JP7546925B2 - 核酸とcar修飾免疫細胞とを含む治療薬およびその使用 - Google Patents

核酸とcar修飾免疫細胞とを含む治療薬およびその使用 Download PDF

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本発明は、医用生物工学の分野、および特に、核酸およびCAR修飾免疫細胞を含む治療薬、標識ポリペプチド、キメラ抗原受容体、コード核酸、発現ベクター、組換えウイルス、キット、ならびにその使用に属する。
癌免疫療法は、身体の免疫系を活性化することにより、微小な残存癌病変を特異的に除去するかまたは癌細胞の増殖を有意に阻害する治療法である。この治療法には、長い奏効期間および小さい副作用という利点があり、近代の癌療法の第4の方法と称されている。近年、癌免疫療法には多くの進歩がなされてきた。雑誌「Science」は、癌免疫療法を2013年における重要な科学的大躍進として列記した。キメラ抗原受容体CAR修飾免疫細胞は、現在最も有効かつ有望な腫瘍細胞免疫療法製品である。CAR免疫細胞技術は、抗体医薬の特異性と細胞療法の持続可能性とをもち、そして精密医療でありかつ個別化された医療である。次の5年間で、免疫療法は、CAR免疫療法を含めて、化学療法に取って代わりかつ癌治療の標準療法となることが期待されている。現在、CAR免疫療法は、主としてT細胞をキャリアとして使用し、悪性血液癌の治療において革命的な進歩を成し遂げた。世界市場は100億ドルに達した。しかしながら、固形腫瘍の治療におけるCAR-Tの現在の結果は非常に良好とは言えず、安全性、有効性、および大量生産といった問題は、まだ解決される必要がある。これらの問題が解決された後には、CAR免疫療法は1000億ドルの固体腫瘍市場に徐々になだれ込んで行くであろう。
CARは、人工的に修飾された受容体であり、かつそれ故に、任意の抗原を認識する特異的な受容体が免疫エフェクター細胞上に移植され得る。CARの基本設計は、腫瘍関連抗原(TAA)結合領域、(通常はモノクローナル抗体抗原結合領域のscFVフラグメントに由来する)、細胞外ヒンジ領域、膜貫通領域、および細胞内シグナル領域を含む。この受容体の様々な領域が異なる起源をもつことから、この受容体は、キメラ受容体と称される。簡単に言えば、CAR-Tは、腫瘍細胞の表面上の抗原を認識する抗体と、T細胞を活性化して、T細胞が抗体のガイドの下に癌細胞を直接攻撃できるようにするのに必要なシグナル分子との結合物である。CAR免疫細胞技術は、抗腫瘍免疫療法の開発における課題、すなわち腫瘍形成の免疫回避機構、を克服する。回避機構は、腫瘍細胞を免疫系の攻撃から保護することが可能であり、かつ主として、抗原に対するプロセシング能の低下、組織適合性複合体の発現低下、腫瘍表面上での抗原の発現低下、サイトカインの発現低下、および免疫抑制性分子の発現増加を含む。CAR免疫細胞の標的は、細胞傷害性Tリンパ球のそれとは異なる。それは腫瘍表面上で抗原提示経路によって提示される抗原を攻撃することの代わりに、腫瘍細胞表面上でタンパク質または他の非タンパク質分子であってもよい特異的な分子を攻撃する。これらの分子の発現は、腫瘍細胞抗原に対するプロセシング能および組織適合性複合体の発現とは無関係である。それ故、CAR免疫細胞の機能は、組織適合性複合体の調節によって制限されることはない。
しかしながら、CAR-T技術にはなお、固形腫瘍の治療において大きな課題がある。主な問題には以下が含まれる:1)固形腫瘍は高度に不均一な、すなわち多様な、腫瘍抗原を発現し、そのことが癌細胞を免疫システムの監視から逃れやすくする。これは、血液癌とは異なる。例えば、CD19白血病は、基本的にCD19陽性である。固形腫瘍抗原の多様性のために、全ての癌細胞を殺すのに適した適当な標的化部位を見つけることは困難であり、残存する標的化部位陰性の癌細胞が腫瘍の再発を引き起こす可能性がある。2)固形腫瘍の多くの腫瘍抗原は、また正常な組織においても発現され、そのことが腫瘍特異的なCARの設計を難しくしており、オフ・ターゲットの可能性が高く、かつターゲティング/オフ・ターゲット毒性のリスクが高い。3)T細胞は、腫瘍ホーミングに乏しい。固形腫瘍の細胞は、密度の高いマトリックスによって包まれて腫瘍微小環境を形成する。マトリックスは、動員された正常組織および骨髄由来の(間質)細胞によって組立てられ、免疫細胞がこのマトリックスバリア内に浸透するのを防止する。4)固形腫瘍は、強力な免疫抑制能を有しており、腫瘍微小環境内の多くの細胞は、免疫細胞の抗癌機能を阻害し得る。それ故、固形腫瘍内に浸潤するCAR-Tは、高度に有効な癌細胞殺傷効果を達成することができない。
先行技術における上記記載の問題を解決するため、本発明は治療薬、標識ポリペプチド、キメラ抗原受容体、コード核酸、発現ベクター、組換えウイルス、キット、およびそれらの使用を提供する。
具体的には、本発明は以下を提供する:
(1)腫瘍および/または癌の治療のための治療薬であって:
(a)第1の組成物であって、前記第1の組成物が、第1の活性成分を第1の薬学的に許容される担体中に含み、かつ前記第1の活性成分が、腫瘍細胞および/または癌細胞内へ導入されるための標識ポリペプチドコード配列を有する核酸を含むかまたは含有しており;前記標識ペプチドが、動作可能なように連結された細胞外抗原決定領域、スペーサー部位、および膜貫通部位を有し、それらは腫瘍細胞および/または癌細胞の表面上で修飾を形成するべく発現され得;前記細胞外抗原決定領域のアミノ酸配列は、エピトープポリペプチドの1つ以上のアミノ酸配列を含んでおり;かつこれにおいて、自然状態では、哺乳類の細胞膜上のタンパク質または分泌タンパク質のアミノ酸配列は、前記エピトープポリペプチドのアミノ酸配列を含まない、該第1の組成物と;および
(b)第2の組成物であって、これにおいて前記第2の組成物が、第2の活性成分を第2の薬学的に許容される担体中に含み、かつ前記第2の活性成分が、キメラ抗原受容体修飾免疫細胞を含み;前記キメラ抗原受容体修飾免疫細胞が、前記標識ポリペプチドの前記細胞外抗原決定領域を特異的に認識しかつ結合し得る、該第2の組成物と、
を含む該治療薬。
(2)前記エピトープポリペプチドの前記アミノ酸配列が、自然界に存在するタンパク質のアミノ酸配列に由来するか、または前記エピトープポリペプチドの前記アミノ酸配列が、前記自然界には存在しない人工的に合成されたアミノ酸配列である、(1)の治療薬。
(3)前記自然界に存在する前記タンパク質が、哺乳類の細胞内タンパク質、ウイルスタンパク質、および他の全ての非哺乳類タンパク質を含む、(2)の治療薬。
(4)前記エピトープポリペプチドの前記アミノ酸配列が、以下のタグ:Mycタグ、HAタグ、StrepタグII、Flagタグ、HATタグ、Sタグ、S1タグ、プロテインCタグ、tag-100タグ、E2タグ、TAPタグ、HSVタグ、KT3タグ、V5タグ、VSV-Gタグ、Hisタグ、またはRFPタグ、のアミノ酸配列を含む、(1)の治療薬。
(5)前記細胞外抗原決定領域の前記アミノ酸配列が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5に示される通りである、(1)の治療薬。
(6)前記スペーサー部位が、CD8αのヒンジ領域、IgGのヒンジ領域、またはIgDのヒンジ領域に由来し;好ましくは、前記スペーサー部位のアミノ酸配列が、配列番号:6に示される通りであり;ここで前記膜貫通部位が、CD8,CD3ζ、CD4,またはCD28の膜貫通領域に由来し;好ましくは、前記膜貫通部位のアミノ酸配列が、配列番号:7に示される通りである、(1)の治療薬。
(7)前記標識ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、または配列番号:15に示される通りである、(1)の治療薬。
(8)前記核酸がDNAまたはRNAを含み;かつ前記RNAが前記DNAから転写されたmRNAを含む、(1)の治療薬。
(9)前記第1の活性成分が、組換えウイルスであり、かつ前記組換えウイルスのゲノムが前記標識ポリペプチドコード配列を有しており;ここで、前記組換えウイルスが、複製選択的組換え腫瘍溶解性ウイルスまたは複製欠損性組換えウイルスを含む、(1)の治療薬。
(10)前記組換え腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解作用をもつ遺伝的に変異されたウイルスまたは腫瘍溶解作用をもつ野生型ウイルスに由来し;好ましくは前記組換え腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解作用をもつアデノウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキフォレストウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコタイプエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバ(Malaba)ウイルスに由来する、(9)の治療薬。
(11)前記キメラ抗原受容体が、動作可能なようにかつ順次に連結された抗原結合ドメイン、スペーサー領域、膜貫通領域、および細胞内ドメインを含み、かつ前記抗原結合ドメインが、前記標識ポリペプチドの前記細胞外抗原決定領域を特異的に認識しかつ結合する、(1)の治療薬。
(12)前記抗原結合ドメインのアミノ酸配列が、配列番号:42、配列番号:43、または配列番号:44に示される通りである、(11)の治療薬。
(13)前記細胞内ドメインが、リンパ球細胞内活性化シグナル伝達領域および任意のリンパ球補助刺激シグナル伝達領域に由来しており、これにおいて、前記細胞内活性化シグナル伝達領域が、CD3ζまたはDAP12の細胞内活性化シグナル伝達領域から選択され;前記任意のリンパ球補助刺激シグナル伝達領域が、4-1BB、CD28、CD27、OX40、GITR、および/またはICOSSの補助刺激シグナル伝達領域から選択される、(11)の治療薬。
(14)前記スペーサー領域が、CD8αのヒンジ領域、IgGのヒンジ領域、またはIgDのヒンジ領域に由来し、かつ膜貫通領域が、CD8α、CD3ζ、CD4、またはCD28の膜貫通領域に由来する、(11)の治療薬。
(15)前記キメラ抗原受容体の前記アミノ酸配列が、配列番号:46、配列番号:47、または配列番号:48に示される通りである、(11)の治療薬。
(16)前記免疫細胞が、T細胞またはNK細胞を含む(1)の治療薬であって;ここで前記NK細胞が、自家NK細胞、同種NK細胞、またはNK細胞株を含み、かつ前記T細胞が、ナイーブT細胞もしくはそれらの前駆細胞、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、NKT細胞、またはT細胞株を含む、(1)の治療薬。
(17)前記第1の組成物および前記第2の組成物が、一緒に混合されることなく、別々に治療薬中に存在する、(1)の治療薬。
(18)前記第1の組成物が、治療上有効な量の前記DNAまたは治療上有効な量の前記mRNAを含む、(8)の治療薬。
(19)前記第1の組成物が、治療上有効な量の前記組換えウイルスを含む、(9)の治療薬。
(20)前記第2の組成物が、治療上有効な量の前記キメラ抗原受容体修飾免疫細胞を含む、(1)の治療薬。
(21)前記DNAが、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化され;かつ前記mRNAが、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化されている、(8)の治療薬。
(22)前記組換えウイルスが、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化されている、(9)の治療薬。
(23)前記キメラ抗原受容体修飾免疫細胞が、静脈内または局所に投与されるべく製剤化されている、(1)の治療薬。
(24)前記治療薬が第1の組成物と第2の組成物とから構成される、(1)の治療薬。
(25)腫瘍および/または癌の治療のための薬物の調製における、(1)から(24)のいずれか1つの治療薬の使用。
(26)前記腫瘍および/または癌が:乳癌、頭頸部腫瘍、滑膜癌、腎臓癌、結合組織癌、悪性黒色腫、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、脳癌、肝臓癌、骨癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、線維肉腫、パジェット病、子宮頸癌、胆嚢癌、眼の癌、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵内分泌腫瘍、グルカゴノーマ(glucagon tumor)、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮体癌、膣癌、外陰癌、菌状息肉症、インスリノーマ、心臓癌、髄膜癌、腹膜癌、胸膜癌、および血液癌を含む、(25)の使用。
(27)標識ポリペプチドであって、前記標識ポリペプチドが、動作可能なように連結された細胞外抗原決定領域、スペーサー部位、および膜貫通部位を有すること、および前記標識ポリペプチドが、腫瘍細胞および/または癌細胞の表面上で修飾を形成するべく発現され得ること;前記細胞外抗原決定領域のアミノ酸配列が、エピトープポリペプチドの1つ以上のアミノ酸配列を含むこと;かつこれにおいて、自然状態では、哺乳類の細胞膜上のタンパク質または分泌タンパク質のアミノ酸配列が、前記エピトープポリペプチドのアミノ酸配列を含まないこと、を特徴とする該標識ポリペプチド。
(28)前記エピトープポリペプチドの前記アミノ酸配列が、自然界に存在するタンパク質のアミノ酸配列に由来するか、または前記エピトープポリペプチドの前記アミノ酸配列が、前記自然界には存在しない人工的に合成されたアミノ酸配列である、(27)の標識ポリペプチド。
(29)前記自然界に存在する前記タンパク質が、哺乳類の細胞内タンパク質、ウイルスタンパク質、および全ての他の非哺乳類タンパク質を含む、(28)の標識ポリペプチド。
(30)前記エピトープポリペプチドの前記アミノ酸配列が、以下のタグ:Mycタグ、HAタグ、StrepタグII、Flagタグ、HATタグ、Sタグ、S1タグ、プロテインCタグ、tag-100タグ、E2タグ、TAPタグ、HSVタグ、KT3タグ、V5タグ、VSV-Gタグ、Hisタグ、またはRFPタグ、のアミノ酸配列を含む、(27)の標識ポリペプチド。
(31)前記細胞外抗原決定領域の前記アミノ酸配列が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5に示される通りである、(27)の標識ポリペプチド。
(32)前記スペーサー部位が、CD8αのヒンジ領域、IgGのヒンジ領域、またはIgDのヒンジ領域に由来し;好ましくは、前記スペーサー部位のアミノ酸配列が、配列番号:6に示される通りであり;ここで前記膜貫通部位が、CD8,CD3ζ、CD4,またはCD28の膜貫通領域に由来し;好ましくは、前記膜貫通部位のアミノ酸配列が、配列番号:7に示される通りである、(27)の標識ポリペプチド。
(33)前記標識ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、または配列番号:15に示される通りである、(27)の標識ポリペプチド。
(34)(27)から(33)のいずれか1つの標識ポリペプチドのコード配列を有する、単離された核酸。
(35)前記核酸が、動作可能なように連結されたプロモーター、シグナルペプチドコード配列、および(27)から(33)の任意の1つの標識ポリペプチドの前記コード配列を順次に含む、(34)の核酸。
(36)前記核酸が、DNAおよびmRNAを含む、(34)の核酸。
(37)組換え発現ベクターであって、前記組換え発現ベクターが、動作可能なように連結されたプロモーター、シグナルペプチドコード配列、および(27)から(33)のいずれか1つの前記標識ポリペプチドの前記コード配列を順次に含む、該組換え発現ベクター。
(38)単離された組換えウイルスであって、前記組換えウイルスのゲノムが、順次にかつ動作可能なように連結されたプロモーター、シグナルペプチドコード配列、および(27)から(33)のいずれか1つの標識ポリペプチドのコード配列を含んでおり、かつこれにおいて、前記標識ポリペプチドが腫瘍細胞および/または癌細胞の表面上で修飾を形成するべく発現され得;かつ前記組換えウイルスが、複製選択的組換え腫瘍溶解性ウイルスまたは複製欠損性組換えウイルスを含む、該単離された組換えウイルス。
(39)前記組換えウイルスが、複製選択的組換え腫瘍溶解性ウイルスであり、かつ前記組換え腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解作用をもつ遺伝的に変異されたウイルスまたは腫瘍溶解作用をもつ野生型ウイルスに由来し;好ましくは、前記組換え腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解作用をもつアデノウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキフォレストウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコタイプエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバ(Malaba)ウイルスに由来する、(38)の組換えウイルス。
(40)動作可能なようにかつ順次に連結された抗原結合ドメイン、スペーサー領域、膜貫通領域、および細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体であって、かつ前記抗原結合ドメインが、(27)から(33)のいずれか1つの標識ポリペプチドの前記細胞外抗原決定領域を認識しかつ結合し得ることを特徴とする、該キメラ抗原受容体。
(41)前記抗原結合ドメインのアミノ酸配列が、配列番号:42、配列番号:43、または配列番号:44に示される通りである、(40)のキメラ抗原受容体。
(42)前記細胞内ドメインが、リンパ球細胞内活性化シグナル伝達領域および任意のリンパ球補助刺激シグナル伝達領域に由来し、これにおいて、細胞内活性化シグナル伝達領域が、CD3ζまたはDAP12の前記細胞内活性化シグナル伝達領域から選択され;前記任意のリンパ球補助刺激シグナル伝達領域が、4-1BB、CD28、CD27、OX40、GITR、および/またはICOSSの補助刺激シグナル伝達領域から選択される、(40)のキメラ抗原受容体。
(43)前記スペーサー領域が、CD8αのヒンジ領域、IgGのヒンジ領域、またはIgDのヒンジ領域に由来し、かつ前記膜貫通領域が、CD8α、CD3ζ、CD4、またはCD28の膜貫通領域に由来する、(40)のキメラ抗原受容体。
(44)前記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列が、配列番号:46、配列番号:47、または配列番号:48に示される通りである、(40)のキメラ抗原受容体。
(45)(40)から(44)の任意の1つのキメラ抗原受容体のコード配列を有する、単離されたDNA。
(46)そのヌクレオチド配列が、配列番号:53、配列番号:54、または配列番号:55に示される通りである、(45)のDNA。
(47)(45)または(46)のDNAから転写された、単離されたmRNA。
(48)組換え発現ベクターであって、前記組換え発現ベクターが、動作可能なように連結されたプロモーター、シグナルペプチドコード配列、および(40)から(44)のいずれか1つのキメラ抗原受容体のコード配列を順次に含む、該組換え発現ベクター。
(49)キメラ抗原受容体修飾免疫細胞であって、前記免疫細胞の表面が、(40)から(44)のいずれか1つのキメラ抗原受容体によって修飾される、該キメラ抗原受容体修飾免疫細胞。
(50)前記免疫細胞が、NK細胞またはT細胞である(49)のキメラ抗原受容体修飾免疫細胞であって;ここで前記NK細胞が、自家NK細胞、同種NK細胞、またはNK細胞株を含み、かつ前記T細胞が、未発達型T細胞もしくはそれらの前駆細胞、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、NKT細胞、またはT細胞株を含む、該キメラ抗原受容体修飾免疫細胞。
(51)腫瘍および/または癌の治療のための相乗効果をもつ、コンビナトリアルドラッグのキットであって:
(1)から(24)のいずれか1つの治療薬の前記第1の組成物を含む第1の容器と;
(1)から(24)のいずれか1つの治療薬の前記第2の組成物を含む第2の容器であって、これにおいて前記第1の容器が前記第2の容器から分離されている該容器と;および、
投与のタイミングおよび経路を指定する指示書と、
を含む該キット。
(52)腫瘍および/または癌の治療または予防のための薬物の調製における、(34)から(36)のいずれか1つの核酸の使用。
(53)腫瘍および/または癌の治療または予防のための薬物の調製における、(38)または(39)の組換えウイルスの使用。
(54)腫瘍および/または癌の治療または予防のための薬物の調製における、(49)または(50)のキメラ抗原受容体修飾免疫細胞の使用。
(55)腫瘍および/または癌の治療または予防のための薬物の調製における、(51)のキットの使用。
(56)前記腫瘍および/または癌が:乳癌、頭頸部腫瘍、滑膜癌、腎臓癌、結合組織癌、悪性黒色腫、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、脳癌、肝臓癌、骨癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、線維肉腫、パジェット病、子宮頸癌、胆嚢癌、眼の癌、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵内分泌腫瘍、グルカゴノーマ(glucagon tumor)、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮体癌、膣癌、外陰癌、菌状息肉症、インスリノーマ、心臓癌、髄膜癌、腹膜癌、胸膜癌、および血液癌を含む、(52)から(55)のいずれか1つの使用。
(57)腫瘍および/または癌を治療するための方法であって:
(1)から(24)のいずれか1つの治療薬の前記第1の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している患者に投与すること;および
(1)から(24)のいずれか1つの治療薬の前記第2の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している前記患者に投与すること、
を含む、該方法。
(58)以下の工程:
1)前記第1の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している前記患者に投与すること;および
2)前記第1の組成物の投与後に、前記第2の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している前記患者に投与すること、
を、逐次的方法で含む、(57)の方法。
(59)前記腫瘍および/または癌が:乳癌、頭頸部腫瘍、滑膜癌、腎臓癌、結合組織癌、悪性黒色腫、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、脳癌、肝臓癌、骨癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、線維肉腫、パジェット病、子宮頸癌、胆嚢癌、眼の癌、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵内分泌腫瘍、グルカゴノーマ(glucagon tumor)、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮体癌、膣癌、外陰癌、菌状息肉症、インスリノーマ、心臓癌、髄膜癌、腹膜癌、胸膜癌、および血液癌を含む、(57)の方法。
