JP7521983B2 - 管継手、配管構造、及び管継手の製造方法 - Google Patents

管継手、配管構造、及び管継手の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、管継手、配管構造、及び管継手の製造方法に関する。
従来、鋼管や合成樹脂管からなる配管周りをグラスウール等の保温材で被覆することによって配管周りの結露等を防止するのが一般的である。
しかし、上記従来の方法では、配管の作業とは別に、保温材を巻いたり被せたりする作業が必要であるため作業効率が悪く、狭い作業スペースでは作業を行えない場合もある。
そこで、断熱層となる発泡樹脂層を有する樹脂製の管部材や管継手が提案されている。断熱層を設けることにより、配管施工後に保温材で被覆しなくても結露の防止が可能となる。
特許文献1には、本体部の内部に発泡樹脂からなる断熱層を備え、この断熱層を囲繞する本体部の内外壁と接続部とが、射出成形により一体成形された構成の断熱層付き管継手が提案されている。特許文献1には、耐衝撃性に優れるゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体に、ポリメタクリル酸メチルを混練し、さらに発泡剤を加えた樹脂を射出成形して、発泡樹脂層の表面が非発泡樹脂層で覆われた管継手を製造することが記載されている。
特許文献1に記載されているように、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂を配合すると、管継手を透明にすることができ、管部材と管継手の接続状態を視認しやすくなる。
特許第6581749号公報
しかし、本発明者がさらに検討したところ、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体に、ポリメタクリル酸メチルを配合した樹脂組成物を用いて管継手を製造すると、メルトマスフローレートが低下し、成形性に支障を生じる場合があることがわかった。
なお、温度を高くすれば、成形に必要な流動性を確保しやすくなる。しかし、発泡剤を加えた樹脂を射出成形して、発泡樹脂層の表面に非発泡樹脂層を形成する場合、温度を高くしすぎると、発泡を制御できず、表面が非発泡樹脂層とならない。
また、管継手は、様々な流体と接触することから、少なくとも流路に接する部分には、耐薬品性が求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、メルトマスフローレートの値が高く成形性が良好で、かつ耐薬品性に優れた管継手とその製造方法、及びこの管継手を用いた配管構造を提供することを課題とする。
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]管部材が挿入される複数の受口部を有し、内部に前記複数の受口部を連通する流路が形成された管継手であって、
少なくとも、前記流路に接する部分は樹脂組成物(I)で構成され、
前記樹脂組成物(I)は、シアン化ビニル系単量体単位とジエン系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位と、メタクリル系単量体単位とを含み、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、メタクリル系単量体単位の含有量が、前記樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に対して30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、シアン化ビニル系単量体単位とメタクリル系単量体単位の合計含有量が、前記樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に対して、35~80質量%ある、管継手。
[2]熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に対して、30質量%以下である、[1]に記載の管継手。
[3]前記樹脂組成物(I)がアクリルゴムを含む、[1]又は[2]に記載の管継手。
[4]前記樹脂組成物(I)のJIS K 7210:1999に従い、試験温度220℃、試験荷重9.8Nで測定されるメルトマスフローレートが、5g/10分以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の管継手。
[5]前記樹脂組成物(I)で構成された表面層と、前記表面層に覆われた発泡樹脂層を備え、前記表面層は発泡倍率が1.0倍以上1.1倍未満であり、前記発泡樹脂層は発泡倍率が1.1倍以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の管継手。
[6][1]~[5]のいずれか一項に記載の管継手と、前記管継手の前記受口部に挿入接続された管部材と、を備える配管構造。
[7][1]~[6]のいずれか一項に記載の管継手を製造する方法であって、前記樹脂組成物(I)の粉末又はペレットに発泡剤を混合して発泡性樹脂組成物を得、得られた発泡剤樹脂組成物を射出成形する、管継手の製造方法。
[8]前記樹脂組成物(I)の粉末又はペレットを乾燥させてから前記発泡剤を混合する、[7]に記載の管継手の製造方法。
本発明の管継手と配管構造によれば、耐薬品性に優れた管継手と配管構造が得られる。また、本発明の管継手の製造方法によれば、メルトマスフローレートが高く成形性に優れた樹脂組成物を用いるため、製造が容易である。
本発明の一実施形態に係る管継手を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る配管構造を示す平面図である。
[管継手の構造]
本発明の管継手は、管部材が挿入される複数の受口部を有し、内部に前記複数の受口部を連通する流路が形成された構造とされている。
受口部の数に限定はないが、2つ又は3つであることが好ましい。
