JP7530226B2 - 医療用磁気誘導装置 - Google Patents

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Description

本発明は、患部近傍に注入された磁性複合体を磁場によって患部に誘導する医療用磁気誘導装置に関する。
従来、離断性骨軟骨炎や変形性膝関節症などの治療方法として、細胞に磁性粒子を複合した磁性複合体を患部近傍の関節液に注入(注射)し、体外に設置した磁気誘導装置から患部近傍に磁場を印加することによって、その磁性複合体を軟骨欠損部(患部)に誘導する方法が提案されている。この治療に用いられる医療用磁気誘導装置として、ソレノイドを用いて磁性複合体を誘導するもの(例えば、特許文献1及び2を参照。)が知られている。
特開2007-151605号公報 特開2020-039557号公報
しかし、ソレノイドで大きな磁場を発生するためには、大きな電力が必要である。また、それによってソレノイド自身の発熱量が大きくなる欠点もある。発熱によって、ソレノイドの温度が上昇すると、その電気抵抗が上昇するため、所定の磁場を維持するためにさらに大きな電力が必要になるという悪循環を招く。医療用磁気誘導装置の消費電力が手術室の電源容量を上回ると、ソレノイドの磁場が低下し、磁性複合体を患部に誘導することができなくなるおそれもある。一方で、ソレノイドの温度上昇を抑えるためにチラーを用いると、排気や排熱や騒音等、別の問題が生じるおそれがある。
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、細胞と磁性粒子とを複合した磁性複合体を患部まで誘導しやすいだけでなく、発熱を抑えることができ、大掛かりな冷却設備等が不要で、消費電力を抑えることもできる医療用磁気誘導装置を提供するものである。
上記課題は、
患部近傍に注入された磁性複合体をソレノイドが発生する磁場によって患部に誘導する医療用磁気誘導装置であって、
ソレノイドに印加する電圧又は電流をパルス制御するパルス制御手段を備え、
ソレノイドが発生する磁場が最大値Hをとる第一状態と所定値Hをとる第二状態とが周期Tで繰り返されるようにした
ことを特徴とする医療用磁気誘導装置
を提供することによって解決される。
ここで、「最大値H」は、磁性複合体を患部に誘導することができるように設定された磁場の大きさであり、「所定値H」は、0以上で最大値Hよりも小さい所定の値となるように設定された磁場の大きさである。
本発明の医療用磁気誘導装置では、ソレノイドを用いて磁場を発生することで、ソレノイドから離れた位置でも大きな磁場を発生させることができ、磁性複合体を患部まで誘導しやすいにもかかわらず、ソレノイドの発熱を抑えることも可能である。すなわち、ソレノイドの発熱量(「Q」とする。)は、ソレノイドの電気抵抗値を「R」、ソレノイドに印加した電圧を「V」、ソレノイドを流れる電流を「I」、ソレノイドに電圧を印加した時間を「t」とすると、Q=V・I・t=R・I・tとなる。ソレノイドに印加する電圧V(又は電流I)をパルス制御して、上記の電圧V(又は電流I)を大きな値で連続的に出力させないようにすることで、ソレノイドの消費電力を抑えることが可能になる。それによって、ソレノイドの発熱量を抑えることも可能になる。したがって、ソレノイドを冷却するための大掛かりな設備等を導入する必要もない。
本発明の医療用磁気誘導装置においては、ソレノイドを三次元的に移動させることが可能な状態で支持するソレノイド支持手段を設けることが好ましい。これにより、患者に身体を無理に動かしてもらうことなく、ソレノイドを、患部の位置や向きに応じた適切な位置や向きで設置することが可能になる。このため、患者の負担を軽減しながらも、磁性複合体を患部にさらに誘導しやすくすることができる。
