JP7688397B2 - ペプチドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ペプチドの製造方法に関する。
ペプチドは、その多様性及び生体親和性から、古くから様々な分野において、研究がされてきており、医薬品のみならず、生化学ツール、食品等の幅広い応用性を有している。
一方で、ペプチドの合成法については、長年に亘り、多くの研究がされてきたにもかかわらず、必ずしも十分に満足できる合成手法の確立にはまだ至っていない。例えば、現在ペプチド合成手法のスタンダードになりつつある固相合成法(SPPS)は、高価である上、工業スケール合成にも難点がある。また、比較的安価な液相合成法(LPPS)は、その煩わしい保護・脱保護工程、エピメリ化のし易さ、複雑な操作性等の問題点を有している。これに対して、最近、マイクロフローリアクターにより無保護アミノ酸を用いたペプチド鎖延長反応が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
Chem. Eur. J. 10.1002/chem.201903531
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、反応終了後の反応溶液中に未反応原料、副反応物等が存在するため、次の異なるアミノ酸との縮合反応を行う場合には、精製工程が必要であった。
本発明は、効率的なペプチドの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、種々検討した結果、無保護のアミノ酸を縮合させる反応を、水と、疎水性有機溶媒との二層系溶媒中で行うことで、特段の精製工程を経ることなく、次のアミノ酸縮合反応を行うことができることを見出し、その後、さらに研究を重ね、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記項1~4に示すペプチドの製造方法を包含する。
項1 ペプチドの製造方法であって、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドのカルボキシル基と、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを、水と疎水性有機溶媒とからなる二層系溶媒中で反応させる、製造方法。
項2 更に、アミノ基が保護されていない同一若しくは異なるアミノ酸、又はN末端が保護されていない同一若しくは異なる中間体ペプチドのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を反応させる、項1に記載の製造方法。
項3 前記水がアルカリ性を示す水溶液である、項1又は2に記載の製造方法。
項4 相間移動触媒の存在下で行う、項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
本発明の製造方法によれば、ペプチド鎖の延長反応を効率的に行うことができる。更に詳しくは、アミノ酸又はペプチドの末端アミノ酸に順次アミノ酸を縮合させる連続的反応において、各反応終了後に生成したペプチドを単離精製する工程を要さずに、次反応を行うことを可能とした。よって、本発明のペプチドの製造方法は、工業的に極めて有利な方法といえる。
実施例1-1で得られたペプチドのNMRチャートである。 実施例1-2で得られたペプチドのNMRチャートである。 実施例2で得られた保護ペプチドのNMRチャートである。 実施例2で得られたペプチドのNMRチャートである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、特に制限のない限りA以上B以下を意味する。
本明細書において、「(保護されていない)アミノ基」は、-NHのみならず、窒素原子上の水素原子が保護されていない環状アミノ基も包含する。
本発明のペプチドの製造方法は、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドのカルボキシル基と、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを、水と疎水性有機溶媒とからなる二層系溶媒中で反応させる製造方法である。
なお、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドとは、アミノ酸又は中間体ペプチドのN末端が保護基により保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドのことをいう。なお、アミノ基が保護された中間体ペプチドは、N末端アミノ基のみならず、側鎖のアミノ基も保護された中間体ペプチドであることを意味する。
また、本発明の製造方法は、特に制限されないが、次の一般式(2)で表されるアミノ酸又は中間体ペプチド(以下、「式(2)のアミノ酸類」ということがある)と、一般式(3)で表されるアミノ酸又は中間体ペプチド(以下、「式(3)のアミノ酸類」ということがある)とを、水と疎水性有機溶媒とからなる二層系溶媒中で反応させる、一般式(1)で表されるペプチド(以下、「式(1)のペプチド」ということがある)を製造する方法も包含する。
Figure 0007688397000001
[式中、Aはアミノ酸残基又はペプチド残基を示す。Qはアミノ基の保護基を示す。]
Figure 0007688397000002
[式中、Aはアミノ酸残基又はペプチド残基を示す。Rは、水素原子又はアミノ酸N末端置換基を示し、Aと一緒になって環を形成してもよい。Xは、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を示す。]
Figure 0007688397000003
[式中、Q、A、A、及びRは前記に同じである。Xは、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を示す。]
