JP7485927B2 - プレス矯正システム、出力制御装置、プレス矯正方法及びプログラム - Google Patents

プレス矯正システム、出力制御装置、プレス矯正方法及びプログラム Download PDF

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Description

本発明は、プレス矯正システム、出力制御装置、プレス矯正方法及びプログラムに関するものである。
金属材(例えば、管材、棒材及び板材等)の製造工程において形状不良が生じた場合に、その形状を矯正する方法の一つとして、プレス矯正が行われている。プレス矯正では、定盤(ベッド)の上に2つのシム板を所定の間隔で載置し、矯正対象である金属材(被矯正材)の矯正対象部位が当該シム板間に位置するように、当該被矯正材を当該シム板間に架け渡すように設置した後、当該矯正対象部位を工具(ラムヘッド)で上方からプレスすることにより、当該被矯正材の形状が矯正される。
油圧によるプレス矯正では、矯正後の被矯正材の形状が所望の形状になるように、プレス位置、油圧荷重及びラムヘッドの押し込み量(ストローク量)等のプレス条件を適切に決定する必要がある。従来は、作業者が矯正前の被矯正材の形状を金尺等によって測定し、その測定結果に基づいて、当該作業者が経験的にこれらのプレス条件を決定していた。しかしながら、このような方法では、作業者ごとの技量によってプレス条件にばらつきが生じてしまうだけでなく、製品に要求される形状まで成形するためのプレス回数が増加し、製造効率が低下する。
そこで、プレス矯正において、プレス条件、特にストローク量をより適切に決定することにより、より精度良く矯正を行うことを可能とする技術が提案されている。例えば、特許文献1、2には、管材又は棒材に対するプレス矯正において、矯正対象と同種の管材又は棒材の変形における油圧荷重とストローク量との関係(以下、便宜的にF-S関係ともいう)を予め取得しておき、当該F-S関係に基づいて、弾性復元量(スプリングバック量)も考慮して、矯正後に所望の形状を得るための変形量(目標矯正量)を実現するようなストローク量(目標ストローク量)を決定する方法が開示されている。ここで、変形量とは、矯正対象部位の矯正前後におけるプレス方向への変形量のことである。つまり、当該方法では、目標ストローク量からスプリングバック量を差し引いた値が目標矯正量となるように、当該目標ストローク量が決定される。特に、特許文献1に記載の技術では、あるロット内の1本の管材又は棒材から取得したF-S関係を用いて、その同じロット内の他の管材又は棒材に対する目標ストローク量を決定することにより、矯正の精度をより向上させている。
また、例えば、特許文献3には、加圧ラムを有するプレス機を備える鋼板形状矯正装置による鋼板形状矯正方法であり、矯正過程中の加圧ラムの昇降ストローク量と鋼板に作用する矯正荷重を測定する測定工程と、測定された前記昇降ストローク量及び前記矯正荷重から矯正変位を予測する矯正変位予測工程と、予測された前記矯正変位に基づいて、鋼板の形状矯正を行う形状矯正工程と、を含み、前記矯正変位予測工程では、起点t0から任意の時刻tまでにおいて、矯正過程での矯正荷重を前記t0から前記tまで昇降ストローク量で積分して算出したエネルギーと、矯正過程での昇降ストローク量を前記t0から前記tまで矯正荷重で積分して算出したコンプリメンタリエネルギーとの差を、前記tでの矯正荷重と前記t0での矯正荷重の差で割った値を第1矯正変位とし、該第1矯正変位を前記矯正変位とすることを特徴とする鋼板形状矯正方法が開示されている。
特開平2-192820号公報 特開昭63-43722号公報 特開2017-148851号公報
しかしながら、プレス矯正の対象材は多岐に渡るため、あらゆる種類の被矯正材に対してF-S関係を事前に取得しておくことは困難である。特に、板材では、管材や棒材と異なり、形状不良にも様々な形態(反り、折れ曲がり、波等)が存在するため、シム板の間隔やプレス位置などの矯正条件も多岐に渡り、それに応じてF―S関係も変化する。また、同種の被矯正材であっても、製造条件(加工や熱処理等)のばらつきにより、機械特性が変化し得る。更に、被矯正材には加工や熱処理により残留応力が生じていることがあるが、この残留応力は、被矯正材が経た製造プロセスに応じて被矯正材ごとに異なると考えられる。このような機械特性のばらつきや残留応力に応じてもF-S関係も変化し得るため、実際の被矯正材のF-S関係は、事前に取得した同種の金属材のF-S関係とは異なる可能性がある。このように、F-S関係は、被矯正材である金属材の特性(形状、金属種、残留応力、特性ばらつき等)、及び油圧荷重及びストローク量以外のプレス条件(シム板の間隔、プレス位置等)等、多様な因子によって変化し得る。従って、特許文献1、2に記載の技術のように、事前に取得されたF-S特性を利用して被矯正材に対する目標ストローク量を決定する方法では、所望の変形量が得られるような適切な目標ストローク量を精度良く決定することができないおそれがある。また、特許文献3に記載の技術では、操作者の確認から加圧停止までの時間又は操作者の加圧停止操作後、実際に被矯正材への加圧が停止されるまでの時間差により、目標矯正変位と矯正変位予測値が一致した時点で停止操作を行っても、目標矯正変位以上の矯正量となることがある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、プレス矯正において、所望の矯正量が得られるようなラムヘッドの目標ストローク量をより適切に決定することにより、より精度良く被矯正材を矯正することが可能なプレス矯正システム、出力制御装置、プレス矯正方法及びプログラムを提供することにある。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで板状の被矯正材をプレスするプレス装置と、
前記ラムヘッドのストローク量を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記ストローク量の実績値Stに対する油圧荷重の実績値Ptの傾きを算出する傾き算出部と、
前記傾き算出部により算出された前記ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定部と、
前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する変形量算出部と、
前記油圧荷重の予測値Ppが前記被矯正材の変形開始時の油圧荷重Piと等しくなるときの前記ストローク量の予測値Spを予測矯正量Scとし、前記予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差が所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定する加圧停止判定部と、
前記加圧停止判定部により前記予測矯正量Scと前記目標矯正量Saとの差が所定の前記閾値ΔSth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御部と、を有し、
前記変形量算出部は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する、又は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、現時刻tにおけるPt/Stと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する、プレス矯正システム。
[2]
