JP7524419B2 - コア、ステータ、及び回転電機 - Google Patents

コア、ステータ、及び回転電機 Download PDF

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Description

本開示は、コア、ステータ、及び回転電機に関する。
本出願は、2018年11月12日付の日本国出願の特願2018-212322に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
特許文献1は、回転電機の一つとして、ロータとステータとがロータの軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型のモータを開示する。この種の回転電機に用いられるステータは、ヨーク及び複数のティースを有するコアと、各ティースに配置されるコイルとを備える。代表的には、ヨークは、円環板状の部材である。各ティースは、ヨークの軸方向に突出する柱状の部材であり、ヨークの周方向に離間して並ぶ。特許文献1は、更に、ティースにおけるヨークとの連結端とは反対側の端部に板状の鍔部を設けることを開示する。
特開2009-044829号公報
本開示のコアは、
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるコアであって、
本体部と、複数の枠状の鍔部とを備え、
前記本体部は、環状のヨークと、前記ヨークの周方向に並ぶ複数の柱状のティースとを備え、
各前記鍔部は、各前記ティースの先端部に固定され、
前記ヨークと複数の前記ティースとは、一体の圧粉成形体で構成され、
各前記鍔部は、貫通孔を有する圧粉成形体で構成され、
前記ティースの先端部は、前記貫通孔に挿通されて、前記ティースの端面が前記貫通孔から露出されており、
前記ヨークの軸方向の平面視で、前記鍔部の外周縁内の面積に対する前記ティースの端面の面積の割合が7.5%以上である。
本開示のステータは、
本開示のコアと、
各前記ティースに配置されるコイルとを備える。
本開示の回転電機は、
本開示のステータを備える。
図1は、実施形態のコアの一例を示す概略平面図である。 図2は、実施形態のコアの一例について、コアの一部を示す概略斜視図である。 図3は、実施形態のコアにおいて、ティースの先端部の外周面と鍔部の貫通孔の内周面との間隔を説明する図である。 図4は、実施形態のコアであって、隣り合う鍔部が近接領域を向かい合って備える例について、コアの一部を示す概略平面図である。 図5は、実施形態のコアであって、隣り合う鍔部が近接領域をヨークの周方向の同じ側に備える例について、コアの一部を示す概略平面図である。 図6Aは、実施形態のコアであって段差部を備えるティースの一部を示す部分断面図である。 図6Bは、実施形態のコアであって傾斜面を備えるティースの一部を示す部分断面図である。 図7は、実施形態のステータの一例を示す概略平面図である。 図8は、実施形態の回転電機の一例を示す概略断面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるコアとして、ステータを組み立て易く、高いトルクが得られる回転電機を構築できることが望まれる。
そこで、本開示は、高いトルクを有する回転電機を構築でき、ステータの製造性にも優れるコアを提供することを目的の一つとする。
また、本開示は、高いトルクを有する回転電機を構築でき、製造性にも優れるステータを提供することを他の目的の一つとする。
更に、本開示は、高いトルクを有し、製造性にも優れる回転電機を提供することを別の目的の一つとする。
[本開示の効果]
本開示のコアは、高いトルクを有する回転電機を構築でき、ステータの製造性にも優れる。
本開示のステータは、高いトルクを有する回転電機を構築でき、製造性にも優れる。
本開示の回転電機は、高いトルクを有し、製造性にも優れる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係るコアは、
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるコアであって、
本体部と、複数の枠状の鍔部とを備え、
前記本体部は、環状のヨークと、前記ヨークの周方向に並ぶ複数の柱状のティースとを備え、
各前記鍔部は、各前記ティースの先端部に固定され、
前記ヨークと複数の前記ティースとは、一体の圧粉成形体で構成され、
各前記鍔部は、貫通孔を有する圧粉成形体で構成され、
前記ティースの先端部は、前記貫通孔に挿通されて、前記ティースの端面が前記貫通孔から露出されており、
前記ヨークの軸方向の平面視で、前記鍔部の外周縁内の面積に対する前記ティースの端面の面積の割合が7.5%以上である。
本開示のコアは、鍔部を備える。そのため、本開示のコアは、鍔部によってティースに磁束を通過させ易い、鍔部によってコイルの脱落を防止し易いといった効果を有しつつ、ステータの組立作業性に優れる。ステータの組立作業性に優れる理由の一つは、本開示のコアは、本体部と鍔部とを備える組物であり、鍔部を備えていない状態で各ティースにコイルを配置できるからである。従って、本開示のコアは、ステータやアキシャルギャップ型回転電機を製造し易い。
また、本開示のコアは、以下に説明するように、トルクの低下を抑制でき、高いトルクを有するアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
本開示のコアは、上述のように組物であるものの、ヨークとティースとが一体物である。そのため、ヨークとティースとの間に磁気ギャップとなる隙間が生じない。このような本開示のコアは、ヨークとティースとが別部材である特許文献1のコアに比較して、ティースからヨークに磁束を良好に通過させられる。特に、本開示のコアは、鍔部の外周縁内の面積に対するティースの端面の面積の割合が7.5%以上と高い。以下、上記面積の割合を露出面積率と呼ぶことがある。上記露出面積率が高いため、鍔部の貫通孔から露出されるティースが磁束を直接受けられる上に、鍔部からティースに磁束が通過し易い。その結果、トルクの低下が抑制され易い。
更に、本開示のコアは、鍔部を備えるものの、コギングトルクの増大も低減できる。鍔部を備える場合、通常、隣り合う鍔部の間隔が狭いことでコギングトルクが増大し易い。しかし、本開示のコアは、鍔部の内周面とティースの外周面との間に生じる隙間を磁気ギャップとして利用できる。上記隙間によって磁気抵抗を増大できるため、磁石の回転に伴う磁束の変化が小さくなり易い。そのため、コギングトルクの増大が低減され易い。
(2)本開示のコアの一例として、
前記鍔部は、前記先端部の外周面と前記貫通孔の内周面との間隔が0.05mm以下である近接領域を有する形態が挙げられる。
上記形態におけるティースと鍔部の近接領域との上記間隔は非常に狭い。そのため、上記形態における鍔部の近接領域は、ティースに実質的に接する領域と見なせる。また、鍔部の近接領域とティースとの間に生じ得る隙間は磁気ギャップになり難いといえる。そのため、上記形態は、鍔部の近接領域からティースに磁束を通過させ易い。従って、上記形態は、トルクの低下をより抑制し易く、高いトルクを有するアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
(3)上記(2)のコアの一例として、
前記貫通孔の周長に対して、前記近接領域における前記貫通孔の周方向に沿った長さの割合が20%超である形態が挙げられる。
上記形態は、鍔部の近接領域が長いため、鍔部の近接領域からティースに磁束をより通過させ易い。従って、上記形態は、トルクの低下を更に抑制し易く、より高いトルクを有するアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
(4)上記(2)又は(3)のコアの一例として、
前記先端部の外周面と前記貫通孔の内周面との間隔の最大値と最小値との差が0.40mm未満である形態が挙げられる。
上記形態は、上記間隔が局所的に大きな箇所、即ち大きな磁気ギャップとなる箇所を有さないといえる。そのため、上記形態は、鍔部からティースに磁束を通過させ易い。従って、上記形態は、トルクの低下を抑制し易く、高いトルクを有するアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
(5)上記(2)から(4)のいずれか一つのコアの一例として、
前記鍔部は、前記近接領域の少なくとも一部を前記鍔部における前記ヨークの外周縁側に備える形態が挙げられる。
上記形態は、以下に説明するように近接領域を長く有し易い。近接領域が長いことで、上記形態は、鍔部の近接領域からティースに磁束をより通過させ易い。従って、上記形態は、トルクの低下を更に抑制し易く、より高いトルクを有するアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
代表的には、鍔部の外形は台形状である。このような形状の鍔部におけるヨークの外周縁側に位置する領域の長さは、ヨークの内周縁側に位置する領域の長さよりも長い。以下、上記鍔部におけるヨークの外周縁側に位置する領域、即ち上記鍔部において、貫通孔から露出するティースの端面の周縁よりも外周側に位置する領域を外周領域と呼ぶことがある。また、上記鍔部におけるヨークの内周縁側に位置する領域、即ち上記鍔部において、貫通孔から露出するティースの端面の周縁よりも内周側に位置する領域を内周領域と呼ぶことがある。鍔部の外周領域に近接領域を含むコアは、近接領域を長く確保し易い。
(6)上記(2)から(5)のいずれか一つのコアの一例として、
前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースに固定される前記鍔部は、前記近接領域の少なくとも一部を両前記ティースが対向する側に備える形態が挙げられる。