また、本発明のペプチドの製造方法は、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドのカルボキシル基と、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを、水と疎水性有機溶媒とからなる二層系溶媒中で反応させて製造した中間体ペプチドに、更に、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を反応させる製造方法を包含する。この場合、後から反応させるアミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドは、得られるペプチドに応じて選択されるものであって、先に反応させたアミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドと同一であってもよく、異なっていてもよい。
即ち、本発明の製造方法は、式(2)のアミノ酸類と、式(3)のアミノ酸類とを、水と疎水性有機溶媒とからなる二層系溶媒中で反応させて製造した式(1)のペプチド(X=水素原子)を中間体ペプチドとして、更に一般式(4)で表されるアミノ酸又は中間体ペプチド(以下、「式(4)のアミノ酸類」ということがある)とを、水と疎水性有機溶媒とからなる二層系溶媒中で反応させる、一般式(5)で表されるペプチド(以下、「式(5)のペプチド」ということがある)を製造する方法ということもできる。
Figure 0007688397000004
[式中、Xは前記に同じである。Aはアミノ酸残基又はペプチド残基を示す。Rは、水素原子又はアミノ酸N末端置換基を示し、Aと一緒になって環を形成してもよい。]
Figure 0007688397000005
[式中、Q、A、A、A、R、R及びXは前記に同じである。]
反応終了後、生成した式(1)のペプチド又は式(5)のペプチドは反応液中でアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の状態で存在する場合があるので、ペプチドとして取り出す場合、又は次反応に使用する場合等は、酸でカルボン酸の状態に調製すればよい。酸としては、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を中和できるものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、フマル酸、シュウ酸等の有機酸を挙げることができ、塩酸等の無機酸が好ましい。
本発明の製造方法で使用するアミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチド(式(2)のアミノ酸類)を構成するアミノ酸としては、一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有するものであれば、特に限定されず、例えば、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、フェニルアラニン(Phe)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、リジン(Lys)、5-ヒドロキシリジン(Hyl)、アルギニン(Arg)、アスパラギン酸(Asp)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、システイン(CySH)、シスチン(Cyss)、システイン酸(Cya)、メチオニン(Met)、チロシン(Tyr)、チロキシン(Thy)、プロリン(Pro)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、トリプトファン(Trp)、ヒスチジン(His)、N-メチルグリシン、β-アラニン、N-メチル-β-アラニン、サルコシン、γ-アミノ酪酸、カイニン酸、またはこれらの誘導体等が挙げられる。これらのアミノ酸のうち、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、フェニルアラニン(Phe)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、リジン(Lys)、5-ヒドロキシリジン(Hyl)、アルギニン(Arg)、アスパラギン酸(Asp)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、システイン(CySH)、シスチン(Cyss)、システイン酸(Cya)、メチオニン(Met)、チロシン(Tyr)、チロキシン(Thy)、プロリン(Pro)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、トリプトファン(Trp)、ヒスチジン(His)等が好ましく、グリシン(Gly)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、フェニルアラニン(Phe)、システイン酸(Cya)、メチオニン(Met)、チロシン(Tyr)、チロキシン(Thy)、プロリン(Pro)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、トリプトファン(Trp)等がより好ましい。
ペプチドとしては、前記アミノ酸の2以上がペプチド結合で結合した化合物であればよく、ペプチドを構成するアミノ酸の数が通常100以下であり、50以下が好ましく、30以下がより好ましい。
