(本開示に至る経緯)
特許文献1のように、本溶接により生産されたワークの溶接ビードの形状に関する特徴量(例えば、ビード幅、ビード高さなど)の算出値が許容範囲内にある時に良品であると判定するなど、溶接ビードの外観形状検査を自動的に行う装置構成は従来から知られている。ところが、実際の溶接現場では、作業員が目視によって溶接ビードの外観の良し悪しを検査してワークの本溶接が成功であったか否かを判断することが多い。
溶接ビードの外観検査では、上述した溶接ビードの形状に関する特徴量以外に、例えば溶接ビードの位置ずれ、穴あきの有無、スパッタなどの溶接不良の有無など、検査項目が多岐にわたることがあり、またユーザによっては良品と判定するか否かの判定基準が画一的でないことも多い。このため、溶接ビードの外観検査では、検査項目がユーザごとに異なる点だけでなく、完成品であるワークの良し悪しがユーザごとに異なる点を踏まえ、検査項目を任意に調整可能なカスタマイズ性とともに外観検査のユーザビリティがより一層求められる点において従来技術に対して改善の余地があったと考えられる。
そこで、以下の実施の形態では、本溶接により生産されたワークのビード外観検査をより効率的に行うビード外観検査装置、ビード外観検査方法、プログラムおよびビード外観検査システムの例を説明する。
さらに、溶接ビードの外観検査において、溶接の不良箇所の大きさや個数等の計測値に対して閾値を設定し、計測値と閾値とを比較することにより、溶接の良否判定を行うことがある。ところが、ユーザごとに品質基準は異なり得るものであり、ワークの特性等を総合的に考慮することも必要であるため、最適な判定用閾値を決定することは容易ではない。そのため、良品と不良品の境界領域にあるワークに対する外観検査の判定精度が低下し、不良品の見逃しや、良品を不良品であると誤検出するなどの事態が生じ得る。これらの事態は、溶接を行う製品の生産性を低下させる。
そこで、以下の実施の形態では、良品と不良品との境界領域にグレーゾーンの判定区分を設けて、グレー判定された場合にはユーザによる目視確認や、より精密な条件での再度の外観検査等を行うことにより、溶接を行う製品の生産性を向上させるビード外観検査装置、ビード外観検査方法、プログラムおよびビード外観検査システムの例を説明する。
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るビード外観検査装置、ビード外観検査方法、プログラムおよびビード外観検査システムを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
(実施の形態1)
実施の形態1に係るビード外観検査装置は、本溶接により生産されたワークの溶接ビードに関する入力データを入力し、入力データと良品ワークのマスタデータとを用い、入力データとマスタデータとの比較に基づいて溶接ビードの形状に関する第1検査判定を行うとともに、k(k:1以上の整数)種類の人工知能を搭載し、入力データを対象とするk種類の人工知能の処理に基づいて溶接ビードの溶接不良に関する第2検査判定を行う。溶接ビードの溶接不良は、例えば、穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起である。なお、溶接不良は、上述したものに限定されない。ビード外観検査装置は、第1外観検査およびk個の第2検査判定のそれぞれの判定結果に基づいて、溶接ビードの外観検査の結果を出力デバイスに出力する。
以下、本溶接される対象物(例えば金属)を「元ワーク」、本溶接により生産(製造)された対象物を「ワーク」、さらに、「ワーク」の外観検査にて検知された溶接の不良箇所がリペア溶接された対象物を「リペアワーク」とそれぞれ定義する。
元ワークと他の元ワークとが溶接ロボットにより接合等されてワークを生産する工程を「本溶接」、ワークの不良箇所が溶接ロボットにより補修等の修正がなされる工程を「リペア溶接」と定義する。
なお、「ワーク」あるいは「リペアワーク」は、1回の本溶接により生産されたワークに限らず、2回以上の本溶接により生産された複合的なワークであってもよい。
(溶接システムの構成)
図1は、溶接システム100のシステム構成例を示す概略図である。溶接システム100は、外部ストレージST、入力インターフェースUI1およびモニタMN1のそれぞれと接続された上位装置1と、ロボット制御装置2と、検査制御装置3と、センサ4と、本溶接ロボットMC1aと、リペア溶接ロボットMC1bとを含む構成である。本溶接ロボットMC1aおよびリペア溶接ロボットMC1bは、それぞれ別体のロボットとして構成されてもよいが、単一の溶接ロボットMC1として構成されてもよい。以降の説明を分かり易くするために、溶接ロボットMC1により本溶接およびリペア溶接の工程が実行されるとして説明する。なお、図1には1台のロボット制御装置2と本溶接ロボットMC1aおよびリペア溶接ロボットMC1bとのペアが1つだけ示されているが、このペアは複数設けられてよい。図1では、センサ4は、溶接ロボットMC1と別体として図示されているが、溶接ロボットMC1と一体化されて設けられてもよい(図2参照)。
上位装置1は、ロボット制御装置2を介して溶接ロボットMC1により実行される本溶接の開始および完了を統括して制御する。例えば、上位装置1は、ユーザ(例えば溶接作業者あるいはシステム管理者。以下同様。)により予め入力あるいは設定された溶接関連情報を外部ストレージSTから読み出し、溶接関連情報を用いて、溶接関連情報の内容を含めた本溶接の実行指令を生成して対応するロボット制御装置2に送る。上位装置1は、溶接ロボットMC1による本溶接が完了した場合に、溶接ロボットMC1による本溶接が完了した旨の本溶接完了報告をロボット制御装置2から受信し、対応する本溶接が完了した旨のステータスに更新して外部ストレージSTに記録する。なお、上述した本溶接の実行指令は上位装置1により生成されることに限定されず、例えば本溶接が行われる工場等内の設備の操作盤(例えばPLC:Programmable Logic Controller)、あるいはロボット制御装置2の操作盤(例えばTP:Teach Pendant)により生成されてもよい。なお、ティーチペンダント(TP)は、ロボット制御装置2に接続された溶接ロボットMC1を操作するための装置である。
また、上位装置1は、ロボット制御装置2、検査制御装置3およびセンサ4を用いたビード外観検査の開始および完了を統括して制御する。例えば、上位装置1は、ロボット制御装置2から本溶接完了報告を受信すると、溶接ロボットMC1により生産されたワークのビード外観検査の実行指令を生成してロボット制御装置2および検査制御装置3のそれぞれに送る。上位装置1は、ビード外観検査が完了した場合に、ビード外観検査が完了した旨の外観検査報告を検査制御装置3から受信し、対応するビード外観検査が完了した旨のステータスに更新して外部ストレージSTに記録する。
また、上位装置1は、ロボット制御装置2を介して溶接ロボットMC1により実行されるリペア溶接の開始および完了を統括して制御する。例えば、上位装置1は、検査制御装置3から外観検査報告を受信すると、溶接ロボットMC1により生産されたワークのリペア溶接の実行指令を生成してロボット制御装置2に送る。上位装置1は、リペア溶接が完了した場合に、リペア溶接が完了した旨のリペア溶接完了報告をロボット制御装置2から受信し、対応するリペア溶接が完了した旨のステータスに更新して外部ストレージSTに記録する。
ここで、溶接関連情報とは、溶接ロボットMC1により実行される本溶接の内容を示す情報であり、本溶接の工程ごとに予め作成されて外部ストレージSTに登録されている。溶接関連情報は、例えば本溶接に使用される元ワークの数と、本溶接に使用される元ワークのID、名前および溶接箇所を含むワーク情報と、本溶接が実行される実行予定日と、被溶接ワークの生産台数と、本溶接時の各種の溶接条件と、を含む。なお、溶接関連情報は、上述した項目のデータに限定されなくてよい。ロボット制御装置2は、上位装置1から送られた本溶接の実行指令に基づいて、その実行指令で指定される元ワークを用いた本溶接の実行を溶接ロボットMC1に開始させる。なお、上述した溶接関連情報は、上位装置1が外部ストレージSTを参照して管理することに限定されず、例えばロボット制御装置2において管理されてもよい。この場合、ロボット制御装置2は本溶接が完了した状態を把握できるので、溶接関連情報のうち溶接工程が実行される予定の実行予定日の代わりに実際の実行日が管理されてよい。なお本明細書において、本溶接の種類は問わないが、説明を分かり易くするために、複数の元ワークを接合して1つのワークを生産する工程を例示して説明する。
上位装置1は、モニタMN1、入力インターフェースUI1および外部ストレージSTのそれぞれとの間でデータの入出力が可能となるように接続され、さらに、ロボット制御装置2との間でデータの通信が可能となるように接続される。上位装置1は、モニタMN1および入力インターフェースUI1を一体に含む端末装置P1でもよく、さらに、外部ストレージSTを一体に含んでもよい。この場合、端末装置P1は、本溶接の実行に先立ってユーザにより使用されるPC(Personal Computer)である。なお、端末装置P1は、上述したPCに限らず、例えばスマートフォン、タブレット端末等の通信機能を有するコンピュータ装置でよい。
モニタMN1は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)等の表示用デバイスを用いて構成されてよい。モニタMN1は、例えば上位装置1から出力された、本溶接が完了した旨の通知、ビード外観検査が完了した旨の通知、あるいはリペア溶接が完了した旨の通知を示す画面を表示してよい。また、モニタMN1の代わりに、あるいはモニタMN1とともにスピーカ(図示略)が上位装置1に接続されてもよく、上位装置1は、本溶接が完了した旨の通知、ビード外観検査が完了した旨の通知、あるいはリペア溶接が完了した旨の内容の音声を、スピーカを介して出力してもよい。
入力インターフェースUI1は、ユーザの入力操作を検出して上位装置1に出力するユーザインターフェースであり、例えば、マウス、キーボードまたはタッチパネル等を用いて構成されてよい。入力インターフェースUI1は、例えばユーザが溶接関連情報を作成する時の入力操作を受け付けたり、ロボット制御装置2への本溶接の実行指令を送る時の入力操作を受け付けたりする。
