以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
リニアアクチュエータ1は、図1に示すように、アウター型リニアアクチュエータであり、その積層コアは、円筒形状に形成された固定子2と、固定子2に対してギャップを空けて配置される円筒形状の可動子3とを有している。可動子3は、固定子2の径方向外側において固定子2の軸方向に往復移動可能に形成される。
可動子3の内部には、その軸方向左端部、軸方向中央部及び軸方向右端部に配置される永久磁石5a、5b、5cを有している。具体的には、図2に示すように、可動子3の軸方向左端部には、複数の永久磁石5aが可動子3の内側面に沿って略全周にわたって配置される。同様に、可動子3の軸方向中央部には、複数の永久磁石5bが可動子3の内側面に沿って略全周にわたって配置され、可動子3の軸方向右端部には、複数の永久磁石5cが可動子3の内側面に沿って略全周にわたって配置される。複数の永久磁石5a、5b、5cは、それぞれ平板状である。
可動子3の軸方向左端部に配置される複数の永久磁石5aは、N極が外径側に且つS極が内径側に配置され、可動子3の軸方向中央部に配置される複数の永久磁石5bは、S極が外径側に且つN極が内径側に配置され、可動子3の軸方向右端部に配置される複数の永久磁石5cは、N極が外径側に且つS極が内径側に配置される。
固定子2は、円筒状のヨーク部(固定子ヨーク鉄心)10と、ヨーク部10の外周部から可動子3に向かって突出する2つのティース部(固定子磁極鉄心)11、12とを有している。2つのティース部11、12は、それぞれ、固定子2の軸方向に離れて形成されると共に、ヨーク部10の全周にわたって形成される。隣り合うティース部11、12間には、コイル16が配置される。
固定子2のティース部11、12の先端と可動子3の内側面との間は、ギャップが形成される。コイル16に電流が通電されてない状態では、ティース部11の先端の軸方向中央部は、永久磁石5aと永久磁石5bとの接続部と対向しており、ティース部12の先端の軸方向中央部は、永久磁石5bと永久磁石5cとの接続部と対向している。
ヨーク部10は、径方向内側に配置される第1ヨーク部10aと、第1ヨーク部10aより径方向外側に配置される第2ヨーク部10bとを含んでいる。
第1ヨーク部10a(周方向積層部10a)は、積層板10T1が固定子2の周方向に積層された第1ヨーク周方向積層部である。積層板10T1は、電磁鋼板であり、径方向外側に向かって幅が広くなる形状の略台形状の板状部材である。そのため、第1ヨーク部10aの径方向外側の幅は、2つのティース部11、12の外側端部間の距離と略同一である。積層板10T1は、固定子2の軸方向に離れた2つの係止部10A1により接続される。
第2ヨーク部10b(周方向積層部10b)は、積層板10T2が固定子2の周方向に積層された第2ヨーク周方向積層部である。積層板10T2は、電磁鋼板であり、略長方形の板状部材である。積層板10T2の幅は、2つのティース部11、12の外側端部間の距離と略同一である。第2ヨーク部10bの径方向外側の中央部には、その全周にわたって外側に向かって突出する突部10Dが形成されている。積層板10T2は、固定子2の軸方向に離れた2つの係止部10A2により接続される。
ティース部11は、径方向内側に配置される第1ティース部11aと、第1ティース部11aより径方向外側に配置される第2ティース部11bとを含んでいる。
第1ティース部11aは、ティース部11の基端部において、積層板11T1が固定子2の軸方向に積層されたティース軸方向積層部である。積層板11T1は、電磁鋼板であり、環状の板状部材である。積層板11T1は、図示しない係止部により接続される。
第2ティース部11b(周方向積層部11b)は、ティース部11の先端部において、複数の積層板11T2が固定子2の周方向に積層されたティース周方向積層部である。積層板11T2は、電磁鋼板であり、略長方形の板状部材である。第2ティース部11bは、ティース部11のギャップ面を有している。積層板11T2は、1つの係止部11A1により接続される。
ティース部12は、径方向内側に配置される第1ティース部12aと、第1ティース部12aより径方向外側に配置される第2ティース部12bとを含んでいる。
第1ティース部12aは、ティース部12の基端部において、複数の積層板12T1が固定子2の軸方向に積層されたティース軸方向積層部である。積層板12T1は、電磁鋼板であり、環状の板状部材である。積層板12T1は、図示しない係止部により接続される。
第2ティース部12b(周方向積層部12b)は、ティース部12の先端部において、積層板12T2が固定子2の周方向に積層されたティース周方向積層部である。積層板12T2は、電磁鋼板であり、略長方形の板状部材である。第2ティース部12bは、ティース部12のギャップ面を有している。積層板12T2は、1つの係止部12A1により接続される。
