JP7495982B2 - 被覆工具および切削工具 - Google Patents

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関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月30日に出願された日本国特許出願2020-112956号の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
本開示は、被覆工具およびこれを有する切削工具に関する。
切削工具などに用いられる被覆工具は、基体の上に被覆層を有している。被覆層は、CVD法やPVD法によって成膜される。CVD法によって成膜された被覆層の例として、基体の上にTiN層やTiCN層、Al23層を順に積層した被覆層が挙げられる。
CVD法で成膜した被覆層は、大きな残留応力を有する場合がある。その残留応力を緩和するためにセラミック粒子を被覆層に投射することが行われている。
例えば、特許第4739235号公報(特許文献1)には、被覆層に対して、セラミック砥粒によるブラスト処理を施すことが記載されている。
本開示の限定されない一例の被覆工具は、基体と、該基体の上に位置する被覆層とを有する。前記被覆工具は、第1面と、該第1面と隣り合う第2面と、前記第1面と前記第2面の稜線部の少なくとも一部に位置する切刃とを備える。前記被覆層は、Ti系被覆層を有する。該Ti系被覆層は、前記基体の表面に平行な前記被覆層の表面で前記Ti系被覆層の破壊靭性値を測定した場合において、該破壊靭性値が10MPa・m0.5以上である第1領域を有する。
本開示の限定されない実施形態の被覆工具を示す斜視図である。 図1に示す被覆工具におけるII-II断面の断面図である。 図2に示す被覆工具における被覆層付近の拡大図である。 球状セラミック粒子の電子顕微鏡(SEM)写真である。 角状セラミック粒子の電子顕微鏡(SEM)写真である。 本開示の限定されない実施形態の切削工具を示す斜視図である。
<被覆工具>
以下、本開示の限定されない実施形態の被覆工具1について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下で参照する各図では、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみが簡略化して示されている。したがって、被覆工具1は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率などを忠実に表したものではない。
図1~図3においては、被覆工具1の一例として、切削工具に適用可能な切削インサートを示している。被覆工具1は、切削工具の他、例えば、摺動部品や金型などの耐摩部品、掘削工具、刃物などの工具、および、耐衝撃部品などにも適用できる。なお、被覆工具1の用途は、例示したものに限定されない。
被覆工具1は、基体2と、基体2の上に位置する被覆層3とを有していてもよい。
基体2の材質としては、例えば、硬質合金、セラミックスおよび金属などが挙げられ得る。硬質合金としては、例えば、WC(炭化タングステン)と、所望により、WC以外の周期表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種とからなる硬質相を、Co(コバルト)やNi(ニッケル)などの鉄属金属からなる結合相で結合させた超硬合金などが挙げられ得る。また、他の硬質合金として、Ti基サーメットなども挙げられ得る。セラミックスとしては、例えば、Si34(窒化珪素)、Al23(酸化アルミニウム)、ダイヤモンドおよびcBN(立方晶窒化ホウ素)などが挙げられ得る。金属としては、例えば、炭素鋼、高速度鋼および合金鋼などが挙げられ得る。なお、基体2の材質は、例示したものに限定されない。
被覆層3は、基体2の表面4の全面を覆ってもよく、また、一部のみを覆ってもよい。被覆層3が基体2の表面4の一部のみを被覆しているときは、被覆層3は、基体2の上の少なくとも一部に位置する、といってもよい。
被覆層3は、化学蒸着(CVD)法で成膜されていてもよい。言い換えれば、被覆層3は、CVD膜であってもよい。
被覆層3は、特定の厚みに限定されない。例えば、被覆層3の厚みは、1~30μmに設定されてもよい。なお、被覆層3の厚み、構造、被覆層3を構成する結晶の形状などの測定は、例えば、電子顕微鏡を用いた断面観察で行ってもよい。電子顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、および、透過電子顕微鏡(TEM)などが挙げられ得る。
被覆工具1は、図1および図2に示す限定されない一例のように、第1面5(上面)と、第1面5と隣り合う第2面6(側面)と、第1面5と第2面6の稜線部の少なくとも一部に位置する切刃7とを備えていてもよい。
第1面5は、すくい面であってもよい。第1面5は、その全面がすくい面であってもよく、また、その一部がすくい面であってもよい。例えば、第1面5のうち切刃7に沿った領域が、すくい面であってもよい。
