以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
本発明の一実施形態の運転支援装置は、自動車等の車両に搭載され、当該車両の運転者による運転操作を支援するための走行制御を行なう装置である。本実施形態は、特に、運転支援装置を搭載した車両が走行中(車両を運行中の道路上での一時停車等も含むものとする;以下、「走行中」というときは同様とする)に、車両の前方の所定の領域内に認識された歩行者等の移動する物標に対して車両が衝突するのを回避するため若しくは衝突被害を軽減するための緊急走行制御に関する工夫を例示するものである。
本実施形態の運転支援装置は、例えば、車載カメラユニットやレーダー装置等のセンサ装置(センシングデバイス)を用いて車両の前方を含む周囲の状況(以下、周辺状況という)に関する情報(例えば、前方を含む周囲を走行する他車両(先行車両,後続車両,対向車両,併走車両等)や自転車、歩行者等の移動する物標、道路脇又は道路上に載置された障害物や駐車車両等の静止している物標等を含む車両の周辺状況に関する情報等;以下、単に周辺状況情報等という)を取得する。また、取得された周辺状況情報データのほか、通信を行って外部機器である高精度道路地図データベース等から取得される道路地図情報等に基づいて、先行車両や後続車両及び各種障害物等に関する道路状況等を認識する。そして、本実施形態の運転支援装置は、これら各種の情報(周辺状況情報等,地図情報等,認識情報等)を、運転者の運転操作を支援するための走行制御を実行する際の情報として適宜利用する。そして、本実施形態の運転支援装置においては、走行中の車両の前方の所定の領域内に認識された歩行者等の移動する物標に対して車両が衝突するのを回避するため若しくは衝突被害を軽減するための緊急走行制御に関して特徴を有するものである。
まず、本発明の一実施形態の運転支援装置の概略構成について、図1のブロック構成図を用いて、以下に説明する。
なお、本実施形態の運転支援装置1の構成は、従来の形態の運転支援装置の構成と基本的には略同様である。したがって、本実施形態の運転支援装置1の構成を説明するのに際しては、当該装置の主要構成のみについて説明するものとし、運転支援装置1の細部の構成については、従来の運転支援装置と略同様であるものとして、本発明に直接関連する構成以外の構成の詳細な説明は省略する。また、図1においては、本実施形態の運転支援装置1の主要構成のみを図示するに留め、本発明に直接関連しない構成については図示を省略している。
本実施形態の運転支援装置1は、図1に示すように、ロケータユニット11と、カメラユニット21と、周辺監視ユニット22と、走行制御装置である走行制御ユニット26等を、主な構成ユニットとして具備している。
ここで、ロケータユニット11と、カメラユニット21と、周辺監視ユニット22とは、車両の内外の走行状況や車両前方及び周囲の物標を認識するための物標認識装置として機能する構成ユニットである。これらの各ユニット(11,21,22)は、互いに依存することなく、完全に独立した構成ユニットとして存在している。
ロケータユニット11は、道路地図上の自車両の位置(自車位置)を推定すると共に、推定された自車位置の主に前方の道路地図情報等を取得する情報取得装置である。
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と、地図情報記憶部としての高精度道路地図データベース16(図1においては「道路地図DB」と略記する。なお、DB;Data Base)とを有している。
地図ロケータ演算部12は、自車位置推定演算部12aと、走行ルート設定演算部12bとを備えている。
自車位置推定演算部12aは、自車位置を推定するための演算を行う自車位置推定部である。この自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機13(後述)で受信した測位信号に基づき自車両の現在の位置座標(緯度、経度)を取得し、この位置座標を地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在位置)を推定する。
また、自車位置推定演算部12aは、自車走行車線を特定し、地図情報に記憶されている走行車線や合流車線などの道路形状を取得し、逐次記憶させる。
さらに、自車位置推定演算部12aは、トンネル内走行等のようにGNSS受信機13(後述)の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない状況では、自律走行センサ14(後述)によって取得された各種データ等に基づいて自車位置を推定する自律航法に切り換えて、道路地図上の自車位置(緯度、経度)を推定する。
走行ルート設定演算部12bは、自車位置から目的地(及び経由地)までの走行ルートを設定するための演算を行う走行ルート設定部である。走行ルート設定演算部12bは、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置の位置情報(緯度、経度)と、ルート情報入力装置15(後述)から入力された目的地及び経由地等の位置情報(緯度、経度)とに基づき高精度道路地図データベース16に格納されているローカルダイナミックマップを参照する。そして、走行ルート設定演算部12bは、高精度道路地図データベース16のローカルダイナミックマップ上で、自車位置と目的地(経由地が設定されている場合は経由地を経由した目的地)とを結ぶ走行ルートを予め設定されているルート条件(推奨ルート、最速ルート等)に従って構築する。
このように、地図ロケータ演算部12は、自車位置推定演算部12aにより推定された自車位置を地図上にマップマッチングして自車両の現在地を特定し、その周辺の状況情報を含む道路地図情報を取得する。また、地図ロケータ演算部12は、入力された目的地等の位置座標(緯度、経度)と自車位置とを結び、自車両の目標とする目標進行路(目標走行ルート)を構築する。
