JP7552374B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電動機を含む駆動力源の下流に自動変速機を備えた車両の制御装置に関するものである。
電動機と、前記電動機と駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成すると共に複数の係合装置のうちの何れかの係合によって複数のギヤ段のうちの何れかのギヤ段が形成される自動変速機と、を備えた車両の制御装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された車両の制御装置がそれである。この特許文献1には、運転者による制動操作に応じた電動機の回生制御中に自動変速機のダウンシフトを判断した場合には、変速ショックを抑制する為に、回生トルクの変化率が小さくなった後にダウンシフトの実行を開始することが開示されている。
特開2019-1181号公報
ところで、特許文献1に示された技術では、回生トルクの増加中は自動変速機のダウンシフトの開始が遅延させられ、回生エネルギーを増やすことが可能となるが、自動変速機のダウンシフトの開始が遅れ、最適なギヤ段への移行が遅れる可能性がある。一方で、ダウンシフトを進行させることを優先するのであれば、電動機の回生制御中にダウンシフトが実行される場合には、変速ショックを抑制する為に、ダウンシフトの実行中は回生トルクの増加を禁止又は抑制することが考えられる。しかしながら、回生トルクの増加を禁止又は抑制すると、エネルギー効率が低下してしまう可能性がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、電動機の回生制御中に自動変速機のダウンシフトを判断した際に、エネルギー効率の低下を抑制しつつダウンシフトの進行の遅れを抑制することができる車両の制御装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a)電動機と、前記電動機と駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成すると共に複数の係合装置のうちの何れかの係合によって複数のギヤ段のうちの何れかのギヤ段が形成される自動変速機と、を備えた車両の、制御装置であって、(b)前記係合装置のうちの解放側係合装置の解放状態への切替えと、前記係合装置のうちの係合側係合装置の係合状態への切替えと、によって前記自動変速機の変速を行う変速制御部と、(c)前記電動機の回生による制動トルクである回生制動トルクの目標値を実現するように実際値を制御する、前記電動機の回生制御を行う電動機制御部と、を含んでおり、(d)前記変速制御部は、前記電動機の回生制御が行われているときに前記自動変速機のダウンシフトを判断した場合には、前記ダウンシフトの進行段階を、前記解放側係合装置を前記自動変速機への入力トルクを受け持つことができるトルク容量で待機させると共に前記係合側係合装置をパッククリアランスが詰められたパック詰め完了状態とする準備段階とするように前記ダウンシフトを開始するものであり、前記準備段階が完了しても、前記回生制動トルクの前記目標値と前記実際値とのトルク差の絶対値が、エネルギー効率の低下を抑制できる程に前記実際値が前記目標値に近づいたと判断する予め定められた所定トルク差以下になるまでは前記進行段階を前記準備段階が完了した状態で維持し、前記トルク差の絶対値が前記所定トルク差以下になってから前記準備段階の次の前記進行段階であるトルク相を開始して前記ダウンシフトを進行させることにある。
前記第1の発明によれば、電動機の回生制御が行われているときに自動変速機のダウンシフトを判断した場合には、ダウンシフトの進行段階を準備段階とするようにダウンシフトが開始させられるので、回生制動トルクの目標値と実際値とのトルク差の絶対値が所定トルク差以下になるまでダウンシフトの開始自体を遅延させることに比べてダウンシフトの遅延時間を短縮することができる。又、準備段階が完了させられても、前記トルク差の絶対値が前記所定トルク差以下になるまでは進行段階が準備段階が完了した状態で維持させられ、前記トルク差の絶対値が前記所定トルク差以下になってからトルク相が開始させられてダウンシフトが進行させられるので、回生制動トルクの実際値が増加させられても変速ショックが発生し難い準備段階において、回生制動トルクの実際値が目標値に近づけられる。よって、電動機の回生制御中に自動変速機のダウンシフトを判断した際に、エネルギー効率の低下を抑制しつつダウンシフトの進行の遅れを抑制することができる。
本発明が適用される車両の概略構成を説明する図であると共に、車両における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。 電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであり、電動機の回生制御中に自動変速機のダウンシフトを判断した際にエネルギー効率の低下を抑制しつつダウンシフトの進行の遅れを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートである。 図2のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、走行用の駆動力源である、エンジン12及び電動機MGを備えたハイブリッド車両である。又、車両10は、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16と、を備えている。