外部ストレージSTは、例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)またはソリッドステートドライブ(Solid State Drive)を用いて構成される。外部ストレージSTは、例えば本溶接ごとに作成された溶接関連情報のデータ、本溶接により生産されたワークあるいはリペア溶接により補修等されたリペアワークのステータス(生産状況)、ワークあるいはリペアワークのワーク情報(上述参照)を記憶する。
ビード外観検査装置の一例としてのロボット制御装置2は、上位装置1との間でデータの通信が可能に接続されるとともに、溶接ロボットMC1との間でデータの通信が可能に接続される。ロボット制御装置2は、上位装置1から送られた本溶接の実行指令を受信すると、その実行指令に基づいて対応する溶接ロボットMC1を制御して本溶接を実行させる。ロボット制御装置2は、本溶接の完了を検出すると本溶接が完了した旨の本溶接完了報告を生成して上位装置1に通知する。これにより、上位装置1は、ロボット制御装置2による本溶接の完了を適正に検出できる。なお、ロボット制御装置2による本溶接の完了の検出方法は、例えばワイヤ送給装置300が備えるセンサ(図示略)からの本溶接の完了を示す信号に基づいて判別する方法でよく、あるいは公知の方法でもよく、本溶接の完了の検出方法の内容は限定されなくてよい。
また、ロボット制御装置2は、上位装置1から送られたビード外観検査の実行指令を受信すると、ロボット制御装置2により作成あるいは予め準備されている外観検査用プログラムに従い、センサ4が取り付けられた溶接ロボットMC1(図2参照)を制御して、その実行指令に基づいて対応するワークのビード外観検査を実行する。なお、ビード外観検査が完了した旨の外観検査報告は検査制御装置3から上位装置1に送られるが、ロボット制御装置2自ら、あるいは検査制御装置3からの指示を受けたロボット制御装置2から上位装置1に送られてもよい。これにより、上位装置1は、ビード外観検査の完了を適切に検出できる。
また、ロボット制御装置2は、上位装置1から送られたリペア溶接の実行指令を受信すると、検査制御装置3により作成されるリペア溶接プログラムに従い、その実行指令に基づいて対応する溶接ロボットMC1を制御してリペア溶接を実行させる。ロボット制御装置2は、リペア溶接の完了を検出するとリペア溶接が完了した旨のリペア溶接完了報告を生成して上位装置1に通知する。これにより、上位装置1は、ロボット制御装置2に基づくリペア溶接の完了を適正に検出できる。なお、ロボット制御装置2によるリペア溶接の完了の検出方法は、例えばワイヤ送給装置300が備えるセンサ(図示略)からのリペア溶接の完了を示す信号に基づいて判別する方法でよく、あるいは公知の方法でもよく、リペア溶接の完了の検出方法の内容は限定されなくてよい。
溶接ロボットMC1は、ロボット制御装置2との間でデータの通信が可能に接続される。溶接ロボットMC1は、対応するロボット制御装置2の制御の下で、上位装置1から指令された本溶接あるいはリペア溶接を実行する。なお、上述したように、溶接ロボットMC1は、本溶接用に設けられた本溶接ロボットMC1aと、リペア溶接用に設けられたリペア溶接ロボットMC1bとにより構成されてもよい。また、センサ4が溶接ロボットMC1に一体的に取り付けられている場合には、溶接ロボットMC1は、外観検査用プログラムに従って本溶接時あるいはリペア溶接時の溶接ロボットMC1の移動軌跡に沿ってセンサ4を移動することで、上位装置1から指令されたビード外観検査の実行を支援する。
ビード外観検査装置の一例としての検査制御装置3は、上位装置1、ロボット制御装置2およびセンサ4のそれぞれとの間でデータの通信が可能に接続される。検査制御装置3は、上位装置1から送られたビード外観検査の実行指令を受信すると、溶接ロボットMC1により生産されたワークの溶接箇所のビード外観検査(例えば、ワークに形成された溶接ビードが予め既定された溶接基準を満たすか否かの検査)をセンサ4とともに実行する。なお、ビード外観検査の詳細については、図4および図5を参照して後述するが、例えば、検査制御装置3は、ビード外観検査の実行指令に含まれるワークの溶接箇所情報に基づいて、センサ4により取得された溶接ビードの形状に関する入力データ(例えば、溶接ビードの3次元形状を特定可能な点群データ)を用い、ワークごとに予め既定された良品ワークのマスタデータとの比較に基づいてビード外観検査を行う。以下、このようなビード外観検査を、「第1検査判定」と定義する。また、検査制御装置3は、k(k:1以上の整数)種類の人工知能(AI)を搭載しかつその人工知能によるニューラルネットワークをそれぞれ形成し、上述した入力データを対象としたAIに基づく溶接不良の有無を判別するビード外観検査を行う。以下、このようなビード外観検査を、「第2検査判定」と定義する。実施の形態1では、検査制御装置3は、上述した第1検査判定および第2検査判定を実行することが可能である。検査制御装置3は、第1検査判定および第2検査判定をそれぞれ実行した結果を用いてビード外観検査の総合判定を行い、この総合判定結果とビード外観検査が完了した旨の通知とを含む外観検査報告を生成して上位装置1に送るとともに、モニタMN2に出力する。
また、検査制御装置3は、ワークのビード外観検査において第2検査判定によって溶接不良を検知したと判定した場合に、その溶接不良の箇所(いわゆる検出点)の位置情報を含む外観検査結果を用いて、溶接不良の箇所の補修等の修正を行う旨のリペア溶接プログラムを作成する。検査制御装置3は、このリペア溶接プログラムと外観検査結果とを対応付けてロボット制御装置2に送る。
センサ4は、検査制御装置3との間でデータの通信が可能に接続される。センサ4が溶接ロボットMC1に取り付けられている場合(図2参照)、センサ4は、ロボット制御装置2の制御に基づくマニピュレータ200の駆動に応じて、ワークWkが載置された載置台を3次元のスキャンが可能に稼動可能である。センサ4は、ロボット制御装置2の制御に基づくマニピュレータ200の駆動に応じて、載置台(図2参照)に置かれたワークの3次元形状を特定可能なデータ(例えば後述する点群データOD1)を取得して検査制御装置3に送る。
出力デバイスの一例としてのモニタMN2は、例えばLCDまたは有機EL等の表示用デバイスを用いて構成されてよい。モニタMN2は、例えば検査制御装置3から出力された、ビード外観検査が完了した旨の通知、あるいはその通知とビード外観検査の結果(例えば上述した総合判定の結果)とを示す画面を表示する。また、モニタMN2の代わりに、あるいはモニタMN2とともにスピーカ(図示略)が検査制御装置3に接続されてもよく、検査制御装置3は、ビード外観検査が完了した旨の通知、あるいはその通知とビード外観検査の結果(例えば上述した総合判定の結果)との内容を示す音声を、スピーカを介して出力してもよい。
図2は、実施の形態1に係る検査制御装置3、ロボット制御装置2および上位装置1の内部構成例を示す図である。説明を分かり易くするために、図2ではモニタMN1,MN2および入力インターフェースUI1の図示を省略する。なお、図2に示されるワークWkは、本溶接が行われる前に載置される元ワークでもよいし、ビード外観検査の対象となるワーク(つまり本溶接により生産されたワーク)でもよいし、リペア溶接の対象となるワークでもよい。
溶接ロボットMC1は、ロボット制御装置2の制御の下で、例えば上位装置1から指令された本溶接、ビード外観検査時のセンサ4の移動、リペア溶接等の各種の工程を実行する。溶接ロボットMC1は、本溶接あるいはリペア溶接の工程において、例えばアーク溶接を行う。しかし、溶接ロボットMC1は、アーク溶接以外の他の溶接(例えば、レーザ溶接、ガス溶接)等を行ってもよい。この場合、図示は省略するが、溶接トーチ400に代わって、レーザヘッドを、光ファイバを介してレーザ発振器に接続してよい。溶接ロボットMC1は、マニピュレータ200と、ワイヤ送給装置300と、溶接ワイヤ301と、溶接トーチ400とを少なくとも含む構成である。
マニピュレータ200は、多関節のアームを備え、ロボット制御装置2のロボット制御部25からの制御信号に基づいて、それぞれのアームを可動させる。これにより、マニピュレータ200は、ワークWkと溶接トーチ400との位置関係(例えば、ワークWkに対する溶接トーチ400の角度)をアームの駆動によって変更できる。
ワイヤ送給装置300は、ロボット制御装置2からの制御信号に基づいて、溶接ワイヤ301の送給速度を制御する。なお、ワイヤ送給装置300は、溶接ワイヤ301の残量を検出可能なセンサ(図示略)を備えてよい。ロボット制御装置2は、このセンサの出力に基づいて、本溶接あるいはリペア溶接の工程が完了したことを検出できる。
溶接ワイヤ301は、溶接トーチ400に保持されている。溶接トーチ400に電源装置500から電力が供給されることで、溶接ワイヤ301の先端とワークWkとの間にアークが発生し、アーク溶接が行われる。なお、溶接トーチ400にシールドガスを供給するための構成等は、説明の便宜上、これらの図示および説明を省略する。
上位装置1は、ユーザにより予め入力あるいは設定された溶接関連情報を用いて、本溶接、ビード外観検査、リペア溶接の各種の工程の実行指令を生成してロボット制御装置2に送る。なお、上述したように、センサ4が溶接ロボットMC1に一体的に取り付けられている場合には、ビード外観検査の実行指令は、ロボット制御装置2および検査制御装置3の両方に送られる。上位装置1は、通信部10と、プロセッサ11と、メモリ12とを少なくとも含む構成である。
通信部10は、ロボット制御装置2および外部ストレージSTのそれぞれとの間でデータの通信が可能に接続される。通信部10は、プロセッサ11により生成される本溶接、ビード外観検査、あるいはリペア溶接の各種の工程の実行指令をロボット制御装置2に送る。通信部10は、ロボット制御装置2から送られる本溶接完了報告、外観検査報告、リペア溶接完了報告を受信してプロセッサ11に出力する。なお、本溶接あるいはリペア溶接の実行指令には、例えば溶接ロボットMC1が備えるマニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および電源装置500のそれぞれを制御するための制御信号が含まれてもよい。