さらに、地図ロケータ演算部12は、構築された目標走行ルート上に、自動運転を実行させるための目標走行ルートを自車両の前方数キロメートル先まで設定する機能をも備えている。ここで、目標走行ルートとして設定する項目は、自車両を走行させる車線(例えば、車線が3車線の場合に何れの車線を走行させるか)、先行車を追い越すため車線変更及び車線変更を開始するタイミング等である。
高精度道路地図データベース16は、HDD(Hard Disk Drive),SSD(Solid State Drive)等の大容量記憶媒体等によって主に構成されている。この高精度道路地図データベース16には、周知の高精度な道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、例えばクラウドサーバ等(不図示)に備えられているグローバルダイナミックマップと同じ層構造を有しており、基盤とする最下層の静的情報階層において、自動走行をサポートするために必要な付加的地図情報等が重畳された階層構造をなしている。
ここで、付加的地図情報としては、道路の種別(一般道路、高速道路等)、道路形状、左右区画線(車線境界線)、高速道路やバイパス道路等の出口、ジャンクションやサービスエリア,パーキングエリア等に繋がる分岐車線や合流車線の出入口長さ(開始位置と終了位置)等の静的な位置情報のほか、渋滞情報や事故或いは工事による通行規制等の動的な位置情報が含まれている。
そして、この付加的地図情報は、地図ロケータ演算部12によって目標走行ルートが設定された際には、設定された目標走行ルートに沿って自車両を自律走行させるために必要とする周辺情報として、グローバルダイナミックマップから継続的に取得されかつ順次更新される。
また、高精度道路地図情報は、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度情報などをも保有している。これらの車線データ等の情報は、道路地図上の各車線に数メートル間隔で格納されている。
地図ロケータ演算部12には、GNSS受信機13と、自律走行センサ14と、ルート情報入力装置15等が接続されている。
GNSS受信機13は、自車位置取得部として機能し、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)からの各種情報を受信する受信装置である。このGNSS受信機13は、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。GNSS受信機13は、取得した測位信号を、ロケータユニット11の地図ロケータ演算部12へと出力する。地図ロケータ演算部12は、GNSS受信機13が受信した複数の測位衛星からの測位信号に基づいて自車位置(緯度、経度)を推定する。そのため、このGNSS受信機13は、地図ロケータ演算部12の入力側に接続されている。
自律走行センサ14は、例えばトンネル内走行時等にGNSS衛星からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできないような状況において、自律走行を可能にするための各種センサ群である。自律走行センサ14は、例えば、前後加速度センサ、車速センサ、ジャイロセンサ、ヨーレートセンサ等を有して構成され、運転状態取得部として機能する。したがって、地図ロケータ演算部12は、車速センサで検出した車速、ヨーレートセンサで検出したヨーレート(ヨー角速度)及び前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づき移動距離と方位からローカライゼーションを行い、自車位置を推定する。そのため、この自律走行センサ14は、地図ロケータ演算部12の入力側に接続されている。
ルート情報入力装置15は、例えば運転者又は搭乗者等、車両に搭乗している人員が操作する端末装置である。このルート情報入力装置15は、目的地や経由地(高速道路のサービスエリア等)の設定等、地図ロケータ演算部12において目標走行ルートを設定する際に必要とする一連の情報を集約して入力することができる。
ルート情報入力装置15は、具体的には、カーナビゲーションシステムの入力部(例えば、モニタのタッチパネル等)、スマートフォン等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等である。そして、ルート情報入力装置15は、地図ロケータ演算部12に対して有線接続或いは無線接続されている。これにより、運転者又は搭乗者がルート情報入力装置15を操作して、目的地や経由地の情報(施設名、住所、電話番号等)の入力を行うと、その入力情報が地図ロケータ演算部12に読み込まれる。地図ロケータ演算部12は、ルート情報入力装置15から入力された目的地や経由地について、その位置座標(緯度、経度)を設定する。そのため、このルート情報入力装置15は、地図ロケータ演算部12の入力側に接続されている。
カメラユニット21は、自車両の進行方向(主に前方)の走行状況を認識し、走行状況情報として取得し収集する周辺状況情報取得装置であり周辺状況認識部であり、また物標認識装置の一部を成す。即ち、カメラユニット21は、例えば、自車両の前方又は側方を走行する他車両(先行車両や併走車両等)等のほか、前方を道路端を歩行し又は前方を横切ろうとする歩行者、自転車、自動二輪車等の移動体等を含む立体物、信号現示(点灯色,点滅状態,矢印方向等)、道路標識、停止線、車線境界線等の道路標示等のほか、道路周辺に存在する各種の物標(道路に隣接する建造物,塀,防音壁,ガードレール等)を含む道路周辺状況等を認識する。
そのために、カメラユニット21は、メインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット21c(IPU;Image Processing Unit。以下、IPU21cという)と、前方走行状況認識部21d等を有して構成されている。