第2面6は、逃げ面であってもよい。第2面6は、その全面が逃げ面であってもよく、また、その一部が逃げ面であってもよい。例えば、第2面6のうち切刃7に沿った領域が、逃げ面であってもよい。
切刃7は、稜線部の一部に位置していてもよく、また、稜線部の全部に位置していてもよい。切刃7は、被削材の切削に用いることが可能である。
被覆工具1は、図1に示す限定されない一例のように、四角板形状であってもよい。なお、被覆工具1の形状は、四角板形状に限定されない。例えば、第1面5は、三角形、五角形、六角形または円形であってもよい。また、被覆工具1は、柱形状であってもよい。
被覆工具1は、特定の大きさに限定されない。例えば、第1面5の一辺の長さは、3~20mm程度に設定されてもよい。また、第1面5から第1面5の反対側に位置する面(下面)までの高さは、5~20mm程度に設定されてもよい。
ここで、被覆層3は、図3に示す限定されない一例のように、Ti系被覆層8を有していてもよい。
Ti系被覆層8は、TiCN粒子もしくはTiC粒子またはTiN粒子を含有する層であってもよい。また、Ti系被覆層8は、TiCNを主成分として含有する層であってもよい。「主成分」とは、他の成分と比較して質量%の値が最も大きい成分のことを意味してもよい。これらの点は、他の層においても同様に定義してもよい。
Ti系被覆層8は、第1領域を有していてもよい。第1領域は、破壊靭性値が10MPa・m0.5以上であってもよい。この破壊靭性値は、基体2の表面4に平行な被覆層3の表面9でTi系被覆層8の破壊靭性値を測定した場合の値であってもよい。
上記した「平行」とは、厳密な平行に限定されず、±10°程度の傾斜を許容することを意味してもよい。また、破壊靭性値は、鏡面加工した面に対してナノインデンターで押し込み試験を行い、得られた圧痕に対して電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いてクラックの観察を行うことで測定してもよい。鏡面研磨には、トーメイダイヤ株式会社製の平均粒径1~3μmのダイヤモンドペーストと、山桂産業株式会社製のオリーブオイルをペースト濃度が20~30質量%となるように調整したものを用いてもよい。ナノインデンターとしては、例えば、株式会社エリオニクス社製の超微小押し込み硬さ試験機ENT-1100b/aを用いて測定してもよい。押し込み荷重が700(mN)で、測定に用いる圧子は株式会社東洋テクニカ社製のバーコビッチ圧子ENT-20-13を用いてもよい。破壊靭性値は、JIS R 1607:2015に準拠して測定してもよい。クラックの観察は日本電子株式会社製のJSM-7100Fを用いて行ってもよい。
Ti系被覆層8が上記の第1領域を有する場合には、被覆層3が欠損しにくいため、耐欠損性に優れる。なお、Ti系被覆層8の全てが第1領域で構成されていてもよく、また、Ti系被覆層8の一部が第1領域で構成されていてもよい。以後、第1領域における破壊靭性値を第1破壊靭性値という。第1破壊靭性値の上限値は、20MPa・m0.5であってもよい。
Ti系被覆層8は、第1面5および第2面6のそれぞれに第1領域を有していてもよい。この場合には、第1面5および第2面6が欠損しにくい。
Ti系被覆層8は、第2領域を有していてもよい。被覆工具1におけるTi系被覆層8は、全ての領域で高い破壊靭性を備える必要はない。例えば、切削に関与しない領域や、切削に関与する領域であっても大きな力や衝撃が加わらない領域に第2領域が位置していてもよい。なお、切削に関与しない領域とは、切刃7から第1面5および第2面6方向に1mm以上離れた領域であってもよい。第2領域は、破壊靭性値が10MPa・m0.5未満であってもよい。この破壊靭性値は、基体2の表面4に平行な被覆層3の表面9でTi系被覆層8の破壊靭性値を測定した場合の値であってもよい。
本開示の第1領域は、例えば、所定の硬度を有する球状のセラミック粉末を用いたブラスト処理工程を経ることにより得られる。ブラスト処理工程では、いわゆるドライブラストやウェットブラストを用いてもよい。ウェットブラストはセラミック粉末の取り扱い性に優れるという利点がある。
Ti系被覆層8が上記の第1領域と第2領域を有する場合には、ブラスト工程の時間を短縮することもでき、低コストで被覆工具1を作製することができる。以後、第2領域における破壊靭性値を第2破壊靭性値という。なお、第2破壊靭性値の下限値は、1.5MPa・m0.5であってもよい。
第1領域における硬度を第1硬度とし、第2領域における硬度を第2硬度とした場合、第1硬度は、第2硬度よりも大きくてもよい。この場合には、被覆工具1の耐摩耗性が高い。
第1硬度および第2硬度は、特定の値に限定されない。例えば、第1硬度は、15~30GPa程度に設定されてもよい。第2硬度は、10~30GPa程度に設定されてもよい。第1硬度および第2硬度は、例えば、Ti系被覆層8の破壊靭性値の測定と同様にナノインデンターを用いた押し込み試験によって測定してもよい。ナノインデンターとしては、例えば、株式会社エリオニクス社製の超微小押し込み硬さ試験機ENT-1100b/aを用いて測定してもよい。押し込み荷重が700(mN)で、測定に用いる圧子は株式会社東洋テクニカ社製のバーコビッチ圧子ENT-20-13を用いてもよい。
