JP7532962B2 - Cmp用研磨液、貯蔵液及び研磨方法 - Google Patents

Cmp用研磨液、貯蔵液及び研磨方法 Download PDF

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Description

本発明は、CMP用研磨液、貯蔵液及び研磨方法に関する。
近年、半導体集積回路(以下、「LSI」という。)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、「CMP」という。)法もその一つであり、LSI製造工程、特に、多層配線形成工程における絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成、埋め込み配線の形成等において頻繁に利用される技術である。
一例として、CMP法を用いた埋め込み配線の形成について説明する。まず、あらかじめ形成された凹凸を表面に有する基体(例えば基板)と、基体上に積層された絶縁材料を含む膜(以下、「絶縁膜」ともいう)とを有する積層体を準備する。次に、バリア材料を含む膜(以下、「バリア膜」ともいう)を絶縁膜上の全体に堆積する。さらに、凹部(溝部)を埋め込むようにバリア膜上の全体に、配線用金属膜を堆積する。次に、凹部以外の不要な配線用金属膜及びその下層のバリア膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する。このような配線形成方法をダマシン法と呼ぶ(例えば、下記特許文献1参照)。
近年、配線金属膜には、タングステン(W)、タングステン合金等のタングステン材料が用いられるようになってきている。タングステン材料を含む膜(以下、「タングステン膜」ともいう)を用いたダマシン法による配線形成方法としては、例えば、タングステン膜の大部分を研磨する第一の研磨工程と、タングステン膜及びバリア膜を研磨する第二の研磨工程と、を備える方法が一般的であり、場合により、タングステン膜、バリア膜及び絶縁膜を研磨する第三の研磨工程(仕上げ研磨工程)が実施される。特許文献1には、上記方法(特に第一の研磨工程)において使用し得るとされるCMP用研磨液が開示されている。
特許第3822339号
CMP用研磨液は、通常、運搬、保管等にかかるコストを抑制するために、CMP用研磨液中の砥粒や各種添加剤成分を濃縮(例えば2倍以上に濃縮)した貯蔵液の状態で製造されることが多い。しかし、貯蔵液の状態では、砥粒が凝集・沈降しやすく、貯蔵液を水性液状媒体で希釈して得られるCMP用研磨液中の砥粒も粒径が増大する傾向にある。CMP用研磨液中の砥粒が増大すると、研磨工程における研磨速度の変動が起こりやすい。そのため、貯蔵液には長時間に渡り砥粒が沈降せず、分散状態が良好であること、すなわち、シェルフライフが長いことが望まれている。
特許文献1には、シリカ又はアルミナ、硝酸第2鉄、酸化剤(過酸化水素等)を含む研磨液が開示されている。しかしながら、この特許文献1では、シェルフライフについては開示されていない。一般的にこのような組成では、貯蔵液における砥粒の沈降が起きやすいため、シェルフライフは短くなる。このため、依然として、貯蔵液の状態ではシェルフライフが長く、タングステン材料の研磨速度が高いCMP用研磨液が求められている。
本発明は、貯蔵液の状態では長いシェルフライフが得られやすく、タングステン材料の研磨速度が高いCMP用研磨液、当該CMP用研磨液を得ることができる貯蔵液、並びに、当該CMP用研磨液又は当該貯蔵液から得られる研磨液を用いた研磨方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面は、砥粒と、鉄イオン供給剤と、有機酸と、酸化剤と、水性液状媒体とを含有し、砥粒が、スルホ基を有するシリカ粒子と、スルホ基を有しないシリカ粒子と、を含む、CMP用研磨液に関する。
上記側面のCMP用研磨液によれば、タングステン材料を高い研磨速度で研磨することができ、且つ、貯蔵液のシェルフライフを長くすることができる。
スルホ基を有するシリカ粒子の含有量に対する、スルホ基を有しないシリカ粒子の含有量の比は、0.10~10であってよく、0.70~1.55であってよく、1.40~1.55であってよい。
鉄イオン1原子に対する解離した有機酸の分子数の比は2以上であってよい。
研磨液は防食剤を更に含有してよい。防食剤はチオール基及び炭素-炭素不飽和結合の一方又は両方を有しない、アゾール化合物及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよく、1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、グリシン及び6-アミノヘキサン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
研磨液は、絶縁材料からなる第1の部分と、当該第1の部分上に設けられた、タングステン材料からなる第2の部分とを備える基体の、少なくとも第2の部分を研磨するために用いられる研磨液であってよい。
本発明の他の一側面は、水性液状媒体で2倍以上に希釈されることにより上記側面の研磨液を得ることができる、貯蔵液に関する。このような貯蔵液によれば、運搬・保管にかかるコストを低減できる。
本発明の他の一側面は、絶縁材料からなる第1の部分と、当該第1の部分上に設けられた、タングステン材料からなる第2の部分とを備える基体を用意する工程と、第2の部分における第1の部分とは反対側の表面と研磨パッドとが対向するように、基体を研磨パッド上に配置する工程と、研磨パッドと基体との間に、上記側面の研磨液、又は、上記側面の貯蔵液を水性液状媒体で2倍以上に希釈することで得られる研磨液を供給すると共に、研磨パッドと基体とを相対的に動かすことにより少なくとも第2の部分を研磨する工程と、を有する、基体の研磨方法に関する。この方法によれば、タングステン材料を優れた研磨速度で、また絶縁材料に対して高い選択性で研磨することが可能となる。
