JP7496283B2 - 基準信号選択回路 - Google Patents

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本開示は、放送、通信、測定等の分野における基準信号の選択回路に関する。
放送、通信及び測定の分野の基準信号として、10MHzの正弦波が多く利用されている。信号レベルの異なる複数の基準信号のうち、所望の1つの信号を選択して、同期信号として使用する場合がある。
放送、通信の分野の装置内では、10MHz正弦波基準信号は、数GHzから数十GHz帯の信号に逓倍され、装置内の局部発振器信号として生成されることが多い。例えば、数十GHz帯に逓倍された場合の雑音成分は、20log(数十GHz帯局部発振器信号/10MHz基準信号)の比率で増加するため、妨害波に対して高いアイソレーションが要求される。
複数の10MHz基準信号を選択する際には、選択後の信号が同一レベルとなるよう、選択回路に入力する前段で、各々のレベルを合わせるための増幅器が必要である。
また、選択回路のリレー等の切替素子により信号が減衰するため、最終段には選択回路の通過損失を補正するための増幅器が必要である。
更に、前述したように、非選択信号が妨害波とならないようアイソレーションの高いリレーを使用し、信号間のアイソレーションを十分にとることが必要である。
なお、この種の装置を開示したものとして、以下の特許文献1、2がある。
しかしながら、特許文献1、2に係る従来技術には、以下のような課題がある。
高周波信号の選択切替えにおいて、非選択側の信号に対するアイソレーション及び通過損失が課題となる。
選択する信号がPLL回路等の正弦波の基準信号の場合、非選択側の希望波/妨害波比率は、映像信号および音声信号では高品質と判断される信号雑音比率50dBcでは不十分である。
また、選択回路に入力する際には各々の信号レベルが同じレベルでなくては、選択する信号により、レベルが変動してしまうため、入力する信号に対して増幅器が必要となる。
更に、アイソレーションを向上させるために、切替回路を多段に入れると、信号の通過損失が大きくなるため、選択出力回路の最終出力段に出力用の増幅器が必要となる。
そこで、上記の課題を解決するために、高いアイソレーションが得られ、低通過損失であり、かつ入力レベル調整するための増幅器が不要な、基準信号選択回路を術現するものとして、以下の特許文献3がある。
特許文献3に係る基準信号選択回路は、複数の正弦波基準信号を含む、または1つ以上の正弦波基準信号と1つ以上の汎用ロジックレベルの矩形波基準信号を含む、異なる信号レベルの複数の基準信号を選択する回路であり、バイアス回路と、汎用ロジック回路と、多段選択リレー回路と、EMIフィルタと、終端抵抗と、を備えて構成されている。
バイアス回路は、正弦波基準信号を矩形波信号に変換する。汎用ロジック回路は、変換された矩形波信号または矩形波基準信号を汎用ロジックで規定するデジタル信号に変換する。
多段選択リレー回路は、変換さえたデジタル信号を選択する。EMIフィルタは、バイアス回路および汎用ロジック回路の電源供給経路にそれぞれ挿入される。そして、終端抵抗は、多段選択リレー回路に接続された非選択信号の空間への輻射を抑える。
このような構成を備えることで、特許文献3に係る基準信号選択回路は、バイアス回路と汎用ロジック回路と信号選択用の多段選択リレー回路の組合せにより、高いアイソレーションが得られ、低通過損失であり、かつ入力レベル調整するための増幅器が不要な、基準信号選択回路を提供できる。
特開平07-280908号公報 特開2016-005276号公報 特開2019-198025号公報
しかしながら、特許文献3に係る従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献3に係る基準信号選択回路には、入力信号である第1の正弦波基準信号RS1および第2の正弦波基準信号RS2に、基準信号周波数f0以外のノイズ成分の周波数fnが混入している場合を考える。
この場合、ノイズ成分が混入している入力信号は、汎用ロジック回路でデジタル信号に変換された後、ローパスフィルタで正弦波の基準信号に復元された際に、
f0±Δfn1±Δfn2±Δfn3±・・・
といったノイズ成分が、基準信号の近傍周波数に発生する。この結果、基準信号のパルス幅が一定せず、仕様を満足しない不備が発生する。
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、入力信号に含まれるノイズ成分の影響を抑制し、復元された基準信号のパルス幅が仕様を満たすようにすることのできる基準信号選択回路を得ることを目的とする。
