JP7492505B2 - ダニ組成物及びダニの飼育方法 - Google Patents

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Description

本発明は、捕食性ダニの大量飼育方法、ダニ組成物、及び生物学的防除のためのそれらの使用に関する。特に、本発明は、捕食性ダニの大量飼育のため及び作物の有害生物を防除するための餌用ホコリダニの使用に関する。
捕食性ダニは、従来から農業有害生物管理の幅広い分野で使用されている。コナジラミ類やアザミウマ類などの植物食性ダニや害虫の生物学的防除のために、さまざまな捕食性ダニ種が提案又は商品化されてきた。
近年、主な節足動物の有害生物種は、一般に化学薬品、すなわち農薬によって防除されてきた。過去10年間に利用可能になった多くの新しい農薬は、ほとんどの旧来の化合物と比較して、選択性がより高く、危険性はより低くなっている。しかし、化学的防除のみに依存する方策では問題を解決できないことが明らかになりつつある。すなわち、化学的防除には、対象となる有害生物種の薬剤抵抗性の発達、有用な登録殺虫剤及び殺ダニ剤の供給の減少、いくつかの望ましくない残留物の堆積、これらの薬剤の非標的種に対する不利な(又は有害な)影響に起因する二次的な有害生物発生(汚染された土壌や水は、野生生物、水生生物、及びその他の非標的生物に影響を及ぼし、花粉媒介昆虫や有害生物の天敵などの有益な生物に干渉する)並びに処理された植物による植物毒性反応といった大きな問題が伴う。これらの理由から、多くの農業従事者や園芸家は、農薬の使用を減らす方法を模索し、採用している。
生物学的防除は、化学薬品の使用に代わる1つの方法である。生物学的防除とは、有害生物の個体群を制限するために、生きている有益な生物(天敵)の個体群を意図的に操作することである。事実上すべての有害生物は天敵を持っており、天敵を適切に管理することで、多くの有害生物を効果的に防除することができる。生物学的防除は、効果的、経済的かつ安全である。生物学的防除の目的は、有害生物を根絶することではなく、有害生物を著しい被害を引き起こさない許容レベルに保つことである。
ダニの天敵には、捕食動物、寄生昆虫、線虫、病原体などがある。多くの出版物は、有害生物を防除するための捕食性ダニ個体群の使用をすでに示している。たとえば、現在では主に、捕食性phytoseiidダニが、植物食性ダニ類、アザミウマ類及びコナジラミ類などの有害生物に対抗するために使用されている。一例として、Neoseiulus cucumeris(Oudemans)は、アザミウマ類の幼虫及びハダニ類の防除に商業的に使用されている。さらに、捕食性mesostigmatid種及び捕食性prostigmatid種から選択される他の捕食性ダニ種は、生物学的有害生物防除において注目を集めており、いくつかは市場に参入している。
したがって、許容可能な価格かつ商業的意義のある規模で捕食性ダニ個体群を生産するための効果的な大量飼育システムを開発することが有利である。現在の商業的飼育システムでは、捕食性ダニの個体群は、担体上に維持されている培養物中で生き餌で飼育されている。例えば、特許文献1及び特許文献2は、捕食性ダニ種の個体群、捕食性ダニ個体の食物源としての餌ダニ個体群、及び担体を含むダニ組成物を開示している。この先行技術文献による組成物は、ダニ種の飼育及び有害生物の生物学的防除に適している。従来技術の大量飼育方法で最も一般的に使用される餌ダニは、Tyrophagus putrescentiae(Schrank)、Thyreophagus entomophagous(Laboulbene&Robin)及びCarpoglyphus lactis L.などのAstigmatidダニである。現在では、捕食性ダニの商業的大量飼育に使用されているすべての餌ダニ種は、Astigmata亜目に属している。例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6は、捕食性ダニの大量飼育において餌ダニとして使用されるAstigmatidの可能性を実証している。
有害ダニは、捕食性ダニと有害ダニとの間の相互作用を研究するために使用されることがある。例えば、ホコリダニ(Tarsonemidae)科からのPolyphagotarsonemus latus(非特許文献1)及びPhytonemus pallidus(非特許文献2)のダニが、生きている植物材料上で実験室規模で生育され、捕食性ダニによる攻撃を研究するために使用された。しかし、そのような餌ダニ個体群を含むダニ組成物は、分布させるべきではない有害生物として知られているため、商業的培養のための現実的な解決策ではない。
捕食性ダニの大量飼育システムは、捕食者に適した餌の入手可能性に大きく依存する。捕食性ダニの飼育におけるその役割の観点から、餌ダニ飼育の商業的意義は高まりつつある。
上記を考慮すると、捕食性ダニ個体群の大量飼育及び大規模生産、それらを含むより大量のダニ組成物の商業的散布、並びにより良好な有害生物防除及び農業経営のための改善された(より効率的な)ダニ組成物を入手する必要性が引き続きある。
さらに、ダニの商業的飼育には、かなりの温度(一般的には20~30℃)及び高湿度(一般的には相対湿度80~95%)の飼育条件が必要とされる。これらの条件では、真菌汚染の問題が発生しやすくなる。したがって、真菌汚染のリスクを低減する改善されたダニ飼育方法も必要である。
WO2006071107 WO2013103295 WO2006/056552 WO2008/015393 WO2008/104807 WO2007/075081
Rodriguez Morell他、2010、International Journal of Acarology36(5):371-376 Tuovinen及びLindqvist、2010、Biological Control54(2):119-125
本発明者らは、驚くべきことに、餌ダニとしてのホコリダニの使用が従来技術の問題を克服することを発見した。
したがって、本発明は、ダニ組成物であって、
捕食性ダニ個体群と、
餌ダニ個体群と、
当該個体群の個体のための担体と、
を含み、
当該餌ダニ個体群はホコリダニ科のダニを含み、但し、当該ダニ組成物は、Polyphagotarsonemus latus及びPhytonemus pallidusからなる群から選択される生きたダニ種を含まない、
ダニ組成物を提供する。