図1に本発明の一実施形態に係る受口部の数が3つの管継手1を示す。
図1に示すように、本実施形態の管継手1は、ドレンパイプの接続に使用される継手(一般的に「チーズ」(tees)と称される3方向分岐のT形の配管接合継手)を一例としている。管継手1は、第一の管軸O1と、第二の管軸O2とを有する。二つの管軸O1及びO2は、互いに90.0°±1.1°の角度で交差する。
管継手1は、内部に流路(例えばドレンの流路)が形成された管状の本体部10と、この本体部10と一体に形成された3つの受口部20aと20bと20cとを有する。
本体部10は、発泡樹脂層30と、非発泡樹脂層50とを有する。発泡樹脂層30の両面は、非発泡樹脂層50に覆われている。すなわち、本体部10の壁は、流路側から非発泡樹脂層50、発泡樹脂層30、非発泡樹脂層50が位置する3層構造になっている。受口部20aと受口部20bと受口部20cとは、非発泡樹脂層50で形成されている。すなわち、受口部20aと受口部20bと受口部20cとの壁は、非発泡樹脂層50で形成された単層構造になっている。
止水性を高める観点から、受口部20a、20b、20cは透明であることが好ましい。すなわち、管継手1と、その受口部に挿入接続される管部材との接続状態の確認を容易にする観点から、非発泡樹脂層50は、透明であることが好ましい。ここで、「透明である」とは、挿入される管や、受口部の内面に塗布される接着剤を受口部の外面から視認できる程度に透明であることをいい、半透明や有色透明であってもよい。
より具体的には、JIS K 7136:2000に従って測定される受口部のヘーズが1以上70以下であることが好ましく、1以上60以下であることがより好ましい。
直管をなす本体部10の第一の管軸O1の方向の両端に形成された開口部10a、10bには、それぞれ円筒状の受口部20a、20bが設けられている。
本体部10の第二の管軸O2の方向に形成された開口部10cには、円筒状の受口部20cが設けられている。
本体部10において、第一の管軸O1を挟んで開口部10cに対向する位置には、成形時に射出される位置となる射出ゲート部14が設けられている。
受口部20aの内径R20aは、発泡樹脂層付きの管部材を挿入接続するために、本体部10の開口部10aの内径R10aよりも大径をなしている。具体的には、比R20a/R10aが、1.0超2.0以下が好ましく、1.2以上1.8以下がより好ましく、1.4以上1.6以下がさらに好ましい。
同様に、受口部20bの内径R20bは、本体部10の開口部10bの内径R10bよりも大径をなしている。具体的には、比R20b/R10bが、1超2.0以下が好ましく、1.2以上1.8以下がより好ましく、1.4以上1.6以下がさらに好ましい。
同様に、受口部20cの内径R20cは、本体部10の開口部10cの内径R10cよりも大径をなしている。具体的には、比R20c/R10cが、1超2.0以下が好ましく、1.2以上1.8以下がより好ましく、1.4以上1.6以下がさらに好ましい。
受口部20aと本体部10との境界には、内径R20aと内径R10aとの差に基づく段差12aが形成されている。段差12aは、受口部20aに挿入された管部材の侵入を防ぐストッパーとして機能する。
受口部20bと本体部10との境界には、内径R20bと内径R10bとの差に基づく段差12bが形成されている。段差12bは、受口部20bに挿入された管部材の侵入を防ぐストッパーとして機能する。
受口部20cと本体部10との境界には、内径R20cと内径R10cとの差に基づく段差12cが形成されている。段差12cは、受口部20cに挿入された管部材の侵入を防ぐストッパーとして機能する。
段差12aは、本体部10の開口部10aの周縁に位置する周壁13で形成されている。周壁13は、円筒状の受口部20aの内周面の全周にわたって形成されており、円環状である。
段差12bは、本体部10の開口部10bの周縁に位置する周壁13で形成されている。周壁13は、円筒状の受口部20bの内周面の全周にわたって形成されており、円環状である。
段差12cは、本体部10の開口部10cの周縁に位置する周壁13で形成されている。周壁13は、円筒状の受口部20cの内周面の全周にわたって形成されており、円環状である。
周壁13は、中実である。周壁13は、内部が発泡樹脂層30で構成され、発泡樹脂層30を非発泡樹脂層50が覆っている。
周壁13には、全周にわたって発泡樹脂層30が形成されていることが好ましい。周壁13の全周にわたって発泡樹脂層30が形成されていると、受口部20a、20b、20cの基端においても断熱性を有することになり、管継手1の断熱性をより高められる。
受口部20a、20b、又は20cに挿入される管部材が発泡樹脂層を備える場合、その管部材の端面と周壁13との間には、円環状の止水部材を設けることが好ましい。円環状の止水部材としては、例えば、発泡パッキン等が挙げられる。
管部材の発泡樹脂層が連続気泡である場合、その管部材の端面と周壁13との間には、円環状の止水部材を設けることが好ましい。止水部材を設けることにより、管部材の発泡樹脂層にドレン水が侵入することを防止できる。
管部材の発泡樹脂層が独立気泡の場合、その管部材の端面と周壁13との間に止水部材を設けなくてもよい。ただし、管部材が斜めに切断された場合、その管部材の端面と周壁13との間にドレン水が滞留する可能性があるため、止水部材を設けることが好ましい。
受口部20aは、基端21aから、第一の管軸O1の方向に延びている。基端21aは、受口部20aと本体部10との境界にある。受口部20aの基端21aから開口端22aまでの長さはLである。長さLは、受口部20aの受口長さと等しい。開口端22aにおける受口部20aの厚さはdである。厚さdは、受口部20aの受口厚さと等しい。
受口部20bは、基端21bから、第一の管軸O1の方向に延びている。基端21bは、受口部20bと本体部10との境界にある。受口部20bの基端21bから開口端22bまでの長さはLである。長さLは、受口部20bの受口長さと等しい。開口端22bにおける受口部20bの厚さはdである。厚さdは、受口部20bの受口厚さと等しい。