この開示に係る基準信号選択回路は、複数の正弦波基準信号と、複数の正弦波基準信号のそれぞれに対応する汎用ロジックレベルの矩形波基準信号を含む、異なる信号レベルの複数の基準信号を選択する基準信号選択回路であって、正弦波基準信号を矩形波信号に変換するバイアス回路と、変換された矩形波信号または矩形波基準信号を汎用ロジックで規定するデジタル信号に変換する汎用ロジック回路と、変換されたデジタル信号を選択する多段選択リレー回路と、バイアス回路および汎用ロジック回路の電源供給経路にそれぞれ挿入されたEMIフィルタと、多段選択リレー回路に接続された非選択信号の空間への輻射を抑えるために、一端が信号接地に接続され、他端が多段選択リレー回路において非選択信号が接続された非選択端子に接続された終端抵抗と、を備え、バイアス回路の前段に設けられ、基準信号の周波数よりも1桁以上小さい周波数をカットオフ周波数とし、正弦波基準信号をフィルタリング処理した後の信号をバイアス回路に出力するバンドパスフィルタをさらに備えるものである。
本開示によれば、入力信号に含まれるノイズ成分の影響を抑制し、復元された基準信号のパルス幅が仕様を満たすようにすることのできる基準信号選択回路を提供できる。
参考例による10MHz基準信号選択回路の構成の一例を示す図である。 図1の10MHz基準信号選択回路における正弦波基準信号入力、バイアス回路での変換、汎用ロジックレベル波形を示す図である。 図1の10MHz基準信号選択回路における生成信号波形の一例を示す図である。 図1の10MHz基準信号選択回路におけるバイアス回路の一例を示す図である。 図1の10MHz基準信号選択回路における電源パターン接続の一例を示す図である。 一般的な汎用ロジックICでの2信号の相互干渉経路を説明するための図である。 図1の10MHz基準信号選択回路における汎用ロジック回路の構成の一例を示す図である。 一般的な選択リレー回路での非選択側干渉経路を説明するための図である。 図1の10MHz基準信号選択回路における多段選択リレー回路の構成の一例を示す図である。 図1の10MHz基準信号選択回路における多段選択リレー回路の段数を増やした場合の構成の一例を示す図である。 参考例による10MHz基準信号選択回路の構成の別の例を示す図である。 本開示の実施の形態1におけるノイズがない場合の3種の波形A1~A3と、ノイズがある場合の3種の波形B1~B3とを対比した説明図である。 本開示の実施の形態1において、先の図12における波形A2と波形B2とを対比した説明図である。 本開示の実施の形態1による10MHz基準信号選択回路の構成の一例を示す図である。 本開示の実施の形態1において、ノイズを含む入力信号のスペクトラムを示した図である。 図15に示した入力信号に対して、先の図1に示した回路を通して出力される正弦波基準出力信号のスペクトラムを示した図である。
以下、本開示の説明をする前に、特許文献3に対応する内容を、図1~図11を用いて参考例として説明し、その後、本開示について実施の形態1として、図12~図16を用いて詳細に説明する。なお、各図において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。以下では10MHzの基準信号の選択回路について説明するが、基準信号は10MHzに限定されるものではない。
<参考例>
図1は、参考例による10MHz基準信号選択回路の構成の一例を示す図である。第1のバイアス回路1には、第1の正弦波基準信号RS1が入力される。第2のバイアス回路7には、第2の正弦波基準信号RS2が入力される。第1の正弦波基準信号RS1および第2の正弦波基準信号RS2はそれぞれ、-4dBmから+10dBmの範囲の異なる信号レベルの10MHzの正弦波基準信号である。
第1のバイアス回路1の出力側には、ロジック回路からなる第1の汎用ロジックIC4が接続されている。以下、ロジック回路はロジックICとも云う。第1のバイアス回路1とバイアス回路電源VBとの間には、第1のEMI(Electro Magnetic Interference)フィルタ2が挿入されている。第1の汎用ロジックIC4と汎用ロジックIC電源VGLとの間には、第2のEMIフィルタ3が挿入されている。
第2のバイアス回路7の出力側には、第2の汎用ロジックIC10が接続されている。第2のバイアス回路7とバイアス回路電源VBとの間には、第3のEMIフィルタ8が挿入されている。第2の汎用ロジックIC10と汎用ロジックIC電源VGLとの間には、第4のEMIフィルタ9が挿入されている。
第1の汎用ロジックIC4の出力側は、第1の選択リレー5に接続されている。第1の選択リレー5は、第1の汎用ロジックIC4からの出力を選択端子aと非選択端子bとに切り替えて接続する。選択端子aは、第3の選択リレー133の第1入力端子T1に接続されている。非選択端子bは、第1の終端抵抗6を介して信号接地SGNDされている。