カメラユニット21において、メインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)は、自車両の車室内前部の上部中央等に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されている。そして、カメラユニット21は、メインカメラ21aで基準画像データを撮像し、サブカメラ21bで比較画像データを撮像する。これら二つのカメラ21a,21bによって取得された2つの画像データは、IPU21cにて所定の画像処理が施される。
なお、各カメラ21a,21bは、画像情報と同時に音情報を取得する機能を備えていてもよい。この場合、画像情報と同時に取得された音情報は、自車両の前方走行状況に関連する音情報として、前方走行状況情報に含まれる。
前方走行状況認識部21dは、IPU21cで画像処理された基準画像データと比較画像データとを読込んで、両画像間の視差に基づいて両画像中の同一対象物(物標)を認識すると共に、自車両から対象物(物標)までの距離を三角測量の原理を利用して算出して前方走行状況情報としてデータ化する。
さらに、前方走行状況認識部21dは、画像中に認識された対象物について、歩行者等の移動する物標として認識し特定したり、認識し特定した物標についての移動方向や移動速度等を算出してデータ化する機能をも有する。
前方走行状況情報には、自車両が走行する進行路(合流車線や走行車線等を含む)の道路形状に関する情報(左右を区画する区画線であり車線を示す車線境界線、区画線間中央の道路曲率[1/m]及び左右区画線間の幅(車線幅)等)や、高速道路やバイパス道路等の出入口、ジャンクションに繋がる合流車線や分岐車線側の区画線間の車線幅、交差点、横断歩道、信号機、道路標識、及び路側障害物(電柱、電信柱、駐車車両等)等の各種情報等が含まれる。この前方走行状況情報は、走行制御ユニット26へと出力される。さらに、自車両が走行している走行車線において、左右区画線の中央を基準とする自車両の車幅方向の横位置偏差等をも検出する。
また、前方走行状況認識部21dは、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って存在するガードレール、縁石及び立体物の認識を行う。ここで、前方走行状況認識部21dにおける立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両との相対速度などの認識が行われる。
なお、本実施形態の運転支援装置1においては、進行路情報を検出する検出手段としての自律センサとして、カメラユニット21のほかにも、例えばレーダー装置を備えていてもよい。このレーダー装置は、具体的には、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、ライダー(LIDER:Light Detection and Ranging)などのセンシングデバイスの種々のレーダーによる検出手段としての自律センサを有するものである。
周辺監視ユニット22は、自車両の周辺の走行状況を認識し情報として取得し収集する周辺状況情報取得装置であり周辺状況認識部であり、また物標認識装置の一部を成す。この周辺監視ユニット22は、周辺状況認識センサ22aと、周辺走行状況認識部22b等を有して構成されている。
周辺状況認識センサ22aは、例えば、超音波センサ,ミリ波レーダ,ライダー(LIDER;Light Detection and Ranging),カメラ等のセンシングデバイスと、これらを組み合せてなる周辺状況検出手段としての自律センサ群である。
具体的には、例えば、周辺状況認識センサ22aとしての複数のミリ波レーダが、車両の四隅部分(例えば、左前側方、右前側方、左後側方、右後側方等)にそれぞれ配設される。このうち、左右前側方のミリ波レーダは、例えばフロントバンパの左右側部に設けられ、カメラユニット21の2つのカメラ21a,21bにより取得される画像によって認識することの困難な車両周辺の一部領域(車両の左右斜め前方及び側方の領域)を監視するのに用いられる(後述の図2参照)。
また、左右後側方のミリ波レーダは、例えばリヤバンパの左右側部に設けられ、上記左右前側方のミリ波レーダでは監視し得ない車両周辺の一部領域(車両の側方から後方にかけての領域)を監視するのに用いられる。
周辺走行状況認識部22bは、周辺状況認識センサ22aからの出力信号に基づいて自車両の周辺の移動体(例えば、歩行者,自転車,二輪車,併走車両,自車線若しくは隣接車線を走行する後続車両,対向車両等)に関する情報である周辺状況情報を取得する。
なお、周辺走行状況認識部22bは、認識された対象物について、歩行者等の移動する物標として認識し特定したり、認識し特定した物標についての移動方向や移動速度等を算出してデータ化する機能をも有する。
周辺監視ユニット22とカメラユニット21とによって、本実施形態の運転支援装置1における周辺状況情報取得装置であり周辺状況認識部であり物標認識装置が構成されている。
ここで、カメラユニット21の前方走行状況認識部21dと、周辺監視ユニット22の周辺走行状況認識部22bとは、車内通信回線(例えば、CAN:Controller Area Network)等を通じて走行制御ユニット26と、双方向通信自在に接続されている。また、走行制御ユニット26と地図ロケータ演算部12との間は、同様に、車内通信回線を通じて双方向通信自在に接続されている。
走行制御ユニット26は、カメラユニット21の前方走行状況認識部21d,周辺監視ユニット22の周辺走行状況認識部22bによって取得され収集された走行状況に関する情報(走行状況情報)のほか、地図ロケータ演算部12を通じて得られる各種情報等に基づいて自車両の走行制御を行う。
走行制御ユニット26の出力側には、自車両を走行ルートに沿って走行させる操舵制御部31と、強制的なブレーキにより自車両を減速させるブレーキ制御部32と、自車両の車速を制御する加減速制御部33と、モニタやスピーカ等からなる警報装置34aを制御する警報制御部34等が接続されている。