T.fusarii(TF)、C.lactis(CL)又はT.entomophagus(TE)を22±1℃及び85±5%RHで給餌した場合の雌のA.swirskiiが連続する3日間で産卵した卵の数を示す。バーの上の異なる文字は、処理間の有意差を示す(GLM後のコントラスト、p<0.05)。 T.fusarii(TF)、C.lactis(CL)及びT.entomophagus(TE)の卵、幼虫及び成虫を給餌した場合の雌のA.swirskiiの捕獲成功率を示す。異なる文字は、発育段階ごとの餌ダニ種間の有意差を示す(GLM後のコントラスト、p<0.05)。 トマト葉アリーナのみで構成される対照(22±1℃及び85±5%RH)と比較した、T.fusariiを給餌した場合の雌のH.anconaiが連続する3日間で産卵した卵の数を示す。 C.lactis及び餌ダニなしの対照処理(22±1℃及び85±5%RH)と比較した、T.fusariiを給餌した場合の雌のP.ubiquitusが連続する3日間で産卵した卵の数を示す。 T.fusarii又はT.confusus(22±1℃及び85±5%RH)のいずれかを給餌した場合の雌のA.swirskiiが連続する2日間で産卵した卵の数を示す。 ツタ葉アリーナのみで構成される対照(22±1℃及び85±5%RH)と比較した、Fungitarsonemus sp.を給餌した場合の雌のA.swirskiiが連続する2日間で産卵した卵の数を示す。
本明細書で前述したように、本発明は、ダニ組成物であって、
捕食性ダニ個体群と、
餌ダニ個体群と、
当該個体群の個体のための担体と、
を含み、
当該餌ダニ個体群はホコリダニ科のダニを含む、ダニ組成物を提供する。特にそのような組成物において、当該ダニ組成物は、Polyphagotarsonemus latus及びPhytonemus pallidusからなる群から選択される生きたダニ種を含まない。
「捕食性ダニ個体群」という用語は、本発明では、餌ダニ個体群を摂食する有益なダニの個体群を意味する。
「餌ダニ個体群」という用語は、本発明では、捕食性ダニ個体群によって少なくとも部分的に消費されるダニの個体群を意味する。
「担体」という用語は、本発明では、捕食性ダニ個体群及び餌ダニ個体群の両方の個体に担体表面を提供するのに適した任意の固体材料を意味する。担体は通常、餌ダニ個体群及び捕食性ダニ個体群がその上で動き回ったり、隠れたり、生育したり、捕食したり、捕食されたりすることの可能な三次元マトリックスとして機能する。
本発明者らは、驚くべきことに、本発明によるダニ組成物が効率面でより良好な結果を示すことを観察した。餌ダニ個体群のホコリダニ科のダニは、従来から使用されているastigmatid餌ダニと比較して、捕食性ダニ個体群によってより容易に殺され、より容易に食べられることが観察された。また、更なる利点として、餌用ホコリダニのすべてのライフステージが容易に殺されるのに対し、astigmatidの成虫などのより大きなライフステージは、殺される割合がはるかに低い。さらに、ホコリダニ餌ダニ個体群は、大量飼育ダニに使用されるastigmatid餌ダニと比較して、高密度であっても捕食性ダニ個体群を妨害しないことが観察された。理論に縛られることを望むわけではないが、ホコリダニは、astigmatidダニと比較して、忌避性の揮発性物質を生成しないか、又はそれらをはるかに低い程度までしか生成しないと考えられる。このことが、ホコリダニが捕食性ダニの個体群に与える悪影響を比較的低くしている可能性がある。したがって、捕食性ダニ個体群の個体がより速く成長してより速く成熟することができ、その結果、より高い繁殖率を実現することが可能となる。そのようなより高い繁殖率により、捕食性ダニ個体群の個体数がより迅速に増加する。この利点は、捕食性ダニの飼育及びこれを含む組成物の生産、並びに作物の有害生物の防除に有益である。本発明で使用される餌ダニ個体群はまた、死んだ餌ダニの個体群を含む(又はそれからなる)ことができることに留意されたい。本発明の餌ダニが、astigmatidダニなどの先行技術の餌ダニよりも容易に食べられるという観察は、死んだastigmatidダニと比較した死んだホコリダニにも当てはまる。死んだ餌ダニを含む餌ダニ個体群の使用は、捕食性ダニが餌ダニを殺して消費するのに要するエネルギーがより少なくて済むという利点を提供する。
第二に、本発明によるダニ組成物ではカビの出現が防止されることが観察された。ホコリダニ科のダニが真菌を摂食することが実際に観察された。驚くべきことに、餌用ホコリダニは、真菌の増殖を減少させるだけではなく、商業的意義のある飼育条件で目に見えない程度まで完全に抑制することができる。さらに、前述のように、生産及び分布を目的とした捕食性ダニの飼育には、厳密な温度条件及び湿度条件の維持が不可欠である。高温多湿の環境は、捕食性ダニの飼育に理想的である。しかしながら、そのような条件は真菌の増殖に有利に働くため、ダニを飼育し、商業上許容可能な捕食性ダニ組成物を生産する能力を著しく制限する。本発明による組成物は、現行技術のダニ組成物とは対照的に、大量飼育と、ひいてはより大量の商業的分布とを可能にし、これら両方はコスト削減に寄与する。したがって、好ましくは、餌ダニ個体群は、ホコリダニ科の生きたダニを含む。本発明による生きたダニの使用は、真菌汚染の抑制などの、死んだダニの使用に勝る多くの利点を提供する。
特定の一実施形態では、本発明で使用される餌ダニ個体群は、(a)死んだ餌ダニの個体群と、(b)ホコリダニ科の生きたダニの個体群と、を含む。死んだ餌ダニの使用はしばしば飼育培養物の真菌汚染を引き起こすので、本発明による生きた餌ダニの添加はこの問題を抑制する。より特定の一実施形態では、本発明で使用される餌ダニ個体群は、(a)ホコリダニ科の死んだ餌ダニの個体群と、(b)ホコリダニ科の生きたダニの個体群と、を含む。
「カビ」という用語は、本発明では、菌糸と呼ばれる多細胞フィラメントの形で増殖する真菌を意味する。カビは、天然物質の生分解を引き起こす多数の分類学的に多様な真菌種である。カビは、特定の分類学的又は系統学的なグループを形成しないが、接合菌門及び子嚢菌門に見出される。カビの一般的な属には、アクレモニウム属(Acremonium)、アルテルナリア属(Alternaria)、コウジカビ属(Aspergillus)、クラドスポリウム属(Cladosporium)、フザリウム属(Fusarium)、ケカビ属(Mucor)、アオカビ属(Penicillium)、クモノスカビ属(Rhizopus)、スタキボトリス属(Stachybotrys)、トリコデルマ属(Trichoderma)、及び白癬菌属(Trichophyton)が含まれる。本発明では、「カビ」という用語はまた、カビと密接に関連する対応物である白カビを含み、これは、ウドンコカビ目(Erysiphales)の真菌種、又はPeronosporaceae科の真菌様生物のいずれかである。第三に、本発明によるホコリダニは、夏季の低標高地における主要な有害生物と考えられているPolyphagotarsonemus latusダニ及びPhytonemus pallidusダニとは対照的に、重大な植物損傷を引き起こさない。P.latus種及びP.pallidus種のダニは、温帯地域及び亜熱帯地域の多くの果物や野菜の作物に被害を与える。したがって、本発明による組成物は、Polyphagotarsonemus latusダニ及びPhytonemus pallidusダニを含有するダニ組成物とは対照的に、大量飼育及び有害生物防除の両方を可能にする。