受口部20cは、基端21cから、第二の管軸O2の方向に延びている。基端21cは、受口部20cと本体部10との境界にある。受口部20cの基端21cから開口端22cまでの長さはLである。長さLは、受口部20cの受口長さと等しい。開口端22cにおける受口部20cの厚さはdである。厚さdは、受口部20cの受口厚さと等しい。
受口部20aの基端21aから開口端22aまでの長さLと、開口端22aにおける受口部20aの厚さdとの比(以下、「L/d比」ともいう。)は、2.0以上10.0以下であり、2.0以上9.0以下が好ましく、2.5以上8.0以下がより好ましく、3.0以上7.0以下がさらに好ましく、3.5以上6.0以下が特に好ましい。
/d比が上記下限値以上であると、受口部20aに発泡樹脂層30が侵入することを抑制しやすく、受口部20aの強度の低下を抑制しやすい。加えて、L/d比が上記下限値以上であると、受口部20aの長さLが充分長いため、管継手1に挿入する管部材等の接着力が充分であり、止水性をより高められる。
/d比が上記上限値以下であると、厚さdが充分厚く、管継手1が伸び縮みによる伸縮疲労により破壊されにくくなる。加えて、L/d比が上記上限値以下であると、長さLが長過ぎず、受口部20aを形成する樹脂が金型内の端部まで充填されやすく、充填不足(「ショート」ともいう)による成形不良が起こりにくくなる。すなわち、L/d比が上記上限値以下であると、管継手1の成形性をより高められる。
/d比は、成形金型の形状により調整できる。
管継手1の受口部20bにおけるL/d比は、L/d比と同様である。
管継手1の受口部20cにおけるL/d比は、L/d比と同様である。
本体部10の熱抵抗値は、0.04K/W以上が好ましく、0.05K/W以上0.50K/W以下がより好ましく、0.06K/W以上0.45K/W以下がさらに好ましく、0.07K/W以上0.40K/W以下が特に好ましく、0.08K/W以上0.35K/W以下が最も好ましい。本体部10の熱抵抗値が上記下限値以上であると、管継手1の断熱性をより向上できる。本体部10の熱抵抗値が上記上限値以下であると、本体部10の強度が充分であり、加えて、管継手1を軽量にできる。
管継手1を構成する樹脂の組成・種類や管継手1の成形条件等によって本体部10の熱伝導率を低くしたり、本体部10の厚さ(肉厚)を大きくしたりすることによって、本体部10の熱抵抗値を高くすることができる。
一般的なドレンパイプの外径は30mm~80mm、肉厚は5mm~10mm程度とされており、このようなドレンパイプを接続するために用いる管継手1の本体部の肉厚としては8mm以上20mm以下とされている。
本体部10の熱抵抗値は、JIS A 1412-1:2016に準拠して測定した熱伝導率(W/m・K)と、熱伝導率の測定箇所における本体部10の厚さ(m)とから、下記式(1)により算出される。
熱抵抗値(K/W)=厚さ(m)/熱伝導率(W/m・K)・・・(1)
本発明の管継手としては、上述の管継手1に限定されず、エルボ、ニップル、バルブソケット等、他の形状を有する管継手であってもよい。
本発明の管継手は、少なくとも流路に接する部分が、後述の樹脂組成物(I)で構成されている。管継手1の場合、本体部10の内面と、3つの受口部20a、20b、20cの内面が流路に接する部分であって、樹脂組成物(I)で構成されている。
本発明の管継手は、製造の便宜上、非発泡樹脂層50の全体を、樹脂組成物(I)で構成した表面層とすることが好ましい。
発泡樹脂層30を構成する樹脂組成物の単量体単位の組成は、樹脂組成物(I)と同じ組成でも異なった組成でもよいが、製造の便宜上、樹脂組成物(I)と同等であることが好ましい。
樹脂組成物(I)で構成した表面層は、発泡倍率が1.0倍以上1.1倍未満であることが好ましい。すなわち、発泡していないか、発泡していても低い発泡倍率であることが好ましい。これにより、流路内の流体が管継手材質の内部に侵入しにくくなる。樹脂組成物(I)で構成した表面層の発泡倍率は1.0倍以上1.05倍以下であることがより好ましい。
また、表面層である非発泡樹脂層50に覆われた発泡樹脂層30の発泡倍率は、1.1倍以上であることが好ましく、1.1倍以上5.0倍以下がより好ましく、1.2倍以上3.0倍以下がさらに好ましい。
発泡樹脂層30の発泡倍率が好ましい下限値以上であることにより、断熱効果が生じ、結露等を防止しやすくなる。発泡樹脂層30の発泡倍率が好ましい上限値以下であることにより強度を高めることができる。
発泡倍率は、JIS K 9798:2006に記載の6.2(a)又は6.2(b)の方法に準拠して測定される。発泡倍率は、樹脂の種類又は量、発泡剤の種類又は量、製造条件等により調整できる。
発泡樹脂層30においては、複数の気泡が形成されており、気泡壁には実質的に孔が存在せず、複数の気泡の少なくとも一部は、相互に連通していない独立気泡になっていることが好ましい。
独立気泡率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。上限値は、特に限定されないが、実質的には99%以下とされる。上記数値範囲内であれば、低い熱伝導率を長期に亘って保つことができ、断熱性により優れる。
独立気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して測定される。
[樹脂組成物(I)]
本発明における樹脂組成物(I)は、シアン化ビニル系単量体単位とゴム成分であるジエン系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位と、メタクリル系単量体単位とを含む。すなわち、本発明における樹脂組成物(I)は、これらの単量体単位を含む共重合体であるか、2種以上の重合体又は共重合体の混合物である。
本明細書において、「単量体単位」とは、重合前の単量体化合物(モノマー)に由来する構造部分をさし、例えば、「シアン化ビニル系単量体単位」とは「シアン化ビニル単量体)に由来する構造部分」をさす。