本発明の医療用磁気誘導装置において、ソレノイドが発生する磁場のデューティ比(パルス制御の周期Tに対する同一周期における第一状態の時間幅(「TP1」とする。)の比TP1/T)は、1よりも小さければ特に限定されない。しかし、デューティ比TP1/Tが1に近いと、奏される発熱抑制効果や省電力効果が限定的になる。このため、デューティ比TP1/Tは、0.5以下とすることが好ましい。ただし、デューティ比TP1/Tを小さくしすぎると、磁性複合体を患部に誘導しにくくなるおそれがある。このため、デューティ比TP1/Tは、0.1以上とすることが好ましい。
本発明の医療用磁気誘導装置においては、誘導開始の直後から上記のパルス制御を行ってもよい。しかし、誘導開始から所定時間Tが経過するまでソレノイドに定電圧又は定電流を印加した後、パルス制御手段によるパルス制御が実行されるようにすることが好ましい。これにより、磁性複合体を患部まで効率的に誘導することが可能になる。すなわち、患部近傍に注入された磁性複合体の大部分をその注入直後に患部まで一気に誘導することが可能になる。以下においては、説明の便宜上、誘導開始から所定時間Tが経過するまでのソレノイドに定電圧又は定電流を印加する制御のことを、「初期制御」と呼ぶことがある。
本発明の医療用磁気誘導装置において、上記の初期制御を行う所定時間Tは、患部等に応じて適宜決定される。しかし、所定時間Tが短いと、磁性複合体を患部まで効率的に誘導できなくなるおそれがある。このため、所定時間Tは、20秒以上確保することが好ましい。ただし、所定時間Tを長くしすぎると、発熱や消費電力を抑えることが難しくなる。このため、所定時間Tは、200秒以下に抑えることが好ましい。所定時間Tは、通常、パルス制御の周期Tよりも長く設定される(パルス制御の周期Tが所定時間Tよりも短く設定される)。
以上のように、本発明によって、細胞と磁性粒子とを複合した磁性複合体を患部まで誘導しやすいだけでなく、発熱を抑えることができ、大掛かりな冷却設備等が不要で、消費電力を抑えることもできる医療用磁気誘導装置を提供することが可能になる。
本発明の医療用磁気誘導装置を用いて膝関節を治療している様子を示した図である。 本発明の医療用磁気誘導装置を示した斜視図である。 本発明の医療用磁気誘導装置におけるパルス制御の一例を示した図である。 本発明の医療用磁気誘導装置におけるパルス制御の他例を示した図である。 実施例1の実験条件を説明する図である。 比較例1の実験条件を説明する図である。 実施例1及び比較例1の実験結果を示した表である。
本発明の医療用磁気誘導装置の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の医療用磁気誘導装置は、離断性骨軟骨炎や変形性膝関節症などによって欠損した患部を治療する際に好適に用いることができる。すなわち、離断性骨軟骨炎や変形性膝関節症などの治療方法としては、既に述べたように、
[1]患者の体内から採取した骨髄間葉系細胞に磁性粒子を複合した磁性複合体を患部近傍の関節液に注入(注射)する。
[2]患者の体外から患部近傍に磁場を印加し、磁性複合体を患部に誘導して集積させることで、患部の軟骨及び骨を再生する。
という手順を経る方法が知られている。本発明の医療用磁気誘導装置は、同方法における上記2の手順において、磁性複合体を患部に誘導する際に好適に用いることができるものである。
図1は、本発明の医療用磁気誘導装置10を用いて膝関節21を治療している様子を示した図である。図2は、本発明の医療用磁気誘導装置10を示した斜視図である。図1に示した例では、膝関節21における大腿骨22側の軟骨欠損部α(患部)に磁性複合体βを誘導している様子を示している。本発明の医療用磁気誘導装置10は、ソレノイド11を備えている。図1におけるソレノイド11は、その中心線を通る断面で示している。図1に示すように、膝関節21における大腿骨22と脛骨23との間には、関節腔と呼ばれる関節液21aで満たされた箇所がある。本発明の医療用磁気誘導装置10による治療を行うに先立って、ソレノイド11に電圧(又は電流)を印加して、ソレノイド11の周辺に磁場を発生させ、その磁場によって、関節液21a中に注入された磁性複合体β(骨髄間葉系細胞に磁性粒子を複合したもの)を患部αに誘導するようになっている。