本発明によれば、貯蔵液の状態では長いシェルフライフが得られやすく、タングステン材料の研磨速度が高いCMP用研磨液、当該CMP用研磨液を得ることができる貯蔵液、並びに、当該CMP用研磨液又は当該貯蔵液から得られる研磨液を用いた研磨方法を提供することを目的とする。
図1は、一実施形態の研磨方法を示す模式断面図である。
本明細書において、「材料Aの研磨速度」及び「材料Aに対する研磨速度」とは、材料Aからなる物質が研磨により除去される速度を意味する。本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書中、「pH」は、測定対象の温度が25℃のときのpHと定義する。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
<CMP用研磨液>
一実施形態の研磨液は、化学機械研磨(CMP)法に用いられる研磨液(CMP用研磨液)である。研磨液は、砥粒と、鉄イオン供給剤と、有機酸と、酸化剤と、水性液状媒体とを含有する。このCMP用研磨液において、砥粒は、スルホ基を有するシリカ粒子と、スルホ基を有しないシリカ粒子と、を含む。
上記実施形態の研磨液によれば、タングステン材料を高い研磨速度で研磨できるという効果が奏され、且つ、貯蔵液のシェルフライフを長くすることが可能となる。上記の研磨液組成にすることによってこのような効果が得られることは、非常に意外な結果である。このような効果が得られる理由は定かではないが、スルホ基を有するシリカ粒子とスルホ基を有しないシリカ粒子を併用することにより、シリカ粒子の凝集が抑制されことが一因と推察される。
ところで、ダマシン法による配線形成方法における第一の研磨工程では、タングステン膜だけでなく、バリア膜及び絶縁膜を研磨する場合がある。第一の研磨工程に用いられるCMP用研磨液には、スループットの向上のためタングステン材料の研磨速度に優れるだけでなく、後続の第二の研磨工程で優れた平坦性を得るため、又は、絶縁膜が研磨され薄くなりすぎることで配線間の絶縁性が低くなりすぎることを抑制するため、絶縁材料の研磨速度に対するタングステン材料の研磨速度の比(タングステン材料の研磨速度/絶縁材料の研磨速度。以下、単に「研磨速度比」ともいう)にも優れることが求められる場合がある。この点、上記実施形態の研磨液は、絶縁材料の研磨速度に対するタングステン材料の研磨速度の比にも優れる傾向がある。
CMP用研磨液のpHは、タングステン材料のエッチング速度が高くなりすぎない観点、及び、上記本発明の効果がより顕著に奏される観点から、好ましくは6.0以下であり、より好ましくは5.8以下であり、更に好ましくは5.6以下である。CMP用研磨液のpHは、5.4以下、5.2以下、5.0以下又は4.8以下であってもよい。CMP用研磨液のpHは、例えば、3.5以上であり、絶縁材料の研磨速度を更に抑制して更に高い研磨速度比が得られる観点から、好ましくは4.0以上であり、より好ましくは4.2以上であり、更に好ましくは4.5以上である。これらの観点から、CMP用研磨液のpHは、3.5~6.0、4.0~6.0、4.2~5.8又は4.5~5.6であってもよい。CMP用研磨液のpHは、実施例に記載の方法で測定することができる。
(砥粒)
砥粒は、スルホ基を有するシリカ粒子と、スルホ基を有しないシリカ粒子と、を含む。シリカ粒子は、実質的にシリカで構成される粒子であり、シリカ粒子におけるシリカの含有量は、例えば、80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上である。
シリカ粒子としては、フュームドシリカ、フューズドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。研磨対象の研磨後の表面にスクラッチ等の欠陥を生じさせにくくなり、被研磨面の平坦性をより向上させることができる観点から、コロイダルシリカが好ましい。
スルホ基は、研磨液中ではアニオンとして存在し、負の電荷を帯びていてよい。研磨液がこのような官能基を有するシリカ粒子を含む場合、すなわち、貯蔵液がこのような官能基を有するシリカ粒子を含む場合、貯蔵液のシェルフライフに優れる。これは、一部のシリカ粒子の表面電位によるシリカ粒子間の反発力が小さかったとしても、他のシリカ粒子の少なくとも一部がスルホ基を有し表面電位による反発力が高くなることで、反発力の小さいシリカ粒子間に反発力の高いシリカ粒子が入り込み、シリカ粒子間の反発力が高められることで凝集を抑制できるためであると推察される。
スルホ基は、例えば、シリカ粒子の表面において、シリカに結合している。スルホ基は、シリカに直接結合(例えば共有結合)していてよく、スルホ基を有する化合物中の当該スルホ基以外の基がシリカに結合することにより間接的にシリカに結合していてもよい。このようなスルホ基を有する化合物としては、例えば、下記式(1)に示す構造でシリカ粒子に結合するものが挙げられる。
Figure 0007532962000001

[式(1)中、SPはシリカ粒子を表し、Rは炭素数が0以上のn+1価のアルキル基を表し、Qはスルホ基を表し、nは1以上の整数(例えば1~3)を表す。Rの炭素数が0の場合は、Qがシリカ粒子(SP)に直接結合していることを示す(この場合nは1である。)。Rは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
スルホ基を有するシリカ粒子は、シリカを含む粒子を、スルホ基を有する化合物で修飾することにより得ることができる。修飾方法としては、例えば、シリカを含む粒子の表面のヒドロキシル基の反応性を利用して、シリカを含む粒子と、スルホ基を有する化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