アミノ酸又はペプチドのアミノ基の保護基としては、ベンジル基(Bn)、p-メトキシベンジル基(PMB)、p-メトキシフェニル基(PMP)等のアミン型保護基;ホルミル基、アセチル基(Ac)等のアミド型保護基;フタロイル基(Phth)等のフタルイミド型保護基;ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、tert-アミルオキシカルボニル基(Aoc)、9-フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル基(Boc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、2,2,2-トリエトキシカルボニル基(Troc)等のカルバメート型保護基;3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル基(Npys)、2-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、(2-トリメチルシリル)-エタンスルホニル基(SES)等のスルホンアミド型保護基等を挙げることができ、中でも、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、9-フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル基(Boc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、p-メトキシベンジル基(PMB)、フタロイル基(Phth)、2,2,2-トリエトキシカルボニル基(Troc)等が好ましく、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、9-フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル基(Boc)、p-メトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリエトキシカルボニル基(Troc)等がより好ましい。
これらアミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドのカルボキシル基と反応させる、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類))としては、一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有するものであれば、特に限定されず、上記したアミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドを構成するアミノ酸として例示したものを、製造しようとするペプチドに合致するよう選択して使用することができる。
本発明の製造方法は、水と、疎水性有機溶媒との二層系溶媒中で行うことを特徴としている。
疎水性有機溶媒としては、水に溶解しにくい、又は水と混ざりにくい有機溶媒であり、例えば、1気圧(1.013X105Pa)、20℃において同容量の水と撹拌し、静置後、水層との間に明確な境界を形成することができるものを挙げることができ、具体的には、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、1,2-ジクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化芳香族炭化水素;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチルなどのエステル化合物;ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル化合物等が挙げられる。
これらの疎水性有機溶媒の中でもジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が好ましく、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等がより好ましい。これらは疎水性極性有機溶媒であり、アルカリ耐性があり、かつ縮合反応性に乏しい溶媒であるからである。
これら疎水性有機溶媒は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明の製造方法において、疎水性有機溶媒の使用量としては、特に制限されず、アミノ基が保護されたアミノ酸、中間体ペプチド又はペプチド(式(2)のアミノ酸類又は式(1)のペプチド)が十分に溶解できる量とすることができ、例えば、当該アミノ酸又はペプチド1質量部に対して、疎水性有機溶媒0.1~100質量部、好ましくは1~50質量部、より好ましくは2~10質量部である。
また、本発明の製造方法で溶媒として使用する水は、本発明の製造方法に悪影響を及ぼさない限り、水道水、イオン交換水、蒸留水等であってよく、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類))を溶解した水溶液を形成する。そのため、アルカリ性を示す水溶液であることが好ましい。このアルカリ性を示す水溶液のpHは、7よりも大きく、7.1以上が好ましく、8以上がより好ましい。また、pHは14以下が好ましく、11以下がより好ましく、10.5以下がさらに好ましい。
また、本発明の製造方法において式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類)は水溶液の状態で使用すればよく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等(アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等)の水溶液に、式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類)のカルボン酸体を溶解させて、式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類)を調整してもよい。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属炭酸塩としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属炭酸水素塩としては、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等が挙げられ、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