上記形態では、隣り合う鍔部の近接領域が向かい合って配置される。そのため、隣り合うティースは、各鍔部の近接領域を経て磁束を通過させ易い。従って、上記形態は、トルクの低下を抑制し易く、高いトルクを有するアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。上記形態が多相交流回転電機に利用される場合、各ティースには同相のコイル、異相のコイルのいずれが配置されてもよい。
(7)上記(6)のコアの一例として、
隣り合う前記ティースには、同相のコイルが配置される形態が挙げられる。
上記形態は、異相のコイルが配置される場合に比較して、トルクの低下をより抑制し易い。
(8)上記(2)から(5)のいずれか一つのコアの一例として、
前記近接領域の少なくとも一部を前記鍔部における前記ヨークの周方向の同じ側に備える形態が挙げられる。
上記形態は、各鍔部の近接領域から各ティースに磁束を通過させ易い。従って、上記形態は、トルクの低下を抑制し易く、高いトルクを有するアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。また、上記形態は、各ティースに対して各鍔部の固定状態を一様にできるため、コアの製造性にも優れる。
(9)本開示のコアの一例として、
前記ティースは、前記鍔部が載置される段差部を有する形態が挙げられる。
上記形態は、ティースに対して鍔部を安定して配置でき、ティースと鍔部とを固定し易い。従って、上記形態は、コアの製造性にも優れる。
(10)上記(9)のコアの一例として、
前記段差部の高さは、前記鍔部の厚さ以上である形態が挙げられる。
上記形態において段差部の高さと鍔部の厚さとが等しければ、代表的にはティースの端面と鍔部の端面とが面一になる。そのため、上記形態のコアを備えるステータとロータとの間隔を調整することが容易である。上記形態において段差部の高さが鍔部の厚さよりも大きいほど、コギングトルクが低減され易い。
(11)上記(10)のコアの一例として、
前記段差部の高さと前記鍔部の厚さとの差が0mm超3mm以下である形態が挙げられる。
上記形態は、上記差が上述の特定の範囲を満たすため、コギングトルクを低減しつつ、トルクの低下を抑制できる。
(12)上記(9)から(11)のいずれか一つのコアの一例として、
前記段差部の底面と前記段差部の周面との交差角度が90°であり、
前記貫通孔の内周面と前記鍔部における前記段差部の底面に載置される面との交差角度が90°である形態が挙げられる。
上記形態における段差部及び鍔部は、形状が単純であり、成形し易い。そのため、上記形態は、コアの製造性にも優れる。
(13)上記(11)のコアの一例として、
前記ティースの先端部は、前記ティースの端面に交差する傾斜面を含み、
前記傾斜面における前記端面の延長面に対する角度が5°以上60°以下である形態が挙げられる。
上記形態においてティースの傾斜面が鍔部の端面から突出する場合には、コギングトルクが低減され易い。
(14)本開示のコアの一例として、
前記コアの構成材料は、純鉄、Siを含む鉄基合金、又はAlを含む鉄基合金を含む形態が挙げられる。
上記形態において純鉄を含む場合には、コアが高い飽和磁束密度を有し易い、コアが緻密になり易い、コアが成形され易く製造性に優れる、といった効果を奏する。上記形態において鉄基合金を含む場合には、コアが低損失になり易い。
(15)本開示のコアの一例として、
前記コアの相対密度は90%以上である形態が挙げられる。
上記形態は、相対密度が90%以上と高く緻密である。このような形態は、飽和磁束密度が高いといった磁気特性に優れるアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
(16)本開示の一態様に係るステータは、
上記(1)から(15)のいずれか一つのコアと、
各前記ティースに配置されるコイルとを備える。
本開示のステータは、本開示のコアを備えるため、各ティースにコイルを容易に配置できる。従って、本開示のステータは、製造性に優れる。また、本開示のステータは、本開示のコアを備えるため、トルクの低下を抑制でき、高いトルクを有するアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
(17)本開示の一態様に係る回転電機は、
本開示のステータを備える。
本開示の回転電機は、本開示のステータを備えるため、ステータを組み立て易く、製造性に優れる。また、本開示の回転電機は、本開示のステータを備えるため、トルクの低下を抑制でき、高いトルクを有する。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
[コア]
図1~図6Bを参照して、実施形態のコア1を説明する。
図1,図4,図5、及び後述する図7は、実施形態のコア1をヨーク3の軸方向から平面視した平面図である。上記の各図は、ヨーク3の表裏面のうち、ティース2が設けられる側の面、ここでは表面30を平面視している。なお、図4,図5は、コア1の一部のみ示す。
図2は、実施形態のコア1の一部を示す斜視図であり、一組のティース2及び鍔部5について、ティース2と鍔部5とを分解し、鍔部5をティース2に固定する前の状態を示す。
図3は、一組のティース2及び鍔部5について、ティース2の端面20及び鍔部5の端面50側をティース2の軸方向から平面視した平面図である。
図6A,図6Bは、実施形態のコア1をティース2の軸方向に平行な平面で切断した断面図であり、ティース2の先端部及びその近傍、並びに鍔部5のみを示す。図6A,図6Bの断面図は、コア1を図2に示すVI-VI切断線で切断した断面図に相当する。
図1~図6B、及び後述する図7,図8は、説明の便宜上、適宜縮尺を変更している。
〈概要〉
以下、主に図1,図2を参照して、コア1の概要を説明する。
実施形態のコア1は、環状のヨーク3と、複数の柱状のティース2と、複数の板状の鍔部5とを備える。各鍔部5は、各ティース2の先端部に設けられる。コア1は、アキシャルギャップ型回転電機に用いられる。代表的には、コア1は、ステータのコアに利用できる。アキシャルギャップ型回転電機の一例は、後述の図8に示す回転電機9が挙げられる。ステータの一例は、後述の図7に示すステータ8が挙げられる。コア1は、各ティース2にコイル80(図7,図8)が配置されて、コイル80がつくる磁束や磁石95(図8)の磁束が通過する磁気回路の構成部材として利用される。
実施形態のコア1では、ヨーク3と複数のティース2とが一体物であり、各鍔部5は上記一体物とは独立した部材である。また、各鍔部5は、貫通孔52を有する枠状の部材である。ティース2の端面20は貫通孔52から露出される。特に、実施形態のコア1では、ヨーク3の軸方向の平面視で、鍔部5の外周縁51内の面積に対するティース2の端面20の面積の割合、即ち露出面積率が7.5%以上である。
以下、詳細に説明する。
〈本体部〉
実施形態のコア1は、本体部4を構成部材の一つとする。本体部4は、ヨーク3と、ヨーク3の周方向に並ぶ複数のティース2とを備える。また、本体部4は、ヨーク3と複数のティース2とが一体の圧粉成形体で構成される。コア1は、一つの本体部4と、複数の鍔部5との組物であるものの、ヨーク3とティース2とが一体物である。そのため、ヨーク3とティース2との間に磁気ギャップとなる隙間が生じない。従って、コア1は、ヨーク3とティース2とが別部材であるコアに比較して、ティース2からヨーク3に磁束を良好に通過させられる。
《ヨーク》
ヨーク3は、平面形状が円環状である板部材である。ヨーク3の表裏面のうち、一面、ここでは表面30は、ティース2が突出して設けられる面である。ヨーク3は、ヨーク3の周方向に並ぶティース2のうち、隣り合うティース2同士を磁気的に結合する。ヨーク3は、その中央部に軸孔39を備える。軸孔39は、ヨーク3の表裏面を貫通する。
《ティース》
各ティース2は、柱状の部材であり、ヨーク3の表面30に直交するように突出する。また、各ティース2は、ヨーク3の周方向に所定の間隔をあけて配置される。代表的には、図1に例示するように、各ティース2は、ヨーク3の周方向に等間隔に配置される。なお、ヨーク3の表面30に直交する方向は、ヨーク3の軸孔39の軸方向に平行な方向に相当する。また、各ティース2の軸方向は、ヨーク3の軸方向に平行な方向に相当する。図1では、ヨーク3の軸方向は紙面直交方向に相当する。
代表的には、各ティース2の形状、大きさは同一である。
ティース2の外形は、代表的には、ティース2の軸方向に直交する平面で切断した断面形状がティース2の軸方向に一様な形状である角柱状等が挙げられる。本例のティース2は、上記断面形状が台形状である四角柱体である。また、本例のティース2は、鍔部5が固定される先端部を除いて、ティース2の軸方向に一様な断面形状を有する。上記断面形状が台形状であるティース2は、断面積を大きく確保し易い。また、コア1のデッドスペースが低減され易い。その結果、占積率が高いステータ8が構築され易い。その他の外形として、上記断面形状が二等辺三角形等の三角形状である角柱体等が挙げられる。また、別の外形として、上記断面形状が長方形である直方体、上記断面形状が円形である円柱等が挙げられる。
ここでの「台形状」、「三角形状」は、幾何学上の台形、三角形だけでなく、本例のように角部に丸みを有する形状を含めて、実質的に台形、三角形と見なされる範囲を含む。例えば、断面の輪郭が直線を含む場合、上記範囲は、この直線の延長線の交点が多角形の頂点をなす形状を含む。又は、例えば、断面の輪郭が曲線及び直線を含む場合、上記範囲は、この曲線の接線と直線又は直線の延長線との交点が多角形の頂点をなす形状を含む。
ティース2の個数は、2個以上であればよく、適宜選択できる。上記個数は、例えば3個以上、更に6個以上でもよい。図1は、上記個数が12個である本体部4を例示する。
各ティース2におけるヨーク3との連結端とは反対側に位置する先端部に、各鍔部5が固定される。即ち、各ティース2の一端部はヨーク3との連結箇所をなす。各ティース2の他端部は鍔部5の固定箇所をなす。鍔部5が固定された状態において、ティース2の端面20は、鍔部5から露出される。図1及び後述の図7は、分かり易いように、端面20にクロスハッチングを付している。