Ti系被覆層8は、第1領域を第1面5に有していてもよく、また、第2領域を第2面6に有していてもよい。この場合には、被覆工具1の耐摩耗性および耐欠損性が高い。
被覆層3は、Ti系被覆層8の上にAl23層10を有していてもよい。Al23層10は、Al23粒子を含有する層であってもよい。また、Al23層10は、Al23を主成分として含有する層であってもよい。
Al23層10は、第3領域を有していてもよい。第3領域は、破壊靭性値が5MPa・m0.5以上であってもよい。この破壊靭性値は、基体2の表面4に平行な被覆層3の表面9でAl23層10の破壊靭性値を測定した場合の値であってもよい。
Al23層10が上記の第3領域を有する場合には、被覆層3が欠損しにくいため、耐欠損性に優れる。なお、Al23層10の全てが第3領域で構成されていてもよく、また、Al23層10の一部が第3領域で構成されていてもよい。以後、第3領域における破壊靭性値を第3破壊靭性値という。第3破壊靭性値の上限値は、10MPa・m0.5であってもよい。
Al23層10は、第4領域を有していてもよい。被覆工具1におけるAl23層10は、全ての領域で高い破壊靭性を備える必要はない。例えば、切削に関与しない領域や、切削に関与する領域であっても大きな力や衝撃が加わらない領域に第4領域が位置していてもよい。なお、切削に関与しない領域とは、切刃7から第1面5および第2面6方向に1mm以上離れた領域であってもよい。第4領域は、破壊靭性値が5MPa・m0.5未満であってもよい。この破壊靭性値は、基体2の表面4に平行な被覆層3の表面9でAl23層10の破壊靭性値を測定した場合の値であってもよい。
本開示の第3領域は、例えば、所定の硬度を有する球状のセラミック粉末を用いたブラスト処理工程を経ることにより得られる。ブラスト処理工程では、いわゆるドライブラストやウェットブラストを用いてもよい。ウェットブラストはセラミック粉末の取り扱い性に優れるという利点がある。
Al23層10が上記の第3領域と第4領域を有する場合には、ブラスト処理工程の時間を短縮することもでき、低コストで被覆工具1を作製することができる。以後、第4領域における破壊靭性値を第4破壊靭性値という。なお、第4破壊靭性値の下限値は、0.3MPa・m0.5であってもよい。
第3領域における硬度を第3硬度とし、第4領域における硬度を第4硬度とした場合、第4硬度は、第3硬度よりも大きくてもよい。この場合には、被覆工具1の耐摩耗性が高い。
第3硬度および第4硬度は、特定の値に限定されない。例えば、第3硬度は、10~30GPa程度に設定されてもよい。第4硬度は、15~30GPa程度に設定されてもよい。第3硬度および第4硬度は、第1硬度および第2硬度と同様にして測定してもよい。
第1領域は、第3領域の下に位置していてもよく、また、第2領域は、第4領域の下に位置していてもよい。この場合には、耐欠損性が高く、ブラスト処理工程の時間を短縮することもでき、低コストで被覆工具1を作製することができる。
Al23層10は、X線回折において、(104)面の半価幅が0.15°以上であってもよい。この場合には、被覆層3が欠損しにくくなり、耐欠損性に優れる。Al23層10の(104)面の半価幅は、以下のように測定してもよい。(104)面は、JCPDSカード番号00-010-0173を基準としてもよい。Al23層10がウェットブラスト処理によって露出している場合には、その露出しているAl23層10の表面を鏡面研磨して得られた鏡面でXRD測定を行ってもよい。Al23層10が露出していない場合には、Al23層10が露出するまで鏡面研磨処理を続けて、Al23層10の露出した鏡面でXRD測定を行ってもよい。Al23層10のXRD測定は、表面の凹凸が少ない面を選んで行ってもよい。XRD測定は、株式会社リガク社製のMiniFlex600を用いて行ってもよい。測定条件は、特性X線をCuKβ線として、出力は40kV、15mAで、発信側ソーラースリット2.5°、長手制限スリット5.0mm、発散スリット0.625°で、スキャッタースリット8.0mm、受光側ソーラースリット2.5°、受光スリット13.0mmで、ステップ幅を0.01°、計測スピードを2.0°/分、スキャン角度を20°~90°で行ってもよい。なお、Al23層10の(104)面の半価幅の上限値は、2.0°であってもよい。
被覆層3は、Ti系被覆層8およびAl23層10以外の層を有していてもよい。他の層としては、例えば、TiC層およびTiN層などが挙げられ得る。被覆層3は、図3に示す限定されない一例のように、基体2の上に順にTiN層11、Ti系被覆層8、Al23層10が積層された構成であってもよく、さらに、Al23層10の上にTiN層12などが積層された構成であってもよい。Al23層10は、Ti系被覆層8に接していてもよい。なお、TiN層11を第1TiN層11、TiN層12を第2TiN層12と便宜的にいってもよい。