下記式(1)及び下記式(2)を用いて前記油圧荷重の実績値Ptを前記被矯正材に作用する荷重である作用荷重Pt’に補正する作用荷重算出部を更に備える、
[1]に記載のプレス矯正システム。
Pt’=Pt+Pm(I) …式(1)
Pt’=Pt+Pm(II) …式(2)
ここで、
Pt:前記油圧荷重の実績値
Pm(I):前記ラムヘッドによる負荷時の前記油圧荷重の補正量
Pm(II):前記除荷時の前記油圧荷重の補正量
である。
[3]
前記出力制御部は、更に、前記変形量算出部により算出された現時刻t若しくは時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spがプロットされたグラフ、又は前記変形量算出部により算出された現時刻t若しくは時刻t+Δt以降の作用荷重の予測値Pp’と前記ストローク量の予測値Spがプロットされたグラフを逐次表示する出力を制御する、[2]に記載のプレス矯正システム。
[4]
油圧シリンダーに備えられたラムヘッドによる板状の被矯正材のプレス中に取得される前記ラムヘッドの現時刻tにおける油圧荷重の実績値Ptとストローク量の実績値Stの組み合わせ、及び、前記油圧荷重の実績値Ptと、前記ストローク量の実績値Stと、弾性域の傾きEと、に基づいて予測された、現時刻tにおいて前記油圧荷重が除荷されたときの現時刻t以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spの組み合わせがプロットされたXY平面、又は、現時刻tにおける、前記油圧荷重の実績値Ptと、前記ストローク量の実績値Stと、塑性域での現時刻tにおける前記ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの比Pt/Stと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの前記油圧荷重及び前記ストローク量の組み合わせ、及び、前記時刻t+Δtの時点で前記油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spの組み合わせがプロットされたXY平面の少なくともいずれかを逐次表示する出力を制御する、出力制御装置。
[5]
油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで板状の被矯正材をプレスするプレス矯正方法であって、
ラムヘッドのストローク量の実績値Stに対する油圧荷重の実績値Ptの傾きを算出する傾き算出ステップと、
前記傾き算出ステップにおいて算出された前記ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定ステップと、
前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する変形量算出ステップと、
前記油圧荷重の予測値Ppが前記被矯正材の変形開始時の油圧荷重Piと等しくなるときの前記ストローク量の予測値Spを予測矯正量Scとし、前記予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差が所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定する加圧停止判定ステップと、
前記予測矯正量Scと前記目標矯正量Saとの差が所定の前記閾値ΔSth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御ステップと、
を含み、
前記変形量算出ステップでは、前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spが算出される、又は、前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、現時刻tにおけるPt/Stと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spが算出される、プレス矯正方法。
[6]
油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで、当該ラムヘッドのストローク量を制御して板状の被矯正材をプレスする際に、
コンピュータを、
前記ストローク量の実績値Stに対する油圧荷重の実績値Ptの傾きを算出する傾き算出部と、
前記傾き算出部により算出された前記ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定部と、
前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する変形量算出部と、
前記油圧荷重の予測値Ppが前記被矯正材の変形開始時の油圧荷重Piと等しくなるときの前記ストローク量の予測値Spを予測矯正量Scとし、前記予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差が所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定する加圧停止判定部と、
前記予測矯正量Scと前記目標矯正量Saとの差が所定の前記閾値ΔSth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御部と、
として機能させ、
前記変形量算出部が、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する、又は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、現時刻tにおけるPt/Stと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出するための、プログラム。
[7]
油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで板状の被矯正材をプレスするプレス装置と、
前記ラムヘッドのストローク量を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記プレス中の前記油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出する、変換部と、
前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの傾きを算出する傾き算出部と、
前記傾き算出部により算出された、前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定部と、
前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出する変形量算出部と、
前記曲げモーメントの予測値Mpが前記被矯正材の変形開始時の前記曲げモーメントMiと等しくなるときの前記曲率の予測値κpを予測曲率κcとし、前記予測曲率κcと目標曲率κaとの差が所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定する加圧停止判定部と、
前記加圧停止判定部により前記予測曲率κcと前記目標曲率κaとの差が所定の前記閾値Δκth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御部と、
を有し、
前記変形量算出部は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出する、又は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、現時刻tにおけるMt/κtと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出する、プレス矯正システム。