これら水の使用量としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類))1質量部に対して、水0.5~100質量部、好ましくは1~50質量部、より好ましくは2~10質量部とすることができる。
また、本発明の製造方法で使用する水と疎水性有機溶媒との使用割合としては、特に限定されないが、水1質量部に対して、疎水性有機溶媒0.05~20質量部、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.33~3質量部とすることができる。
本発明の製造方法は、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチド(式(2)のアミノ酸類(又は式(1)のペプチド))と、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類))とを、縮合反応させてペプチドを製造する方法であるが、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類))を水に溶解させた状態で反応を行うことが好ましい。
一方で、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチド(式(2)のアミノ酸類(又は式(1)のペプチド))は、疎水性有機溶媒中に溶解させることが好ましい。アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドとの反応にあたって、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチド(式(2)のアミノ酸類(又は式(1)のペプチド))のカルボン酸は活性化されていることが好ましく、該活性化の手段は、従来公知のペプチド結合生成の縮合反応、例えば、アジド法、混合酸無水物法、活性エステル法(クロロギ酸・エステル法、p-ニトロフェニル・エステル法、N-ヒドロキシコハク酸イミド・エステル法等)、Woodward試薬K法、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ハイドロクロライド(EDC)、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド(CMPI)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロリン酸塩(BOP)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(pyBOP)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N,N-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N,N-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)等)を用いた方法等を応用することができる。これらの方法の中でも、混合酸無水物法又は活性エステル法が特に好ましく適用できる。
このように二層系溶媒の各層にそれぞれ基質を存在させたうえで、この溶媒を撹拌することで反応を進行させ、生成したペプチド(式(1)のペプチド)は、疎水性有機溶媒層に存在させることができる。
本反応において、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチド(式(2)のアミノ酸類(又は式(1)のペプチド))とアミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類))との使用割合は、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチド(式(2)のアミノ酸類(又は式(1)のペプチド))に対して、1~10当量、好ましくは1.1~5当量、より好ましくは1.2~3当量とすることができる。
本反応温度は、通常4~80℃、好ましくは10~50℃、より好ましくは20~30℃とすることができ、本反応時間は通常0.1~100時間程度、好ましくは1~50時間程度、より好ましくは5~20時間程度とすることができるが、使用するアミノ酸、ペプチドの種類、量によってそれぞれ設定し得る。
本発明の製造方法は、反応を容易に進行させるため、相間移動触媒を使用するのが好ましい。相間移動触媒としては、有機合成化学における公知の触媒が挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等の第4級アンモニウムハライド類;テトラブチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド等の第4級ホスホニウムハライド類;15-クラウン-5,18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ジベンゾ-24-クラウン-8、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6等のクラウンエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等のポリオキシアルキレングリコール類等が挙げられる。
相間移動触媒の使用量としては、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(3)のアミノ酸類(又は式(4)のアミノ酸類))1質量部に対して、通常0.0001~10質量部、好ましくは0.001~5質量部、より好ましくは0.01~1質量部とすることができる。