このように、リニアアクチュエータ1では、ヨーク部10が、第1ヨーク部10aと第2ヨーク部10bとに径方向に2分割されると共に、2つのティース部11、12が、それぞれ、第1ティース部11a、12aと第2ティース部11b、12bとに径方向に2分割されている。
図3は、固定子2における積層板の積層方向を示す概略図である。図3では、ティース部12の第1ティース部12a及び第2ティース部12bが図示されてないが、ティース部11の第1ティース部11a及び第2ティース部11bと同様である。固定子2において、第1ヨーク部10a、第2ヨーク部10b及び第2ティース部11b、12bでは、積層板が固定子2の周方向に積層されており、第1ティース部11a、12aでは、積層板が固定子2の軸方向に積層されている。
リニアアクチュエータ1の動作について、図4に基づいて説明する。
リニアアクチュエータ1において、コイル16に電流を通電してない状態では、図4(a)に示すように、永久磁石5a、可動子3、永久磁石5b、ティース部11の順に結ぶループで磁束が形成されると共に、永久磁石5c、可動子3、永久磁石5b、ティース部12の順に結ぶループで磁束が形成される。
コイル16に電流を通電すると、図4(b)及び図4(c)に示すように、コイル16に流れる電流により起磁力の偏磁作用で太線の方向に周回する磁束ループが生じ、可動子3が軸方向に沿って移動する。
また、コイル16への電流の流れの方向を変化させることにより、可動子3の推力方向が変わるため、可動子3は、ティース部11、12に対して移動する。
本実施形態のリニアアクチュエータ1が有する周方向積層部の製造方法について、図5に基づいて説明する。以下、第1ヨーク部10a、第2ヨーク部10b及び第2ティース部12bの製造方法を説明するが、それぞれ異なる形状の積層板が積層されて製造されるが、製造方法は略同一である。
ステップS1において、電磁鋼板をプレス加工等して積層板を形成する。積層板は、それぞれ、所定形状を有すると共に、周方向積層部を形成した場合に積層板の径方向中央部より径方向内側に配置される部分に、係止部が形成される。
ステップS2において、ステップS1で形成された積層板を積層して積層片を形成する。係止部は、積層板の積層方向に突出する突出部を有しており、その突出部が積層時に隣接する積層板に係合することにより積層板が接続される。
ステップS3において、ステップS2で形成された積層片を、その径方向内側端部側を支点として、その径方向外側端部の間に隙間が略均一に形成されるように広げて扇状にした積層コア片を形成する。
ステップS4において、ステップS3で形成した積層コア片を複数個用意して、これらを円筒型の溝を有する治具等に嵌め込んで各々を接続して積層コアを製造する。積層コア片は、積層方向が周方向に沿うようにすることが容易であり、一般的な製造方法で嵌め込みして接続することが可能である。接続された状態で樹脂や接着材等により固着し、円環状や円弧状の周方向積層部(積層コアの一部)を形成する。
以下、第1ヨーク部10aにおける積層板10T1、第2ヨーク部10bにおける積層板10T2、第2ティース部12bにおける積層板12T2の積層方法について、図6~図8に基づいて詳細に説明する。
第1ヨーク部10aにおける積層板10T1の積層方法について、図6に基づいて説明する。
プレス加工された積層板10T1は、図6(a)に示すように、略台形状の板状部材である。積層板10T1は、2つの係止部10A1を有している。2つの係止部10A1は、積層板10T1の長手方向(固定子2の軸方向)に離れて形成される。2つの係止部10A1は、図6(a)に図示された係止部10A1の断面図である図6(b)に示すように、それぞれ、積層板10T1の長手方向に平行に延びるV状突出部10At1により形成される。
積層板10T1は、図6(c)に示すように、それぞれの係止部10A1が同一位置になるように積層され、積層片10T1aを形成する。図6(a)及び図6(c)に図示された一点鎖線N1は、図6(e)に示すように、複数の積層板10T1を扇状にした時の径方向内側端部と径方向外側端部の中央部を示し、図9に示すように、積層板10T1を積層して形成されたヨーク部10aの径方向中央部を示す。
係止部10A1は、図6(c)に図示された積層片10T1aの部分断面図である図6(d)に示すように、それぞれ、積層板10T1の長手方向に平行に延びるV状突出部10At1により形成される。係止部10A1の長手方向中央部における下方への突出量は、図6(d)に示すように、1枚の積層板10T1の厚さの約2倍程度である。そのため、1枚の積層板10T1に形成された係止部10A1は、その下方に積層された2枚程度の積層板10T1に係合される。積層片10T1aの径方向内側部分は、2つの係止部10A1の係合により接続される。