[8]
下記式(3)及び下記式(4)を用いて前記油圧荷重の実績値Ptを前記被矯正材に作用する荷重である作用荷重Pt’に補正する作用荷重算出部を更に備え、
前記変換部は、前記油圧荷重の実績値Ptに代えて前記作用荷重Pt’を用いて補正曲げモーメントMt’を算出する、[7]に記載のプレス矯正システム。
Pt’=Pt+Pm(I) …式(3)
Pt’=Pt+Pm(II) …式(4)
ここで、
Pt:前記油圧荷重の実績値
Pm(I):前記ラムヘッドによる負荷時の前記油圧荷重の補正量
Pm(II):前記除荷時の前記油圧荷重の補正量
である。
[9]
前記出力制御部は、更に、前記変形量算出部により算出された現時刻t若しくは時刻t+Δt以降の前記曲げモーメントの予測値Mpと前記曲率の予測値κpがプロットされたグラフ、又は前記変形量算出部により算出された時刻t若しくはt+Δt以降の前記補正曲げモーメントの予測値Mp’と前記曲率の予測値κpがプロットされたグラフを逐次表示する出力を制御する、[8]に記載のプレス矯正システム。
[10]
油圧シリンダーに備えられたラムヘッドによる板状の被矯正材のプレス中に取得される前記ラムヘッドの現時刻tにおける、前記油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、に基づいて算出された、曲率κtと曲げモーメントMtの組み合わせ、及び、前記曲率κtと、前記曲げモーメントMtと、弾性域の傾きEと、に基づいて予測された、現時刻tにおいて前記油圧荷重が除荷されたときの現時刻t以降の前記曲率の予測値κpと前記曲げモーメントの予測値Mpの組み合わせがプロットされたXY平面、又は、現時刻tにおける、前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、塑性域での現時刻tにおける前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの比Mt/κtと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの前記曲げモーメント及び前記曲率の組み合わせ、及び、前記時刻t+Δtの時点で前記油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記曲げモーメントの予測値Mpと前記曲率の予測値κpの組み合わせがプロットされたXY平面の少なくともいずれかを逐次表示する出力を制御する、出力制御装置。
[11]
油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで板状の被矯正材をプレスするプレス矯正方法であって、
前記プレス中の前記油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出する、変換ステップと、
前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの傾きを算出する傾き算出ステップと、
前記傾き算出部により算出された、前記曲率κtに対する前記曲げモーメントの実績値Mtの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定ステップと、
前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、前記曲げモーメントの予測値Mpと前記曲率の予測値κpを算出する変形量算出ステップと、
前記曲げモーメントの予測値Mpが前記被矯正材の変形開始時の前記曲げモーメントMiと等しくなるときの前記曲率の予測値κpを予測曲率κcとし、前記予測曲率κcと目標曲率κaとの差が所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定する加圧停止判定ステップと、
前記加圧停止判定ステップにおいて前記予測曲率κcと前記目標曲率κaとの差が所定の前記閾値Δκth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御ステップと、
を含み、
前記変形量算出ステップでは、前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpが算出される、又は、前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、現時刻tにおけるMt/κtと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpが算出される、プレス矯正方法。
[12]
油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで、当該ラムヘッドのストローク量を制御して板状の被矯正材をプレスする際に、
コンピュータを、
前記プレス中の前記油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出する、変換部と、
前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの傾きを算出する傾き算出部と、
前記傾き算出部により算出された、前記曲率κtに対する前記曲げモーメントの実績値Mtの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定部と、
前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、前記曲げモーメントの予測値Mpと前記曲率の予測値κpを算出する変形量算出部と、
前記曲げモーメントの予測値Mpが前記被矯正材の変形開始時の前記曲げモーメントMiと等しくなるときの前記曲率の予測値κpを予測曲率κcとし、前記予測曲率κcと目標曲率κaとの差が所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定する加圧停止判定部と、
前記加圧停止判定部により前記予測曲率κcと前記目標曲率κaとの差が所定の前記閾値Δκth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御部と、
として機能させ、
前記変形量算出部が、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出する、又は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、現時刻tにおけるMt/κtと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出するためのプログラム。
以上説明したように本発明によれば、プレス矯正において、所望の矯正量が得られるようなラムヘッドの目標ストローク量をより適切に決定することにより、より精度良く被矯正材を矯正することが可能になる。