先行技術に比較して、本発明は、以下の利点およびプラス効果を有する:
本発明は、腫瘍の治療におけるCAR修飾免疫細胞の効果を改善しかつ、腫瘍の治療におけるCAR修飾免疫細胞の適用を広げる目的で、腫瘍細胞および/または癌細胞の表面を標識するための外来標識ポリペプチドと、該標識ポリペプチドを認識するCAR修飾免疫細胞とを組合せた利用を提供して、腫瘍(特に固形腫瘍)抗原の発現の不均一性および腫瘍細胞および/または癌細胞の免疫監視からの回避という問題を効果的に解決し、腫瘍細胞および/または癌細胞に対するCAR修飾免疫細胞の認識感度を改善し、かつターゲティング/オフ・ターゲット毒性のリスクを効果的に低減して、それにより腫瘍細胞殺傷におけるCAR修飾免疫細胞の有効性を改善するようにする。腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍溶解性殺傷効果に加えて、腫瘍細胞における外来標識ポリペプチドの発現を媒介するベクターとして使用される場合、該標識ポリペプチドを標的とするCAR修飾免疫細胞は、腫瘍溶解性ウイルスに感染された残存する腫瘍細胞を効果的に除去することができる。同時に、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍微小環境を破壊することから、CAR修飾免疫細胞の腫瘍ホーミング能が改善されることとなり、それにより固形腫瘍の治療の有効性がさらに増強される。
具体的には、本発明はまず、細胞外抗原決定領域、スペーサー部位、および膜貫通部位を有する標識ポリペプチドのアミノ酸配列と、該標識ポリペプチドのコード配列を持つ核酸とを設計して、腫瘍細胞および/または癌細胞が該標識ポリペプチドを発現できるようにし、それらが最終的には、腫瘍細胞および/または癌細胞内へ核酸がトランスフェクトされた後、または核酸のウイルスゲノム内への挿入時に腫瘍細胞および/または癌細胞が組換えウイルスによって感染された後に、腫瘍細胞および/または癌細胞の表面上で修飾されることとなる。標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域のアミノ酸配列がエピトープポリペプチドの1つ以上のアミノ酸配列を含むことから、本発明は、固形腫瘍抗原の発現の不均一性および腫瘍の免疫監視からの回避という問題を効果的に解決する。本発明はまた、標識ポリペプチドをコードする核酸と、細胞外抗原決定領域(特にエピトープペプチド)を認識するCAR修飾免疫細胞とを含むかまたは含有する、活性成分の組合せであって、腫瘍細胞に対するCAR修飾免疫細胞の認識感度を改善し、かつCAR修飾免疫細胞の腫瘍細胞を殺す能力をさらに改善するようにする、該組合せも提案する。さらに、エピトープポリペプチドのアミノ酸配列が、自然状態では哺乳類の細胞膜上のタンパク質または分泌タンパク質のアミノ酸配列中には含まれないという事実により、外来標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域(特にエピトープペプチド)を認識するCAR修飾免疫細胞が、患者において外来標識ポリペプチドで修飾されていない他の正常な細胞を認識して殺すことがない。それ故、本発明は、患者に対するCAR修飾免疫細胞のオフ・ターゲット毒性の可能性を大いに低減する。
さらに、本発明は、標識ポリペプチドをコードする核酸を、腫瘍溶解性ウイルスを介して腫瘍細胞および/または癌細胞内に導入して、腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞および/または癌細胞を殺すのと同時に、上述の腫瘍表面上での外来エピトープポリペプチドの発現の有意な増強と、CAR修飾免疫細胞の効果とを組み合わせることにより、さらに相乗的治療効果を達成できるようにする。腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍微小環境を破壊することから、CAR修飾免疫細胞の腫瘍ホーミング能が改善され、それにより、腫瘍(特に固形腫瘍)治療の有効性がさらに増強される。加えて、CAR修飾免疫細胞はまた、腫瘍溶解性ウイルスによって感染された後に複製サイクルを完了して充分な数の子孫ウイルスを産生することができずそれ故溶解されない腫瘍細胞を、効果的に除去することも可能であり;それにより、さらなる相乗効果を達成する。加えて、腫瘍溶解性ウイルスにより溶解された腫瘍細胞によって放出された抗原は、さらに身体自身の抗腫瘍免疫を活性化することができ、そのことが、単独で使用された腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR修飾免疫細胞よりもより良好な腫瘍殺傷効果を達成することができる。その結果、相乗的治療効果が達成される。
本発明は、上記の考えから、有効な抗腫瘍生物学的製剤となるための強い開発展望をもつ新規な腫瘍治療概念を提供する。
定義
本明細書で用いる場合、用語「腫瘍」、「癌」、「腫瘍細胞」、および「癌細胞」は、当該技術分野において一般的に認識される意味を包含する。
本明細書で用いる場合、用語「腫瘍溶解性ウイルス」は、腫瘍細胞において選択的に複製しかつ腫瘍細胞を溶解できるウイルスを指す。
本明細書で用いる場合、用語「治療上有効な量」または「治療上有効な投与量」は、検出可能な治療効果もしくは阻害効果を示すか、または抗腫瘍応答を引き起こすのに有用な、機能的薬剤または医薬組成物の量を指す。効果は、当該技術分野において公知の任意のアッセイ法によって検出され得る。
本明細書で用いる場合、用語「投与する」または「投与」は、化合物、複合体、または組成物(ウイルスおよび細胞を含む)を、患者に提供することを指す。
本明細書で用いる場合、用語「患者」は、ヒトまたは非ヒト生物を指す。したがって、本明細書に記載された方法および組成物は、ヒトの疾患および獣医学的疾患の双方に適用可能である。いくつかの実施形態においては、患者は腫瘍を有する。ある場合には、患者は1つ以上のタイプの癌を同時に罹患し得る。
本明細書で用いる場合、用語「相乗効果」は、2つ以上の薬剤間に生じる、それらの個々の効果の合計よりもより大きい効果をもたらす効果を指す。
本明細書で用いる場合、用語「pfu」または「プラーク形成単位」は、プラークを形成するウイルスの数を指す。
本明細書で用いる場合、用語「VP」は、ウイルス粒子の数を指す。
本明細書で用いる場合、用語「VP/kg」は、患者の体重1キログラム当たりの
ウイルス粒子の数を指す。
本明細書で用いる場合、用語「TCID50」は、50%組織培養感染量を表し、組織培養物の50%に感染をもたらしかつ細胞変性効果を引き起こすウイルス投与量を指す。
本明細書で用いる場合、用語「MOI」または「多重感染度」は、ウイルス数と細胞数との間の比率、すなわち、ウイルス感染を開始するために細胞当たりに使用されるウイルス粒子の数を指す。MOI=pfu/細胞、すなわち、細胞数×MOI=全PFU。
本発明の一概念を示す概略図である。 本発明の一実施形態における、5’末端から3’末端に向けてプロモーター、シグナルペプチド、細胞外抗原決定領域、スペーサー部位、および膜貫通部位を含む、標識ポリペプチドコード配列を含む核酸の構造を示す概略図である。 本発明の一実施形態における、Crisper-Cas9技術を用いて組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを調製する場合の、ドナープラスミドの構造の概略図である。左側から右側へ向けて、blaプロモーター、アンピシリン耐性遺伝子、pUC開始部位、リーダーRNA-1(gRNA1)のスプライス部位、左ホモロジーアーム(LHR480)、標識ポリペプチドTT3コード配列、シグナルペプチドコード配列(示されず)、pSプロモーター、LoxP部位、p7.5プロモーター、PuroGFPコード配列、LoxP部位、右ホモロジーアーム(RHR520)、およびリーダーRNA-2(gRNA2)のスプライス部位である。 本発明の一実施形態における、DDVV-RFP腫瘍溶解性ワクシニアウイルスゲノムのTK部位を切断する、Crisper Cas9の概略図である。上の図は、DDVV-RFP腫瘍溶解性ワクシニアウイルスゲノムを表しており、下の図は、2つのリーダーRNAにより媒介されるTK遺伝子の左部分および右部分の切断を示す図である。 本発明の調製例1における、エレクトロトランスフェクション技術と、フローサイトメトリーにより検出された腫瘍細胞の表面上での標識ポリペプチドの発現とを用いた、腫瘍細胞の標識化の結果を示す図である。図5Aおよび5Bは、それぞれTT1およびTT2で標識されたJurkat不死化Tリンパ球の結果を示す。図5C-Eは、それぞれ、TT3標識されたヒト卵巣癌細胞SKOV3-luc、ヒト結腸直腸癌細胞HCT116-luc、およびヒト肝臓癌細胞SK-HEP-1の結果を示す。図の横座標は、フローサイトメーターにより表示された蛍光強度の読取値であり、図の縦座標は、相対的な細胞数である。 本発明の実施例1における、標識されたJurkat細胞上のTT1に対するCAR-T細胞のインビトロの殺傷実験の結果を示す図である。縦座標は、殺傷された後の腫瘍細胞の特異的溶解の%(すなわち、特異的溶解の比率)を表し;横座標は、腫瘍細胞に対するエフェクター細胞の比率を表し;実線、すなわち「TT1-BBZ」は、TT1標識Jurkat細胞上のTT1を標的とするCAR修飾T細胞群の殺傷結果を示し;点線、すなわち「Mock」は、TT1標識Jurkat細胞に対するブランク電気的形質転換T細胞群(ネガティブコントロール群)の殺傷結果を示す。 本発明の実施例1における、標識されたJurkat細胞上のTT2に対するCAR-T細胞のインビトロの殺傷実験の結果を示す図である。縦座標は、殺傷された後の腫瘍細胞の特異的溶解の%を表し;横座標は、腫瘍細胞に対するエフェクター細胞の比率を表し;実線、すなわち「TT2-BBZ」は、TT2標識Jurkat細胞上のTT2を標的とするCAR修飾T細胞群の殺傷結果を示し;点線、すなわち「Mock」は、TT2標識Jurkat細胞に対するブランク電気的形質転換T細胞群(ネガティブコントロール群)の殺傷結果を示す。 本発明の実施例2における、標識されたHCT116-luc(A)およびJurkat(B)細胞上のTT3を標的とするCAR-T細胞の、インビトロの殺傷実験の結果を示す図である。縦座標は、殺傷された後の腫瘍細胞の特異的溶解の%を表し;横座標は、腫瘍細胞に対するエフェクター細胞の比率を表し;実線、すなわち「CAR-T/HCT116TT3」および「CAR-T/JurkatTT3」は、それぞれTT3を標的とするCAR修飾T細胞群の結果を示し;点線、すなわち「WT T/HCT116TT3」および「WT T/JurkatTT3」は、それぞれ野生型T細胞群(ネガティブコントロール群)の結果を示す。 本発明の実施例3における、TT3で標識されるかまたは標識されていないHCT116-luc上のTT3を標的とする、CAR-T細胞のインビトロの殺傷実験の結果を示す図である。図Aは、TT3で標識されたHCT116-lucを示し、かつ図Bは、TT3で標識されていないHCT116-lucを示す。縦座標は、殺傷された後の特異的に溶解された腫瘍細胞の比率を表し;横座標は、腫瘍細胞に対するエフェクター細胞の比率を表し;実線、すなわち「αTT3-41BBζ」は、TT3を標的とするCAR修飾T細胞群の結果を示し;点線、すなわち「GFP-ζ」は、mGFP-Z修飾T細胞群(ネガティブコントロール群)の結果を示す。 本発明の実施例4における、TT1またはTT2を標的とするCAR-T細胞を、標識されたJurkat細胞と共培養した後の、INF-γ放出のElispotの結果を示す図である。左のパネルは、ELISpotの実験ウェルの写真であり、右のパネルは、Elispot分析の統計結果である。図において、「ブランク-T」は、CARにより修飾されないT細胞群(コントロール群)を示し、「TT1 CAR-T」および「TT2 CAR-T」は、それぞれTT1またはTT2を標的とする、CARによって修飾されたT細胞群を示す。右のパネルにおいて、横座標は、異なる標識ポリペプチドで標識されたJurkat細胞を表し、縦座標は、IFN-γの相対数(5x10個のT細胞当たりのスポット数によって示された)を表す。 本発明の実施例5における、TT3を標的とするCAR-NK細胞(図ではNKaTT3CARとして示した)の、標識および未標識のSKOV3-lucまたはSK-HEP-1に対するインビトロの殺傷実験の結果を示す図である。図Aは、TT3で標識されていないSKOV3-luc(図ではSKOV3として示される)の結果であり、図Bは、エレクトロトランスファーによってTT3で標識されているSKOV3-luc(図ではSKOV3-EPとして示される)の結果であり;図Cは、TT3で標識されていないSK-HEP-1(図ではSK-HEP-1として示される)の結果であり、図Dは、エレクトロトランスファーによってTT3で標識されているSK-HEP-1(図ではSK-HEP-1-EPとして示される)の結果である。これらの中では、mGFP-Z修飾NK細胞(パネルではNKmGFPZとして示される)をネガティブコントロールとして使用し;縦座標は、殺傷された後に特異的に溶解された腫瘍細胞の比率を示し;横座標は、異なる実験群を示し:標的細胞に対するエフェクター細胞の比率は、10:1である。 本発明の実施例6における、腫瘍細胞上のTT3を標的とするCAR-T細胞の養子再注入(adoptive reinfusion)の殺傷効果を示す図である。腫瘍接種の7日後、マウスにそれぞれ、(1)PBS、(2)コントロールRNA CAR-T、(3)TT3を標的とするRNA CAR-T、(4)TT3を標的とするDNA CAR-T、を与えた。図Aは、それぞれ7日目および14日目に、生物蛍光イメージングによって表示された、マウスにおける腫瘍を示す。図Bは14日目のマウスにおけるBL1腫瘍細胞の蛍光強度を示す。図Bにおいては、横座標は異なる処理群を表し、縦座標は、インビボイメージングシステムによって記録された、動物における腫瘍細胞の蛍光強度を表す。縦座標に示された蛍光放射率(単位は「p/秒」、すなわち光子/秒、である)は、単位時間当たりに動物の表面から放射された光子の数を指す。 本発明の調製例7における、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いて腫瘍細胞を標識した後の、フローサイトメトリーによって検出された、腫瘍細胞の表面上のGFPの発現および標識ポリペプチドの発現の結果を示す図である。各パネルの左のピークは、抗体染色された野生型腫瘍細胞(組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによる感染なし)のネガティブコントロール曲線であり、右のピークは、腫瘍細胞が組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスで感染された48時間後の、GFP(図A-C)またはTT3(図D-F)の発現強度曲線である。図AおよびDは、SKOV3-luc細胞の結果であり;図BおよびEは、HCT116-luc細胞の結果であり;図CおよびFは、SK-HEP-1細胞の結果である。各パネルの横座標は、フローサイトメトリーによって表示されたGFPまたはTT3の蛍光強度の読取り値を表し、縦座標は、相対的な細胞数を表す。 本発明の実施例7における、TT3を標的とするCAR-NK細胞の、標識および未標識のSKOV3-luc、またはSK-HEP-1に対するインビトロの殺傷実験の結果を示す図である。図Aは、TT3で標識されていないSKOV3-lucの結果であり;図Bは、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによる感染時にTT3で標識されているSKOV3-lucの結果であり;図Cは、TT3で標識されていないSK-HEP-1の結果であり;図Dは、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによる感染時にTT3で標識されているSK-HEP-1の結果である。各パネルの縦座標は、殺傷された後に特異的に溶解された腫瘍細胞の比率を表し、横座標は、異なる実験群を表しており;標的細胞に対するエフェクター細胞の比率は、10:1である。 本発明の実施例8における、標識または未標識のSK-HEP-1に対する、TT3を標的とするCAR-T細胞のインビトロの殺傷実験の結果を示す図である。図Aは、TT3で標識されていないSK-HEP-1の結果であり;図Bは、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによる感染後の、TT3で標識されているSK-HEP-1の結果である(「***」はp<0.001を示す)。各図の縦座標は、殺傷された後の特異的に溶解された腫瘍細胞の比率を表し、かつ横座標は、異なる実験群を表しており、標的細胞に対するエフェクター細胞の比率は、40:1である。 本発明の実施例9における、TT3を標識とするCAR-NK細胞が標識または未標識のSK-HEP-1と共培養された後の、GM-CSFの分泌を示す図である。図中、縦座標は、共培養の上清中のGM-CSFの濃度(pg/ml)を表し、横座標は、異なる実験群を表す。図において、白色のカラムは、NK mGFPZを表し、灰色のカラムは、NK aTT3 CARを表し、かつ「**」はp<0.01を意味する。 本発明の実施例10における、TT3を標識とするCAR-NK細胞が標識または未標識のSK-HEP-1と共培養された後の、IFNγ(図A)およびGM-CSF(図B)の分泌を示す図である。図中、縦座標は、共培養の上清中のIFNγ(図A)またはGM-CSF(図B)の濃度(pg/ml)を表し、横座標は、異なる実験群を表す。図中、白色のカラムは、T mGFPZを表し、灰色のカラムは、T aTT3 CARを表す。 本発明の実施例11における、免疫組織化学によって検出された、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの腫瘍内投与後の、腫瘍組織におけるTT3の発現を示す図である。図A-Dは、それぞれ、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの腫瘍内投与の7(A)、14(B)、21(C)、29(D)日後の、腫瘍組織におけるTT3の発現を表す。各図における3つのセクションは、それぞれ3匹のマウスの腫瘍組織に由来し、倍率範囲は0.5から1.5倍までである。 本発明の実施例12における、皮下腫瘍の増殖に対する組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスとCAR-NKとの組合せの阻害効果を示す図である。図Aは、異なる投与群のマウスにおける皮下腫瘍の増殖曲線を示す。横座標は、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与後の日数を表し、縦座標は、腫瘍の体積を表す。図Bは、異なる投与群のマウスにおける皮下腫瘍の相対増殖率を、投与後の日数の関数として示す。横座標は、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与後の日数を表し、縦座標は、腫瘍相対増殖率%を表す。
本開示は、添付の図面を参照して、以下の好ましい実施形態の詳細な記載によってさらに説明されるが、それは限定的な意味において理解されるべきではく、当業者には、種々の変更および改良が、本開示の精神から離れることなく適宜に行われ得ること、それ故それらが本開示の範囲内であることが明らかであろう。
本発明者らは、先行技術における上述の欠点を認識し、理論的研究および実験検証を通して標識ポリペプチドを設計した。標識ポリペプチドは、腫瘍細胞および/または癌細胞の表面上で修飾を形成するべく発現され得、かつ細胞外抗原決定領域を有する。本発明はまた、標識ポリペプチドを使用して腫瘍細胞および/または癌細胞を標識し、かつ標識ポリペプチドを認識するCAR修飾免疫細胞を組合せる戦略も提供し、それにより腫瘍(特に固形腫瘍)抗原の発現の不均一性および腫瘍細胞および/または癌細胞の免疫監視からの回避の問題を効果的に解決し、腫瘍細胞および/または癌細胞に対するCAR修飾免疫細胞の認識感度を改善し、かつターゲティング/オフ・ターゲット毒性のリスクを効果的に低減し、それによって腫瘍細胞殺傷におけるCAR修飾免疫細胞の有効性を改善するようにする。
具体的には、本発明の一態様は、腫瘍および/または癌の治療のための治療薬であって:
(a)第1の組成物であって、前記第1の組成物が、第1の活性成分を第1の薬学的に許容される担体中に含み、かつ前記第1の活性成分が、腫瘍細胞および/または癌細胞内へ導入されるための標識ポリペプチドコード配列を有する核酸を含むかまたは含有しており;前記標識ポリペプチドが、動作可能なように連結された細胞外抗原決定領域、スペーサー部位、および膜貫通部位を有し、それらは腫瘍細胞および/または癌細胞の表面上で修飾を形成するべく発現され得;前記細胞外抗原決定領域のアミノ酸配列は、エピトープポリペプチドの1つ以上のアミノ酸配列を含んでおり;かつこれにおいて、自然状態では、哺乳類の細胞膜上のタンパク質または分泌タンパク質のアミノ酸配列は、前記エピトープポリペプチドのアミノ酸配列を含まない、該第1の組成物と;および
(b)第2の組成物であって、これにおいて前記第2の組成物が、第2の活性成分を第2の薬学的に許容される担体中に含み、かつ前記第2の活性成分が、キメラ抗原受容体修飾免疫細胞を含み;前記キメラ抗原受容体修飾免疫細胞が、前記標識ポリペプチドの前記細胞外抗原決定領域を特異的に認識しかつ結合することができる、該第2の組成物と、
を含む該治療薬を提供する。
前記治療薬における前記活性成分は、以下に詳細に記載されるであろう。
標識ポリペプチド
本発明は、具体的には、腫瘍細胞および/または癌細胞を修飾するべく使用される、標識ポリペプチドのアミノ酸配列を設計するが、ここで該標識ポリペプチドは、動作可能なように連結された細胞外抗原決定領域、スペーサー部位、および膜貫通部位を有し、かつ腫瘍細胞および/または癌細胞の表面上で修飾を形成するべく発現され得;前記細胞外抗原決定領域のアミノ酸配列は、エピトープポリペプチドの1つ以上のアミノ酸配列を含んでおり;これにおいて、自然状態では、哺乳類の細胞膜上のタンパク質または分泌タンパク質のアミノ酸配列は、前記エピトープポリペプチドのアミノ酸配列を含まない。
本明細書で用いる場合、用語「細胞外抗原決定領域」は、細胞膜の外側に局在し、かつそれが細胞表面上で発現された場合にエピトープポリペプチドを含有する、標識ポリペプチドの部分を指す。
好ましくは、エピトープポリペプチドのアミノ酸配列は、自然界に存在するタンパク質のアミノ酸配列に由来するか、または前記エピトープポリペプチドの前記アミノ酸配列は、自然界には存在しない人工的に合成されたアミノ酸配列である。自然界に存在する該タンパク質は、哺乳類の細胞内タンパク質、および哺乳類以外の生物のタンパク質を含む。哺乳類以外の生物のたんぱく質は、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、原生動物タンパク質、植物タンパク質、および哺乳類以外の他の動物のタンパク質を含む。
本発明のいくつかの実施形態においては、エピトープポリペプチドのアミノ酸配列は、以下のタグ:Mycタグ、HAタグ、StrepタグII、Flagタグ、HATタグ、Sタグ、S1タグ、プロテインCタグ、tag-100タグ、E2タグ、TAPタグ、HSVタグ、KT3タグ、V5タグ、VSV-Gタグ、Hisタグ、またはRFPタグ、等のアミノ酸配列に由来する。
上記のタグのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は公知であり、当該技術分野において一般に使用される公的データベースから入手可能である。