第2の汎用ロジックIC10の出力側は、第2の選択リレー11に接続されている。第2の選択リレー11は、第2の汎用ロジックIC10からの出力を選択端子aと非選択端子bとに切り替えて接続する。選択端子aは、第3の選択リレー133の第2入力端子T2に接続されている。非選択端子bは、第2の終端抵抗12を介して信号接地SGNDされている。
第3の選択リレー133は、第1入力端子T1と第2入力端子T2からの信号を切り替えて第3の汎用ロジックIC14に出力する。第3の汎用ロジックIC14と汎用ロジックIC電源VGLとの間には、第5のEMIフィルタ13が挿入されている。第1から第3の選択リレー5,11,133は多段選択リレー回路を構成する。選択リレー5,11,133の切り替えは、リレー電源VRより給電され、外部からの切替信号に従って切替制御を行うリレー制御回路RCにより行なわれる。
第3の汎用ロジックIC14の出力は、直列抵抗と並列抵抗を含むレベル調整抵抗回路15、ローパスフィルタ16を順に介して、ローパスフィルタ16から例えば10MHz、0dBmの正弦波基準出力信号RSOとして出力される。レベル調整抵抗回路15およびローパスフィルタ16の終端は、信号接地SGNDされている。
図2には、図1の基準信号選択回路における、-4dBmから+10dBmの範囲の信号レベルの10MHzの第1の正弦波基準信号RS1、第1のバイアス回路1での矩形波信号への変換波形(1)OUT、第1の汎用ロジックIC4での汎用ロジックで規定するデジタル信号への変換波形(4)OUT、を示す。図2中、GLHは汎用ロジックICのHレベル、GLHTHは汎用ロジックICのHレベル判定閾値、GLLは汎用ロジックICのLレベル、を示す。
図3には、図1の基準信号選択回路における生成信号波形の一例を示す。RS1は第1の正弦波基準信号RS1、(1)OUTは第1のバイアス回路1の出力、(4)OUTは第1の汎用ロジックIC4の出力、RS2は第2の正弦波基準信号RS2、(7)OUTは第2のバイアス回路7の出力、(10)OUTは第2の汎用ロジックIC10の出力、RSOはローパスフィルタ16の出力である正弦波基準出力信号RSO、を示す。
図1に示すように、第1の正弦波基準信号RS1は第1のバイアス回路1へ、第2の正弦波基準信号RS2は第2のバイアス回路7へ、それぞれ入力される。すなわち、第1のバイアス回路1及び第2のバイアス回路7へは交流信号が入力される。そして図2,図3に示すとおり、例えば第1のバイアス回路1では、-4dBmから+10dBmの正弦波に汎用ロジックICのHレベル判定閾値GLHTHレベルがパルスデューティ比50%となる直流成分が与えられて矩形波信号に変換される。
図4に図1の10MHz基準信号選択回路におけるトランジスタで構成したバイアス回路の一例を示す。図4において、VBはバイアス回路電源、2はEMIフィルタ、17コンデンサ、18が抵抗、19がトランジスタを示す。バイアス回路に-4dBmの信号を入力した場合、50Ω線路の場合、振幅は0.2Vp-p(ピークトーピーク電圧)であり、トランジスタで構成されたバイアス回路によってバイアス電源まで振幅増幅を行うと同時に矩形波変換を行う。また、バイアス回路に+10dBmの信号が入力した場合、振幅はバイアス電圧以上上昇することがないため、-4dBmの信号が入力したときと同じ矩形波が得られる。
更に図1の第1の汎用ロジックIC4は、第1のバイアス回路1から出力した矩形波を汎用ロジックで規定するデジタル信号に変換する。
図1の第2の正弦波基準信号RS2側でも同様に、第2のバイアス回路7で正弦波が矩形波信号に変換され、第2の汎用ロジックIC10でさらに矩形波を汎用ロジックで規定するデジタル信号に変換され、汎用ロジックレベルの信号となる。入力された正弦波は汎用ロジックIC4,10によって、入力レベルを意識せず、すべて同じレベルとして扱うことが可能となる。
また、汎用ロジックICは電圧レベルが+5V付近の電圧となるため、理想的にHレベル信号が+5Vとなる。また、汎用ロジックICの出力を500Ωの抵抗で終端すると、抵抗には10mAの電流が流れることになるので、電力としては尖頭値で+17dBm電力を得ることができる。例えば、-4dBmで入力した入力信号は、21dBの利得を得たことになり通過損失の補正を増幅器で行う必要がなくなる。
次に、図1の第1の正弦波基準信号RS1の矩形波のデジタル信号と第2の正弦波基準信号RS2の矩形波のデジタル信号は、第1から第3の選択リレー5、11,133からなる2段階の選択回路で、何れか一方のデジタル信号の10MHz基準信号が選択される。
選択された10MHzの基準デジタル信号は、レベル調整抵抗回路15によって、例えば0dBmにレベル調整される。レベル調整された基準デジタル信号はその後、ローパスフィルタ16で、10MHz成分以下の信号がフィルタリングされて10MHzの正弦波基準出力信号RSOとして出力される。一例として、第1の正弦波基準信号RS1が選択された場合の一連の基準信号の波形変換の変化を示したのが図3である。