スルホ基を有するシリカ粒子の含有量に対する、スルホ基を有しないシリカ粒子の含有量の比は、タングステンの研磨速度を向上させる観点から、0.10以上、0.30以上、0.70以上又は1.40以上であってよい。スルホ基を有するシリカ粒子の含有量に対する、スルホ基を有しないシリカ粒子の含有量の比は、貯蔵液のシェルフライフを向上させる観点から、10以下、5以下又は1.55以下であってよい。これらの観点から、スルホ基を有するシリカ粒子の含有量に対する、スルホ基を有しないシリカ粒子の含有量の比は、0.10~10、0.30~5、0.70~1.55又は1.40~1.55であってよい。なお、上記「スルホ基を有するシリカ粒子の含有量」にはスルホ基の量が含まれる。
シリカ粒子の含有量は、研磨液の全質量を基準として、例えば、0.05質量%以上であり、研磨液のタングステン材料に対するより優れた研磨速度が得られる観点及び研磨速度比に優れる観点から、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは0.7質量%以上である。シリカ粒子の含有量は、シリカ粒子の凝集によるシェルフライフ低下の抑制をしやすくする観点及び研磨液のタングステン材料に対するより優れた研磨速度が得られやすくなる観点から、研磨液の全質量を基準として、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは7.0質量%以下であり、更に好ましくは5.0質量%以下である。これらの観点から、シリカ粒子の含有量は、例えば、研磨液の全質量を基準として、0.05~10質量%、0.3~10質量%、0.5~7.0質量%又は0.7~5.0質量%であってよい。上記「シリカ粒子の含有量」にはスルホ基の量が含まれる。
シリカ粒子の平均粒径は、研磨液のタングステン材料に対するより優れた研磨速度が得られる観点から、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは170nm以下であり、更に好ましくは150nm以下である。シリカ粒子の平均粒径は、120nm以下、100nm以下、90nm以下又は80nm以下であってもよい。シリカ粒子の平均粒径は、例えば、40nm以上であり、タングステン材料に対するより優れた研磨速度が得られる観点及び研磨速度比に優れる観点から、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは60nm以上であり、更に好ましくは70nm以上である。これらの観点から、シリカ粒子の平均粒径は、例えば、40~200nm、50~200nm、60~170nm又は70~150nmであってよい。
上記シリカ粒子の平均粒径は、遠心式の粒度分布計である日本ルフト社製の装置(製品名:DC24000)にて25℃で測定することができる。平均粒径の測定は貯蔵液および研磨液中のシリカ粒子を測定してもよく、貯蔵液および研磨液に配合する前のシリカ粒子を、研磨液の濃度と同程度に水で希釈してから測定してもよい。
シリカ粒子の表面電位は、本発明の効果が得られやすくなる観点から、例えば、0~-50mVである。
研磨液は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、シリカ粒子以外の砥粒を含んでいてもよい。シリカ粒子以外の砥粒の含有量は、砥粒の全質量を基準として、10質量%以下、5質量%以下又は1質量%以下であってよい。
(鉄イオン供給剤)
鉄イオン供給剤は、CMP用研磨液中に鉄イオンを供給する。鉄イオンは、好ましくは第二鉄イオンである。鉄イオン供給剤は、例えば、鉄の塩であり、研磨液中では、鉄イオンと、鉄イオン供給剤由来のアニオン成分とに解離した状態で存在してよい。すなわち、鉄イオン供給剤を含有する研磨液は、鉄イオンを含む。CMP用研磨液が鉄イオン供給剤を含有する場合、すなわち、CMP用研磨液が鉄イオンを含む場合、タングステン材料の研磨速度がより向上する傾向がある。なお、鉄イオン供給剤は、酸化剤として機能する場合があるが、鉄イオン供給剤及び酸化剤の両方に該当する化合物は、本明細書では、鉄イオン供給剤に該当するものとする。
鉄イオン供給剤は、無機塩であっても有機塩であってもよい。鉄イオンを含む無機塩としては、硝酸鉄、硫酸鉄、ほう化鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、リン酸鉄、フッ化鉄等が挙げられる。鉄イオンを含む有機塩としては、三ぎ酸鉄、二ぎ酸鉄、酢酸鉄、プロピオン酸鉄、シュウ酸鉄、マロン酸鉄、コハク酸鉄、リンゴ酸鉄、グルタル酸鉄、酒石酸鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄等が挙げられる。これらの無機塩及び有機塩は、アンモニウム、水等の配位子を含んでもよいし、水和物等であってもよい。鉄イオン供給剤は単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。鉄イオン供給剤は、研磨装置、基体への汚染が比較的少なく、安価で入手しやすい観点から、硝酸鉄及び硝酸鉄の水和物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
鉄イオン供給剤の含有量は、研磨液中の鉄イオンの含有量が下記範囲となるように調整してよい。鉄イオンの含有量は、タングステン材料の研磨速度をより向上させる観点から、研磨液の全質量を基準として、好ましくは0.0003質量%以上であり、より好ましくは0.0005質量%以上であり、更に好ましくは0.001質量%以上である。鉄イオンの含有量は、酸化剤等の分解及び変質の発生が起こりにくく、CMP用研磨液を室温(例えば25℃)で保管した後のタングステン材料に対する研磨速度が変化することをより抑制しやすい(すなわち、ポットライフにより優れる)観点から、研磨液の全質量を基準として、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、更に好ましくは0.01質量%以下である。これらの観点から、鉄イオンの含有量は、例えば、研磨液の全質量を基準として、0.0003~0.1質量%、0.0005~0.05質量%又は0.001~0.01質量%であってよい。