プレス矯正時の被矯正材の形状の変化を概略的に示す図である。 F-S方式のプレス矯正方法におけるストローク量の決定方法について説明するための図である。 第1の実施形態に係るプレス矯正システムの概略構成を示す図である。 図3に示すラムヘッドが被矯正材の表面に接触している状態を示す斜視図である。 第1の実施形態に係るプレス矯正システムが有する制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。 同実施形態の制御装置が有する作図部の機能について説明するための図である。 同実施形態の制御装置が有する作図部、塑性域判定部及び変形量算出部の機能について説明するための図である。 同実施形態の制御装置が有する作図部及び変形量算出部の機能について説明するための図である。 同実施形態の制御装置が有する作図部及び変形量算出部の機能について説明するための図である。 目標矯正量Saの設定方法を説明するための被矯正材のXZ断面における表面高さ分布を示す図である。 同実施形態の制御装置が有する出力制御部の機能について説明するための図である。 第1の実施形態に係るプレス矯正方法の処理手順の一例を示すフロー図である。 一般のプレス矯正システムを用いて、一般のプレス矯正方法を実際に実行した結果得られたF-S線図である。 一般のプレス矯正システムを用いて、荷重センサをラムヘッドで直接プレスしたときの荷重センサによる測定値と油圧荷重値のF-S線図である。 図12に示すF-S線図を、摺動抵抗Prを用いて補正したF-S線図である。 同実施形態の制御装置が有する作図部の機能について説明するための図である。 変形例に係るプレス矯正方法の処理手順の一例を示すフロー図である。 被矯正材の表面高さhと曲率κとの関係を説明するための図である。 本発明の第2の実施形態に係るプレス矯正システムが有する制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。 変換部による曲げモーメント及び曲率の算出方法を説明するための図である。 プレス矯正時の曲げモーメントMと曲率κとの関係の一例を示すグラフ図である。 プレス矯正時の曲げモーメントMと曲率κとの関係の一例を示すグラフ図である。 同実施形態の制御装置が有する作図部、塑性域判定部及び変形量算出部の機能について説明するための図である。 同実施形態に係るプレス矯正方法の処理手順の一例を示すフロー図である。 第2の実施形態の変形例に係るプレス矯正方法の処理手順の一例を示すフロー図である。 本発明に係る制御装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(1.第1の実施形態)
(1-1.第1の実施形態に想到した背景)
本発明に係る第1の実施形態について説明するに先立ち、本発明の第1の実施形態をより明確なものとするために、本発明者らが本発明に想到した背景について説明する。なお、以下の説明では、一例として、被矯正材が板材である場合について説明する。
図1及び図2を参照して、プレス荷重とストローク量との関係に基づくプレス矯正方法の概要を説明する。なお、以下では、プレス荷重とストローク量との関係を、便宜的に、F-S関係と言うことがあり、F-S関係に基づくプレス矯正方法を、便宜的に、F-S方式のプレス矯正方法と言うことがある。図1は、プレス矯正時の被矯正材の形状の変化を概略的に示す図である。図2は、F-S方式のプレス矯正方法におけるストローク量の決定方法について説明するための図である。
図1に示すように、プレス矯正では、所定の間隔で設置されるシム板120間に架け渡されるように被矯正材2を設置し、当該被矯正材2のシム板120間の矯正対象部位をラムヘッド131でプレスすることにより、当該被矯正材2の形状が矯正される。以下の説明では、プレス方向(すなわち、鉛直方向)をZ軸方向と定義する。また、Z軸方向と互いに直交する方向であって、2つのシム板120の配列方向をX軸方向と定義する。また、X軸方向及びZ軸方向と互いに直交する方向をY軸方向と定義する。
図3及び図4を参照して後述するように、シム板120及びラムヘッド131は、Y軸方向に延伸する棒状の形状を有するため、図示する被矯正材2の断面(すなわち、X-Z平面での断面)における変形は、当該シム板120及びラムヘッド131が延伸している範囲においてはY軸方向において略一様(すなわち、Y軸方向におけるどの位置で当該断面を見ても、その形状が略同様)と近似することができる。従って、プレス矯正において矯正の対象としている「形状」とは、被矯正材2の、このX-Z平面での断面の形状であるとみなすことができる。以下の説明において、矯正の対象という文脈で被矯正材2の形状に触れている部分については、特に記載のない限りは、当該形状は、被矯正材2のX-Z平面での断面の形状のことを意味しているものとする。
図1では、上に向かって凸形状(状態A)の被矯正材2を、ラムヘッド131でプレスすることにより、板面が水平な形状(状態A)になるように矯正する場合における、被矯正材2の変形の様子を示している。図1に示すように、板面が水平な形状になるように被矯正材2を矯正する場合には、板面が水平になった状態よりも下方までラムヘッド131を押し込み(状態A)、その後除荷する必要がある。これは、金属材の変形における弾性復元(スプリングバック)を考慮しているからである。このように、最終的に所望の形状を得るためのラムヘッド131の目標ストローク量を適切に決定するためには、スプリングバック量を考慮する必要がある。なお、本明細書では、プレス矯正におけるラムヘッド131のストローク量を、ラムヘッド131の下端が被矯正材2と接触してから除荷するまで(下死点まで)の当該ラムヘッド131の下方への移動量として定義する。
所望の形状を得るための、スプリングバック量を考慮した目標ストローク量は、被矯正材2をラムヘッド131でプレスした際のプレス荷重とストローク量との関係を示すグラフ図、すなわち、荷重-ストローク線図(F-S線図)から決定することができる。図2には、被矯正材2についてのF-S線図を示している。図中の点A~Aは、図1における状態A~Aに対応している。
図2に示すように、ラムヘッド131を被矯正材2に対して押し込んでいくと、略一定の傾き(割合)で、プレス荷重及びストローク量が増加していく。この領域は、被矯正材2が弾性変形している領域(弾性域)である。弾性域で除荷した場合には、F-S線図に従って元の状態Aまで被矯正材2の形状は戻る。
更にラムヘッド131を押し込んでいくと、ある点でF-S線図の傾きが変化する。この傾きが変化した以降の領域は、被矯正材2が塑性変形している領域(塑性域)である。塑性域で除荷した場合には、被矯正材2の形状は、その除荷した点(図示する例では点A)での形状に変形するのではなく、その除荷した点Aから、弾性域におけるF-S線図の傾きに従って、元の状態に近付くように変形する。すなわち、弾性復元する。ストローク量からスプリングバック量を差し引いた値が、最終的な被矯正材2の変形量となる。
図2に示すように、スプリングバック量は、除荷した点Aにおけるプレス荷重及びストローク量の値と、弾性域におけるF-S線図の傾きが分かれば、計算することができる。従って、図2に示すようなF-S線図が得られていれば、塑性域の各点におけるスプリングバック量を計算することができるので、このスプリングバック量を考慮して、所望の目標矯正量が得られるような目標ストローク量を決定することが可能となる。
このように、F-S方式のプレス矯正方法によれば、F-S線図(すなわち、F-S関係)に基づいて、目標ストローク量を適切に決定することができるため、より高精度に矯正を行うことが可能となる。以下、本発明者らが想到した本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(1-2.プレス矯正システムの構成)
図3及び図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係るプレス矯正システムの構成について説明する。図3は、第1の実施形態に係るプレス矯正システム10の概略構成を示す図である。図4は、図3に示すラムヘッド131が被矯正材2の表面に接触している状態を示す斜視図である。