端面20の形状は、ティース2において先端部を除く箇所の周面21(図2)の形状に相似、又は本例のように概ね相似な形状であることが挙げられる。以下、ティース2において先端部を除く箇所を中間箇所と呼ぶ。このようなコア1を用いて回転電機9を構築すると、ティース2の周方向の任意の位置に対して、端面20から磁石95の磁束が通過し易い。なお、代表的には、端面20は、本例のようにヨーク3の表面30に平行な平面で構成され、磁束と直交するように配置される。また、代表的には、周面21は、本例のようにヨーク3の表面30に直交するように設けられる。
その他、端面20の形状は、ティース2における中間箇所の周面21の形状とは非相似な形状としてもよい。例えば、ティース2における中間箇所の周面21の形状が台形状であれば、端面20の形状は円形、三角形等でもよい。但し、磁束の通過の観点からは、端面20の形状は、上述のように周面21の形状と相似又は概ね相似な形状が好ましい。
ティース2は、先端部に段差部25を有してもよい(図2)。段差部25には鍔部5が載置される。端面20の大きさ、段差部25の形状等を含めて、ティース2の先端部の詳細は、〈ティースと鍔部との関係〉の項で説明する。
《大きさ》
ヨーク3の大きさ、ティース2の大きさは、回転電機9に応じて適宜選択できる。
ヨーク3の大きさは、例えば外径、内径、厚さ等が挙げられる。ヨーク3の外径は、例えば30mm以上300mm以下が挙げられる。ヨーク3の内径、ここでは軸孔39の直径は、例えば5mm以上150mm以下が挙げられる。ヨーク3の厚さは、例えば1.0mm以上10mm以下、更に1.5mm以上7.0mm以下が挙げられる。
ティース2の大きさは、例えば断面積、高さ等が挙げられる。ここでのティース2の断面積とは、ティース2の軸方向に直交する平面で切断した断面の面積である。ティース2が段差部25を有する場合には、上述の先端部を除く中間箇所の断面積である。ティース2の高さは、ヨーク3の表面30から端面20までの距離である。ティース2の断面積は、例えば5mm以上800mm以下が挙げられる。ティース2の高さは、例えば3mm以上40mm以下が挙げられる。
〈鍔部〉
各鍔部5は、各ティース2の先端部に固定される枠状の板部材である。各鍔部5は、貫通孔52を有する圧粉成形体で構成される。各貫通孔52には、各ティース2の先端部が挿通される。代表的には、各鍔部5の形状、大きさは同一である。
《機能・作用》
鍔部5は、以下に説明するように、ティース2により多くの磁束を通過させる機能を有する。ティース2の先端部に固定された状態では、鍔部5は、ティース2の周面21から、周面21に直交する方向に突出する。そのため、鍔部5が固定されたティース2の先端部の平面積は、端面20の面積と鍔部5の端面50との合計面積となる。従って、鍔部5が固定されたティース2の先端部の平面積は、ティース2の中間箇所の断面積に比較して、鍔部5によって増大されているといえる。このようなコア1を用いて回転電機9を構築すると、コア1における磁石95に対向する面積が、鍔部を有しない場合に比較して大きい。そのため、コア1は、鍔部5によって、ティース2に磁石95の磁束を集め易く、上記磁束をより多く通過させ易い。
コア1は、鍔部5を備えるものの、以下に説明するように、ステータ8や回転電機9の製造性に優れる。コア1は、ティース2を備える本体部4と鍔部5とが分離可能な組物である。そのため、ステータ8や回転電機9の製造過程で、ティース2の先端に鍔部5が配置されていない状態で、ティース2にコイル80を配置することができる。従って、コア1とコイル80との組立作業が行い易い。そして、コイル80が配置されたティース2と、鍔部5とを一体化する。例えば、上記ティース2の先端部を鍔部5の貫通孔52に挿通させてティース2と鍔部5とを接着剤等で接合したり、圧入や焼嵌め等によって固定したりすることが挙げられる。焼嵌めを行う際には、例えば鍔部5を適宜な温度に加熱することができる。このようにティース2と鍔部5とが固定されることで、本体部4と鍔部5とが一体化される。
その他、鍔部5は、ティース2からコイル80が脱落することを防止する機能等を有する。また、コア1は、鍔部5を備えるものの、以下に説明するように、コギングトルクの増大も低減できる。ティース2の先端部の外周面と鍔部5の貫通孔52を形成する内周面520(図2)との間に隙間が生じ得るものの、コア1は、この隙間を磁気ギャップとして利用できる。この磁気ギャップによって、鍔部5とティース2との間で磁気抵抗が増大する。このようなコア1を用いて回転電機9を構築すると、磁石95の回転に伴う磁束の変化が小さくなり易い。なお、各図は、分かり易いように、上記隙間を大きく示す。
《形状》
鍔部5の外周形状、即ち外周縁51が描く形状は、ティース2における中間箇所の周面21の形状に相似、又は本例のように概ね相似な形状が挙げられる。この場合、ティース2の周方向の任意の位置に対して、鍔部5によって磁石95の磁束を通過させ易くする効果が良好に得られる。
鍔部5の内周形状、即ち貫通孔52の内周面520が描く形状は、本例に示すように鍔部5の外周形状に相似な形状が挙げられる。この場合、鍔部5の外周縁51と内周面520との間隔、即ち幅が鍔部5の周方向に均一になり易い。そのため、ティース2の周方向の任意の位置に対して、鍔部5によって磁石95の磁束を通過させ易くする効果が一様に得られ易い。鍔部5の内周形状は、鍔部5の外周形状とは非相似な形状としてもよいが、磁束の通過の観点からは、上述のように相似な形状、又は概ね相似な形状が好ましい。
また、鍔部5の内周形状は、本例に示すようにティース2の端面20の形状に相似な形状が挙げられる。この場合、鍔部5の内周面520とティース2の先端部の外周面との間に生じる隙間が局所的に大きくなることを防止し易い。局所的に大きな隙間は、大きな磁気ギャップとなる。鍔部5の内周面520とティース2の先端部の外周面との間に大きな磁気ギャップが存在すると、トルクの低下が生じる。上記大きな磁気ギャップが低減されることで、トルクの低下が抑制される。
本例の鍔部5の外周形状及び内周形状は、角部を丸めた台形状である。鍔部5がティース2に固定された状態において、鍔部5の輪郭における台形の長辺部分は、ヨーク3の外周縁側に配置される。上記台形の短辺部分は、ヨーク3の内周縁側に配置される。なお、代表的には、端面50及びその反対側の面は、本例のように平面で構成される。
〈ティースと鍔部との関係〉
以下、主に図3~図6Bを参照して、ティース2の先端部、鍔部5の貫通孔52を詳細に説明する。
《露出面積率》
実施形態のコア1は、鍔部5の貫通孔52からティース2の一部、具体的には先端部の端面20を露出させる。そのため、鍔部5とティース2との間に、磁束と直交する方向に配置される磁気ギャップが低減され易い。以下、この磁気ギャップを直交ギャップと呼ぶ。コア1では、上記直交ギャップの大きさがティース2の中間箇所の断面積よりも小さい。場合によっては、コア1は、上記直交ギャップを実質的に有さない。コア1は、直交ギャップが小さいことで、鍔部5からティース2に磁石95(図8)の磁束を通過させ易い。そのため、コア1は、ティース2と鍔部5とが独立した部材であるものの、両者間に生じる磁気ギャップに起因するトルクの低下を抑制できる。この点は、例えば後述の試験例1の試料No.101とNo.1とを比較参照するとよい。
定量的には、鍔部5の外周縁51内の面積Sに対して、貫通孔52から露出されるティース2の端面20の面積Sの割合、即ち露出面積率が7.5%以上である。露出面積率(%)は、(S/S)×100で求められる。なお、上述の鍔部5における面積Sは、貫通孔52の面積も含む。
上述の露出面積率が7.5%以上であれば、ティース2の端面20が磁石95の磁束を直接受けられる。また、上記露出面積率が7.5%以上であれば、上述の直交ギャップが低減され易い。そのため、鍔部5からティース2に磁石95の磁束が通過し易い。従って、コア1は、トルクの低下を抑制し易く、高いトルクを有する回転電機9を構築できる。
上述の露出面積率が高いほど、トルクの低下が抑制され易い。トルクの低下の更なる抑制を望む場合、上記露出面積率は8.0%以上、更に10%以上が好ましい。この点は、後述の試験例2を参照するとよい。
上述の露出面積率は、例えば90%以下であれば、鍔部5の幅をある程度大きく確保することができる。そのため、鍔部5による通過磁束の増大効果やコイル80の脱落防止効果等が得られ易い。また、鍔部5の幅がある程度大きいと、鍔部5を成形し易く、鍔部5の製造性にも優れる、鍔部5を取り扱い易く、ティース2と鍔部5との組立作業性にも優れるといった効果が期待できる。上記効果を望む場合、上記露出面積率は80%以下、更に70%以下、60%以下、60%未満でもよい。
《近接領域とティースとの間隔》
鍔部5の貫通孔52の大きさは、代表的には、ティース2の挿通作業を行い易いように、裕度を加味して、ティース2の先端部の大きさよりも大きく設計する。その結果、ティース2の先端部の外周面と、貫通孔52の内周面520との間に隙間が生じる。この隙間は、磁気ギャップとなり、トルクの低下を招く一因となる。一方、本発明者らは、貫通孔52の周方向の少なくとも一部に上記隙間が非常に小さい箇所が存在すれば、トルクの低下を抑制できる、との知見を得た。この理由は、鍔部5における上記間隔が狭い領域からティース2に磁石95の磁束を通過させ易いためと考えられる。そこで、鍔部5は、ティース2の先端部の外周面と、鍔部5の貫通孔52の内周面520との間隔が0.05mm以下である領域を有することが好ましい。ティース2の先端部の外周面と、鍔部5の貫通孔52の内周面520との間隔は、ティース2の先端部の外周面上の点と、鍔部5の貫通孔52の内周面520上の点とを結んだ直線の距離のうち、最も短い距離である。以下、鍔部5における上記間隔が0.05mm以下を満たす領域を近接領域55と呼ぶ。図3~図5は、貫通孔52における内周面520近くの領域の一部に二点鎖線のクロスハッチングを付して、近接領域55を仮想的に示す。
ティース2の先端部と鍔部5の近接領域55との間隔は0.05mm以下と非常に狭い。このような鍔部5の近接領域55は、ティース2の先端部に実質的に接するといえる。また、ティース2の先端部と鍔部5の近接領域55との間隔が0.05mm以下であれば、ティース2の先端部と鍔部5の近接領域55との隙間は磁気ギャップになり難いといえる。このようなコア1を用いて回転電機9を構築すれば、鍔部5の近接領域55は、ティース2に磁石95の磁束を通過させ易い。そのため、この回転電機9は、トルクの低下をより抑制し易く、高いトルクを有し易い。