(有機酸)
有機酸は、下記式(2)で表される化合物である。
Figure 0007532962000002

[式(2)中、Rは炭素数が1以上の2価のアルキル基(アルキレン基)を表し、X、Y、Zはそれぞれ、水素、又は、水酸基、カルボキシ基、ホスホ基、スルホ基、ボロン基、硝酸基等の酸性基を表し、X、Y、Zのうち、少なくとも1つは水酸基以外の酸性基(例えば、カルボキシ基、ホスホ基、スルホ基、ボロン基又は硝酸基)である。
研磨液が有機酸を含むことで、研磨液に含まれる酸化剤が安定した状態で保たれやすくなり、タングステン材料に対する研磨速度の向上効果が安定的に奏される。特に、鉄イオンと酸化剤とを含む研磨液では、酸化剤が鉄イオンによって分解され、また、酸化剤の分解の際に他の添加剤(例えば防食剤)が変質することで、研磨液のポットライフが減少する傾向があるが、研磨液が有機酸を含むことにより、上記酸化剤の分解を抑制することができる。なお、有機酸は、pH調整剤として研磨液に含有されてもよい。
有機酸により上記効果が得られる理由は、定かではないが、有機酸が研磨液中で解離し、解離した有機酸が鉄イオンをキレートすることで鉄イオンによる酸化剤の分解を抑制することができると推察される。ここで、「解離」とは、研磨液中で有機酸が有する少なくとも1つの酸基(例えば、カルボキシ基(-COOH))からプロトン(H)が離れ、酸基がアニオン(例えば-COO)の状態で存在することを意味する。
有機酸の酸基としては、上記効果が奏されやすくなる観点から、カルボキシ基が好ましい。
有機酸は、酸化剤をより安定に保ちやすくなり、タングステン材料の研磨速度をより安定化することができる観点から、炭素-炭素不飽和結合を有しないことが好ましい。有機酸が炭素-炭素不飽和結合を有しないことで酸化剤の安定性が向上する原因は、明らかではないが、炭素-炭素不飽和結合部の反応性が比較的高いため、有機酸が炭素-炭素不飽和結合を有しないことで、研磨液中の酸化剤との反応による変質が起こらないことが一因と考えられる。
有機酸は、2価又は3価の有機酸であることが好ましい。ここで「2価又は3価」とは、有機酸が有する酸基の数を意味する。有機酸が2価又は3価であると、有機酸が有する複数の酸基(例えば、解離した2以上の酸基)によって鉄イオンがキレートされることとなり、酸化剤をより安定に保ちやすくなる傾向がある。
上記観点から、有機酸としては、炭素-炭素不飽和結合を有しない、2価又は3価の有機酸が好ましい。
好ましい有機酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、リンゴ酸等が挙げられる。これらの有機酸は一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらの有機酸のpH5における解離率は下記の通りである。
Figure 0007532962000003
研磨液中に含有される鉄イオン1原子に対する解離した有機酸の分子数の比は、鉄イオンを充分にキレートし、酸化剤の安定性を高める観点から、好ましくは2以上であり、より好ましくは4以上であり、更に好ましくは6以上である。上記解離した有機酸の分子数の比は、200以下であってよい。
有機酸の含有量は、研磨液の全質量を基準として、例えば、0.6質量%以下であり、貯蔵液中のシリカ粒子の凝集が抑制され、シェルフライフが更に優れたものとなりやすい観点から、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以下である。有機酸の含有量は、鉄イオンを充分にキレートし、酸化剤の安定性を高める観点から、研磨液の全質量を基準として、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.0005質量%以上であり、更に好ましくは0.01質量%以上である。これらの観点から、有機酸の含有量は、例えば、研磨液の全質量を基準として、0.0001~0.6質量%、0.0001~0.5質量%、0.0005~0.3質量%又は0.001~0.02質量%であってよい。
有機酸の含有量は、上述したように有機酸の鉄イオンを充分にキレートし、酸化剤の安定性を高める観点から、鉄イオン1原子に対する有機酸の分子数の比が上述した範囲となるように調整されることが好ましい。例えば、有機酸としてマロン酸を用い、鉄イオンの含有量を0.001質量%とし、研磨液のpHを5.0とする場合、マロン酸の配合量は好ましくは0.0057質量%(鉄イオン1原子に対して解離したマロン酸が2分子)以上である。なお、上記配合量は、マロン酸の分子量が104.06、解離率は65%、鉄イオンの原子量を55.85として、鉄イオンのモル量を鉄イオンの原子量と配合量から計算し、そのモル量、マロン酸の分子量と解離率、並びに、鉄イオン1原子に対するマロン酸の配合比率(解離したマロン酸が2分子)から計算して求めた。
(水性液状媒体)
水性液状媒体としては、特に制限はないが、脱イオン水、超純水等の水が好ましい。水性液状媒体の含有量は、他の構成成分の含有量を除いた研磨液の残部でよく、特に限定されない。
(酸化剤)
酸化剤は、タングステン材料の研磨速度の向上に寄与する。すなわち、研磨液が酸化剤を含有する場合、タングステン材料の研磨速度がより向上する傾向がある。なお酸化剤は貯蔵液には添加されなくてよい。すなわち、酸化剤は、貯蔵液を希釈する際に添加されてよい。
酸化剤としては、過酸化水素(H)、過ヨウ素酸カリウム、過硫酸アンモニウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化剤としては、添加後も比較的安定であり、ハロゲン化物等による汚染の懸念がない点で、過酸化水素が好ましく用いられる。
酸化剤の含有量は、研磨速度の更なる向上効果が得られ易い観点から、研磨液の全質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは2質量%以上である。酸化剤の含有量は、タングステン材料のエッチング速度を抑制しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは7.0質量%以下であり、更に好ましくは5.0質量%以下である。