走行制御ユニット26は、走行ルート設定演算部12bで設定した走行ルートに、自動運転制御が許可された自動運転区間が設定されている場合、当該自動運転区間に自動運転を行うための目標進行路を設定する。そして、自動運転区間においては、操舵制御部31、ブレーキ制御部32、加減速制御部33を所定に制御して、GNSS受信機13で受信した自車位置を示す測位信号に基づき、自車両を目標進行路に沿って自動走行させる。
その際、走行制御ユニット26は、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)により認識された前方及び周辺状況情報に基づき、周知の追従車間距離制御及び車線維持制御等により、先行車が検出された場合は先行車に追従し、先行車が検出されない場合は制限速度内のセット車速で自車両を走行させる。
さらに、走行制御ユニット26は、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)により認識された前方及び周辺状況情報などに基づいて、自車両の前方を歩行し又は自車両の直前を横切ろうとする歩行者等を含む動体体を検出した場合のほか、一時停止を指示する規定の道路標識や一時停止線等の道路標示等を認識した場合には、適宜、認識した情報に応じて、警報制御部34を作動させて所定の警報を発したり、ブレーキ制御部32を作動させて自車両を規定の位置に停車させる制御等を行う。
警報装置34aは、走行制御ユニット26が周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)により認識された前方及び周辺状況情報などに基づいて、認識された状況に応じた警報を、運転者に対して通知する通知部であり通知装置である。警報装置34aは、例えば、モニタパネル等の視覚的な警報を表示する視覚的表示装置や、スピーカ等の聴覚的な警報を表示する発音装置等が適用されている。
また、警報装置34aは、場合によっては、運転者が行うべき操作を示唆するための表示(具体的には、例えば「ブレーキペダルを踏み込んでください」、「アクセルを離してください」、「ステアリングの修正操作を行ってください」等のアドバイス表示等)を視覚的に若しくは、或いは同時に聴覚的に運転者に知覚させる各種の表示を行う。
さらに、走行制御ユニット26は、横相対速度算出部26aと、領域設定部26bと、衝突可能性判定部26c等を具備して構成されている。
横相対速度算出部26aは、周辺状況認識部であり物標認識装置により認識された周辺状況のうち移動する所定の物標、例えば歩行者,自転車,二輪車等の自車両に対する横相対速度を算出する。この場合において、横相対速度は、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)の認識情報に基づいて算出される。
領域設定部26bは、自車両の前方に、自車両が通過する予定の領域(以下、通過予定領域という)を仮想的に設定する。ここで、通過予定領域は、自車両が現在の走行状態を維持して走行を継続したとき、自車両が通過する予定の仮想的な領域を、現在の自車両の前方に見える画像情報の中に設定するものである。この通過予定領域は、例えば、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)による認識情報のほか、自車両自身の情報(自車両の左右方向の車幅情報、進行方向等)に基づいて設定される。
衝突可能性判定部26cは、自車両が現在の走行状態を維持して走行を継続して、所定の時間が経過した後若しくは所定の距離だけ自車両が走行した後に、領域設定部26bによって設定された通過予定領域内において、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)によって認識された所定の物標(主に、歩行者,自転車,二輪車等の移動体等)に自車両が衝突する可能性を判定する判断部である。この場合における衝突可能性の判定は、例えば、自車両に対する当該物標の横相対速度や、自車両と当該物標との距離、及び自車両の走行速度等の各種情報に基づいて行われる。
衝突可能性判定部26cは、自車両が現在の走行状態を維持して走行を継続して、所定の時間が経過した後若しくは所定の距離だけ自車両が走行した後に、領域設定部26bによって設定された通過予定領域内において、周辺状況認識部(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)によって認識された所定の物標(主に、歩行者,自転車,二輪車等の移動体等)に自車両が衝突する可能性を判定する判断部である。この場合における衝突可能性の判定は、例えば、自車両に対する当該物標の横相対速度や、自車両と当該物標との距離、及び自車両の走行速度等の各種情報に基づいて行われる。
そして、走行制御ユニット26は、次に示すような条件が整った場合には、自車両と対象とされた物標との衝突を回避するため若しくは衝突被害を軽減するための緊急回避的な走行制御(緊急走行制御)を行う。例えば、
(1)領域設定部26bによって設定された通過予定領域内に、自車両の走行の障害となる所定の物標(例えば、先行車や駐車中の他車両等や、道路上又は道路際に載置された様々な物体又は道路脇に立ち止まって静止している歩行者等の静止物体のほか、自車両と同一方向に接近若しくは離れる方向に移動している歩行者,自転車,二輪車等の移動体等)が、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)によって認識された場合、
(2)領域設定部26bによって設定された通過予定領域外であって、自車両の前方領域のうち例えば左右端近傍領域等において、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)によって認識され得る範囲内に認識された所定の物標(例えば、自車両の前方を横切ろうとする歩行者,自転車,二輪車等の移動体等)が、自車両に接近する方向に移動することで、所定の時間が経過した後に、若しくは所定の距離だけ自車両が走行した後に、当該移動している物標が通過予定領域内に進入してきて自車両の走行の障害になることが予想される旨(具体的には衝突可能性)の判定が、衝突可能性判定部26cによってなされた場合、