図3を参照すると、第1の実施形態に係るプレス矯正システム10は、被矯正材2をプレスするプレス装置100と、制御装置200と、を備える。以下にプレス装置100及び制御装置200を詳細に説明する。
(1-2-1.プレス装置)
プレス装置100は、プレスする際の基台となるベッド110と、ベッド110上に所定の間隔を有して載置される2つのシム板120と、ベッド110の上方に配置される押圧機構130と、を備える。
シム板120は、例えば鋼等、十分な硬度を有する材料によって形成され、Y軸方向に延伸する、断面略矩形の棒状の形状を有する。2つのシム板120の間隔は、適宜調整可能である。
押圧機構130は、Z軸方向(鉛直方向)に移動可能なシリンダー132と、シリンダー132の下端に取り付けられるラムヘッド131と、から構成される。ラムヘッド131は、例えば鋼等、十分な硬度を有する材料によって形成され、Y軸方向に延伸する、断面略矩形の棒状の形状を有する。シリンダー132は、油圧によって、制御装置200からの制御により、指定した移動量だけ鉛直方向に移動可能に構成される。
なお、図示は省略しているが、プレス装置100には、オペレータが各種の操作入力を行うための入力装置、及び操作のためのガイダンス等を出力する出力装置が設けられることがある。例えば、当該入力装置は、タッチパネル、スイッチ及びレバー等であり、オペレータは、当該入力装置を介して、シリンダー132の移動についての指示(プレスの開始、プレスの停止(すなわち、除荷)等)を入力することができる。当該指示に基づいて、制御装置200がシリンダー132を移動させる。
また、当該出力装置は、例えば、ディスプレイ装置及びランプ等の表示装置や、スピーカ等の音声出力装置である。例えば、当該出力装置は、制御装置200からの制御によって、プレス矯正に係るガイダンス(例えば、被矯正材2の設置が終わりプレスを開始してよい旨のガイダンスや、プレスを終了する(すなわち、除荷する)旨のガイダンス等)を出力する。当該ガイダンスに基づいて、オペレータが上記入力装置を介した指示の入力を行うことができる。
プレス矯正を行う際には、被矯正材2が、例えば、ローラコンベアによって搬送され、ベッド110上の2つのシム板120に架け渡されるように設置される。この際、被矯正材2の矯正対象部位が2つのシム板120の間であってラムヘッド131の直下に位置するように、被矯正材2が設置される。ローラコンベアの駆動は、後述する制御装置200によって制御される。なお、ローラコンベアの駆動は、上記入力装置を介したオペレータによる指示により、制御装置200によって制御されてもよい。この状態で、シリンダー132が下方に移動することにより、ラムヘッド131が被矯正材2を押圧し、当該被矯正材2の形状が矯正されることとなる(図4を参照)。
プレス装置100のシリンダー132には、油圧荷重検出器(図示せず)が設けられており、当該油圧荷重検出器によって、シリンダー132によって被矯正材2に負荷される荷重、すなわち油圧荷重が検出される。この油圧荷重の検出値は、制御装置200に送信される。また、シリンダー132の移動量(ストローク量)の実績値も、制御装置200に送信される。この際、シリンダー132のストローク量の実績値のゼロ点は任意に設定可能であってよく、例えば、ラムヘッド131の下端が被矯正材2の表面に接した点に設定される。ラムヘッド131の下端が被矯正材2の表面に接したタイミングは、油圧荷重が立ち上がったタイミングとして同定することができる。シリンダー132のストローク量の実績値のゼロ点をこのように設定することにより、制御装置200は、ストローク量の実績値を取得していることになる。このように、制御装置200は、油圧荷重の実績値及びストローク量の実績値を取得可能に構成される。
(1-2-2.制御装置)
続いて、図5~11を参照して、制御装置200を詳細に説明する。図5は、本実施形態に係るプレス矯正システム10が有する制御装置200の機能構成の一例を示すブロック図である。図6は、本実施形態の制御装置200が有する作図部210の機能について説明するための図である。図7は、本実施形態の制御装置200が有する作図部210、塑性域判定部230及び変形量算出部240の機能について説明するための図である。図8及び図9は、本実施形態の制御装置200が有する作図部210及び変形量算出部240の機能について説明するための図である。図10は、目標矯正量Saの設定方法を説明するための被矯正材のXZ断面における表面高さ分布を示す図である。図11は、本実施形態の制御装置200が有する出力制御部260の機能について説明するための図である。
制御装置200は、図5に示すように、プレス装置100を制御する装置である。制御装置200は、その機能として、作図部210と、傾き算出部220と、塑性域判定部230と、変形量算出部240と、加圧停止判定部250と、出力制御部260と、記憶部270と、通信部280と、を有する。
作図部210は、プレス中に取得されるシリンダー132による油圧荷重の実績値Ptとストローク量の実績値Stの組み合わせをXY平面上に逐次プロットする。詳細には、作図部210は、油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stをプレス装置100から取得し、時刻tにおける油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stの組み合わせを、縦軸を油圧荷重P、横軸をストローク量SとするXY平面上にプロットする。これにより、時刻tまでの油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stの関係を示すF-S線図が得られる。例えば、図6(A)には、XY平面上に、時刻t1までの油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stの関係が実線で示されており、図6(B)には、時刻t1より後の時刻である時刻t2までの油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stの関係が実線で示されている。このように、作図部210は、油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stの組み合わせを逐次プロットすることで、時刻tまでの油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stの関係を示すF-S線図を作成する。
傾き算出部220は、ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの傾きを算出する。傾き算出部220は、例えば、プレス中の油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptとストローク量の実績値Stの組み合わせが取得される毎に前記ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの傾きを算出する。傾き算出部220は、詳細には、所定の時間間隔ΔTの間に取得したプレス中の油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stに対して、当該傾きetを逐次算出する。また、作図部210は、時間間隔ΔTごとに、それまでに取得したプレス中の油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stに対して、当該傾きetを逐次算出してもよい。すなわち、傾き算出部220は、図7に示すように、油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stの時間間隔ΔTごとに求めた傾きetを、順に傾きe1、e2、・・・として記憶する。傾き算出部220は、算出した傾きについての情報を、塑性域判定部230及び変形量算出部240に提供する。なお、傾き算出部220は、当該傾きetを、油圧荷重の増分ΔPごとに、あるいはストローク量の増分ΔSごとに算出してもよい。