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置90によって、車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
電動機MGは、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。電動機MGは、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられたバッテリ54に接続されている。バッテリ54は、電動機MGに対して電力を授受する蓄電装置である。電動機MGは、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、電動機MGの出力トルクであるMGトルクTmが制御される。MGトルクTmは、例えば電動機MGの回転方向がエンジン12の運転時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギも同意である。前記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。
動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース18内において、K0クラッチ20、トルクコンバータ22、自動変速機24等を備えている。K0クラッチ20は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路におけるエンジン12と電動機MGとの間に設けられたクラッチである。トルクコンバータ22は、K0クラッチ20を介してエンジン12に連結されている。自動変速機24は、トルクコンバータ22に連結されており、トルクコンバータ22と駆動輪14との間の動力伝達経路に介在させられている。トルクコンバータ22及び自動変速機24は、各々、駆動力源(エンジン12、電動機MG)と駆動輪14との間の動力伝達経路の一部を構成している。又、動力伝達装置16は、自動変速機24の出力回転部材である変速機出力軸26に連結されたプロペラシャフト28、プロペラシャフト28に連結されたディファレンシャルギヤ30、ディファレンシャルギヤ30に連結された1対のドライブシャフト32等を備えている。又、動力伝達装置16は、エンジン12とK0クラッチ20とを連結するエンジン連結軸34、K0クラッチ20とトルクコンバータ22とを連結する電動機連結軸36等を備えている。
電動機MGは、ケース18内において、電動機連結軸36に動力伝達可能に連結されている。つまり、電動機MGは、K0クラッチ20とトルクコンバータ22との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結されている。見方を換えれば、電動機MGは、K0クラッチ20を介することなくトルクコンバータ22や自動変速機24と動力伝達可能に連結されている。
トルクコンバータ22は、電動機連結軸36と連結されたポンプ翼車22a、及び自動変速機24の入力回転部材である変速機入力軸38と連結されたタービン翼車22bを備えている。トルクコンバータ22は、駆動力源(エンジン12、電動機MG)の各々からの駆動力を流体を介して電動機連結軸36から変速機入力軸38へ伝達する流体式伝動装置である。トルクコンバータ22は、ポンプ翼車22aとタービン翼車22bとを連結する、つまり電動機連結軸36と変速機入力軸38とを連結する直結クラッチとしてのLUクラッチ40を備えている。LUクラッチ40は、公知のロックアップクラッチである。
自動変速機24は、例えば不図示の1組又は複数組の遊星歯車装置と、複数の係合装置CBと、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、例えば公知の油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態や解放状態などの作動状態つまり制御状態が切り替えられる。
自動変速機24は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置の係合によって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。自動変速機24は、後述する電子制御装置90によって、ドライバー(=運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて、係合装置CBのうちの自動変速機24の変速に関与する係合装置である所定の係合装置の制御状態が切り替えられることで、形成されるギヤ段が切り替えられる。つまり、自動変速機24の変速制御においては、例えば所定の係合装置の掴み替えにより変速が実行される、すなわち解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とにより変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。解放側係合装置は、所定の係合装置のうちの自動変速機24の変速前には係合状態とされていた係合装置であって、自動変速機24の変速過渡において係合状態から解放状態に向けて制御される係合装置である。係合側係合装置は、所定の係合装置のうちの自動変速機24の変速前には解放状態とされていた係合装置であって、自動変速機24の変速過渡において解放状態から係合状態に向けて制御される係合装置である。AT入力回転速度Niは、変速機入力軸38の回転速度であり、自動変速機24の入力回転速度である。AT入力回転速度Niは、トルクコンバータ22の出力回転速度であるタービン回転速度Ntと同値である。AT入力回転速度Niは、タービン回転速度Ntで表すことができる。AT出力回転速度Noは、変速機出力軸26の回転速度であり、自動変速機24の出力回転速度である。