有利には、本発明による組成物は、真菌をさらに含み得る。本発明による組成物に真菌を添加すると、効率が向上することが観察された。餌ダニ個体群は真菌を摂食する。したがって、本発明による組成物への真菌の積極的な添加は、ホコリダニ科の成長を改善して、ホコリダニ科の繁殖成熟を加速させ、その結果、餌ダニ個体群のホコリダニ科個体がより迅速に増加することを可能にする。さらに、有益な真菌の積極的な添加は、飼育培養物を安定させ、望ましくない真菌汚染の増殖をさらに抑制することが観察されている。したがって、本発明による組成物への真菌の積極的な添加は、捕食性ダニ個体群の飼育、それらの大規模生産、及び本発明による組成物のより大量の分布を間接的に増強すると同時に、作物の有害生物防除に対してより良好な効果も示す。好適な一実施形態では、真菌はボタンタケ科(Hypocreaceae)に属し、特に、真菌はグリオクラジウム属(Gliocladium)及びトリコデルマ属(Trichoderma)から選択される。
本明細書で使用される「ホコリダニ」は、ホコリダニ科のダニ種を指し、それら両方の用語は、本明細書で互換可能に使用される。ホコリダニ科はダニの一種であり、糸足ダニ又は白ダニとも呼ばれる。特定の一実施形態では、ホコリダニは、ホコリダニ亜科、より具体的には、Hemitarsonemini、Steneotarsonemini、Tarsonemini、又はPseudacarapiniの各族に属する。
好適な一実施形態では、ホコリダニは、Tarsonemus属(例えば、Tarsonemus granarius、Tarsonemus floricolus、Tarsonemus myceliophagus、Tarsonemus subcorticalis、Tarsonemus minimax、Tarsonemus fusarii)、Fungitarsonemus属(例えば、Fungitarsonemus peregrinus、Fungitarsonemus pulvirosus)、Heterotarsonemus属(例えば、Heterotarsonemus lindquisti、Heterotarsonemus coleopterorum)、Daidalotarsonemus属(例えば、Daidalotarsonemus vandevriei、Diadalotarsonemus tesselatus)、Neotarsonemoides属(例えば、Neotarsonemoides denigrates)、及びPseudacarapis属(例えば、Pseudacarapis indoapis)からなる群から選択される。より好適な一実施形態では、本発明の餌ダニは、Tarsonemus属、特に、Tarsonemus granarius、Tarsonemus floricolus、Tarsonemus myceliophagus、Tarsonemus subcorticalis、Tarsonemus minimax、及びTarsonemus fusariiからなる群から選択される。
好ましくは、本発明によるホコリダニは、重大な植物損傷を引き起こさない。重大な植物損傷を引き起こさないホコリダニを選択する方法は、当業者に周知である。さらに、重大な植物損傷の不在は、例えば、植物を選択したホコリダニと一緒にインキュベートし、数日後に植物が損傷しているかどうかを判定することで、容易に判断可能である。特定の一実施形態では、本発明による餌ダニは、ホコリダニ科のダニを含み、ホコリダニ科の当該ダニは、Polyphagotarsonemus latus及び Phytonemus pallidusを含む群からは選択されない。本明細書の文脈から理解されるように、本発明によるホコリダニは、好ましくは、真菌を摂食するホコリダニである。
有利には、本発明による組成物は、捕食性ダニ個体群及び/又は餌ダニ個体群のための食物源を含む。特定の一実施形態では、本発明の組成物は、当該餌ダニ個体群のための食物源を含む。他の箇所でも説明されているように、当該餌ダニ個体群の食物源は真菌を含み得る。別の一実施形態では、当該餌ダニ個体群の食物源は、非光合成植物材料を含む。さらなる一実施形態では、食物源は、小麦胚芽又は花粉を含む。当業者に知られているように、担体として作用すると同時に、例えば小麦胚芽などの食物源としても作用する担体を選択することができる。
特定の一実施形態では、本発明の組成物は、捕食性ダニ個体群のための補助的な食物源をさらに含む。本明細書で使用される補助的な食物源は、餌ダニ個体群に加えて存在する食物源を指す。補助的な食物源は、捕食性ダニの飼育において、餌ダニよりも費用効果の高い食物源として使用される場合がある。いくつかの捕食性ダニは、追加のエネルギーを得るために補助的な食物を使用できるが、生存、発育、及び繁殖のために餌ダニの存在も必要とすることがしばしば観察される。補助的な食物源の使用には、真菌汚染を受けやすいという大きな欠点がある。補助的な食物源を本発明の餌ダニと組み合わせることにより、この欠点は抑制される。好適な補助的な食物源の例は、自然食品源(花粉やダニの死骸など)や人工食品(Waeckers他(2005)Plant-provided food for carnivorous insects:a protective mutualism and its applications、356p;Morales-Ramos他(2014)Mass production of beneficial organisms、742p;Cohen(2015)Insect diets.Science and Technology、第2版、473p)である。捕食性ダニの飼育のための補助的な食物源は、当業者に公知である。
本明細書で前述したように、担体は、個体に担体表面を提供するのに適したいかなる固体材料であってもよい。好適な一実施形態では、担体は、固体担体要素の混合物である。好ましくは、担体は、固体担体要素の実質的に均一な混合物である。固体担体要素は様々なサイズを有し得るが、実質的に均一な混合物は、様々なサイズが担体間に実質的に均一に分布されていることを指す。
固体担体要素の平均最長軸は、典型的には1.0~20.0mm、より具体的には2.0~12.0mm、好ましくは3.0~9.0mmである。別の特定の一実施形態では、担体は、同様のサイズの固体担体要素の混合物である。さらなる一実施形態では、固体担体要素の90%は、固体担体要素の混合物の平均最長軸の0.1倍から10.0倍の範囲、具体的には0.2倍から5.0倍の範囲、より具体的には0.5倍から2.0倍の範囲の最長軸を有する。本明細書の開示から理解されるように、2つ以上の異なる種類の担体要素が使用され、混合されてもよい。このような場合、サイズ分布とは、担体要素の種類ごとのサイズ分布を指す。好ましくは、担体は、ダニ個体群によって生成される代謝ガス及び熱の交換を可能にする多孔質媒体を提供する。適切な担体の例は、(小麦)ふすま、そば殻、籾殻、おがくず、トウモロコシ穂軸の粗挽き(corn cob grit)などの非光合成植物材料、又はバーミキュライトなどの無機材料である。有利には、当該担体は、草種の穀粒又はその任意の部分、例えば、胚芽又はふすまを含む。好ましくは、当該担体は、植物の葉又は茎などの生きている緑色の植物材料を含まない。特定の一実施形態では、担体は、非光合成植物材料を含む。バーミキュライト、小麦ふすま、キビ籾殻、籾殻及びそば殻から選択される担体が特に好ましい。