ティース2の先端部と鍔部5の近接領域55との間隔が小さいほど、近接領域55を利用して、ティース2に磁石95の磁束を通過させ易く、トルクの低下を抑制し易い。トルクの低下の更なる抑制を望む場合、上記間隔は0.04mm以下、更に0.03mm以下、0.02mm以下が好ましい。コア1は、上記間隔が実質的に0mmの箇所を有してもよい。例えば、上述のティース2と鍔部5との固定に圧入等を利用すれば、鍔部5は、上記間隔が0mmの箇所を長く確保し易い。
《接合割合》
鍔部5の近接領域55は長いほど好ましい。定量的には、鍔部5の貫通孔52の周長Lに対して、近接領域55における貫通孔52の周方向に沿った長さL55の割合が20%超であることが挙げられる。以下、上記周長Lに対する長さL55の割合を接合割合と呼ぶ。上記接合割合(%)は、(L55/L)×100で求められる。
上述の接合割合が20%超であれば、鍔部5の近接領域55が長いといえる。そのため、近接領域55を利用して、磁石95の磁束がティース2により通過し易い。その結果、トルクの低下がより抑制され易い。トルクの低下の更なる抑制を望む場合、上記接合割合は25%以上、更に30%以上、35%以上が好ましい。
上述の接合割合は100%以下の範囲で大きいほど好ましい。一方、上記接合割合が例えば70%以下であれば、上述の挿通作業上の裕度を大きく確保することができる。その結果、ティース2と鍔部5との組立作業が行い易い。組立作業性の向上を望む場合、上記接合割合は65%以下、更に60%でもよい。
《間隔の最大差》
鍔部5が近接領域55を有することで、ティース2の先端部の外周面と鍔部5の貫通孔52の内周面520との間隔が相対的に大きな箇所が生じる場合がある。この場合でも、上記間隔の最大値と最小値との差が0.40mm未満であることが好ましい。以下、この差を間隔の最大差と呼ぶ。図3では、上記間隔の最小値gminは、鍔部5の内周面520において近接領域55が存在する箇所に位置し、上記間隔の最大値gmaxは、鍔部5の内周面520においてヨーク3の内周縁側、図3では下側の角部に位置する場合を例示する。また、図3では、近接領域55の一部は、鍔部5の内周面520においてヨーク3の外周縁側、図3では上側に位置する場合を例示する。
上述の間隔の最大差が0.40mm未満であれば、コア1は、ティース2の先端部の外周面と鍔部5の貫通孔52の内周面520との間隔が局所的に大きな箇所を有していないといえる。上記間隔が局所的に大きな箇所は、大きな磁気ギャップとなる。そのため、上記間隔の最大差が0.40mm未満であれば、コア1は、大きな磁気ギャップを有さず、鍔部5からティース2に磁石95の磁束を通過させ易い。従って、トルクの低下が抑制され易い。上記間隔の最大差が小さいほど、コア1は、大きな磁気ギャップをより確実に有さず、ティース2に磁束を通過させ易く、トルクの低下をより抑制し易い。トルクの低下の更なる抑制を望む場合、上記間隔の最大差は0.35mm以下、更に0.30mm以下が好ましい。
上述の間隔の最大差は0mmでもよい。この場合、ティース2の先端部の外周面と鍔部5の貫通孔52の内周面520との間隔が貫通孔52の周方向に一様な大きさであるといえる。上記間隔が一様な大きさである場合、上記間隔が0.20mm以下、更に0.15mm以下、0.10mm以下であれば、コア1は、鍔部5に近接領域55を有していなくても、鍔部5からティース2に磁石95の磁束を通過させ易い。そのため、トルクの低下が抑制され易い。この点は、後述の試験例1を参照するとよい。
鍔部5が近接領域55を有すると共に、上記間隔の最大差が0.40mm未満であることが好ましい。この理由は、近接領域55によって、ティース2に磁石95の磁束を通過させ易い上に、鍔部5において近接領域55以外の領域も、ティース2の先端部の外周面の近くに存在するといえるからである。そのため、鍔部5からティース2に磁束をより通過させ易く、トルクの低下が抑制され易い。この点は、後述の試験例3を参照するとよい。
《近接領域の位置》
鍔部5は、貫通孔52の周方向の任意の位置に近接領域55を備えられる。図3に例示するように、鍔部5は、近接領域55の少なくとも一部を鍔部5におけるヨーク3の外周縁側に備えることが挙げられる。この場合、近接領域55が長くなり易い。例えば、鍔部5の内周形状が台形状等であり、台形の長辺部分がヨーク3の外周縁側に位置すれば、鍔部5におけるヨーク3の外周縁側に位置する外周領域56の長さは、鍔部5におけるヨーク3の内周縁側に位置する内周領域57の長さよりも長い。そのため、近接領域55の少なくとも一部が鍔部5の外周領域56に設けられると、近接領域55が長く確保され易い。近接領域55が長いほど、上述の接合割合が大きくなる。その結果、コア1は、近接領域55からティース2に磁束をより通過させ易く、トルクの低下をより抑制し易い。
図3は、鍔部5の外周領域56と、鍔部5におけるヨーク3の周方向の一方側の領域とにわたってL字状に近接領域55を備える場合を例示する。その他、コア1は、鍔部5の外周領域56にのみ近接領域55を備えてもよい。又は、コア1は、鍔部5の内周領域57のみ、又は鍔部5におけるヨーク3の周方向の一方側の領域のみに近接領域55を備えてもよい。
鍔部5は近接領域55の少なくとも一部を鍔部5の外周領域56に備えると共に、上述の接合割合が35%以上であることが好ましい。この理由は、近接領域55によって、ティース2に磁石95の磁束をより通過させ易く、トルクの低下をより抑制し易いからである。接合割合については、後述の試験例4を参照するとよい。
又は、図4に例示するように、ヨーク3の周方向に隣り合うティース2に固定される鍔部5は、近接領域55の少なくとも一部を両ティース2が対向する側に備えることが挙げられる。この場合、隣り合う鍔部5の近接領域55は、向かい合っている。そのため、隣り合うティース2に各鍔部5の近接領域55から磁束が通過し易く、トルクの低下が抑制され易い。
上述のように隣り合う鍔部5が近接領域55を向かい合って備えるコア1を多相交流回転電機に利用する場合、隣り合う各ティース2には同相のコイル80又は異相のコイル80が配置される。特に、隣り合うティース2に同相のコイル80が配置されると、異相のコイル80が配置される場合に比較して、トルクの低下がより抑制され易い。この点は、後述の試験例5を参照するとよい。
例えば、コア1を三相交流回転電機に利用する場合、以下の配置が挙げられる。図4の左から1番目のティース2及び2番目のティース2にU相のコイル80を配置する。図4の左から3番目のティース2及び4番目のティース2に図示しないV相のコイルを配置する。図4の左から5番目のティース2及び図示しない6番目のティース2に図示しないW相のコイルを配置する。この場合、隣り合うティース2であって異相のコイル80が配置されるティース2、例えば図4の左から2番目のティース2及び3番目のティース2に対しては、両ティース2が互いに離れる側に近接領域55が配置される。図4は、紙面左側の二つのティース2にコイル80が配置された状態を二点鎖線で仮想的に示す。この点は後述する図5も同様である。
又は、図5に例示するように、鍔部5は、近接領域55の少なくとも一部を鍔部5におけるヨーク3の周方向の同じ側に備えることが挙げられる。この場合、各鍔部5の近接領域55から各ティース2に磁束が通過し易く、トルクの低下が抑制され易い。また、この場合、各鍔部5から各ティース2への磁束の通過状態が一様になり易く、磁束が乱れ難くなり、トルクの脈動も低減し易いと期待される。更に、この場合、各ティース2に対して各鍔部5の固定状態が一様になり易い。この点でコア1は製造性にも優れる。なお、図5は、近接領域55の一部を各鍔部5の貫通孔52の右側に備える場合を例示する。
各鍔部5の近接領域55をヨーク3の周方向の同じ側に備えるコア1を用いて回転電機9を構築する場合、各鍔部5は、ロータ90(図9)の回転方向と同じ側、上記回転方向と逆側のいずれに近接領域55を備えてもよい。特に、各鍔部5が上記回転方向と同じ側に近接領域55を備えると、逆側に備える場合に比較して、トルクの低下がより抑制され易い。この点は、後述の試験例5を参照するとよい。
《段差部》
以下、図6Aを主に参照して、段差部25を説明する。
ティース2が先端部に段差部25を備えると、コア1の製造過程では、ティース2に対して鍔部5が安定して配置される。そのため、段差部25を備えるコア1は、段差部25を有さない場合に比較して、ティース2と鍔部5とを接着剤等で固定したり、圧入や焼嵌めの際に鍔部5をティース2の所定の位置に配置したりし易く、製造性に優れる。
段差部25は、底面250と、周面251とを備える。代表的には、底面250は端面20に平行な平面で構成され(図2も参照)、鍔部5の端面50とは反対側の面が載置される。周面251は、代表的には、ティース2の周面21に平行な面で構成される。このような段差部25において、底面250と周面251との交差角度が90°であることが挙げられる。また、この段差部25に対応して、鍔部5の貫通孔52の内周面520と鍔部5におけるティース2の段差部25の底面250に載置される面との交差角度が90°であることが挙げられる。この場合、段差部25の形状及び鍔部5の形状が単純であり、高精度に成形されたティース2及び鍔部5が得られ易い。従って、コア1は製造性に優れる。
段差部25の高さhをティース2の端面20と底面250との距離とする。鍔部5の厚さtを鍔部5の端面50とその反対側の面との距離とする。例えば、段差部25の高さhは鍔部5の厚さtと同等であることが挙げられる。また、この場合、代表的には、ティース2の端面20と段差部25の周面251との交差角度が90°であることが挙げられる。この場合、図2に例示するように、ティース2と鍔部5とが固定された状態において、ティース2の端面20と鍔部5の端面50とは面一になる。このコア1を用いてステータ8及び回転電機9を構築する場合、ステータ8とロータ90との間隔の調整が行い易い。