本発明の好ましい実施形態においては、エピトープポリペプチドのアミノ酸配列は、以下のタグ:ヒトMycタグ(対応する標識ポリペプチドはTT1と表示される)、インフルエンザウイルスHAタグ(対応する標識ポリペプチドはTT2と表示される)、StrepタグII(対応する標識ポリペプチドはTT3と表示される)、に由来する。さらに好ましくは、エピトープポリペプチドのアミノ酸配列は、ヒトMycタンパク質の位置410から419のアミノ酸配列と一致するか;またはエピトープポリペプチドのアミノ酸配列は、インフルエンザウイルスHAタンパク質の位置119から127のアミノ酸配列と一致するか;またはエピトープポリペプチドのアミノ酸配列は、StrepタグII(StrepタグIIの詳細については、Thomas G.M.Shmidt、Jurgen Koepke、Ronald Frank、およびArne Skerra著、“Molecular Interaction Between the Strep-tag Affinity Peptide and its Cognate Target,Streptavidin”の文献を参照)と一致する。本発明の別の実施形態においては、TT1およびTT2のエピトープポリペプチドのアミノ酸配列は、上記の配列の上流および下流へせいぜい10アミノ酸まで伸長することができ、これにおいて、ヒトMycタンパク質のアミノ酸配列は、UniProtKBにおいてP01106アイソフォーム1と番号付けされたアミノ酸配列であってもよく、かつインフルエンザウイルスHAタンパク質のアミノ酸配列は、UniProtKBにおいてQ03909と番号付けされたアミノ酸配列であってもよい。
特定の実施形態においては、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域のアミノ酸配列は、エピトープポリペプチドの1つ以上のアミノ酸配列を含み、これにおいて、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域のアミノ酸配列がエピトープポリペプチドの複数のアミノ酸配列を含む場合、2つごとの隣接するエピトープポリペプチドは、動作可能なように連結される。例えば、それらはリンカーによって結合されるか、または何らリンカーなしに直接結合されてもよい。リンカーのアミノ酸配列は、例えば、G(標識ポリペプチドC1&2a、C1&2bにおいて使用される通り)、GGS(C1&2a、C1&2bにおいて使用される通り)、GGGGSGGGGS(TT1-TT3において使用される通り)であってもよい。
標識ポリペプチドの免疫原生を増強するため、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域は、好ましくはn個のエピトープポリペプチドを含み、ここでnは、1以上の整数、例えば、n=1、2、3、4...などである。好ましくは、nは、1-10の整数であり;nが2-5の整数であることもまた好ましく;n=2または3であることもまた好ましい。例えば、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域は、Mycタグに由来する3つの反復したエピトープポリペプチド(例えば、TT1を参照)を含むか、またはHAタグに由来する3つの反復したエピトープポリペプチド(例えば、TT2を参照)を含むか、またはStrepタグIIに由来する3つの反復したエピトープポリペプチド(例えば、TT3を参照)を含むか、または、Mycタグに由来する3つの反復したエピトープポリペプチドとHAタグに由来する3つの反復したエピトープポリペプチドとを含むか(例えば、C1&2a参照)、またはMycタグに由来する2つの反復したエピトープポリペプチドとHAタグに由来する2つの反復したエピトープポリペプチドとを含む(例えば、C1&2b参照)。
本発明の一実施形態においては、細胞外抗原決定領域のアミノ酸配列は、配列番号:1(TT1に対応)、配列番号:2(TT2に対応)、配列番号:3(TT3に対応)、配列番号:4(C1&2aに対応)、および配列番号:5(C1&2bに対応)のように示される。
好ましくは、膜貫通部位は、CD8,CD3ζ、CD4,またはCD28の膜貫通領域に由来し、それらの完全長のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は公知であり、かつ当該技術分野において一般に使用される公的データベースから入手可能である。より好ましくは、膜貫通部位は、ヒトCD28αの膜貫通領域に由来する。なおさらに好ましくは、膜貫通部位のアミノ酸配列は、配列番号:7に示される通りのアミノ酸配列を含む。CD8は、αおよびβサブユニットから構成される膜貫通グリコシル化膜タンパク質である。それは、T細胞表面受容体と共に働いて、T細胞を特異抗原に結合させる。CD8は、MHC Iに特異的に結合して、細胞傷害性T細胞の殺傷効果を媒介する。膜貫通領域は、通常、細胞膜に広がる疎水性のアルファヘリックスである。
本発明の標識ポリペプチドにおいては、膜貫通部位と細胞外抗原決定領域とは、スペーサー部位によって結合され得る。この領域の構造は、細胞外抗原決定領域が様々な方向に適合されて、対応するCARの認識および結合を促進できるよう、フレキシブルであるべきである。スペーサー部位の最も単純な形状は、免疫グロブリンIgG1のヒンジ領域であり、また免疫グロブリンCH2H3領域の一部分であってもよい。本発明は、研究および実験を通して、スペーサー部位が好ましくはCD8αのヒンジ領域に由来し、かつ膜貫通部位が好ましくはCD8αの膜貫通領域に由来することを見出した。好ましくは、スペーサー部位のアミノ酸配列は、配列番号:6に示される通りである。より好ましくは、スペーサー部位および膜貫通部位は、スペーサー膜貫通部位を構成し、かつスペーサー膜貫通部位のアミノ酸配列は、CD8αの位置Yから210のアミノ酸配列と一致し、かつ118128であり、Yは、整数である。これにおいて、CD8αのアミノ酸配列のUniProtKB番号は、P01732でよい。すなわち、スペーサー膜貫通部位のアミノ酸配列は、好ましくはCD8αの位置118から210より選択され、かつ位置128から210のアミノ酸配列を含む。例えば、スペーサー膜貫通部位のアミノ酸配列は、以下の群:CD8αの位置118から210、位置119から210、位置120から210、位置121から210、位置122から210、位置123から210、位置124から210、位置125から210、位置126から210、位置127から210、または位置128から210、から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列として示される。
本明細書で使用される用語「スペーサー部位」および「膜貫通部位」は、当該技術分野において公知である。詳細については、Yu Shanqian著、「Immunology introductory theory」、Higher Education Press、2008年、およびKenneth Murphy、Paul Travers、Mark Walporら著、「Immunology、第7版」を参照されたい。
本発明の標識ポリペプチドコード配列を有する核酸においては、シグナルペプチドコード配列は、好ましくは、標識ポリペプチドコード配列の5’末端の前に含まれ、かつ該シグナルペプチドは、標的タンパク質の細胞表面ヘの分泌をガイドする機能をもつ。本発明は、細胞外抗原決定領域とGM-CSFα鎖からのシグナルペプチドとの組合せが、標識ポリペプチドが腫瘍細胞の表面上に発現されるのを可能にすることを見出した。GM-CSFα鎖シグナルペプチドは、本発明の標識ポリペプチドを分泌経路へ標的化するためのリーダー配列であり、そのコード配列はまず、細胞内で標識ポリペプチドのコード配列と一緒にタンパク質へ翻訳され、そして合成されたタンパク質を細胞内分泌経路内へガイドする。シグナルペプチドは、標識ポリペプチドが細胞表面上で発現される前に除去される。GM-CSFα鎖の完全長のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は公知であり、当該技術分野において一般に使用される公的データベースから入手可能である。好ましくは、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、ヒトGM-CSFα鎖の位置1から22より選択される。より好ましくは、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、配列番号:8に示される通りである。これにおいて、GM-CSFα鎖のアミノ酸配列は、UniProtKB-P15509に由来する。
本発明の特定の実施形態においては、標識ポリペプチドは、順次にかつ動作可能なように連結された以下のアミノ酸配列:細胞外抗原決定領域(これは、エピトープポリペプチドの1つ以上のアミノ酸配列を含む)、スペーサー部位、および膜貫通部位、を含む。本発明のより特定的な実施形態においては、細胞外抗原決定領域のエピトープポリペプチドのアミノ酸配列は、以下のペプチド:ヒト細胞内タンパク質Mycに由来するMycタグ、インフルエンザウイルスのHAタンパク質に由来するHAタグ、自然界には存在しない人工的に合成された配列StrepタグII、のエピトープポリペプチドのアミノ酸配列に由来する。スペーサー部位は、ヒトCD8αのヒンジ領域に由来し、かつ膜貫通部位は、ヒトCD8αの膜貫通領域に由来する。
上述のように、シグナルペプチドは、細胞外抗原決定領域と動作可能なように連結され、細胞外抗原決定領域は、スペーサー部位と動作可能なように連結され、かつスペーサー部位は、膜貫通部位と動作可能なように連結される。例えば、それらはリンカーによって結合されるか、または何らリンカーなしに直接結合されてもよい。本発明の一実施形態においては、シグナルペプチドと細胞外抗原決定領域とは、リンカー、例えばGAHADITS(TT1-TT3において使用されるような)、GAHAAQLTLTKGNK(C1&2aにおいて使用されるような)、GAHA(C1&2bにおいて使用されるような)によって結合される。細胞外抗原決定領域とスペーサー部位とは、リンカー、例えば-Ala-Ser-、およびGにより結合され、またスペーサー部位と膜貫通部位とは、リンカーなしに直接結合される。
本発明はさらに、標識ポリペプチドが2つのエピトープポリペプチドを同時に発現し得ることを見出した。具体的には、本発明は標識ポリペプチドC1&2aを設計したが、その抗原決定領域は、Mycタグの3つの反復とHAタグの3つの反復とを含有する。本発明はまた、標識ポリペプチドC1&2bも設計したが、その抗原決定領域は、Mycタグの2つの反復とHAタグの2つの反復とを含有する。細胞膜表面上での標識ポリペプチドの発現をさらに安定化する目的で、TIGITスペーサーがC1&2bのスペーサー部位へ付加された。付加されたスペーサーのアミノ酸配列は、TIGITの位置24から140のアミノ酸配列と一致する。これにおいて、TIGITのアミノ酸配列は、UniProtKB-Q495A1に由来する。より好ましくは、付加されたTIGITスペーサーのアミノ酸配列は、配列番号:9に示される通りであり、かつC1&2bスペーサー膜貫通部位のアミノ酸配列は、配列番号:10に示される通りである。
好ましくは、標識ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号:11(TT1に対応)、配列番号:12(TT2に対応)、配列番号:13(TT3に対応)、配列番号:14(C1&2aに対応)、または配列番号:15(C1&2bに対応)に示される通りである。
配列番号:11:
これにおいて、太字はエピトープポリペプチドを示し、灰色部分はCD8ヒンジ領域からのスペーサー部位を示し、かつ下線はCD8膜貫通領域からの膜貫通部位を示す。
配列番号:12:
これにおいて、太字はエピトープポリペプチドを示し、灰色はCD8ヒンジ領域からのスペーサー部位を示し、かつ下線はCD8膜貫通領域からの膜貫通部位を示す。
配列番号:13:
これにおいて、太字はエピトープポリペプチドを示し、灰色はCD8ヒンジ領域からのスペーサー部位を示し、かつ下線はCD8膜貫通領域からの膜貫通部位を示す。
配列番号:14:
これにおいて、太字はエピトープポリペプチドを示し、灰色はCD8ヒンジ領域からのスペーサー部位を示し、かつ下線はCD8膜貫通領域からの膜貫通部位を示す。
配列番号:15:
これにおいて、太字はエピトープポリペプチドを示し、濃灰色はスペーサー部位のTIGITスペーサーからの部分を示し、淡灰色はスペーサー部位のCD8ヒンジ領域からの部分を示し、かつ下線はCD8膜貫通領域からの膜貫通部位を示す。
標識ポリペプチドコード配列を有する核酸
標識ポリペプチドコード配列は、細胞外抗原決定領域コード配列、スペーサー部位コード配列、および膜貫通部位コード配列を含んでおり、細胞外抗原決定領域コード配列は、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域をコードし、スペーサー部位コード配列は、標識ポリペプチドのスペーサー部位をコードし、そして膜貫通部位コード配列は、標識ポリペプチドの膜貫通部位をコードしている。細胞外抗原決定領域コード配列は、エピトープポリペプチドの1つ以上のコード配列を含み;これにおいて、自然状態では、哺乳類の細胞膜上のタンパク質または分泌タンパク質のコード配列は、エピトープポリペプチドのコード配列を含まない。
本発明のいくつかの実施形態においては、エピトープポリペプチドコード配列は、以下のタグ:Mycタグ、HAタグ、StrepタグII、Flagタグ、HATタグ、Sタグ、S1タグ、プロテインCタグ、tag-100タグ、E2タグ、TAPタグ、HSVタグ、KT3タグ、V5タグ、VSV-Gタグ、Hisタグ、またはRFPタグなど、のコード配列に由来する。
好ましくは、エピトープポリペプチドコード配列は、以下のタグのコード配列:Mycタグのコード配列、HAタグのコード配列、およびStrepタグIIのコード配列、に由来する。
特定の実施形態においては、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域のコード配列は、エピトープポリペプチドの1つ以上のコード配列を含んでおり、これにおいて、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域のコード配列がエピトープポリペプチドの複数のコード配列を含む場合、エピトープポリペプチドの2つごとの隣接するコード配列は、動作可能なように連結される。例えば、それらはリンカーコード配列によって結合されるか、または何らリンカーコード配列なしに直接結合されてもよい。
上述のように、標識ポリペプチドの免疫原性を増強するため、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域は、好ましくはn個のエピトープポリペプチドを含み、ここでnは、1以上の整数、例えば、n=1、2、3、4などである。好ましくは、nは、1-10の整数であり;nが2-5の整数であることもまた好ましく;n=2または3であることもまた好ましい。例えば、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域は、ヒトMycタンパク質に由来する3つの反復したエピトープポリペプチド、またはインフルエンザウイルスHAタンパク質に由来する2つの反復したエピトープポリペプチドを含み得る。それ故、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域のコード配列は、好ましくは、相応にエピトープポリペプチドのコード配列の3つの反復または2つの反復を含む。
本発明の好ましい実施形態においては、細胞外抗原決定領域のコード配列のヌクレオチド配列は、配列番号:16(TT1に対応);配列番号:17(TT2に対応)、配列番号:18(TT3に対応)、配列番号:19(C1&2aに対応)、または配列番号:20(C1&2bに対応)に示される通りである。
好ましくは、膜貫通部位コード配列は、CD8、CD3ζ、CD4、またはCD28の膜貫通領域のコード配列に由来する。より好ましくは、膜貫通部位コード配列は、ヒトCD8αの膜貫通領域のコード配列に由来する。なおさらに好ましくは、膜貫通部位のコード配列のヌクレオチド配列は、配列番号:21に示される通りのヌクレオチド配列を含む。
標識ポリペプチドコード配列においては、膜貫通部位コード配列と細胞外抗原決定領域コード配列とは、スペーサー部位コード配列によって結合され得る。スペーサー部位の最も単純な形状は、免疫グロブリンIgG1のヒンジ領域であり、それはまた免疫グロブリンのCH2H3領域の一部分であってもよい。本発明は、研究および実験を通して、スペーサー部位のコード配列が、好ましくはCD8αのヒンジ領域のコード配列に由来し、かつ膜貫通部位のコード配列が、好ましくはCD8αの膜貫通領域のコード配列に由来することを見出した。好ましくは、スペーサー部位のコード配列のヌクレオチド配列は、配列番号:22に示される通りである。より好ましくは、スペーサー部位のコード配列および膜貫通領域部位のコード配列は、スペーサー膜貫通部位のコード配列を構成し、スペーサー部位と膜貫通部位とは、リンカーなしに直接結合され得る。
本発明の標識ポリペプチドコード配列を有する核酸においては、シグナルペプチドコード配列は、好ましくは、標識ポリペプチドコード配列の5’末端の前に含まれており、かつ該シグナルペプチドコード配列は、シグナルペプチドをコードする。シグナルペプチドは、標的タンパク質の細胞表面ヘの分泌をガイドする機能を有しており、それは本発明の標識ポリペプチドを分泌経路へ標的化するためのリーダー配列である。そのコード配列はまず、細胞内で標識ポリペプチドのコード配列と一緒にタンパク質へ翻訳されて、合成されたタンパク質が細胞内分泌経路に入るのをガイドする。シグナルペプチドは、標識ポリペプチドが細胞表面上で発現される前に除去される。
好ましくは、シグナルペプチドコード配列のヌクレオチド配列は、ヒトGM-CSFα鎖のシグナルペプチドコード配列に由来する。より好ましくは、シグナルペプチドコード配列のヌクレオチド配列は、配列番号:23に示される通りである。
本発明の特性の実施形態においては、標識ポリペプチドコード配列を有する核酸は、動作可能なようにかつ順次に連結された以下のコード配列:シグナルペプチドコード配列、細胞外抗原決定領域コード配列(これは、エピトープポリペプチドの1つ以上のコード配列を含む)、スペーサー部位コード配列、および膜貫通部位コード配列、を含む。本発明のより特定的な実施形態においては、細胞外抗原決定領域のエピトープポリペプチドのコード配列は、以下のタグ:Mycタグ、HAタグ、StrepタグII、のコード配列に由来し;シグナルペプチドコード配列は、ヒトGM-CSFα鎖のシグナルペプチドのコード配列に由来し;スペーサー部位コード配列は、ヒトCD8αのヒンジ領域のコード配列に由来し、そして膜貫通部位コード配列は、ヒトCD8αの膜貫通領域のコード配列に由来する。
上述のように、シグナルペプチドコード配列と細胞外抗原決定領域コード配列、細胞外抗原決定領域コード配列とスペーサー部位コード配列、スペーサー部位コード配列と膜貫通部位コード配列は、動作可能なように連結されており、例えば、それらはリンカーコード配列によって結合されるか、または何らリンカーコード配列なしに直接結合され得る。本発明の一実施形態においては、シグナルペプチドコード配列と細胞外抗原決定領域コード配列とは、リンカーコード配列、例えば、GGCGCGCATGCCGACATTACTAGT (TT1-TT3コード配列を有する核酸の任意の1つにおいてそれぞれ使用される通り)、GGCGCGCATGCCGCTCAGTTGACATTGACGAAGGGCAATAAA (C1&2aコード配列を有する核酸において使用される通り)、GGCGCGCATGCC (C1&2bコード配列を有する核酸において使用される通り)によって結合される。細胞外抗原決定領域コード配列とスペーサー部位コード配列とは、リンカーコード配列、例えば、GCTAGC, GGG によって結合される。スペーサー部位コード配列と膜貫通部位コード配列とは、リンカーコード配列なしに直接結合される。
好ましくは、TIGITスペーサー領域コード配列が、C1&2bスペーサー部位コード配列へ付加され、これにおいて、TIGITスペーサー領域コード配列は、TIGITの位置24から140のアミノ酸をコードし、ここで、TIGITのアミノ酸配列は、UniProtKB-Q495A1に由来する。好ましくは、TIGITスペーサー領域コード配列は、配列番号:24に示される通りのヌクレオチド配列を含む。好ましくは、C1&2bのスペーサー膜貫通部位コード配列は、配列番号:25に示される通りのヌクレオチド配列を含む。
好ましくは、標識ポリペプチドコード配列を有する核酸のヌクレオチド配列は、配列番号:26(TT1に対応)、配列番号:27(TT2に対応)、配列番号:28(TT3に対応)、配列番号:29(C1&2aに対応)、または配列番号:30(C1&2bに対応)に示される通りである。
好ましくは、標識ポリペプチドコード配列を有する核酸は、DNAまたはRNAを含み;かつRNAは、DNAから転写されたmRNAを含む。
好ましくは、核酸は、動作可能なように連結されたプロモーターと標識ポリペプチドコード配列とを順次に含む。プロモーターの例は、CMVプロモーター、T7プロモーターなどといった、下流のDNA配列の転写を促進するための、当該技術分野において公知の任意のプロモーターを含む。
組換えウイルス
本発明の一実施形態においては、第1の活性成分は組換えウイルスであり、かつそのゲノムは、順次にかつ動作可能なように連結されたプロモーター、シグナルペプチドコード配列、および標識ポリペプチドコード配列を有しており;これにおいて、該組換えウイルスは、複製選択的組換え腫瘍溶解性ウイルスまたは複製欠損性組換えウイルスを含む。
好ましくは、組換え腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解作用をもつ遺伝的に変異されたウイルスおよび腫瘍溶解作用をもつ野生型ウイルスに由来し;好ましくは、該組換え腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解作用をもつアデノウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキフォレストウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコタイプエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバ(Malaba)ウイルスに由来する。
腫瘍溶解性ウイルス療法には長い歴史がある。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、パルボウイルス、およびラブドウイルスを含め、多くのタイプのウイルスが腫瘍溶解性ウイルス開発のために修飾されてきた。これまでに、2つの腫瘍溶解性ウイルス(H101およびT-VEC)が、臨床腫瘍治療に認可されている。腫瘍溶解性ウイルスは、人工的に修飾されたウイルスであり、その病原性遺伝子はノックアウトされておりかつ正常組織細胞内では基本的に複製することはできないが、しかし腫瘍細胞内では選択的に複製して腫瘍溶解作用を及ぼし得る。ワクシニアウイルスを例にとれば、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは一般に、遺伝学的生物工学による相同組換え技術を用いて、ワクシニアウイルスの内在性チミジンキナーゼ(TK)遺伝子のノックアウト、またはTKおよびワクシニア増殖因子(VGF)遺伝子のダブルノックアウトにより構築される。TKは、DNA合成の鍵酵素の一つである。ワクシニアウイルスは、複製プロセスの間に高濃度の核酸プールを形成して子孫ウイルスの円滑な複製を完了するために、TKを使用する必要がある。ワクシニアウイルスはしばしば、VGF遺伝子産物を介して宿主および周辺細胞の増殖を促進し、かつそれら自体の複製及び増殖を達成するが、一方、VGF遺伝子なしでのワクシニアウイルスの正常細胞に対する損傷は、大いに低減される。TKおよびVGF遺伝子の欠損により、正常細胞において複製するためのウイルスの能力は制限され、かつ腫瘍溶解性ウイルスベクター内に挿入された外来遺伝子の発現もまた大いに制限される。しかしながら、TK遺伝子は、腫瘍細胞の殆どの環境においては高度に発現され、そのことがワクシニアウイルスの複製およびパッケージングに好適な環境を提供するため、ワクシニアウイルスは腫瘍細胞内で選択的に複製しかつ腫瘍溶解する機能をもち、かつ腫瘍ウイルスベクター内に挿入された外来遺伝子が高度に発現されるようにする。直接的な腫瘍溶解作用に加えて、腫瘍溶解性ウイルスはまた、腫瘍細胞にホログラフィック(holographic)な腫瘍抗原を放出させて、身体の生来の抗腫瘍免疫を活性化し得ると同時に、腫瘍微小環境に対し一定の制御効果をもたらし得る。