その後、積層片10T1aを、例えば円周状に湾曲した治具(図示しない)に接触するように沿わせることにより、積層コア片10T1bを形成する。図6(e)に示すように、積層コア片10T1bは、その径方向内側端部を支点として、その径方向外側端部の間に隙間が形成されるように広がる。そのとき、固定子2の軸方向から見たときに、係止部10A1の中心(図6(a)に示した積層板10T1を平面視したときの係止部10A1の中心)は、固定子2の周方向に積層された積層板10T1における径方向中央部より径方向内側に配置される。
第2ヨーク部10bにおける積層板10T2の積層方法について、図7に基づいて説明する。
プレス加工された積層板10T2は、図7(a)に示すように、略長方形状の板状部材である。積層板10T2は、2つの係止部10A2を有している。2つの係止部10A2は、積層板10T2の長手方向(固定子2の軸方向)に離れて形成される。2つの係止部10A2は、図7(a)に図示された係止部10A2の断面図である図7(b)に示すように、それぞれ、積層板10T2の長手方向に平行に延びるV状突出部10At2により形成される。
積層板10T2は、図7(c)に示すように、それぞれの係止部10A2が同一位置になるように積層され、積層片10T2aを形成する。図7(a)及び図7(c)に図示された一点鎖線N2は、複数の積層板10T2を扇状にした時の径方向内側端部と径方向外側端部の中央部を示し、図9に示すように、積層板10T2を積層して形成されたヨーク部10aの径方向中央部を示す。
係止部10A2は、図7(c)に図示された積層片10T2aの部分断面図である図7(d)に示すように、それぞれ、積層板10T2の長手方向に平行に延びるV状突出部10At2により形成される。係止部10A2の長手方向中央部における下方への突出量は、図7(d)に示すように、1枚の積層板10T2の厚さの約2倍程度である。そのため、1枚の積層板10T2に形成された係止部10A2は、その下方に積層された2枚程度の積層板10T1に係合される。積層片10T2aの径方向内側部分は、2つの係止部10A2の係合により接続される。
その後、積層片10T2aを、例えば円周状に湾曲した治具(図示しない)に接触するように沿わせることにより、積層コア片10T2bを形成する。図7(e)に示すように、積層コア片10T2bは、その径方向内側端部を支点として、その径方向外側端部の間に隙間が形成されるように広がる。そのとき、固定子2の軸方向から見たときに、係止部10A2の中心(図6(a)に示した積層板10T1を平面視したときの係止部10A2の中心)は、固定子2の周方向に積層された積層板10T2における径方向中央部より径方向内側に配置される。
第2ティース部12bにおける複数の積層板12T2の積層方法について、図8に基づいて説明する。
プレス加工された積層板12T2は、図8(a)に示すように、略長方形状の板状部材であり、その基端側の端部には、外側に向かって突出する突出部分12Aが形成される。積層板12T2は、突出部分12Aに形成された1つの係止部12A1を有している。係止部12A1は、図8(a)に図示された係止部12A1の断面図である図8(b)に示すように、積層板12T2の長手方向に平行に延びるV状突出部12Atにより形成される。
積層板12T2は、図8(c)に示すように、それぞれの係止部12A1が同一位置になるように積層され、積層片12T2aを形成する。図8(a)及び図8(c)に図示された一点鎖線N1は、図8(e)に示すように、複数の積層板12T2を扇状にした時の径方向内側端部と径方向外側端部の中央部を示し、図9に示すように、積層板12T2を積層して形成されたティース部12の径方向中央部を示す。
係止部12A1は、図8(c)に図示された係止部12A1の部分断面図である図8(d)に示すように、積層板12T2の長手方向に平行に延びるV状突出部12Atにより形成される。係止部12A1の長手方向中央部における下方への突出量は、図8(d)に示すように、1枚の積層板12T2の厚さの約2倍程度である。そのため、1枚の積層板12T2に形成された係止部12A1は、その下方に積層された2枚程度の積層板12T2に係合される。積層片12T2aの径方向内側部分は、1つの係止部12A1の係合により接続される。
その後、積層片12T2aを、例えば円周状に湾曲した治具(図示しない)に接触するように沿わせることにより、積層コア片12T2bを形成する。図8(e)に示すように、積層コア片12T2bは、その径方向内側端部を支点として、その径方向外側端部の間に隙間が形成されるように広がる。そのとき、固定子2の軸方向から見たときに、係止部12A1の中心(図8(a)に示した積層板10T1を平面視したときの係止部12A1の中心)は、固定子2の周方向に積層された積層板12T2における径方向中央部より径方向内側に配置される。