好ましくは、当該担体は、1.0~20.0mm、具体的には3.0~9.0mmの平均最長軸を有する担体要素を含む。担体材料は、餌ダニ及び捕食性ダニにシェルターを提供し、ストレス状態及び共食いを軽減させることができる。大量飼育の間、担体は三次元飼育マトリックスの生成を可能にし、餌ダニに食物源を提供することができる。生物学的防除のための貯蔵及び分布の間、担体は増量剤として作用し、捕食性ダニを作物中により均一に分布させることを可能にする。
有利には、捕食性ダニ個体群の個体数と餌ダニ個体群の個体数とは、約1:1~1:500、例えば約1:50~1:200、好ましくは1:75~1:125である。
本発明により、餌ダニ及び捕食性ダニを高密度とすることができる。特定の一実施形態では、本発明のダニ組成物は、組成物1グラムあたり少なくとも1000匹の餌ダニ個体群のダニ、具体的には少なくとも2000匹の餌ダニ、より具体的には少なくとも3000匹の餌ダニ、さらなる一実施形態では、少なくとも5000匹の餌ダニ、少なくとも10000匹の餌ダニ、少なくとも20000匹の餌ダニ、少なくとも30000匹の餌ダニを含む。好適な一実施形態では、ダニ組成物は、餌ダニ個体群のダニを、組成物1グラムあたり少なくとも50000匹含む。
別の特定の一実施形態では、本発明のダニ組成物は、組成物1グラムあたり少なくとも20匹の捕食性ダニ個体群のダニ、具体的には少なくとも30匹の捕食性ダニ、より具体的には少なくとも50匹の捕食性ダニ、さらなる一実施形態では、少なくとも100匹の捕食性ダニ、少なくとも150匹の捕食性ダニ、少なくとも200匹の捕食性ダニ、少なくとも300匹の捕食性ダニを含む。好適な一実施形態では、ダニ組成物は、捕食性ダニ個体群のダニを、組成物1グラムあたり少なくとも500匹含む。
本明細書に記載されているダニの数は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、卵、幼虫、若虫及び成虫を含む、すべての発育段階のダニの総数を指す。本明細書の開示から理解されるように、本発明の組成物中の餌ダニは、生きた餌ダニである必要はない。
特定の一実施形態では、本発明のダニ組成物は、組成物1グラムあたり少なくとも1000匹の餌ダニ個体群の非卵性(non-egg)ダニ、具体的には少なくとも2000匹の非卵性餌ダニ、より具体的には少なくとも3000匹の非卵性餌ダニ、さらなる一実施形態では、少なくとも5000匹の非卵性餌ダニ、少なくとも10000匹の非卵性餌ダニ、少なくとも20000匹の非卵性餌ダニ、少なくとも30000匹の非卵性餌ダニを含む。好適な一実施形態では、ダニ組成物は、餌ダニ個体群の非卵性ダニを、組成物1グラムあたり少なくとも50000匹含む。
別の特定の一実施形態では、本発明のダニ組成物は、組成物1グラムあたり少なくとも20匹の捕食性ダニ個体群の非卵性ダニ、具体的には少なくとも30匹の非卵性捕食性ダニ、より具体的には少なくとも50匹の非卵性捕食性ダニ、さらなる一実施形態では、少なくとも100匹の非卵性捕食性ダニ、少なくとも150匹の非卵性捕食性ダニ、少なくとも200匹の非卵性捕食性ダニ、少なくとも300匹の非卵性捕食性ダニを含む。好適な一実施形態では、ダニ組成物は、捕食性ダニ個体群の非卵性ダニを、組成物1グラムあたり少なくとも500匹含む。
別の特定の一実施形態では、本発明のダニ組成物は、組成物1グラムあたり少なくとも20匹の捕食性ダニ個体群の成虫ダニ、具体的には少なくとも30匹の成虫捕食性ダニ、より具体的には少なくとも50匹の成虫捕食性ダニ、さらなる一実施形態では、少なくとも100匹の成虫捕食性ダニ、少なくとも150匹の成虫捕食性ダニ、少なくとも200匹の成虫捕食性ダニ、少なくとも300匹の成虫捕食性ダニを含む。好適な一実施形態では、ダニ組成物は、組成物1グラムあたり少なくとも500匹の捕食性ダニ個体群の成虫ダニを含む。さらなる一実施形態では、本発明のダニ組成物は、組成物1グラムあたり少なくとも20匹の捕食性ダニ個体群の生きた成虫ダニ、具体的には少なくとも30匹の生きた成虫捕食性ダニ、より具体的には少なくとも50匹の生きた成虫捕食性ダニ、さらなる一実施形態では、少なくとも100匹の生きた成虫捕食性ダニ、少なくとも150匹の生きた成虫捕食性ダニ、少なくとも200匹の生きた成虫捕食性ダニ、少なくとも300匹の生きた成虫捕食性ダニを含む。好適な一実施形態では、ダニ組成物は、捕食性ダニ個体群の生きた成虫ダニを、組成物1グラムあたり少なくとも500匹含む。
上述の餌ダニの数の範囲と捕食性ダニの数の範囲とを組み合わせて、本発明の特定の好適な一実施形態としてもよいことは明白である。したがって、本発明は、例えば、組成物1グラムあたり、少なくとも1000匹の餌ダニ個体群のダニ及び少なくとも20匹の捕食性ダニ個体群のダニ、別の一例では、少なくとも5000匹の餌ダニ個体群のダニ及び少なくとも100匹の捕食性ダニ個体群のダニ、別の一例では、少なくとも50000匹の餌ダニ個体群のダニ及び少なくとも500匹の捕食性ダニ個体群のダニを含むダニ組成物を提供する。
好適な一実施形態では、当該捕食性ダニは、mesostigmatidダニ種又はprostigmatidダニ種である。さらなる一実施形態では、当該捕食性ダニは、
-Mesostigmatid捕食性ダニ種、例えば、以下:
i)Phytoseiidae、例えば、
a)-Amblyseiinae亜科、例えば、Amblyseius属、例えば、Amblyseius andersoni、Amblyseius aerialis、Amblyseius swirskii、Amblyseius herbicolus又はAmblyseius largoensis、Euseius属、例えば、Euseius finlandicus、Euseius hibisci、Euseius ovalis、Euseius victoriensis、Euseius stipulatus、Euseius scutalis、Euseius tularensis、Euseius addoensis、Euseius concordis、Euseius ho又はEuseius citri、Neoseiulus属、例えば、Neoseiulus barkeri、Neoseiulus californicus、Neoseiulus cucumeris、Neoseiulus longispinosus、Neoseiulus womersleyi、Neoseiulus idaeus、Neoseiulus anonymus、Neoseiulus paspalivorus、Neoseiulus reductus又はNeoseiulus fallacis、Amblydromalus属、例えば、Amblydromalus limonicus、Typhlodromalus属、例えば、Typhlodromalus aripo、Typhlodromalus laila又はTyphlodromalus peregrinus、Typhlodromips属、例えば、Typhlodromips montdorensis、Phytoseiulus属、例えば、Phytoseiulus persimilis、Phytoseiulus macropilis、Phytoseiulus longipes、Phytoseiulus fragariaeからのもの、