本発明においては、標識ポリペプチドコード配列が腫瘍溶解性ウイルスのゲノム内に挿入され、それにより標識ポリペプチドコード核酸を腫瘍細胞および/または癌細胞内に挿入して、腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞および/または癌細胞内を殺し得ると同時に、腫瘍細胞の表面上での外来エピトープペプチドの発現が、CAR修飾免疫細胞の効果と組合されて、相乗的な治療効果を達成するようにする。腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍微小環境を破壊することから、CAR修飾免疫細胞の腫瘍ホーミング能が改善され、それにより固形腫瘍の治療の有効性がさらに増強される。加えて、CAR修飾免疫細胞はまた、腫瘍溶解性ウイルスにより感染された後に複製サイクルを完了して充分な数の子孫ウイルスを産生することができずそれ故溶解され得ない腫瘍細胞を、効果的に除去することもでき;それによりさらなる相乗効果を達成する。加えて、腫瘍溶解性ウイルスにより溶解された腫瘍細胞によって放出された抗原は、身体自体の抗腫瘍免疫をさらに活性化することができ、そのことが、腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR修飾免疫細胞を単独で用いるよりも、より良好な腫瘍殺傷効果の達成を可能にし、それにより相乗的治療効果が達成される。
本発明の一実施形態においては、標識ポリペプチドコード配列を有する核酸(そのヌクレオチド配列が、例えば配列番号:26-30のいずれか1つであり得る)が、得られた複製選択的組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのゲノム内に挿入される。
好ましくは、組換え腫瘍溶解性ウイルスは、TK遺伝子およびVGF遺伝子が機能的に欠損している組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスである。TK遺伝子は、外来ヌクレオチド配列を挿入することにより機能的に欠損され得る。VGF遺伝子は、遺伝子ノックアウトまたは外来ヌクレオチド配列の挿入により機能的に欠損され得るが、しかしVGF遺伝子をノックアウトすることが好ましい。
本明細書で使用される用語「機能的欠損」または「機能的に欠損した」は、腫瘍溶解性ウイルスの遺伝子に言及する場合、腫瘍溶解性ウイルスが遺伝子の持つべき機能を及ぼすことができないこと、すなわち、機能が失われていることを意味する。この目的は、例えば、外来フラグメントを遺伝子内に挿入すること、または遺伝子のノックアウトにより達成され得る。
より好ましくは、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、Wyeth株またはWR株である。
標識ポリペプチドコード配列がTK遺伝子内に挿入されて、本発明の組換え腫瘍溶解性ウイルスを得ることができる。標識ポリペプチドコード配列はまた、VGF遺伝子内に挿入されて、本発明の組換え腫瘍溶解性ウイルスを得ることもできる。
好ましい実施形態においては、組換え腫瘍溶解性ウイルスは、VGF遺伝子欠損をもつワクシニアウイルスである、VSC20ワクシニアウイルスを遺伝的に修飾することによって得られる。調製法については、科学文献:McCart,JAら著、“Systemic cancer therapy with a tumor-selective vaccinia virus mutant lacking thymidine kinase and vaccinia growth factor genes”、「Cancer Res」、2001年、第61巻、P.8571-8757、を参照のこと。遺伝的修飾は、外来標識ポリペプチドコード配列をVSC20ワクシニアウイルスのTK遺伝子内に挿入して、TK遺伝子を機能的欠損にすることを含む。
組換えウイルスのゲノムはまた、他の外来遺伝子、例えば、ピュロマイシン遺伝子、gpt遺伝子、および/またはLacZ遺伝子を含む、外来スクリーニング遺伝子を組込んでもよい。外来スクリーニング遺伝子は、外来標識ポリペプチドをコードする遺伝子を精製する場合には、遺伝子ノックアウトシステム(例えば、LoxP)によりノックアウトされ得る。
いくつかの実施形態においては、本発明は、ワクシニアウイルス初期/後期プロモーターp7.5を採用して外来スクリーニング遺伝子を制御し、ワクシニアウイルス初期プロモーターpSELを人工的に合成してシグナルペプチド配列および外来標識ポリペプチドコード配列を制御し、かつ外来スクリーニング遺伝子コード配列、シグナルペプチドコード配列、および標識ポリペプチドコード配列を、インビトロ細胞内組換え技術を通してワクシニアウイルスVSC20株のTK遺伝子領域内に挿入して、腫瘍溶解性ウイルスを構築する。二つのプロモーターは、それらが連続方式でそれぞれ調節する遺伝子の発現を開始する。
本発明の別の実施形態においては、Crisper-Cas9遺伝子編集技術を用いて、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを構築する。
好ましくは、Crisper-Cas9遺伝子編集法は、切断および相同組換えを2つの場所で同時に行うことができ、配列をノックアウトしかつ導入遺伝子を挿入するという目的を一度に達成するようにする。
好ましくは、Crisper-Cas9遺伝子編集法は、標的配列およびドナー配列を同時に切断して、相同組換えの効率を改善することができる。
本発明のCrisper-Cas9遺伝子編集法の切断および相同組換えの設計は、図3および図4に示されている。
具体的には、Crisper-Cas9システムは、リーダーRNAおよびドナーDNAを含み得る。
好ましくは、リーダーRNAは、リーダーRNA-1およびリーダーRNA-2を含む。リーダーRNA-1のヌクレオチド配列は、好ましくは、ワクシニアウイルスTK遺伝子の位置123から145におけるヌクレオチド配列と一致し、かつリーダーRNA-2のヌクレオチド配列は、好ましくは、ワクシニアウイルスTK遺伝子の位置411から433におけるヌクレオチド配列と一致する。TK遺伝子のヌクレオチド配列のGenbank番号は、AAO89373.1であってよい。好ましくは、リーダーRNA-1のヌクレオチド配列は、配列番号:31に示される通りであり、かつリーダーRNA-2のヌクレオチド配列は、配列番号:32に示される通りである。
好ましくは、ドナーDNAにおいて、左ホモロジーアームのヌクレオチド配列は、配列番号:33に示される通りであり、かつ、右ホモロジーアームのヌクレオチド配列は、配列番号:34に示される通りである。
好ましくは、ドナーDNAのヌクレオチド配列は、上述のシグナルペプチドコード配列(例えば、配列番号:23)および標識ポリペプチドコード配列を含み、またpuro-GFPコード配列も含む。puro-GFPコード配列のヌクレオチド配列は、配列番号:35に示される通りである。
puro-GFPコード配列は、好ましくは、配列番号:36に示される通りのヌクレオチド配列のプロモーターの制御下にあり、かつシグナルペプチドコード配列および標識ポリペプチドコード配列は、好ましくは、配列番号:37に示される通りのヌクレオチド配列のプロモーターの制御下にある。
本発明の好ましい実施形態においては、ドナーDNAのヌクレオチド配列は、配列番号:38に示される通りである。
キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体は、動作可能なように連結された抗原結合ドメイン、スペーサー領域、膜貫通領域、および細胞内ドメインを順次に含む。抗原結合ドメインは、標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域を特異的に認識しかつ結合し得る。スペーサー領域は、抗原結合ドメインと膜貫通領域とを分離するために使用され、かつ細胞内ドメインはシグナル伝達のために使用される。
本明細書で使用される用語「抗原結合ドメイン」、「スペーサー領域」、「膜貫通領域」、および「細胞内ドメイン」の定義については、Yu Shanqian著、「Immunology introductory theory」、Higher Education Press、2008年、およびKenneth Murphy、Paul Travers、Mark Walpor著、「Immunology、第7版」その他を参照されたい。
抗原結合ドメインは、好ましくは、図1に示されるような、リンカーを介して互いに結合され得る軽鎖および重鎖を含む単鎖抗体(ScFv)である。
本発明はさらに、TT1を標的とする抗原結合ドメインの軽鎖のアミノ酸配列が、抗Myc抗体(例えば、クローン9e10)の軽鎖の位置1から111のアミノ酸配列と一致すること(本発明の別の実施形態では、TT1を標的とする抗原結合ドメインの軽鎖のアミノ酸配列は、上記配列の下流に10アミノ酸以下まで伸長され得る)、および重鎖のアミノ酸配列が、抗Myc抗体(例えば、クローン9e10)の重鎖の位置23から143のアミノ酸配列と一致すること(本発明の別の実施形態では、TT1を標的とする抗原結合ドメインの重鎖のアミノ酸配列は、上記配列の上流および下流に10アミノ酸以下まで伸長され得る)が好ましいことを見出した。
好ましくは、TT2を標的とする抗原結合ドメインの軽鎖のアミノ酸配列は、抗HA抗体(例えば、クローン12ca5)の軽鎖の位置2から121のアミノ酸配列と一致し(本発明の別の実施形態では、TT2を標的とする抗原結合ドメインの軽鎖のアミノ酸配列は、上記配列の下流に10アミノ酸以下まで伸長され得る)、かつ重鎖のアミノ酸配列は、抗HA抗体(例えば、クローン12ca5)の重鎖の位置2から114のアミノ酸配列と一致する(本発明の別の実施形態では、TT2を標的とする抗原結合ドメインの重鎖のアミノ酸配列は、上記の配列の下流に10アミノ酸以下まで伸長され得る)。
好ましくは、TT3を標的とする抗原結合ドメインの軽鎖のアミノ酸配列は、抗Strep-tagII抗体の軽鎖(例えば、特許文献、欧州特許出願公開第2871189号明細書を参照)と一致し、かつ重鎖のアミノ酸配列は、抗Strep-tagII抗体の重鎖(例えば、特許文献、欧州特許出願公開第2871189号明細書を参照)と一致する。
ここで、抗Myc抗体(クローン9e10)の軽鎖のアミノ酸配列は、PDB:2ORB_L(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/2ORB_L)のアミノ酸配列に由来することが可能であり、かつ抗Myc抗体(クローン9e10)の重鎖のアミノ酸配列は、Genbank:CAA73271.1(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/CAA73271.1? report=genbank&log$=protalign&blast_rank=1&RID=P597FX1S014)のアミノ酸配列に由来することが可能である。軽鎖および重鎖を結合するリンカーのアミノ酸配列は、配列番号:39に示される通りである。抗HA抗体(クローン12ca5)の軽鎖のアミノ酸配列は、PDB:5XCS_B(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/ protein/1258501213)のアミノ酸配列に由来することが可能であり、かつ抗HA抗体(クローン12ca5)の重鎖のアミノ酸配列は、PDB:5XCS_A(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/5XCS_A)のアミノ酸配列に由来することが可能である。軽鎖および重鎖を結合するリンカーのアミノ酸配列は、配列番号:40に示される通りである。抗Strep-tag抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列は、特許文献、欧州特許出願公開第2871189号明細書に開示されたアミノ酸配列に由来することが可能であり、かつ軽鎖および重鎖を結合するリンカーのアミノ酸配列は、配列番号:41に示される通りである。
より好ましくは、TT1、TT2、およびTT3を標的とする抗原結合ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:42-44に示される通りである。
細胞内ドメインは、TまたはNK細胞を活性化するためのシグナル伝達において役割を果たす。初期にT細胞用に使用されたCARの細胞内ドメインは、ただ1つのシグナル分子を有しており、それは通常、免疫グロブリンEの受容体関連FcεRIγ(IgEに対し高親和性をもつ受容体の一サブユニット)、またはT細胞抗原受容体シグナルの本質的な伝達分子であるCD3ζである。いくつかの細胞内ドメインは、1つ以上のT細胞活性化モチーフから構成されるT細胞活性化ドメインを含む。
好ましくは、細胞内ドメインは、リンパ球細胞内活性化シグナル伝達領域、および任意で、リンパ球補助刺激シグナル伝達領域(0から2個の補助刺激伝達領域を含み得る)に由来する。好ましくは、前記細胞内活性化シグナル伝達領域は、CD3ζおよびDAP12の細胞内シグナル領域に由来し、かつ補助刺激シグナル伝達領域は、4-1BB、CD28、CD27、OX40、GITR、および/またはICOSの細胞内シグナル領域に由来する。
より好ましくは、本発明は、上述の抗原結合ドメインを4-1BBおよびCD3ζからの細胞内ドメインと組合せることで、TまたはNK細胞に強力な標的腫瘍殺傷効果を及ぼすことを可能にするCARが得られ得ることを発見した。好ましくは、細胞内ドメインのアミノ酸配列は、4-1BBの位置209から255,およびCD3ζの位置52から164より選択され、これにおいてCD3ζのアミノ酸配列番号は、UniProtKB-P20963であり、また4-1BBのアミノ酸配列番号は、UniProtKB-Q07011である。細胞内ドメインのアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号:45に示される通りである。
本発明は、スペーサー領域および膜貫通領域をさらに選択し、それにより抗原結合ドメイン-スペーサー領域-膜貫通領域-細胞内ドメインの、特定の組合せをもつCARを得る。スペーサー領域は、抗原結合ドメインと膜貫通領域とを結合する。この領域の構造は、抗原決定ドメインが様々な方向に適合可能であって、対応する認識および抗原への結合を促進するよう、フレキシブルであるべきである。スペーサー領域の最も単純な形状は、免疫グロブリンIgG1のヒンジ領域であり、かつそれはまた免疫グロブリンのCH2H3領域の一部分であってもよい。膜貫通領域は、一般に細胞膜に広がる疎水性アルファヘリックスである。スペーサー領域は、CD8αのヒンジ領域、IgGのヒンジ領域、またはIgDのヒンジ領域に由来し得る。膜貫通領域は、CD8αの膜貫通領域、CD3ζの膜貫通領域、CD4の膜貫通領域、またはCD28の膜貫通領域に由来し得る。
本発明は、研究および実験を通して、スペーサー部位が、より好ましくはCD8αのヒンジ領域に由来し、かつ膜貫通領域が、より好ましくはCD8αの膜貫通領域に由来することを見出した。CD8は、αおよびβサブユニットから構成される、膜貫通グリコシル化膜タンパク質であり、それは、T細胞表面受容体と共に働いて、T細胞を特異抗原に結合させる。CD8は、MHC Iに特異的に結合し、かつ細胞傷害性T細胞の殺傷効果を媒介する。
より好ましくは、スペーサー領域および膜貫通領域は、スペーサー膜貫通領域を構成し、かつスペーサー膜貫通領域のアミノ酸配列は、CD8αの位置Yから210のアミノ酸配列と一致し、かつ118128であり、ここでYは、整数である。CD8αのアミノ酸配列のUniProtKB番号は、P01732であってよい。言い換えれば、スペーサー膜貫通領域のアミノ酸配列は、好ましくは、CD8αの位置118から210より選択されかつ位置128から210のアミノ酸配列を含む。例えば、スペーサー膜貫通領域のアミノ酸配列は、以下の群:CD8αの位置118から210、位置119から210、位置120から210、位置121から210、位置122から210、位置123から210、位置124から210、位置125から210、位置126から210、位置127から210、または位置128から210、から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列に示される通りである。
好ましくは、キメラ抗原受容体の発現は、細胞表面ヘの標的タンパク質の分泌をガイドする機能をもつシグナルペプチドによってガイドされる。本発明は、上述の抗原結合ドメインと、GM-CSFα鎖からのシグナルペプチドとの組合せが、キメラ抗原受容体を免疫エフェクター細胞の表面上で効果的に発現させ得ることを見出した。GM-CSFα鎖シグナルペプチドは、本発明のキメラ抗原受容体を分泌経路へ標的化するリーダー配列であり、そのコード配列はまず、細胞内でキメラ抗原受容体のコード配列と一緒にタンパク質へ翻訳されて、合成されたタンパク質を細胞内分泌経路内へ入れるべくガイドする。シグナルペプチドはキメラ抗原受容体が細胞表面上で発現される前に除去される。
好ましくは、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、GM-CSFのアミノ酸配列の位置1から22より選択され、これにおいて、シグナルペプチドのアミノ酸配列番号は、UniProtKB-P15509である。より好ましくは、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、配列番号:8に示される通りである。
本発明の特定の実施形態においては、キメラ抗原受容体は、動作可能なように連結された抗原結合ドメイン、スペーサー領域、膜貫通領域、および細胞内ドメインを順次に含む。本発明のより特定的な実施形態においては、抗原決定ドメインはScFvであり、軽鎖および重鎖はそれぞれ抗-Myc、HA、またはStrepタグ抗体の軽鎖および重鎖に由来し、スペーサー領域はヒトCD8αのヒンジ領域に由来し、膜貫通領域はヒトCD8αの膜貫通領域に由来し、かつ細胞内ドメインはCD3ζおよび4-1BBの細胞内シグナリング領域の組合せに由来する。
本発明においては、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、スペーサー領域、膜貫通領域、および細胞内ドメインは、順次に結合される。シグナルペプチドと抗原結合ドメイン、抗原結合ドメインとスペーサー領域、スペーサー領域と膜貫通領域、膜貫通領域と細胞内ドメインは、動作可能なように連結される。例えば、それらはリンカーによって結合されるか、または何らリンカーなしに直接結合され得る。本発明の一実施形態においては、シグナルペプチドと抗原結合ドメインとは、GAHAなどのリンカーによって結合され、抗原結合ドメインとスペーサー領域とは、リンカー(リンカーは、例えば-Ala-Ser-である)により結合される一方、スペーサー領域と膜貫通領域、膜貫通領域と細胞内ドメインとは、リンカーなしに直接結合される。
本発明の好ましい実施形態においては、キメラ抗原受容体のアミノ酸配列は、配列番号:46(TT1の標的化に対応)、配列番号:47(TT2の標的化に対応)、または配列番号:48(TT3の標的化に対応)に示される通りである。
配列番号:46:
濃灰色は、キメラ抗原受容体のscFvを示し、イタリック体は、重鎖と軽鎖とを結合するリンカーを示し、淡灰色は、スペーサー領域を示し、一重下線は、膜貫通領域を示し、太字は、細胞内シグナル領域の4-1BBからの部分を示し、かつ二重下線は、細胞内シグナル領域のCD3ζからの部分を示す。
配列番号:47:
濃灰色は、キメラ抗原受容体のScFvを示し、イタリック体は、重鎖と軽鎖とを結合するリンカーを示し、淡灰色は、スペーサー領域を示し、一重下線は、膜貫通領域を示し、太字は、細胞内シグナル領域の4-1BBからの部分を示し、かつ二重下線は、細胞内シグナル領域のCD3ζからの部分を示す。
配列番号:48:
濃灰色は、キメラ抗原受容体のScFvを示し、イタリック体は、重鎖と軽鎖とを結合するリンカーを示し、淡灰色は、スペーサー領域を示し、一重下線は、膜貫通領域を示し、太字は、細胞内シグナル領域の4-1BBからの部分を示し、かつ二重下線は、細胞内シグナル領域のCD3ζからの部分を示す。
キメラ抗原受容体コード配列
本発明のキメラ抗原受容体のコードDNAは、動作可能なように連結された抗原結合ドメインコードエレメント、スペーサー領域コードエレメント、膜貫通コードエレメント、および細胞内ドメインコードエレメントを順次に含んでおり、それは、抗原結合ドメインコードエレメントによってコードされた抗原結合ドメインが本発明の標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域を認識しかつ結合し得ることを特徴とする。
抗原結合ドメインのコードエレメントのヌクレオチド配列は、抗原結合ドメインのアミノ酸配列をコードする。好ましくは、TT1を標的とする抗原結合ドメインのコードエレメントのヌクレオチド配列は、配列番号:49に示される通りである。好ましくは、TT2を標的とする抗原結合ドメインのコードエレメントのヌクレオチド配列は、配列番号:50に示される通りである。好ましくは、TT3を標的とする抗原結合ドメインのコードエレメントのヌクレオチド配列は、配列番号:51に示される通りである。
細胞内ドメインコードエレメントのヌクレオチド配列は、細胞内ドメインのアミノ酸配列をコードする。好ましくは、細胞内活性化シグナル伝達領域のコードエレメントは、CD3ζおよびDAP12の細胞内シグナル領域のコードDNAに由来し、かつ補助刺激シグナル伝達領域のコードエレメントは、4-1BB、CD28、CD27、OX40、GITR、および/またはICOSの細胞内シグナル領域のコードDNAに由来する。より好ましくは、細胞内ドメインのコードエレメントは、4-1BBおよびCD3ζの細胞内シグナル領域のコードDNAに由来する。より好ましくは、細胞内ドメインのコードエレメントのヌクレオチド配列は、配列番号:52に示される通りである。
スペーサー領域コードエレメントは、好ましくは、CD8αヒンジ領域コードDNA、IgGヒンジ領域コードDNA、またはIgDヒンジ領域コードDNAに由来する。膜貫通領域コードエレメントは、好ましくは、CD8α膜貫通領域コードDNA、CD3ζ膜貫通領域コードDNA、CD4膜貫通領域コードDNA、またはCD28膜貫通領域コードDNAに由来する。ここで、スペーサー領域コードエレメントは、より好ましくはCD8αのヒンジ領域コードDNAに由来し、かつ膜貫通領域コードエレメントは、より好ましくはCD8αの膜貫通領域コードDNAに由来する。
好ましくは、スペーサー領域コードエレメントおよび膜貫通領域コードエレメンは、スペーサー膜貫通領域コードエレメンを構成し、かつそのヌクレオチド配列は、スペーサー膜貫通領域のアミノ酸配列をコードする。好ましくは、スペーサー領域コードエレメントのヌクレオチド配列は、配列番号:22に示される通りの配列を含む。