(防食剤)
研磨液は、タングステン材料のエッチング速度を抑制する観点から、防食剤を更に含んでいてもよい。防食剤としては、一般的なアゾール系化合物、アミノ酸等を使用することができる。ただし、ポットライフが低下することを防ぐ観点から、チオール基及び炭素-炭素不飽和結合の一方又は両方を有しない、アゾール系化合物又はアミノ酸が好ましく、チオール基及び炭素-炭素不飽和結合を有しないアゾール系化合物又はアミノ酸がより好ましい。すなわち、本実施形態では、研磨液が、チオール基を有しないアゾール化合物、チオール基を有しないアミノ酸、炭素-炭素不飽和結合を有しないアゾール化合物、炭素-炭素不飽和結合を有しないアミノ酸、チオール基及び炭素-炭素不飽和結合を有しないアゾール化合物、並びに、チオール基及び炭素-炭素不飽和結合を有しないアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、チオール基及び炭素-炭素不飽和結合を有しないアゾール化合物、並びに、チオール基及び炭素-炭素不飽和結合を有しないアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。チオール基及び/又は炭素-炭素不飽和結合を有するアゾール系化合物や、チオール基及び/又は炭素-炭素不飽和結合を有するアミノ酸を用いた場合、エッチング速度が上昇してしまう傾向があり、また、ポットライフが低下する傾向がある。この原因は明らかではないが、研磨液中の酸化剤がチオール基及び/又は炭素-炭素不飽和結合部位と反応することで、酸化剤及び防食剤が変質してしまうことが原因の一つとして考えられる。
防食剤としては、グリシン、6-アミノヘキサン酸、1,2,4-トリアゾール、1H-テトラゾール、1,2,4-トリアゾール-3-カルボサミド、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、5-メチルテトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、1H-テトラゾール-1-酢酸、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、1H-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾールカルボン酸エチルエステル、1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸メチル及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、タングステン材料のエッチング速度を抑制しやすい観点から、1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、グリシン及び6-アミノヘキサン酸が好ましい。防食剤は単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
防食剤の含有量は、タングステン膜のエッチング速度を抑制する観点から、研磨液の全質量を基準として、好ましくは0.003質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、更に好ましくは0.01質量%以上であり、特に好ましくは0.02質量%以上である。防食剤の含有量は、タングステン材料の研磨速度の上昇効果が得られやすくなる観点から、研磨液の全質量を基準として、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以下である。これらの観点から、0.003~0.5質量%、0.005~0.3質量%、0.01質量%~0.3質量%又は0.02質量%~0.2質量%であってよい。
(pH調整剤)
pH調整剤としては、既知の有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基等を用いることができる。
有機酸としては、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、リンゴ酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン等を用いることができる。無機酸としては、硫酸、硝酸、リン酸、塩酸等を用いることができる。これらの有機酸と無機酸は二種以上を組み合わせて用いてよい。
有機塩基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、モノエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を用いることができる。無機塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。これらの有機塩基と無機塩基は二種以上を組み合わせてよい。
(その他の成分)
研磨液には、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、研磨液は、ポリアクリル酸等の陰イオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等のカチオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリアクリルアミド等のノニオン性界面活性剤などの調整剤を含んでいてもよい。
以上説明した研磨液は、CMPに用いられる研磨液として広く使用可能であるが、特にタングステン材料を研磨するためのCMP用研磨液に好適である。具体的には、例えば、絶縁材料からなる第1の部分と、当該第1の部分上に設けられた、タングステン材料からなる第2の部分とを備える基体(例えば基板)の、少なくとも第2の部分を研磨するために用いられる。研磨液は、第2の部分に加えて第1の部分を研磨するために用いられてもよい。