K0クラッチ20は、例えば多板式或いは単板式のクラッチにより構成される油圧式の摩擦係合装置である。K0クラッチ20は、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるK0油圧PRk0によりK0クラッチ20のトルク容量であるK0トルクTk0が変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。
車両10において、K0クラッチ20の係合状態では、エンジン12とトルクコンバータ22とが動力伝達可能に連結される。一方で、K0クラッチ20の解放状態では、エンジン12とトルクコンバータ22との間の動力伝達が遮断される。電動機MGはトルクコンバータ22に連結されているので、K0クラッチ20は、エンジン12を電動機MGと断接するクラッチとして機能する。
動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ20が係合された場合に、エンジン連結軸34から、K0クラッチ20、電動機連結軸36、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、及びドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。又、電動機MGから出力される動力は、K0クラッチ20の制御状態に拘わらず、電動機連結軸36から、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、及びドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。
車両10は、機械式のオイルポンプであるMOP58、電動式のオイルポンプであるEOP60、ポンプ用モータ62等を備えている。MOP58は、ポンプ翼車22aに連結されており、駆動力源(エンジン12、電動機MG)により回転駆動させられて動力伝達装置16にて用いられる作動油OILを吐出する。ポンプ用モータ62は、EOP60を回転駆動する為のEOP60専用のモータである。EOP60は、ポンプ用モータ62により回転駆動させられて作動油OILを吐出する。MOP58やEOP60が吐出した作動油OILは、油圧制御回路56へ供給される。油圧制御回路56は、MOP58及び/又はEOP60が吐出した作動油OILを元にして各々調圧した、CB油圧PRcb、K0油圧PRk0などを供給する。
車両10は、ホイールブレーキ装置64を備えている。ホイールブレーキ装置64は、車輪にホイールブレーキによる制動トルクTBである車輪制動トルクTBwを付与するブレーキ装置である。ホイールブレーキ装置64は、運転者による例えばブレーキペダルの踏込操作などに応じて、ホイールブレーキに設けられたホイールシリンダへブレーキ油圧を供給する。ホイールブレーキ装置64では、通常時には、ブレーキマスタシリンダから発生させられる、ブレーキ操作量Braに対応した大きさのマスタシリンダ油圧がブレーキ油圧としてホイールシリンダへ供給される。一方で、ホイールブレーキ装置64では、例えばABS機能作動時、横滑り抑制制御時、自動車速制御時、自動運転制御時、自動ブレーキ機能作動時、回生制御時などには、車輪制動トルクTBwの発生の為に、各制御で必要な車輪制動トルクTBwに対応した大きさのブレーキ油圧がホイールシリンダへ供給される。上記車輪は、駆動輪14及び不図示の従動輪である。ブレーキ操作量Braは、ブレーキペダルの踏力に対応する、運転者によるブレーキペダルの踏込操作の大きさつまりブレーキ操作の大きさを表す信号である。
車両10は、更に、車両10の制御装置を含む電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、電動機制御用、油圧制御用等の各コンピュータを含んで構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、タービン回転速度センサ72、出力回転速度センサ74、MG回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、スロットル弁開度センサ80、ブレーキペダルセンサ82、バッテリセンサ84、油温センサ86など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne、AT入力回転速度Niと同値であるタービン回転速度Nt、車速Vに対応するAT出力回転速度No、電動機MGの回転速度であるMG回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、ブレーキ操作量Bra、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、油圧制御回路56内の作動油OILの温度である作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、ポンプ用モータ62、ホイールブレーキ装置64など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、電動機MGを制御する為のMG制御指令信号Sm、係合装置CBを制御する為のCB油圧制御指令信号Scb、K0クラッチ20を制御する為のK0油圧制御指令信号Sk0、LUクラッチ40を制御する為のLU油圧制御指令信号Slu、EOP60を制御する為のEOP制御指令信号Seop、車輪制動トルクTBwを制御する為のブレーキ制御指令信号Sbraなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現する為に、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部92、変速制御手段すなわち変速制御部94、及び制動制御手段すなわち制動制御部96を備えている。