b)Typhlodrominae亜科、例えば、Galendromus属、例えば、Galendromus occidentalism、Typhlodromus属、例えば、Typhlodromus pyri、Typhlodromus doreenae、Typhlodromus rhenanus又はTyphlodromus athiasaeからのもの、
c)Phytoseiinae亜科、例えば、Phytoseius属、例えば、Phytoseius macropilis、Phytososeius finitimus又はPhytoseius plumiferからのもの、
ii)Ascidae、例えば、Proctolaelaps pygmaeus(Muller)等のProctolaelaps属;Blattisocius属、例えば、Blattisocius tarsalis(Berlese)、Blattisocius keegani(Fox);Lasioseius属、例えば、Lasioseius fimetorum Karg、Lasioseius floridensis Berlese、Lasioseius bispinosus Evans、Lasioseius dentatus Fox、Lasioseius scapulatus(Kenett)、Lasioseius athiasae Nawar&Nasr;Arctoseius属、例えば、Arctoseius semiscissus(Berlese);Protogamasellus属、例えば、Protogamasellus dioscorus Mansonからのもの、
iii)Laelapidae、例えば、Stratiolaelaps属、例えば、Stratiolaelaps scimitus(Womersley)(Hypoaspis属にも分類される);Gaeolaelaps、例えば、Gaeolaelaps aculeifer(Canestrini)(Hypoaspis属にも分類される);Androlaelaps、例えば、Androlaelaps casalis(Berlese)からのもの、
iv)Macrochelidae、例えば、Macrocheles属、例えば、Macrocheles robustulus(Berlese)、Macrocheles muscaedomesticae(Scopoli)、Macrocheles matrius(Hull)からのもの、
v)Parasitidae、例えば、Pergamasus属、例えば、Pergamasus quisquiliarum Canestrini;Parasitus、例えば、Parasitusfimetorum(Berlese)、Parasitus bituberosus Karg;Parasitellus、例えば、Parasitellus fucorum(De Geer)からのもの、
vi)Digamasellidae、例えば、Digamasellus属、例えば、Digamasellus quadrisetus又はDigamasellus punctum;Dendrolaelaps属、例えば、Dendrolaelaps neodisetusからものもの、
-prostigmatidダニ種、例えば、以下:
i)Tydeidae、例えば、Homeopronematus属、例えば、Homeopronematus anconai(Baker);Tydeus属、例えば、Tydeus Iambi(Baker)、Tydeus caudatus(Duges);Pronematus属、例えば、Pronematus ubiquitus(McGregor)からのもの、
ii)Cheyletidae、例えば、Cheyletus属、例えば、Cheyletus eruditus(Schrank)、Cheyletus malaccensis Oudemansからのもの、
iii)Cunaxidae、例えば、Coleoscirus属、例えば、Coleoscirus simplex(Ewing)、Cunaxa属、例えば、Cunaxa setirostris(Rermann)からのもの、
iv)Erythraeidae、例えば、Balaustium属、例えば、Balaustium putmani Smiley、Balaustium medicagoense Meyer&Ryke、Balaustium murorum(Hermann)からのもの、
v)Stigmaeidae、例えば、Agistemus属、例えば、Agistemus exsertus Gonzalez;Zetzellia属、例えば、Zetzellia mali(Ewing)からのもの、
vi)ホコリダニ科、例えば、Acaronemus属、例えば、Acaronemus destructor(Smiley and Landwehr);suski Sharonov及びLivshitsに近いDendroptus属、例えば、Lupotarsonemus floridanus Attiahからのもの、
から選択される。
好適な一実施形態では、捕食性ダニはPhytoseiidaeに属する。特定の一実施形態では、捕食性ダニは、Amblyseiinae、Transeius、Neoseiulus及びAmblydromalusから選択される。より具体的には、捕食性ダニは、Amblyseius swirskii、Transeius montdorensis、Neoseiulus californicus、及びAmblydromalus limonicusからなる群から選択される。
別の一実施形態では、捕食性ダニは、prostigmatidダニ、特にTydeidaeである。さらなる一実施形態では、捕食性ダニは、Homeopronematus属又はPronematus属からのものであり、好ましくはHomeopronematus anconai又はPronematus ubiquitusである。
本発明はまた、本発明の組成物の貯蔵及び分布のための商業的な包装を提供する。したがって、本発明はさらに、本発明による組成物を含む容器に関する。具体的には、容器の内部容積は、0.2l~3l、好ましくは0.5l~2lである。好適な一実施形態によれば、容器は、好ましくは、ダニの少なくとも1つの運動性のライフステージのための出口、より好ましくは、当該少なくとも1つの運動性のライフステージの徐放の提供に適した出口を含む。特定の一実施形態では、容器(例えば、ボトル又は小袋)は、取り外し可能なシールを備えた少なくとも1つの出口を有する。具体的には、本明細書で使用されるシールは、接着又はヒートシールされたクロージャを指す。好ましくは、容器は、例えば、容器を作物の葉もしくは枝から吊るすためのフックを備えることによって、又は容器を作物の表面に付着させるための粘着性の表面を備えることによって、容器を作物に取り付けるようになっている。