傾き算出部220は、傾きetに基づいて、油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stから弾性域のF-S線図の傾きEを算出する。ここで、塑性域判定部230の機能の説明とともに、傾き算出部220による傾きEの算出方法を説明する。塑性域判定部230は、傾き算出部220によって算出されたストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形(塑性変形)か否かを判定する。具体的には、塑性域判定部230は、F-S線図の傾きetが弾性域と塑性域とで異なることを利用して、逐次算出されるF-S線図の傾きetから当該傾きの変化量の絶対値Δeを算出し、当該変化量の絶対値Δeが所定の閾値Δethよりも大きくなった場合に、被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定する。図7に示す例であれば、F-S線図の傾きetがenになった段階で、塑性域判定部230は、被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定する。塑性域判定部230は、判定結果についての情報を、変形量算出部240に提供する。なお、閾値Δethは、例えばプレス矯正を行っている被矯正材2と同種の金属材に対する過去に行われたプレス矯正の実績値等から、弾性域と塑性域を好適に区別し得るような値として適宜設定され得る。
被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定されると、傾き算出部220は、弾性域においてそれまでに取得された傾きe1、e2、・・・、e(n-1)の平均値から、弾性域の傾きEを算出する。具体的には、当該弾性域での傾きEは、下記式(101)に従って算出され得る。ただし、弾性域での傾きEを求める方法はかかる例に限定されず、例えば、当該弾性域での傾きEは、弾性域におけるあるタイミングで算出された傾きen(例えば、E=e(n-1)、すなわち傾きの変化量の絶対値Δeが閾値Δethよりも大きくなった直前のタイミングで算出された傾きe(n-1))として設定されてもよい。ここまで、傾き算出部220による傾きEの算出方法を説明した。
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変形量算出部240は、塑性域判定部230により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stと、弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の油圧荷重の予測値Ppとストローク量の予測値Spを算出する。詳細には、変形量算出部240は、塑性域判定部230によって被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定された場合に、現時点でのプレス荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stと、傾き算出部220によって算出されたF-S線図の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで油圧荷重Pを除荷した場合の時刻tから油圧荷重が0になる時刻までの油圧荷重とストローク荷重とを算出する。具体的には、弾性域でのF-S線図の傾きEは傾き算出部220によって算出されているため、変形量算出部240は、除荷時の傾きE’をE’=Eとして求める。
また、現在の被矯正材2の状態に対応するF-S線図上の点は現時点での油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stによって同定される。従って、変形量算出部240は、これらの情報に基づいて、現時刻tで油圧荷重を除荷した場合の時刻tから油圧荷重が0になるまでの油圧荷重とストローク荷重とを算出する。なお、以下では、変形量算出部240により予測された油圧荷重を油圧荷重予測値Ppと記載し、変形量算出部240により予測されたストローク量をストローク量予測値Spと記載することもある。
変形量算出部240によって算出された油圧荷重予測値Pp及びストローク量予測値Spの組み合わせのうち、油圧荷重予測値Ppが被矯正材2の変形開始時の油圧荷重Piと等しくなるときのストローク量予測値Spを予測矯正量Scとする(なお装置の構成上、変形開始時の油圧荷重はゼロではない所定の値になる)。図7では、現在の被矯正材2の状態が点B、B、Bのいずれかに示す状態であれば、当該点B、B、Bから除荷時の傾きE’に従って除荷し、油圧荷重予測値Ppと被矯正材2の変形開始時の油圧荷重Piとが等しくなった点C、C、Cにおけるストローク量に対応する値S、S、Sが、それぞれ、当該点B、B、Bにおいて除荷した場合の予測矯正量Scになる。
現時刻tで油圧荷重Pを除荷した場合の時刻tから油圧荷重が0になるまでの油圧荷重予測値Pp及びストローク量予測値Spの組み合わせは、作図部210によってXY平面上にプロットされてもよい。
さらに、変形量算出部240は、塑性域判定部230によって被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定された場合に、現時刻tにおける油圧荷重実績値Pt及びストローク量実績値Stと、現時刻tにおける傾きPt/Stと、傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで油圧荷重Pを除荷した場合の時刻t+Δtから油圧荷重が0になる時刻までの油圧荷重とストローク量とを算出してもよい。このとき現時刻tにおける傾きPt/Stは、例えば、時刻t-ΔTから現時刻tまでの油圧荷重実績値Pt及びストローク量実績値Stとから求める。詳細には、現時刻tにおける被矯正材2の状態が、図8に示す点Dに示される状態である場合、当該点Dにおける傾きPt/Stで当該点DからF-S線図を外挿する。外挿した直線(図8における点線)に従って被矯正材2が変形すると仮定し、時刻t+Δtにおける被矯正材2の状態を示す点Dにおいて除荷されるものとする。そして、点Dから除荷時の傾きE’をE’=Eとして、時刻t+Δtから油圧荷重が0になる時刻までの油圧荷重とストローク量とを算出する。これにより、現時刻tからΔtだけ経過した後に除荷した場合の矯正量が予測可能であるため、オペレータがプレス装置100を操作して加圧を停止する場合、より高精度で被矯正材を矯正することが可能となる。なお、ΔT及びΔtは、例えばプレス矯正を行っている被矯正材2と同種の金属材に対する過去に行われたプレス矯正の実績値やプレス機のストローク速度、プレス装置100の制御応答速度等から、最適な値として適宜設定され得る。