好ましくは、キメラ抗原受容体の発現は、シグナルペプチドによってガイドされ、かつシグナルペプチドのヌクレオチド配列は、シグナルペプチドのアミノ酸配列をコードする。好ましくは、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、GM-CSFαのアミノ酸配列の位置1から22より選択される。好ましくは、シグナルペプチドコードエレメントのヌクレオチド配列は、配列番号:23に示される通りである。
本発明の特定の実施形態においては、キメラ抗原受容体コードDNAは、動作可能なように連結された抗原結合ドメインコードエレメント、スペーサー領域コードエレメント、膜貫通領域コードエレメント、および細胞内領域コードエレメントを順次に含んでおり、それは、抗原結合ドメインの軽鎖および重鎖のコードエレメントが、それぞれ抗-Mycタグ、HAタグ、またはStrepタグII抗体の軽鎖および重鎖のコードDNAに由来すること、スペーサー領域コードエレメントがCD8αのヒンジ領域コードDNAに由来すること、膜貫通領域コードエレメントがCD8αの膜貫通領域コードDNAに由来すること、かつ細胞内ドメインが4-1BBおよびCD3ζの細胞内シグナル領域のコードDNAに由来することを特徴とする。
好ましくは、シグナルペプチドコード配列およびキメラ抗原受容体コード配列を有するDNAのヌクレオチド配列は、配列番号:53(TT1の標的化に対応)、配列番号:54(TT2の標的化に対応)、または配列番号:55(TT3の標的化に対応)に示される通りである。
CAR修飾免疫細胞
前記免疫細胞は、T細胞またはNK細胞を含み;ここでNK細胞は、自家NK細胞、同種NK細胞、またはNK細胞株を含み、かつT細胞は、未発達型T細胞もしくはそれらの前駆細胞、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、NKT細胞、またはT細胞株を含む。
免疫細胞に対するキメラ抗原受容体の修飾は、レンチウイルス感染およびmRNAエレクトロトランスフェクションを介して実施され得る。
好ましくは、第1の組成物および第2の組成物は、一緒に混合されることなく、別々に治療薬中に存在する。
標識ポリペプチドコード配列を有する核酸は、DNAまたはRNAを含み;RNAは、DNAから転写されたmRNAを含む。好ましくは、第1の組成物は、治療上有効な量のDNA、または治療上有効な量のmRNAを含む。好ましくは、第1の組成物は、DNAまたはmRNAを0.01-10mg/日の投与量で含む。
好ましくは、第1の組成物は、治療上有効な量の組換えウイルスを含む。より好ましくは、第1の組成物は、治療コースあたり、5x10から5x1012個のウイルス粒子、または5x10から5x1012PFUの総投与量の組換え腫瘍溶解性ウイルスを含む。
好ましくは、第2の組成物は、治療上有効な量のCAR修飾免疫細胞を含む。好ましくは、治療コースあたり、体重1Kgにつき1x10から1x10細胞の総投与量のCAR修飾免疫細胞が含まれる。
DNAは、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化され得;mRNAは、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化され得る。例えば、それはプラスミドの形状での直接腫瘍内注射によるか、またはリポソームによってパッケージされた後の腫瘍内注射によるか、またはナノ粒子(例えば、ポリ-L-リジン、ポリアミノ酸、ポリエチレンイミン、またはキトサンなどといったポリマー)への結合後の腫瘍内注射によるか、或いは腫瘍内注射後のエレクトロトランスフェクションによりトランスフェクション率を高めることにより投与され得る。
組換えウイルスは、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化され得る。
CAR修飾免疫細胞は、静脈内または局所投与により投与されるべく製剤化され得る。
好ましくは、治療薬は、第1の組成物および第2の組成物から構成される。
当業者は、本発明の治療薬がまた、薬学的または生理学的担体、賦形剤、希釈剤(生理食塩水、PBS溶液を含む)を含めた適当な薬学的に許容される賦形剤、および糖、脂質、ポリペプチド、アミノ酸、酸化防止剤、アジュバント、保存料などを含めた種々の添加剤も含み得ることを理解し得る。
本発明はまた、腫瘍および/または癌の治療のための薬物の調製における、治療薬の使用も提供する。
腫瘍および/または癌は、乳癌、頭頸部腫瘍、滑膜癌、腎臓癌、結合組織癌、悪性黒色腫、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、脳癌、肝臓癌、骨癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、線維肉腫、パジェット病、子宮頸癌、胆嚢癌、眼の癌、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵内分泌腫瘍、グルカゴノーマ(glucagon tumor)、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮体癌、膣癌、外陰癌、菌状息肉症、インスリノーマ、心臓癌、髄膜癌、腹膜癌、胸膜癌、および血液癌を含む。
本発明はまた、上述の本発明の標識ポリペプチドも提供する。標識ポリペプチドの種々の実施形態は、上記に記載される通りである。
好ましくは、標識ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、または配列番号:15に示される通りである。
本発明はまた、本発明の標識ポリペプチドのコード配列を有する単離された核酸も提供する。核酸の種々の実施形態は、上記に記載される通りである。
核酸は、動作可能なように連結されたプロモーター、シグナルペプチドコード配列、および本発明の標識ポリペプチドのコード配列を順次に含む。
核酸は、DNAおよびmRNAを含む。好ましくは、核酸はDNAであり、かつそのヌクレオチド配列は、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、または配列番号:30に記載される通りである。
本発明はまた、組換え発現ベクターであって、これにおいて、該組換え発現ベクターが、動作可能なように連結されたプロモーター、シグナルペプチドコード配列、および本発明の標識ポリペプチドのコード配列を順次に含む、該組換え発現ベクターも提供する。
2つ以上の標識ポリペプチドを同時に用いて腫瘍細胞を標識する目的で、組換え発現ベクターは、本発明の標識ポリペプチドの2つ以上のコード配列を含み得る。
好ましくは、標識ポリペプチドのmRNAを調製するべく使用される組換え発現ベクター(例えば、pFastbac1-TT1、pFastbac1-TT2、pFastbac1-TT3、pFastbac1-C1&2a、pFastbac1-C1&2b)は、順次に、CMVプロモーター、T7プロモーター、コザック配列をもつ5’UTR、およびGM-CSFα鎖シグナルペプチドコード配列を、本発明の標識ペプチドのコード配列の前に含んでおり;かつポリAシグナルをもつアルファグロブリンの3’UTRを、本発明の標識ポリペプチドのコード配列の後ろに含む。本発明の組換え発現ベクターの上述の機能エレメントの組合せは、DNAの転写および翻訳を促進し、かつmRNAの安定性を増強し得る。本発明はまた、上述の機能エレメントの構造を以下に詳述されるように最適化して、それらの適切な機能をより良く果たすようにする。好ましくは、本発明においては、CMVプロモーターの配列は、配列番号:56に示される通りである。CMVプロモーターの機能は、下流のDNA配列の転写を開始することである。
好ましくは、本発明においては、T7プロモーターの配列は、配列番号:57に示される通りである。T7プロモーターの機能は、下流のDNA配列の転写を開始することである。
好ましくは、本発明においては、コザック配列をもつ5’UTRの配列は、配列番号:58に示される通りであり;かつコザック配列をもつ5’UTRの機能は、mRNAの翻訳効率を増強することである。
好ましくは、本発明においては、GM-CSFα鎖シグナルペプチドコード配列の配列は、配列番号:23に示される通りである。
好ましくは、本発明においては、アルファグロブリンの3’UTRの配列は、配列番号:59に示される通りであり;これは、ポリAシグナルを含む。その機能は、mRNAの安定性を強化することである。
特定の実施形態においては、組換え発現ベクターの基本的なバックボーンは、市販のpFastbac1ベクターであり、次いでこれに上述のエレメントが挿入される。
本発明は、3’UTRおよび5’UTRを最適化することから、例えば、Tail-PCRを用いて、ポジティブ鎖にポリAを、かつリバース鎖に対応するポリTをもつDNA二本鎖鋳型を、組換え発現ベクターから合成することが可能である。これにより、DNA鋳型の不安定性が低減され、かつmRNAがインビトロで合成され得る。ポジティブ鎖のポリAにおけるAの数(またはリバース鎖のポリTにおけるTの数)は、140から170の範囲内、好ましくは150から170、より好ましくはほぼ150(例えば、150)である。
この組換え発現ベクターを腫瘍細胞内に導入するための方法は、ウイルスおよび非ウイルスによる方法を含む。非ウイルス法は、生物学的、物理学的、および化学的に媒介される遺伝子トランスフェクション法を含む。生物学的トランスフェクション法は、直接注射、受容体媒介性の遺伝子導入などを含む。物理学的トランスフェクション法は、エレクトロトランスフェクション、マイクロインジェクションなどを含む。化学的トランスフェクション法は、リポソームおよび種々のカチオン性ポリマー媒介性のトランスフェクションを含む。
本発明はまた、単離された組換えウイルスであって、これにおいて、組換えウイルスのゲノムが、動作可能なように連結されたプロモーター、シグナルペプチドコード配列、および本発明の標識ポリペプチドのコード配列を順次に含んでおり、ここで、標識ポリペプチドが腫瘍細胞および/または癌細胞の表面上で修飾を形成するべく発現され得:かつ組換えウイルスが、複製選択的組換え腫瘍溶解性ウイルスまたは複製欠損性組換えウイルスを含む、該組換えウイルスも提供する。
好ましくは、組換えウイルスは、複製選択的組換え腫瘍溶解性ウイルスであり、組換え腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解作用をもつ遺伝的に変異されたウイルスおよび腫瘍溶解作用をもつ野生型ウイルスに由来し;好ましくは、前記組換え腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解作用をもつアデノウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキフォレストウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコタイプエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバ(Malaba)ウイルスに由来する。
組換えウイルスの種々の実施形態は、上記に記載される通りである。
本発明はまた、組換えウイルスを調製するための組換え発現ベクター(pFastbac1-TT3-PuroGFP(そのヌクレオチド配列は配列番号:38に示される通りである))であって、pSpromoteに対し動作可能なように連結された上記記載のTT3標識ペプチドのコード配列(すなわち、配列番号:28)と、p7.5プロモーターに対し動作可能なように連結された上記記載のpuro-GFPスクリーニング遺伝子のコード配列と、LoxP部位と、左右のホモロジーアームと、およびgRNA切断部位ドナーDNAとを含む、該組換え発現ベクターも提供する。組換え発現ベクターは、Crisper-Cas9遺伝子編集技術を用いて組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを構築するべく使用される。
本発明は、上述の機能エレメントの構造を以下に詳述されるように最適化して、それらの適切な機能をより良く果たすようにする。
好ましくは、本発明においては、pSプロモーターの配列は、配列番号:37に示される通りである。pSプロモーターの機能は、下流のTT3標識ポリペプチドコード配列の転写を開始することである。
好ましくは、本発明においては、p7.5プロモーターの配列は、配列番号:36に示される通りである。p7.5プロモーターの機能は、下流のpuro-GFPコード配列の転写を開始することである。
ましくは、本発明においては、LoxP部位の配列は、配列番号:60に示される通りである。LoxP部位の機能は、スクリーニング遺伝子を除去するのに利便性を与えることである。
好ましくは、本発明においては、左ホモロジーアームの配列は、配列番号:33に示される通りであり、かつ右ホモロジーアームの配列は、配列番号:34に示される通りである。ホモロジーアームの機能は、ワクシニアウイルスゲノムをドナープラスミドと相同的に組換えることである。
好ましくは、本発明においては、gRNA-1切断部位の配列は、配列番号:61に示される通りであり、かつgRNA-2切断部位の配列は、配列番号:62に示される通りである。gRNA切断部位の機能は、Crisper-Cas9がドナープラスミドを切断できるようにして、相同組換えの効率を改善するようにすることである。
特定の実施形態においては、組換え発現ベクターの基本的なバックボーンは、市販のpFastbac1ベクターであり、次いでこれに上述のエレメントが挿入される。
本発明はまた、キメラ抗原受容体であって、動作可能なように連結された抗原結合ドメイン、スペーサー領域、膜貫通領域、および細胞内ドメインを順次に含んでおり、かつ抗原結合ドメインが、本発明の標識ポリペプチドの細胞外抗原決定領域を認識しかつ結合することができることを特徴とする、該キメラ抗原受容体も提供する。
キメラ抗原受容体の種々の実施形態は、上記に記載される通りである。
好ましくは、キメラ抗原受容体のアミノ酸配列は、配列番号:46(TT1の標的化に対応)、配列番号:47(TT2の標的化に対応)、または配列番号:48(TT3の標的化に対応)に示される通りである。
本発明はまた、本発明のキメラ抗原受容体をコードするコード配列をもつ、単離されたDNAも提供する。
キメラ抗原受容体のコード配列をもつDNAの種々の実施形態は、上記に記載される通りである。
好ましくは、DNAのヌクレオチド配列は、配列番号:53(TT1の標的化に対応)、配列番号:54(TT2の標的化に対応)、または配列番号:55(TT3の標的化に対応)に示される通りである。
本発明はまた、本発明のDNAから転写された、単離されたmRNAも提供する。
本発明はまた、組換え発現ベクター(例えば、pFastbac1-aTT1-CD8a-4-1BB-CD3ζ、pFastbac1-aTT2-CD8a-4-1BB-CD3ζ、pFastbac1-aTT3-CD8a-4-1BB-CD3ζ)であって、これにおいて該組換え発現ベクターが、動作可能なように連結されたプロモーター、シグナルペプチドコード配列、および本発明のキメラ抗原受容体コード配列を順次に含む、該組換え発現ベクターも提供する。
好ましくは、組換え発現ベクターは、順次に、CMVプロモーター、T7プロモーター、コザック配列をもつ5’UTR、およびGM-CSFα鎖シグナルペプチドコード配列を、本発明のキメラ抗原受容体のコード配列の前に含んでおり;かつポリAシグナルをもつアルファグロブリンの3’UTRを、本発明のキメラ抗原受容体のコード配列の後ろに含む。本発明の組換え発現ベクターの上述の機能エレメントの組合せは、DNAの転写および翻訳を促進し、かつmRNAの安定性を増強し得る。本発明はまた、上述の機能エレメントの構造を以下に詳述されるように最適化して、それらの適切な機能をより良く果たすようにする。
好ましくは、本発明においては、CMVプロモーターの配列は、配列番号:56に示される通りである。CMVプロモーターの機能は、下流のDNA配列の転写を開始することである。
好ましくは、本発明においては、T7プロモーターの配列は、配列番号:57に示される通りである。T7プロモーターの機能は、下流のDNA配列の転写を開始することである。
好ましくは、本発明においては、コザック配列をもつ5’UTRの配列は、配列番号:58に示される通りであり、かつその機能は、mRNAの翻訳効率を増強することである。
好ましくは、本発明においては、GM-CSFα鎖シグナルペプチドコード配列の配列は、配列番号:23に示される通りである。
好ましくは、本発明においては、アルファグロブリンの3’UTRの配列は、配列番号:59に示される通りであり、それはポリAシグナルを含む。その機能は、mRNAの安定性を強化することである。
特定の実施形態においては、組換え発現ベクターの基本的なバックボーンは、市販のpFastbac1ベクターであり、次いでこれに上述のエレメントが挿入される。
本発明は、3’UTRおよび5’UTRを最適化することから、例えば、Tail-PCRを用いて、ポジティブ鎖にポリAを、かつリバース鎖に対応するポリTをもつ、DNA二本鎖鋳型を、組換え発現ベクターから合成することが可能である。これにより、DNA鋳型の不安定性が低減され、かつmRNAがインビトロで合成され得る。ポジティブ鎖のポリAにおけるAの数(またはリバース鎖のポリTにおけるTの数)は、140から170の範囲内、好ましくは150から170、より好ましくはほぼ150(例えば、150)である。
本発明はまた、その表面が本発明のキメラ抗原受容体により修飾される、CAR修飾免疫細胞も提供する。
免疫細胞は、T細胞またはNK細胞であってもよく;ここでNK細胞は、自家NK細胞、同種NK細胞、またはNK細胞株を含み、かつT細胞は、未発達型T細胞もしくはそれらの前駆細胞、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、NKT細胞、またはT細胞株を含む。
キメラ抗原受容体は、レンチウイルス感染、トランスポゾン、およびmRNAエレクトロトランスフェクションを介して、免疫細胞を修飾し得る。
本発明はまた腫瘍および/または癌の治療のための相乗効果をもつ、コンビナトリアルドラッグのキットであって:
本発明の治療薬の第1の組成物を含む第1の容器と;
本発明の治療薬の第2の組成物を含む第2の容器であって、これにおいて前記第1の容器が前記第2の容器から分離されている該容器と;および、
投与のタイミングおよび経路を指定する指示書と、
を含む、該キットも提供する。
本発明はまた、腫瘍および/または癌の治療または予防のための薬物の調製における、本発明の標識ポリペプチドのコード配列を有する、単離された核酸の使用も提供する。
本発明はまた、腫瘍および/または癌の治療または予防のための薬物の調製における、組換えウイルスの使用も提供する。
本発明はまた、腫瘍および/または癌の治療または予防のための薬物の調製における、CAR修飾免疫細胞の使用も提供する。
本発明はまた、腫瘍および/または癌の治療または予防のための薬物の調製における、キットの使用も提供する。
腫瘍および/または癌は:乳癌、頭頸部腫瘍、滑膜癌、腎臓癌、結合組織癌、悪性黒色腫、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、脳癌、肝臓癌、骨癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、線維肉腫、パジェット病、子宮頸癌、胆嚢癌、眼の癌、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵内分泌腫瘍、グルカゴノーマ(glucagon tumor)、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮体癌、膣癌、外陰癌、菌状息肉症、インスリノーマ、心臓癌、髄膜癌、腹膜癌、胸膜癌、および血液癌を含む。
腫瘍および/または癌を治療するための方法であって:
本発明の治療薬の第1の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している患者に投与すること;および
本発明の治療薬の第2の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している該患者に投与すること、
を含む、該方法も提供する。
治療薬における第1の組成物および第2の組成物は、同時に(例えば、混合物として)、別々にしかし同時に(例えば、それぞれ腫瘍内および静脈内注射によって投与される)、または順次に(第1の組成物が最初に投与され、そして次に第2の組成物が投与される)投与され得る。
好ましくは、方法は以下の工程:
1)第1の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している患者に投与すること;および
2)第1の組成物の投与後に、治療薬の第2の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している該患者に投与すること、
を、逐次的方法で含む。
好ましくは、第1の組成物の投与の1から30日後に、治療薬の第2の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している患者に投与すること。
「第1の組成物の投与の1から30日後に、治療薬の第2の組成物を、腫瘍および/または癌を罹患している患者に投与すること」というフレーズは、第2の組成物の最初の投与と第1の組成物の最初の投与との間の時間間隔が、1から30日の範囲内(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13...30日)であるか、または第2の組成物の最初の投与と第1の組成物の直近の投与との間の時間間隔が、1から30日(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13...30日)であることを意味する。好ましくは、第2の組成物の最初の投与と第1の組成物の直近の投与との間の時間間隔は、1から30日(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13...30日)である。
本発明の好ましい実施形態においては、核酸の投与用量は、0.01mg/日から10mg/日、1日当たり1から3回、および連続して1から7日間である。
本発明の好ましい実施形態においては、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与用量は:治療コースあたりの総投与量として、約5x10から5x1012個のウイルス粒子(単回投与もしくは複数回投与として)またはその範囲内の任意の値であり、或いは、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与用量は:治療コースあたりの総投与量として、約5x10から5x1012PFU(単回投与もしくは複数回投与として)またはその範囲内の任意の値である。その正確な投与量はまた、医者の判断および各個人の固有の状況にも依存する。複数回投与の場合、それは1日に1から3回、1から7日間連続して投与される。
本発明の好ましい実施形態においては、CAR修飾免疫細胞の投与用量は、治療コースあたり、総投与量として、体重1Kgにつき1x10から1x10細胞である。好ましくは、それは1日に1から3回、1から7日間連続して投与される。
特定の実施形態においては、腫瘍および/または癌の治療のための方法はさらに、患者に対し、腫瘍および/または癌の治療のための他の医薬、および/または患者の免疫系を調節するための医薬を投与して、身体中のCAR修飾免疫細胞の数および機能を増強することを含む。腫瘍および/または癌の治療のための前記他の医薬は、これに限定されないが:化学療法薬、例えばシクロホスファミド、フルダラビン;放射線療法薬;免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノラート、FK50;抗体、例えばCD3、IL-2、IL-6、IL-17、TNFαに対する抗体を含む。