本発明はさらに、捕食性ダニを飼育するための方法であって、
本発明の組成物を用意することと、
捕食性ダニ個体群の個体が当該餌ダニ個体群を摂食することを可能にすることと、
を含む方法に関する。
好ましくは、捕食性ダニ個体群の個体は、当該ダニ組成物を5~35℃及び相対湿度30~100%、具体的には15~35℃及び相対湿度50~100%に維持した状態で当該餌ダニ個体群を摂食することを可能とされる。
本明細書で前述したように、別の一実施形態では、捕食性ダニを飼育するための方法は、真菌を添加することをさらに含む。特定の一実施形態では、真菌は凍結乾燥真菌である。例えば、本発明は、捕食性ダニを飼育するための方法であって、
担体を、餌ダニ個体群、捕食性ダニ個体群、及び真菌の培養物と接触させることによって、ダニ組成物を生成することと、
捕食性ダニ個体群の個体が当該餌ダニ個体群を摂食することを可能にすることと、
を含む方法を提供する。原則として、真菌は、飼育方法の間の任意の時点で添加することができ、その後、飼育中及び/又は生物学的防除のための得られた組成物の使用中に利益を提供する。特定の一実施形態では、真菌は、捕食性ダニ個体群の個体が餌ダニ個体群を摂食している間、真菌が存在するように添加される。好適な一実施形態では、真菌は、捕食性ダニ個体群が当該餌ダニ個体群を摂食することを可能とされる前に添加される。さらなる一実施形態では、本発明の飼育方法は、
担体に餌ダニ個体群及び真菌を接触させることと、
当該真菌の存在下で、当該餌ダニ個体群を当該担体上で飼育することと、
飼育された当該餌ダニ個体群を捕食性ダニ個体群と接触させることと、
捕食性ダニ個体群の個体が当該餌ダニ個体群を摂食することを可能にすることと、
を含む。
有利には、担体は、餌ダニ個体群が添加される前に真菌とインキュベートすることができる。これにより、真菌が担体上で増殖させられ、餌ダニ個体群に十分な食物源が確保される。
有利には、飼育された餌ダニ個体群を捕食性ダニの個体群と接触させると、餌ダニ個体群を真菌の存在下で担体上に保持することができる。したがって、餌ダニ個体群と捕食性ダニ個体群との接触前に、餌ダニ個体群を担体及び真菌から分離する必要がない。さらに、捕食性ダニの飼育中の真菌の存在は、本明細書に記載される利点を提供する。具体的には、真菌は、餌ダニ個体群の食物源として作用することが可能であり、その結果、餌ダニ個体群は、成長中の捕食性ダニ個体群によって捕食されている間にさらに発育することができる。
本発明はさらに、真菌の増殖を抑制するための、本発明によるホコリダニ科のダニの1つ以上の種の使用に関する。有利には、真菌の増殖が捕食性ダニ飼育システムにおいて制御される。
本発明はさらに、作物の有害生物を防除するための方法であって、本発明によるダニ組成物を当該作物に提供することを含む方法に関する。本発明のダニ組成物は、作物に直接散布することができる。あるいは、本発明のダニ組成物は、作物の近くに提供される。例えば、本発明のダニ組成物は、ダニ組成物を保持した容器を作物の近くに配置し、捕食性ダニが当該容器から出ることを可能にすることによって、作物に提供されてもよい。このようにして、捕食性ダニは作物全体に広がり、作物の有害生物を防除する。好適な一実施形態では、有害生物は節足動物の有害生物である。
本発明のこれら及びその他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に示されている。
次に、本発明を、本発明の異なる態様の非限定的な実施形態を示す以下の実施例を参照してさらに説明する。
実施例
実施例1:異なる餌ダニでのAmblyseius swirskii Athias-Henriotの産卵率
実施例1は、捕食性phytoseiidダニに標準的に使用される2つのastigmatid餌ダニと比較した餌用ホコリダニの栄養価を評価するために実施された。より具体的には、捕食性ダニAmblyseius swirskii Athias-Henriot(Acari:Mesostigmata:Phytoseiidae)の産卵率を、餌用ホコリダニであるTarsonemus fusarii Cooreman(TF)(Acari:Prostigmata:Tarsonemidae)を使用した場合と、2つのastigmatid餌ダニ、すなわちCarpoglyphus lactis L.(CL)(Acari:Astigmata:Carpoglyphidae)及びThyreophagus entomophagus(Laboulbene)(TE)(Acari:Astigmata:Acaridae)を使用した場合とで比較して試験した。
餌ダニを、ふすま、小麦胚芽及び酵母を含む培地上で、通気手段付きの蓋を有するプラスチック容器(8×5.7cm)で育てた。容器を、温度22±1℃、相対湿度85±5%に維持した。
一匹の妊娠した雌のA.swirskiiを、大量飼育施設から湿った綿の層の上に置かれた黒いPVCアリーナ(2×4cm)上に移した。ダニの逃避を防ぐために、アリーナの端をティッシュペーパーで覆った。シェルター及び産卵の基質を提供するために、綿の糸が付いた黒いプラスチック片(1×1cm)を追加した。餌ダニは、自由摂餌とした。各雌が産卵した卵の数を、4日間連続して毎日数えた。実験前の食餌の影響を制限するために、初日の産卵率は分析から除外した(Sabelis1990)。処理ごとに12回の複製を使用した。2日目、3日目、4日目に産卵された卵の合計を、ポアソン分布のGLMモデルと比較した。処理間のコントラストを、一般線形仮説検定(R,Lenth 2016のパッケージlsmeansの関数glht)で決定した。すべての分析を、統計ソフトウェアR3.10(RDevelopment Core Team 2012)を使用して実行した。
結果は、A.swirskiiが餌用ホコリダニであるT.fusariiで繁殖できることを示している。産卵は餌の種の影響を受け、C.lactisを使用した場合の産卵は、T.entomophagusからなる餌の場合よりも有意に優れていた(GLM、χ2=20.3、d.f.=2、p<0.001)(図1)。餌用ホコリダニで成長させた場合、astigmatid餌ダニと比較してより多くの卵が産まれたが、C.lactisに関しては統計的に有意な差ではなかった。結論として、ホコリダニは、A.swirskiiなどの捕食性ダニの商業的飼育に適した餌ダニ個体群である。
実施例2:餌ダニの様々な発育段階を与えた場合のA.swirskiiの捕獲成功率