樹脂組成物中の各単量体単位の含有割合は、樹脂組成物に含まれる1種の共重合体の製造に用いた単量体混合物における当該単量体の割合、又は複数の重合体各々の製造に用いた当該単量体の合計割合に該当する。
シアン化ビニル系単量体単位としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等に基づく単量体単位が挙げられる。中でも、アクリロニトリルに基づく単量体単位が好ましい。
芳香族ビニル系単量体単位としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、4-メチルスチレン、β-ブロモスチレン等に基づく単量体単位が挙げられる。中でも、スチレン、α-メチルスチレンに基づく単量体単位が好ましい。
メタクリル系単量体単位としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル等に基づく単量体単位が挙げられる。中でも、メタクリル酸メチルに基づく単量体単位が好ましい。
ゴム成分としてのジエン系単量体単位は、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、クロロプレン、2-エチルブタジエン、2-フェニルブタジエン等に基づく単量体単位が挙げられる。中でも、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2-フェニルブタジエンに基づく単量体単位が好ましい。
本明細書において、樹脂組成物における各単量体単位の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(以下、「PGC/MS」ともいう。)を用いた分析により求められる対応する単量体の質量に基づく含有量である。
以下にPGC/MSを用いた測定条件の例を示す。
(測定条件)
・装置
熱分解装置:PY-2020iD(フロンティア・ラボ株式会社)。
ガスクロマトグラフ:GC 2010(株式会社島津製作所)。
質量分析装置:GCMS-QP 2010(株式会社島津製作所)。
・熱分解条件
熱分解温度:550℃。
インターフェース温度:250℃。
・ガスクロマトグラフ条件。
キャリアー流量:1ml/min(He)。
スプリット比:100:1。
分離カラム:DB-1(1.00μm、0.25mmφ×30m)。
オーブン温度:40℃(3min)-320℃(10min)。
・質量分析条件
インターフェース温度:250℃。
イオン化温度:220℃。
マスレンジ:28~700m/z。
電圧:1.2kV。
PGC/MSの測定により樹脂組成物における各単量体単位の含有量を算出する方法について説明する。
まず、樹脂組成物を構成する各単量体単位を熱分解ガスクロマトグラフィーにより熱分解・分離し、各単量体単位が由来する単量体がピークとして記録された熱分解パターン(パイログラム)を得る。次に、熱分解パターンの各ピークについて、質量分析装置により得られるマススペクトルによっていずれの単量体であるかを特定する。
ここで、熱分解による解重合率(重合体が単量体に分解する割合)は単量体単位の種類によって異なるため、パイログラムにおける各ピークの面積(X)を、熱分解による各単量体単位の解重合率(Y)で割ったものを各単量体のピーク面積(Z)とする。各単量体単位の解重合率(Y)は、シアン化ビニル系単量体単位であるアクリロニトリルに基づく単量体単位:0.15、ジエン系単量体単位に基づく単量体単位:0.10、芳香族ビニル系単量体単位であるスチレンに基づく単量体単位:1.0である。また、メタクリル系単量体単位であるメタクリル酸メチルに基づく単量体単位の解重合率は、熱分解前に、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂として存在している場合、1.0である。また、アクリルゴムであるアクリル酸エステルに基づく単量体単位の解重合率は、熱分解前に、アクリル酸エステルの共重合体樹脂として存在している場合、1.0である。
そして、熱分解パターンの各成分のピーク面積(Z)の総和(T)に対する比率(Z/T)を、その樹脂組成物における単量体単位の含有量(質量%)とする。
すなわち、本発明における各単量体単位の樹脂成分全体に対する含有量は、樹脂組成物を構成する総ての単量体の合計質量に対する各単量体の質量の割合である。
樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に占めるメタクリル系単量体単位の含有量は30質量%以下であり、0.1~30質量%であることが好ましく、0.5~28質量%であることがより好ましく、0.5~22質量%であることがさらに好ましい。
メタクリル系単量体単位の含有量が30質量%以下であることにより、メルトマスフローレートが高く、成形性が良好な樹脂組成物とすることができる。メタクリル系単量体単位の含有量が好ましい下限値以上であることにより、透明性を得やすい。
樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に占めるシアン化ビニル系単量体単位とメタクリル系単量体単位の合計含有量は35~80質量%であり、40~80質量%であることが好ましく、45~80質量%であることがより好ましく、45~75質量%であることがさらに好ましい。
シアン化ビニル系単量体単位とメタクリル系単量体単位の合計含有量が35質量%以上であることにより、耐薬品性が得られる。シアン化ビニル系単量体単位とメタクリル系単量体単位の合計含有量が80質量%以下であることにより、メルトマスフローレートが高く、成形性が良好な樹脂組成物とすることができる。
樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に占めるシアン化ビニル系単量体単位の含有量は5~70質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~70質量%であることがさらに好ましく、50~70質量%であることが特に好ましい。