DNAは、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化され得;mRNAは、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化され得る。例えば、それはプラスミドの形状での直接の腫瘍内注射によるか、またはリポソーム内にパッケージされた後の腫瘍内注射によるか、またはナノ粒子(例えば、ポリ-L-リジン、ポリアミノ酸、ポリエチレンイミン、またはキトサンなどといったポリマー)への結合後の腫瘍内注射によるか、或いは腫瘍内注射後のエレクトロトランスフェクションによりトランスフェクション率を高めることにより投与され得る。
組換えウイルスは、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化され得る。
CAR修飾免疫細胞は、静脈内または局所投与により投与されるべく製剤化され得る。
以下は、本発明の内容を、例としてさらに説明また例証するが、しかしこれらの例は、本発明の保護範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
他に特に指定しない限り、以下の実施例において使用される実験方法は、医用生物工学の分野における通常の実験手順、操作、材料、および条件を用いて実施される。
他に特に指定しない限り、個々の薬剤のパーセント濃度(%)は、全て体積パーセント(%(v/v))を示す。
他に特に指定しない限り、細胞培養は37℃、5%CO、および加湿(95%相対湿度)の条件において行われる。
以下の実施例において使用される実験材料の供給源は、以下の通りである:
PBMCは、健康なドナーの末梢血に由来する。
ヒト組換えIL-2(hrIL2)は、Peprotechより購入した。
DPBSは、Gibcoより購入した。
電気ショックカップは、Bio-Radより購入した。
他に特に指定しない限り、FBSはSigmaより購入した。
ヒト卵巣癌細胞系SKOV3-luc、ヒトT細胞系Jurkat、ヒト肝臓癌細胞系SK-HEP-1、アフリカミドリザル腎細胞CV-1、ヒト骨芽細胞腫細胞143B細胞はATCCより購入し、かつヒト結腸直腸癌細胞系HCT116-lucは、Perkin Elmerより購入した。
ワクシニアウイルス(DDVV-RFP):腫瘍溶解性ワクシニアウイルスDDVV-RFPは公知であり、それは、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスWR株に属し(例えば、X Songら著、“T-cell Engager-armed Oncolytic Vaccinia Virus Significantly Enhances Antitumor Therapy”、「Molecular Therapy」、2014年、第22巻、第1号、P.102-111を参照)、TK遺伝子およびVGF遺伝子の双方において機能的に欠損し、かつ外来性赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子をもつ。RFP遺伝子は、スクリーニング/レポーティングの役割を果たすのみであり、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスDDVV-RFPの抗腫瘍機能は、TK遺伝子およびVGF遺伝子において機能的に欠損した腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと実質的に同等である。さらに、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスDDVV-RFPはまた、当該技術分野における通常の技術を用いたVSC20ワクシニアウイルスの遺伝的修飾によっても取得可能である。VSC20ワクシニアウイルスは、VGF遺伝子を欠くワクシニアウイルスです。VSC20ワクシニアウイルスの調製方法については、McCart,JAら著、“Systemic cancer therapy with a tumor-selective vaccinia virus mutant lacking thymidine kinase and vaccinia growth factor genes”、「Cancer Res」、2001年、第61巻、P.8751-8757、を参照されたい。遺伝的修飾は、人工的に合成されたワクシニアウイルス初期/後期プロモーターpSELを用いて外来性DsRed遺伝子(すなわち、RFP遺伝子)を調節すること、およびインビトロ細胞内組換え技術を用いてワクシニアウイルスVSC20株のTK遺伝子領域内にDsRed遺伝子を挿入し、それにより腫瘍溶解性ウイルスDDVV-RFPを構築することを含む。
調製例1:エレクトロポレーション技術によりそれぞれTT1、TT2、TT3、C1&2a、C1&2bで標識された腫瘍細胞の調製
5x10個のJurkat、HCT116-luc、SKOV3-luc、またはSK-HEP-1細胞と、それぞれTT1(配列番号:11)、TT2(配列番号:12)、TT3(配列番号:13)、C1&2a(配列番号:14)、C1&2b(配列番号:15)コード配列(それぞれ調製例8の方法によって得られた)をもつ5μgのmRNAとを、それぞれエレクトロトランスファー液P3(製品名「P3Primary Cell 4D-XキットL」、Lonza、商品番号V4XP-3012)中で混合し、100μlのNucleocuvette(商標)チューブ(製品名「P3Primary Cell 4D-XキットL」、Lonza、商品番号V4XP-3012」)に入れて、氷浴中に5分間置いた。次に、4D-Nucleofector(商標)システム(Lonza)のエレクトロポレーターを使用し、かつその腫瘍細胞エレクトロトランスフェクションプログラムを用いてエレクトロトランスフェクションを行なった。エレクトロトランスフェクションの後、細胞を取出して、対応する腫瘍細胞培地中に置いた。Jurkat培地は、RPMI(Gibco)+10% FBS(Hyclone)、SKOV3-lucおよびHCT116-luc培地は、McCoy’s5A+10% FBSであり、かつSK-HEP-1培地は、EMEM(Gibco)+10% FBSである。DNase(Roche)を培地に添加して、10ng/mLの最終濃度とし、次いで37℃のインキュベーター内で5%CO中に置いて、一晩回復させた。24時間後、細胞を収穫して、エレクトロトランスフェクトされた細胞をフローサイトメーター(BDより購入、C6Samplar)を用いて同定した。TT1、TT2、TT3、C1&2a、またはC1&2bでそれぞれ標識された腫瘍細胞が得られた。
試験例1:エレクトロポレーションによる標識ペプチドをもつ腫瘍細胞の標識の検証
調製例1の方法に従って、それぞれTT1(配列番号:11)、TT2(配列番号:12)、またはTT3(配列番号:13)コード配列(それぞれ調製例8の方法によって得られた)をもつmRNAを、Jurkat不死化Tリンパ球、ヒト卵巣癌細胞SKOV3-luc、ヒト結腸直腸癌細胞HCT116-luc、またはヒト肝臓癌細胞SK-HEP-1に対し、4D-Nucleofector(商標)システム(Lonza)により、それぞれエレクトロトランスフェクトした。染色は、FITCコンジュゲート抗Myc抗体(Santa Cruz)、FITCコンジュゲート抗HA抗体(Biolegend)、FITCコンジュゲート抗Strep-tagII抗体(Genscript)を用いて行なった(希釈率はそれぞれ1:50である)。細胞は、フローサイトメトリー(BDより購入、C6Samplar)により同定した。
結果は図5に示されており、腫瘍細胞上でのTT1、TT2、およびTT3の高強度の発現が首尾よく検出された。それらの中で、Jurkat不死化Tリンパ球は、TT1およびTT2により標識され(図5Aおよび5Bに示される通り)、ヒト卵巣癌細胞SKOV3-luc(図5C)、ヒト結腸直腸癌細胞HCT116-luc(図5D)、およびヒト肝臓癌細胞SK-HEP-1(図5E)は、TT3により標識された。図の左のピークは、上記の抗体で染色された野生型の腫瘍細胞(ネガティブコントロール曲線)であり、一方右のピークは、TT1、TT2、およびTT3をそれぞれコードするmRNAのエレクトロトランスフェクション後の腫瘍細胞における、TT1(A)、TT2(B)、またはTT3(C-E)の発現強度曲線である。
調製例2:それぞれTT1、TT2、およびTT3を標的とするCAR-T細胞の調製
2x10個のヒトPBMC細胞を、1mlのT細胞培地(1% ヒトAB血清(Valley Biomedical)を補足したAIMV(Gibco))中に再懸濁し、最終濃度100ng/mlのOKT3(eBioscience)、および300IU/mlのhrIL-2(Peprotech)を添加し、次いで24ウェルプレートの1つのウェル内へインキュベートし、5%CO中で37℃の加湿された細胞培養インキュベーター(Thermo Fisher)内に置いた。最終濃度300IU/mlのhrIL-2を、2から3日ごとに補足した。新鮮なT細胞の細胞培地を、細胞増殖の状態に応じて補足して、細胞の数を1x10細胞/mlに調整した。
7から14日間培養されたT細胞(1x10細胞)、および4μgのaTT3-CD8-41BB-CD3ζmRNA(すなわち、配列番号:55に示される通りのヌクレオチド配列に対応するmRNA(調製例8の方法によって得られた))を、エレクトロトランスファー溶液P3(製品名P3Primary Cell 4D-XキットL」、Lonza、商品番号V4XP-3012)中で混合し、100μlのNucleocuvette(商標)チューブ(製品名「P3Primary Cell 4D-XキットL」、Lonza、商品番号V4XP-3012」)に入れて、氷浴中で5分間凍結させた。次に、4D-Nucleofector(商標)システム(Lonza)およびそのT細胞エレクトロトランスフェクションプログラムを用いて、エレクトロトランスフェクションを行なった。エレクトロトランスフェクションの後、細胞を取出して、T培地中に置いた。300IU/ml(最終濃度)のhrIL-2および10ng/mLのDNase(Roche)を添加し、次いで5%CO中で37℃のインキュベーター内に置いて、一晩回復させた。24時間後、細胞を収穫して、エレクトロトランスフェクトされた細胞をフローサイトメトリーにより同定した。TT3を標的とするCAR修飾T細胞(すなわち、aTT3-CD8-41BB-CD3ζCAR)が得られた。
TT1およびTT2を標的とするCAR-T細胞の調製は、aTT1-CD8-41BB-CD3ζmRNA(すなわち、配列番号:53に示される通りのヌクレオチド配列に対応するmRNA(調製例8の方法によって得られた))、aTT2-CD8-41BB-CD3ζmRNA(すなわち、配列番号:54に示される通りのヌクレオチド配列に対応するmRNA(調製例8の方法によって得られた))が使用されたことを除いて、上記の方法と同様である。
実施例1:エレクトロトランスフェクションにより標識ポリペプチドで標識された腫瘍細胞上の該標識ポリペプチドを標的とする、CAR-T細胞の腫瘍殺傷能
この実施例は、エレクトロトランスフェクションにより標識された後の、Jurkat細胞上の標識ポリペプチドを標的とする、CAR-T細胞の殺傷能を試験した。調製例2の方法によって得られた、TT1またはTT2を標的とするCAR修飾T細胞、または非CAR修飾T細胞を、それぞれ、調製例1の方法によって得られた、エレクトロトランスフェクションによりTT1またはTT2で標識されたヒトT細胞系Jurkat細胞と、U型96ウェルプレートにおいて共培養し、上記のCAR-Tエフェクター細胞の、標的細胞に対する数の比(E:T)は、1.25:1から20:1の範囲である。各実験を3回繰返した。2時間の共培養の後、DELFIA EuTDA細胞傷害性キット(Perkin Elmer、米国)を用いて、CAR-T細胞の腫瘍細胞溶解能を検出した。殺傷効果は、以下の式を用いて計算した:%特異的溶解=((実験群の放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))/(最大放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))x100.
結果は、図6および7に示される:ネガティブコントロールT細胞群(Mock群、CARコード化mRNAの添加なし、T細胞はただブランクコントロールを用いてエレクトロトランスフェクトされただけ)に比較して、TT1またはTT2でエレクトロトランスフェクトされたJurkat細胞上のTT1またはTT2を標的とする、CAR-T細胞の殺傷能は、有意に増大され、かつ殺傷比は、それぞれ15%および40%まで増大され得る(E:T=20:1)。
実施例2:標識ポリペプチドを標的とするCAR-T細胞はエレクトロトランスフェクションにより標識ポリペプチドで標識された種々の腫瘍細胞を殺すことができる
この実施例は、エレクトロトランスフェクションにより標識された腫瘍細胞の殺傷について、CAR-T細胞の広範なスペクトルを試験した。調製例2の方法によって得られた、TT3を標的とするCAR修飾T細胞、または野生型T細胞(CARのネガティブコントロール群として)を、エレクトロトランスフェクションによりTT3で標識された、ヒトT細胞系Jurkat細胞またはヒト結腸直腸癌細胞系HCT116-lucと、U型96ウェルプレートにおいて共培養し、上述のエフェクター細胞の、標的細胞に対する数の比(E:T)は、2.5:1から20:1の範囲である。各実験を3回繰返した。2時間の共培養の後、DELFIA EuTDA細胞傷害性キット(Perkin Elmer、米国、より入手された)を用いて、CAR-T細胞の腫瘍細胞溶解能を検出した。殺傷効果は、以下の式を用いて計算した:%特異的溶解=((実験群の放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))/(最大放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))x100.
結果は、図8に示される:野生型T細胞に比較して、TT3を標的とするCAR-T細胞は、エレクトロトランスフェクションによりTT3で標識されたJurkat細胞を有意に殺すばかりでなく、エレクトロトランスフェクションによりTT3で標識されたHCT116-luc細胞も殺すことができ、かつ殺傷比は、それぞれ40%超(HCT116-luc細胞)および35%超(Jurkat細胞)まで増大され得る(E:T=20:1)。
実施例3:標識ポリペプチドを標的とするCAR-T細胞はエレクトロトランスフェクションにより標識された腫瘍細胞を特異的に殺すことができる
この実施例は、本発明の標識ポリペプチドを標的とするCAR-T細胞の、標識された腫瘍細胞に対する特異性を試験した。調製例2の方法によって得られた、TT3を標的とするCAR-T細胞またはmGFP-Z修飾T細胞(GFP配列(Genbank番号はYP_002302326.1である)を、aTT3-CD8-41BB-CD3ζCARの抗原結合ドメインを置換えるべく使用し、CARのネガティブコントロール群として使用した)を、それぞれ、エレクトロトランスフェクションによりTT3で標識されているかまたは標識されていないヒト結腸直腸癌細胞系HCT116-lucと、U型96ウェルプレートにおいて共培養した。標的細胞に対するエフェクター細胞の数の比(E:T)は、5:1から20:1の範囲である。各実験を3回繰返した。2時間の共培養の後、DELFIA EuTDA細胞傷害性キット(Perkin Elmer、米国、より入手された)を用いて、CAR-T細胞の腫瘍細胞溶解能を検出した。殺傷効果は、以下の式を用いて計算した:%特異的溶解=((実験群の放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))/(最大放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))x100.
結果は、図9に示される:CARネガティブコントロール群(mGFP-Z)に比較して、TT3を標的とするCAR-T細胞は、エレクトロトランスフェクションによりTT3で標識されたHCT116-luc細胞を有意に殺すことができ(図9A)、かつ殺傷比は、20%超まで増大され得る(E:T=20:1)。未標識のHCT116-luc細胞については、CARネガティブコントロール群とTT3を標的とするCAR-T細胞とでは、HCT116-luc細胞の殺傷に殆ど差異がない。これはTT3を標的とするCARの、TT3に対する特異性を証明する。
実施例4:腫瘍細胞は2種類のエピトープポリペプチドを用いて標識され、かつ対応するCAR-T細胞によって認識され得る
2つのエピトープポリペプチドを1つの担体中にクローン化して、腫瘍細胞が2つのエピトープポリペプチドで同時に標識され得るようにし、それにより、異なるCAR-T細胞を用いて、標識された腫瘍細胞を同時にまたは順次に追跡して殺すことができる。さらに、調製例8に詳述される方法に従って、異なるスペーサー膜貫通領域を用いて、2つのエピトープポリペプチドをpFastbac1ベクター(Life Technologies)中にクローン化して、標識ポリペプチドC1&2aおよびC1&2bを発現するベクターが得られ(それぞれ、pFastbac1-C1&2aおよびpFastbac1-C1&2b)、次いでC1&2a(配列番号:14)およびC1&2b(配列番号:15)コード配列のmRNAを調製した。さらに、C1&2aまたはC1&2bで標識されたJurkat細胞を、調製例1の方法に従って得た。ここで、C1&2aは、Mycタグ由来の3つの反復したエピトープポリペプチドとHAタグ由来の3つの反復したエピトープポリペプチドとを含む。C1&2bは、Mycタグ由来の2つの反復したエピトープポリペプチドとHAタグ由来の2つの反復したエピトープポリペプチドとを含む。C1&2aのアミノ酸配列は、配列番号:14に示される通りであり、かつC1&2bのアミノ酸配列は、配列番号:15に示される通りである。標識ポリペプチドC1&2aのコード配列をもつ核酸のヌクレオチド配列は、配列番号:29に示される通りであり、かつ標識ポリペプチドC1&2bのコード配列をもつ核酸のヌクレオチド配列は、配列番号:30に示される通りである。
IFNγ ELISpot(Mabtech)を用いて、腫瘍細胞による刺激の後のCAR-TのIFNγ分泌を検出した。調製例2の方法によって得られた、ブランクコントロールでエレクトロトランスフェクトされた(Mock-T)、またはエレクトロトランスフェクションによりTT1もしくはTT2を標的とするCARのmRNAでエレクトロトランスフェクトされたT細胞を、それぞれ、調製例1の方法によって得られたC1&2aまたはC1&2bで標識されたJurkat細胞と、IFNγ ELISPOT検出プレート上で共培養し、標的細胞に対するCAR-Tエフェクター細胞の数比(E:T)は、10:1である。各実験を3回繰返した。24時間の共培養の後、現像を行なって、ELISPOTポイントを、ソフトウェアImmunospotを用いることによりカウントした。
図10に示されるように、左のパネルはIFNγ ELISpotの代表的な写真であり、右のパネルはIFNγスポット数の統計結果である。CAR修飾のないT細胞に比較して、TT1またはTT2を標的とするCAR-T細胞は、C1&2aまたはC1&2bで標識されたJurkat細胞に対し、同時に応答し得る。TT1またはTT2を標的とするCAR-T細胞は、C1&2aよりもC1&2bに対して、より強く応答する。
調製例3:TT3を標的とするキメラ抗原受容体修飾NK細胞の調製
20x10個のヒトPBMC細胞と、2mLのNK細胞活性化剤1(Schenzhen Dakeweより購入、DKW35-CYT-NK001)とを、400mlの、NK培地(NK培地はAIM V(登録商標)培地(Life Technologiesより購入)+1%ヒト血清(Valley Biomedicalより購入、商品番号HP1022HI))中で均一に混合し、G-Rex100細胞培養装置(Wilson Wolfより購入)内に接種し、そしてIL2(最終濃度:50IU/ml)を添加し、37℃の細胞培養インキュベーター内に置き、IL2の体積全体(最終濃度:50IU/ml)を一日おきに補充し、10日間培養し、次いで細胞を収穫してカウント。収穫された細胞から20x10個の細胞を取り、400mlのNK培地中で別の2mLのNK細胞活性化剤1と均一に混合し、そして次にG-Rex100細胞培養装置に戻して、同じ条件においてさらに7日間培養した。上述の10日目の残りの細胞を、後の使用に向けて凍結し、16日目の細胞を収穫してカウントした。2x10個の細胞を、フローサイトメトリーによる細胞表現型分析用に取出した(それぞれ、抗CD3および抗CD56抗体を使用:PEコンジュゲート抗ヒトCD3抗体、およびAPCコンジュゲート抗ヒトCD56抗体(Miltenyiより購入)、1:50希釈)。
16日間培養されたNK細胞(1x10細胞)と、4μgのaTT3-CD8-41BB-CD3ζmRNA(調製例8の方法によって得られた)とを、エレクトロトランスファー液P3(製品名「P3Primary Cell 4D-XキットL」、Lonza、商品番号V4XP-3012)中で混合し、100μlのNucleocuvette(商標)チューブ(製品名「P3Primary Cell 4D-XキットL」、Lonza、商品番号V4XP-3012)に入れて、氷浴中で5分間凍結させた。次に、4D-Nucleofector(商標)システム(Lonza)を使用し、そのNK細胞エレクトロトランスフェクションプログラムを、エレクトロトランスフェクション用に選択した。エレクトロトランスフェクションの後、細胞を取出して、NK細胞培地中に置き、50IU/mlのIL2および10ng/mLのDNaseを添加し、次いで37℃のインキュベーター内で5%CO中に置いて一晩回復させた。24時間後、細胞を収穫して、エレクトロトランスフェクトされた細胞をフローサイトメーター(BDより購入、C6 Samplar)を用いて同定した。TT3を標的とするCAR修飾NK細胞(すなわち、aTT3-CD8-41BB-CD3ζCAR)が得られた。
実施例5:エレクトロトランスフェクションにより標識された腫瘍細胞上の標識ポリペプチドを標的とするCAR-NK細胞の腫瘍殺傷能
この実施例は、標識ポリペプチドを標的とするCAR修飾NK細胞の、エレクトロトランスフェクトされた標識されたSKOV3-lucまたはSK-HEP-1細胞に対する殺傷能力を試験した。TT3を標的とするCAR修飾NK細胞、またはmGFP-Z修飾NK細胞(GFP配列(Genbank番号はYP_002302326.1である)はaTT3-CD8-41BB-CD3ζCARの抗原結合ドメインを置換えるべく使用し、CARのネガティブコントロール群として使用した)を、それぞれ、エレクトロトランスフェクションによりTT3で標識された、ヒト卵巣癌細胞系SKOV3-luc、またはヒト肝臓癌細胞系SK-HEP-1と、U型96ウェルプレートにおいて共培養し、標的細胞に対するCAR-NKエフェクター細胞の数の比(E:T)は、10:1である。各実験を3回繰返した。2時間の共培養の後、DELFIA EuTDA細胞傷害性キット(Perkin Elmer、米国)を用いて、CAR-NK細胞の腫瘍細胞溶解能を検出した。殺傷効果は、以下の式を用いて計算した:%特異的溶解=((実験群の放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))/(最大放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))x100.