などである。
なお、上述の(1),(2)で示すような状況下で発動される緊急走行制御は、いわゆる衝突被害軽減ブレーキ制御、衝突回避ブレーキ制御等とよばれ、主に運転者に対し警報制御部34を通じて行う警報制御や、ブレーキ制御部32を通じて行うブレーキ制御等を含む一連の制御である(詳細後述)。
このように走行制御ユニット26は、前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b及びGNSS受信機13等から出力された各種の情報を受けて、これら各種の情報に基づいて、操舵制御部31,ブレーキ制御部32,加減速制御部33,警報制御部34等を統括的に制御する。
なお、地図ロケータ演算部12、前方走行状況認識部21d、周辺走行状況認識部22b、走行制御ユニット26等は、例えば、CPU(Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)や不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ及びその周辺機器等によって構成されているものである。そして、ROMにはCPUが実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。本実施形態の運転支援装置1の概略構成は、以上である。
このように構成された本実施形態の運転支援装置1を搭載した車両が道路上にある際に遭遇する状況について、以下に説明する。図2~図4は、本実施形態の運転支援装置を搭載した車両が道路上にある場合において、当該車両の前方に移動する物標が存在している状況を示しており、図2~図4はそれぞれ異なる三態様を示す図である。
まず、図2に示す状況は、自車両100が道路(符号300)を直進走行しており、当該自車両100の前方の通過予定領域Z内に、同自車両100の進行方向(矢印A1)と略同一方向(矢印X1)に沿って移動する歩行者である物標200が存在している状況を示している。つまり、図2に示す状況は、簡略に言うと、「自車両100の進行方向ベクトルA1と物標200の移動方向ベクトルX1とが略同一方向となる場合」の状況を示す第1の態様を示している。
図2において、道路については左端境界線のみを符号300によって示している。また、図2において、自車両100は、カメラ21a,21bと、周辺状況認識センサ22aとを具備していることを示している。なお、図2においては、周辺状況認識センサ22aについては、図面の繁雑化を避けるために、車両前側に設けられる2つのセンサにのみに符号を付している。そして、図2において、カメラ21a,21bによって認識される範囲を、二点鎖線で囲われる画角領域Cで示している。また、図2において、周辺状況認識センサ22aによって認識される左右の各範囲を、一点鎖線で囲われる検知領域Lで示している。さらに、図2において、自車両100の領域設定部26bによって設定される通過予定領域を、二本の点線ZR,ZLで示す左右境界仮想線で挟まれる領域Zとして示している。
なお、図2において、物標200の移動方向X1は自車両100から離れる方向としているが、この例に限らない。図2に示す状況では、自車両100の進行方向ベクトルA1と物標200の移動方向ベクトルが略同一方向であればよいので、物標200が自車両100に接近する方向であってもよい。
図2に示すような状況下では、直進走行している自車両100の運転者は、主に略正面を向いて運転をしていることになる。したがって、自車両100の運転者の前方の視野内において略正面の略中央領域に位置する通過予定領域Z内に存在する物標200を含む様々な物標(不図示;例えば自車両100と同一方向に接近若しくは離れる方向に移動している歩行者,自転車,二輪車等の移動体等)は、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)によって認識されるのと同時に、それらの物標は、運転者にとっても比較的早期に認識しやすい傾向がある。また、このような状況では、例えば、自車両100の前方には、先行車や駐車中の他車両等のほか、道路際に置かれた様々な物体や、道路脇に立ち止まって静止している状態の歩行者等の静止している物標に関しても、運転者は、比較的容易にかつ早期に認識しやすい状況にある。
このようなことから、図2に示すような状況下においては、運転者は、自車両100の進行方向(矢印A1)の前方の通過予定領域Z内に所定の物標200を既に認識しており、かつ認識されている当該物標200に対する衝突の危険可能性を運転者が感じる以前の早い段階で、運転支援装置1が当該物標200に対する衝突回避のため若しくは衝突被害を軽減するための緊急走行制御の作動を開始してしまう可能性がある。ここで、物標200の移動方向X1は、自車両100の進行方向A1と略同一方向であるので、自車両100に対する物標200の横相対速度は、ゼロ若しくは所定の閾値未満であると考えられる。
この場合には、運転支援装置1が当該物標200に対する衝突回避のため若しくは衝突被害を軽減するための緊急走行制御の作動の開始タイミングが、運転者にとっては早過ぎると感じる等、運転者に対して違和感を与えてしまうことが考えられる。
そこで、本実施形態の運転支援装置1は、図2で示すような状況下、即ち自車両100に対する物標200の横相対速度は、ゼロ若しくは所定の閾値未満である場合には、物標200に対する衝突回避のため若しくは衝突被害を軽減するための緊急走行制御の作動の開始タイミングを所定の時間だけ遅延させる制御を行うようにしている。このような制御を行うことにより、運転者に対して制御の作動の開始タイミングによる違和感を除去できる。