シアン化ビニル系単量体単位の含有量が好ましい下限値以上であることにより、良好な耐薬品性を得やすい。シアン化ビニル系単量体単位の含有量が好ましい上限値以下であることにより、良好な耐衝撃性を得やすい。
樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に占めるジエン系単量体単位の含有量は5~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましく、30~35質量%であることがさらに好ましい。
ジエン系単量体単位の含有量が好ましい下限値以上であることにより、良好な耐衝撃性を得やすい。ジエン系単量体単位の含有量が好ましい上限値以下であることにより、良好な耐薬品性を得やすい。
樹脂組成物(I)はアクリルゴムを含むことが好ましい。
アクリルゴムとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル等が挙げられ、これらはシアン化ビニル系単量体単位、ジエン系単量体単位またはタクリル系単量体単位との共重合体として樹脂組成物(I)に含まれていても良い。
樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に占めるアクリルゴムの含有量は0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましく、0.5~1質量%であることがさらに好ましい。
アクリルゴムの含有量が好ましい下限値以上であることにより、他の単量体単位との親和性が高まり、ゴム成分であるジエン系単量体単位の含有量が高めでも、耐薬品性を確保しやすい。アクリルゴムの含有量が好ましい上限値以下であることにより、良好な成形性を得やすい。
樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に占める芳香族ビニル系単量体単位の含有量は5~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましく、5~13質量%であることがさらに好ましい。
芳香族ビニル系単量体単位の含有量が好ましい下限値以上であることにより、メルトマスフローレートをより高くしやすく、より成形性を向上させやすい。芳香族ビニル系単量体単位の含有量が好ましい上限値以下であることにより、より良好な耐薬品性を得やすい。
樹脂組成物(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、シアン化ビニル系単量体単位とジエン系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位と、メタクリル系単量体単位以外のその他の単量体単位を含んでもよい。
その他の単量体単位としては、N-フェニルマレイミド、グリシジルメタクリレートが挙げられる。
樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に占める、その他の単量体単位の含有量は、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましい。
すなわち、樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に占める、シアン化ビニル系単量体単位とジエン系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位と、メタクリル系単量体単位の合計含有量は、95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。
樹脂組成物(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、単量体単位以外の成分、すなわち、樹脂成分以外の成分を含んでいてもよい。
樹脂組成物(I)のJIS K 7210:1999に従い、試験温度220℃、試験荷重9.8N(試験荷重10kg)で測定されるメルトマスフローレート(以下、「MFR」ともいう。)は5g/10分以上であることが好ましく、5g/10分以上90g/10分以下が好ましく、10g/10分以上80g/10分以下がより好ましく、15g/10分以上70g/10分以下がさらに好ましく、20g/10分以上60g/10分以下が特に好ましい。
樹脂組成物(I)のMFRが上記下限値以上であると、管継手1を製造する際に金型内の端部まで樹脂を充填しやすく、特に受口部で発生しやすい充填不足による成形不良が起こりにくい。すなわち、管継手1のMFRが上記下限値以上であると、管継手1の成形性をより高められる。管継手1のMFRが上記上限値以下であると、分子量が低すぎず、強度や耐薬品性に優れる。
樹脂組成物(I)の好適な態様としては、例えば以下の例が挙げられる。
ア:ABS樹脂にメタクリル酸メチルを重合させた共重合体と、アクリル酸エステルからなるアクリルゴムまたはアクリル酸エステル及びメタクリル酸メチルの共重合体からなるアクリルゴムとを混合した樹脂組成物。
イ:ABS樹脂と、スチレン及びメタクリル酸メチルの共重合体とアクリル酸エステルからなるアクリルゴムまたはアクリル酸エステル及びメタクリル酸メチルの共重合体からなるアクリルゴムとを混合した樹脂組成物。
ウ:ABS樹脂と、メタクリル酸メチルと、アクリル酸エステルからなるアクリルゴムまたはアクリル酸エステル及びメタクリル酸メチルの共重合体からなるアクリルゴムとを混合した樹脂組成物。
エ:アクリロニトリルと、ブタジエンと、スチレンと、アクリル酸エステルとの共重合体にポリメタクリル酸メチルを混合した樹脂組成物。
なお、上記のABS樹脂としては、アクリロニトリル-スチレン-メタクリル酸メチルの共重合体とポリブタジエンとを物理的に混合して得られる樹脂組成物であってもよく、ポリブタジエンにメタクリル酸メチル、スチレン及びアクリロニトリルをグラフトした樹脂であってもよく、アクリロニトリル、ブタジエン、メタクリル酸メチル及びスチレンを構成する4種のモノマーを乳化重合して得られる樹脂であってもよい。