以前の研究では、astigmatid餌ダニの成虫期は、これらのダニの卵や幼虫よりも捕獲及び消費が難しいことが報告されている。この実施例では、捕獲成功率の割合を、餌用ホコリダニであるT.fusarii、astigmatid餌ダニであるC.lactis及びT.entomophagusの卵、幼虫及び成虫について評価した。
実施例1で説明したように、捕食性ダニ及び餌ダニを飼育した。雌のA.swirskiiを、食物源なしで黒いPVCプレートに移すことにより、実験開始前に16時間飢餓状態にした。16時間後、実験1で説明したように、1匹のメスのA.swirskiiを黒いPVCアリーナに移した。A.swirskiiの雌を導入する前に、3種類の餌ダニの50個の卵、50匹の幼虫、又は25匹の成虫を実験用アリーナに移した。捕食者の導入後、観察を、5分間、又は攻撃(すなわち、餌の捕殺及び摂食)が成功するまで行った。メスが5分以内に餌の捕殺に成功しなかった場合、これは失敗として記録された。処理ごとに15回の複製を設定した。二項分布のGLMモデルを使用した処理間でデータを比較した。処理間のコントラストを、有意でない因子レベルの集計による段階的なモデルの単純化によって評価した(Crawley2013)。すべての統計分析は、コンピュータソフトウェアRバージョン3.1.0(R Core Team2014)を使用して行われた。
ホコリダニT.fusariiの卵が与えられると、すべての雌は5分以内に卵の摂食に成功した。驚くべきことに、C.lactisの卵を捕殺することができた雌は30%未満であり、T.entomophagusの卵を捕殺した雌はいなかった。成虫の場合も、他のastigmatid餌ダニ種と比較して、餌用ホコリダニT.fusariiが提供された場合、より高い割合の餌個体が捕獲された。幼虫の場合、すべての雌が5分以内に幼虫を捕殺した。
餌が幼虫の場合、捕獲率はすべての種で同等であった(GLM、χ2=2x10-10、d.f.=2、p=0.05)。ただし、捕獲率は、卵(GLM、χ2=1315.3、d.f.=2、p<0.05)及び成虫(GLM、χ2=39.2、d.f.=2、p<0.05)が与えられた場合、種によって影響を受けた。図2に示す結果から、A.swirskiiの雌は、従来から使用されているastigmatid餌ダニ種C.lactis及びT.entomophagusと比較して、餌用ホコリダニT.fusariiの卵及び成虫をはるかに多く捕殺及び消費できることが明らかである。このように、餌用ホコリダニは、すべての発育段階がより容易に捕殺されるので、餌としてより適切である。
実施例3:Tarsonemus fusariiでのHomeopronematus anconaiの産卵率
この実験は、捕食性prostigmatidダニであるHomeopronematus anconai(Baker)に使用される餌用ホコリダニの栄養価を評価するために実施された。
餌ダニを、ふすま、小麦胚芽及び酵母を含む培地上で、通気手段付きの蓋を有するプラスチック容器(8×5.7cm)で育てた。容器を、温度22±1℃、相対湿度85±5%に維持した。
一匹の妊娠した雌のH.anconaiを、大量飼育施設から湿った綿の層の上に置かれたトマト葉アリーナ(2×4cm)上に移した。ダニの逃避を防ぐために、アリーナの端をティッシュペーパーで覆った。餌ダニは、自由摂餌とした。
各雌が産卵した卵の数を、4日間連続して毎日数えた。実験前の食餌の影響を制限するために、初日の産卵率は分析から除外した(Sabelis1990)。処理ごとに10回の複製を使用した。2日目、3日目、4日目に産卵された卵の合計を、統計ソフトウェアR 3.10(R Development Core Team 2012)を使用して、ポアソン分布のGLMモデルと比較した。結果を図3に示す。トマト葉アリーナ上にT.fusariiを供給すると、H.anconaiによって産卵される卵の数が大幅に増加し(GLM、χ2=20.418、d.f.=1、p<0.001)、捕食性prostigmatidダニを飼育するための餌ダニとしてホコリダニを使用できることが裏付けられた。
実施例4:Tarsonemus fusarii及びCarpoglyphus lactisでのPronematus ubiquitusの産卵率
この実験を、別の捕食性prostigmatidダニ、すなわちPronematus ubiquitus(Baker)に使用される餌用ホコリダニの栄養価を評価するために実施した。
餌ダニを、ふすま、小麦胚芽及び酵母を含む培地上で、通気手段付きの蓋を有するプラスチック容器(8×5.7cm)で育てた。容器を、温度22±1℃、相対湿度85±5%に維持した。
一匹の妊娠した雌のP.ubiquitusを、大量飼育施設から湿った綿の層の上に置かれたトマト葉アリーナ(2×4cm)上に移した。ダニの逃避を防ぐために、アリーナの端をティッシュペーパーで覆った。餌ダニは、自由摂餌とした。
各雌が産卵した卵の数を、4日間連続して毎日数えた。実験前の食餌の影響を制限するために、初日の産卵率は分析から除外した(Sabelis 1990)。処理ごとに10回の複製を使用した。2日目、3日目、4日目に産卵された卵の合計を、準ポアソン分布のGLMモデルと比較し、統計ソフトウェアR 3.10(R Development Core Team 2012)を使用して過分散を補正した。結果を図4に示す。
C.lactis及び食物なしの対照処理と比較して、T.fusariiを与えた場合のP.ubiquitusの雌の産卵率が有意に高いことが観察された(GLM、χ2=15.039、d.f.=2、p=0.002)。
したがって、餌用ホコリダニは、C.lactisなどの従来から使用されている餌ダニとは異なり、P.ubiquitusなどの捕食性prostigmatidダニの飼育に使用される潜在的可能性を有する。
実施例5:Tarsonemus confusus及びTarsonemus fusariiを与えた場合のAmblyseius swirskiiの産卵率の比較
実施例1及び実施例2に示すように、A.swirskiiはTarsonemus fusariiで正常に飼育することができる。この実施例では、Tarsonemus fusariiと比較してTarsonemus confususを与えた場合のAmblyseius swirskiiの産卵率を試験した。
両方のホコリダニを、ふすま、小麦胚芽及び酵母を含む培地上で、通気手段付きの蓋を有するプラスチック容器(8×5.7cm)で育てた。容器を、温度22±1℃、相対湿度85±5%に維持した。
一匹の妊娠した雌のA.swirskiiを、大量飼育施設から湿った綿の層の上に置かれた黒いPVCアリーナ(2×4cm)上に移した。ダニの逃避を防ぐために、アリーナの端をティッシュペーパーで覆った。シェルター及び産卵の基質を提供するために、綿の糸が付いた黒いプラスチック片(1×1cm)を追加した。餌ダニは、自由摂餌とした。各雌が産卵した卵の数を、3日間連続して毎日数えた。処理ごとに12回の複製を設定した。実験前の食餌の影響を制限するために、初日の産卵率は分析から除外した(Sabelis 1990)。2日目と3日目に産卵された卵の合計を、(準ポアソン分布の)GLM分析を使用して比較した。処理間のコントラストを、一般線形仮説検定(R,Lenth 2016のパッケージlsmeansの関数glht)で求めた。分析を、統計ソフトウェアR 3.10(R Development Core Team 2012)を使用して実行した。