結果は図11に示される。ネガティブコントロール群に比較して、TT3を標的とするCAR-NK細胞は、TT3でエレクトロトランスフェクトされたSKOV3-lucおよびSK-HEP-1細胞に対し、有意に高い殺傷能を有しており、かつ殺傷比は、それぞれ約40%増大され得る。
調製例4:TT3で安定的に標識されたHCT116-luc細胞系の調製
まず、mRNA合成に使用可能な組換え発現ベクターpFastbac1-TT3を、Clal制限エンドヌクレアーゼを用いて直鎖化して、次に直鎖化されたフラグメントをゲル切出しによって回収した。4x10個のHCT116-luc細胞を、6ウェルプレートの1つのウェルに接種した。2μgの直鎖化されたプラスミドを、4μlのP3000(Life Technologiesより購入)および125μlのOpti-MEM(Gibco)と混合し、これを混合物1と命名し;6μlのLipo3000(Life Technologiesより購入)を125μlのOpti-MEMと混合し、これを混合物2と命名した。混合物1および混合物2を混合して、混合物3と命名し、次いで室温で15分間インキュベートした。6ウェルプレート内の培養液を捨て、2mlの、McCoy’s 5A+10%FBS培養液を添加し、そして混合物3を培養液に添加した。トランスフェクションの24時間後、培地を捨て、2mlの新鮮なMcCoy’s 5A+10%FBS培地で置換えた。1週間の培養の後、HCT116-luc細胞を、FITCコンジュゲート抗Strep-tagII抗体(Genscriptより購入、1:50まで希釈)を用いて染色し(4℃で30分間染色)、そしてBD FACSAriaIIソーターにより単一細胞ソーティングを行なった。TT3を発現する細胞(すなわち、FITC陽性)がソートされ、これを、増殖培養後に使用し得る。
調製例5:レンチウイルスによりTT3を標的とするキメラ抗原受容体修飾T細胞の調製
TT3を標的とするキメラ抗原受容体のコード配列をもつDNAのヌクレオチド配列(配列番号:55に示される通り)を、第3世代の自己不活性化レンチウイルス発現ベクター(CD810A-1;System Biosciences)内へ、当該技術分野における通常の技術に従って挿入した。レンチウイルスは、HEK293FT細胞(Life Technologies)により産生された。ウイルス上清を収穫し、25,000rpmで3時間の超遠心分離により濃縮した。レンチウイルスが導入されたCAR-T細胞を調製するためには、まず、Ficoll-Paque密度勾配遠心分離(GE Healthcare)を用いて、健康なドナーの新鮮血からヒト末梢血単核球(PBMC)を単離した。単離されたPBMCをヒトCD3/CD28ダイナビーズ(dynabeads)(登録商標)(Life Technologies)を用いて活性化した後、それらを5%ヒトAB血清(Valley Biomedical)および300IU/mlのIL-2(Peprotech)を補足したAIM-V(Life Technologies)培地中で培養した。培養1週間後、活性化されたPBMC細胞を、TT3を標的とするキメラ抗原受容体の配列を含むレンチウイルスで感染させ、使用に先立ちさらに1週間培養した。
実施例6:TT3を標的とするCAR-T細胞は、マウスにおいて、レンチウイルスによりTT3で安定的に標識された腫瘍細胞を効果的に殺す
ヒト腫瘍を移植されたマウスモデルをさらに使用して、TT3を標的とするCAR-T細胞のインビトロの腫瘍殺傷効果を試験した。実験用マウスは、非肥満性糖尿病/重症複合型免疫不全/IL-2Rycnull(NSG)マウス(6週齢から8週齢、雌)であった。各マウスに、TT3で標識された1x10個のヒト結腸直腸細胞系HCT116-luc(調製例4によって調製された)を移植した。腫瘍移植の7日後、腫瘍増殖を、IVIS Spectrumイメージングプラットフォームにおいて、インビボの生物学的イメージング技術(BLI)を用いて観察し、腫瘍増殖を、イメージャー(PerkinElmer、米国より購入)を用いて記録した。同様のBLI強度(BLI強度は、インビボイメージャーによって記録された、マウス中の腫瘍細胞の蛍光強度を指す)をもつマウスを、各群に5匹のマウスで無作為に4つの群:リン酸緩衝食塩水(PBS)群、コントロールRNA CAR-T細胞群、TT3を標的とするRNA CAR-T細胞群、およびTT3を標的とするDNA CAR-T細胞群に分けた。コントロールRNA CAR-T(mGFPZ-CARでトランスフェクトした)およびTT3を標的とするRNA CAR-Tは、調製例2の方法によって調製され、TT3を標的とするDNA CAR-Tは、調製例5の方法によって調製された。CAR-T細胞群の全てのマウスに、マウス当たり1x10細胞/回を腹腔内に注射し、そしてPBS群の各マウスには、100μLのPBSを腹腔内注射した。細胞注射プロトコールは:腫瘍接種の7日目の注射である。マウスの挙動および生存を非常に注意深く観察し、腫瘍の発生状況をBLIによって記録した。全ての光シグナルおよび画像は、Xenogenインビボイメージングソフトウェアv2.5によって記録および分析した。
図12に示されるように、腫瘍移植後の14日目に、腫瘍増殖状況は、PBS群における腫瘍が増殖を続けたこと;コントロールRNA CAR-T細胞群(図では「コントロールRNA CAR/T」として示される)の全5匹において、腫瘍は増殖を停止し、かつ腫瘍サイズは、PBS群よりも有意に小さかったこと;TT3を標的とするRNA CAR-T細胞群(図では「RNA CAR/T targeting TT3」として示される)においては、腫瘍増殖は緩和され、腫瘍サイズはコントロールRNA CAR/T群に比べて有意に小さかったこと;TT3を標的とするDNA CAR-T細胞群(図では「DNA CAR/T targeting TT3」として示される)においては、腫瘍増殖は有意な軽減を示し、かつ腫瘍がほぼ完全に消えたこと、を示した。TT3を標的とするCAR修飾T細胞が、TT3で標識された腫瘍をインビボで効果的に殺傷できることが見てとれる。
DNA CAR-TにおけるCARエレメントは、継続的に発現され、かつCAR-Tは抗原と出会った後に身体内で増幅を続け得ること;一方RNA CAR-Tにおいては、CARエレメントはRNAであり、それは5日間から7日間にわたり発現され得るに過ぎないことから、DNA CAR-TはRNA CAR-Tよりも良好である。これらの5日から7日の間に、発現レベルはどんどん低くなり、かつRNAは、T細胞の増殖につれて徐々に希釈されることになる。それ故、DNA CAR-Tは、RNA CAR-Tよりもさらに有効である。DNA CAR-Tは、単回の注射を要するに過ぎないが、一方RNA CAR-Tは、複数回の注射を必要とする。しかしながら、ここでは1回のみの注射が使用された。
調製例6:Crisper-Cas9によりゲノム中にTT3を含む組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの調製
4x10個のCV-1細胞を、10%FBS(Sigma)を補足した2mlのDMEM(Gibco)中に再懸濁し、6ウェルプレート(Costar)の1つのウェル内に接種した。一晩インキュベートした後、古い培地を捨てた。ワクシニアウイルス(DDVV-RFP)を無血清DMEM培地で希釈し、1mlのウイルス希釈物(0.05MOI)を細胞に添加した。ウイルス感染の4時間後、ウイルスを含む培地を捨て、次いで5%FBSを含む2mlのDMEM培地を添加した。1.5μgのCas9タンパク質(IDTより購入)、9pmolのリーダーRNA-1、および9pmolのトレーサーRNA(IDTより購入)を、37.5μlのOpti-MEM(Gibco)中に希釈し、室温で10分間インキュベートして、混合物1と命名した。別の1.5μgのCas9タンパク質(IDTより購入)、9pmolのリーダーRNA-2、および9pmolのトレーサーRNA(IDTより購入)を、37.5μlのOpti-MEM(Gibco)中に希釈し、室温で10分間インキュベートして、混合物2と命名した。6μlのLipo3000(Life Technologiesより購入)および150μlのOpti-MEMを混合し、混合物3と命名した。混合物1、混合物2、および75μlの混合物3を一緒に混合し、室温で15分間インキュベートし、混合物4と命名した。2μgのドナープラスミドpFastbac1-TT3-PuroGFP(図3に示される通り)、4μlのP3000(Life Technologiesより購入)、および75μlのOpti-MEMを一緒に混合し、そしてさらに75μlの混合物3と混合し、室温で15分間インキュベートし、混合物5と命名した。最後に、混合物4および5を一緒に混合して、CV-1細胞の6ウェルプレートに添加した。トランスフェクションの48時間後、上清および細胞を収集し、凍結および融解を反復して、組換えワクシニアウイルスを得た。143B細胞を組換えワクシニアウイルスで感染させ、緑色蛍光をもつ組換え体を見ることができた。緑色蛍光を用いて、組換え体をスポットスクリーニングにより精製し、そしてTT3コード配列をもつ精製された組換えワクシニアウイルス(vvDD-TT3)が得られた。
ドナープラスミドpFastbac1-TT3-PuroGFP(図3に示される通り)は、当該技術分野における通常の技術によって調製されたが、これには:まず、pUC ori、AmpR、blaプロモーター、f1 oriのみを保持して、Ecor1、sal1、age1、Hind3、Kpn1、およびClaクローニング部位を添加することを含む、pfastbac1をリフォームしてpBS1プラスミドを生成すること;フラグメント1(ecor1-gRNA1-LHR480-sal1)、フラグメント2(sal1-TT3-age1)、フラグメント3(age1-pSEL-loxp-p7.5-hind3)、フラグメント4(hind3-puromycin-gfp-loxp-kpn1)、およびフラグメント5(kpn1-RHR520-gRNA2-cla1)を、それぞれIDTにより合成すること;5つのフラグメントを順次に、pBS1に連結すること、が含まれる。結果として得られたプラスミドのヌクレオチド配列は、配列番号:38に示される通りである。
調製例7:組換え腫瘍溶解性ウイルスを用いた感染により細胞表面上にTT3を発現する腫瘍細胞の調製
0日目に、1.5x10細胞のSKOV3-luc、HCT116-luc、およびSK-HEP-1を、それぞれ10cmの細胞培養皿に接種した。1日目、細胞培地(SKOV3-lucおよびHCT116-lucの細胞培地は、McCoy5A+10%FBSであり、SK-HEP-1の培地は、EMEM+10%FBSであった)を捨てた。調製例6の方法によって得られた組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルス(vvDD-TT3)を、それぞれ、5mlの対応する無血清細胞培地中に希釈し、次いで、SKOV3-luc、HCT116-luc、およびSK-HEP-1細胞培養皿にそれぞれ添加した。感染のMOIは、それぞれ0.02、0.2、0.02であり、細胞培養皿を30分ごとに穏やかに振とうした。2時間の感染後、ウイルス希釈物を捨て、5%FBSを含む細胞培地(Sigma)(SKOV3-lucおよびHCT116-lucは、McCoy5Aであり、SK-HEP-1培地は、EMEMであった)を添加した。46時間のさらなる培養の後、細胞を収穫した。ビオチンコンジュゲート抗Strep-tagII抗体(Genscript)を一次抗体として使用し、かつストレプトアビジン-APCを二次抗体として(双方とも1:50まで希釈された)染色に使用した。フローサイトメトメーター(BDより購入、C6 Samplar)を用いて、細胞表面上のTT3の発現を検出した。
結果は図13に示される。GFPの発現は首尾よく検出され得、かつTT3は感染された腫瘍細胞の表面上で高度に発現された。
実施例7:組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染により標識された腫瘍細胞上のTT3を標的とするCAR-NK細胞のインビトロの殺傷効果
この実施例は、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染後の、標識されたSKOV3-lucまたはSK-HEP-1細胞上の標識ポリペプチドを標的とする、CAR修飾NK細胞の殺傷能を試験した。調製例3の方法によって得られた、TT3を標的とするCAR修飾NK細胞、およびmGFP-Z修飾NK細胞(GFPを用いてaTT3-CD8-41BB-CD3ζ CARの抗原結合ドメインを置換えた;CARのネガティブコントロール群として使用)を、それぞれ、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によりTT3で標識された、SKOV3-lucおよびSK-HEP-1(調製例7の方法に従って得られた;各タイプの腫瘍細胞を、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染の48時間後にNK細胞と混合した)、および未標識のSKOV3-lucおよびSK-HEP-1と、U型96ウェルプレートにおいて共培養し、標的細胞に対するCAR-NKエフェクター細胞の数の比(E:T)は、10:1であった。各実験を3回繰返した。2時間の共培養後、DELFIA EuTDA細胞傷害性キット(Perkin Elmer、米国)を用いて、CAR-T細胞の腫瘍細胞溶解能を検出した。殺傷効果は、以下の式を用いて計算した:%特異的溶解=((実験群の放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))/(最大放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))x100。
結果は、図14に示される。ネガティブコントロール群のmGFP-Z修飾NK細胞(図ではNK mGFPZとして示される)と比較して、TT3を標的とするCAR-NK細胞(図ではNK aTT3 CARとして示される)は、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によりTT3で標識された、SKOV3-luc(図ではSKOV3-vvDDとして示される)およびSK-HEP-1細胞(図ではSK-HEP-1-vvDDとして示される)に対し、有意により高い殺傷能を有し、かつ殺傷比は、それぞれ約18%および23%まで増加され得る。
調製例8:標識ポリペプチドTT1、TT2、TT3、C1&2a、C1&2bをコードするmRNAのインビトロ合成、およびTT1を標的とするaTT1-CD8a-4-1BB-CD3ζmRNA、TT2を標的とするaTT2-CD8a-4-1BB-CD3ζmRNA、TT3を標的とするaTT3-CD8a-4-1BB-CD3ζmRNAのインビトロ合成。
組換え発現ベクターpFastbac1-aTT1-CD8a-4-1BB-CD3ζ、pFastbac1-aTT2-CD8a-4-1BB-CD3ζ、pFastbac1-aTT3-CD8a-4-1BB-CD3ζの構築:当該技術分野における通常の技術に従いて、まず、順次にT7プロモーター、コザック配列をもつ5’UTR、GM-CSFα鎖シグナルペプチド、EcoRIと、SphIと、SalIと、HindIIIと、およびClaIとを含有する、マルチプルクローニングサイト、およびαグロブリン3’UTR(AIT Biotech)を含むフラグメントを合成し、次いでpFastbac1ベクター(Life Technologies)内に挿入し、ベクターpFBCMV-T7が構築されるようにした。次に、以下の配列:EcoRI制限部位のリンカー配列、TT1、TT2、またはTT3を標的とするキメラ抗原受容体のコード配列、およびSalI制限部位のリンカー配列、を含む別のフラグメントを合成した。pFBCMV-T7ベクターおよび合成された遺伝子フラグメントを、EcoRIおよびSalI(NEB)二重消化反応に供し、消化産物を、DNAフラグメント回収用のアガロースゲルDNA回収キットを用いて回収し、次いで連結してOne Shot(登録商標)Chemically Competent TOP10ケミカルコンピテントセル(Life Technologiesより購入)内に形質転換し、37℃で18時間培養した。単一クローンを採取し、37℃において250rpmで16時間培養し、プラスミドミニエクストラクションキット(Omega Bio Tekより購入)の使用によりプラスミドを抽出して、pFastbac1-aTT1-CD8a-4-1BB-CD3ζ、pFastbac1-aTT2-CD8a-4-1BB-CD3ζ、pFastbac1-aTT3-CD8a-4-1BB-CD3ζを得た。全てのプラスミドを、シーケンシングによって確認した。
組換え発現ベクターpFastbac1-TT1、pFastbac1-TT2、pFastbac1-TT3、pFastbac1-C1&2a、pFastbac1-C1&2bの構築:まず、上記の方法に従ってベクターpFBCMV-T7を得、そして以下の配列:EcoRI制限部位のリンカー配列、標識ポリペプチド(TT1、TT2、TT3、C1&2a、またはC1&2b)のコード配列、SalI制限部位のリンカー配列、を含むフラグメントを合成した。pFBCMV-T7ベクターおよび合成された遺伝子フラグメントを、EcoRIおよびSalI(NEB)二重消化反応に供し、消化産物を、DNAフラグメント回収用のアガロースゲルDNA回収キットを用いて回収し、次いで連結してOne Shot(登録商標)Chemically Competent TOP10ケミカルコンピテントセル(Life Technologiesより購入)内に形質転換し、37℃で18時間培養した。単一クローンを採取し、37℃において250rpmで16時間培養し、プラスミドミニエクストラクションキット(Omega Bio Tekより購入)の使用によりプラスミドを抽出して、pFastbac1-TT1、pFastbac1-TT2、pFastbac1-TT3、pFastbac1-C1&2a、pFastbac1-C1&2bを得た。全てのプラスミドを、シーケンシングによって確認した。
Tail-PCR技術を用いて、ポジティブ鎖にポリAをもつ、かつリバース鎖に対応するポリTをもつDNA二本鎖鋳型を、インビトロRNA合成に向けて大量に合成し、それによりDNA鋳型の不安定性を低減した。標的ポリペプチドTT1、TT2、TT3、C1&2a、またはC1&2bのコード配列をもつDNAを、Tail-PCRにより、pFastbac1-TT1、pFastbac1-TT2、pFastbac1-TT3、pFastbac1-C1&2a、pFastbac1-C1&2bベクターを、それぞれDNA鋳型として用いることによって増幅し、それぞれ標識ポリペプチドTT1、TT2、TT3、C1&2a、またはC1&2bのコード配列をもつ直鎖化されたDNA鋳型を合成するようにした。
キメラ抗原受容体コード配列をもつDNAを、Tail-PCR増幅により、pFastbac1-aTT1-CD8a-4-1BB-CD3ζ、pFastbac1-aTT2-CD8a-4-1BB-CD3ζ、pFastbac1-aTT3-CD8a-4-1BB-CD3ζベクターをDNA鋳型として用いて取得し、それぞれキメラ抗原受容体aTT1-CD8a-4-1BB-CD3ζ、aTT2-CD8a-4-1BB-CD3ζ、aTT3-CD8a-4-1BB-CD3ζのコード配列をもつ直鎖化されたDNA鋳型が合成されるようにした。Tail-PCR反応の条件は、KAPA HiFiHotStartReadyMix(2x)の指示書を参照し、かつ反応系(50μL)は以下の通りであった:
再蒸留水(核酸酵素なし):25μL
2x KAPA HiFiHotStart Uracil+ReadyMix:25μL
P7(配列番号:15)(100μM):0.15μL
P8(配列番号:16)(100μM):0.15μL
ベクターDNA鋳型(500ng/μL):0.5μL
上記のPCR産物を、1%(w/v)アガロースゲルを用いて同定した。同定後の正しい産物を、標識ポリペプチドTT1、TT2、TT3、C1&2a、またはC1&2bのmRNA(すなわち、配列番号:26、27、28、29、および30にそれぞれ対応するmRNA)、およびTT1を標的とするaTT1-CD8a-4-1BB-CD3ζmRNA、TT2を標的とするaTT2-CD8a-4-1BB-CD3ζmRNA、TT3を標的とするaTT3-CD8a-4-1BB-CD3ζmRNA(すなわち、配列番号:53、54、および55に示されるヌクレオチド配列にそれぞれ対応するmRNA)のインビトロ合成に使用した。キャップ化されたmRNAは、mRNAインビトロ合成キットを用いて合成され、該キットは、mMESSAGEmMACHINE T7 ULTRA転写キット(Invitrogen、米国、より入手)またはmScript(商標)RNAシステム(Epicentre、米国、より入手)であった。合成は、キットの指示書を追従し、かつキット中に提供された試薬を使用した。
インビトロで合成されたmRNA産物を分離し、1%(w/v)アガロースゲルを用いて同定した。同定後の正しいmRNAを、後の使用に向けて-80℃に保存した。
調製例9:組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染により細胞表面上にTT3を発現するSK-HEP-1細胞の調製
0日目に、1x10細胞のSK-HEP-1を、10cmの培養皿に接種した。1日目、細胞培地(EMEM+10%FBS)を捨てた。調製例6の方法によって得られた組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルス(vvDD-TT3)を、5mlの対応する無血清細胞培地中に希釈し、次いでSK-HEP-1細胞培養皿に添加した。感染のMOIは、それぞれ0.25、または0.50であり、細胞培養皿を30分ごとに穏やかに振とうした。2時間の感染後、ウイルス希釈物を捨て、5%FBSを含むEMEM細胞培地(Sigma)を添加した。22時間のさらなる培養の後、細胞を収穫した。
ビオチンコンジュゲート抗Strep-tagII抗体(Genscript)を一次抗体として使用し、かつストレプトアビジン-APCを二次抗体として(双方とも1:50まで希釈された)染色に使用した。フローサイトメトメーター(ACEA Biosicences、Novocyteより購入)を用いて、細胞表面上のTT3の発現を検出した。結果として、GFP発現が首尾よく検出され(GFP発現はフローサイトメトリーによって直接検出され得る)、かつTT3には、感染された腫瘍細胞の表面上で高強度の発現がある。
実施例8:組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによる感染によって標識された腫瘍細胞上のTT3を標的とするCAR-Tのインビトロの殺傷効果
この実施例は、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によって標識されたSK-HEP-1細胞上の標識ポリペプチドを標的とする、CAR修飾T細胞の殺傷能を試験した。調製例2の方法によって得られた、TT3を標的とするCAR修飾T細胞、およびmGFP-Z修飾T細胞(GFPを用いてaTT3-CD8-41BB-CD3ζ CARの抗原結合ドメインを置換えた;CARのネガティブコントロール群として使用)を、それぞれ、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によりTT3で標識されたSK-HEP-1(調製例9の方法に従って得られた;腫瘍細胞は、0.25MOIの組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた腫瘍細胞の感染の24時間後に、上述のT細胞と混合した;SK-HEP-1-vvDDとして表示された)、および未標識のSK-HEP-1(SK-HEP-1として表示された)と、U型96ウェルプレートにおいて共培養した。標的細胞に対するCAR-Tエフェクター細胞の数の比(E:T)は、40:1である(CAR-Tエフェクター細胞の数は2x10/ウェルである)。各実験を3回繰返した。3時間の共培養後、DELFIA EuTDA細胞傷害性キット(Perkin Elmer、米国)を用いて、CAR-T細胞の腫瘍細胞溶解能を検出した。殺傷効果は、以下の式を用いて計算した:%特異的溶解=((実験群の放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))/(最大放出(読取値)-ブランク群の放出(読取値))x100。
結果は、図15に示される。図15Aにおいて、ネガティブコントロール群では、mGFP-Z修飾T細胞(図ではT mGFPZとして示される)と、TT3を標的とするCAR-T細胞(図ではT aTT3 CARとして示される)との間で、未標識のSK-HEP-1細胞に対する殺傷能の点において、何ら有意差はなかった。図15Bにおいては、ネガティブコントロール群におけるmGFP-Z修飾T細胞(図ではT mGFPZとして示される)に比較して、TT3を標的とするCAR-T細胞(図ではT aTT3 CARとして示される)は、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によってTT3で標識されたSK-HEP-1細胞に対し、有意により高い殺傷能を有しており、かつ殺傷比は、30%まで増加され得る。
実施例9:組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によってTT3で標識された腫瘍細胞と共培養された後の、TT3を標的とするCAR-NK細胞のサイトカイン分泌