[管継手の製造方法]
本発明に係る管継手の製造方法は、樹脂組成物(I)の粉末又はペレットに発泡剤を混合して発泡性樹脂組成物を得、得られた発泡剤樹脂組成物を射出成形する方法である。
この方法により得られる成形物の内側は、射出成形の際の加熱により発泡樹脂層となるが、表面層は、発泡倍率の低いいわゆるスキン層、すなわち、非発泡樹脂層となる。
樹脂組成物(I)の粉末又はペレットは、予め乾燥させ、その後に発泡剤を混合することが好ましい。
発泡剤を混合する前に乾燥させておくことで、成形機内で蒸発した水分によって継手内部や表面に意図しない気泡の発生を抑制し、受口部の透明性の低下や本体部の強度の低下を抑えることができる。乾燥方法としては、ホッパードライヤーや箱形乾燥炉等の熱風乾燥機を用いる方法が挙げられる。熱風乾燥の温度は60~90℃が好ましく、乾燥時間は、2~6時間とすることが好ましい。
発泡剤としては、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれを使用してもよい。
揮発性発泡剤としては、例えば脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン等が挙げられる。このうち脂肪族炭化水素としては、例えばプロパン、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン等)等が挙げられ、脂環族炭化水素としては、例えばシクロペンタン、シクロへキサン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えばトリクロロフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素等の1種又は2種以上が挙げられる。さらにエーテルとしては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられ、ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
分解型発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の有機系発泡剤が挙げられる。
その他、炭酸ガス、窒素、空気等のガスを発泡剤として用いてもよい。
発泡性能に優れる観点から、分解型発泡剤が好ましく、中でも重曹、アゾジカルボンアミドがより好ましい。
これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
発泡剤の配合量は、樹脂組成物(I)の100質量部に対して、0.1質量部以上8質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましく、1質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。
射出成形において、金型内に射出される直前の発泡性樹脂組成物の温度(成形温度)は200℃以上280℃以下が好ましく、220℃以上260℃以下がより好ましい。成形温度が上記数値範囲内であると、発泡性樹脂組成物が充分に溶融されて、発泡性樹脂組成物の良好な流動性が得られる。また、発泡性樹脂組成物がアクリル樹脂を含む場合には、成形温度が上記下限値以上であることで、管継手1の透明性を高めることができる。
金型で成形するときの時間は、1分間以上10分間以下が好ましい。金型で成形するときの時間が上記下限値以上であると、発泡性樹脂組成物を充分に硬化させることができる。金型で成形するときの時間が上記上限値以下であると、管継手1の生産性を向上しやすい。
本発明に係る管継手は、上記製造方法以外の製造方法によって製造してもよい。例えば、樹脂組成物(I)の粉末又はペレットに発泡剤を混合して発泡性樹脂組成物を得、得られた発泡剤樹脂組成物を押出成形してもよい。
押出成形の場合は、発泡性樹脂組成物を加熱溶融して押出機から金型内に注入し、任意の時間任意の温度で加熱することにより発泡性樹脂組成物を発泡・成形させる。任意の時間任意の温度で冷却した後に、所定の長さに切断することにより、所定の発泡倍率を有する管継手が得られる。
この方法により得られる成形物の内側は、押出成形の際の加熱により発泡樹脂層となるが、表面層は、発泡倍率の低いいわゆるスキン層、すなわち、非発泡樹脂層となる。
押出成形の場合も射出成形の場合と同様の理由で、樹脂組成物(I)の粉末又はペレットは、予め乾燥させ、その後に発泡剤を混合することが好ましい。
本発明に係る管継手は、発泡剤を含まない一対の樹脂組成物(I)で構成された層の層間に発泡剤を含む樹脂組成物の層を挟む多層成型により製造してもよい。また、発泡剤を含まない樹脂組成物(I)で構成された層の片側(流路と反対側)に発泡剤を含む樹脂組成物の層を積層する多層成型により製造してもよい。
これらの多層成形の場合、発泡剤を含む樹脂組成物は、樹脂組成物(I)に発泡剤を混合した発泡性樹脂組成物でもよいし、樹脂組成物(I)とは異なる樹脂組成物に発泡剤を混合した発泡性樹脂組成物でもよい。
また、発泡剤を含まない樹脂組成物(I)のみで製造してもよい。
[配管構造]
本発明の配管構造は、本発明の管継手と、前記管継手の前記受口部に挿入接続される管部材と、を備える。
本発明の実施の形態に係る配管構造について、図面に基づいて説明する。
図2に示すように、配管構造100は、管継手1と、3つの管部材201、202、203とを備える。
管部材は、特に限定されず、本発明の管継手と接続可能な管部材であればよい。管部材としては、鋼管でもよく、合成樹脂管でもよい。管部材としては、断熱性に優れる観点から、合成樹脂管が好ましく、発泡層を有する合成樹脂管がより好ましい。発泡層としては、気泡同士が互いに連通した連続気泡でもよく、気泡同士が互いに連通していない独立気泡でもよい。