次に、図3に示す状況は、自車両100が道路(符号300)を直進走行しており、かつ自車両100の前方には、自車両100の走行している道路300に対して略直交して交差する道路等(符号301;以下、交差道路等という)等が存在していることを示している。この場合において、図3では、自車両100の走行している道路については左端境界線のみを符号300によって示し、交差道路等については手前側境界線のみを符号301によって示している。なお、図3において、符号301で示される交差道路等については、通常の車両通行用道路のみに限らず、狭い路地や広場等、歩行者等が移動し得る狭隘空間等をも含むものと想定している。
そして、図3において、自車両100の前方の交差道路等301に沿って、自車両100の進行方向(矢印A2)に対して略直交する方向(矢印X2)に沿って移動し、かつ自車両100の走行する道路300に接近する方向に移動してくる歩行者である物標201と、物標201の移動方向X2と同じ方向(矢印X3)に移動する第2の物標202とが、通過予定領域Zから外れた領域に存在している状況を示している。なお、その他の図示の符号は、図2と同じであるが、図面の繁雑化を避けるために、一部の符号等の図示を省略している。
図3において、物標201は、上述したように、自車両100の進行方向A2に対して略直交する方向X2に沿って移動し、かつ自車両100の走行する道路300側に向けて接近する方向であって、所定時間経過後若しくは所定距離移動後に、通過予定領域Z内に進入する方向に、交差道路等301に沿って移動していることを示している。つまり、図3において物標201は自車両100の走行している道路300を横切ろうとしていることを想定している。したがって、この状況における物標201は、自車両100に対して所定の横相対速度を持っている。
また、図3において、物標202は、物標201に続いて列を成すようにして、同じ交差道路等301に沿って同じ方向(矢印X3)で、道路300に向けて接近する方向に、物標201と同様、所定時間経過後若しくは所定距離移動後に、通過予定領域Z内に進入する方向に移動しているものとしている。したがって、図3において物標202も、物標201と同様に、道路300を横切ろうとしており、自車両100に対して所定の横相対速度を持っている。
つまり、図3に示す状況は、簡略に言うと、「自車両100の進行方向ベクトルA1に対し物標201の移動方向ベクトルX2,X3が略直交する場合で、かつ物標201が自車両100に接近している場合」の状況を示す第2の態様を示している。また、図3においては、さらに、図3においては、「複数の物標が続いて列を成すように同方向に移動している場合」の状況を加えて示している。
図3に示すような状況下でも、直進走行している自車両100の運転者は、主に略正面を向いて運転をしていることになる。したがって、自車両100の運転者の前方の視野内において略正面の略中央領域に位置する通過予定領域Zから外れた領域、即ち運転者の前方視野範囲の左右端近傍領域にて移動する物標を運転者が認識することは、視野内の略中央領域に存在する物標を運転者が認識する場合に比べて若干遅延が生じることがある。一方、そのような領域(通過予定領域から外れた前方視野の左右端近傍領域)にて移動する物標が存在する場合、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)によれば、運転者が認識するよりも常に容易にかつ早期に認識することができる。
図4に示す状況は、自車両100がカーブに沿う旋回道路(符号302)に沿って旋回走行しており、自車両100の前方の通過予定領域Zから外れた領域に、自車両100の進行方向(矢印A3)に対して斜め左前方向から自車両100に接近する方向(矢印X4)に旋回道路302に沿って移動している歩行者である物標203が存在している状況を示している。つまり、図4に示す状況は、簡略に言うと、「自車両100の進行方向ベクトルA3に対し物標203の移動方向ベクトルX4が斜め方向から交差する場合で、かつ物標203が自車両100に接近している場合」の状況を示す第3の態様を示している。
図4において、道路については左端境界線のみを符号302によって示している。また、図4においては、物標203は、上述したように、自車両100の進行方向A3に対して斜め左前方向から接近する方向X4に移動している。この場合において、物標203の進行方向X4は、横速度Hと縦速度Vとに分解できる。したがって、この状況における物標203は、自車両100に対して所定の横相対速度(H)を持っている。このことから、この図4に示す状況は、上述の図3に示す状況と略同様であると考えることができる。なお、その他の図示の符号は、図2と同じであるが、図面の繁雑化を避けるために、一部の符号等の図示を省略している。
図4に示すような状況下では、カーブに沿って旋回走行している自車両100の運転者は、主に略正面からカーブの内縁側を向いて運転をしていることになる。しかしながら、図4に示す状況のように、カーブ内縁側を歩行する歩行者等の物標203が存在する場合、道路形状(カーブの曲率等)によっては、運転者による物標203の認識が遅延する場合がある。一方、このような状況下においても、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)によれば、運転者が認識するよりも常に容易にかつ早期に認識することができる。したがって、図4に示すような状況下でも、運転者による物標認識の遅延は、図3に示す状況と略同様であると考えられる。
上述したように、図3に示すような状況下においては、自車両100の通過予定領域Zから外れた領域にある移動する物標201,202が、自車両100に対する所定の横相対速度を持って、所定時間経過後に若しくは所定距離移動後に、自車両100の通過予定領域Z内に進入してくることが予想される。
また、図4に示すような状況下においては、自車両100の通過予定領域Zから外れた領域にある移動する物標203が、自車両100に対する所定の横相対速度を持って、所定時間経過後に若しくは所定距離移動後に、自車両100の通過予定領域Z内に進入してくることが予想される。