この実験では、ELISAを用いて、標識ポリペプチドを標的とするCAR修飾NK細胞の、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスで感染された標識されたSK-HEP-1細胞と一晩共培養された後の、GM-CSFの分泌を検査した。調製例3の方法に従って得られた、TT3を標的とするCAR修飾NK細胞およびmGFP-Z修飾NK細胞(GFPを用いてaTT3-CD8-41BB-CD3ζ CARの抗原結合ドメインを置換えた;CARのネガティブコントロール群として使用)を、それぞれ、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によりTT3で標識されたSK-HEP-1(調製例9の方法に従って得られた;これにおいて腫瘍細胞は、それぞれ0.25MOIまたは0.50MOIの組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた腫瘍細胞の感染後24時間に、上述のNK細胞と混合された;それぞれSK-HEP-1-vvDD(0.25MOI)およびSK-HEP-1-vvDD(0.5MOI)として示される)、TT3をコードするmRNAを用いたエレクトロトランスフェクションによってTT3で標識されたSK-HEP-1(調製例1の方法に従って得られた;SK-HEP-1-EPとして示される)、および未標識のSK-HEP-1(SK-HEP-1として示される)と、24ウェルプレートにおいて共培養した。上記のCAR-NKエフェクター細胞と標的細胞との数の比(E:T)は、5:1である(CAR-NKエフェクター細胞の数は2.5x10/ウェルである)。一晩の共培養の後、CAR-NK細胞によるGM-CSF分泌を、ヒトGM-CSF ELISA検出キット(R&D Company、米国)により検出した。各実験を2回繰返した。
図16に示されるように、ネガティブコントロール群のmGFP-Z修飾NK細胞(図ではNK mGFPZとして示される)と比較して、TT3を標的とするCAR-NK細胞(図ではNK aTT3 CARとして示される)は、TT3による刺激後に、より多くのGM-CSFを分泌し得る。TT3をコードするmRNAを用いたエレクトロトランスフェクションによりTT3標識されたSK-HEP-1(図ではSK-HEP-1-EPとして示される)との共培養の後、NK aTT3 CARによるGM-CSF分泌は、NKmGFPZのそれよりも2.4倍であった。組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によってTT3で標識されたSK-HEP-1(それぞれ、SK-HEP-1-vvDD(0.25MOI)およびSK-HEP-1-vvDD(0.50MOI))との共培養の後、NK aTT3 CARによるGM-CSFの分泌は、それぞれNKmGFPZの約1.32および1.64倍であった。
実施例10:組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によって標識された腫瘍細胞と共培養された後の、TT3を標的とするCAR-Tのサイトカイン分泌
この実験では、ELISAを用いて、標識ポリペプチドを標的とするCAR修飾T細胞の、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスで感染された標識されたSK-HEP-1細胞と一晩共培養された後の、IFNγおよびGM-CSFの分泌を検査した。調製例3の方法に従って得られた、TT3を標的とするCAR修飾T細胞およびmGFP-Z修飾T細胞(GFPを用いてaTT3-CD8-41BB-CD3ζ CARの抗原結合ドメインを置換えた;CARのネガティブコントロール群として使用)を、それぞれ、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によりTT3で標識されたSK-HEP-1(調製例9の方法に従って得られた;これにおいて腫瘍細胞は、それぞれ0.25MOIまたは0.50MOIの組換え腫瘍溶解性ウイルスを用いた腫瘍細胞の感染後24時間の、上述のT細胞と混合された;それぞれSK-HEP-1-vvDD(0.25MOI)およびSK-HEP-1-vvDD(0.5MOI)として示される)、TT3をコード化するmRNAを用いたエレクトロトランスフェクションによってTT3で標識されたSK-HEP-1(調製例1の方法に従って得られた;SK-HEP-1-EPとして示される)、および未標識のSK-HEP-1(SK-HEP-1として示される)と、24ウェルプレートにおいて共培養した。上記のCAR-NKエフェクター細胞と標的細胞との数の比(E:T)は、5:1である(CAR-NKエフェクター細胞の数は2.5x10/ウェルである)。一晩の共培養の後、ヒトIFNγ ELISA検出キット(Biolegend Company、米国)を用いて、CAR-T細胞によるIFNγの分泌を検出し、またヒトGM-CSF ELISA検出キット(R&D Company、米国)を用いて、CAR-T細胞によるGM-CSF分泌を検出した。各実験を2回繰返した。
図17に示されるように、ネガティブコントロール群のmGFP-Z修飾T細胞(図ではT mGFPZとして示される)と比較して、TT3を標的とするCAR-T細胞(図ではT aTT3 CARとして示される)は、TT3による刺激後に、より多くのIFNγおよびGM-CSFを分泌し得る。TT3をコード化するmRNAを用いたエレクトロトランスフェクションによりTT3標識されたSK-HEP-1(図ではSK-HEP-1-EPとして示される)との共培養の後の、T aTT3 CARのIFNγの分泌は、T mGFPZのそれよりも2倍であり(図17A)、かつT aTT3 CARのGM-CSF分泌は、T mGFPZのそれよりも約4.45倍であった(図17B)。組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた感染によってTT3で標識されたSK-HEP-1(それぞれ、SK-HEP-1-vvDD(0.25MOI)およびSK-HEP-1-vvDD(0.50MOI))との共培養の後、T aTT3 CARのIFNγの分泌は、それぞれ、T mGFPZのそれよりも約11.5倍および14.2倍であり(図17A)、またT aTT3 CARのGM-CSFの分泌は、それぞれT mGFPZの約10倍および10倍であった(図17B)。
実施例11:組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの腫瘍内注射後の腫瘍組織におけるTT3の分布
実験用マウスは、非肥満性糖尿病/重症複合型免疫不全/IL-2Rycnull(NCG)マウス(6週齢から8週齢、雌、Jiangsu jicui Yaokang Biotechnology Co.,Ltdより入手)であった。各マウスに、1x10個のヒト肝臓癌細胞系SK-HEP-1を皮下移植した。腫瘍移植の6日後、良好な成形品質の80から120mmの範囲の腫瘍サイズをもつ12匹のマウスを選択し、腫瘍内注射により、マウス当たり50μlの、5x10pfuのvvDD-TT3を注射した。ワクシニアウイルス注射の7、14、21、および29日後に、それぞれ3匹のマウスを無作為に犠牲にし、皮下の腫瘍組織を剥き出しにした。腫瘍組織を外科用メスによって中央から切断し、固定し、パラフィン中に包埋して、厚さ5μmの切片に調製した。全ての切片を、ヘマトキシリン(Shanghai Beyotime Biotechnology Co.,Ltd.)で核染色用に染色し、そしてTT3を、ビオチン抗Strep-tagII抗体(Genscript)を用いて同時に検出した。二次抗体は、ウサギ2段階検出キット(Beijing Zhongshan Jinqiao Biotechnology Co.,Ltd.より入手)であり、かつ発色キットはDAB西洋ワサビペルオキシダーゼ発色キット(Shanghai Beyotime Biotechnology Co.,Ltd.より入手)であった。最後に、切片のパノラミックスキャンを、Jiangfeng自動デジタル病理切片スキャナーによって実施した。
結果は、図18に示される。図18において、淡灰色は,TT3ネガティブな部分であり、濃灰色は、TT3ポジティブな領域であった。vvDD-TT3の腫瘍内注射の7、14、21、29日後に、TT3の発現が腫瘍組織において検出できたこと、およびTT3が腫瘍組織内に広く分布していたことが見てとれる。
実施例12:マウスにおける皮下腫瘍の増殖に対する、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスとCAR-NK細胞との組合せ投与の効果
実験用マウスは、非肥満性糖尿病/重症複合型免疫不全/IL-2Rycnull(NCG)マウス(6週齢から8週齢、雌、Jiangsu jicui Yaokang Biotechnology Co.,Ltdより入手)であった。各マウスに、1x10個のヒト肝臓癌細胞系SK-HEP-1を皮下移植した。腫瘍移植の6日後、良好な成形品質の80から120mmの範囲の腫瘍サイズをもつ30匹のマウスを選択し、無作為に、各群に5匹のマウスで6つの群に分けた。第1の群は、「ブランクコントロール」群(IL-2/PBS/0.9%NaCl)であり、これにおいて、腫瘍接種の6日後に、50μlのPBSを腫瘍内注射し(「投与後0日」として示される)、PBS注射の10日後(すなわち、投与後10日)に、100μlの0.9%NaClを腫瘍内注射し、そして投与後10、12、14、16、18、20、22、24、および26日にIL-2を腹腔内注射した。第2の群は、「vvDD-TT3」群(すなわち、組換え腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの単剤群(IL-2/vvDD-TT3/0.9%NaCl))であり、これにおいて、腫瘍接種の6日後に、50μlのvvDD-TT3を腫瘍内注射し(「投与後0日」として示される)、vvDD-TT3注射の10日後(すなわち、投与後10日)に、100μlの0.9%NaClを腫瘍内注射し、そして投与後10、12、14、16、18、20、22、24、および26日にIL-2を腹腔内注射した。第3の群は、「NK mGFPZ」群(すなわち、ネガティブCAR-NKの単剤コントロール群(IL-2/PBS/NK mGFPZ)であり、これにおいて、腫瘍接種の6日後に、50μlのPBSを腫瘍内注射し(「投与後0日」として示される)、PBS注射の10、13、16、19、23、26日後(すなわち、投与後10、13、16、19、23、26日)に、100μlのNK mGFPZを腫瘍内注射し、そして投与後10、12、14、16、18、20、22、24、26日にIL-2を腹腔内注射した。第4の群は、「NK aTT3 CAR」群(すなわち、ポジティブCAR-NKの単剤群(IL-2/PBS/NK aTT3 CAR)であり、これにおいて、腫瘍接種の6日後に、50μlのPBSを腫瘍内注射し(「投与後0日」として示される)、PBS注射の10、13、16、19、23、および26日後(すなわち、投与後10、13、16、19、23、26日)に、100μlのNK aTT3 CARを腫瘍内注射し、そして投与後10、12、14、16、18、20、22、24、26日にIL-2を腹腔内注射した。第5の群は、「vvDD-TT3+NK mGFPZ」群(すなわち、組合せ投与コントロール群(IL-2/vvDD-TT3/NK mGFPZ)であり、これにおいては、腫瘍接種の6日後に、50μlのvvDD-TT3を腫瘍内注射し(「投与後0日」として示される)、vvDD-TT3注射の10、13、16、19、23、および26日後(すなわち、投与後10、13、16、19、23、26日)に、100μlのNK mGFPZを腫瘍内注射し、そして投与後10、12、14、16、18、20、22、24、26日にIL-2を腹腔内注射した。第6の群は、「vvDD-TT3+NK aTT3 CAR」群(すなわち、本発明の組合せ投与群(IL-2/vvDD-TT3/NK aTT3 CAR))であり、これにおいては、腫瘍接種の6日後に、50μlのvvDD-TT3を腫瘍内注射し(「投与後0日」として示される)、vvDD-TT3注射の10、13、16、19、23、および26日後(すなわち、投与後10、13、16、19、23、26日)に、100μlのNK aTT3 CARを腫瘍内注射し、そして投与後10、12、14、16、18、20、22、24、26日にIL-2を腹腔内注射した。NK mGFPZおよびNK aTT3 CARは、調製例3の方法に従って調製された。CAR-NK細胞は、マウス当たり1回当たり1x10細胞の腫瘍内注射として投与し、IL-2は、マウス当たり1回当たり20000IUの量で腹腔内に注射し、vvDD-TT3の投与用量は、マウス当たり5x10pfuであった。腫瘍の長径および短径を、グループ分けの日、第1の投与後の1週間に2回、および安楽死の前に、それぞれ、ノギスを用いて測定して記録した。腫瘍体積を計算し、腫瘍体積に基づいて腫瘍増殖曲線を描いた。腫瘍体積の計算式は、V=(1/2)x長径x短径である。相対腫瘍体積(RTV)の計算式は、RTV=Vt/V0[式中、Vtは、各測定によって得られた腫瘍体積であり、V0は、最初の腫瘍体積(投与前)であった]である。腫瘍相対増殖率の計算式(T/C)%は、T/C%=(投与群の平均RTV/ブランクコントロール群の平均RTV)x100%であり、これにおいて、T/C%40%の場合、モデル群のRTVに対する実験群のRTVは統計的にP<0.05であって、このことは、腫瘍増殖に対し阻害効果があることを意味する。反対に、T/C%>40%の場合には、腫瘍増殖に対する阻害効果はない。
図19Aに示されるように、腫瘍移植の後、腫瘍の発育状態は、第1の群、すなわち「ブランクコントロール」群のマウスにおいては、腫瘍は継続的に増殖し;第2の群、すなわち「vvDD-TT3」群では、腫瘍増殖は有意に阻害され得;第3の群、すなわち「NK mGFPZ」群、および第4の群、すなわち「NK aTT3-CAR」群では、腫瘍増殖は弱く遅延され得;第5の群、すなわち「vvDD-TT3+NK mGFPZ」群では、腫瘍増殖は「vvDD-TT3」群に比較してさらに阻害され得;第6の群、すなわち「vvDD-TT3+NK aTT3 CAR」群では、腫瘍増殖は第5の群に比較してさらに阻害され得、なおかつ腫瘍重量が減少され得たことを示した。図19Bに示されるように、第6の群「vvDD-TT3+NK aTT3 CAR」の相対腫瘍阻害率は、投与後21日に40%に達した一方、第2の群「vvDD-TT3」群および第5の群「vvDD-TT3+NK mGFPZ」群では、相対腫瘍阻害率は、投与後28日に40%に達した。vvDD-TT3と、TT3を標的とするCARにより修飾されたNK細胞とは、腫瘍を特異的に処理しかつ腫瘍増殖をより迅速に阻害するべく組合わされ得ることが見てとれる。

Claims (32)

  1. 腫瘍および/または癌の治療のための治療薬であって:
    (a)第1の組成物であって、前記第1の組成物が、第1の活性成分を第1の薬学的に許容される担体中に含み、かつ前記第1の活性成分が、腫瘍細胞および/または癌細胞内へ導入されるための標識ポリペプチドコード配列を有する核酸を含むかまたは含有しており;前記標識ポリペプチドが、動作可能なように連結された細胞外抗原決定領域、スペーサー部位、および膜貫通部位を有し、それらは腫瘍細胞および/または癌細胞の表面上で修飾を形成するべく発現され得;前記細胞外抗原決定領域のアミノ酸配列は、エピトープポリペプチドの1つ以上のアミノ酸配列を含んでおり;かつこれにおいて、自然状態では、哺乳類の細胞膜上のタンパク質または分泌タンパク質のアミノ酸配列は、前記エピトープポリペプチドのアミノ酸配列を含まない、該第1の組成物と;および
    (b)第2の組成物であって、これにおいて前記第2の組成物が、第2の活性成分を第2の薬学的に許容される担体中に含み、かつ前記第2の活性成分が、キメラ抗原受容体修飾免疫細胞を含み;前記キメラ抗原受容体修飾免疫細胞が、前記標識ポリペプチドの前記細胞外抗原決定領域を特異的に認識しかつ結合し得る、該第2の組成物と、
    を含み、
    前記スペーサー部位が、CD8αのヒンジ領域、IgGのヒンジ領域、またはIgDのヒンジ領域に由来し;
    前記エピトープポリペプチドの前記アミノ酸配列が、Mycタグ、HAタグ、StrepタグII、Flagタグ、HATタグ、Sタグ、S1タグ、プロテインCタグ、tag-100タグ、E2タグ、TAPタグ、HSVタグ、KT3タグ、V5タグ、VSV-Gタグ、Hisタグ、またはRFPタグ、から選択される、1以上のタグのアミノ酸配列を含む、
    治療薬。
  2. 前記細胞外抗原決定領域の前記アミノ酸配列が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5に示される通りである、請求項1に記載の治療薬。
  3. 前記スペーサー部位のアミノ酸配列が、配列番号:6に示される通りであり;ここで前記膜貫通部位が、CD8,CD3ζ、CD4,またはCD28の膜貫通領域に由来する、請求項1に記載の治療薬。
  4. 前記膜貫通部位のアミノ酸配列が、配列番号:7に示される通りである、請求項3に記載の治療薬。
  5. 前記標識ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、または配列番号:15に示される通りである、請求項1に記載の治療薬。
  6. 前記核酸がDNAまたはmRNAを含む、請求項1に記載の治療薬。
  7. 前記第1の活性成分が、組換えウイルスであり、かつ前記組換えウイルスのゲノムが前記標識ポリペプチドコード配列を有しており;ここで、前記組換えウイルスが、複製選択的組換え腫瘍溶解性ウイルスまたは複製欠損性組換えウイルスを含む、請求項1に記載の治療薬。
  8. 前記組換え腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解作用をもつ遺伝的に変異されたウイルスまたは腫瘍溶解作用をもつ野生型ウイルスに由来する、請求項7に記載の治療薬。
  9. 前記組換え腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解作用をもつアデノウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、セムリキフォレストウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、セネカバレーウイルス、エコタイプエンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、およびマラバ(Malaba)ウイルスに由来する、請求項8に記載の治療薬。
  10. 前記キメラ抗原受容体が、動作可能なようにかつ順次に連結された抗原結合ドメイン、スペーサー領域、膜貫通領域、および細胞内ドメインを含み、かつ前記抗原結合ドメインが、前記標識ポリペプチドの前記細胞外抗原決定領域を特異的に認識しかつ結合する、請求項1に記載の治療薬。
  11. 前記抗原結合ドメインのアミノ酸配列が、配列番号:42、配列番号:43、または配列番号:44に示される通りである、請求項10に記載の治療薬。
  12. 前記細胞内ドメインが、リンパ球細胞内活性化シグナル伝達領域に由来しており、これにおいて、前記細胞内活性化シグナル伝達領域が、CD3ζまたはDAP12の細胞内活性化シグナル伝達領域から選択される、請求項10に記載の治療薬。
  13. 前記細胞内ドメインが、リンパ球細胞内活性化シグナル伝達領域およびリンパ球補助刺激シグナル伝達領域に由来しており、これにおいて、前記細胞内活性化シグナル伝達領域が、CD3ζまたはDAP12の細胞内活性化シグナル伝達領域から選択され、前記リンパ球補助刺激シグナル伝達領域が、4-1BB、CD28、CD27、OX40、GITR、および/またはICOSSの補助刺激シグナル伝達領域から選択される、請求項10に記載の治療薬。
  14. 前記スペーサー領域が、CD8αのヒンジ領域、IgGのヒンジ領域、またはIgDのヒンジ領域に由来し、かつ膜貫通領域が、CD8α、CD3ζ、CD4、またはCD28の膜貫通領域に由来する、請求項10に記載の治療薬。
  15. 前記キメラ抗原受容体の前記アミノ酸配列が、配列番号:46、配列番号:47、または配列番号:48に示される通りである、請求項10に記載の治療薬。
  16. 前記免疫細胞が、T細胞またはNK細胞を含む、請求項1に記載の治療薬。
  17. 前記第1の組成物および前記第2の組成物が、一緒に混合されることなく、別々に治療薬中に存在する、請求項1に記載の治療薬。
  18. 前記第1の組成物が、治療上有効な量の前記DNAまたは治療上有効な量の前記mRNAを含む、請求項6に記載の治療薬。
  19. 前記第1の組成物が、治療上有効な量の前記組換えウイルスを含む、請求項7に記載の治療薬。
  20. 前記第2の組成物が、治療上有効な量の前記キメラ抗原受容体修飾免疫細胞を含む、請求項1に記載の治療薬。
  21. 前記DNAが、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化され;かつ前記mRNAが、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化されている、請求項6に記載の治療薬。
  22. 前記組換えウイルスが、腫瘍内注射によりまたは静脈内に投与されるべく製剤化されている、請求項7に記載の治療薬。
  23. 前記キメラ抗原受容体修飾免疫細胞が、静脈内または局所に投与されるべく製剤化されている、請求項1に記載の治療薬。
  24. 前記治療薬が第1の組成物と第2の組成物とから構成される、請求項1に記載の治療薬。
  25. 腫瘍および/または癌の治療のための薬物の調製における、請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の治療薬の使用。
  26. 前記腫瘍および/または癌が:乳癌、頭頸部腫瘍、滑膜癌、腎臓癌、結合組織癌、悪性黒色腫、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、脳癌、肝臓癌、骨癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、線維肉腫、パジェット病、子宮頸癌、胆嚢癌、眼の癌、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵内分泌腫瘍、グルカゴノーマ(glucagon tumor)、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮体癌、膣癌、外陰癌、菌状息肉症、インスリノーマ、心臓癌、髄膜癌、腹膜癌、胸膜癌、および血液癌を含む、請求項25に記載の使用。
  27. 腫瘍および/または癌の治療のための相乗効果をもつ、コンビナトリアルドラッグのキットであって:
    請求項1から24のいずれか1項に記載の治療薬の前記第1の組成物を含む第1の容器と;
    請求項1から24のいずれか1項に記載の治療薬の前記第2の組成物を含む第2の容器であって、これにおいて前記第1の容器が前記第2の容器から分離されている該容器と;および、
    投与のタイミングおよび経路を指定する指示書と、
    を含むキット。
  28. 腫瘍および/または癌の治療または予防のための薬物の調製における、請求項27に記載のキットの使用。
  29. 前記腫瘍および/または癌が:乳癌、頭頸部腫瘍、滑膜癌、腎臓癌、結合組織癌、悪性黒色腫、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、脳癌、肝臓癌、骨癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、線維肉腫、パジェット病、子宮頸癌、胆嚢癌、眼の癌、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵内分泌腫瘍、グルカゴノーマ(glucagon tumor)、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮体癌、膣癌、外陰癌、菌状息肉症、インスリノーマ、心臓癌、髄膜癌、腹膜癌、胸膜癌、および血液癌を含む、請求項28に記載の使用。
  30. 腫瘍および/または癌を治療するための治療薬であって:
    請求項1から24のいずれか1項に記載の治療薬の前記第1の組成物;および
    請求項1から24のいずれか1項に記載の治療薬の前記第2の組成物、
    を含み、
    前記第1の組成物は、腫瘍および/または癌を罹患している患者に投与され;
    前記第2の組成物は、腫瘍および/または癌を罹患している前記患者に投与される、治療薬。
  31. 前記第1の組成物は、腫瘍および/または癌を罹患している前記患者に投与され;
    前記第2の組成物は、前記第1の組成物の投与後の、腫瘍および/または癌を罹患している前記患者に投与される、
    請求項30に記載の治療薬。
  32. 前記腫瘍および/または癌が:乳癌、頭頸部腫瘍、滑膜癌、腎臓癌、結合組織癌、悪性黒色腫、肺癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、脳癌、肝臓癌、骨癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、未知の原発部位の癌、カルチノイド、線維肉腫、パジェット病、子宮頸癌、胆嚢癌、眼の癌、カポジ肉腫、前立腺癌、精巣癌、皮膚扁平上皮癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵内分泌腫瘍、グルカゴノーマ(glucagon tumor)、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮体癌、膣癌、外陰癌、菌状息肉症、インスリノーマ、心臓癌、髄膜癌、腹膜癌、胸膜癌、および血液癌を含む、請求項30に記載の治療薬。
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Experimental Hematology & Oncology,2012年,Vol. 1,#36

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