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成され、メモリ12と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ11は、メモリ12に保持されたプログラムを参照し、そのプログラムを実行することにより、セル制御部13を機能的に実現する。
メモリ12は、例えばプロセッサ11の処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、プロセッサ11の処理を規定したプログラムを格納するROM(Read Only Memory)とを有する。RAMには、プロセッサ11により生成あるいは取得されたデータが一時的に保存される。ROMには、プロセッサ11の処理を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ12は、外部ストレージSTから読み出された溶接関連情報のデータ、ワークあるいはリペアワークのステータス、ロボット制御装置2から送られたワークあるいはリペアワークのワーク情報(上述参照)のデータをそれぞれ記憶する。
セル制御部13は、外部ストレージSTに記憶されている溶接関連情報に基づいて、本溶接、ワークのビード外観検査、あるいはリペア溶接を実行するための実行指令を生成する。また、セル制御部13は、外部ストレージSTに記憶されている溶接関連情報に基づいて、本溶接された後のワークWk(例えばワーク)のビード外観検査時の溶接ロボットMC1の駆動に関する外観検査用プログラム、さらに、この外観検査用プログラムを含む外観検査用プログラムの実行指令を作成する。なお、この外観検査用プログラムは予め作成されて外部ストレージSTに保存されていてもよく、この場合には、セル制御部13は、外部ストレージSTから単に外観検査用プログラムを読み出して取得する。セル制御部13は、溶接ロボットMC1で実行される本溶接あるいはリペア溶接の各種の工程ごとに異なる実行指令を生成してよい。セル制御部13によって生成された本溶接あるいはリペア溶接の実行指令、あるいは外観検査用プログラムを含む外観検査用プログラムの実行指令は、通信部10を介して、対応するロボット制御装置2、あるいはロボット制御装置2および検査制御装置3のそれぞれに送られる。
ロボット制御装置2は、上位装置1から送られた本溶接、ビード外観検査、あるいはリペア溶接の実行指令に基づいて、対応する溶接ロボットMC1(例えば、センサ4、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300、電源装置500)の処理を制御する。ロボット制御装置2は、通信部20と、プロセッサ21と、メモリ22とを少なくとも含む構成である。
通信部20は、上位装置1、検査制御装置3、溶接ロボットMC1との間でデータの通信が可能に接続される。なお、図2では図示を簡略化しているが、ロボット制御部25とマニピュレータ200との間、ロボット制御部25とワイヤ送給装置300との間、ならびに、電源制御部26と電源装置500との間は、それぞれ通信部20を介してデータの送受信が行われる。通信部20は、上位装置1から送られた本溶接、ビード外観検査あるいはリペア溶接の実行指令を受信する。通信部20は、本溶接により生産されたワークあるいはリペア溶接による修正によって生産されたリペアワークのワーク情報を上位装置1に送る。
ここで、ワーク情報には、ワークあるいはリペアワークのIDだけでなく、本溶接に使用される元ワークのID、名前、溶接箇所、本溶接の実行時の溶接条件、リペア溶接の実行時の溶接条件が少なくとも含まれる。さらに、ワーク情報には、ワークの不良箇所を示す検出点の位置を示す情報(例えば座標)が含まれてもよい。また、溶接条件あるいはリペア溶接条件は、例えば元ワークの材質および厚み、溶接ワイヤ301の材質およびワイヤ径、シールドガス種、シールドガスの流量、溶接電流の設定平均値、溶接電圧の設定平均値、溶接ワイヤ301の送給速度および送給量、溶接回数、溶接時間等である。また、これらの他に、例えば本溶接あるいはリペア溶接の種別(例えばTIG溶接、MAG溶接、パルス溶接)を示す情報、マニピュレータ200の移動速度および移動時間が含まれても構わない。
プロセッサ21は、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成され、メモリ22と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ21は、メモリ22に保持されたプログラムを参照し、そのプログラムを実行することにより、本溶接プログラム作成部23、演算部24、ロボット制御部25および電源制御部26を機能的に実現する。
メモリ22は、例えばプロセッサ21の処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ21の処理を規定したプログラムを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ21により生成あるいは取得されたデータが一時的に保存される。ROMには、プロセッサ21の処理を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ22は、上位装置1から送られた本溶接、ビード外観検査あるいはリペア溶接の実行指令のデータ、本溶接により生産されたワークあるいはリペア溶接により生産されたリペアワークのワーク情報のデータをそれぞれ記憶する。また、メモリ22は、溶接ロボットMC1が実行する本溶接の本溶接プログラムを記憶する。本溶接プログラムは、本溶接における溶接条件を用いて複数の元ワークを接合等する本溶接の具体的な手順(工程)を規定したプログラムである。
本溶接プログラム作成部23は、通信部20を介して上位装置1から送られた本溶接の実行指令に基づいて、実行指令に含まれる複数の元ワークのそれぞれのワーク情報(例えばID、名前、および元ワークの溶接箇所)を用いて、溶接ロボットMC1により実行される本溶接の本溶接プログラムを生成する。本溶接プログラムには、本溶接の実行中に電源装置500、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300、溶接トーチ400等を制御するための、溶接電流、溶接電圧、オフセット量、溶接速度、溶接トーチ400の姿勢等の各種のパラメータが含まれてよい。なお、本溶接プログラムは、プロセッサ21内に記憶されてもよいし、メモリ22内のRAMに記憶されてもよい。
演算部24は、各種の演算を行う。例えば、演算部24は、本溶接プログラム作成部23により生成された本溶接プログラムに基づいて、ロボット制御部25により制御される溶接ロボットMC1(具体的には、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および電源装置500のそれぞれ)を制御するためのパラメータの演算等を行う。
ロボット制御部25は、本溶接プログラム作成部23により生成された本溶接プログラムに基づいて、溶接ロボットMC1(具体的には、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および電源装置500のそれぞれ)を駆動させるための制御信号を生成する。ロボット制御部25は、この生成された制御信号を溶接ロボットMC1に送る。また、ロボット制御部25は、上位装置1から送られた外観検査用プログラムに基づいて、本溶接プログラムにて規定されている溶接ロボットMC1の動作範囲を対象とするようにビード外観検査中に溶接ロボットMC1のマニピュレータ200を駆動させる。これにより、溶接ロボットMC1に取り付けられたセンサ4(図2参照)は、溶接ロボットMC1の動作に伴って移動できて、ワークWkの溶接ビードの形状に関する入力データ(例えば溶接ビードの3次元形状を特定可能な点群データ)を取得できる。
電源制御部26は、本溶接プログラム作成部23により生成された本溶接プログラムと演算部24の演算結果とに基づいて、電源装置500を駆動させる。
検査制御装置3は、上位装置1から送られた外観検査の実行指令に基づいて、溶接ロボットMC1による本溶接により生産されたワークあるいはリペアワークのビード外観検査の処理を制御する。ビード外観検査は、例えば、ワークあるいはリペアワークに形成された溶接ビードが既定の溶接基準(例えば品質基準)を満たすか否かの検査であり、上述した第1検査判定および第2検査判定により構成される。以下の説明を簡単にするために、検査制御装置3は、センサ4により取得された溶接ビードの形状に関する入力データ(例えば溶接ビードの3次元形状を特定可能な点群データ)に基づいて、ワークWk(例えばワークあるいはリペアワーク)に形成された溶接ビードが所定の溶接基準を満たすか否かを、上述した第1検査判定および第2検査判定のそれぞれの結果に基づく総合判定によって判別する。検査制御装置3は、通信部30と、プロセッサ31と、メモリ32と、検査結果記憶部33とを少なくとも含む構成である。
通信部30は、上位装置1、ロボット制御装置2、センサ4との間でデータの通信が可能に接続される。なお、図2では図示を簡略化しているが、形状検出制御部35とセンサ4との間は、それぞれ通信部30を介してデータの送受信が行われる。通信部30は、上位装置1から送られたビード外観検査の実行指令を受信する。通信部30は、センサ4を用いたビード外観検査の総合判定結果(例えば、ワークあるいはリペアワークにおける溶接ビードのビード欠け、ビード位置ずれ、溶接不良の有無、溶接不良の種別ならびに位置)を上位装置1に送る。
プロセッサ31は、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成され、メモリ32と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ31は、メモリ32に保持されたプログラムを参照し、そのプログラムを実行することにより、判定閾値記憶部34、形状検出制御部35、データ処理部36、検査結果判定部37およびリペア溶接プログラム作成部38を機能的に実現する。