なお、第2ティース部11bにおける複数の積層板11T1の積層方法は同様であるため、その詳細説明は省略するが、積層板11T1の長手方向に平行に延びるV状突出部11Atである係止部11A1の係合により接続され、固定子2の軸方向から見たときに、係止部11A1の中心は、固定子2の周方向に積層された積層板11T1における径方向中央部より径方向内側に配置される。
図9に示すように、第1ヨーク部10aを固定子2の軸方向から見たときに、係止部10A1の中心は、固定子2の周方向に積層された積層板10T1における径方向中央部(図9に図示された一点鎖線N1)より径方向内側に配置される。
また、第2ヨーク部10bを固定子2の軸方向から見たときに、係止部10A2の中心は、固定子2の周方向に積層された積層板10T2における径方向中央部(図9に図示された一点鎖線N2)より径方向内側に配置される。
また、ティース部11、12を固定子2の軸方向から見たときに、係止部11A1、12A1の中心は、固定子2の周方向に積層された積層板11T2、12T2における径方向内側端部と径方向外側端部の中央部(図9に図示された一点鎖線N3)より径方向内側に配置される。
以上のように、本実施形態のリニアアクチュエータ1は、固定子2と、固定子2に対してギャップを空けて配置される可動子3とを備え、固定子2は、複数の積層板10T1、10T2、11T2、12T2が周方向に積層された周方向積層部10a、10b、11b、12bを有し、周方向積層部10a、10b、11b、12bは、積層板10T1、10T2、11T2、12T2を積層方向に係止部10A1、10A2、11A1、12A1により接続されており、係止部10A1、10A2、11A1、12A1の中心は、周方向積層部10a、10b、11b、12bの軸方向から見たときに、積層板10T1、10T2、11T2、12T2における径方向中央部より径方向内側に配置される。
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ1では、積層板10T1、10T2、11T2、12T2を積層方向に係止部10A1、10A2、11A1、12A1により接続された状態にした後、隣り合う積層板10T1、10T2、11T2、12T2における係止部10A1、10A2、11A1、12A1から離れた側の端部の間に空隙を形成することにより、積層鋼板間には、隙間が均等に形成される。そのため、積層コアの内周面は、積層板間の隙間が小さくなり所望の形状の積層コアを製造することが可能であり、また従来に比べ、周方向積層部10a、10b、11b、12bの単位体積当たりの磁性体(積層板10T1、10T2、11T2、12T2)の占める割合が増加するため磁気的性能が向上する。よって、リニアアクチュエータ1の推力性能や生産性が向上する。
本実施形態のリニアアクチュエータ1において、係止部10A1、10A2、11A1、12A1は、固定子2の軸方向に平行に延びるV状突出部10At1、10At2、11At1、12At1により形成される。
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ1では、固定子2の周方向に積層される積層板10T1、10T2、11T2、12T2を含む周方向積層部を製造する際、周方向積層部の径方向外側端部が係止部の近くに形成された径方向内側端部と比べて開きやすくなり、積層板の積層方向が周方向に沿うようにすることが容易になるため、一般的な製造方法で製造することが可能である。これにより、リニアアクチュエータ1の生産性が向上する。
本実施形態のリニアアクチュエータ1において、固定子2は、ヨーク部10により接続された2つのティース部11、12を有し、ヨーク部10及び2つのティース部11、12は、周方向積層部10a、10b、11b、12bを有しており、固定子2の径方向に沿った断面において、係止部10A1、10A2、11A1、12A1の全ては、ヨーク部10及び2つのティース部11、12の外側端部近傍に配置される。
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ1では、単相の往復駆動するリニアアクチュエータ1において、係止部の位置の全てを主磁束(界磁磁束)の通過する磁路よりも軸方向外側に配置することにより、係止部が周方向で導通回路を形成するが、磁束と鎖交することなく、渦電流による損失を抑制できる。