本発明の医療用磁気誘導装置10は、ソレノイド11を用いることで、ソレノイドから離れた位置でも強い磁場を発生させることができるため、磁性複合体βを患部αに誘導しやすくなる。また、ソレノイド11は、電圧(電流)を印加すると、その周囲に磁場を発生する一方で、電圧(電流)の印加を停止すると、磁場を消失させる。このため、医療用磁気誘導装置10を使用しないときには、それ自身が磁場を発生しないようにすることができる。したがって、医療用磁気誘導装置10の周辺機器に悪影響を及ぼさないようにできる。具体的には、医療用磁気誘導装置10の周辺機器への磁気障害防止や、周辺機器が医療用磁気誘導装置10に引き寄せられることがない。ここで「医療用磁気誘導装置10を使用しないとき」とは、保管時、移動時、又は手術前の待機状態時などをいう。一方、ソレノイド11が発生する磁場の強さは、それに印加する電圧(電流)を変化させることで、調節することができる。このため、磁性複合体を構成する磁性粒子や、患部αの場所等に応じて、磁場の強さを調節することも可能である。患部αの近傍に効率的に磁場を印加できるように、ソレノイド11は、患部αの近傍に配される。図1に示した例では、環状を為すソレノイド11の中に膝を通すことで、患部αがソレノイド11の近傍に位置するようにしている。
医療用磁気誘導装置10は、ソレノイド11を動かすことができないものであってもよいが、ソレノイド11の位置及び向きを変更できるものとすることが好ましい。これにより、患部αの位置や患者20の体格等に応じた適切な位置及び向きでソレノイド11を設置することが可能になる。このため、患者20に無理な体勢を強いることなく、磁性複合体βを患部αに誘導しやすくすることができる。本実施形態の医療用磁気誘導装置10は、図2に示すソレノイド支持手段12にソレノイド11を支持している。ソレノイド支持手段12は、台座部12aと、台座部12aの下面に設けられた車輪12bと、台座部12aの上面に立設された支柱部12cと、支柱部12cの上部から横方向(図2中のx軸方向)に突き出して設けられた横軸部12dとで構成されている。ソレノイド11は、横軸部12dの先端に取り付けられている。
このソレノイド支持手段12において、車輪12bは、台座部12aに対して首振り可能に設けられている。このため、医療用磁気誘導装置10を、水平面(図2中のx-z平面)に平行な任意の方向に移動させることができる。また、横軸部12dは、支柱部12cに対して上下方向(図2中のy軸方向)に移動(平行移動)させることが可能となっている。このため、ソレノイド11を上下方向(y軸方向)に移動(平行移動)させることができる。さらに、ソレノイド11は、横軸部12dを中心として回転可能な状態で取り付けられている。このため、ソレノイド11の向きを横軸部12d回りに変化させることが可能となっている。このように、ソレノイド支持手段12として、ソレノイド11を三次元的に移動させることが可能な状態で支持するものを採用することによって、医療用磁気誘導装置10を使い勝手のよいものとすることができる。
ところで、強い磁場を発生するために、ソレノイド11に大きな電圧(電流)を印加すると、ソレノイド11の発熱量が大きくなってしまう。また、ソレノイド11の消費電力も大きくなる。この点、本発明の医療用磁気誘導装置10は、ソレノイド11に印加する電圧(電流)をパルス制御することによって、ソレノイド11に大きな電圧(電流)が連続して印加されないようにすることで、ソレノイド11の発熱及び消費電力を抑えている。図3は、本発明の医療用磁気誘導装置10におけるパルス制御の一例を示した図である。図3のグラフにおいて、横軸は時間を、左側の縦軸はソレノイド11に印加する電圧を、右側の縦軸はソレノイド11が発生する磁場をそれぞれ表わしている。ソレノイド11には、自己インダクタンスがあるため、それに印加する電圧や、それが発生する磁場は、図3に示すような綺麗な矩形波にはならず、電圧の波形と磁場の波形が綺麗には重ならないところ、図3では、ソレノイド11の自己インダクタンスを無視した理想的な波形で描いている。