ハイブリッド制御部92は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部92aとしての機能と、インバータ52を介して電動機MGの作動を制御する電動機制御手段すなわち電動機制御部92bとしての機能と、を含んでおり、それらの制御機能によりエンジン12及び電動機MGによるハイブリッド駆動制御等を実行する。
ハイブリッド制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量を算出する。前記駆動要求量マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である。前記駆動要求量は、例えば駆動輪14における要求駆動トルクTrdemである。要求駆動トルクTrdem[Nm]は、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPrdem[W]である。前記駆動要求量としては、駆動輪14における要求駆動力Frdem[N]、変速機出力軸26における要求AT出力トルク等を用いることもできる。前記駆動要求量の算出では、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良い。
ハイブリッド制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機24の変速比γat、バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御するエンジン制御指令信号Seと、電動機MGを制御するMG制御指令信号Smと、を出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン12のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。MG制御指令信号Smは、例えばそのときのMG回転速度NmにおけるMGトルクTmを出力する電動機MGの消費電力Wmの指令値である。
バッテリ54の充電可能電力Winは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能な最大電力であり、バッテリ54の入力制限を示している。バッテリ54の放電可能電力Woutは、バッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能な最大電力であり、バッテリ54の出力制限を示している。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ54の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置90により算出される。バッテリ54の充電状態値SOCは、バッテリ54の充電量に相当する充電状態を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいて電子制御装置90により算出される。
ハイブリッド制御部92は、電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合には、走行モードをモータ走行(=EV走行)モードとする。ハイブリッド制御部92は、EV走行モードでは、K0クラッチ20の解放状態において、駆動力源(エンジン12、電動機MG)のうちの電動機MGのみから駆動力を出力して走行するEV走行を行う。一方で、ハイブリッド制御部92は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求駆動トルクTrdemを賄えない場合には、走行モードをエンジン走行モードすなわちハイブリッド走行(=HV走行)モードとする。ハイブリッド制御部92は、HV走行モードでは、K0クラッチ20の係合状態において、駆動力源(エンジン12、電動機MG)のうちの少なくともエンジン12から駆動力を出力して走行するエンジン走行すなわちHV走行を行う。他方で、ハイブリッド制御部92は、電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合であっても、バッテリ54の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合やエンジン12等の暖機が必要な場合などには、HV走行モードを成立させる。前記エンジン始動閾値は、エンジン12を強制的に始動してバッテリ54を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断する為の予め定められた閾値である。