選択の際、課題となるのは非選択側の信号が選択信号に干渉をして、最終段の10MHzの基準出力信号に非選択側の信号が非加算混合されることにより、位相雑音として検出されることにある。
干渉する経路は様々な要因があるが、この参考例は以下の3点の干渉を抑えることにより、選択信号と非選択信号のDU比(Desired to Undesired Ratio)を向上させることができる。
1)空間からの干渉
2)汎用ロジックIC干渉
3)リレー接点間の干渉
空間からの干渉の影響をなくすため、この参考例による基準信号選択回路では、基準信号選択回路の信号接地SGNDと、この基準信号選択回路を組み込む図示を省略している装置の接地との接続端子は設けない。そして基準信号選択回路の電源系を、電源と電源リターンの関係で接続し、電源供給を一筆書きに近い形で配線している。
また、リターン側を信号接地SGNDとしていることを特徴とする。すなわち、各回路の終端と電源リターンを、基準信号選択回路の電源の接地レベルである同じレベルへ信号接地SGNDしている。
図5に、図1の10MHz基準信号選択回路における電源パターン接続、すなわち電源及び信号接地の系統例を示す。図5において、VBはバイアス回路電源、VBRはバイアス回路電源VBのバイアス回路電源リターンを示す。また、VGLは汎用ロジックIC電源、VGLRは汎用ロジックIC電源VGLの汎用ロジックIC電源リターンを示す。
また図1では図示が省略されていたが、各バイアス回路1,7、汎用ロジックIC4,10,14の終端も信号接地SGNDされている。
この接続によって、この参考例による基準信号選択回路は、電源系が電源から電源リターンに戻る回路とされ、基準信号選択回路が組み込まれる装置の接地すなわちグランドからフローティング状態となり、空間に輻射している非選択側10MHzの空間干渉を抑制している。
信号接地SGNDは、信号線等の基準信号選択回路の電源への電源リターンへの接続を示す。
次にレベル調整を必要とせずに選択するための汎用ロジックレベルへの変換を行うには、汎用ロジックICの使用は不可欠であるが、汎用ロジックICでの干渉の抑制ポイントはICの電源端子である。
図6は、一般的な汎用ロジック回路での2信号の相互干渉経路を説明するための図である。第1の矩形波信号RSM1は、例えば第1の正弦波基準信号RS1の矩形波に相当する。第2の矩形波信号RSM2は、第2の正弦波基準信号RS2の矩形波に相当する。図6に示すとおり、第1の矩形波信号RSM1は、汎用ロジックに入出力をすると同時に、図6の破線IF12で示す経路で電源接続を通じて、第2の矩形波信号RSM2に対して、電源端子VGLから減衰した信号が漏洩し、干渉を起こす。一方、第2の正弦波基準信号RS2も、図6の一点鎖線IF21に示す、第1の矩形波信号RSM1に干渉を起こす経路が存在する。
なお、図6の例はCMOSロジックで記載をしている。
図7は図1の10MHz基準信号選択回路における汎用ロジック回路の構成の一例を示す図である。この参考例による汎用ロジックICでは、汎用ロジックICからの干渉経路を切断するため、図7に示すように、高周波を通過させないようする電源用のEMIフィルタ3,9を汎用ロジックの電源端子VGLに接続している。
図7に示すように、第1の矩形波信号RSM1から発生する長破線IF12で示す経路の漏洩信号は、EMIフィルタ3を通ることで減衰する。その後、減衰した漏洩信号は、短破線IF12aで示す経路で、電源接続を通して第2の矩形波信号RSM2の汎用ロジックIC10の電源端子に漏洩するが、第2の矩形波信号RSM2を伝達する汎用ロジックIC10の電源端子にもEMIフィルタ9を接続していることで、点線IF12bで示す経路の漏洩信号は更に減衰された状態で汎用ロジックIC10に到達するため、第2の矩形波信号RSM2の主信号系に干渉する妨害波は抑制される。
第2の矩形波信号RSM2からの漏洩信号についても同様に、第2の矩形波信号RSM2から発生する一点鎖線IF21で示す経路の漏洩信号は、EMIフィルタ9を通ることで減衰する。その後、減衰した漏洩信号は、短破線IF21aで示す経路で、電源接続を通して第1の矩形波信号RSM1の汎用ロジックIC4の電源端子に漏洩するが、第1の矩形波信号RSM1を伝達する汎用ロジックIC4の電源端子にもEMIフィルタ3を接続していることで、点線IF21bで示す経路では更に減衰された状態で汎用ロジックIC4に到達するため、第1の矩形波信号RSM1の主信号系に干渉する妨害波は抑制される。