第1TiN層11、Ti系被覆層8、Al23層10および第2TiN層12のそれぞれの厚みは、特定の値に限定されない。例えば、第1TiN層11の厚みは、0.1~3.0μmに設定されてもよい。Ti系被覆層8の厚みは、1.0~20μmに設定されてもよい。Al23層10の厚みは、1.0~20μmに設定されてもよい。第2TiN層12の厚みは、0.1~10μmに設定されてもよい。
被覆工具1は、貫通孔13を有していてもよい。貫通孔13は、被覆工具1をホルダに保持する際に、固定ネジまたはクランプ部材などを取り付けるために用いることが可能である。貫通孔13は、第1面5から第1面5の反対側に位置する面(下面)にかけて形成されていてもよく、また、これらの面において開口していてもよい。なお、貫通孔13は、第2面6における互いに対向する領域に開口する構成であっても何ら問題ない。
<被覆工具の製造方法>
次に、本開示の限定されない実施形態の被覆工具の製造方法について、被覆工具1を製造する場合を例に挙げて説明する。
最初に基体2を作製してもよい。基体2として、硬質合金からなる基体2を作製する場合を例に挙げて説明する。まず、焼成によって基体2を形成できる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物などの無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末などを適宜添加して混合し、混合粉末を得てもよい。次に、この混合粉末を、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形などの公知の成形方法によって所定の工具形状に成形し、成形体を得てもよい。そして、得られた成形体を真空中または非酸化性雰囲気中で焼成し、基体2を得てもよい。基体2の表面4には、研磨加工やホーニング加工を施してもよい。
次に、得られた基体2の表面4にCVD法によって被覆層3を成膜してもよい。また、成膜された被覆層3に対して、ウェットブラスト処理を施してもよい。以下では、ウェットブラスト処理を施す前の状態の被覆層3および被覆工具1を未処理被覆層、未処理被覆工具という。そして、ウェットブラスト処理を施した未処理被覆層を被覆層3、未処理被覆工具を被覆工具1という。ウェットブラスト処理を行う前の工程は、基体2の上に未処理被覆層を有する、未処理被覆工具を準備する第1工程といってもよい。
未処理被覆層として、例えば、基体2の上に順に第1TiN層11、Ti系被覆層8、Al23層10を成膜してもよい。さらに、Al23層10の上に第2TiN層12などを成膜してもよい。
第1TiN層11は、次のように成膜してもよい。まず、反応ガス組成として、四塩化チタン(TiCl4)ガスを0.1~10体積%、窒素(N2)ガスを10~60体積%、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを調整してもよい。そして、この混合ガスをチャンバ内に導入し、温度を800~1010℃、圧力を10~85kPaに設定し、第1TiN層11を成膜してもよい。なお、この成膜条件は、第2TiN層12にも適用可能である。
Ti系被覆層8は、次のように成膜してもよい。まず、反応ガス組成として、四塩化チタン(TiCl4)ガスを0.1~10体積%、アセトニトリル(CH3CN)ガスを0.1~3.0体積%、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを調整してもよい。そして、この混合ガスをチャンバ内に導入し、温度を800~1050℃、圧力を5~30kPaに設定し、Ti系被覆層8を成膜してもよい。
Al23層10は、次のように成膜してもよい。まず、反応ガス組成として、三塩化アルミニウム(AlCl3)ガスを0.5~5体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5~3.5体積%、二酸化炭素(CO2)ガスを0.5~5体積%、硫化水素(H2S)ガスを0.5体積%以下、残りが水素(H2)ガスからなる混合ガスを調整してもよい。そして、この混合ガスをチャンバ内に導入し、温度を930~1010℃、圧力を5~10kPaに設定し、Al23層10を成膜してもよい。
次に、成膜された未処理被覆層に対して、ウェットブラスト処理を施す工程を行ってもよい。この工程は、未処理被覆層に対して、硬度(HV)が1000以上の球状セラミック粒子を衝突させる第2工程であってもよい。HV(Vickers hardness:ビッカース硬さ)は、JIS Z 2244:2009に準拠して測定してもよい。なお、球状セラミック粒子の硬度(HV)の上限値は、2500であってもよい。