変速制御部94は、例えば予め定められた関係である変速マップを用いて自動変速機24の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機24の変速制御を実行する為のCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力する。変速制御部94は、自動変速機24の変速制御では、例えば解放側係合装置の解放状態への切替えと係合側係合装置の係合状態への切替えとによって自動変速機24の変速を行う。前記変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機24の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。前記変速マップでは、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良いし、又、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。
自動変速機24の変速の進行段階すなわちフェーズを減速時のダウンシフトを例示して説明する。変速制御部94は、自動変速機24のダウンシフトを判断した場合には、ダウンシフトのフェーズを、解放側係合装置を自動変速機24への入力トルクTinを受け持つことができるトルク容量で待機させると共に係合側係合装置をパッククリアランスが詰められたパック詰め完了状態とする準備段階すなわち準備フェーズとする為のCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力してダウンシフトを開始する。係合装置CBのパック詰め完了状態は、そのパック詰め完了状態からCB油圧PRcbを増大させれば係合装置CBがトルク容量を持ち始める状態である。変速制御部94は、準備フェーズの開始時点から所定準備時間TMpkが経過したか否かに基づいて、準備フェーズが完了したか否かを判定する。所定準備時間TMpkは、例えば係合側係合装置がパック詰め完了状態となる予め定められた時間である。変速制御部94は、準備フェーズが完了したと判定した場合には、解放側係合装置のトルク容量を漸減させると共に係合側係合装置のトルク容量を漸増させる為のCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力してトルク相を開始する。このトルク相は、ダウンシフトの場合、係合側係合装置がトルク容量を持ち出して、自動変速機24の出力トルクに変化が生じるフェーズである。ダウンシフトの過渡中にタービン回転速度Nt(=AT入力回転速度Ni)がダウンシフト後同期回転速度(=No×ダウンシフト後のγat)に向けて上昇させられると、ダウンシフトのフェーズはトルク相からイナーシャ相に遷移させられる。変速制御部94は、イナーシャ相では、例えば変速時間と変速ショックとを考慮して予め定められた上昇勾配でタービン回転速度Ntを変化させる為のCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力する。変速制御部94は、タービン回転速度Ntがダウンシフト後同期回転速度に一致したか否かに基づいて、ダウンシフトが終了したか否かを判定する。変速制御部94は、ダウンシフトが終了したと判定した場合には、解放側係合装置のCB油圧PRcbをゼロとすると共に係合側係合装置のCB油圧PRcbを係合側係合装置を完全係合状態に維持するCB油圧PRcbとする為のCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力して、ダウンシフトに関わる一連の変速制御を完了する。
制動制御部96は、例えば車速V、降坂路の勾配、ホイールブレーキを作動させる為の運転者によるブレーキ操作(例えばブレーキ操作量Bra、ブレーキ操作量Braの増大速度)などに基づいて要求制動トルクTBdemを設定する。制動制御部96は、車両10の減速走行中には、要求制動トルクTBdemが得られるように車両10の制動トルクTBを発生させる。制動トルクTB(<0)が小さい側は、制動トルクTBの絶対値が大きい側であるが、便宜上、制動トルクTBの絶対値を大きくすることを制動トルクTBを増加すると表現する。
要求制動トルクTBdemは、基本的には、ホイールブレーキ装置64による車輪制動トルクTBwに対する要求制動トルクであり、車輪制動トルクTBwによって実現されるものであるが、例えばエネルギー効率の向上の観点から回生制動トルクTBrによって優先して実現される。つまり、要求制動トルクTBdemを実現する制動トルクTBは、例えば回生制動トルクTBr及び車輪制動トルクTBwによって発生させられる。回生制動トルクTBrは、電動機MGの回生による制動によって得られる制動トルクTBである。電動機MGの回生は、駆動輪14から入力される被駆動トルクにより電動機MGを回転駆動させて発電機として作動させ、電動機MGの発電電力をバッテリ54へ充電する制御である。
制動制御部96は、回生制動トルクTBrの目標値である目標回生制動トルクTBrtが得られるように電動機MGによる回生制御を実行する指令を電動機制御部92bへ出力する。
電動機制御部92bは、目標回生制動トルクTBrtを実現するように回生制動トルクTBrの実際値である実回生制動トルクTBrrを制御する為のMG制御指令信号Smを出力して、電動機MGの回生制御を行う。要求制動トルクTBdemの全部を回生制動トルクTBrで賄える場合には、要求制動トルクTBdemが目標回生制動トルクTBrtとされる。要求制動トルクTBdemの絶対値が回生制動トルクTBrの上限値の絶対値よりも大きい為に、要求制動トルクTBdemの一部しか回生制動トルクTBrで賄えない場合には、回生制動トルクTBrの上限値が目標回生制動トルクTBrtとされる。