本実施形態において、管部材201は、第一の管軸O1の方向に沿って、管継手1の受口部20aに挿入されて接続されている。管部材202は、第一の管軸O1の方向に沿って、管継手1の受口部20bに挿入されて接続されている。管部材203は、第二の管軸O2の方向に沿って、管継手1の受口部20cに挿入されて接続されている。
管部材201の外径R201は、受口部20aの内径R20aよりもわずかに小さい。なお、ここでいう受口部20aの内径R20aは、受口部20aの受口端部の内径をいい、比R201/R20aは、0.986~0.997が好ましい。
管部材202の外径R202は、受口部20bの内径R20bよりもわずかに小さい。なお、ここでいう受口部20bの内径R20bは、受口部20bの受口端部の内径をいい、比R202/R20bは、0.986~0.997が好ましい。
管部材203の外径R203は、受口部20cの内径R20cよりもわずかに小さい。なお、ここでいう受口部20cの内径R20cは、受口部20cの受口端部の内径をいい、比R203/R20cは、0.986~0.997が好ましい。
配管構造100は、ドレンを排水するための配管の接続部として機能する。加えて、配管構造100は、ドレンを排水するための配管の分岐部として機能する。
[配管構造の製造方法]
配管構造の製造方法は、特に限定されず、本発明の管継手の受口部に管部材を挿入し、接続することで本発明の配管構造が得られる。管継手と管部材とを接続する方法は、特に限定されず、接着剤を用いて接続してもよく、管継手の受口部の内面と管部材の外面との間にゴムパッキンなどの止水部材を設置することで接着剤を用いずに接続してもよい。
本実施形態の配管構造100では、管継手1と管部材201、202、203とは、接着剤を用いて接続されている。管継手と管部材とを接着剤を用いて接続することで、配管構造の止水性及び強度をより高められる。
管継手と管部材との接続に用いられる接着剤は、特に限定されず、瞬間接着剤やホットメルト接着剤等、公知の接着剤が挙げられる。
本実施形態の配管構造は、本実施形態の管継手を備えるため、断熱性に優れる。
加えて、本実施形態の配管構造は、本実施形態の管継手を備えるため、強度に優れる。
さらに、本実施形態の配管構造は、本実施形態の管継手を備えるため、止水性に優れる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例4、5が請求項1の実施例、実施例2、7が請求項2の実施例、その他の実施例は参考例である。
各実施例及び比較例で使用した原料、評価方法は、以下の通りである。
[実施例1]
アクリロニトリル単量体と、スチレン単量体と、ポリブタジエン(旭化成社製、ジエン35NF)と、メタクリル酸メチル単量体と、アクリル酸ブチルとを、重合開始材存在下で加熱・混練して得られた樹脂組成物を非発泡性樹脂組成物とした。このとき、非発泡性樹脂組成物をPGC/MSで測定して得られた各単量体単位の含有量が表1となる様な比率で混練した。
この非発泡性樹脂組成物をペレット状にして公知の熱風乾燥機を用いて70℃で2時間乾燥した。乾燥したペレット状の非発泡性樹脂組成物に発泡剤としてADCA(大塚化学社製、商品名「AZ-HM」、アゾジカルボンアミド)を混合したものを発泡性樹脂組成物とした。
得られた非発泡性樹脂組成物を第1の射出成型機を用いて金型キャビティ内に射出ゲート部14から所定量射出し、続いて得られた発泡性樹脂組成物を第2の射出成型機を用いて金型キャビティ内に射出ゲート部14から射出し、最後に再び非発泡性樹脂組成物を第1の射出成型機を用いて金型キャビティ内に射出ゲート部14から所定量射出することで、金型キャビティの末端である受口部では非発泡樹脂層からなり中実で、受口部の端部の内外壁面間の厚さが3.0mm、受口部の長さが22mm、金型キャビティ内で発泡性樹脂が非発泡性樹脂で覆われる本体部では内外壁面間の厚さが10mm、発泡倍率1.8倍の発泡樹脂層を有する図1に示すような受口部の内径48.3mmのDV継手タイプに形成された2層構造の管継手を製造した。
なお、表1における略号の意味を下記に示す。
A:アクリロニトリルに基づく単量体単位の含有量、
B:ジエン系ゴム成分の含有量、
S:スチレンに基づく単量体単位の含有量、
MMA:メタクリル酸メチルに基づく単量体単位の含有量、
A+MMA:アクリロニトリルに基づく単量体単位とメタクリル酸メチルに基づく単量体単位の合計含有量
[実施例2]
アクリロニトリル単量体と、スチレン単量体と、ポリブタジエンと、メタクリル酸メチル単量体と、アクリル酸ブチルとをPGC/MSで測定して得られた各単量体単位の含有量が表1となる様な比率で混練したこと以外は実施例1と同様にして非発泡性樹脂組成物を得た。
この非発泡性樹脂組成物をペレット状にして公知の熱風乾燥機を用いて60℃で4時間乾燥した。乾燥したペレット状の非発泡性樹脂組成物に発泡剤としてADCA(大塚化学社製、商品名「AZ-HM」、アゾジカルボンアミド)を混合したものを発泡性樹脂組成物とした。
得られた発泡性樹脂組成物を、ガスを充てんして加圧した金型キャビティ内に成形温度240℃で射出し、その後金型キャビティ内のガスを抜いて減圧させて発泡させることで、受口部が非発泡樹脂層からなり中実で、受口部の端部の内外壁面間の厚さが3.0mm、受口部の長さが22mm、本体部の内外壁面間の厚さが10mm、発泡倍率1.8倍の発泡樹脂層を有する図1に示すような受口部の内径48.3mmのDV継手タイプの表面にスキン層(非発泡樹脂層)が形成された管継手を製造した。
[実施例3、5~7、比較例1、2]
アクリロニトリル単量体と、スチレン単量体と、ポリブタジエンと、メタクリル酸メチル単量体と、アクリル酸ブチルとをPGC/MSで測定して得られた各単量体単位の含有量が表1となる様な比率で混練した他は、実施例2と同様にして、表面にスキン層(非発泡樹脂層)が形成された管継手を製造した。
[実施例4]
アクリロニトリル単量体と、スチレン単量体と、ポリブタジエンと、メタクリル酸メチル単量体と、アクリル酸ブチルとをPGC/MSで測定して得られた各単量体単位の含有量が表1となる様な比率で混練した他は、実施例1と同様にして、2層構造の管継手を製造した。