又は、例えば、段差部25の高さhは鍔部5の厚さtよりも大きいことが挙げられる。この場合、図6Aに例示するようにティース2と鍔部5とが固定された状態において、ティース2の端面20及びその近傍が鍔部5の端面50から突出する。このようにティース2の一部が鍔部5から突出する場合、ティース2の突出高さが大きいほど、即ち高さhが大きく、高さhと厚さtとの差Δ(h-t)が大きいほど、コギングトルクが低減され易い。但し、上記差Δ(h-t)が大き過ぎると、トルクの低下が生じ易い。
定量的には、ティース2の段差部25の高さhと鍔部5の厚さtとの差Δ(h-t)が0mm超3mm以下であることが挙げられる。上記差Δ(h-t)が0mm超であれば、コギングトルクが低減され易い。コギングトルクの更なる低減を望む場合、上記差Δ(h-t)は0.5mm以上、更に1.0mm以上でもよい。上記差Δ(h-t)が3mm以下であれば、コギングトルクが低減されつつ、トルクの低下が抑制される。トルクの低下の更なる抑制を望む場合、上記Δ(h-t)は2.5mm以下、更に2.0mm以下でもよい。この点は、後述の試験例6を参照するとよい。
上述のようにティース2の先端部の一部が鍔部5から突出する場合、ティース2の端面20の角部は、平面取りされたような形状としてもよい。具体的には、ティース2の先端部は、ティース2の端面20に交差する傾斜面22を含むことが挙げられる。傾斜面22を含む場合は、上述の端面20の角部が直角である場合に比較して、コギングトルクがより低減され易い。この理由は、ティース2が磁石95の磁束を受け易くなり、磁束の急激な変化が緩和され易いからである。また、傾斜面22を含むと、ティース2の端面20の角部に欠け等が生じ難く、ティース2は強度にも優れる。図6Aは、傾斜面22を二点鎖線で仮想的に示す。
ティース2の傾斜面22における端面20の延長面に対する角度θは5°以上60°以下であることが挙げられる。上記角度θが5°以上であれば、コギングトルクが低減され易い。コギングトルクの更なる低減を望む場合、上記角度θは10°以上、更に20°以上、30°以上でもよい。一方、上記角度θが60°以下であれば、ティース2における鍔部5からの突出高さが小さくなり易く、トルクの低下が抑制され易い。トルクの低下の更なる抑制を望む場合、上記角度θは55°以下、更に50°以下でもよい。
鍔部5の角部も平面取りされたような形状であると、即ち図6Bに二点鎖線で仮想的に示すよう傾斜面54を有すると、上述と同様の理由によりコギングトルクが低減され易い。また、鍔部5の角部に欠け等が生じ難く、鍔部5は強度にも優れる。鍔部5の傾斜面54における端面50の延長面に対する角度αは5°以上60°以下であることが挙げられる。上記角度αがこの範囲であれば、上述のようにコギングトルクが低減されつつ、トルクの低下が抑制される。
ティース2が段差部25を有さなくてもよい。この場合、例えば、ティース2の先端部の外周面と鍔部5の貫通孔52の内周面520とは、接着剤等で固定されてもよいし、圧入等によって固定されてもよい。段差部25を有さないコア1は、ティース2と鍔部5との間において、上述の直交ギャップを最も低減できるため、トルクの低下をより抑制し易い。但し、ティース2が段差部25を有さないことで、段差部25を有する場合に比較して、ティース2と鍔部5とが固定され難い。そこで、例えば、図6Bに示すように、鍔部5の貫通孔52の内周面520は、ティース2の傾斜面22に対応した傾斜面53を含むことが挙げられる。この場合、ティース2の傾斜面22によって、鍔部5の傾斜面53が支持される。このようなコア1は、段差部25を有していなくても、ティース2の先端部が鍔部5を安定して支持できるため、製造性に優れる。
なお、図6Bでは、ティース2の端面20と鍔部5の端面50とが面一である場合を例示するが、ティース2の端面20及びその近傍は鍔部5の端面50から突出してもよい。この場合、ティース2における鍔部5の端面50からの突出量は、0mm超3mm以下が好ましい。
〈構成材料〉
コア1の構成材料は、軟磁性材料を含む。代表的には、コア1は、主として軟磁性材料から構成される。軟磁性材料は、例えば、純鉄、又は鉄基合金が挙げられる。
ここでの純鉄とは、純度が99%以上、即ちFe(鉄)の含有量が99質量%以上のものである。純鉄は、飽和磁束密度が高い、成形性に優れる、圧縮成形によって緻密化し易い、といった効果を奏する。そのため、純鉄を含むと、飽和磁束密度が高いコア1、相対密度が高く緻密なコア1、製造過程では成形し易く、製造性に優れるコア1が得られる。また、コア1が緻密であれば、飽和磁束密度をより高め易い上に、強度等の機械的特性にも優れる。
ここでの鉄基合金は、添加元素を含み、残部がFe及び不可避不純物からなるものである。鉄基合金は、一種又は二種以上の添加元素を含む。添加元素は、例えば、Si(珪素)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)等が挙げられる。鉄基合金の具体例として、Siを含む鉄基合金であるFe-Si系合金、Alを含む鉄基合金であるFe-Al系合金、Si又はAlに加えてCrを含む鉄基合金等が挙げられる。鉄基合金の電気抵抗は、純鉄よりも大きい。そのため、コア1は、鉄基合金を含むと、渦電流損等の鉄損を低減でき、低損失になり易い。コア1は、純鉄と鉄基合金との双方を含んでもよい。
本体部4を構成する圧粉成形体、鍔部5を構成する圧粉成形体はいずれも、軟磁性材料からなる粉末粒子の集合体である。上記圧粉成形体は、主として、上記粉末粒子が塑性変形によって相互に噛み合うことで所定の形状を維持する。代表的には、圧粉成形体は、図示しない金型を用いて、軟磁性材料からなる粉末を含む原料粉末を圧縮成形することで製造できる。
軟磁性粉末は、軟磁性材料からなる粉末粒子の表面に絶縁被覆を有する被覆粒子を含んでもよい。コア1は、被覆粒子を含むと、渦電流損等の鉄損を低減でき、低損失になり易い。特に、コア1は、純鉄からなる粉末粒子と絶縁被覆とを有する被覆粒子を含むと、飽和磁束密度が高く、磁気特性に優れる上に、低損失になり易い。絶縁被覆の構成材料は、例えばリン酸塩、シリカといった酸化物等が挙げられる。リン酸塩は、鉄又は鉄基合金からなる粉末粒子との密着性に優れる上に、変形性にも優れる。そのため、リン酸塩からなる絶縁被覆は、成形時、上述の鉄系の粉末粒子の変形に追従して変形し易く、損傷し難い。従って、健全な絶縁被覆を備える圧粉成形体が製造される。コア1は、このような圧粉成形体を備えることで、低損失になり易い。
〈相対密度〉
コア1の相対密度が高く、緻密であると、コア1は飽和磁束密度等の磁気特性、強度等の機械的特性に優れて好ましい。定量的には、本体部4の相対密度、鍔部5の相対密度はいずれも、90%以上であることが好ましい。上記相対密度が90%以上であれば、コア1は、高い飽和磁束密度を有する上に、強度にも優れる。例えば、ティース2に鍔部5を配置する際等で、ティース2や鍔部5の欠け等が防止される。磁気特性の向上、機械的特性の向上等を望む場合、上記相対密度は93%以上、更に95%以上が好ましい。
ここでの相対密度とは、コア1を構成する圧粉成形体の理論密度に対する実際に測定した圧粉成形体の実測密度の比率(%)である。上記理論密度は、圧粉成形体を構成する軟磁性材料の真密度を等価な値として利用できる。
〈その他〉
コア1は、ティース2と鍔部5とを固定する図示しない樹脂部を備えることが挙げられる。樹脂部を備えるコア1は、本体部4と鍔部5とが分離せず、一体物として扱い易い。
上記樹脂部は、例えば、ティース2と鍔部5との隙間に充填される接着剤によって構成されることが挙げられる。又は、樹脂部は、本体部4と鍔部5とを一体に覆うモールド部としてもよい。モールド部の一部は、ティース2と鍔部5との隙間に充填される。コア1を覆うモールド部は、コア1とコイル80(図7)との間の電気絶縁性を高める部材、更に機械的な保護や外部環境からの保護を行う部材としても機能する。モールド部は、コア1とコイル80(図7)とを一体に覆ってもよい。
〈製造方法〉
本体部4を構成する圧粉成形体、鍔部5を構成する圧粉成形体は、上述のように原料粉末を所定の形状に圧縮成形することで製造できる。圧縮成形には、プレス成形機等が利用できる。原料粉末は、軟磁性材料の粉末に加えて、バインダや潤滑剤を含んでもよい。金型に潤滑剤が塗布されてもよい。
原料粉末に利用する軟磁性材料の粉末の平均粒径は、例えば20μm以上350μm以下が挙げられる。上記粉末の平均粒径が上記の範囲であると、上記粉末を取り扱い易い上に、圧縮成形し易い。上記粉末の平均粒径は40μm以上300μm以下、更に250μm以下でもよい。ここでの上記粉末の平均粒径は、レーザ回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置を用いて測定し、積算質量が全粒子の質量の50%となる粒径とする。
圧縮成形時の圧力が高いほど、緻密化し易く、相対密度が高いコア1が製造される。上記圧力は、例えば700MPa以上、更に980MPa以上が挙げられる。
圧縮成形後、成形体に必要に応じて熱処理を施すことが挙げられる。例えば、熱処理によって、歪みを除去することで、低損失なコア1が製造される。又は、例えば、熱処理によって、バインダや潤滑剤を除去することが挙げられる。原料粉末が上述の被覆粒子を含む場合、熱処理温度は、絶縁被覆の分解温度以下が好ましい。
(実施形態の主な作用・効果)
実施形態のコア1は、鍔部5を備えるものの、ティース2を備える本体部4と鍔部5とが独立した部材である。そのため、コア1は、各ティース2に鍔部5が配置されていない状態で、各ティース2にコイル80を配置することができる。このようなコア1を備えるステータやアキシャルギャップ型回転電機は、製造性に優れる。
特に、実施形態のコア1は、枠状の鍔部5を備えてティース2の端面20を露出させると共に、露出面積率を特定の範囲とする。そのため、コア1を備えるアキシャルギャップ型回転電機は、トルクの低下を抑制でき、高いトルクを有する。以下の試験例で、トルクの低下の抑制効果を具体的に説明する。
[ステータ]