本発明の製造方法によれば、反応に使用するアミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(3)のアミノ酸類)のカルボキシル基は、保護基で保護する必要がない。
特に、アミノ基が保護されていないアミノ酸を使用する場合は、製造したペプチド(式(1)のペプチド)は、疎水性有機溶媒中に存在し、未反応のアミノ基が保護されていないアミノ酸(式(3)のアミノ酸)は水層に存在するため、反応終了後、分液操作によって有機層を採取することで、目的のペプチド(式(1)のペプチド)を容易に単離することが可能である。
更に、得られたペプチド(式(1)のペプチド)は、C末端のカルボキシル基に保護基が存在していないため、煩わしい脱保護反応を必要としない。得られたペプチド(式(1)のペプチド)がアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である場合も、上記のとおり、酸処理により容易にカルボキシル基とすることができる。このため、さらにペプチド鎖を延長する場合には、本発明の製造方法を適用して、得られたペプチド(式(1)のペプチド)に必要に応じて酸処理を行って中間体ペプチドとして、アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(4)のアミノ酸類)を縮合させることができる。
即ち、本発明の製造方法を適用すれば、アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチド(式(2)のアミノ酸類)とアミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(3)のアミノ酸類)を反応させてペプチド(式(1)のペプチド)を製造し、得られた式(1)のペプチドに必要に応じて酸処理を行って中間体ペプチドとして、反応液を分液して有機層をとり、(カルボキシル基の脱保護反応を要することなく、)その有機層を用いて、アルカリ水溶液中の新たなアミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチド(式(4)のアミノ酸類)を、(カルボキシル基の保護反応を要することなく、)反応させて新たなペプチド(式(5)のペプチド)を製造し、反応液を分液してそのペプチド(式(5)のペプチド)が存在する有機層を取得することができる。これらの操作を繰り返すことで、予定するペプチドを効率的に製造することができる。
得られたペプチド(式(1)のペプチド(又は式(5)のペプチド))のN末端保護基は、公知の方法によって脱保護することができる。
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
なお、実施例において、使用した測定機器は以下の通りである。
NMR:BRUKER社製核磁気共鳴装置、500MHz
測定条件:重溶媒CDCl使用、磁場強度:11.7T
純度:LC/MS:Waters社製。UPLC部ACQUITY QDa 検出器、MS部ACQUITY QDa 検出器
使用カラム:株式会社ダイセル製CHIRALPAK ZWIX(+)、溶媒:ギ酸水溶液+ジエチルアミンメタノール溶液。測定温度:25℃。
実施例1
(1-1) Boc-Gly-Pro-Hyp-OHの製造
出発原料として、N末端はtert-ブチルオキシカルボニル基(Boc)保護、C末端は無保護であるグリシン(Boc-Gly-OH)0.8633g(5mmol)をジクロロメタン20mLに溶解させ、0℃でクロロ蟻酸イソブチル(ClCOOiBu)1.0253g(7.5mmol)とトリエチルアミン 0.7592g(7.5mmol)を加えて撹拌した。その溶液にプロリン(Pro)0.8642g(7.5mmol)の炭酸水素ナトリウム水溶液(pH9.5)15mLを加え、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)0.20g(10mol%)を加えて、室温(20℃)で15時間撹拌した。得られた反応液を分液して有機層をとり、飽和食塩水20mLで洗浄、乾燥した。
得られた有機層に、クロロ蟻酸イソブチル1.0266g(7.5mmol)とトリエチルアミン0.7632g(7.5mmol)を0℃で加えて撹拌した。この溶液にヒドロキシプロリン(Hyp)1.0075g(7.5mmol)の炭酸水素ナトリウム水溶液(pH9.5)15mLを加え、室温(20℃)で15時間撹拌した。反応液に1N塩酸水溶液20mLを加えた後、分液して有機層をとり、得られた有機層を1N塩酸水溶液20mL、飽和食塩水20mLで順次洗浄した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、真空ラインにて乾燥することで、目的とするペプチド(Boc-Gly-Pro-Hyp-OH)1.2733g(トータル収率66%)を得た。
得られたペプチドのNMRチャートを図1に示す。
(1-2) Gly-Pro-Hyp-OHの製造
実施例1-1で得られたペプチド(Boc-Gly-Pro-Hyp-OH)に、4N塩化水素の酢酸エチル溶液50mLを0℃で加えた後、反応系の温度が室温に戻るまで攪拌し、更に4時間撹拌した。反応液中に析出した固体をろ過してとり、この固体を酢酸エチル30mLで洗浄を行い、目的のペプチド(H-Gly-Pro-Hyp-OH塩酸塩)1.0622 g(純度98%)を得た。
得られたペプチドのNMRチャートを図2に示す。
実施例2 Gly-Pro-Hyp-OHの製造
