼに回収した粉末を入れて、350℃で1時間焼成した。このような光電着法で、第1の光触媒粒子1の重量に対し金属換算で0.25~4wt%のRuOxを担持した4atm%RhドープSrTiO3粒子(第1の光触媒粒子2)を作製した。
第2の光触媒粒子1(0.05atm%MoドープBiVO 4 粒子)の作製
0.05atm%MoドープBiVO4粒子は液固相法により作製した。具体的には、まず、K2CO3(関東化学製,99.5%)、V2O5(和光純薬製,99.0%)およびMoO3(関東化学製,99.5%)をK:V:Mo=3.03:4.9975:0.0025 (mol比)になるようにメノー乳鉢に入れ、エタノール(10mL)を添加した後30分間混合した。次いで、得られた混合物を磁性るつぼに入れて、電気炉にて大気中450℃で5時間焼成した。焼成後、焼成体を室温まで放冷させた後、解砕し粉末を得た。
得られた粉末を、100mlの水およびBi(NO3)3・5H2O(和光純薬製,99.9%)が入った300mL三角フラスコに入れて(Bi :(V+Mo)=1 :1)、70℃で10時間、攪拌子を用いて1500 rpmで撹拌した。得られた沈殿物を吸引濾過により回収して水洗浄を行った後、乾燥器にて60℃で12時間乾燥させて、0.05atm%MoドープBiVO4粉末からなる粒子を得た。
(平均一次粒子径)
上述と同様の条件によるSEM観察により0.05atm%MoドープBiVO4粒子(第2の光触媒粒子)の平均一次粒子径を算出した。その結果、平均一次粒子径は約800nmであった。
(バンド構造)
BiVO4のバンド位置は、Wang et al., J.Catal. 305-315, 328 (2015)を参照して以下のとおりとみなした。
価電子帯上端:-6.8eV(vs.真空準位)
伝導帯下端:-4.6eV(vs.真空準位)
助触媒を担持した0.05atm%MoドープBiVO 4 粒子の作製
助触媒として鉄酸化物(FeOx)あるいはコバルト酸化物(CoOx)を担持した0.05atm%MoドープBiVO4粒子を下記の方法により作製した。作製した0.05atm%MoドープBiVO4粒子 100mgと、コバルト換算で0.5mgとなるように塩化コバルト・六水和物あるいは鉄換算で0.5mgとなるように塩化鉄・九水和物を溶解させた超純水0.2mlを反応溶液とし、蒸発皿に入れた。この反応溶液を入れた蒸発皿の下面を100℃に加熱しながら、ガラス棒で混錬しながら水を蒸発乾固させた。このような含浸法で、第2の光触媒粒子1の重量に対し金属換算で0.5wt%のFeOxを担持した0.05atm%MoドープBiVO4粒子(第2の光触媒粒子2)および第2の光触媒粒子1の重量に対し金属換算で0.5wt%のCoOxを担持した0.05atm%MoドープBiVO4粒子(第2の光触媒粒子3)を作製した。
作製した第1の光触媒粒子(1、2)および第2の光触媒粒子(1、2、3)を以下の表にまとめる。
導電性繊維および導電性粒子の用意
導電性繊維1
導電性繊維1として、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を準備した。
導電性繊維2
導電性繊維2として、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を準備した。
導電性繊維3
導電性繊維3として、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を準備した。
導電性繊維4
導電性繊維4として、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を準備した。
導電性針状粒子
導電性針状粒子として、針状であり、撓みにくい(柔軟性の低い)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を準備した。
導電性粒子1
導電性粒子1として、ITOコロイド(10%SnドープIn2O3)の10wt%有機溶剤分散ペースト(奥野製薬製)を用いた。ITOコロイド粒子の平均一次粒子径は10nmであった。なお、この平均一次粒子径は、TEM観察により算出された値として、カタログに掲載された値である。また、ITOコロイド 粒子の電子特性は、仕事関数:4.6eV、フェルミ準位:-4.6eV(vs. 真空準位)であった(A . Sharma et al., Applied Physics letters, 93, 163308 (2008))。