図7を参照して、実施形態のステータ8を説明する。
実施形態のステータ8は、コア1と、コア1に備えられる各ティース2に配置されるコイル80とを備える。このステータ8は、アキシャルギャップ型回転電機、例えば回転電機9に用いられる。図7は、図1に示すコア1を備える場合を例示する。
各コイル80は、巻線を螺旋状に巻回してなる筒状部を備える。この例のコイル80は、巻線を被覆平角線とする四角筒状のエッジワイズ巻きコイルである。なお、図7は、筒状部のみを示し、巻線の両端部は図示を省略している。
実施形態のステータ8は、ティース2と鍔部5とが分離可能な実施形態のコア1を備える。そのため、コイル80を別途作製しておき、鍔部5を配置する前のティース2の外側にコイル80を嵌めることで、各ティース2にコイル80を容易に配置することができる。また、コイル80をティース2に挿通させた後、各ティース2の先端部に鍔部5を固定すれば、コイル80がヨーク3と鍔部5との間に介在されると共にティース2が挿通されたステータ8を製造することができる。コア1を構成部材とするステータ8は、製造過程で、巻線の巻回工程と、ティース2へのコイル80の配置工程とを独立した工程にできる。そのため、各ティース2に巻線を直接巻回する必要が無い。従って、巻線を巻回し易く、コイル80の製造が容易である。
かつ、実施形態のステータ8は、実施形態のコア1を備えるため、トルクの低下を抑制でき、高いトルクを有するアキシャルギャップ型回転電機を構築できる。
[回転電機]
図8を参照して、実施形態の回転電機9を説明する。
図8は、回転電機9の回転軸91に平行な平面で切断した断面図である。
実施形態の回転電機9は、実施形態のステータ8を備える。詳しくは、回転電機9は、ロータ90と、ステータ8とを備え、ロータ90とステータ8とが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型のものである。このような回転電機9は、モータ又は発電機に利用できる。図8は、一つのロータ90が二つのステータ8で挟まれるように組み付けられるシングルロータ、ダブルステータ型のものを例示する。その他、一つのロータ90と一つのステータ8とを備える形態、一つのステータ8が二つのロータ90で挟まれるように組み付けられる形態等が挙げられる。
ステータ8及びロータ90は、円柱状の内部空間を有するケース92に収納される。ケース92は、円筒部と、二つのプレート部とを備える。円筒部は、ステータ8及びロータ90の外周を囲む。円筒部の両側にそれぞれプレート部が配置される。ステータ8及びロータ90は、二つのプレート部に挟まれるようにケース92に収納される。ステータ8は、コア1のヨーク3の外周面がケース92のプレート部に嵌め込まれることで、ケース92に固定される。両プレート部は、その中心部に貫通孔を備える。貫通孔には軸受け93が設けられ、軸受け93を介して回転軸91が挿通される。また、ヨーク3の軸孔39にも図示しない軸受けが設けられ、この軸受を介して、回転軸91が挿通される。回転軸91は、ケース92内を貫通する。
ロータ90は、複数の磁石95と、磁石95を支持するロータ本体とを備える平板状の部材である。各磁石95は、例えば鍔部5の平面形状に対応した平面形状を有する平板状である。ロータ本体は、円環状の部材であり、回転軸91によって回転可能に支持される。各磁石95は、ロータ本体の周方向に等間隔に配置される。また、各磁石95は、回転軸91の軸方向に着磁される。ロータ本体の周方向に隣り合う磁石95の磁化方向は互いに逆である。ロータ本体が回転すると、磁石95もロータ本体と共に回転する。
ステータ8は、ティース2の端面20及び鍔部5の端面50がロータ90の磁石95に対向するように配置される。ロータ90が回転すると、ティース2の端面20及び鍔部5の端面50は、回転する磁石95からの磁束を受ける。
実施形態の回転電機9は、実施形態のステータ8を備える。上述のようにステータ8は組み立て易いため、回転電機9は製造性に優れる。また、実施形態の回転電機9は、実施形態のステータ8を備えるため、トルクの低下を抑制でき、高いトルクを有する。
[試験例]
環状のヨークと、複数のティースと、各ティースの端部に設けられる鍔部とを備えるコアを三相交流アキシャルギャップ型モータのステータに用いたときのトルクをシミュレーションによって調べた。
以下の試験では、電磁界解析ソフトウェア、ここでは株式会社JSOL製「JMAG」を用いて解析した。シミュレーションに用いたコアのモデルはいずれも、構成材料を純鉄とし、相対密度が90%以上である圧粉成形体とする。鍔部の内周形状及び外周形状、ティースの端面の形状はいずれも相似な台形状であると共に、ティースの周面に概ね相似な形状である。鍔部及びティースにおいて台形の長辺部分は鍔部におけるヨークの外周縁側に配置される。各コアの大きさは、本質的に同じ大きさとする。また、以下の各試験では、コアの形状、ティースと鍔部との間隔が異なる点等を除いて、ティースに配置するコイルの通電条件、ティースの先端側に配置される磁石の回転条件を同じとしてトルクを調べた。
[試験例1]
この試験では、ヨークと、ティースと、鍔部とを備えるコアのモデルについて、分割位置の相違によるトルクへの影響を調べた。
(試料の説明)
試料No.100のコアは、ヨークと、ティースと、鍔部とが一体に成形された場合を仮想した理想の形状である。試料No.100のコアは、複数の分割片の組物ではなく、一体成形物であり、ヨークとティース間及びティースと鍔部間に磁気ギャップとなり得る隙間が無い。
試料No.101のコアは、試料No.100の理想のコアに対して、ティースと鍔部とが分割されたコアである。つまり、このコアは、ヨークとティースとが一体成形物であり、鍔部が上記一体成形物とは独立した部材である。鍔部は貫通孔を有しない平板材であり、ティースの端面に接合される。そのため、試料No.101のコアは、ティースと鍔部との間に磁気ギャップとなり得る隙間がある。上記隙間の平面積は、ティースの断面積と同等である。上記隙間の間隔は0.1mmとする。試料No.101のコアでは、上記磁気ギャップは、磁束と直交する方向に配置される直交ギャップである。
試料No.102,No.103のコアは、試料No.100の理想のコアに対して、ヨークとティースとが分割されたコアである。つまり、各コアは、ティースと鍔部とが一体成形物であり、ヨークが上記一体成形物とは独立した部材である。
試料No.102のコアでは、ヨークは、円環状の平板材であり、ヨークの表面にティースの端面が接合される。ここでのヨークの表面及びティースの端面は平面である。そのため、試料No.102のコアは、ヨークとティースとの間に磁気ギャップとなり得る隙間がある。上記隙間の平面積は、ティースの断面積と同等である。上記隙間の間隔は0.1mmとする。試料No.102のコアでは、上記磁気ギャップは、磁束と直交する方向に配置される直交ギャップである。
試料No.103のコアでは、ヨークは、ティースの一端部が挿入される貫通孔を有する円環状の平板材である。そのため、試料No.103のコアは、ヨークの貫通孔の内周面とティースの一端部の外周面との間に磁気ギャップとなり得る環状の隙間がある。上記環状の隙間は、上記貫通孔の周方向に一様な間隔とし、上記間隔を0.1mmとする。
試料No.104のコアは、試料No.100の理想のコアに対して、ティースがその軸方向に直交する方向に分割されたコアである。つまり、このコアは、ティースの一部とヨークとが一体成形物である分割片と、ティースの残部と鍔部とが一体成形物である分割片とを備える。そのため、試料No.104のコアは、ティースの軸方向の中間位置に磁気ギャップとなり得る隙間がある。上記隙間の平面積は、ティースの断面積と同等である。上記隙間の間隔は0.1mmとする。試料No.104のコアでは、上記磁気ギャップは、磁束と直交する方向に配置される直交ギャップである。
試料No.1のコアは、試料No.100の理想のコアに対して、ティースと鍔部とが分割されたコアである。つまり、このコアは、ヨークとティースとが一体成形物であり、鍔部が上記一体成形物とは独立した部材である。鍔部は、ティースの先端部が挿入される貫通孔を有する枠状の部材であり、貫通孔からティースの端面を露出させる。試料No.1のコアは、ティースの先端部の外周面と鍔部の貫通孔の内周面との間に磁気ギャップとなり得る環状の隙間がある。上記環状の隙間は、上記貫通孔の周方向に一様な間隔とし、上記間隔を0.1mmとする。ティースは、先端部に段差部を有する。段差部の高さhと鍔部の厚さtとは等しい。試料No.1のコアにおける露出面積率は37.7%である。露出面積率の求め方は試験例2で説明する。
(試験条件)
この試験では、以下のステータコアを備えるモータを仮想し、このモータのトルクを検討した。
(ステータコアの条件)
コイル巻数は30ターンである。
コアは、14極12スロットである。
ティースの断面積は102mmである。
ヨークの外径は100mmである。
ヨークの内径は70mmである。
各試料のトルク(N・m)を表1に示す。また、試料No.100のトルクを基準として、各試料のトルクの低減率(%)を求めた。トルクの低減率は、{(各試料のトルク-試料No.100のトルク)/試料No.100のトルク}×100で求めた。トルクの低減率(%)も表1に示す。
Figure 0007524419000001
表1に示すように、試料No.1は、試料No.100に対するトルクの低減率が試料No.101~No.104に比較して小さく、高いトルクを有することが分かる。定量的には、試料No.1のトルクの低減率は、7%未満、更に5%以下である。この理由の一つとして、試料No.1のコアは、ヨークとティースとが一体であり、ティースからヨークに磁束を通過させ易かったことが考えられる。このことは、試料No.101のトルクが試料No.102のトルクよりも高いことから裏付けられる。また、別の理由の一つとして、試料No.1のコアは、分割片間に生じる隙間が小さく、上記隙間が磁気ギャップ、特に直交ギャップとなり難いことが考えられる。このことは、直交ギャップが大きい試料No.101,No.102,No.104のトルクが非常に小さいこと、試料No.1のトルクが試料No.101のトルクに比較して大きいことから裏付けられる。