メモリ32は、例えばプロセッサ31の処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ31の処理を規定したプログラムを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ31により生成あるいは取得されたデータが一時的に保存される。ROMには、プロセッサ31の処理を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ32は、上位装置1から送られたワークのビード外観検査の実行指令のデータ、本溶接により生成されたワークあるいはリペア溶接により生成されたリペアワークのワーク情報のデータをそれぞれ記憶する。また、メモリ32は、リペア溶接プログラム作成部38により作成されたリペア溶接プログラムのデータを記憶する。リペア溶接プログラムは、リペア溶接における溶接条件と検出点(上述参照)に最も近接する溶接ロボットMC1の動作軌跡上の対応する箇所(対応点)の位置情報とを用いて溶接ビードのビード欠け、ビード位置ずれあるいは溶接不良の箇所の補修等の修正を行うリペア溶接の具体的な手順(工程)を規定したプログラムである。このプログラムは、リペア溶接プログラム作成部38により作成され、検査制御装置3からロボット制御装置2に送られる。
検査結果記憶部33は、例えばハードディスクあるいはソリッドステートドライブを用いて構成される。検査結果記憶部33は、プロセッサ31により生成あるいは取得されるデータの一例として、ワークWk(例えばワークあるいはリペアワーク)における溶接箇所のビード外観検査の結果を示すデータを記憶する。このビード外観検査の結果を示すデータは、例えば検査結果判定部37により生成される。
判定閾値記憶部34は、例えばプロセッサ31内に設けられたキャッシュメモリにより構成され、溶接箇所に応じて検査結果判定部37によるビード外観検査の処理に用いられる閾値(例えば、溶接不良の種別ごとに設定されたそれぞれの閾値)を記憶する。それぞれの閾値は、例えば溶接ビードの位置ずれの許容範囲、溶接ビードの長さ、高さ、幅のそれぞれの閾値、穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起のそれぞれの閾値である。判定閾値記憶部34は、リペア溶接後のビード外観検査時の各閾値として、顧客等から要求される最低限の溶接基準(品質)を満たす許容範囲(例えば、最小許容値、最大許容値など)を記憶してよい。さらに、判定閾値記憶部34は、溶接箇所ごとにビード外観検査の回数上限値を記憶してもよい。これにより、検査制御装置3は、リペア溶接によって不良箇所を修正する際に所定の回数上限値を上回る場合に、溶接ロボットMC1による自動リペア溶接による不良箇所の修正が困難あるいは不可能と判定して、溶接システム100の稼動率の低下を抑制できる。判定閾値記憶部34はさらに、上述のような閾値に基づく後述のグレーゾーンの範囲を示す値を記憶してよい。
形状検出制御部35は、上位装置1から送られたワークWk(例えばワーク)の溶接箇所のビード外観検査の実行指令に基づいて、ビード外観検査においてロボット制御装置2が外観検査用プログラムに基づいてセンサ4が取り付けられた溶接ロボットMC1を動作させている間、センサ4から送られた溶接ビードの形状に関する入力データ(例えば溶接ビードの3次元形状を特定可能な点群データ)を取得する。すなわち、形状検出制御部35は、入力データ(例えば溶接ビードの3次元形状を特定可能な点群データ)の入力部となる。形状検出制御部35は、上述したロボット制御装置2によるマニピュレータ200の駆動に応じてセンサ4が溶接ビードを撮像可能(言い換えると、溶接箇所の3次元形状を検出可能)な位置に到達すると、例えばレーザ光線をセンサ4から照射させて溶接ビードの形状に関する入力データ(例えば溶接ビードの3次元形状を特定可能な点群データ)を取得させる。形状検出制御部35は、センサ4により取得された入力データ(上述参照)を受信すると、この入力データをデータ処理部36に渡す。
データ処理部36は、形状検出制御部35からの溶接ビードの形状に関する入力データ(上述参照)を取得すると、検査結果判定部37での第1検査判定用に適したデータ形式に変換するとともに、検査結果判定部37での第2検査判定用に適したデータ形式に変換する。データ形式の変換には、いわゆる前処理として、入力データ(つまり点群データ)に含まれる不要な点群データ(例えばノイズ)が除去される補正処理が含まれて構わないし、第1検査判定用には上述した前処理は省略されてもよい。データ処理部36は、第1検査判定用に適したデータ形式とし、例えば入力された形状データに対して統計処理を実行することで、溶接ビードの3次元形状を示す画像データを生成する。なお、データ処理部36は、第1検査判定用のデータとして、溶接ビードの位置および形状を強調するために溶接ビードの周縁部分を強調したエッジ強調補正を行ってもよい。なお、データ処理部36は、溶接不良の箇所ごとにビード外観検査の実行回数をカウントし、ビード外観検査の回数がメモリ32に予め記憶された回数を超えても溶接検査結果が良好にならない場合、自動リペア溶接による溶接不良の箇所の修正が困難あるいは不可能と判定してよい。この場合、検査結果判定部37は、溶接不良の箇所の位置および溶接不良の種別(例えば、穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起)を含むアラート画面を生成し、生成されたアラート画面を、通信部30を介して上位装置1に送る。上位装置1に送られたアラート画面は、モニタMN1に表示される。なお、このアラート画面は、モニタMN2に表示されてもよい。
例えば、第2検査判定用に適したデータ形式の変換には、いわゆる前処理として、AI(つまり、後述する第2検査判定部372~第N検査判定部37N)での処理に適するように、入力データ(つまり溶接ビードの点群データ)の形状を所定の形状(例えば直線形状)に変換するための平面化処理が含まれる。上述したように、溶接ビードの形状は、直線状、曲線状、ウィービングの有無などにより多岐にわたる。このため、それぞれの形状ごとに溶接不良(上述参照)の種別を検知可能となるAI(例えばニューラルネットワーク)の学習処理が非常に煩雑な処理となり、現実的でない。そこで、実施の形態1では、AI(つまり、後述する第2検査判定部372~第N検査判定部37N)は、溶接ビードの形状が例えば直線形状である場合の溶接不良(上述参照)をそれぞれ検知可能となるように予め学習処理が行われて作成された学習済みモデルを実行可能である。これにより、AI(つまり、後述する第2検査判定部372~第N検査判定部37N)は、データ処理部36によって平面化処理が施されて溶接ビードの形状が直線化された点群データを入力しさえすれば、溶接不良を高精度に検知できる。
検査結果判定部37は、合計N(N:2以上の整数)種類のビード外観検査(例えば、上述した第1検査判定および第2検査判定のそれぞれ)を実行可能である。具体的には、検査結果判定部37は、第1検査判定部371,第2検査判定部372,…,第N検査判定部を有する。図2の説明を分かり易く簡易化するため、N=2として説明するが、N=3以上の整数であっても同様である。
第1検査判定部371は、判定閾値記憶部34に記憶された閾値を用い、第1検査判定(つまり、センサ4により取得された溶接ビードの形状に関する入力データとワークごとに予め既定された良品ワークのマスタデータとの比較に基づくビード外観検査)を行い、溶接ビードの形状信頼性(例えば直線状あるいは曲線状の溶接線に沿っているか否か)、ビード欠け、およびビード位置ずれを検査する(図5参照)。図5は、複数の検査項目ごとの第1検査判定および第2検査判定のそれぞれの適正例を示すテーブルである。第1検査判定部371は、第1検査判定用にデータ処理部36によってデータ変換されたデータ(例えば点群データに基づいて生成された画像データ)と良品ワークのマスタデータとの比較(いわゆる画像処理)を行う。このため、図5に示されるように、第1検査判定部371は、溶接ビードの形状信頼性、ビード欠け、およびビード位置ずれを高精度に検査することができる。第1検査判定部371は、溶接ビードの形状信頼性、ビード欠けおよびビード位置ずれの検査結果を示す検査スコアを算出し、この検査スコアの算出値を第1検査判定結果として作成する。
第2検査判定部372~第N検査判定部37Nは、第2検査判定(つまり、k=(N-1)種類の人工知能によるニューラルネットワークをそれぞれ形成し、センサ4により取得された溶接ビードの形状に関する入力データ、あるいはその入力データがデータ処理部36によって前処理された後の入力データを対象としたAIに基づく溶接不良の有無を判別するビード外観検査)を行い、溶接ビードの穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタの有無を検査する(図5参照)。溶接ビードの穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタはあくまで例示的に列挙されたものであり、第N検査判定部37Nにより検査される不良種別はこれらに限定されない。第2検査判定部372~第N検査判定部37Nのそれぞれは、該当する種別の溶接不良を検知したと判定した場合には、その溶接不良が検知された溶接ビードの位置を特定する。第2検査判定部372~第N検査判定部37Nのそれぞれは、事前に溶接不良の種別ごとあるいは溶接不良の種別のグループごとに学習処理によって得られた学習モデル(AI)を用いて、それぞれの溶接不良の有無を判別する。これにより、第2検査判定部372~第N検査判定部37Nのそれぞれは、例えば溶接ビードの穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起の有無を高精度に検査することができる。なお、第2検査判定部372~第N検査判定部37Nのそれぞれは、第1検査判定部371で実行される溶接ビードの形状信頼性、ビード欠け、およびビード位置ずれの検査は実行しない。第2検査判定部372~第N検査判定部37Nは、溶接ビードの穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起の検査結果(言い換えると、発生確率を示す検査スコア)を算出し、この検査スコアの算出値を第2検査判定結果として作成する。