また、電源接続が信号の漏洩路となり得るところから、図1,5に示すように、バイアス回路1,7にもEMIフィルタ2,8を接続し、被選択信号となる正弦波基準信号RS1および正弦波基準信号RS2の信号線の電源接続を要する箇所には、EMIフィルタを接続した回路構成とする。
10MHの基準信号をPLL回路で1GHz帯に逓倍する場合、干渉する妨害波の減衰量を増加させる場合でかつ、1GHzで生成した信号の搬送波/雑音比(C/N)30dBが必要だとする。この場合、10MHzの基準信号での必要なC/N比は、下記式(1)の通りとなる。
増加雑音レベル=20×log(1GHz/10MHz)=40dB
C/N=30dB(1GHzにおいて)
従って10MHzで必要なC/Nは、
C/N=40dB+30dB=70dB (1)
図8は、一般的な選択リレー回路での非選択側の干渉経路を説明するための図である。第1のデジタル信号RSR1は、例えば第1の正弦波基準信号RS1のデジタル信号に相当する。第2のデジタル信号RSR2は、第2の正弦波基準信号RS2のデジタル信号に相当する。そして第1のデジタル信号RSR1が選択されて出力されたとする。第2の正弦波基準信号RS2の非選択側では、図8の一点鎖線IF21cに示す経路で第1のデジタル信号RSR1に干渉を起こす経路が存在する。図8に示す選択リレー回路を使用した場合、アイソレーション性能が非常に高い選択リレー回路が必要となる。
図9は、図1の10MHz基準信号選択回路における多段選択リレー回路の構成の一例を示す図である。第1の選択リレー5の非選択端子bは、空間への輻射を抑制するための第1の終端抵抗6を介して信号接地SGNDされ、終端抵抗にて終端を行っている。第2の選択リレー11の非選択端子bは、空間への輻射を抑制するための第2の終端抵抗12を介して信号接地SGNDされ、終端抵抗にて終端を行っている。第2のデジタル信号RSR2から第1のデジタル信号RSR1への干渉経路の、第2の選択リレー11での干渉経路は一点鎖線IF21cで示され、第3の選択リレー133での干渉経路は点線IF21dで示されている。
第2の選択リレー11において、非選択信号の第2のデジタル信号RSR2は第2の終端抵抗12を介して信号接地SGNDへ流れるため、第2のデジタル信号RSR2から第1のデジタル信号RSR1への干渉経路における漏洩信号および信号の空間への輻射を抑制することができる。このように、複数段の選択リレー構成で信号選択を行った場合には、アイソレーション性能が非常に高い等の特別なリレーを使用することなく、漏洩信号、干渉信号の抑制等を実現できる。
図10は、図1の10MHz基準信号選択回路における多段選択リレー回路の段数を増やした場合の構成の一例を示す図である。図10の多段選択リレー回路では図9の多段選択リレー回路に対して、第1の選択リレー5の選択端子aと第3の選択リレー133の第1入力端子T1との間に、第4の選択リレー5aが接続されている。また、第2の選択リレー11の選択端子aと第3の選択リレー133の第2入力端子T2との間に、第5の選択リレー11aが接続されている。これにより3段の多段選択リレー回路を構成している。
第4の選択リレー5aの非選択端子bは、空間への輻射を抑制するための第3の終端抵抗6aを介して信号接地SGNDされ、終端抵抗にて終端を行っている。第5の選択リレー11aの非選択端子bは、空間への輻射を抑制するための第4の終端抵抗12aを介して信号接地SGNDされ、終端抵抗にて終端を行っている。また第2のデジタル信号RSR2から第1のデジタル信号RSR1への干渉経路の、第5の選択リレー11aでの干渉経路は点線IF21eで示されている。
このように、多段選択リレー回路の段数を増やすことで、干渉波の減衰量も選択リレーの数量に比例して大きくなり、干渉波の抑制が行える。
図11は、参考例による10MHz基準信号選択回路の構成の別の例を示す図である。図11の基準信号選択回路では、選択される基準信号の一方は第1の正弦波基準信号RS1であるが、他方が汎用ロジック信号レベル矩形波である矩形波基準信号RS3からなる。従って矩形波基準信号RS3側にはバイアス回路に関する構成は設けられていない。矩形波基準信号RS3は直接、第2の汎用ロジックIC10に入力されて汎用ロジックで規定するデジタル信号へ変換される。他の部分は上述の図1の基準信号選択回路と同じである。
なお、矩形波基準信号RS3側に図1と同様に第2のバイアス回路7および第3のEMIフィルタ8を設けて、矩形波基準信号RS3をバイアス値を変更した第2のバイアス回路7によりバイアスを掛けた後、デジタル信号に変換するようにしてもよい。
このようにこの参考例による10MHz基準信号選択回路では、正弦波の基準信号だけでなく矩形波の基準信号も含む、複数の基準信号の選択に適用可能であり、同様の効果が得られる。
上記の参考例では、被選択信号である正弦波基準信号および矩形波基準信号を2つの場合について説明したが、この参考例の基準信号選択回路は、被選択信号が3つ以上であっても適用可能である。