また、変形量算出部240は、塑性域での現時刻tにおける油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stと、現時刻tにおけるPt/Stと、に基づいて、時刻t+Δtで油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の油圧荷重の予測値Ppとストローク量の予測値Spを算出してもよい。変形量算出部240は、例えば、過去の操業実績から、プレス条件(例えば、プレス前の被矯正材の形状や、被矯正材の材質、シム板間の間隔等)と、その際の塑性域での傾きPt/St(G)と、の関係を取得して、当該関係をニューラルネットワークに学習させておき、プレス矯正を行う際に、当該プレス矯正におけるプレス条件に基づいて、当該ニューラルネットワークが当該プレス条件に対応した傾きPt/St(G)を求める。そして、当該傾きPt/St(G)と、現時刻tにおける油圧荷重実績値Pt及びストローク量実績値Stと、に基づいて、当該点Dにおける傾きPt/St(G)で当該点DからF-S線図を外挿する。外挿した直線(図9における点Dから延びた二点鎖線)に従って被矯正材2が変形すると仮定し、時刻t+Δtにおける被矯正材2の状態を示す点Dにおいて除荷されるものとする。点Dから除荷時の傾きE’をE’=Eとして、時刻t+Δtから油圧荷重が0になる時刻までの油圧荷重とストローク量とを算出してもよい。これにより、図9に示すように、より高精度で、将来の被矯正材2の状態を把握することが可能となり、その結果、より一層正確な予測矯正量Spを算出することが可能となる。
作図部210は、例えば、図8又は図9に示すように、現時刻tにおける油圧荷重実績値Pt及びストローク量実績値Stと、現時刻tにおける塑性域での傾きPt/Stと、に基づいて、算出された油圧荷重予測値Pp及びストローク量予測値Spの組み合わせをXY平面上にプロットしてもよい。また、作図部210は、現時刻tにおける、油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、塑性域での傾きPt/Stと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの油圧荷重及びストローク量の組み合わせ、及び、時刻t+Δtで油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の油圧荷重の予測値Ppとストローク量の予測値Spの組み合わせをXY平面上に逐次プロットしてもよい。
加圧停止判定部250は、油圧荷重の予測値Ppが被矯正材の変形開始時の前記油圧荷重Piと等しくなるときのストローク量の予測値Spを予測矯正量Scとし、予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定する。これにより、変形量算出部240によって算出された現時点で除荷した場合の変形量が、矯正後に所望の形状を得るための目標範囲に含まれるかどうかが判定される。ここで、目標範囲は、目標矯正量Saを含む所定の範囲として適宜設定される。目標矯正量Saは以下のように定められる。矯正前の被矯正材2の表面の鉛直方向の高さ分布hを、レーザー変位計などを用いて被矯正材2の面内に亘って測定する。図10に示すように、あるXZ断面における表面高さ分布h(x)と被矯正材2が平坦な状態での表面高さh0との偏差が、製品ごとに定められた基準値ΔSthを超過している箇所が矯正対象位置となり、その矯正対象位置における偏差が目標矯正量Saとなる。また目標範囲は、製品ごとに定められる平坦な状態からの高さ偏差の基準値ΔSthに基づいて、矯正後の被矯正材2の形状が目標とする形状に対して許容され得る範囲に収まるような、変形量の範囲として適宜設定されてよい。理想的には、予測矯正量Scと目標矯正量Saが一致した時点で除荷した場合に実際の矯正量が目標矯正量Saと一致することが好ましい。しかしながら、予測矯正量Scは、油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stの取得タイミングに応じて所定の間隔で算出されるため、実際には、予測矯正量Scと目標矯正量Saが一致した時点で除荷した場合、実際の矯正量が目標矯正量Saと一致することは難しい。さらには、停止信号がプレス装置100に入力されてから、実際にストロークが停止するまでのタイムラグも生じ得る。従って、実際の矯正量が目標矯正量Saから許容される範囲に収まるような閾値ΔSthを定める。そして、予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下であれば、実際の矯正量を目標矯正量Saから許容される範囲内とすることが可能となる。
出力制御部260は、加圧停止判定部250の判定結果に応じて、所定の信号の出力を制御する。出力制御部260は、例えば、加圧停止判定部250が予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが閾値ΔSth以下であると判定したときに、プレス装置100に負荷を停止する停止信号を出力する。停止信号が入力されたプレス装置100は、被矯正材2への負荷を停止する。
出力制御部260は、加圧停止判定部250が予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが閾値ΔSth以下であると判定したときに、現時点で除荷した場合の変形量が目標範囲に含まれる旨の情報を取得したタイミングで、上述したプレス矯正システム10に備えられる出力装置の駆動を制御し、除荷すべき旨、すなわちプレスを終了すべき旨のガイダンスを出力してもよい。この場合、当該ガイダンスを受けたオペレータがプレスを終了する旨の指示を入力することにより、そのタイミングでプレスが終了され、除荷後の変形量が目標矯正量Saとなるような、所望の形状に被矯正材2が矯正されることとなる。
また、出力制御部260は、別途設けられ得る表示装置300に、作図部210、410により作成される各種F-S線図の表示を制御する制御信号を出力する。出力制御部260は、例えば、シリンダー132に備えられたラムヘッド131による板状の被矯正材2のプレス中に取得されるラムヘッド131の現時刻tにおける油圧荷重の実績値Ptとストローク量の実績値Stの組み合わせ、及び、油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、弾性域の傾きEと、に基づいて予測された、現時刻tにおいて油圧荷重が除荷されたときの現時刻t以降の油圧荷重の予測値Ppとストローク量の予測値Spの組み合わせがプロットされたXY平面を逐次表示する出力を制御してもよい。当該制御信号が入力された表示装置300は、図6に示したように、作図部210、410により逐次プロットされて描かれるF-S線図、及び最新の時刻において除荷した際の除荷直線をリアルタイムに表示してもよい。当該制御信号が入力された表示装置300は、図7に示したように、最新の時刻における除荷直線のみならず、それまでに取得された任意の時刻における除荷直線を表示してもよい。また、当該制御信号が入力された表示装置300は、任意の状態、例えば、図8又は図9に示す点Dでの塑性域での傾きPt/Stに基づいた外挿線を表示してもよいし、外挿線上の任意の点D又は点Dにおける除荷直線を表示してもよい。当該制御信号が入力された表示装置300は、更に、図11に示したように、目標矯正量Saまたは予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSを表示してもよい。また、出力制御部260は、変形量算出部240により算出された現時刻t以降の油圧荷重の予測値Ppとストローク量の予測値Spがプロットされたグラフを逐次表示する出力を制御してもよい。また、出力制御部260は、変形量算出部240により算出された、現時刻tにおける、油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、塑性域での現時刻tにおけるストローク量の実績値Stに対する油圧荷重の実績値Ptの比Pt/Stと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの油圧荷重及びストローク量の組み合わせ、及び、時刻t+Δtの時点で前記油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の油圧荷重の予測値Ppとストローク量の予測値SpがプロットされたXY平面を逐次表示する出力を制御してもよい。また、出力制御部260は、油圧荷重の予測値Ppが被矯正材2の変形開始時の油圧荷重Piと等しくなるときのストローク量の予測値Spを逐次表示する出力を制御してもよい。