この試験から、ヨークと、ティースと、鍔部とを備えるコアを分割する場合、以下の構成が好ましいことが示された。ヨークとティースとが一体物であり、鍔部が独立部材である。鍔部には貫通孔が設けられる。貫通孔にはティースが挿入されて、貫通孔からティースの端面が露出される。
[試験例2]
この試験では、試験例1で用いた試料No.1のコアに対して、鍔部の貫通孔の大きさを変更し、貫通孔から露出されるティースの端面の面積を変更した。鍔部の貫通孔から露出されるティースの面積の相違によるトルクへの影響を調べた。
この試験に用いた各試料のコアの基本的な構成は、試料No.1と同様である。即ち、ティースの先端部の外周面と鍔部の貫通孔の内周面との間隔は0.1mmであり、ティースは段差部を有し、高さh=厚さtである。上記間隔は、貫通孔の全周にわたって均一な大きさである。
各試料について、鍔部の外周縁内の面積Sと、鍔部の貫通孔から露出されるティースの端面の面積Sとを求めた。鍔部の面積Sは鍔部の貫通孔の面積を含む。この鍔部の面積Sに対するティースの面積Sの割合、即ち、露出面積率(%)を(S/S)×100によって求め、その値を表2に示す。各試料のトルク(N・m)を表2に示す。また、試験例1と同様に試料No.100のトルクを基準として、各試料のトルクの低減率(%)を求め、結果を表2に示す。
Figure 0007524419000002
表2に示すように、試料No.1~No.3は、試料No.100に対するトルクの低減率が試料No.105に比較して小さく、高いトルクを有することが分かる。定量的には、試料No.1~No.3のトルクの低減率は、7%未満である。特に、試料No.1,No.2のトルクの低減率は5%以下である。この理由の一つとして、試料No.1~No.3のコアは、試料No.105のコアよりも露出面積率が高いため、鍔部の貫通孔から露出されるティースが磁束を直接受けられる上に、鍔部からティースに磁束を通過させ易いことが考えられる。
この試験から、露出面積率は、5.5%以上、特に7.5%以上であれば、トルクの低下を効果的に抑制でき、高いトルクを有し易いことが示された。また、この試験から、露出面積率が高いほど、ここでは30%以上、更に35%以上であると、トルクの低下をより抑制し易いことが分かる。なお、露出面積率の上限は特に制限されず、鍔部をティースに設置可能であれば、例えば90%でもよい。
[試験例3]
この試験では、試験例2で用いた試料No.2のコアに対して、鍔部の貫通孔にティースの端面を偏って配置し、ティースの先端部の外周面と鍔部の貫通孔の内周面との間隔が貫通孔の周方向に不均一な状態に変更した。上記間隔の大きさの相違によるトルクへの影響を調べた。
この試験に用いた各試料のコアは、ティースの端面の面積及び鍔部の外周縁内の面積を一定とし、露出面積率を試料No.2の値、即ち10.2%とする。鍔部の内周形状及び外周形状、ティースの端面の形状はいずれも相似な台形状であると共に、ティースの周面に概ね相似な形状である。ティースは段差部を有し、高さh=厚さtである。このような各コアに対して、上記間隔が表3に示す間隔の最大差(mm)を満たすように鍔部の貫通孔の大きさを変更した。また、鍔部の貫通孔に対して、ティースの端面を偏って配置した。表3の間隔の最大差とは、上記間隔の最大値と上記間隔の最小値との差である。
ここでは、ティースの先端部の外周面と鍔部の貫通孔の内周面とが接する領域、即ち上記間隔が0.05mm以下である近接領域を主としてヨークの周方向の同じ側に設けた。上記間隔が大きい箇所をヨークの周方向の逆側に設けた。上記間隔の最小値は0mmであり、上記間隔の最大値は表3(mm)に示す間隔の最大差に等しい。なお、近接領域において、鍔部の貫通孔の周長に対して鍔部の周方向に沿った長さの割合、即ち接合割合は45%であり、20%超である。
各試料のトルク(N・m)を表3に示す。また、試験例1と同様に試料No.100のトルクを基準として、各試料のトルクの低減率(%)を求め、結果を表3に示す。
Figure 0007524419000003
表3に示すように、試料No.4,No.5,No.15はいずれも、試料No.100に対するトルクの低減率が小さく、高いトルクを有することが分かる。定量的には、試料No.4,No.5,No.15におけるトルクの低減率は7%未満である。特に、試料No.4,No.5のトルクの低減率は5%以下であり、試料No.15におけるトルクの低減率よりも小さい。この理由の一つとして、試料No.4,No.5のコアは、間隔の最大差が0.40mm未満と小さく、ティースと鍔部の貫通孔との間の隙間が磁気ギャップになり難かったことが考えられる。特に、試料No.5におけるトルクの低減率は3%以下であり、試料No.4よりもトルクの低下が小さい。このことから、試料No.5のコアでは、間隔の最大差が0.30mm以下と更に小さいため、ティースと鍔部の貫通孔との間の隙間が磁気ギャップに更になり難かったと考えられる。また、この試験では、試料No.5のコアは、ティースと鍔部の貫通孔との間に0.30mmの隙間があるものの、上述の試料No.2と同等程度の高いトルクを有する。
この試験から、間隔の最大差が0.40mm未満、好ましくは0.30mm以下であれば、トルクの低下を効果的に抑制でき、高いトルクを有し易いことが示された。なお、間隔の最大差の下限は特に制限されない。鍔部とティースとを高精度に製造可能であり、両者を損傷することなく組立可能であれば、間隔の最大差は例えば0mmでもよい。
[試験例4]
この試験では、試験例3と同様にして、試験例2で用いた試料No.2のコアに対して、ティースの先端部の外周面と鍔部の貫通孔の内周面との間隔が貫通孔の周方向に不均一な状態に変更した。また、鍔部に上記間隔が0.05mm以下である近接領域を設けると共に、近接領域における鍔部の貫通孔の周方向に沿った長さ、及び近接領域の配置位置を変更した。上記近接領域の長さ、配置位置の相違によるトルクへの影響を調べた。
この試験に用いた各試料のコアの基本的事項は、試験例3と同様である。即ち、ティースの端面の面積及び鍔部の外周縁内の面積は一定である。露出面積率は10.2%であり、ティースは段差部を有し、高さh=厚さtである。間隔の最大差は、0.20mmであり、0.40mm未満である。
試料No.7のコアは、鍔部におけるヨークの外周縁側に近接領域を備える。試料No.6のコアは、鍔部におけるヨークの内周縁側に近接領域を備えると共に、近接領域の上記長さが試料No.7よりも短い。
各試料のコアについて、鍔部の貫通孔の周長Lと、近接領域における鍔部の周方向に沿った長さL55とを求めた。そして、周長Lに対する近接領域の長さL55の割合、即ち接合割合を(L55/L)×100によって求め、その値を表4に示す。また、各試料のトルク(N・m)を表4に示す。更に、試験例1と同様に試料No.100のトルクを基準として、各試料のトルクの低減率(%)を求め、結果を表4に示す。
Figure 0007524419000004
表4に示すように、試料No.6,No.7,No.16のコアはいずれも、試料No.100に対するトルクの低減率が小さく、高いトルクを有することが分かる。定量的には、試料No.6,No.7,No.16におけるトルクの低減率は7%未満である。特に、試料No.6,No.7のトルクの低減率は5%以下であり、試料No.16におけるトルクの低減率より小さい。この理由の一つとして、試料No.6,No.7のコアは、近接領域の接合割合が20%超であり、近接領域からティースに磁束を通過させ易かったことが考えられる。特に、試料No.7におけるトルクの低減率は3%以下であり、試料No.6よりもトルクの低下が小さい。このことから、試料No.7のコアでは、近接領域の接合割合が35%以上と更に大きいため、近接領域からティースに磁束を更に通過させ易かったと考えられる。また、この試験では、試料No.7のコアにおける上述の間隔の最大差は上述の試料No.2よりも大きいものの、試料No.7のコアは、試料No.2と同等以上の高いトルクを有する。
この試験から、鍔部が近接領域を備える場合に近接領域の接合割合が20%超、好ましくは30%以上、更に35%以上であると、トルクの低下を効果的に抑制でき、高いトルクを有し易いことが示された。また、近接領域の接合割合を大きくするには、例えば、近接領域を鍔部におけるヨークの外周領域に設けることが示された。なお、近接領域の接合割合の上限値は特に制限されない。例えば、鍔部は、貫通孔の全周にわたって近接領域を有してもよい。つまり、近接領域の接合割合は100%でもよい。
[試験例5]
この試験では、試験例4と同様にして、試験例2で用いた試料No.2のコアに対して、ティースの先端部の外周面と鍔部の貫通孔の内周面との間隔が貫通孔の周方向に不均一な状態に変更した。また、鍔部に上記間隔が0.05mm以下である近接領域を設けると共に、近接領域の配置位置を変更した。上記近接領域の配置位置の相違、ロータの回転方向の相違によるトルクへの影響を調べた。
この試験に用いた各試料のコアの基本的事項は、試験例4と同様である。即ち、ティースの端面の面積及び鍔部の外周縁内の面積は一定である。露出面積率は10.2%であり、ティースは段差部を有し、高さh=厚さtである。間隔の最大差は、0.2mmであり、0.40mm未満である。近接領域の接合割合は22%であり、20%超である。
試料No.8,No.9のコアは、隣り合うティースに固定される鍔部において、ティースが対向する側に近接領域を備えた。即ち、隣り合う鍔部の近接領域は、向かいあって配置される。試料No.8のコアでは、上記隣り合うティースに異相のコイルを配置した。試料No.9のコアでは、上記隣り合うティースに同相のコイルを配置した。
試料No.10,No.11のコアは、各鍔部の近接領域をヨークの周方向の同じ側に備えた。試料No.10のコアは、各鍔部の近接領域をロータの回転方向と同じ側に備える。試料No.11のコアは、各鍔部の近接領域をロータの回転方向と逆側に備える。
各試料のトルク(N・m)を表5に示す。また、試験例1と同様に試料No.100のトルクを基準として、各試料のトルクの低減率(%)を求め、結果を表5に示す。