また上記の参考例では、多段選択リレー回路を2段および3段のものについて説明したが、多段選択リレー回路を4段以上で構成しても実施可能であり、干渉波の抑制効果がさらに向上する。
以上のようにこの参考例では、複数ある基準信号が、-4dBmから+10dBmまでの異なるレベルの正弦波である場合に、基準信号のレベルを調整することなく、デューティ50%のTTL、CMOSレベル等の汎用ロジックレベルである矩形波信号に変換し、ロジックレベルの信号をリレーによって選択を行う。汎用ロジックに変換した際には信号レベルが0V及び+5Vの振幅となり、入力レベルに対して、大きなレベルとなる。このため、非選択側の信号が選択リレー回路で選択側の信号と干渉する。そこで、干渉経路を信号ライン、電源ライン及び空間でアイソレーションを確保する回路を追加し、最終段に10MHzのローパスフィルタで矩形波を正弦波に再変換する。
信号減衰が発生する要因となる回路パターンおよびリレー回路を通過する信号レベルを汎用ロジックレベルとすることにより信号選択を行う。そして最後にローパスフィルタで汎用ロジックレベルのデジタル信号をアナログ信号に変換する。これにより、過損失を補正する増幅器なしで、一定のレベル、例えば0dBmの基準信号出力とする選択回路を実現する。
選択前の10MHz基準信号の入力信号に対して、アイソレーションが高く、通過損失の低い特殊な高周波リレー、及び各々の入力のための入力レベル調整用の増幅器及が不要となる。
また、この選択回路は10MHz入力基準信号レベルの入力規格値の許容値が-4dBmから+10dBmまで許容しており、入力レベル範囲が大きいという特徴を持つ。
さらに、矩形波の10MHz基準信号入力でもバイアス回路のバイアス値を変更またはバイアス回路を削除することにより、正弦波の10MHz基準信号と矩形波の10MHz基準信号の選択を行い、正弦波で10MHz基準信号を出力することが可能となる。
実施の形態1.
以下の説明では、第1の正弦波基準信号RS1および第2の正弦波基準信号RS2の2つの入力信号のうち、第1の正弦波基準信号RS1にノイズ成分が含まれている場合を例に説明する。
まず始めに、ノイズの有無により、復元された基準信号がどのように異なるかを、図12及び図13を用いて説明する。
図12は、本開示の実施の形態1におけるノイズがない場合の3種の波形A1~A3と、ノイズがある場合の3種の波形B1~B3とを対比した説明図である。ここで、波形A1~A3、および波形B1~B3は、それぞれ以下の信号波形を意味している。
波形A1:入力信号にノイズが重畳していない場合の第1の正弦波基準信号RS1のスペクトラムに相当し、横軸が周波数、縦軸が信号振幅レベルとして示されている。波形A1は、基準信号の周波数f0の周波数成分を有している。
波形B1:入力信号にノイズが重畳している場合の第1の正弦波基準信号RS1のスペクトラムに相当し、横軸が周波数、縦軸が信号振幅レベルとして示されている。波形B1は、基準信号の周波数f0と、ノイズの周波数fnの両方の周波数成分を有している。
波形A2:第1のバイアス回路1に対してノイズが重畳していない波形A1が入力された場合の出力波形であり、デジタル化された矩形波に相当し、横軸が時間、縦軸がパルス信号の振幅として示されている。
波形B2:第1のバイアス回路1に対してノイズが重畳している波形B1が入力された場合の出力波形であり、デジタル化された矩形波に相当し、横軸が時間、縦軸が振幅として示されている。
波形A3:第1の汎用ロジックIC4に対してノイズの影響がない波形A2が矩形波として入力された場合の出力波形であり、第1の汎用ロジックIC4で規定されるデジタル信号に変換された信号に相当し、横軸が時間、縦軸が振幅として示されている。
波形B3:第1の汎用ロジックIC4に対してノイズの影響がある波形B2が矩形波として入力された場合の出力波形であり、第1の汎用ロジックIC4で規定されるデジタル信号に変換された信号に相当し、横軸が時間、縦軸が振幅として示されている。
図13は、本開示の実施の形態1において、先の図12における波形A2と波形B2とを対比した説明図である。図13においては、波形A2を実線で示し、波形B2を×をプロットした実線として示している。波形B2は、ノイズの影響を受け、パルス幅が一定していない。従って、使用用途によっては、パルス幅の仕様を満たさないおそれがある。図12において、波形B2のパルス幅が一定しないことに起因して、波形B3は、ノイズ成分の影響を受け、変動することとなる。