[MFRの測定]
各例で製造した管継手のMFRを、JIS K 7210:1999に従い、試験温度220℃、試験荷重9.8Nで測定した。結果を表1に示す。
[耐薬品性の評価]
上記実施例、比較例で用いた非発泡性樹脂組成物について、長さ200mmのダンベル形状に射出成型して試験片を得た。得られた試験片を、23℃の室内において、3MPaの伸縮応力がかかるように作製された曲げ治具に固定し、ポリエチレングリコール(ナカライテスク#200、平均分子量190~210)2mLを浸漬した10mm×20mmの大きさの綿を試験片の中央部の上に載置した。試験片は各例につき3個作製し、3個の試験片のうち任意の1個を36時間放置した後に綿を外して目視で確認した。3個の試験片のうち他の2個は、72時間放置した後に綿を外して目視で確認して耐薬品性の評価を行った。耐薬品性の評価は、試験片の割れの有無を下記評価基準に従って行った。結果を表1に示す。
(評価基準)
○:72時間経過後でも破断、クラックの発生なし。
△:載置時間1時間以上72時間未満で破断、クラックの発生あり。
×:載置時間1時間未満で破断、クラックの発生あり。
[成形性の評価]
上記の実施例、比較例に基づき、各例10個の管継手を製造し、管継手の受口部に成形不良(主に金型内の端部まで樹脂が充填されないことによるショート)が発生していないかを目視で確認した。成形性の評価は、下記評価基準に従って行った。結果を表1に示す。
(評価基準)
○:10個すべてに成形不良なし。
×:1個以上の成形不良あり。
Figure 0007521983000001
表1に示すように、各実施例の管継手はMFRが充分に大きく、成形性が良好であり、耐薬品性にも優れていた。
これに対して、比較例1、2では、成形性と耐薬品性のいずれかが不充分であった。
1 管継手
10 本体部
20a、20b、20c 受口部
30 発泡樹脂層
50 非発泡樹脂層

Claims (8)

  1. 管部材が挿入される複数の受口部を有し、内部に前記複数の受口部を連通する流路が形成された管継手であって、
    少なくとも、前記流路に接する部分は樹脂組成物(I)で構成され、
    前記樹脂組成物(I)は、シアン化ビニル系単量体単位とジエン系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位と、メタクリル系単量体単位とを含み、
    熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、メタクリル系単量体単位の含有量が、前記樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に対して17質量%以下であり、
    熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、シアン化ビニル系単量体単位とメタクリル系単量体単位の合計含有量が、前記樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に対して、45~75質量%である、管継手。
  2. 管部材が挿入される複数の受口部を有し、内部に前記複数の受口部を連通する流路が形成された管継手であって、
    少なくとも、前記流路に接する部分は樹脂組成物(I)で構成され、
    前記樹脂組成物(I)は、シアン化ビニル系単量体単位とジエン系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位と、メタクリル系単量体単位とを含み、
    熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、メタクリル系単量体単位の含有量が、前記樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に対して30質量%以下であり、
    熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、シアン化ビニル系単量体単位とメタクリル系単量体単位の合計含有量が、前記樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に対して、40~80質量%であり芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記樹脂組成物(I)の樹脂成分全体に対して、5~13質量%である、管継手。
  3. 前記樹脂組成物(I)がアクリルゴムを含む、請求項1又は2に記載の管継手。
  4. 前記樹脂組成物(I)のJIS K 7210:1999に従い、試験温度220℃、試験荷重9.8Nで測定されるメルトマスフローレートが、5g/10分以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の管継手。
  5. 前記樹脂組成物(I)で構成された表面層と、前記表面層に覆われた発泡樹脂層を備え、前記表面層は発泡倍率が1.0倍以上1.1倍未満であり、前記発泡樹脂層は発泡倍率が1.1倍以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の管継手。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の管継手と、前記管継手の前記受口部に挿入接続された管部材と、を備える配管構造。
  7. 請求項1~5のいずれか一項に記載の管継手を製造する方法であって、前記樹脂組成物(I)の粉末又はペレットに発泡剤を混合して発泡性樹脂組成物を得、得られた発泡剤樹脂組成物を射出成形する、管継手の製造方法。
  8. 前記樹脂組成物(I)の粉末又はペレットを乾燥させてから前記発泡剤を混合する、請求項7に記載の管継手の製造方法。
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