図3を示すように、ソレノイド11に電圧Vを印加する第一状態と、電圧V(ただし、Vは、0以上、V未満とする。)を印加する第二状態と、を繰り返すパルス制御を行うことによって、ソレノイド11に電圧Vを連続的に印加した場合と比較して、ソレノイド11の消費電力を抑えることで、ソレノイド11の発熱を抑えることが可能になる。ソレノイド11が発生する磁場は、第一状態においては、最大値Hをとり、第二状態においては、所定値Hをとる。このようなパルス制御を行うと、磁場が弱くなる第二状態が繰り返し発現するため、磁性複合体βを誘導できなくなるのではないかとの懸念が生じ得る。しかし、後述する実施例1についての実験結果から、パルス制御を行っても、磁性複合体βを十分に誘導することができることを確認した。
とは言え、磁場が最大値Hになる第一状態の時間幅TP1(図3)を狭くしすぎると、磁性複合体βを効率的に誘導できなくなるおそれがある。このため、パルス制御の周期T(図3)に対する第一状態の時間幅TP1の比であるデューティ比TP1/Tは、ある程度大きく確保することが好ましい。デューティ比TP1/Tは、0.1以上とすることが好ましく、0.15以上とすることがより好ましく、0.2以上とすることがさらに好ましい。ただし、デューティ比TP1/Tを大きくしすぎる(1に近づけすぎる)と、ソレノイド11の発熱や消費電力を抑えにくくなる。このため、デューティ比TP1/Tは、0.9以下とすることが好ましく、0.8以下とすることがより好ましく、0.7以下とすることがさらに好ましい。
パルス制御の周期T(図3)は、特に限定されない。しかし、パルス制御の周期Tを短くしすぎると、電子機器を誤作動させる電磁ノイズが生じやすくなるおそれがある。このため、パルス制御の周期Tは、ある程度長く設定することが好ましい。パルス制御の周期Tは、0.1秒以上とすることが好ましく、0.5秒以上とすることがより好ましい。ただし、パルス制御の周期Tを長くしすぎると、磁性複合体βを誘導するためには、第一状態の時間幅TP1を長く確保する(第二状態の時間幅TP2を短く抑える)必要が出てくる。このため、デューティ比TP1/Tが高くなって、ソレノイド11の発熱量や消費電力が大きくなるおそれがある。したがって、パルス制御の周期Tは、10秒以下とすることが好ましく、5秒以下とすることがより好ましい。パルス制御の周期Tは、2秒前後(1~3秒)とすると好適である。
第二状態においてソレノイド11に印加する電圧V(図3)は、第一状態においてソレノイド11に印加する電圧V(図3)よりも低ければ、特に限定されない。電圧Vは、ゼロとすることもできる。しかし、電圧Vを低くしすぎると、第二状態の間に磁性複合体βが分散するようになるおそれがある。このため、電圧Vは、ある程度高い値に設定することが好ましい。具体的には、電圧Vに対する電圧Vの比V/Vを0.1以上とすることが好ましく、0.2以上とすることがより好ましい。しかし、その一方で、電圧Vを電圧Vに近づけすぎると、発熱や消費電力の抑制効果が奏されにくくなる。このため、電圧Vは、電圧Vよりもある程度低く設定することが好ましい。具体的には、電圧Vに対する電圧Vの比V/Vを0.9以下とすることが好ましく、0.8以下とすることがより好ましい。