球状セラミック粒子などのメディアの硬度は、負荷-除荷試験による硬さ測定で測定してもよい。硬さの測定にあたり、メディアと、埋め込み樹脂とを混合したのち、混合体を硬化させて作製した硬化体を用いてもよい。この硬化体の表面を研磨して研磨面に露出したメディアに対して硬度を測定してもよい。埋め込み樹脂は、例えば、Kulzer社製のTechnovit4004を用いてもよい。測定を行うメディアと埋め込み樹脂を3:1(質量比)の割合で混合して硬化体とし、表面の研磨を行ってもよい。研磨後に、硬化体のメディアが露出した部分に硬度測定を行ってもよい。測定は、ダイナミック超微小硬度計DUH-211Sを用いて行ってもよい。測定圧子が稜間角115°で、三角すい圧子(ダイヤモンド製)で、試験力が49(mN)で、負荷速度が2.665(mN/秒)で、保持時間が5秒の条件で測定してもよい。測定回数は10点行い、その平均値の測定を行ってもよい。
第2工程は、未処理被覆層の表面の全面に対して行ってもよく、また、一部に対して行ってもよい。未処理被覆層の第2工程を行った部分は、Ti系被覆層8が第1領域を有するようになり易く、また、Al23層10が第3領域を有するようになり易い。未処理被覆層の第2工程を行わなかった部分は、Ti系被覆層8が第2領域を有するようになり易く、また、Al23層10が第4領域を有するようになり易い。
ウェットブラスト処理では、未処理被覆層に対して、液体中に球状セラミック粒子を含有するブラスト液を投射してもよい。なお、ブラスト液はスラリーともいう。液体は、例えば、水を用いてもよい。
球状セラミック粒子とは、原料を粉砕して得られたものではないことを意味してもよい。球状セラミック粒子と区別するために、原料を粉砕して得られたセラミック粒子を角状セラミック粒子といってもよい。図4に球状セラミック粒子の写真を示す。また、図5に角状セラミック粒子の写真を示す。球状セラミック粒子は、比重が6g/cm3以下であってもよい。比重が6g/cm3以下の球状セラミック粒子は比較的、比重が小さいために水に分散させやすく、ウェットブラストに適している。例えば、Al23粒子の比重は約4g/cm3である。
図5に示す写真のように、角状セラミック粒子は、不定形で角を有していてもよい。角状セラミック粒子は、原料粒子を粉砕するなどして製造されたものであってもよく、また、粉砕工程で破砕面および角が形成されたものであってもよい。従来のウェットブラスト処理で用いられているのは、角状セラミック粒子である。
一方、図4に示す写真のように、球状セラミック粒子は、角がなく真球に近い形状であってもよい。球状セラミック粒子の形状は、真球である必要はなく、破砕面や鋭角の角がなければ、多少の球からの変形は許容できる。
なお、球状セラミック粒子に形状が類似するものとして、球状の金属粒子が挙げられ得る。球状金属粒子は形状こそ、球状セラミック粒子に類似しているが、球状セラミック粒子よりも比重が重く、かつ、柔らかい。例えば、球状金属粒子の比重は、7~8g/cm3である。また、球状金属粒子の硬度(HV)は、1000未満である。このような特性に起因すると推察されるが、球状金属粒子を用いた場合には、第1領域や第3領域を有する被覆工具1が得られにくい。また、比重が重いことに起因して、球状金属粒子は、水中に分散しにくく、ウェットブラストには適さない。
同様の理由で、球状セラミック粒子であっても、硬度(HV)が1000未満のガラスビーズや、ガラス成分を多く含有すると、第1領域や第3領域を有する被覆工具1が得られにくい。
ウェットブラスト処理では、種々の大きさの球状セラミック粒子を使用することができる。平均粒径が大きい球状セラミック粒子を用いると、ブラスト時間が短縮され易い。球状セラミック粒子の平均粒径は、200μm以下としてもよい。
また、球状セラミック粒子の平均粒径は、30μm以上、100μm以下であってもよい。この範囲の球状セラミック粒子を用いると、種々の未処理被覆層を再現性良くブラスト処理することができる。
球状セラミック粒子の平均粒径は、レーザー回折法によって測定してもよい。また、球状セラミック粒子と、角状セラミック粒子が混在している場合には、ブラスト液を乾燥させて、SEM写真で球状セラミックス粒子を抽出し、写真から得られる個々の球状セラミック粒子100個の円相当径の平均値としてもよい。
球状セラミック粒子の平均円形度は、0.82以上であってもよい。特に、球状セラミック粒子の平均円形度は、0.88以上であってもよい。この場合には、製造する被覆工具の耐欠損性が高い。なお、平均円形度の上限値は、0.98であってもよい。
平均円形度は、次のようにして測定してもよい。まず、SEMまたはTEMで粒子像を撮影した後、画像解析ソフト(例えば、マウンテック社製の「Mac-View Version.4」)を用いて、粒子の投影面積(S)と周囲長(L)を測定してもよい。次に、得られた測定値を、式:4πS/L2に当てはめて、円形度を算出してもよい。円形度の算出は、任意に選んだ100個の粒子について行い、その平均値を平均円形度としてもよい。
球状セラミック粒子の材質としては、例えば、Al23、ZrO2およびSiCなどが挙げられ得る。なお、比重の大きい材質の球状セラミック粒子を用いる場合には、平均粒径を小さめにしてもよい。比重の小さい材質の球状セラミック粒子を用いる場合には、平均粒径を大きめにしてもよい。
球状セラミック粒子を水に対して10~40体積%含有させて、ブラスト液を作製してもよい。