導電性粒子2
導電性粒子2として、金コロイドの10wt%エタノール分散液(新光化学工業所製)を用いた。金コロイド粒子 の平均一次粒子径は20nmであった。なお、この平均一次粒子径は、TEM観察により算出された値としてカタログに掲載された値である。また、金コロイド粒子の電子特性は、仕事 関数:5.1eV、フェルミ準位:-5.1eV(vs.真空準位)であった(A. Sharma et al., Applied Physics letters, 93, 163308 (2008))。
親水性繊維
親水性繊維として、アルミナナノファイバー(ANF)を準備した。平均短軸径4nm、平均長軸長1μmであった。
光触媒材1の作製
(塗布用ペーストの作製)
第1の光触媒粒子1と第2の光触媒粒子1とを第1の光触媒粒子1:第2の光触媒粒子1=1:1の割合で合計量が0.25gとなるように秤量した。これを、有機分散媒0.75gに混合し、光触媒粒子を分散させた。有機分散媒としては、α-テルピネオール(関東化学製)と、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール(和光純薬製)と、ポリアクリル樹脂(SPB-TE1、綜研化学製)とが、この順に重量比で、62.5 : 12.5 : 25.0の割合で混合されたものを用いた。このようにして光触媒ペースト1を調製した。次いで、この光触媒ペースト1に、導電性繊維1を、第1の光触媒粒子1:第2の光触媒粒子1:導電性繊維1の固形分の重量組成比が49.55:49.55:0.9となるように添加して、第1の光触媒粒子1と第2の光触媒粒子1と導電性繊維1との合計固形分濃度が33wt%となるような塗布用ペースト1を作製した。
(光触媒材の作製)
塗布用ペースト1を基材(ホウケイ酸ガラス基板、サイズ:3cm×3cm×厚さ0.55mm)に、塗布厚が60μm、塗布面積が6.25cm(2.5cm角)となるようにスクリーン印刷法で塗布した。その後、80℃で30分間乾燥させ、300℃で30分間焼成して光触媒材1を作製した。
光触媒材2の作製
(塗布用ペーストの作製)
光触媒ペースト1に、導電性繊維1を、第1の光触媒粒子1:第2の光触媒粒子1:導電性繊維1の固形分の重量組成比が49.1:49.1:1.8となるように添加して、第1の光触媒粒子1と第2の光触媒粒子1と導電性繊維1との合計固形分濃度が33wt%となるような塗布用ペースト2を作製した。
(光触媒材の作製)
光触媒材1の作製方法と同様に、塗布用ペースト2を基材に塗布し、乾燥および焼成して光触媒材2を作製した。
光触媒材3~14の作製
表2に記載の導電性繊維を用い、膜固形分に対する導電性繊維の濃度が表2に記載の濃度となるようにして光触媒材1、2と同様の方法で光触媒層を形成させた後、下記の方法にて親水性被覆部を形成し、光触媒材3~14を作製した。
(親水性被覆部の作製)
光触媒層の表面積、つまり塗布用ペーストの塗布面積の単位面積当たりのチタン酸化物(TiO)またはジルコニア酸化物(ZrO)に含まれるTiまたはZrの金属換算濃度が表2に記載の濃度となるようにチタンテトライソプロポキシドあるいはジルコニウムテトラn-ブトキシドを溶解させた2-プロパノール 150μlを、光触媒材の表面に満遍なく滴下により塗布し、常温で15時間乾燥後、350℃で1時間焼成し、親水性被覆部を作製した。
光触媒材15~20の作製
光触媒材1、2と同様の方法で光触媒層を形成させた後、下記のドロップキャスト法にて各光触媒粒子の表面に助触媒を担持させ、この担持された助触媒の表面にさらに助触媒シェル層を形成した後、上述と同様の方法により親水性被覆部を形成し、光触媒材15~20を作製した。
(ドロップキャスト法による助触媒の担持方法)
基材上の第1の光触媒粒子の重量に対して、表2に示すようにルテニウム換算で1.0重量%となるように塩化ルテニウム・n水和物水溶液(15.3重量%)を溶解させた超純水50μlを、光触媒層に満遍なく滴下により塗布し、常温で3時間乾燥後、350℃で1時間焼成した。
(ドロップキャスト法による助触媒シェル層の形成方法)
助触媒のシェル層として、基材上の第1の光触媒粒子の重量に対して、表2に示すようにクロム換算で0.25重量%となるように硝酸クロム・六水和物水溶液(11.54重量%)を溶解させた超純水50μlを、光触媒層に満遍なく滴下により塗布し、常温で3時間乾燥後、350℃で1時間焼成した。