第1の部分は、例えば、絶縁材料を含む膜(絶縁膜)の一部又は全部であってよい。絶縁材料としては、例えば、シリコン系絶縁材料、有機ポリマ系絶縁材料等が挙げられる。シリコン系絶縁材料としては、酸化ケイ素(例えば、テトラエチルオルトケイ酸(TEOS)を用いて得られた二酸化ケイ素)、窒化ケイ素、テトラエトキシシラン、フルオロシリケートグラス、トリメチルシラン、ジメトキシジメチルシランを出発原料として得られるオルガノシリケートグラス、シリコンオキシナイトライド、水素化シルセスキオキサン、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド等が挙げられる。有機ポリマ系絶縁材料としては、全芳香族系低誘電率絶縁材料等が挙げられる。
第2の部分は、例えば、タングステン材料を含む膜(タングステン膜)の一部又は全部であってよい。タングステン材料としては、例えば、タングステン、窒化タングステン、タングステンシリサイド、タングステン合金が挙げられる。タングステン材料中のタングステンの含有量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。
基体は、第1の部分と第2の部分との間に、バリア材料からなる第3の部分を更に備えていてよい。研磨液は、第2の部分(更には第1の部分)に加えて第3の部分を研磨するために用いられてよい。第3の部分は、例えば、バリア材料を含む膜(バリア膜)の一部又は全部であってよい。バリア材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン等が挙げられる。
上記のような基体としては、ダマシン法による配線形成プロセスに適用される基板が挙げられる。換言すれば、上記実施形態のCMP用研磨液は、ダマシン法による配線形成プロセスに使用されるCMP用研磨液に好適である。
[貯蔵液]
CMP用研磨液は、例えば、上述したシリカ粒子を含む砥粒、鉄イオン供給剤、有機酸、酸化剤及び水性液状媒体を混合し、分散することにより調製することができる。得られたCMP用研磨液は、水性液状媒体の一部を除去して濃縮し、使用時に水等の水性液状媒体で2倍以上に希釈されて使用される貯蔵液として保管することができる。貯蔵液とする場合には、酸化剤は添加しなくてもよい。この場合、貯蔵液から研磨液を得る際に酸化剤を添加してよい。貯蔵液は、研磨の直前に液状媒体で希釈し、且つ、場合により酸化剤を添加してCMP用研磨液としてもよいし、基体を研磨する場合は、研磨定盤上に貯蔵液と水性液状媒体と場合により酸化剤とを供給し、研磨定盤上でCMP用研磨液を調製するようにしてもよい。
貯蔵液の希釈倍率としては、倍率が高いほど運搬・保管等に係るコストの抑制効果が高いため、2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましい。また、希釈倍率の上限としては、特に制限はないが、10倍以下が好ましく、7倍以下がより好ましく、5倍以下が更に好ましい。希釈倍率がこれらの上限値以下である場合、貯蔵液に含まれる砥粒や各成分が高くなり過ぎることを抑制し、保管中の貯蔵液の安定性を維持し易い傾向がある。なお、希釈倍率をdとするとき、貯蔵液中の砥粒及び各成分等の各含有率は、CMP用研磨液中の砥粒及び有機酸の各含有率のd倍である。
<研磨方法>
本実施形態の研磨方法は、上記実施形態の研磨液又は上記実施形態の貯蔵液を希釈することで得られる研磨液を用いて、被研磨材料(例えばタングステン材料等)をCMPによって除去する工程を備える。本実施形態の研磨方法では、例えば、被研磨材料を備える基体(基板等)を、研磨装置を用いて研磨する。研磨装置としては、例えば、研磨パッド(研磨布)が貼り付けられ、回転数が変更可能なモータ等が取り付けられた研磨定盤と、基体を保持するホルダー(ヘッド)とを備える、一般的な研磨装置を使用することができる。研磨パッドとしては、特に制限はないが、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等を使用することができる。
本実施形態の研磨方法は、例えば、被研磨材料を備える基体を用意する工程(用意工程)と、当該基体を研磨パッド上に配置する工程(配置工程)と、研磨液を用いて当該基体を研磨する工程(研磨工程)と、を備える。以下では、被研磨材料を備える基体として上述した上述した第1の部分と第2の部分と第3の部分とを備える基体を用いる態様を例に挙げて、図1を用いて、本実施形態の研磨方法の詳細を説明する。
まず、図1(a)に示すように、研磨前の基体として、表面に溝が形成された絶縁材料からなる第1の部分1と、第1の部分1上に設けられた第2の部分2と、第1の部分1と第2の部分2との間に設けられた第3の部分3とを備える基体(基板)100を用意する(用意工程)。第2の部分2は、タングステン材料からなり、第1の部分と第3の部分によって形成された凹部を埋めるように堆積されている。第3の部分3は、バリア材料からなり、第1の部分1の表面の凹凸に追従するように形成されている。
次に、図1(b)に示すように、第2の部分2における第1の部分1とは反対側の表面と研磨パッド10とが対向するように、基体100を研磨パッド10上に配置する(配置工程)。
次に、基体100を研磨パッド10に押圧した状態で、研磨パッド10と基体100との間に上記実施形態のCMP用研磨液を供給すると共に、研磨パッド10と基体100とを相対的に動かすことにより少なくとも第2の部分を研磨する(研磨工程)。この際、第1の部分1が露出するまで第2の部分2及び第3の部分3を除去してもよく、第1の部分1を余分に研磨するオーバー研磨を行ってもよい。このようなオーバー研磨により、研磨後の被研磨面の平坦性を高めることができる。以上の操作により、図1(c)に示す基体200が得られる。