ブラスト液の投射条件は、投射圧を0.15~0.30MPa、投射時間を0.4~10.0秒としてもよい。ブラスト液の投射時間は10.0秒を超えると未処理被覆層の剥離が大きくなりやすいため適さない。なお、未処理被覆層に対してブラスト液を投射する際には、Al23層10の少なくとも一部が残るようにしてもよい。
例えば、上記のような工程で被覆工具1を製造することができる。
なお、ブラスト液は、角状のセラミック粒子を一部含有していてもよい。そのような場合には、セラミック粒子のうち、50体積%以上が球状セラミック粒子であってもよい。
球状セラミック粒子を含有するブラスト液を投射する前に、角状セラミック粒子を含有するブラスト液を投射してもよい。また、球状セラミック粒子を含有するブラスト液を投射した後に、角状セラミック粒子を含有するブラスト液を投射してもよい。球状セラミック粒子を含有するブラスト液を投射することで、高くなった被覆層3の破壊靭性値は、角状セラミック粒子を含有するブラスト液を投射しても低くなりにくい。
なお、未処理被覆層に球状セラミック粒子を含有するブラスト液を投射する際には、例えば、市販の湿式ブラスト装置を用いてもよい。
未処理被覆工具において、未処理被覆層は引張応力を有していてもよい。なお、引張応力は、特定の値に限定されない。引張応力の絶対値は、50~500MPa程度に設定されてもよい。
未処理被覆層は圧縮応力を有していてもよい。なお、圧縮応力は、特定の値に限定されない。圧縮応力の絶対値は、50~2000MPa程度に設定されてもよい。
引張応力や圧縮応力は、X線応力測定装置(XRD)を用いたsin2ψ法によって測定してもよい。なお、残留応力の測定の際、Al23層10はα型Al23の(116)面を選択して測定してもよい。Ti系被覆層8はTiCNの(422)面を選択して測定してもよい。
得られた被覆工具1において、切刃7を含む領域に研磨加工を施してもよい。これにより、切刃7を含む領域が平滑になる。その結果、被削材の溶着が抑制され、切刃7の耐欠損性が高い。
なお、上記の製造方法は、被覆工具1を製造する方法の一例である。したがって、被覆工具1が、上記の製造方法によって作製されたものに限定されないことはいうまでもない。
<切削工具>
次に、本開示の限定されない実施形態の切削工具101について、上記の被覆工具1を有する場合を例に挙げて、図6を参照して詳細に説明する。
切削工具101は、図6に示す限定されない一例のように、第1端102aから第2端102bに亘る長さを有し、第1端102aの側に位置するポケット103を有するホルダ102と、ポケット103に位置する被覆工具1と、を有していてもよい。切削工具101が被覆工具1を有する場合には、被覆工具1が耐欠損性に優れることから、長期間安定した切削加工を行うことが可能となる。
ポケット103は、被覆工具1が装着される部分であってもよい。ポケット103は、ホルダ102の外周面および第1端102aの側の端面において開口していてもよい。
被覆工具1は、切刃7がホルダ102から外方に突出するようにポケット103に装着されていてもよい。また、被覆工具1は、固定ネジ104によって、ポケット103に装着されていてもよい。すなわち、被覆工具1の貫通孔13に固定ネジ104を挿入し、この固定ネジ104の先端をポケット103に形成されたネジ孔に挿入してネジ部同士を螺合させることによって、被覆工具1がポケット103に装着されていてもよい。被覆工具1とポケット103との間には、シートが挟まれていてもよい。
ホルダ102の材質としては、例えば、鋼および鋳鉄などが挙げられ得る。ホルダ102の材質が鋼の場合には、ホルダ102の靱性が高い。
図6に示す一例においては、いわゆる旋削加工に用いられる切削工具101を例示している。旋削加工としては、例えば、内径加工、外径加工および溝入れ加工などが挙げられ得る。なお、切削工具101の用途は、旋削加工に限定されない。例えば、切削工具101を転削加工に用いても何ら問題ない。
以下、実施例を挙げて本開示を詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されない。
[試料No.1~11]
<被覆工具の作製>
まず、基体を作製した。具体的には、平均粒径1.2μmのWC粉末に対して、平均粒径1.5μmの金属Co粉末を6質量%、TiC(炭化チタン)粉末を2.0質量%、Cr32(炭化クロム)粉末を0.2質量%の比率で添加して混合して混合原料粉末を作製した。次に、混合原料粉末をプレス成形して切削工具形状(CNMG120408)に成形し、成形体を得た。得られた成形体に脱バインダ処理を施し、0.5~100Paの真空中、1400℃で1時間焼成し、超硬合金からなる基体を作製した。作製した基体のすくい面(第1面)の側に、ブラシ加工で刃先処理(Rホーニング)を施した。
次に、この基体の上に未処理被覆層を成膜した。具体的には、基体の上に基体の側から順に第1TiN層、Ti系被覆層、Al23層、第2TiN層を成膜した。成膜条件および厚みは、以下のとおりである。なお、厚みは、SEMによる断面測定で得た値である。
(第1TiN層)