本実施形態の積層板の積層方法は、固定子2と、固定子2に対してギャップを空けて配置される可動子3とを備え、固定子2は、複数の積層板10T1、10T2、11T2、12T2が周方向に積層された周方向積層部10a、10b、11b、12bを有するリニアアクチュエータにおける積層コアの積層方法であって、周方向積層部10a、10b、11b、12bを形成した場合に周方向積層部10a、10b、11b、12bの径方向内側に配置される部分に係止部10A1、10A2、11A1、12A1が形成された積層板10T1、10T2、11T2、12T2を加工する第1工程と、第1工程において加工された積層板10T1、10T2、11T2、12T2を係止部10A1、10A2、11A1、12A1によって係止されるようにそれぞれ積層する第2工程と、第2工程において積層された積層板10T1、10T2、11T2、12T2における径方向外側端部の間に隙間が略均一に形成されるように広げる第3工程とを備える。
これにより、本実施形態の積層板の積層方法では、リニアアクチュエータ1が固定子2の周方向に積層された積層板10T1、10T2、11T2、12T2を含む周方向積層部10a、10b、11b、12bを容易に形成することが可能である。そのため、リニアアクチュエータ1の生産性及び性能を向上することが可能である。よって、従来の積層板の周方向積層部と比べて、生産性を向上しながら、係止部による構造堅牢性が得られ、周方向積層部による推力特性が向上する。これによって、アクチュエータの小型軽量化ができる。
(第2実施形態)
本実施形態のリニアアクチュエータ101と第1実施形態のリニアアクチュエータ1とが異なる点は、リニアアクチュエータ1は、2つのティース部11、12を有するアウター型リニアアクチュエータであるのに対し、リニアアクチュエータ101は、4つのティース部111を有するインナー型リニアアクチュエータである。
リニアアクチュエータ101は、図10に示すように、インナー型リニアアクチュエータであり、円筒形状に形成された固定子102と、固定子102に対してギャップを空けて配置される円柱形状の可動子103とを有している。可動子103は、固定子102の径方向内側において固定子102の軸方向に往復移動可能に形成される。
固定子102は、円筒状のヨーク部(固定子ヨーク鉄心)110と、ヨーク部110の内側部から可動子103に向かって突出する2つのティース部(固定子磁極鉄心)111と、2つのティース部(固定子磁極鉄心)112とを有している。4つのティース部111、112は、それぞれ、固定子102の軸方向に離れて形成されると共に、ヨーク部110の全周にわたって形成される。隣り合うティース部111、112間には、コイル116がそれぞれ配置される。固定子102のティース部111、112の先端と可動子103の内側面との間は、ギャップが形成される。
ヨーク部110(周方向積層部110a)は、固定子102の周方向に積層された複数の積層板110T1を含むヨーク周方向積層部である。積層板110T1は、略長方形の板状部材であり、その幅は、4つのティース部111、112の外側端部間の距離と略同一である。ヨーク部110の径方向内側には、その全周にわたって内側に向かって突出する3つの突部110Dが形成されている。
複数の積層板110T1は、積層板110T1の長手方向(固定子102の軸方向)に離れた2つの係止部110A1により接続される。ヨーク部110の周方向積層部に形成された2つの係止部110A1は、4つのティース部111、112の軸方向外側に配置される。2つの係止部110A1は、それぞれ、積層板110T1の長手方向に平行に延びるV状突出部により形成される。そのとき、固定子102の軸方向から見たときに、係止部110A1の中心は、固定子102の周方向に積層された積層板110T1における径方向中央部より径方向内側に配置される。
ティース部111は、径方向外側に配置される第1ティース部111aと、第1ティース部111aより径方向内側に配置される第2ティース部111bとを含んでいる。2つのティース部111の第2ティース部111bの形状は、略同一形状である。
第1ティース部111aは、ティース部111の基端部において、固定子102の軸方向に積層された複数の積層板111T1を含むティース軸方向積層部である。積層板111T1は、環状の板状部材である。複数の積層板111T1は、図示しない係止部により接続される。
第2ティース部111b(周方向積層部111b)は、ティース部111の先端部において、固定子102の周方向に積層された複数の積層板111T2を含む周方向積層部である。積層板111T2は、図10に示すように、略長方形の板状部材である。第2ティース部111bは、ティース部111のギャップ面を有している。複数の積層板111T2は、1つの係止部111A1により接続される。第2ティース部111bに形成された係止部111A1は、第2ティース部111bの軸方向中央部に配置される。そのとき、固定子102の軸方向から見たときに、係止部111A1の中心は、固定子102の周方向に積層された積層板111T2における径方向中央部より径方向内側に配置される。