このとき、運転者が前方の通過予定領域Zから外れた領域に存在する所定の物標201,202,203を認識する以前の段階で、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21dや周辺走行状況認識部22b等)が運転者よりも先に当該物標201,202,203を認識し、認識された当該物標201,202,203に対する衝突を回避するため若しくは衝突被害を軽減するための緊急走行制御の作動が開始される。この場合には、運転者に対して違和感を与えることなく、自然なタイミングで制御を実行することができると考えられる。
次に、本実施形態の運転支援装置1において行われる緊急走行制御の作用を、図5,図6を用いて以下に説明する。図5は、本実施形態の運転支援装置において行われる緊急走行制御の処理シーケンスを示すフローチャートである。図6は、図5の多重警報キャンセル処理(ステップS19の処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
自車両100に搭載された本実施形態の運転支援装置1が起動されて、カメラユニット21及び周辺監視ユニット22、走行制御ユニット26等の各構成ユニットの作動が開始されると、まず、図5のステップS11において、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21d、周辺走行状況認識部22b等)は、所定の周辺状況認識処理を開始する。
次に、ステップS12において、走行制御ユニット26は、領域設定部26bにより自車両100の前方に所定の通過予定領域設定する。
続いて、ステップS13において、走行制御ユニット26は、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21d、周辺走行状況認識部22b等)の出力に基づいて、自車両100の前方に所定の物標が認識されたか否かの確認を行う。ここで、所定の物標は、例えば、歩行者,自転車,二輪車等の移動体等である。この場合において、所定の物標が認識されたことが確認された場合には、次のステップS14の処理に進む。また、所定の物標が認識されない場合には、ステップS11の処理に戻る。
ステップS14において、走行制御ユニット26の横相対速度算出部26aは、ステップS13の処理にて認識された物標についての横相対速度算出を算出する。
続いて、ステップS15において、走行制御ユニット26の衝突可能性判定部26cは、認識済みの物標と自車両100との衝突可能性があるか否かの確認を行う。ここで、認識済みの物標と自車両100との衝突可能性の判定条件は、例えば、当該物標が自車両100の通過予定領域Z内に存在しているか否かを確認したり(図2の状況参照)、当該物標が自車両100の通過予定領域Zから外れた領域に認識されていた場合に、当該物標が移動して所定時間後に通過予定領域Z内に進入したときの自車両100との相対的な位置関係を確認する(図3,図4の状況)などである。この場合において、所定時間後の物標と自車両の相対的位置関係は、物標の自車両100に対する横相対速度と、自車両100の車速と、物標と自車両100との距離、物標と通過予定領域までの距離等に基づいて算出することができる。これらのパラメータは、周辺状況認識部であり物標認識装置による認識出力により取得することができるものである。
このステップS15において、認識済みの物標と自車両100とが衝突する可能性が確認された場合には、次のステップS16の処理に進む。また、認識済みの物標と自車両100とが衝突する可能性がない場合には、ステップS11の処理に戻る。
続いて、ステップS16において、走行制御ユニット26は、上述のステップS15の処理にて算出した物標の横相対速度が予め定められた所定の閾値未満であるか否かの確認を行う。ここで、物標の横相対速度が所定の閾値未満である場合(例えば図2に示すような状況が想定される場合)には、ステップS17の処理に進む。また、物標の横相対速度が所定の閾値以上である場合(例えば図3,図4に示すような状況が想定される場合)には、ステップS18の処理に進む。
ステップS17において、走行制御ユニット26は、自車両100が物標との衝突を回避するため若しくは衝突被害を軽減するための緊急走行制御の開始タイミングを所定の時間だけ遅延させる処理を行う。この場合において、制御開始タイミングの遅延時間は、自車両の周囲状況及び自車両自身の状況に応じて、例えば自車両の進行速度、対象とする物標の自車両に対する縦方向の移動速度、自車両と対象とする物標との距離等、各種の状況情報に基づいて、走行制御ユニット26において適宜適切な時間が設定される。
続いて、ステップS18において、走行制御ユニット26は、緊急走行制御の実行を開始する。そして、まず、警報制御部34を通して警報装置34aを駆動制御して、運転者に対する所定の警報を発生させる処理を実行する。
ステップS19において、走行制御ユニット26は、多重警報キャンセル処理(詳細は図6参照)を実行する。
ここで、図5のステップS19の処理である多重警報キャンセル処理の詳細を説明する。この多重警報キャンセル処理は、緊急走行制御の実行中に発生される警報が、所定の条件に合致した場合に何度も繰り返されてしまうことを禁止若しくは抑制するための処理である。
上述したように、図5のステップS11~ステップS16の処理において、自車両100の前方を含む周囲状況が、所定の条件(物標認識,認識した物標との衝突可能性,物標と自車両との位置関係,物標の横相対速度等)に合致した場合に緊急走行制御が実行される。
こうして緊急走行制御が実行されると、まず、図5のステップS18において、運転者に対する最初の警報が発生する。この最初の警報は、例えば図2の状況では、物標200を回避対象として認識されたことに応じる警報である。また、(同最初の警報は、)例えば図3の状況では、複数存在する物標(201,202)のうち道路300に近い位置(通過予定領域Zに近い位置)に存在する物標201が回避対象として認識されたことに応じる警報である。そして、(同最初の警報は、)図4の状況では、物標203を回避対象として認識されたことに応じる警報である。