Figure 0007524419000005
表5に示すように、試料No.8~No.11はいずれも、試料No.100に対するトルクの低減率が比較的小さく、高いトルクを有することが分かる。定量的には、試料No.8~No.11におけるトルクの低減率は5%以下である。この理由の一つとして、試料No.8~No.11のコアは、近接領域を有することで、近接領域からティースに磁束を通過させ易かったことが考えられる。また、この試験では、試料No.8~No.11のコアはいずれも、ティースと鍔部の貫通孔との間に隙間があるものの、上述の試料No.2と同等程度の高いトルクを有する。
この試験では、隣り合うティースに固定される鍔部において、ティースが対向する側に近接領域を備える場合、各ティースに同相のコイルが配置されると、トルクの低下がより抑制され易いといえる(試料No.9参照)。また、この試験では、各鍔部の近接領域がヨークの周方向の同じ側に設けられる場合、近接領域の配置位置がロータの回転方向と同じ側であると、トルクの低下がより抑制され易いといえる(試料No.10参照)。
[試験例6]
この試験では、試験例1,2で用いた試料No.1のコアに対して、ティースの段差部の高さh(mm)を変更し、鍔部の貫通孔から露出されるティースの突出高さを変更した。ティースの突出高さの相違によるトルクへの影響、コギングトルクへの影響を調べた。
この試験では、試験例1,2で用いた試料No.1のコアに対して、ティースの段差部の高さh(mm)を変更した以外の点は、試料No.1と同様とした。即ち、ティースの端面の面積及び鍔部の外周縁内の面積は一定である。露出面積率は37.7%である。ティースの先端部の外周面と鍔部の貫通孔の内周面との間隔は0.1mmである。上記間隔は、貫通孔の全周にわたって均一な大きさである。各試料のティースの段差部の高さh(mm)、鍔部の厚さt(mm)を表6に示す。
試料No.1のコアでは、ティースの先端部の角部において、段差部の底面と段差部の周面との交差角度が90°である。また、鍔部の内周面と鍔部における段差部の底面に載置される面との交差角度が90°である。ティースの端面と鍔部の端面とは面一である。この交差角度に関する点は、上述の試験例1~5の各試料であって段差部を有する試料において同様である。
試料No.12~No.14の形状は、ティースの先端部において鍔部の端面から突出する部分の角部を平面取りしたような形状とした。ティースの先端部は、ティースの端面に交差する傾斜面を含む。ティースの傾斜面におけるティースの端面の延長面に対する角度は5°~60°の範囲から選択した。ティースの傾斜面は、鍔部の貫通孔から露出される。なお、面取り形状により、試料No.12~No.14におけるティースの端面の面積は、厳密には試料No.1よりも若干小さい。そこで、ここでの露出面積率は、ティースにおける鍔部の端面に位置する箇所の最大断面積とする。
各試料のトルク(N・m)、コギングトルク(cN・m、センチニュートン・メートル)を表6に示す。また、試験例1と同様に試料No.100のトルクを基準として、各試料のトルクの低減率(%)を求め、結果を表6に示す。
Figure 0007524419000006
表6に示すように、試料No.1,No.12~No.14はいずれも、試料No.100に対するトルクの低減率が比較的小さく、高いトルクを有することが分かる。定量的には、試料No.12~No.14におけるトルクの低減率は5%以下である。この理由の一つとして、試料No.12~No.14のコアは、試料No.1と同様に露出面積率が高いため、鍔部の貫通孔から露出されるティースが磁束を直接受けられる上に、鍔部からティースに磁束を通過させ易いことが考えられる。
但し、試料No.1,No.12~No.14では、コギングトルクの大きさが異なる。ティースの段差部の高さh(mm)と鍔部の厚さt(mm)との差Δ(h-t)(mm)が大きいほど、コギングトルクが小さい。定量的には、差Δ(h-t)が0mmである試料No.1に比較して、差Δ(h-t)が0mm超、ここでは更に1mm以上と大きいほど、コギングトルクが効果的に低減される。但し、差Δ(h-t)が大きいほど、トルクの低下がみられる。この点は、例えば試料No.12とNo.14とを比較参照することから裏付けられる。
この試験から、ティースの先端部に段差部を備える場合、鍔部の貫通孔からティースの端面側の領域が突出するように、ティースの段差部の高さhと鍔部の厚さtとを調整することで、コギングトルクも低減できることが示された。特に、差Δ(h-t)が0mm超3mm以下であれば、コギングトルクが低減されつつ、トルクの低下が抑制されるといえる。
上述の試験例1~6から、ティースの先端部に鍔部を備えるコアにおいて、以下の条件(1)~(3)を満たすことで、ティース、ヨーク、鍔部の一体物に比較して、トルクの低下を抑制できることが示された。また、以下の条件(1)を満たすことで、上記一体物に比較して、アキシャルギャップ型回転電機や、この回転電機に利用されるステータは、組み立て易く、製造性に優れるといえる。
(1)ヨークとティースとが一体物であり、鍔部がティースに対して分割された部材である。
(2)鍔部は貫通孔を有し、この貫通孔からティースの端面を露出させる。
(3)ティースの端面における鍔部の貫通孔から露出される割合、即ち露出面積率が7.5%以上である。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上述の試験例1~6において、コアの材質、相対密度、ティース及び鍔部の形状等を変更できる。
1 コア
2 ティース、20 端面、21 周面、22 傾斜面、25 段差部、
250 底面、251 周面
3 ヨーク、30 表面、39 軸孔
4 本体部
5 鍔部、50 端面、51 外周縁、52 貫通孔、520 内周面
53,54 傾斜面、55 近接領域、56 外周領域、57 内周領域
8 ステータ、80 コイル
9 回転電機、90 ロータ、91 回転軸、92 ケース、93 軸受け
95 磁石
min 間隔の最小値、gmax 間隔の最大値
h 高さ、t 厚さ、Δ(h-t) 高さと厚さとの差、θ,α 角度

Claims (17)

  1. アキシャルギャップ型回転電機に用いられるコアであって、
    本体部と、複数の枠状の鍔部とを備え、
    前記本体部は、環状のヨークと、前記ヨークの周方向に並ぶ複数の柱状のティースとを備え、
    各前記鍔部は、各前記ティースの先端部に固定され、
    前記ヨークと複数の前記ティースとは、一体の圧粉成形体で構成され、
    各前記鍔部は、貫通孔を有する圧粉成形体で構成され、
    前記ティースの先端部は、前記貫通孔に挿通されて、前記ティースの端面が前記貫通孔から露出されており、
    前記ヨークの軸方向の平面視で、前記鍔部の外周縁内の面積に対する前記ティースの端面の面積の割合が7.5%以上であり、
    前記先端部の外周面と前記貫通孔の内周面との間隔が前記貫通孔の周方向に不均一であり、
    前記先端部の外周面と前記貫通孔の内周面との間隔は、前記鍔部における前記ヨークの外周縁側よりも前記鍔部における前記ヨークの内周縁側の方が大きい、
    コア。
  2. 前記先端部の外周面と前記貫通孔の内周面との間隔の最大値と最小値との差が0.40mm未満である請求項に記載のコア。
  3. 前記鍔部は、前記先端部の外周面と前記貫通孔の内周面との間隔が0.05mm以下である近接領域を有する請求項1または請求項2に記載のコア。
  4. 前記貫通孔の周長に対して、前記近接領域における前記貫通孔の周方向に沿った長さの割合が20%超である請求項に記載のコア。
  5. 前記鍔部は、前記近接領域の少なくとも一部を前記鍔部における前記ヨークの外周縁側に備える請求項3または請求項4記載のコア。
  6. 前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースに固定される前記鍔部は、前記近接領域の少なくとも一部を両前記ティースが対向する側に備える請求項から請求項5のいずれか1項に記載のコア。
  7. 隣り合う前記ティースには、同相のコイルが配置される請求項6に記載のコア。
  8. 前記近接領域の少なくとも一部を前記鍔部における前記ヨークの周方向の同じ側に備える請求項から請求項5のいずれか1項に記載のコア。
  9. 前記ティースは、前記鍔部が載置される段差部を有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のコア。
  10. 前記段差部の高さは、前記鍔部の厚さ以上である請求項9に記載のコア。
  11. 前記段差部の高さと前記鍔部の厚さとの差が0mm超3mm以下である請求項10に記載のコア。
  12. 前記段差部の底面と前記段差部の周面との交差角度が90°であり、
    前記貫通孔の内周面と前記鍔部における前記段差部の底面に載置される面との交差角度が90°である請求項9から請求項11のいずれか1項に記載のコア。
  13. 前記ティースの先端部は、前記ティースの端面に交差する傾斜面を含み、
    前記傾斜面における前記端面の延長面に対する角度が5°以上60°以下である請求項11に記載のコア。
  14. 前記コアの構成材料は、純鉄、Siを含む鉄基合金、又はAlを含む鉄基合金を含む請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のコア。
  15. 前記コアの相対密度は90%以上である請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のコア。
  16. 請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のコアと、
    各前記ティースに配置されるコイルとを備える、
    ステータ。
  17. 請求項16に記載のステータを備える、
    回転電機。
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