ティース部112は、径方向外側に配置される第1ティース部112aと、第1ティース部112aより径方向内側に配置される第2ティース部112bとを含んでいる。2つのティース部112の第2ティース部112bの形状は、略同一形状である。
第1ティース部112aは、ティース部112の基端部において、固定子102の軸方向に積層された複数の積層板112T1を含む軸方向積層部である。積層板112T1は、環状の板状部材である。複数の積層板112T1は、図示しない係止部により接続される。
第2ティース部112b(周方向積層部112b)は、ティース部112の先端部において、固定子102の周方向に積層された複数の積層板112T2を含むティース周方向積層部である。積層板112T2は、図10に示すように、略長方形の板状部材である。第2ティース部112bは、ティース部112のギャップ面を有している。複数の積層板112T2は、1つの係止部112A1により接続される。第2ティース部112bに形成された係止部112A1は、第2ティース部112bの軸方向中央部に配置される。そのとき、固定子102の軸方向から見たときに、係止部112A1の中心は、固定子102の周方向に積層された積層板112T2における径方向中央部より径方向内側に配置される。
このように、リニアアクチュエータ101では、2つのティース部111及び2つのティース部112が、それぞれ、第1ティース部111a、112aと第2ティース部111b、112bとに径方向に2分割されている。
固定子102において、第1ティース111a、112aでは、複数の積層板111T1、112T1が固定子の軸方向に積層されており、第2ティース部111b、112bでは、複数の積層板111T2、112T2が固定子102の周方向に積層されている。
リニアアクチュエータ101の動作は、第1実施形態のリニアアクチュエータ1の動作と同様であり、その詳細説明は省略するが、コイル16への三相交流電流を流すことにより、可動子103は、ティース部111、112に対して軸方向に所定のストロークで往復動する。
なお、ヨーク部110における複数の積層板110T1、第2ティース部111b、112bにおける複数の積層板111T2、112T2の積層方法は、第1実施形態で説明した積層板の積層方法と同様であり、複数の係止部110A1、111A1、112A1は、積層板111T2、112T2の長手方向に平行に延びるV状突出部を有し、ヨーク部110やティース部111、112部を固定子102の軸方向から見たときに、係止部110A1、111A1、112A1の中心は、固定子102の周方向に積層された積層板111T2、112T2における径方向内側端部と径方向外側端部の中央部より径方向内側に配置される。
以上のように、本実施形態のリニアアクチュエータ101は、固定子102と、固定子102に対してギャップを空けて配置される可動子103とを備え、固定子102は、複数の積層板110T1、111T2、112T2が周方向に積層された周方向積層部110a、111b、112bを有し、周方向積層部110a、111b、112bは、積層板110T1、111T2、112T2を積層方向に係止部110A1、111A1、112A1により接続されており、係止部110A1、111A1、112A1の中心は、周方向積層部110a、111b、112bの軸方向から見たときに、積層板110T1、111T2、112T2における径方向中央部より径方向内側に配置される。
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ101では、積層板110T1、111T2、112T2を積層方向に係止部110A1、111A1、112A1により接続された状態にした後、隣り合う積層板110T1、111T2、112T2における係止部110A1、111A1、112A1から離れた側の端部の間に空隙を形成することにより、積層鋼板間には、隙間が均等に形成される。そのため、積層コアの内周面は、積層板間の隙間が小さくなり所望の形状の積層コアを製造することが可能であり、また従来に比べ、周方向積層部110a、111b、112bの単位体積当たりの磁性体(積層板110T1、111T2、112T2)の占める割合が増加するため磁気的性能が向上する。よって、リニアアクチュエータ101の推力性能や生産性が向上する。
本実施形態のリニアアクチュエータ101において、係止部110A1、111A1、112A1は、固定子102の軸方向に平行に延びるV状突出部により形成される