TiCl4ガス:1.0体積%
2ガス:55.0体積%
2ガス:残部
温度:850℃
圧力:16kPa
厚み:1.0μm
(Ti系被覆層)
TiCl4ガス:7.0体積%
CH3CNガス:0.5体積%
2ガス:残部
温度:850℃
圧力:10kPa
厚み:7.0μm
(Al23層)
AlCl3ガス:4.2体積%
HClガス:0.9体積%
CO2ガス:4.5体積%
2Sガス:0.3体積%
2ガス:残部
温度:950℃
圧力:9kPa
厚み:8.0μm
(第2TiN層)
TiCl4ガス:3.0体積%
2ガス:40.0体積%
2ガス:残部
温度:1010℃
圧力:30kPa
厚み:2.0μm
次に、メディアとして、表1に示す平均粒径の球状Al23粒子、ジルコン(ZrSiO4)からなる球状粒子、角状Al23粒子をそれぞれ、水に対して25体積%含まれるようにしてブラスト液を調整した。なお、メディアの硬度(HV)は、以下のようにして測定した値である。
(メディア硬度)
ブラスト処理で用いたメディアの硬度は、負荷-除荷試験による硬さ測定で測定した。まず、測定を行うメディアを埋め込み樹脂(Kulzer社製のTechnovit4004)で固定して表面の研磨を行った。具体的には、液状の硬化樹脂と硬化剤を3:1(質量比)で混合した樹脂1gに対して、Al23粉末を3g加え、混合した後、常温(23℃)で1時間程度硬化させて硬化体を得た。その後、この硬化体を研磨する手順を用いた。研磨後に、硬化体のメディアが露出した部分に硬度測定を行った。測定は、ダイナミック超微小硬度計DUH-211Sを用いて行った。測定圧子が稜間角115°で、三角すい圧子(ダイヤモンド製)で、試験力が49(mN)で、負荷速度が2.665(mN/秒)で、保持時間が5秒の条件で測定した。測定回数は10点行い、その平均値の測定を行った。
調整したブラスト液を、圧縮空気の圧力(投射圧)を0.2MPaとして、表1に示す時間で未処理被覆層に投射し、被覆工具を得た。なお、ブラスト液は、第1面および第2面の切削に関与する領域に対して投射した。切削に関与する領域は、切刃から第1面および第2面の方向に1mm未満の領域とした。
Figure 0007495982000001
<評価>
得られた被覆工具について、第1~第4破壊靭性値および第1~第4硬度を測定した。また、切削に関与する領域の(104)面の半価幅を測定した。さらに、得られた被覆工具を用いて切削評価を行い、耐欠損性を評価した。測定方法を以下に示すとともに、結果を表2および表3に示す。
(第1~第4破壊靭性値)
鏡面加工した面に対してナノインデンターで押し込み試験を行い、得られた圧痕に対して電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いてクラックの観察を行い、破壊靭性値を測定した。ナノインデンターとしては、株式会社エリオニクス社製の超微小押し込み硬さ試験機ENT-1100b/aを用いて測定を行った。押し込み荷重が700(mN)で、測定に用いる圧子は株式会社東洋テクニカ社製のバーコビッチ圧子ENT-20-13を用いて測定した。破壊靭性値は、JIS R 1607:2015に準拠して測定を行った。クラックの観察は日本電子株式会社製のJSM-7100Fを用いて行った。
Al23層がウェットブラスト処理によって露出している場合には、その露出しているAl23層の表面を鏡面研磨して得られた鏡面で破壊靭性値を測定した。Al23層が露出していない場合には、Al23層が露出するまで鏡面研磨処理を続けて、Al23層の露出した鏡面で破壊靭性値を測定した。
Ti系被覆層の破壊靭性値も、被覆層の表面からTi系被覆層が露出するまで鏡面研磨を施し、その露出したTi系被覆層の鏡面で測定した。
なお、鏡面研磨には、トーメイダイヤ株式会社製の平均粒径1.4μmのダイヤモンドペーストと、山桂産業株式会社製のオリーブオイルをペースト濃度が25質量%となるように調整したものを用いた。また、鏡面研磨は、基体の表面に対して鏡面が平行となるように行った。
(第1~第4硬度)
ナノインデンターを用いた押し込み試験によって測定した。ナノインデンターとしては、株式会社エリオニクス社製の超微小押し込み硬さ試験機ENT-1100b/aを用いた。押し込み荷重が700(mN)で、測定に用いる圧子は株式会社東洋テクニカ社製のバーコビッチ圧子ENT-20-13を用いた。
(切削に関与する領域の(104)面の半価幅)
ウェットブラスト処理を施した面の切削に関与する領域の(104)面の半価幅を測定した。Al23層の(104)面は、JCPDSカード番号00-010-0173を基準とした。Al23層がウェットブラスト処理によって露出している場合には、その露出しているAl23層の表面を鏡面研磨して得られた鏡面でXRD測定を行った。Al23層が露出していない場合には、Al23層が露出するまで鏡面研磨処理を続けて、Al23層の露出した鏡面でXRD測定を行った。Al23層のXRD測定は表面の凹凸が少ない面を選んで行った。XRD測定は、株式会社リガク社製のMiniFlex600を用いて行った。測定条件は、特性X線をCuKβ線として、出力は40kV、15mAで、発信側ソーラースリット2.5°、長手制限スリット5.0mm、発散スリット0.625°で、スキャッタースリット8.0mm、受光側ソーラースリット2.5°、受光スリット13.0mmで、ステップ幅を0.01°、計測スピードを2.0°/分、スキャン角度を20°~90°で行った。