従って、図5に示されるように、検査結果判定部37は、それぞれの種別の溶接不良の検査に適するように第1検査判定と第2検査判定とを併用的に使い分けて実行することで、溶接ビードの形状信頼性、ビード欠け、ビード位置ずれ、穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起の有無を網羅的かつ高精度に検査することができる。なお、上述した説明はN=2を例示したものであるが、N=3の場合、第2検査判定部372は溶接不良の種別として例えば溶接ビードの穴あき、ピットの有無をAIにより検知可能であり、第N検査判定部37N(N=3)は溶接不良の種別として例えば溶接ビードのアンダーカット、スパッタ、突起の有無を異なるAIにより検知可能である。つまり、第2検査判定では、検査項目となる溶接不良の種別の組み合わせ(例えば(穴あき、ピット)の組み合わせ、(アンダーカット、スパッタ、突起)の組み合わせ)ごとに異なるAIによって検知可能となるように任意に複数のAI(学習モデル)が用意されてよい。
検査結果判定部37は、第1検査判定部371により作成された第1検査判定結果と第2検査判定部372~第N検査判定部37Nのそれぞれにより作成された第2検査判定結果とを含む外観検査報告を作成してメモリ32に記憶するとともに、通信部30を介して上位装置1に送る。なお、検査結果判定部37は、上述した第1検査判定結果あるいは第2検査判定結果に含まれる検査スコアに基づいて、溶接ロボットMC1によるリペア溶接が可能であるか否か(言い換えると、溶接ロボットMC1によるリペア溶接がよいか、あるいは人手によるリペア溶接がよいか)を判定し、その判定結果を上述した外観検査報告に含めて出力してよい。
リペア溶接プログラム作成部38は、検査結果判定部37によるワークWk(例えばワークあるいはリペアワーク)の外観検査報告とワーク情報(例えばワークあるいはリペアワークの溶接不良の検出点の位置を示す座標等の情報)とを用いて、溶接ロボットMC1により実行されるべきワークWk(例えばワークあるいはリペアワーク)のリペア溶接プログラムを作成する。リペア溶接プログラムには、リペア溶接の実行中に電源装置500、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300、溶接トーチ400等を制御するための、溶接電流、溶接電圧、オフセット量、溶接速度、溶接トーチ400の姿勢等の各種のパラメータが含まれてよい。なお、生成されたリペア溶接プログラムは、プロセッサ31内に記憶されてもよいし、メモリ32内のRAMに記憶されてもよい。
センサ4は、例えば3次元形状センサであり、溶接ロボットMC1の先端に取り付けられ、ワークWk(例えばワーク)上の溶接箇所の形状を特定し得る複数の点群データを取得可能であり、この点群データに基づいて溶接箇所の3次元形状を特定可能な点群データを生成して検査制御装置3に送る。なお、センサ4は、溶接ロボットMC1の先端に取り付けられていなく、溶接ロボットMC1とは別個に配置されている場合には、検査制御装置3から送られた溶接箇所の位置情報に基づいて、ワークWk(例えば、ワークあるいはリペアワーク)上の溶接箇所を走査可能に構成されたレーザ光源(図示略)と、溶接箇所の周辺を含む撮像領域を撮像可能に配置され、溶接箇所に照射されたレーザ光のうち反射されたレーザ光の反射軌跡(つまり、溶接箇所の形状線)を撮像するカメラ(図示略)とにより構成されてよい。この場合、センサ4は、カメラにより撮像されたレーザ光に基づく溶接箇所の形状データ(言い換えると、溶接ビードの画像データ)を検査制御装置3に送る。なお、上述したカメラは、少なくともレンズ(図示略)とイメージセンサ(図示略)とを有して構成される。イメージセンサは、例えばCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semi-conductor)等の固体撮像素子であり、撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。
(溶接システムの動作)
次に、実施の形態1に係る溶接システム100による本溶接、ビード外観検査およびリペア溶接の一連の動作手順について、図3を参照して説明する。図3は、実施の形態1に係る溶接システム100による本溶接、ビード外観検査およびリペア溶接を含む一連の処理手順例を示すシーケンス図である。図3の説明では、複数の元ワークを用いた本溶接、そしてワークのビード外観検査が不合格(つまり溶接不良がある旨の総合判定結果)となったことに基づいて行われるリペア溶接の各工程に関して上位装置1とロボット制御装置2と検査制御装置3との間で行われる動作手順を例示して説明する。
図3において、上位装置1は、本溶接の対象となる元ワークのワーク情報(例えばID、名前、および元ワークの溶接箇所)をそれぞれ取得し(St1)、元ワークのワーク情報を含む本溶接の実行指令を生成する。上位装置1は、元ワークのワーク情報を含む本溶接の実行指令をロボット制御装置2に送る(St2)。なお、上位装置1を介さずに、ロボット制御装置2が、ステップSt1,St2の処理をそれぞれ実行してもよい。この場合には、ロボット制御装置2のメモリ22には外部ストレージSTに保存されているデータと同じデータが保存されているか、あるいはロボット制御装置2が外部ストレージSTからデータの取得を可能に接続されていることが好ましい。
ロボット制御装置2は、上位装置1から送られた本溶接の実行指令を受信すると、その実行指令に含まれる複数の元ワークのそれぞれのワーク情報を用いて、溶接ロボットMC1により実行される本溶接の本溶接プログラムを作成し、その本溶接プログラムに従った本溶接を溶接ロボットMC1に実行させる(St3)。ロボット制御装置2は、種々の公知方法により、溶接ロボットMC1による本溶接の完了を判定すると、本溶接が完了した旨の本溶接完了通知を生成して上位装置1に送る(St4)。上位装置1は、本溶接完了通知を受けると、ワークの外観検査用プログラムを含む外観検査用プログラムの実行指令を生成してロボット制御装置2に送るとともに(St5)、ワークのビード外観検査の実行指令を生成して検査制御装置3に送る(St6)。ロボット制御装置2は、ビード外観検査の開始に伴って上位装置1から受けた外観検査用プログラムを実行して溶接ロボットMC1に取り付けられたセンサ4を溶接線上に沿って動かす(St7)。センサ4は、ロボット制御装置2によりワークの溶接箇所を走査可能に移動させられている間、ワークの3次元形状を特定可能な点群データを取得する(St7)。
検査制御装置3は、センサ4により取得された溶接ビードの3次元形状を特定可能な点群データを入力データとして用い、上述した第1検査判定および第2検査判定のそれぞれを個別に(並列的に)実行する(St7)。検査制御装置3は、ステップSt7での個別のビード外観検査(つまり、第1検査判定および第2検査判定)のそれぞれの結果に基づいて、ワークの溶接ビードのビード外観検査の総合判定を行う(St8)。
検査制御装置3は、ステップSt8の総合判定の結果として、ワークには溶接不良があるためにリペア溶接が必要であると判定した場合(St9)、本溶接プログラムをロボット制御装置2から取得し、この本溶接プログラムの一部を改変することでリペア溶接プログラムを作成する(St9)。なお、改変される一部は、例えばリペア溶接が行われる箇所(範囲)を示す内容である。また、図3では詳細の図示を省略しているが、検査制御装置3は、ステップSt9において本溶接プログラムのデータをロボット制御装置2に要求し、この要求に応じてロボット制御装置2から送られた本溶接プログラムのデータを取得してよいし、あるいはステップSt3の後にロボット制御装置2から送られた本溶接プログラムのデータを予め取得してもよい。これにより、検査制御装置3は、ロボット制御装置2から取得された本溶接プログラムのデータを部分的に改変することで、効率的にリペア溶接プログラムのデータを作成することができる。検査制御装置3は、ステップSt8での総合判定の結果とリペア溶接プログラムとを含む外観検査報告を生成してロボット制御装置2に送る(St10)。また、検査制御装置3は、同様に生成された外観検査報告を上位装置1にも送る(St11)。
上位装置1は、ステップSt11での外観検査報告を受けて、ワークを対象としたリペア溶接の実行指令を生成してロボット制御装置2に送る(St12)。ロボット制御装置2は、上位装置1から送られたリペア溶接の実行指令を受信すると、その実行指令で指定されるワークを対象としたリペア溶接プログラム(ステップSt10で受領)に基づいて、そのリペア溶接プログラムに従ったリペア溶接を溶接ロボットMC1に実行させる(St13)。ロボット制御装置2は、種々の公知方法により、溶接ロボットMC1によるリペア溶接の完了を判定すると、リペアワークのワーク情報(例えば、リペアワークのID、本溶接に使用された複数の元ワークのそれぞれのIDを含むワーク情報(例えば元ワークのID、名前、元ワークの溶接箇所)、本溶接およびリペア溶接の各実行時の溶接条件))を上位装置1に送る(St14)。
上位装置1は、ロボット制御装置2から送られたリペアワークのIDを含むワーク情報を受信すると、リペアワークのIDに対応するユーザに適する管理用IDを設定するとともに、この管理用IDに対応するリペアワークの溶接が完了した旨のデータを外部ストレージSTに保存する(St15)。
次に、図3のステップSt7での個別検査およびステップSt8での総合判定の詳細について、図4を参照して説明する。図4は、第1検査判定(点群比較)ならびに第2~第N検査判定(AI判定)の詳細を示す処理手順例を示すフローチャートである。図4の説明を分かり易くするために、N=2とする。
図4において、センサ4により取得された溶接ビードの3次元形状を特定可能な点群データOD1は、第1検査判定および第2検査判定のいずれにも使用される。データ処理部36は、センサ4からの点群データOD1を第1検査判定に適したデータ形式(例えば溶接ビードの3次元形状を示す画像データ)に変換して第1検査判定部371に渡す。第1検査判定部371は、メモリ32に保存されている良品ワークのマスタデータMD1(例えば良品ワークの溶接ビードの理想的な3次元形状を示す画像データ)をメモリ32から読み出し、データ処理部36からの画像データとマスタデータMD1とを比較する第1検査判定を実行する(St21A)。