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ101では、固定子102の周方向に積層された複数の積層板110T1、111T2、112T2を含む周方向積層部を製造する際、周方向積層部の径方向外側端部が係止部の近くに形成された径方向内側端部と比べて開きやすくなり、複数の積層板の積層方向が周方向に沿うようにすることが容易になるため、一般的な製造方法で製造することが可能である。これにより、リニアアクチュエータ1の生産性が向上する。
本実施形態のリニアアクチュエータ101において、固定子102は、ヨーク部110により接続された4つのティース部111、112を有し、4つのティース部111、112は、周方向積層部である第2ティース部111b、112bを有しており、固定子102の径方向に沿った断面において、第2ティース部111b、112bに形成された係止部111A1、112A1は、それぞれ、第2ティース部111b、112bの軸方向中央部に配置される。
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ101では、複数相のリニアアクチュエータにおいて、ティース部111、112に形成された係止部位置をティース部111、112の軸方向中央部に配置することにより、係止部が周方向で導通回路を形成した場合でも、磁束と鎖交することなく、渦電流による損失を抑制でき、リニアアクチュエータ101の性能が向上する。
本実施形態のリニアアクチュエータ101において、固定子102は、ヨーク部110により接続された4つのティース部111、112を有し、ヨーク部110は、周方向積層部を有しており、固定子102の径方向に沿った断面において、ヨーク部110の周方向積層部に形成された係止部110A1は、4つのティース部111、112の軸方向外側に配置される。
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ101では、複数相のリニアアクチュエータにおいて、ヨーク部110の周方向積層部に形成された係止部位置を4つのティース部111、112の軸方向外側に配置することにより、係止部が周方向で導通回路を形成した場合でも、磁束と鎖交することなく、渦電流による損失を抑制でき、リニアアクチュエータ101の性能が向上する。
なお、具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
上記第1及び第2実施形態では、固定子の周方向に積層された複数の積層板が、係止部のみにより接続されているが、モールドやワニス等の樹脂類で固定してもよい。
上記第1及び第2実施形態では、固定子の軸方向から見たときに、係止部の全体が、固定子の周方向に積層された積層板における径方向中央部より径方向内側に配置されるが、それに限られない。すなわち、係止部の中心が、固定子の周方向に積層された積層板における径方向中央部より径方向内側に配置される場合に、本発明の効果が得られる。
上記第1及び第2実施形態では、固定子の周方向に積層された複数の積層板が、固定子の軸方向に平行に延びるV状突出部を有する係止部により接続されているが、複数の積層板を接続する係止部の突出部の形状(カシメ加工の種類)、配置、数は任意である。また、係止部が延びる方向は、周方向積層部の軸方向に対して平行であることが望ましい。カシメ加工の種類は、V突起カシメに限られず、例えば台形状突出部を有する台形カシメや、円形状突出部を有する円形カシメや、片側カシメでもよい。
上記第1実施形態では、ヨーク部10が、第1ヨーク部10aと第2ヨーク部10bとに径方向に2分割されると共に、ティース部11、12が、それぞれ、第1ティース部11a、12aと第2ティース部11b、12bとに径方向に2分割されているが、それに限られない。例えば、ヨーク部10は、分割されなくてよいし、3以上に分割されてよい。ティース部11、12は、3以上に分割されてよい。
上記第2実施形態では、ティース部111、112が、それぞれ、第1ティース部111a、112aと第2ティース部111b、112bとに径方向に2分割されているが、それに限られない。ティース部111、112は、3以上に分割されてよい。ヨーク部110は、径方向に分割されてないが、ヨーク部110が、径方向に2以上に分割されてよい。
本発明は、ヨーク部またはティース部の少なくとも一部が、複数の積層板が固定子の周方向に積層された周方向積層部である場合に、上記実施形態と同様の効果が得られる。また、ヨーク部とティース部を一体化した構造に対して周方向積層部を適用しても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