そこで、本実施の形態1では、入力信号に含まれているノイズ成分を除去し、本来の基準信号の周波数成分のみを通過させるバンドパスフィルタを用いることを特徴としている。図14は、本開示の実施の形態1による10MHz基準信号選択回路の構成の一例を示す図である。先の図1と比較すると、図14に示した本実施の形態1に係る基準信号選択回路においては、基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31、32がさらに設けられている。
基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31、32の機能は同一であるため、基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31を用いて具体的な機能を説明する。図14においては、基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31への入力信号が有するスペクトラムが波形S-INとして示され、基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31からの出力信号が有するスペクトラムが波形S-OUTとして示されている。なお、波形S-IN及び波形S-OUTは、横軸が周波数、縦軸が信号振幅レベルとしたスペクトラムとして示されている。
波形S-INは、図12における波形B1に相当し、周波数f0の基準信号とともに、周波数fnのノイズ成分が含まれている場合を例示している。基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31は、f0の周波数帯のみを通過させ、fnの周波数帯を遮断するバントパスフィルタとして機能する。
基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31を通過して出力される波形S-OUTは、図14に示したように、周波数f0の基準信号が含まれ、周波数fnのノイズ成分が除去されることとなる。この結果、基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31の後段において、パルス幅が一定した基準信号パルスを生成することが可能となる。
本開示においては、バンドパスフィルタを用いて除去するノイズ成分の周波数fnが、基準信号の周波数f0に対して、1桁以上小さい値であることを特徴としている。そこで、このような周波数f0と周波数fnとの関係についての技術的意義を、図15及び図16を用いて以下に説明する。
図15は、本開示の実施の形態1において、ノイズを含む入力信号のスペクトラムを示した図である。本開示に係る基準回路選択回路は、以下の2点の特徴を有している。
特徴1:第1の正弦波基準信号RS1及び第2の正弦波基準信号RS2の入力レベルは、-4dBm~+10dBmの範囲で入力調整が不要である。
特徴2:ロジックICを用いて、ロジック信号レベルで矩形波生成することで、振幅変調が生じる。
特徴2において、第1の正弦波基準信号RS1または第2の正弦波基準信号RS2の信号周波数よりも大幅に低い周波数のノイズ成分が混入した場合を考える。ここで、例えば、第1の正弦波基準信号RS1の周波数f0が10MHz、ノイズ成分の周波数fnが1MHzであったとする。この場合、入力信号は、周波数を横軸とすると、図15に示したスペクトラムのようになり、ノイズと基準信号との周波数について、9MHzの差ができている状態となる。
図16は、図15に示した入力信号に対して、先の図1に示した回路を通して出力される正弦波基準出力信号RSOのスペクトラムを示した図である。図15に示した入力信号を、先の図1の回路を通し、ロジック信号レベルで矩形波生成すると、振幅変調が生じる。従って、ローパスフィルタ16を介しても、正弦波基準出力信号RSOのスペクトラムは、図16に示したようにノイズ成分を含む信号となり、基準信号として利用できなくなるおそれがある。
また、正弦波基準出力信号RSOに含まれるノイズは、振幅変調の特性上、10MHzの主信号に対して、相対的にノイズ周波数が発生する。このため、ノイズ成分の周波数fnが低いほど、基準信号の周波数f0である10MHzの近傍にスペクトラムとして現れる結果となる。例えば、ノイズ成分の周波数fnが1kHzである場合、10MHzから1kHz離れた9.999MHzと10.001MHzにノイズ成分が発生することとなる。
従って、本実施の形態1で利用する基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31、32のカットオフ周波数は、基準信号の周波数f0に近い周波数とするのではなく、1桁程度低い周波数とすることが留意点となる。
図16のようなスペクトラムの基準信号が図1の正弦波基準出力信号RSOとして出力された場合には、基準信号の周波数のみを通過させる急峻なフィルタ特性を持つ、複雑かつ高価なバンドパスフィルタがさらに必要となる。