研磨条件は、特に制限はないが、基体が飛び出さないように、研磨定盤の回転数を200rpm以下にすることが好ましい。タングステン材料を備える基体を用いる場合、研磨圧力は好ましくは3~100kPaである。研磨速度の研磨面内での均一性が良好となり、良好な平坦性が得られる観点から、研磨圧力は5~50kPaであることがより好ましい。研磨している間、研磨パッドにはCMP用研磨液をポンプ等で連続的に供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。研磨パッドの表面状態を常に同一にしてCMPを行うために、研磨の前及び/又は研磨中に研磨布のコンディショニング工程を実施することが好ましい。例えば、ダイヤモンド粒子のついたドレッサを用いて少なくとも水を含む液で研磨パッドのコンディショニングを行う。続いて、本実施形態の研磨方法を実施し、さらに、基板洗浄工程を実施することが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(シリカ粒子の用意)
以下の実施例及び比較例では、シリカ粒子として、表2に示す平均粒径を有するコロイダルシリカ(シリカ粒子A、B、C、D、E及びF)を用いた。なお、表2に示すシリカ粒子の平均粒径は、遠心式の粒度分布計である日本ルフト社製の装置(製品名:DC24000)を用いて、25℃で測定した。測定には、シリカ粒子を、砥粒濃度(シリカ粒子濃度)が0.5~3.0質量%となるように純水で希釈して得た測定サンプルを用いた。表2に示すように、シリカ粒子A、B、C、D、E及びFのうち、シリカ粒子A及びBがスルホ基を有するシリカ粒子である。
Figure 0007532962000004
(実施例1)
脱イオン水に、マロン酸(0.096質量%)、硝酸鉄九水和物(0.024質量%)、シリカ粒子1としてシリカ粒子A(1.2質量%)及びシリカ粒子2としてシリカ粒子D(1.8質量%)を配合し、pHを適量のアンモニア水で調整してpHが4.9の貯蔵液1を得た。なお、( )内に示す数値(単位:質量%)は、いずれも貯蔵液1の全質量を基準とした、貯蔵液中の各成分の含有量である。
次いで、貯蔵液1を33.3質量部と、脱イオン水を63.7質量部と、過酸化水素を3.0質量部とを混合してCMP用研磨液1を得た。すなわち貯蔵液1を3倍に希釈した。CMP用研磨液1中における各成分の含有量は、シリカ粒子Aの含有量が0.4質量%、シリカ粒子Dの含有量が0.6質量%、マロン酸の含有量が0.032質量%、硝酸鉄九水和物の含有量が0.008質量%、過酸化水素の含有量が3.0質量%であった。またCMP用研磨液のpHは5.0であった。
(実施例2~3)
シリカ粒子として表3に示すシリカ粒子を用いたこと、並びに、研磨液中のシリカ粒子の含有量が表3に示す値となるように、シリカ粒子の配合量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、3倍に濃縮された貯蔵液2~3及びCMP用研磨液2~3を作製した。
(実施例4)
シリカ粒子A、シリカ粒子D、マロン酸及び硝酸鉄九水和物に加えて、防食剤として、グリシンを配合したこと以外は、実施例1と同様にして、3倍に濃縮された貯蔵液4及びCMP用研磨液4を作製した。防食剤の配合量は、研磨液中での含有量が0.03質量%となるように調整した。
(実施例5)
防食剤としてグリシンに代えて1,2,4-トリアゾールを用いたこと、及び、防食剤の配合量を変更したこと以外は、実施例4と同様にして、3倍に濃縮された貯蔵液5及びCMP用研磨液5を作製した。防食剤の配合量は、研磨液中での含有量が0.024質量%となるように調整した。
(実施例6~8及び比較例1~6)
シリカ粒子として、表4及び表5に示すシリカ粒子を用いたこと、及び、研磨液中のシリカ粒子の含有量が表4及び表5に示す値となるように、シリカ粒子の配合量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、3倍に濃縮された貯蔵液6~8及び10~15と、CMP用研磨液6~8及び10~15を作製した。
(実施例9)
マロン酸の配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、3倍に濃縮された貯蔵液9及びCMP用研磨液9を作製した。マロン酸の配合量は。研磨液中での含有量が0.6質量%となるように調整した。
<評価>
(pH測定)
貯蔵液1~15及びCMP用研磨液1~15のpHを下記の条件で測定した。結果を表3~5に示す。
[測定条件]
測定温度:25℃
測定装置:株式会社堀場製作所の製品名:Model(F-51)
測定方法:フタル酸塩pH標準液(pH:4.01)と、中性リン酸塩pH標準液(pH:6.86)と、ホウ酸塩pH標準液(pH:9.18)とをpH標準液として用い、pHメーターを3点校正した後、pHメーターの電極を貯蔵液及び研磨液に入れて、2min以上経過して安定した後のpHを上記測定装置により測定した。
(粒度分布測定)
CMP用研磨液1~15中のシリカ粒子の平均粒径を、遠心式の粒度分布計である日本ルフト社製の装置(製品名:DC24000)を用いて、25℃で測定した。結果を表3~5に示す。
(表面電位測定)
CMP用研磨液1~15中のシリカ粒子の表面電位は、BECKMAN COULTER社製のDelsa Nano Cを用い、25℃で測定した。なお表面電位の測定の際は、CMP用研磨液1~15には過酸化水素は添加せず、過酸化水素分を水に置き換えて測定した。結果を表3~5に示す。
(有機酸の解離率の測定)
以下の式に基づき研磨液中での有機酸の解離率を求め、鉄イオンの1原子に対する解離した有機酸の分子数の比を算出した。
有機酸の乖離率(%)=(100/0.0112)×A
[A=0.0112×B×10^(-K)/(B^2+B×10^(-K)+10^(-K)×10^(-K))]
[B=10^(-pH)]
[K,K=有機酸の解離定数]
(シェルフライフ評価)
貯蔵液1~15を100mL、樹脂製容器に入れ、40℃で1ヶ月間保管した。保管前後のシリカ粒子の平均粒径を上述の粒度分布測定によって測定し、平均粒径の上昇率を測定した。結果を表3~5に示す。なお、平均粒径の上昇率は10%未満であることが好ましい。