本発明は、固定子のヨーク部またはティース部の少なくとも一部に、複数の積層板が固定子の周方向に積層された周方向積層部を有しているが、可動子の一部に周方向積層部を有しても上記実施形態と同様の効果が得られる。例えば、図14(a)に示すように、可動子303が第1積層部303a(軸方向積層部)と第2積層部303b(周方向積層部)を含み、第1積層部303aに永久磁石5a、5b、5cを埋込んで、第2積層部303bに係止部303cを配置してもよい。係止部303cの中心は、固定子に係止部を配置した場合と同様に、第2積層部303bを可動子303の軸方向から見たときに、可動子303の周方向における径方向内側端部と径方向外側端部の中央部より径方向内側に配置すればよい。また、図14(b)に示すように、可動子403の第1積層部403a(周方向積層部)に永久磁石5a、5b、5cを接着等により取付し、図14(a)の第2積層部300bと同様に、第1積層部403aに係止部403cを配置してもよい
上記第1実施形態のリニアアクチュエータ1において、ティース部11とティース部12の形状は対称形状であるが、それに限られない。上記第2実施形態のリニアアクチュエータ101において、ティース部111とティース部112の形状は略対称形状であるが、それに限られない。
上記第1実施形態では、2つのティース部11、12を有する固定子2について説明したが、固定子2のティース部の数は、3以上の任意の数でもよい。
上記第2実施形態では、4つのティース部111、112を有する固定子102について説明したが、固定子102のティース部の数は、2つ、3つまたは5以上の任意の数でもよい。
上記第1実施形態では、固定子2において、第1ヨーク部10a、第2ヨーク部10b、第1ティース部11a、12a及び第2ティース部11b、12bは、複数の積層板が機械的変形を伴う係止部により接続されて形成されるが、複数の積層板の接続方法は、それに限られない。上記第2実施形態も同様である。ヨーク部10を形成する複数の積層板及びティース部11を形成する複数の積層板は、例えば接着やレーザなどにより接合される接合部により接続されてよい。この場合、接合部を積層コアの内周面側に設けることが好ましい。
上記実施形態では、可動子3の内部に、平板状の永久磁石5a、5b、5cが配置されているが、可動子3の内部に配置される永久磁石の形状は、平板状に限らず、円筒状や扇型状、瓦型状など任意である。
上記第1実施形態では、例えば積層板10T1の係止部10A1(V状突出部10Tt1)の長手方向中央部における下方への突出量が、図11(a)に示すように、1枚の積層板10T1の厚さと略同一であるが、係止部10A1の長手方向中央部における下方への突出量は、任意である。よって、係止部10A1の突出量は、図11(b)に示すように、1枚の積層板10T1の厚さより小さくてもよい。また、係止部10A1の突出量は、図11(c)に示すように、1枚の積層板10T1の厚さより大きくてもよい。なお、積層板10T2の係止部10A2(V状突出部10Tt2)、積層板11T2の係止部11A1(V状突出部11Tt)、積層板12T2の係止部12A1(V状突出部12Tt)についても同様である。
上記実施形態において、例えば、図12に示すように、固定子2の第2ティース部11b、12bの径方向外側に、コイル16を配線する為の切欠き部13を形成してもよい。図12には、第2ティース部12bの径方向外側に形成される切欠き部13を図示し、以下、第2ティース部12bの径方向外側に形成される切欠き部13について説明するが、第1ティース部11bの径方向外側に形成される切欠き部13についても同様である。
切欠き部13が第2ティース部12bの径方向外側に形成される場合、切欠き部13の径方向内側部分である第2ティース部12b’は、図13(a)に示すように、第2ティース部12bの積層板12T2の径方向において、突出部分12A及び係止部12A1を含むようにカットした略長方形の板状部材である積層板12T2’を固定子2の周方向に積層したティース周方向積層部である。この場合は、係止部12A1の中心は、第2ティース部12b’を固定子2の軸方向から見たときに、固定子2の周方向に積層された積層板12T2’における径方向内側端部と径方向外側端部の中央部(図13(a)に図示された一点鎖線N4)より径方向内側に配置される。
第2ティース部12b’は、図13(b)に示すように、第2ティース部12bと同様の積層方法により積層コア片12T2b’を形成して、係止部12A1は、第2ティース部12bと同様に、ティース部12の外側端部近傍に配置される。これにより、第2ティース部12bと第2ティース部12b’を組み合わせた円環状の周方向積層部を形成する際、所望の形状の積層コアを製造でき、コイル16を切欠き13に収納して軸方向に配線することにより、リニアアクチュエータの小型化が可能である。なお、第2ティース部12b’は、磁気的性能の向上に直接影響しないため、図13(c)に示すように、積層板12T2の形状を突出部分12Aの径方向長さに合わせてカットして略長方形の板状部材にするなど、係止部12A1によって積層可能な範囲で変更してよい。