以上の工程により、光触媒粒子の表面に助触媒を担持させ、この担持された助触媒(RuOx)の表面に助触媒シェル層(CrOx)をさらに形成した。
光触媒材21~23の作製
表2に記載の導電性針状粒子または導電性粒子を用い、膜固形分に対する導電性針状粒子または導電性粒子の濃度が表2に記載の濃度となるようにして光触媒材1と同様の方法で光触媒層を形成させ、光触媒材21~23を作製した。
光触媒材24~32の作製
表3に記載の第1の光触媒粒子と、表3に記載の第2の光触媒粒子と、導電性繊維1を用い、光触媒層を形成した後に、上記の方法にて助触媒シェル層をさらに形成した以外は、光触媒材3~14と同様の方法により光触媒材を作製した。
光触媒材33~35の作製
導電性繊維1と、親水性繊維を用い、光触媒層を形成した以外は、光触媒材1と同様の方法により光触媒材を作製した。
光触媒材36、37の作製
導電性繊維1と、親水性繊維を用い、光触媒層を形成した以外は、光触媒材3~14と同様の方法により光触媒材を作製した。
光触媒材38、39の作製
導電性繊維1と、親水性繊維を用い、光触媒層を形成した以外は、光触媒材15~20と同様の方法により光触媒材を作製した。
光触媒材40の作製
導電性繊維を用いずに光触媒層を形成した以外は、光触媒材33と同様の方法により光触媒材を作製した。
評価
光触媒層の構造
光触媒材2の光触媒層をSEM(株式会社日立ハイテク製、SU-8220)により観察し、得られた画像を図6に示す。
光触媒層の厚み
各光触媒材の断面をSEM(株式会社日立ハイテク製、SU-8220)により観察した。光触媒材の断面を、基材と光触媒層の最上部まで観察できる倍率で観察した。基材の表面のある点における水平方向の接線から、この接線に対する垂線における光触媒層の最上部までの距離を光触媒層の厚みとした。いずれの光触媒材における光触媒層の厚みは10μmであった。
短軸の直径(短軸径)および長軸の長さ(長軸長)
導電性繊維の短軸径は、光触媒層の断面をSEMにて20万倍の倍率で観察した際のランダムに選んだ30本の各導電性繊維の短軸径を求め、これらの平均値とした。導電性繊維の長軸長は、光触媒層の断面を10000倍の倍率で観察した際のランダムに選んだ30本の各導電性繊維の長軸長を求め、これらの平均値とした。結果を表2および表3に示す。
曲率半径
各光触媒材の断面をSEM(株式会社日立ハイテク製、SU-8220)により倍率45000倍で観察した。観察面において、観察される導電性繊維のうち、光触媒粒子の表面と接触し、かつ曲線部分を有する10個の導電性繊維1を選択した。これらの導電性繊維において、曲線部分のうち、最も曲がった(湾曲した)部分を特定した。この特定した部分に合う円の半径を得、これを各導電性繊維の曲率半径とした。10個の導電性繊維の曲率半径の平均値を本発明における導電性繊維の曲率半径として求めた。結果を表2および表3に示す。なお、光触媒材22および23においては、測定不可と判断した。
光触媒材の光触媒活性(水分解活性)
各光触媒材の可視光照射による光触媒活性(水分解活性)を以下の方法で評価した。パイレックス(登録商標)製上方照射用の窓付きのガラスフラスコに、光触媒材と、超純水50mlを入れて、反応溶液とした。この反応溶液を入れたガラスフラスコを閉鎖循環装置(幕張理化学製)に装着し、反応系内の雰囲気をアルゴン置換した。アルゴン圧は、10kPaであった。UVカットフィルター(L-42、HOYA製)を装着した300Wキセノンランプ(Cermax製、PE-300BF)により、可視光をパイレックス(登録商標)窓側から照射した。光照射した後3時間の、水が還元されて生成する水素の発生量および水が酸化されて生成する酸素の発生量を、ガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC-8A、TCD検出器、MS-5Aカラム)により経時的に調べた。結果は表2~表4に示されるとおりであった。
10 水素発生用可視光応答型光触媒粒子(第1の光触媒粒子)
20 酸素発生用可視光応答型光触媒粒子(第2の光触媒粒子)
30 導電性繊維
40 助触媒
50 助触媒シェル層
60 親水性被覆部
70 光触媒層
71 細孔
80 親水性繊維
90 基材
100 光触媒材

Claims (16)