実験結果を図5に示す。T.fusarii又はT.confususのいずれかを与えた場合にA.swirskiiによって産卵された卵の数は同様であった(GLM;χ=0.0164、df=1、p=0.898)。この結果は、T.confususなどのTarsonemus属の他のホコリダニ種を、捕食性ダニの大量生産のための食物源として使用できることを裏付けている。
実施例6:Fungitarsonemus sp.でのAmblyseius swirskiiの産卵率
この実験は、別の餌用ホコリダニ、すなわちFungitarsonemus sp.の栄養価を評価するために実施された。
Fungitarsonemus sp.の卵及び可動形態を、ツタの葉(Hedera helix L.)から収集した。餌ダニを、湿った綿の層の上に裏返して置かれたツタ葉ディスク(2×4cm)に移した。ダニの逃避を防ぐために、リーフディスクの端を湿ったティッシュペーパーで覆った。実験の前に24時間飢えさせた一匹の妊娠した雌のA.swirskiiを、リーフディスクに移した。餌ダニを自由摂餌とするために、新鮮なFungitarsonemusの可動形態及び卵を、実験用のリーフアリーナに毎日移した。シェルター及び産卵の基質を提供するために、綿の糸が付いた黒いプラスチック片(1×1cm)を追加した。雌が産卵した卵の数を、2日間連続して毎日数えた。リーフディスクを、温度22±1℃、相対湿度85±5%に設定された気候チャンバ内に保持した。処理ごとに6回の複製を設定した。2日間に産卵された卵の合計を、GLM分析(ポアソン分布を使用)を使用して比較した。処理間のコントラストを、一般線形仮説検定(R,Lenth 2016のパッケージlsmeansの関数glht)で求めた。分析を、統計ソフトウェアR 3.10(R Development Core Team 2012)を使用して実行した。
結果を図6に示す。Fungitarsonemus sp.をツタ葉ディスク上に給餌した場合の卵の数は、有意に高かった(GLM、χ=5.062、df=1、p=0.0245)。このことは、Tarsonemus属以外のホコリダニも捕食性ダニの飼育に使用可能であることを裏付けている。

Claims (14)

  1. ダニ組成物であって、
    捕食性ダニ個体群と、
    餌ダニ個体群と、
    前記個体群の個体のための担体と、
    を含み、
    前記餌ダニ個体群はホコリダニ科のダニを含み、
    前記ダニ組成物は、Polyphagotarsonemus latus及びPhytonemus pallidusからなる群から選択される生きたダニ種を含まない、
    ダニ組成物。
  2. 前記餌ダニ個体群が、以下の属、
    Tarsonemus属、例えば、Tarsonemus granarius、Tarsonemus floricolus、Tarsonemus myceliophagus、Tarsonemus subcorticalis、Tarsonemus minimax、Tarsonemus fusarii、
    Fungitarsonemus属、例えば、Fungitarsonemus peregrinus、Fungitarsonemus pulvirosus、
    Heterotarsonemus属、例えば、Heterotarsonemus lindquisti、Heterotarsonemus coleopterorum、
    Daidalotarsonemus属、例えば、Daidalotarsonemus vandevriei、Diadalotarsonemus tesselatus、
    Neotarsonemoides属、例えば、Neotarsonemoides denigratus
    Pseudacarapis属、例えば、Pseudacarapis indoapis、
    から選択される少なくとも1つのダニ種を含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記ダニ個体群のための食物源をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記餌ダニ個体群のための前記食物源は、小麦胚芽又は花粉などの非光合成植物材料を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 前記担体は、例えば胚芽又はふすまなどの、草種の穀粒又はその任意の部分を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記担体は、1.0~20.0mmの平均最長軸を有する担体要素を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記捕食性ダニ種の個体数と前記餌ダニ種の個体数とは、約1:1~約1:500、具体的には約1:50~約1:200、より具体的には1:75~1:125である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 前記捕食性ダニ種がmesostigmatidダニ種又はprostigmatidダニ種、特にPhytoseiidaeである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. ボタンタケ科からの真菌をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 容器と、
    請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物との組み合わせであって、
    前記組成物が前記容器内に備えられる、組み合わせ。
  11. 捕食性ダニを飼育する方法であって、
    請求項1から9のいずれか一項の組成物を用意することと、
    前記捕食性ダニ個体群の個体が前記餌ダニ個体群を摂食することを可能にすることと、
    を含む方法。
  12. 前記ダニ組成物を5~35℃及び相対湿度30~100%に維持することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
  13. 真菌の増殖を抑制するための、請求項1から選択されるホコリダニ科のダニの1つ以上の種の使用であって、真菌の増殖が捕食性ダニ飼育システムにおいて抑制される、方法。
  14. 作物の有害生物を防除するための方法であって、請求項1から9のいずれか一項に記載のダニ組成物を前記作物に提供することを含む、方法。
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