(研磨速度評価)
CMP用研磨液1~15を用いて、タングステン材料及び絶縁材料の研磨速度を測定した。研磨速度の測定は、以下の評価用基板を以下の研磨条件で研磨することにより行った。
[研磨速度評価用基板]
タングステン膜を有する基板:シリコン基板上に厚さ700nmのタングステンが製膜された、12インチタングステン膜基板
絶縁膜を有する基板:シリコン基板上に厚さ1000nmのTEOS(テトラエトキシシラン)が製膜された、12インチTEOS膜基板
[研磨条件]
研磨パッド:IC1010(ニッタ・ハース株式会社)
研磨圧力:20.7kPa
定盤回転数:93rpm
ヘッド回転数:87rpm
CMP用研磨液供給量:300ml
タングステン膜の研磨時間:60秒
絶縁膜(TEOS膜)の研磨時間:60秒
タングステン材料の研磨速度は、タングステン膜のCMP前後での膜厚差を抵抗測定器VR-120/08S(日立国際電気社製)を用いて電気抵抗値から換算して求めた。結果を表3~5に示す。なお、同一条件のCMPにおいて、タングステン材料の研磨速度は350nm/min以上であることが好ましい。
絶縁材料(TEOS)の研磨速度は、絶縁膜(TEOS膜)のCMP前後での膜厚差を、光学式膜厚計F50(フィルメトリクス社製)を用いて測定した。結果を表3~5に示す。なお、同一条件のCMPにおいて、絶縁材料の研磨速度は10nm/min以下であることが好ましい。また、タングステン材料の研磨速度と絶縁材料の研磨速度の比r(タングステン材料の研磨速度/絶縁材料の研磨速度)は30以上であることが好ましい。
(エッチング速度評価)
CMP用研磨液1~15を100mL、樹脂製容器に入れ、60℃で15分間加温した。そして、上述の12インチタングステン膜基板を2cm角に切り出し、60℃に加温したCMP用研磨液に3分間浸漬した。その後、タングステン膜の浸漬前後での膜厚差を抵抗測定器RT-80(ナプソン社製)を用いて電気抵抗値から換算して求めた。結果を表3~5に示す。
(ポットライフ評価)
ポットライフの指標として、CMP用研磨液を室温で1週間保管した後のタングステン材料の研磨速度の維持率を評価した。タングステン材料の研磨速度の維持率は、CMP用研磨液を調製した直後(12時間以内)に測定したタングステン材料の研磨速度(R1)と、室温(25℃)で1週間保管したCMP用研磨液で同様に測定したタングステン材料の研磨速度(R2)から、下記式により求めた。結果を表3に示す。なお、タングステン材料の研磨速度の維持率は、95%以上であることが好ましい。
タングステン材料の研磨速度の維持率(%)=100×(R1/R2)
Figure 0007532962000005

※表中、「シリカ粒子比」はスルホ基を有するシリカ粒子に対するスルホ基を有しないシリカ粒子の比を示す。
Figure 0007532962000006

※表中、「シリカ粒子比」はスルホ基を有するシリカ粒子に対するスルホ基を有しないシリカ粒子の比を示す。
Figure 0007532962000007
1…第1の部分、2…第2の部分、3…第3の部分、10…研磨パッド、100,200…基板(基体)。

Claims (9)

  1. 砥粒と、鉄イオン供給剤と、有機酸と、酸化剤と、水性液状媒体とを含有し、
    前記砥粒が、スルホ基を有するシリカ粒子と、スルホ基を有しないシリカ粒子と、を含み、
    前記スルホ基を有するシリカ粒子の含有量に対する、前記スルホ基を有しないシリカ粒子の含有量の比が1.40~1.55である、CMP用研磨液。
  2. 鉄イオン1原子に対する解離した前記有機酸の分子数の比が2以上である、請求項1に記載のCMP用研磨液。
  3. 前記有機酸の含有量は、研磨液の全質量を基準として、0.0001~0.6質量%である、請求項1又は2に記載のCMP用研磨液。
  4. 防食剤を更に含有する、請求項1~のいずれか一項に記載のCMP用研磨液。
  5. 前記防食剤が、チオール基及び炭素-炭素不飽和結合の一方又は両方を有しない、アゾール化合物及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項に記載のCMP用研磨液。
  6. 前記防食剤が、1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、グリシン及び6-アミノヘキサン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項4又は5に記載のCMP用研磨液。
  7. 絶縁材料からなる第1の部分と、当該第1の部分上に設けられた、タングステン材料からなる第2の部分とを備える基体の、少なくとも前記第2の部分を研磨するために用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載のCMP用研磨液。
  8. 砥粒と、鉄イオン供給剤と、有機酸と、水性液状媒体とを含有し、
    水性液状媒体で2倍以上に希釈され、酸化剤を添加されることにより請求項1~のいずれか一項に記載の研磨液を得ることができる、貯蔵液。
  9. 絶縁材料からなる第1の部分と、当該第1の部分上に設けられた、タングステン材料からなる第2の部分とを備える基体を用意する工程と、
    前記第2の部分における前記第1の部分とは反対側の表面と研磨パッドとが対向するように、前記基体を前記研磨パッド上に配置する工程と、
    前記研磨パッドと前記基体との間に、請求項1~のいずれか一項に記載の研磨液、又は、請求項に記載の貯蔵液を水性液状媒体で2倍以上に希釈し、酸化剤を添加することで得られる研磨液を供給すると共に、前記研磨パッドと前記基体とを相対的に動かすことにより少なくとも前記第2の部分を研磨する工程と、を有する、基体の研磨方法。
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