第1検査判定部371は、検査項目(例えば形状信頼性、ビード欠け、ビード位置ずれ)ごとに算出された検査スコアが検査項目ごとに予め設定された閾値以上となるか否かを判定する(St22A)。つまり、第1検査判定部371は、点群データOD1に基づく画像データとマスタデータMD1との比較により、形状信頼性の検査スコアが形状信頼性用閾値以上となるか、ビード欠けの有無に関する検査スコアがビード欠け用閾値以上となるか、ビード位置ずれの有無に関する検査スコアがビード位置ずれ用閾値以上となるか否かを判別する(St22A)。第1検査判定部371は、形状信頼性用閾値、ビード欠け用閾値、ビード位置ずれ用閾値以上となる検査スコアをそれぞれ得たと判定した場合には(St23A、YES)、当該検査項目は「OK」(つまり、形状信頼性が満たされ、ビード欠けあるいはビード位置ずれは検知されない)と判定する(St23A)。一方、第1検査判定部371は、形状信頼性用閾値、ビード欠け用閾値、ビード位置ずれ用閾値未満となる検査スコアを得たと判定した場合には(St23A、NO)、当該検査項目は「NG」(つまり、形状信頼性が足りないか、ビード欠けあるいはビード位置ずれが検知された)と判定する(St24A)。第1検査判定部371は、ステップSt23AあるいはステップSt24Aの判定結果を第1検査判定結果として取得する(St25A)。
第N検査判定部37Nは、検査項目(例えば穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起)ごとにAIエンジン(例えばニューラルネットワーク)の出力値となる不良確率値(つまり検査スコア)が検査項目ごとに予め設定された閾値以下となるか否かを判定する(St22B)。つまり、第N検査判定部37Nは、点群データOD1を入力したAIエンジンによって検査項目ごとに算出された不良確率値が穴あき検知用閾値、ピット検知用閾値、アンダーカット検知用閾値、スパッタ検知用閾値、突起検知用閾値以下となるか否かを判別する(St22B)。第N検査判定部37Nは、検査項目ごとのAIエンジンの出力値(不良確率値)が穴あき検知用閾値、ピット検知用閾値、アンダーカット検知用閾値、スパッタ検知用閾値、突起検知用閾値以下となると判定した場合には(St23B、YES)、当該検査項目は「OK」(つまり、穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起はいずれも検知されない)と判定する(St23B)。一方、第1検査判定部371は、検査項目ごとのAIエンジンの出力値(不良確率値)が穴あき検知用閾値、ピット検知用閾値、アンダーカット検知用閾値、スパッタ検知用閾値、突起検知用閾値以上となると判定した場合には(St23B、NO)、当該検査項目は「NG」(つまり、穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起のいずれかが検知された)と判定する(St24B)。第N検査判定部37Nは、ステップSt23BあるいはステップSt24Bの判定結果を第2検査判定結果として取得する(St25B)。
検査結果判定部37は、ステップSt25Aで得られた第1検査判定結果とステップSt25Bで得られた第2検査判定結果とを用いて、ビード外観検査の総合判定を行う(St26)。例えば、検査結果判定部37は、第1検査判定結果および第2検査判定結果のいずれも溶接不良が無い旨の結果を得たと判定した場合には、そのビード外観検査は合格(言い換えると、リペア溶接は不要)と判定する。一方、検査結果判定部37は、第1検査判定結果および第2検査判定結果のどちらかで、いずれかの溶接不良を検知した旨の結果を得たと判定した場合には、そのビード外観検査は不合格(言い換えると、検知された溶接不良の補修を行うためのリペア溶接が必要)と判定する。
以上により、実施の形態1に係る溶接システム100では、ビード外観検査装置の一例としての検査制御装置3は、溶接により生産されたワークの溶接ビードに関する入力データ(例えば点群データOD1)をプロセッサ31において入力する。検査制御装置3は、入力データと良品ワークのマスタデータMD1とを用い、入力データとマスタデータMD1との比較に基づいて溶接ビードの第1検査判定を第1検査判定部371で行い、k(k:1以上の整数)種類の人工知能を搭載し、入力データを対象とするk種類の人工知能の処理に基づいて溶接ビードの第2検査判定を第2検査判定部372~第N検査判定部37Nのそれぞれで行う。k=(N-1)であり、以下同様である。検査制御装置3は、第1検査判定部371および第2検査判定部372~第N検査判定部37Nのそれぞれの判定結果に基づいて、溶接ビードのビード外観検査の結果を検査結果判定部37において出力デバイス(例えばモニタMN2)に出力する。
これにより、検査制御装置3は、溶接ビードの3次元形状を示す入力データとマスタデータMD1との比較に基づく第1検査判定とAI処理に基づいて溶接ビードの溶接不良の有無を検知する第2検査判定と併用して実行できるので、本溶接により生産されたワークの溶接ビードの外観検査をより効率的に行うことができる。特にAI処理で溶接不良の有無を検知する際には、ユーザのビード外観検査の対象となる検査項目に合わせてk(=(N-1))種類の異なるAIを用意できる。従って、検査制御装置3は、溶接ビードの外観検査のユーザへの利便性を高めることができる。
また、第1検査判定の対象となる溶接ビードの外観検査項目と、第2検査判定の対象となる溶接ビードの外観検査項目とが異なる。これにより、検査制御装置3は、第1検査判定により高精度に検知される溶接ビードの外観検査項目と第2検査判定により高精度に検知される溶接ビードの外観検査項目とを含めて網羅的に検査できる。
また、kが2以上の整数となる場合に、第2検査判定部372~第N検査判定部37N(言い換えると、k個の第2検査判定部の一例)のそれぞれにより実行される第2検査判定の対象となる溶接ビードの外観検査項目が異なる。例えば、第2検査判定部372は溶接ビードの穴あきおよびスパッタのそれぞれの有無を検知し、第N検査判定部37Nは溶接ビードのピットおよびアンダーカットのそれぞれの有無を検知する。これにより、検査制御装置3は、検査項目ごとにAI処理で高精度に検知できる第2検査判定の組み合わせを複数設けることができるので、例えば1種類のAI処理により数多くの検査項目を検査する場合に比べて溶接ビードの溶接不良の種別のそれぞれの有無の検査を高精度に行える。
また、検査制御装置3は、ワークの溶接ビードを対象とするリペア溶接を実行可能な溶接ロボットMC1との間で通信する。検査制御装置3は、第1検査判定部371およびk個の第2判定部(第2検査判定部372~第N検査判定部37N)のそれぞれの判定結果のうちいずれかの外観検査項目が不良ありと判定した場合に、不良ありと判定された溶接ビードの該当箇所を修正するリペア溶接の実行指示を、溶接ロボットMC1に送る。これにより、検査制御装置3は、第1検査判定および第2検査判定のそれぞれの結果に基づいた総合判定としていずれかの検査項目で溶接不良を検知したと判定した場合に、その溶接不良となった検査項目を溶接ロボットMC1で自動的に修正するためのリペア溶接の指示を溶接ロボットMC1に実行でき、迅速かつスムーズにワークの完成度を高めることができる。
また、検査制御装置3は、入力データをk種類の人工知能への入力に適するデータ形式に変換する。これにより、検査制御装置3は、第2検査判定部372~第N検査判定部37Nのそれぞれで実行されるAI処理の精度を向上でき、溶接ビードの溶接不良(例えば、穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ)の有無の検知精度を向上できる。
また、第1検査判定の対象となる溶接ビードの外観検査項目は、溶接ビードの形状、溶接ビードの欠け、溶接ビードの位置ずれである。第2検査判定の対象となる溶接ビードの外観検査項目は、溶接ビードの穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起である。これにより、検査制御装置3は、第1検査判定により高精度に検知される溶接ビードの外観検査項目(例えば溶接ビードの形状、溶接ビードの欠け、溶接ビードの位置ずれ)と第2検査判定により高精度に検知される溶接ビードの外観検査項目(例えば溶接ビードの穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起)とを含めて網羅的に検査できる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、第1検査判定および第2検査判定の両方が検査制御装置3において実行される。実施の形態2では、第1検査判定と第2検査判定とが異なる装置で実行される例を説明する。以下、第1検査判定は検査制御装置3で実行され、第2検査判定は上位装置1で実行されるとして説明する。但し、第2検査判定は上位装置1以外の他の装置で実行されても構わない。
(溶接システムの構成)
図6は、実施の形態2に係る検査制御装置3A、ロボット制御装置2および上位装置1Aの内部構成例を示す図である。図6の説明において、図2の各部の構成と同一のものには同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。また、実施の形態2に係る溶接システム100Aの構成は実施の形態1に係る溶接システム100と同一の構成である(図1参照)。
ビード外観検査システムの一例としての溶接システム100Aは、外部ストレージST、入力インターフェースUI1およびモニタMN1のそれぞれと接続された上位装置1Aと、ロボット制御装置2と、検査制御装置3Aと、センサ4と、本溶接ロボットMC1aと、リペア溶接ロボットMC1bとを含む構成である。
ビード外観検査装置の一例としての検査制御装置3Aでは、プロセッサ31Aは、判定閾値記憶部34と、形状検出制御部35と、データ処理部36と、検査結果判定部37Aと、リペア溶接プログラム作成部38と、を含む構成である。検査結果判定部37Aは、第1検査判定部371のみ有する。第1検査判定部371の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
ビード外観検査装置の一例としての上位装置1Aでは、プロセッサ11Aは、セル制御部13と、第2検査判定部142~第N検査判定部14Nと、を含む構成である。第2検査判定部142~第N検査判定部14Nは、第2検査判定部372~第N検査判定部37Nと同様に、第2検査判定(つまり、k=(N-1)種類の人工知能によるニューラルネットワークを形成し、センサ4により取得された溶接ビードの形状に関する入力データを対象としたAIに基づく溶接の不良箇所の有無を判別するビード外観検査)を行い、溶接ビードの穴あき、ピット、アンダーカット、スパッタ、突起の有無を検査する(図5参照)。検査制御装置3Aの判定閾値記憶部34と同様の機能を、メモリ12またはプロセッサ11Aが果たしてよい。図示は省略するが、プロセッサ11A内に判定閾値記憶部を設けてもよい。