  1. 基材と、当該基材に固定化されてなる光触媒層とを含んでなる光触媒材であって、
    前記光触媒層が、
    水素発生用可視光応答型の第1の光触媒粒子と、
    酸素発生用可視光応答型の第2の光触媒粒子と、
    前記第1の光触媒粒子と前記第2の光触媒粒子との間に設けられ、前記第1の光触媒粒子の価電子帯上端の電子エネルギー準位よりも負な位置であり、前記第2の光触媒粒子の伝導帯下端の電子エネルギー準位よりも正な位置にフェルミ準位を有する、電子および正孔を貯蔵可能な導電性繊維と
    を含んでなり、
    前記導電性繊維は、その曲率半径が5nm以上1000nm以下であり、
    前記導電性繊維が、前記第1の光触媒粒子と前記第2の光触媒粒子とを接続しており
    前記導電性繊維が、その表面に、第1領域、第2領域および第3領域を有し、かつ、
    前記第1領域において、前記第1の光触媒粒子と接触し、
    前記第2領域において、前記第2の光触媒粒子と接触し、
    前記第3領域において、前記第1及び第2の光触媒粒子いずれとも接触しないものであり、
    前記光触媒層が、前記導電性繊維の前記第3領域の少なくとも一部を覆う親水性被覆部と、当該親水性被覆部とは異なる親水性繊維とをさらに含んでなる、光触媒材。
  2. 前記導電性繊維の長軸の長さが、300nm以上10μm以下である、請求項1に記載の光触媒材。
  3. 前記導電性繊維の短軸の直径が、3nm以上50nm以下である、請求項1または2に記載の光触媒材。
  4. 前記導電性繊維が、カーボンナノファイバーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の光触媒材。
  5. 前記導電性繊維が、カーボンナノチューブ(CNT)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光触媒材。
  6. 前記導電性繊維の含有量が、前記第1の光触媒粒子、前記第2の光触媒粒子および前記導電性繊維の合計含有量に対して、0.1wt%以上10wt%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光触媒材。
  7. 前記親水性被覆部は金属元素を含む酸化物、水酸化物、リン酸塩から選択される1種以上を含んでおり、前記光触媒層の単位面積(cm)あたりに含まれる前記金属元素の金属換算濃度が0.1μmol/cm以上20μmol/cm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の光触媒材。
  8. 前記親水性繊維は、アルミナナノファイバーである、請求項1~7のいずれか一項に記載の光触媒材。
  9. 前記第1の光触媒粒子および/または前記第2の光触媒粒子の表面に助触媒が担持されてなる、請求項1~のいずれか一項に記載の光触媒材。
  10. 前記助触媒の含有量が、金属換算濃度で0.1wt%以上5wt%以下である、請求項に記載の光触媒材。
  11. 前記助触媒の表面を覆う助触媒シェル層を有する、請求項または10に記載の光触媒材。
  12. 前記基材は、セラミックス基材、ガラス基材、石英基材、有機基材、金属から選択される一種以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の光触媒材。
  13. 前記有機基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂から選択される一種以上である、請求項12に記載の光触媒材。
  14. 可視光による水の光分解反応に用いられる、請求項1~13のいずれか一項に記載の光触媒材。
  15. 請求項14に記載の光触媒材を含んでなる、水分解用光触媒モジュール。
  16. 請求項15に記載の水分解用光触媒モジュールを含んでなる、水素製造システム。
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Journal of Molecular Liquids,2018年11月06日,vol.277,p. 977-988,DOI:10.1016/j.molliq.2018.10.160

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