ところで、図3に示した例では、磁性複合体βの誘導開始(t=0)から、パルス制御を開始している。しかし、図4に示すように、磁性複合体βの誘導開始(t=0)から所定時間Tが経過するまでの間においては、ソレノイド11に定電圧(又は定電流)を印加する初期制御を行うことも好ましい。図4は、本発明の医療用磁気誘導装置10におけるパルス制御の他例を示した図である。これにより、磁性複合体βの誘導開始の直後に、磁性複合体βの大部分を患部αまで一気に誘導することが可能になる。このため、初期制御に続くパルス制御では、残りの磁性複合体βの患部αへの誘導と、既に患部αで集積している磁性複合体βの維持だけを行えば済むようになり、磁性複合体βの誘導をさらに効率的に行うことが可能になる。したがって、パルス制御を行う時間を短縮することもできる。図4に示した例では、初期制御でソレノイド11に印加する電圧が、パルス制御における第一状態でソレノイド11に印加する電圧Vと等しくなっているところ、初期制御の電圧は、第一状態の電圧Vと異ならせてもよい。
初期制御を行う時間T(図4)は、通常、パルス制御の周期T(図4)よりも長く設定される。初期制御を行う時間Tがパルス制御の周期Tよりも短いと、初期制御がパルス制御と大差なくなり、初期制御を設ける意義が低下するからである。初期制御を行う時間Tは、20秒(周期Tの10倍)以上とすることが好ましく、30秒(周期Tの15倍)以上とすることがより好ましい。ただし、初期制御を行う時間Tを長くしすぎると、初期制御を行っている際にソレノイド11の温度が高くなり、ソレノイド11の発熱量が大きくなるおそれがある。このため、初期制御を行う時間Tは、200秒(周期Tの100倍)以下とすることが好ましく、100秒(周期Tの50倍)以下とすることがより好ましい。
以上のように、本発明の医療用磁気誘導装置10では、ソレノイド11に印加する電圧(又は電流)をパルス制御することによって、ソレノイド11の発熱及び消費電力を抑えるものとなっている。このパルス制御は、パルス制御手段(図示省略)によって実行される。パルス制御手段としては、パルス発振回路が典型的であり、通常、医療用磁気誘導装置10に搭載されたアナログ回路やデジタル回路等によって実現される。パルス制御手段は、パルスを変調制御(PWM制御やPAM制御等)できるものを用いることが好ましい。これにより、上記の周期Tや時間幅TP1,TP2や電圧V,V等のパルス制御に関するパラメータを調節することが可能となる。
本出願人は、本発明の医療用磁気誘導装置の有効性を確認するために、以下の実験を行った。この実験は、
[1] オイルに砂鉄を混ぜた試料を容器に充填する。
[2] 容器をソレノイドの近傍に配置する。
[3] 試料中の砂鉄の初期状態を観察するとともに、ソレノイドの初期温度を測定する。
[4] ソレノイドに電圧を印加して磁場を発生させる。
[5] ソレノイドに電圧を印加してから5分経過後の試料中の砂鉄の状態を観察するとともに、ソレノイドの温度を測定し、発熱量を算出する。
という手順で行った。
上記[1]の手順で用意する試料の成分のうち、オイルは、関節液に見立てたものであり、砂鉄は、磁性複合体に見立てたものである。試料は、よくかき混ぜ、砂鉄(磁性複合体)がオイル(関節液)中に十分に分散した状態とする。上記[5]の手順の観察において、砂鉄(磁性複合体)がソレノイド側に偏在している様子を見ることができれば、ソレノイドが発生する磁場によって、砂鉄(磁性複合体)がオイル(関節液)中を誘導されると判断することができる。
また、上記[2]の手順では、図5(a)に示すように、容器の中心Qが、ソレノイドの表面からz軸方向(ソレノイドの中心線方向)に20mm離れる位置に、試料を入れた容器を配置した。さらに、上記[4]の手順では、図5(b)に示すように、ソレノイドの印加電圧が連続パルス状に変化するように、ソレノイドをパルス制御した。第一状態の時間幅Tは、1.0秒、第二状態の時間幅Tは、1.0秒とした。第一状態で印加する電圧Vは、100V、第二状態で印加する電圧Vは、75Vとした。上記[3]及び[4]の手順におけるソレノイドの温度の測定は、図5(a)における点Pで行った。以下、図5に示す条件で行う実験を「実施例1」と表記する。