(溶接システムの動作)
次に、実施の形態2に係る溶接システム100Aによる本溶接、ビード外観検査およびリペア溶接を含む一連の処理手順について、図7を参照して説明する。図7は、実施の形態2に係る溶接システム100Aによる本溶接、ビード外観検査およびリペア溶接を含む一連の処理手順例を示すシーケンス図である。図7の説明では、複数の元ワークを用いた本溶接、そしてワークのビード外観検査が不合格となったことに基づいて行われるリペア溶接の各工程に関して上位装置1Aとロボット制御装置2と検査制御装置3Aとの間で行われる動作手順を例示して説明する。また、図7の説明において、図3の処理と重複する処理については同一のステップ番号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
図7において、ステップSt6の後、ロボット制御装置2は、ビード外観検査の開始に伴って上位装置1Aから受けた外観検査用プログラムを実行して溶接ロボットMC1に取り付けられたセンサ4を溶接線上に沿って動かす(St7A)。センサ4は、ロボット制御装置2によりワークの溶接箇所を走査可能に移動させられている間、ワークの3次元形状を特定可能な点群データを取得する(St7A)。検査制御装置3Aは、センサ4により取得された溶接ビードの3次元形状を特定可能な点群データを入力データとして用い、上述した第1検査判定を実行する(St7A)。また、検査制御装置3Aは、上述した第2検査判定の実行指示をプロセッサ31Aで生成して上位装置1Aに送る(St31)。
上位装置1Aは、ステップSt31で検査制御装置3Aから送られた第2検査判定の実行指示を受信すると、その実行指示に基づいて第2検査判定を第2検査判定部142~第N検査判定部14Nのそれぞれで実行する(St32)。ステップSt32で実行される第2検査判定の詳細については実施の形態1で説明した内容と同一であるため、説明を省略する。上位装置1Aは、第2検査判定(つまりAI処理による検査項目ごとの溶接不良の有無の検知)の処理結果を生成して検査制御装置3Aに送る(St33)。検査制御装置3Aは、ステップSt7での検査制御装置3による第1検査判定およびステップSt32での上位装置1Aによる第2検査判定のそれぞれの結果に基づいて、ワークのビード外観検査の総合判定を行う(St8A)。ステップSt8Aで実行される総合判定の詳細については実施の形態1で説明した内容と同一であるため、説明を省略する。ステップSt8A以降の処理は図3と同一であるため、説明を省略する。
以上により、実施の形態2に係るビード外観検査システムの一例としての溶接システム100Aは、溶接により生産されたワークの溶接ビードに関する入力データ(例えば点群データOD1)を検査制御装置3Aにおいて入力する。溶接システム100Aは、入力データと良品ワークのマスタデータMD1とを用い、入力データとマスタデータMD1との比較に基づいて溶接ビードの第1検査判定を検査制御装置3Aで行い、k(k:1以上の整数)種類の人工知能を搭載し、入力データを対象とするk種類の人工知能の処理に基づいて溶接ビードの第2検査判定を上位装置1Aの第2検査判定部142~第N検査判定部14Nのそれぞれで行う。検査制御装置3Aは、検査制御装置3Aの第1検査判定部371および上位装置1Aの第2検査判定部142~第N検査判定部14Nのそれぞれの判定結果に基づいて、溶接ビードのビード外観検査の結果を検査結果判定部37において出力デバイス(例えばモニタMN2)に出力する。
これにより、溶接システム100Aは、溶接ビードの3次元形状を示す入力データとマスタデータMD1との比較に基づく第1検査判定を検査制御装置3Aで行い、AI処理に基づいて溶接ビードの溶接不良の有無を検知する第2検査判定を上位装置1Aで分散して実行できる。従って、溶接システム100Aは、例えば実施の形態1のように検査制御装置3だけで第1検査判定および第2検査判定の両方を実行する場合に比べて、ビード外観検査の処理負荷を抑えることができる。また、溶接システム100Aは、本溶接により生産されたワークの溶接ビードの外観検査をより効率的に行うことができる。特にAI処理で溶接不良の有無を検知する際には、ユーザのビード外観検査の対象となる検査項目に合わせてk(=(N-1))種類の異なるAIを用意できる。従って、溶接システム100Aは、溶接ビードの外観検査のユーザへの利便性を高めることができる。
(閾値を用いた判定を行う場合のグレーゾーン設定)
次に、ビード外観検査において閾値を用いた判定を行う場合の、グレーゾーンの設定について説明する。図8は、ビード外観検査の第1のグレーゾーン設定例を示す概念図である。閾値を用いた判定は、第1検査判定(図4のステップSt21A参照)においても、第2~第N検査判定(図4のステップSt21B参照)においても、実施されることができる。ここでは、第1検査判定における、外観検査項目「余盛り高さ」についてのグレーゾーンの設定例を示す。ただし、他の外観検査項目についてもグレーゾーンの設定を同様に行うことが可能であり、第1検査判定だけでなく、第2~第N検査判定においても、グレーゾーンの設定を同様に行うことができる。
良品ワークの余盛り高さが2.0mm(下限閾値)から3.0mm(上限閾値)であるとする。2.0mmと3.0mmはそれぞれ、良品/不良品判定のための閾値である。ビード外観検査装置(上位装置1や検査制御装置3等)は、入力データ(点群データOD1)から得られる値(例えば余盛り高さの計測値や、穴あきの直径を示す計測値、計測値の標準偏差の値、判定用のスコア等)と、閾値との比較によって、溶接結果の良/不良を判定することができる。例えば、ビード外観検査装置は、余盛り高さの計測値が2.0mmから3.0mmの間に収まっていれば良品であり、余盛り高さの計測値が2.0mm未満または3.0mmを超える場合は不良品である、と判定することができる。本例においては、上限閾値3.0mmと下限閾値2.0mmの2つの閾値を設定しているが、閾値は1つのみであってもよく、計測値やスコア等が当該閾値を超えるか否かによって、良品または不良品と判定することができる。
ここで、ユーザごとに品質基準は異なり得るものであり、ワークの特性等を総合的に考慮することも必要であるため、最適な判定用閾値を決定することは容易ではない。例えば、あるユーザは、余盛高さが1.9mmの溶接ビードを有する被溶接ワークを良品と判断するかもしれない。別のユーザは、余盛高さが2.01mmの溶接ビードを有する被溶接ワークを不良品と判断するかもしれない。従って、汎用的に用いることが可能な、最適な閾値の値を特定することは容易ではない。
そこで本実施形態においては、良品と判定する領域と、不良品と判定する領域との間にグレーゾーン領域を設ける。図8に示した第1のグレーゾーン設定例においては、上限閾値について、余盛り高さが2.8mmまでの良品ゾーンZ1と、余盛高さが3.3mmを超える不良品ゾーンZ2Uとの間に、余盛高さが2.8mmから3.3mmまでのグレーゾーンZ3Uが設けられている。同様に図8に示した第1のグレーゾーン設定例においては、下限閾値について、余盛り高さが2.1mmを超える良品ゾーンZ1と、余盛高さが1.8mmを下回る不良品ゾーンZ2Lとの間に、余盛高さが1.8mmから2.1mmまでのグレーゾーンZ3Lが設けられている。
上記の例のように、良品であると判定される良品ゾーンZ1と、不良品であると判定される不良品ゾーンZ2UまたはZ2Lとの間に、グレーゾーンZ3UまたはZ3Lが設けられる。そして、入力データ(点群データOD1)から得られる値(例えば余盛り高さの計測値)が、当該グレーゾーン内に収まっている(グレー判定された)場合、グレー判定された溶接ビードを有するワークについて、ユーザによる目視確認や、精密な再検査を行う。これにより、良品/不良品の境界領域にあるワークに対する外観検査の判定精度が上がり、不良品の見逃しや、良品を不良品であると誤検出するなどの事態を回避することができる。従って、溶接を行う製品の生産性を高めることができる。
閾値は、余盛り高さ以外の検査項目に対しても設定されることができる。例えば、ビードの幅や、アンダーカットの深さ、ビードに生じたピットの個数等に対しても閾値が設定されることができる。また、穴あきについて、穴の大きさと穴の個数に基づいたスコアを計算し、このスコアに対する閾値が設定されてもよい。閾値は、上限閾値と下限閾値の双方を有していてよく、上限閾値と下限閾値のいずれか一方のみを有していてもよい。
グレーゾーンは、閾値に対する相対値に基づいて範囲指定されてよい。例えば、閾値が2.0mmである場合、この閾値の下に0.2mmから、上に0.3mmまでを示す、1.8mmから2.3mmまでがグレーゾーンとして設定されてよい。ただし、グレーゾーンは閾値に対する相対値ではなく、絶対値に基づいて範囲指定されてもよい。
グレーゾーンは、閾値を中心とした幅として設定されてよい。例えば、閾値が2.0mmであり、幅を0.5mmとした場合、1.5mmから2.5mmまでがグレーゾーンとして設定されてよい。
グレーゾーンの範囲指定に用いられる単位は、必ずしも、計測値と同じ単位でなくともよい。例えば、検査項目「余盛り高さ」の計測値が単位「mm」で計測されていた場合、グレーゾーンの範囲は、「閾値の0.8倍から1.2倍まで」等のように、「mm」以外の単位で指定されてもよい。過去の製品の生産結果に基づいて、計測値の標準偏差を予め算出しておき、この標準偏差の値に基づいて、グレーゾーンの範囲を設定してもよい。
上限閾値と下限閾値とで、グレーゾーンを設けるか設けないかが、別々に設定されてもよい。例えば、上限閾値についてはグレーゾーンが設けられ、下限閾値についてはグレーゾーンが設けられないように設定されてもよい。
図9は、ビード外観検査の第1のグレーゾーン設定例に応じた、ビード外観検査における個別判定の処理手順例を示すフローチャートである。図9に示したフローチャートは、図4に示した第1検査判定(ステップSt21A~St25A)と、第2検査判定(ステップSt21B~St25B)の、双方に対応する。なお、図9に示されている処理は、プロセッサ31が第1検査判定と第2検査判定の双方を行う場合(図3参照)と、プロセッサ31Aが第1検査判定を行い、プロセッサ11Aが第2検査判定を行う場合(図7参照)とで、それぞれ同様である。そのため、説明の便宜上、処理の主体が「プロセッサ」であるとして下記の説明を行う。