制動制御部96は、要求制動トルクTBdemのうちの実回生制動トルクTBrrでは実現できなかった分の要求制動トルクTBdemを実現するのに必要となる車輪制動トルクTBwを得る為のブレーキ制御指令信号Sbraをホイールブレーキ装置64へ出力する。要求制動トルクTBdemのうちの実回生制動トルクTBrrでは実現できなかった分の要求制動トルクTBdemは、例えば要求制動トルクTBdemのうちの回生制動トルクTBrの上限値では実現できなかった分の要求制動トルクTBdem、要求制動トルクTBdemの増加レートの絶対値が実回生制動トルクTBrrの増加レートの絶対値よりも大きい為に実回生制動トルクTBrrが要求制動トルクTBdemの変化に追従できなかった分の要求制動トルクTBdemなどである。
ところで、電動機MGの回生制御の実行中に、自動変速機24のダウンシフトが判断される場合がある。この場合、実回生制動トルクTBrrの増大つまり自動変速機24への入力トルクTinとなる電動機MGの回生トルクの増大と、自動変速機24のダウンシフトと、が重なると、変速ショックが増大する可能性がある。上述した変速ショックを抑制する為に、回生エネルギーを増やすことを優先して、実回生制動トルクTBrrの増大中は判断された自動変速機24のダウンシフトの開始を遅延させると、最適なギヤ段への移行が遅れる可能性がある。或いは、上述した変速ショックを抑制する為に、自動変速機24のダウンシフトを進行させることを優先して、ダウンシフトの実行中は実回生制動トルクTBrrの増加を禁止又は抑制すると、エネルギー効率が低下してしまう可能性がある。
そこで、変速制御部94は、電動機MGの回生制御が行われているときに自動変速機24のダウンシフトを判断した場合には、そのダウンシフトのフェーズを準備フェーズとするようにそのダウンシフトを開始する。更に、変速制御部94は、その準備フェーズが完了しても、目標回生制動トルクTBrtと実回生制動トルクTBrrとのトルク差である残余回生制動トルクΔTBr(=TBrt-TBrr)の絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下になるまではダウンシフトのフェーズを準備フェーズが完了した状態で維持し、残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下になってから準備フェーズの次のフェーズであるトルク相を開始してダウンシフトを進行させる。所定トルク差ΔTBrfは、例えばエネルギー効率の低下を抑制できる程に実回生制動トルクTBrrが目標回生制動トルクTBrtに近づいたと判断する為の予め定められた閾値である。
又、電動機制御部92bは、自動変速機24のダウンシフト過渡中においてトルク相が開始されてからダウンシフトが終了するまでは、実回生制動トルクTBrrの増加を抑制又は禁止する。電動機制御部92bは、自動変速機24のダウンシフトが終了した場合には、実回生制動トルクTBrrを目標回生制動トルクTBrtとするように実回生制動トルクTBrrを増加する。実回生制動トルクTBrrを目標回生制動トルクTBrtとするように実回生制動トルクTBrrを増加するときの増加レートは、回生制御の開始当初を含め、例えば実回生制動トルクTBrrの変化が許容される予め定められた上限値である。実回生制動トルクTBrrの増加を抑制するときの増加レートは、この上限値の絶対値よりも小さな値であって、例えば変速ショックが抑制される為の予め定められた値である。
具体的には、電動機制御部92bは、電動機MGの回生制御の実行中であるか否かを判定する。電動機制御部92bは、電動機MGの回生制御の実行中には、残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下であるか否かを判定する。
変速制御部94は、電動機制御部92bにより電動機MGの回生制御の実行中であると判定されたときに、自動変速機24のダウンシフトを判断した場合には、そのダウンシフトのフェーズを準備フェーズとするようにそのダウンシフトを開始する。
変速制御部94は、自動変速機24のダウンシフトの開始後に準備フェーズが完了したと判定したときでも、電動機制御部92bにより残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下でないと判定された場合には、ダウンシフトのフェーズをトルク相へ遷移させず、準備フェーズが完了した状態で維持する。変速制御部94は、自動変速機24のダウンシフトの開始後に準備フェーズが完了したと判定したときに、電動機制御部92bにより残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下であると判定された場合には、トルク相を開始する。
電動機制御部92bは、電動機MGの回生制御の実行中に、変速制御部94により自動変速機24のダウンシフト過渡中におけるトルク相が開始された場合には、変速制御部94によりダウンシフトが終了したと判定されるまでの間、実回生制動トルクTBrrの増加を抑制又は禁止する。電動機制御部92bは、変速制御部94によりダウンシフトが終了したと判定された場合には、実回生制動トルクTBrrを目標回生制動トルクTBrtとするように実回生制動トルクTBrrを増加する。
図2は、電子制御装置90の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、電動機MGの回生制御中に自動変速機24のダウンシフトを判断した際にエネルギー効率の低下を抑制しつつダウンシフトの進行の遅れを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。図3は、図2のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