しかしながら、図14に示した本実施の形態1に係る基準信号選択回路の回路構成によれば、第1のバイアス回路4及び第2のバイアス回路7のそれぞれの前段に設けられ、基準信号の周波数よりも1桁以上小さい周波数をカットオフ周波数とし、正弦波基準信号をフィルタリング処理する基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31、32を備えている。
図14、図15を用いて説明した特徴2に関する特性に着目すると、基準信号選択回路の入力段で用いる基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31、32のカットオフ周波数を、基準信号の周波数f0よりも1桁程度低い周波数に設定して、仕様を満たした正弦波基準出力信号RSOを生成することができる。この結果、基準信号周波数帯バンドパスフィルタ31、32として、比較的安価なフィルタを使用した上で、基準信号の特性保証が可能となる。
なお、本実施の形態1では、図1に示した回路構成に対してバンドパスフィルタを追加する場合について説明したが、図11に示した回路構成に対してバンドパスフィルタを追加することも可能であり、同様の効果を得ることができる。
1 第1のバイアス回路、2 第1のEMIフィルタ、3 第2のEMIフィルタ、4 第1の汎用ロジックIC、5 第1の選択リレー、5a 第4の選択リレー、6 第1の終端抵抗、6a 第3の終端抵抗、7 第2のバイアス回路、8 第3のEMIフィルタ、9 第4のEMIフィルタ、10 第2の汎用ロジックIC、11 第2の選択リレー、11a 第5の選択リレー、12 第2の終端抵抗、12a 第4の終端抵抗、13 第5のEMIフィルタ、14 第3の汎用ロジックIC、15 レベル調整抵抗回路、16 ローパスフィルタ、17 コンデンサ、18 抵抗、19 トランジスタ、31、32 基準信号周波数帯バンドパスフィルタ(バンドパスフィルタ)、133 第3の選択リレー、a 選択端子、b 非選択端子、RC リレー制御回路、T1 第1入力端子、T2 第2入力端子、VB バイアス回路電源、VGL 汎用ロジックIC電源、VR リレー電源。

Claims (6)

  1. 複数の正弦波基準信号と、複数の正弦波基準信号のそれぞれに対応する汎用ロジックレベルの矩形波基準信号を含む、異なる信号レベルの複数の基準信号を選択する基準信号選択回路であって、
    前記正弦波基準信号を矩形波信号に変換するバイアス回路と、
    変換された前記矩形波信号または前記矩形波基準信号を汎用ロジックで規定するデジタル信号に変換する汎用ロジック回路と、
    変換された前記デジタル信号を選択する多段選択リレー回路と、
    前記バイアス回路および汎用ロジック回路の電源供給経路にそれぞれ挿入されたEMIフィルタと、
    前記多段選択リレー回路に接続された非選択信号の空間への輻射を抑えるために、一端が信号接地に接続され、他端が前記多段選択リレー回路において前記非選択信号が接続された非選択端子に接続された終端抵抗と、
    を備え、
    前記バイアス回路の前段に設けられ、基準信号の周波数よりも1桁以上小さい周波数をカットオフ周波数とし、前記正弦波基準信号をフィルタリング処理した後の信号を前記バイアス回路に出力するバンドパスフィルタをさらに備える
    基準信号選択回路。
  2. 前記多段選択リレー回路で選択された信号をフィルタリングして正弦波の基準信号として出力するローパスフィルタを備えた、請求項1に記載の基準信号選択回路。
  3. 前記多段選択リレー回路で選択された信号の信号レベルを調整して前記ローパスフィルタへ出力するレベル調整抵抗回路を備えた、請求項2に記載の基準信号選択回路。
  4. 前記多段選択リレー回路が3段以上の選択リレーからなる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の基準信号選択回路。
  5. 回路の終端を信号接地とし、前記基準信号選択回路が、電源系が電源から電源リターンとして前記信号接地に戻る回路とし、装置の接地であるグランドに接続されることがないフローティング状態にされ、前記電源リターン側が信号接地されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の基準信号選択回路。
  6. 入力される前記正弦波基準信号および矩形波基準信号が、-4dBmから+10dBmまでの範囲の信号レベルの10MHzの信号である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の基準信号選択回路。
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