出発原料として、N末端はベンジルオキシカルボニル基(Cbz)保護、C末端は無保護であるグリシン(Cbz-Gly-OH)1.0420g(5mmol)をジクロロメタン20mLに溶解させ、0℃でクロロギ酸イソブチル1.0300g(7.5mmol)とトリエチルアミン0.7599g(7.5mmol)を加えて撹拌した。その溶液にプロリン(Pro)0.9001g(7.5mmol)の炭酸水素ナトリウム水溶液(pH9.5)15mL、次いで臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)0.20g(10mol%)を加えて、室温(20℃)で、15時間撹拌した。得られた反応液に1N塩酸水溶液20mLを加えた後、分液して有機層をとり、得られた有機層を飽和食塩水20mLで洗浄し、乾燥させた。
得られた有機層に、クロロギ酸イソブチル1.0097g(7.5mmol)とトリエチルアミン0.7625g(7.5mmol)を0℃で加えて撹拌した。この溶液にヒドロキシプロリン(Hyp)1.01g(7.5mmol)の炭酸水素ナトリウム水溶液(pH9.5)15mLを加え、室温(20℃)で15時間撹拌した。反応液に1N塩酸水溶液20mLを加えた後、分液して有機層をとり、得られた有機層を1N塩酸20mL、飽和食塩水20mLで順次洗浄した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、真空ラインにて乾燥することで、保護ペプチド(CBz-Gly-Pro-Hyp-OH)1.2916g(収率62%)を得た。
得られた保護ペプチドのNMRチャートを図3に示す。
保護ペプチド(Cbz-Gly-Pro-Hyp-OH)はそのまま、パラジウム炭素触媒(Pd/C)50mg、メタノール10mLを用いて、大気圧、水素雰囲気下にて54時間脱保護反応を行うことで目的とするペプチド(H-Gly-Pro-Hyp-OH)を得た。
得られたペプチドのNMRチャートを図4に示す。
実施例3 Boc-Gly-Pro-Gly-Pro-Gly-Val-Leu-OHの合成
出発原料として、N末端はtert-ブチルオキシカルボニル基(Boc)保護、C末端は無保護であるグリシン(Boc-Gly-OH;5mmol)をジクロロメタン20mLに溶解させ、0℃でクロロギ酸イソブチル(7.5mmol)とトリエチルアミン(7.5mmol)を加えて撹拌した。この溶液にプロリン(Pro;7.5mmol)の炭酸水素ナトリウム水溶液(pH9.5)15mL、次いで臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB;10mol%)を加えて、室温(20℃)で15時間撹拌した。得られた反応液に1N塩酸水溶液20mLを加えた後、分液して有機層をとり、得られた有機層を飽和食塩水20mLで洗浄し、乾燥させた。
得られた有機層に、0℃でクロロギ酸イソブチル(7.5mmol)とトリエチルアミン(7.5mmol)を加えて撹拌した後、グリシン(Gly;7.5mmol)の炭酸水素ナトリウム水溶液(pH9.5)15mLを加えて、室温(20℃)で15時間撹拌し、得られた反応液に1N塩酸水溶液20mLを加えた後、分液して有機層をとり、得られた有機層を飽和食塩水20mLで洗浄し、乾燥させて有機層を得た。以後、導入するアミノ酸をグリシンに替えてこの操作を繰り返すことで、目的とするペプチドを製造することができる。本実施例においては、グリシンに替えて、プロリンを用いて反応させ、次いでグリシン、バリン、ロイシンを順次反応させることで、目的のペプチド(Boc-Gly-Pro-Gly-Pro-Gly-Val-Leu-OH)を製造した。
ペプチドの生成はLC-MSで測定し、想定化合物と同じMSのピークを確認した。

Claims (8)

  1. ペプチドの製造方法であって、
    アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドのカルボキシル基と、
    アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドのナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウム塩とを、
    水と疎水性有機溶媒とからなる二層系溶媒中で反応させる、製造方法。
  2. 更に、アミノ基が保護されていない同一若しくは異なるアミノ酸、又はN末端が保護されていない同一若しくは異なる中間体ペプチドのナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウム塩を反応させる、請求項1に記載の製造方法。
  3. ペプチドの製造方法であって、
    アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドのカルボキシル基と、
    アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドのナトリウム又はカリウム塩とを、
    水と疎水性有機溶媒とからなる二層系溶媒中で反応させる、製造方法。
  4. 更に、アミノ基が保護されていない同一若しくは異なるアミノ酸、又はN末端が保護されていない同一若しくは異なる中間体ペプチドのナトリウム又はカリウム塩を反応させる、請求項に記載の製造方法。
  5. ペプチドの製造方法であって、
    アミノ基が保護されたアミノ酸又は中間体ペプチドのカルボキシル基と、
    アミノ基が保護されていないアミノ酸又はN末端が保護されていない中間体ペプチドのナトリウム塩とを、
    水と疎水性有機溶媒とからなる二層系溶媒中で反応させる、製造方法。
  6. 更に、アミノ基が保護されていない同一若しくは異なるアミノ酸、又はN末端が保護されていない同一若しくは異なる中間体ペプチドのナトリウム塩を反応させる、請求項に記載の製造方法。
  7. 前記水がアルカリ性を示す水溶液である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 相間移動触媒の存在下で行う、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
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