図2において、先ず、電動機制御部92bの機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、電動機MGの回生制御の実行中であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は変速制御部94の機能に対応するS20において、自動変速機24のダウンシフトを判断したか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS20の判断が肯定される場合は変速制御部94の機能に対応するS30において、判断されたダウンシフトのフェーズを準備フェーズとするようにそのダウンシフトが開始させられる。次いで、変速制御部94の機能に対応するS40において、準備フェーズが完了したか否かが判定される。このS40の判断が否定される場合はこのS40が繰り返し実行される。このS40の判断が肯定される場合は電動機制御部92bの機能に対応するS50において、残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下であるか否かが判定される。このS50の判断が否定される場合は変速制御部94の機能に対応するS60において、ダウンシフトのフェーズが準備フェーズが完了した状態で維持される。このS60に次いで、上記S50が実行される。上記S50の判断が肯定される場合は変速制御部94の機能に対応するS70において、トルク相が開始される。次いで、電動機制御部92bの機能に対応するS80において、実回生制動トルクTBrrの増加が抑制又は禁止される。次いで、変速制御部94の機能に対応するS90において、ダウンシフトが終了したか否かが判定される。このS90の判断が否定される場合は上記S80に戻される。このS90の判断が肯定される場合は電動機制御部92bの機能に対応するS100において、実回生制動トルクTBrrを目標回生制動トルクTBrtとするように実回生制動トルクTBrrが増加させられる。
図3は、電動機MGの回生制御の実行中に自動変速機24のダウンシフトが判断された場合の一例を示す図である。図3において、t1時点は、回生制動トルクTBr及び車輪制動トルクTBwによって要求制動トルクTBdemを実現する、ブレーキ協調回生制御が開始された時点を示している。この実施例では、要求制動トルクTBdemの全部を回生制動トルクTBrで賄える為、要求制動トルクTBdemが目標回生制動トルクTBrtとされている。但し、要求制動トルクTBdemの増加レートの絶対値が実回生制動トルクTBrrの増加レート(レートA参照)の絶対値よりも大きい為、要求制動トルクTBdemのうちの実回生制動トルクTBrrが要求制動トルクTBdemの変化に追従できなかった分は、車輪制動トルクTBwで賄われる。「レートA」は、例えば予め定められた実回生制動トルクTBrrの増加レートの上限値である。ブレーキ協調回生制御の実行中に自動変速機24のダウンシフトが判断されると、そのダウンシフトのフェーズを準備フェーズとするようにそのダウンシフトが開始される(t2時点参照)。破線に示す比較例では、準備フェーズが完了した時点からトルク相が開始され(t3時点参照)、トルク相の開始時点からダウンシフトの終了判定時点まで実回生制動トルクTBrrの増加が禁止され、実回生制動トルクTBrrの増加レートがゼロとされている(t3時点-t7時点参照)。一方で、実線に示す本実施例では、準備フェーズが完了しても、残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下になるまではその準備フェーズが完了した状態が維持され(t2時点-t4時点参照)、残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下になってからトルク相が開始され(t4時点参照)、トルク相の開始時点からダウンシフトの終了判定時点まで実回生制動トルクTBrrの増加が抑制されている(t4時点-t8時点参照)。「レートB」は、「レートA」の絶対値よりも小さな値であって、例えば予め定められた変速ショックが抑制される為の実回生制動トルクTBrrの増加レートである。ここでは、実線に示すように、イナーシャ相が開始された(t5時点参照)後、例えばタービン回転速度Ntとダウンシフト前同期回転速度(=No×ダウンシフト前のγat)との差回転速度に基づいて実際にイナーシャ相の開始が判定されてから、実回生制動トルクTBrrの増加レートが切り替えられてゼロ(レートC参照)とされても良い(t6時点-t8時点参照)。或いは、二点鎖線に示す本実施例のように、トルク相の開始時点からダウンシフトの終了判定時点まで実回生制動トルクTBrrの増加が禁止されて、実回生制動トルクTBrrの増加レートがゼロとされても良い(t4時点-t8時点参照)。ダウンシフトの終了判定後、解放側係合装置の指示圧がゼロとされると共に係合側係合装置の指示圧が完全係合状態に維持する値とされて、ダウンシフトに関わる一連の変速制御が完了させられる(t9時点参照)。本実施例では、比較例に比べて回生エネルギーを増やすことができる。尚、図示はしていないが、例えば残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下になるまでは自動変速機24のダウンシフトを開始しないという比較例に比べて、本実施例では、最適なギヤ段への移行を早くすることができる。