(切削評価)
断続切削試験を以下の条件で行った。
被削材 :機械構造用炭素鋼(S45C 16本溝入り鋼材)
工具形状:CNMG120408
切削速度:48m/分
送り速度:0.27mm/rev
切り込み:1.0mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:欠損に至る衝撃回数を測定
Figure 0007495982000002
Figure 0007495982000003
試料No.1は、未処理被覆層に対してブラスト液を投射する処理を行わなかった。言い換えると、試料No.1は、基体の上に被覆層を成膜しただけの被覆工具である。試料No.1のTi系被覆層の破壊靭性値は、第1面および第2面ともに2.6MPa・m0.5であった。
試料No.2は、角状セラミック粒子を含有するブラスト液を、第1面および第2面に投射したものである。試料No.2では、Ti系被覆層の破壊靭性値が、無処理の試料No.1よりも若干、高くなり、第1面および第2面ともに3.4MPa・m0.5であった。
試料No.3、4は、球状ジルコン(ZrSiO4)粒子を含有するブラスト液を、第1面および第2面に投射したものである。試料No.3、4では、Ti系被覆層の破壊靭性値が、無処理の試料No.1よりも若干、高くなり、第1面および第2面ともに3.3MPa・m0.5あるいは4.0MPa・m0.5であった。
試料No.1~4のTi系被覆層の破壊靭性値は、いずれも低い値であった。
これに対して、本開示の被覆工具である試料No.5~11のTi系被覆層は、破壊靭性値が10.0MPa・m0.5以上あるいは14.0MPa・m0.5の領域を有しており、耐欠損性に優れている。
なお、試料No.5~11における球状Al23粒子と、試料No.2における角状Al23粒子について、平均円形度を測定した。具体的には、まず、SEMで粒子像を撮影した後、画像解析ソフト(マウンテック社製の「Mac-View Version.4」)を用いて、粒子の投影面積(S)と周囲長(L)を測定した。次に、得られた測定値を、式:4πS/L2に当てはめて、円形度を算出した。円形度の算出は、任意に選んだ100個の粒子について行い、その平均値を平均円形度とした。平均円形度の測定結果は、以下のとおりである。
(平均円形度)
試料No.5~11における球状Al23粒子:0.90
試料No.2における角状Al23粒子:0.74
1・・・被覆工具
2・・・基体
3・・・被覆層
4・・・表面
5・・・第1面
6・・・第2面
7・・・切刃
8・・・Ti系被覆層
9・・・表面
10・・・Al23
11・・・TiN層(第1TiN層)
12・・・TiN層(第2TiN層)
13・・・貫通孔
101・・・切削工具
102・・・ホルダ
102a・・第1端
102b・・第2端
103・・・ポケット
104・・・固定ネジ

Claims (3)

  1. 基体と、該基体の上に位置する被覆層とを有する被覆工具であって、
    前記被覆工具は、第1面と、該第1面と隣り合う第2面と、前記第1面と前記第2面の稜線部の少なくとも一部に位置する切刃とを備え、
    前記被覆層は、
    Ti系被覆層を有し、
    該Ti系被覆層は、
    TiCN層であり、
    前記基体の表面に平行な前記Ti系被覆層の表面で前記Ti系被覆層の破壊靭性値を測定した場合において、
    該破壊靭性値が10MPa・m0.5以上、20MPa・m0.5以下である第1領域を有し、
    前記切刃から前記第1面および前記第2面の方向に1mm未満の領域を、切削に関与する領域とした場合、
    前記第1領域は、前記切削に関与する領域に対応して位置し、
    前記第1領域における硬度を第1硬度とした場合、
    該第1硬度は、15~30GPaである、被覆工具。
  2. 前記Ti系被覆層は、
    前記基体の表面に平行な前記Ti系被覆層の表面で前記Ti系被覆層の破壊靭性値を測定した場合において、
    該破壊靭性値が10MPa・m0.5未満である第2領域を有し
    記切刃から前記第1面および前記第2面の方向に1mm以上離れた領域を、切削に関与しない領域とした場合
    記第2領域は、前記切削に関与しない領域に対応して位置し
    記第2領域における硬度を第2硬度とした場合、
    前記第1硬度は、前記第2硬度よりも大きい、請求項1に記載の被覆工具。
  3. 第1端から第2端に亘る長さを有し、前記第1端側に位置するポケットを有するホルダと、
    前記ポケットに位置する請求項1または2に記載の被覆工具と、を有する切削工具。
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