さらに、本発明(実施例1)の有効性を客観的に評価することができるように、ソレノイドをパルス制御しない場合についても同様の実験を行った。具体的には、図6に示す条件で実施例1の比較となる実験を行った。以下、図6に示す条件で行う実験を「比較例1」と表記する。比較例1では、図6(a)に示すように、実施例1と同様の位置に試料を入れた容器を配置した。また、ソレノイドに印加する電圧は、図6(b)に示すように、100Vで一定とした。
図7は、実施例1及び比較例1の実験結果を示した表である。図7の表における「砂鉄の状態」の欄を見ると、比較例1及び実施例1のいずれにおいても、磁場の発生前(0分)では、容器内の全体が濃く濁った状態となっており、オイル(関節液)中を砂鉄(磁性複合体)が十分に分散した状態であったものの、磁場の発生開始から5分経過後においては、濃い部分(砂鉄が多く存在する部分)が容器の左側部分(ソレノイドがあった側)に偏在している様子が見て取れる。このことから、実施例1でも、比較例1と同程度に砂鉄(磁性複合体)を誘導できることが分かった。
また、図7の表における「ソレノイド温度」及び「温度上昇」の欄を見ると、比較例1では、磁場発生前には23.7℃であった温度が、磁場発生から5分経過後には78.0℃に達しており、その温度上昇が54.3℃と大きくなっているのに対し、実施例1では、磁場発生前には23.2℃であった温度が、磁場発生から5分経過後でも68.3℃までしか達しておらず、その温度上昇が、45.1℃に抑えられていることが分かる。ソレノイドの発熱量に換算すると実施例1では、比較例1の約83%に抑えられている。このことから、実施例1は、ソレノイドの発熱を抑えることができるものであることが分かった。
以上の実験結果から、ソレノイドのパルス制御が、ソレノイドの発熱を抑えるのに有効であること、及び、磁性複合体の誘導作用を大きく低下させないことが確認できた。したがって、本発明の医療用磁気誘導装置の有用性が確認できた。
10 医療用磁気誘導装置
11 ソレノイド
12 ソレノイド支持手段
12a 台座部
12b 車輪
12c 支柱部
12d 横軸部
20 患者
21 膝関節
21a 関節液
22 大腿骨
23 脛骨
α 軟骨欠損部(患部)
β 磁性複合体

Claims (5)

  1. 患部近傍に注入された磁性複合体をソレノイドが発生する磁場によって患部に誘導する医療用磁気誘導装置であって、
    ソレノイドに印加する電圧又は電流をパルス制御するパルス制御手段を備え、
    ソレノイドに電圧V が印加されて同ソレノイドが発生する磁場が最大値Hをとる第一状態と、ソレノイドに電圧V が印加されて同ソレノイドが発生する磁場が最大値H よりも小さい所定値Hをとる第二状態とが、0.5~5秒の周期Tで繰り返されるようにするとともに、
    ソレノイドが発生する磁場のデューティ比が、0.2~0.7に設定され、
    電圧V に対する電圧V の比V /V が、0.2~0.8に設定された
    ことを特徴とする医療用磁気誘導装置。
  2. ソレノイドを三次元的に移動させることが可能な状態で支持するソレノイド支持手段を備えた請求項1記載された医療用磁気誘導装置。
  3. 誘導開始から所定時間Tが経過するまでソレノイドに定電圧又は定電流を印加した後、パルス制御手段によるパルス制御が実行されるようにした請求項1又は2いずれか1項に記載された医療用磁気誘導装置。
  4. 所定時間Tが20~200秒の範囲に設定された請求項3に記載された医療用磁気誘導装置。
  5. パルス制御の周期Tが所定時間Tよりも短く設定された請求項3又は4いずれか1項に記載された医療用磁気誘導装置。
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