上述のように、本実施例によれば、電動機MGの回生制御が行われているときに自動変速機24のダウンシフトを判断した場合には、ダウンシフトのフェーズを準備フェーズとするようにダウンシフトが開始させられるので、残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下になるまでダウンシフトの開始自体を遅延させることに比べてダウンシフトの遅延時間を短縮することができる。又、準備フェーズが完了させられても、残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下になるまではダウンシフトのフェーズが準備フェーズが完了した状態で維持させられ、残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下になってからトルク相が開始させられてダウンシフトが進行させられるので、実回生制動トルクTBrrが増加させられても変速ショックが発生し難い準備フェーズにおいて、実回生制動トルクTBrrが目標回生制動トルクTBrtに近づけられる。よって、電動機MGの回生制御中に自動変速機24のダウンシフトを判断した際に、エネルギー効率の低下を抑制しつつダウンシフトの進行の遅れを抑制することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、要求制動トルクTBdemは、運転者によるブレーキ操作に基づいて設定されたが、この態様に限らない。例えば、要求制動トルクTBdemは、公知の自動運転制御におけるブレーキ要求、又は、公知の自動車速制御におけるブレーキ要求などに基づいて設定されても良い。
また、前述の実施例では、残余回生制動トルクΔTBrの絶対値が所定トルク差ΔTBrf以下になるまではトルク相の開始が遅延させられたが、遅延させられる時間が長すぎる場合には、バックアップ制御により強制的にトルク相が開始させられても良い。
また、前述の実施例では、本発明が適用される車両として、エンジン12と電動機MGと自動変速機24とを備える車両10を例示したが、この態様に限らない。例えば、エンジンを備えず電動機のみを駆動力源とする電気自動車、公知の電気式無段変速機の後段に自動変速機を直列に備えるハイブリッド車両などであっても、本発明を適用することができる。要は、電動機と、前記電動機と駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成すると共に複数の係合装置のうちの何れかの係合によって複数のギヤ段のうちの何れかのギヤ段が形成される自動変速機と、を備えた車両であれば、本発明を適用することができる。
また、前述の実施例では、自動変速機24として遊星歯車式の自動変速機を例示したが、この態様に限らない。自動変速機24は、公知のDCT(Dual Clutch Transmission)などであっても良い。要は、自動変速機24は、複数の係合装置のうちの何れかの係合によって複数のギヤ段のうちの何れかのギヤ段が形成される自動変速機であって、解放側係合装置の解放状態への切替えと、係合側係合装置の係合状態への切替えと、によって変速が行われる自動変速機であれば良い。DCTの場合には、複数の係合装置は2系統の各入力軸にそれぞれつながる係合装置であり、複数の係合装置の一方が解放側係合装置に相当し、複数の係合装置の他方が係合側係合装置に相当する。
また、前述の実施例では、流体式伝動装置としてトルクコンバータ22が用いられたが、この態様に限らない。例えば、流体式伝動装置として、トルクコンバータ22に替えて、トルク増幅作用のないフルードカップリングなどの他の流体式伝動装置が用いられても良い。又は、流体式伝動装置は、必ずしも備えられている必要はなく、例えば発進用のクラッチに置き換えられても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
14:駆動輪
24:自動変速機
90:電子制御装置(制御装置)
92b:電動機制御部
94:変速制御部
CB:係合装置
MG:電動機

Claims (1)

  1. 電動機と、前記電動機と駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成すると共に複数の係合装置のうちの何れかの係合によって複数のギヤ段のうちの何れかのギヤ段が形成される自動変速機と、を備えた車両の、制御装置であって、
    前記係合装置のうちの解放側係合装置の解放状態への切替えと、前記係合装置のうちの係合側係合装置の係合状態への切替えと、によって前記自動変速機の変速を行う変速制御部と、
    前記電動機の回生による制動トルクである回生制動トルクの目標値を実現するように実際値を制御する、前記電動機の回生制御を行う電動機制御部と、
    を含んでおり、
    前記変速制御部は、前記電動機の回生制御が行われているときに前記自動変速機のダウンシフトを判断した場合には、前記ダウンシフトの進行段階を、前記解放側係合装置を前記自動変速機への入力トルクを受け持つことができるトルク容量で待機させると共に前記係合側係合装置をパッククリアランスが詰められたパック詰め完了状態とする準備段階とするように前記ダウンシフトを開始するものであり、前記準備段階が完了しても、前記回生制動トルクの前記目標値と前記実際値とのトルク差の絶対値が、エネルギー効率の低下を抑制できる程に前記実際値が前記目標値に近づいたと判断する予め定められた所定トルク差以下になるまでは前記進行段階を前記準備段階が完了した状態で維持し、前記トルク差の絶対値が前記所定トルク差以下になってから前記準備段階の次の前記進行段階であるトルク相を開始して前記ダウンシフトを進行させることを特徴とする車両の制御装置。
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