ここで、図3の状況では、物標201に続いて第2の物標202が存在していることを示している。そして、当該状況では、上述したように、まず物標201の認識に応じて警報を発生させている。また、図3の状況では、物標201に続いて第2の物標202が存在している。
この場合、従来の運転支援装置1においては、新たに第2の物標202が認識されると、当該新たに認識された第2の物標202についても、緊急走行制御を開始するための所定の条件に合致するか否かの確認が行われ、所定の条件に合致すると判定された場合に第2の物標202の認識に応じた警報が続けて発生される。
このように、自車両100の前方に複数の物標が存在する場合においては、物標が認識される毎に、その都度、警報が何度も繰り返し発生してしまう場合がある。このような状況は、運転者に煩わしいと感じさせてしまい、運転者は、運転に集中できなくなってしまうことにもなりかねない。
そこで、本実施形態の運転支援装置1においては、同様の条件が確認される複数の物標を継続して認識した場合には、最初の物標201の認識に応じた警報を発した後は、続いて認識される同様の物標(図3の例示では第2の物標202)及び、当該第2の物標以降に続けて認識される物標(不図示)のそれぞれに応じた連続して発せられる警報を禁止若しくは抑制する多重警報キャンセル処理を行うようにしている。
即ち、当該多重警報キャンセル処理は、図5のステップS18の処理の後、図5のステップS19の処理として実行される(詳細は図6参照)。
まず、図6のステップS31において、走行制御ユニット26は、周辺状況認識部であり物標認識装置(前方走行状況認識部21d、周辺走行状況認識部22b等)の出力に基づいて、自車両100の前方に、既に認識済みの物標に続く第2の物標が認識されたか否かの確認を行う。
この場合において、第2の物標は、図3の状況における物標202の如きものである。即ち、図3において、既に認証済みの物標を符号201とし、当該ステップS31の処理にて認識される物標を第2の物標202とすると、第2の物標202は、物標201に続いて列を成すようにして、同じ交差道路等301に沿って同じ方向(矢印X3)に、道路300に向けて接近する方向で、所定時間経過後に若しくは所定距離移動後に、通過予定領域Z内に進入する方向に移動している。したがって、図3において第2の物標202は、物標201と同様に、道路300を横切ろうとしており、自車両100に対して所定の横相対速度を持っている。
このステップS31において、上述したような条件に合致する第2の物標が認識された場合には、ステップS32の処理に進む。また、上述の条件に合致する第2の物標が認識されない場合は、元の処理に戻る(リターン)。
ステップS32において、走行制御ユニット26の横相対速度算出部26aは、ステップS31の処理にて認識された第2の物標についての横相対速度を算出する。
続いて、ステップS33において、走行制御ユニット26は、ステップS32の処理にて算出された第2の物標の横相対速度が予め設定された所定の閾値以上であるか否かの確認を行う。ここで、第2の物標の横相対速度が所定の閾値以上である場合には、ステップS34の処理に進む。また、第2の物標の横相対速度が所定の閾値未満である場合は、一連の処理を終了し、元の処理に戻る(リターン)。
ステップS34において、走行制御ユニット26の警報制御部34は、運転者に対して所定の警報を発生させる処理を、この時点以後は禁止又は抑制する。その後、元の処理に戻る(リターン)。
図5に戻って、ステップS20において、走行制御ユニット26は、運転者による何らかの所定の回避操作が行われたか否かの確認を行う。ここで、運転者による回避操作が確認されない場合には、ステップS21の処理に進む。また、運転者による回避操作が確認された場合には、ステップS22の処理に進む。
ステップS22において、走行制御ユニット26は、衝突可能性判定部26cによって認識された所定の物標と自車両100との衝突可能性があるか否かの確認を行う。ここで、認識された所定の物標と自車両100とが衝突する可能性があることが確認された場合には、ステップS21の処理に進む。また、認識された所定の物標と自車両100とが衝突する可能性がないことが確認された場合には、一連の処理を終了し、元の処理シーケンスに戻る(リターン)。
ステップS21において、走行制御ユニット26は、衝突回避のための若しくは衝突被害を軽減するためのブレーキ制御を実行する。その後、元の処理シーケンスに戻る(リターン)。
以上説明したように上記一実施形態によれば、自車両100の前方に認識された移動する物標について、当該物標の自車両100に対する横相対速度が予め定められた所定の閾値未満である場合に、走行制御ユニット26による運転支援(緊急走行制御)の開始タイミングを、物標の横相対速度が所定の閾値以上である場合の開始タイミングよりも所定の時間だけ遅延させるようにしている。
このように、自車両の運転者にとって認識することが比較的容易な物標に対して緊急走行制御を実行するときには、運転者が物標の認識に若干の遅延が生ずるような場合に比べて、制御開始タイミングを所定時間だけ遅延させることにより、運転者に違和感を与えることなく、自然なタイミングの制御を実行することができる。
さらに、緊急走行制御の実行が開始されて、最初の警報が発生した後に、認識済みの物標に続く同様の第2の物標が認識され、当該第2の物標が自車両に対して所定の閾値以上の速度で接近している場合には、当該第2の物標に関する警報の発生を禁止若しくは抑制するようにしている。
これにより、緊急走行制御を発動させるべき対象の物標が、複数存在し、それら複数の物標が続けて自車両に接近しているような場合には、緊急走行制御の実行を開始したとき、一度の警報を発生させるのみとすることで、運転者に煩わしさを感じさせることがない。したがって、運転者は、緊急走行制御が実行される事態になっても、運転に集中することができるので、確実な運転操作を行うことができ、よって、車両走行の安全を確保することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。