プロセッサは、上述の第1検査判定(点群比較)または第2検査判定(AI判定)を行う(St21)。プロセッサは、検査項目ごとに、検査スコア(第1検査判定の場合)または不良確率(第2検査判定の場合)の値が、当該検査項目についての良品ゾーン(Z1)、グレーゾーン(Z3U、Z3L)および不良品ゾーン(Z2U、Z2L)のいずれに属するかを判定する(St22)。なお、検査スコアや不良確率は、入力データ(点群データOD1)から得られる値である。
プロセッサは、検査スコアまたは不良確率の値が、良品ゾーン(Z1)に属すると判定した場合には、当該検査項目は「OK」と判定する(St23)。プロセッサは、検査スコアまたは不良確率の値が、不良品ゾーン(Z2U、Z2L)に属すると判定した場合には、当該検査項目は「NG」と判定する(St24)。プロセッサは、検査スコアまたは不良確率の値が、グレーゾーン(Z3U、Z3L)に属すると判定した場合には、当該検査項目は「グレー」と判定する(St27)。プロセッサは、ステップSt23A、ステップSt24、あるいはステップSt27の判定結果を第1検査判定結果または第2検査判定結果として取得する(St25)。
図10は、ビード外観検査の第2のグレーゾーン設定例を示す概念図である。良品であると判定される良品ゾーンZ1と、不良品であると判定される不良品ゾーンZ2UまたはZ2Lとの間に、グレーゾーン領域が設ける点は、図8に示した第1のグレーゾーン設定例と同様である。図10に示した第2のグレーゾーン設定例においては、グレーゾーンが、複数の段階に分けて設定される。この例においては、グレーゾーンが良品寄りグレーゾーンと、不良品寄りグレーゾーンの2段階に分けて設定されている。ただし、グレーゾーンを3段階以上に分けて設定してもよい。
良品ワークの余盛り高さが2.0mm(下限閾値)から3.0mm(上限閾値)であるとする。2.0mmと3.0mmはそれぞれ、良品/不良品判定のための閾値である。ビード外観検査装置(上位装置1や検査制御装置3等)は、入力データ(点群データOD1)から得られる値(例えば余盛り高さの計測値や、穴あきの直径を示す計測値、計測値の標準偏差の値、判定用のスコア等)と、閾値との比較によって、溶接結果の良/不良を判定することができる。例えば、ビード外観検査装置は、余盛り高さの計測値が2.0mmから3.0mmの間に収まっていれば良品であり、余盛り高さの計測値が2.0mm未満または3.0mmを超える場合は不良品である、と判定することができる。本例においては、上限閾値3.0mmと下限閾値2.0mmの2つの閾値を設定しているが、閾値は1つのみであってもよく、計測値やスコア等が当該閾値を超えるか否かによって、良品または不良品と判定することができる。
図10に示した例においては、上限閾値について、余盛り高さが2.8mmまでの良品ゾーンZ1と、余盛高さが3.3mmを超える不良品ゾーンZ2Uとの間に、余盛高さが2.8mmから3.0mmまでの良品寄りグレーゾーンZ3U-Wと、余盛高さが3.0mmから3.3mmまでの不良品寄りグレーゾーンZ3U-Bとが設けられる。同様に、下限閾値について、余盛り高さが2.1mmを超える良品ゾーンZ1と、余盛高さが1.8mmを下回る不良品ゾーンZ2Lとの間に、余盛高さが2.0mmから2.1mmまでの良品寄りグレーゾーンZ3L-Wと、余盛高さが1.8mmから2.0mmまでの不良品寄りグレーゾーンZ3L-Bとが設けられる。
上記の例のように、良品であると判定される良品ゾーンZ1と、不良品であると判定される不良品ゾーンZ2UまたはZ2Lとの間に、グレーゾーンZ3UまたはZ3Lが設けられる。グレーゾーンZ3Uは、良品寄りグレーゾーンZ3U-Wと、不良品寄りグレーゾーンZ3U-Bの2段階に分かれて設定されている。グレーゾーンZ3Lも同様に、良品寄りグレーゾーンZ3L-Wと、不良品寄りグレーゾーンZ3L-Bの2段階に分かれて設定されている。ここで、良品寄りグレーゾーンを示す値の範囲(例えば余盛高さが2.8mmから3.0mmまで)と、不良品寄りグレーゾーンを示す値の範囲(例えば余盛高さが3.0mmから3.3mmまで)とは、互いに範囲が重複しない。
上述のように、グレーゾーンが複数の段階に分かれて設定されているので、外観検査後のワークについての処理内容を、グレーゾーンの段階に応じて異なるものにすることができる。例えば、良品寄りグレーと判定された溶接ビードについて、より精密な外観の再検査を行い、不良品寄りグレーと判定された溶接ビードについて、ユーザによる目視確認を行うことができる。
図11は、ビード外観検査の第2のグレーゾーン設定例に応じた、ビード外観検査における個別判定の処理手順例を示すフローチャートである。図11に示したフローチャートは、図4に示した第1検査判定(ステップSt21A~St25A)と、第2検査判定(ステップSt21B~St25B)の、双方に対応する。なお、図11に示されている処理は、プロセッサ31が第1検査判定と第2検査判定の双方を行う場合(図3参照)と、プロセッサ31Aが第1検査判定を行い、プロセッサ11Aが第2検査判定を行う場合(図7参照)とで、それぞれ同様である。そのため、説明の便宜上、処理の主体が「プロセッサ」であるとして下記の説明を行う。
プロセッサは、上述の第1検査判定(点群比較)または第2検査判定(AI判定)を行う(St21)。プロセッサは、検査項目ごとに、検査スコア(第1検査判定の場合)または不良確率(第2検査判定の場合)の値が、当該検査項目についての良品ゾーン(Z1)、良品寄りグレーゾーン(Z3U-W、Z3L-W)、不良品寄りグレーゾーン(Z3U-B、Z3L-B)および不良品ゾーン(Z2U、Z2L)のいずれに属するかを判定する(St22)。なお、検査スコアや不良確率は、入力データ(点群データOD1)から得られる値である。
プロセッサは、検査スコアまたは不良確率の値が、良品ゾーン(Z1)に属すると判定した場合には、当該検査項目は「OK」と判定する(St23)。プロセッサは、検査スコアまたは不良確率の値が、不良品ゾーン(Z2U、Z2L)に属すると判定した場合には、当該検査項目は「NG」と判定する(St24)。プロセッサは、検査スコアまたは不良確率の値が、良品寄りグレーゾーン(Z3U-W、Z3L-W)に属すると判定した場合には、当該検査項目は「良品寄りグレー」と判定する(St27)。プロセッサは、検査スコアまたは不良確率の値が、不良品寄りグレーゾーン(Z3U-B、Z3L-B)に属すると判定した場合には、当該検査項目は「不良品寄りグレー」と判定する(St28)。プロセッサは、ステップSt23A、ステップSt24、ステップSt27あるいはステップSt28の判定結果を第1検査判定結果または第2検査判定結果として取得する(St25)。
(ビード外観検査結果の表示)
上述のようにしてグレー判定されたビードについて、外観検査結果をユーザに対して表示することができる。図12は、モニタMN1、MN2等によるビード外観検査結果の表示例を示す概念図である。溶接後のビードBDを示す点群あるいは画像がモニタ等に表示される。溶接後のビードBDに重畳するように、ビードにおける不良判定あるいはグレー判定された箇所(不良箇所またはグレー判定箇所)が表示される。モニタに対する表示制御は、例えば上位装置1や検査制御装置3等が行ってよい。さらに、ビードにおける不良判定あるいはグレー判定された箇所に対応する、種々のプロパティ情報D_PROPの表示が行われてよい。例えば、図12に示されているように、判定結果(不良、グレー)と、不良あるいはグレー判定された原因(余盛不足、余盛過多、等)と、外観結果に基づく計測値(mm単位での余盛高さなど)等のプロパティが、ビードBDの周辺に表示される。図示されているように、プロパティ情報D_PROPは、バルーン表示の態様で表示されてよい。
ビード外観検査結果の表示は、ワークに対する溶接(本溶接および、必要な場合のリペア溶接)が終了した後に行われてよい。ビード外観検査結果の表示は、ワークに対するリペア溶接を行う前に行われてもよい。また、ユーザによる目視確認を行う場合(検査スコアまたは不良確率の値が不良品寄りグレーゾーンに属する場合等)は、ビード外観検査結果の表示は、外観検査中に行われてもよい。ユーザは、表示されたビード外観検査結果を確認することにより、グレー判定された箇所を効率よく目視確認することができる。
以上により、良品/不良品の境界領域にあるワークについて、外観検査においてグレー判定を行うことができる。グレー判定された溶接ビードについて、より精密な再検査やユーザによる目視確認を行うことができる。従って、良品/不良品の境界領域にあるワークに対する外観検査の判定精度が向上する。また、不良品の見逃しや、良品を不良品であると誤検出するなどの事態を回避できる。従って、溶接を行う製品の生産性を高めることができる。
また、グレーゾーンを示す値の範囲が、入力データから得られる値の上限値または下限値に対する相対値に基づいて設定される。もしくは、グレーゾーンを示す値の範囲が、入力データから得られる値の絶対値に基づいて設定される。これにより、入力データから得られる値に基づいて、グレーゾーンが柔軟に設定されることができる。
また、グレーゾーンを示す値の範囲が、少なくとも、第1のグレーゾーンを示す値の範囲と第2のグレーゾーンを示す値の範囲とに分割されており、第1のグレーゾーンを示す値の範囲と、第2のグレーゾーンを示す値の範囲とは、互いに範囲が重複しない。これにより、グレーゾーンを複数の領域に分けて設定することができる。例えば良品寄りグレーゾーンに属する溶接ビードについては精密な再度の外観検査を行い、不良品寄りグレーゾーンに属する溶接ビードについてはユーザによる目視確認を行う、等のように、グレー判定された溶接ビードを有するワークに対して異なる処理を行うことができる。
また、溶接ビードと、溶接ビードにおける、入力データから得られる値がグレーゾーンを示す値の範囲内に収まるグレー判定箇所とを、表示装置に重畳表示させる。これにより、ユーザは、グレー判定された箇所を効率よく目視確認することができる。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
なお、本出願は、2020年3月5日出願の日本特許出願(特願2020-038205)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。