出力制御部260は、上記の出力の少なくともいずれかを制御してもよいし、複数の出力を制御してもよい。出力制御部260は、例えば、上記の、油圧シリンダーに備えられたラムヘッドによる板状の被矯正材のプレス中に取得されるラムヘッドの現時刻tにおける油圧荷重の実績値Ptとストローク量の実績値Stの組み合わせ、及び、油圧荷重の実績値Ptと、前記ストローク量の実績値Stと、弾性域の傾きEと、に基づいて予測された、現時刻tにおいて油圧荷重が除荷されたときの現時刻t以降の油圧荷重の予測値Ppとストローク量の予測値Spの組み合わせがプロットされたXY平面、又は、現時刻tにおける、油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、塑性域での現時刻tにおけるストローク量の実績値Stに対する油圧荷重の実績値Ptの比Pt/Stと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの油圧荷重及びストローク量の組み合わせ、及び、時刻t+Δtの時点で油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spの組み合わせがプロットされたXY平面の少なくともいずれか逐次表示する出力を制御してもよい。
出力制御部260が表示装置300にF-S線図を表示する出力を行う場合、上述した表示のそれぞれは、互いに可能な範囲で組み合わされてよい。オペレータが表示装置300に表示されたF-S線図を確認しながらプレス矯正システム10を操作する場合、プレス矯正が行われている被矯正材2の状態をより正確に把握することができ、被矯正材2の矯正量をより高い精度で目標の矯正量とすることが可能となる。なお、本発明に係る出力制御装置は、上述した出力制御部260の機能を有する装置である。
記憶部270は、作図部210、傾き算出部220、塑性域判定部230、変形量算出部240、加圧停止判定部250または出力制御部260が、それぞれの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、又は、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。この記憶部270に対して、作図部210、傾き算出部220、塑性域判定部230、変形量算出部240、加圧停止判定部250または出力制御部260が、自由にデータのリード/ライト処理を行うことが可能である。
通信部280は、プレス装置100又は他の装置との間でデータの送受信を行う。通信部280は、例えば有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、Wi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、近距離/非接触通信等の方式で、プレス装置100又は他の装置、例えば、表示装置300と直接またはネットワークアクセスポイントを介して通信する。
以上、プレス矯正システム10の概略構成について説明した。
(1-3.プレス矯正方法)
続いて、図12を参照して、第1の実施形態に係るプレス矯正方法の処理手順について説明する。図12は、本実施形態に係るプレス矯正方法の処理手順の一例を示すフロー図である。なお、図12に示す各処理は、図5に示す制御装置200によって実行される処理に対応している。各処理の内容について、図5に示す各機能における処理として既に説明している事項については、ここではその詳細な説明を省略する。
図12を参照すると、本実施形態に係るプレス矯正方法では、まず、制御装置200がプレス装置100から油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stを取得する(ステップS101)。次に、作図部210が油圧荷重実績値Pt及びストローク量実績値Stの組み合わせをXY平面上にプロットする(ステップS103)。続いて、傾き算出部220は、油圧荷重実績値Pt及びストローク量実績値StからF-S線図の傾きetを算出する(ステップS105)。ステップS105は、本発明に係る傾き算出ステップに対応する。
ステップS105の後、塑性域判定部230は、傾きetに基づいて、現在の被矯正材2の変形が塑性域における変形(塑性変形)か否かを判定する(ステップS107)。具体的には、塑性域判定部230は、算出された傾きetに基づいて、当該傾きの変化量の絶対値Δe(=|et-e(t-1)|)が、所定の閾値Δethよりも大きいか否かを判定する。ステップS107では、最新のタイミングで取得された油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stに基づく傾きetと、1つ前のタイミングで取得された油圧荷重の実績値及びストローク量の実績値に基づく傾きe(t-1)との差分の絶対値を取ることにより、傾きの変化量の絶対値Δeが算出され、当該Δeが閾値Δethと比較される。ステップS107における処理は、図5に示す塑性域判定部230によって実行される処理に対応している。すなわち、ステップS107は、本発明に係る塑性域判定ステップに対応する。
ステップS107において、傾きの変化量の絶対値Δeが閾値Δeth以下であると判定された場合(ステップS107/NO)、現在の被矯正材2の変形が弾性域での変形であることを示しているため、この場合には、ステップS101に戻り、ステップS101~ステップS107における処理を繰り返す。
一方、ステップS107において、傾きの変化量Δeが閾値Δethよりも大きいと判定された場合(ステップS107/YES)、ステップS109に進む。ステップS109では、変形量算出部240が、現時点での油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stと、傾き算出部220によって算出されたF-S線図の弾性域の傾きEと、に基づいて、油圧荷重予測値Ppとストローク量予測値Spとを算出する。弾性域での傾きEを、傾きの変化量の絶対値Δeが閾値Δethよりも大きくなったタイミングまでに求められた傾きe1、e2、・・・、e(n-1)の平均値として設定する。変形量算出部240は、算出した現時点で除荷した場合の予測矯正量Scについての情報を、加圧停止判定部250に提供する。ステップS109は、本発明に係る変形量算出ステップに対応する。
ステップS109の後、加圧停止判定部250は、予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定する(ステップS111)。予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth超である場合(ステップS111/NO)、加圧停止判定部250は、変形量算出部240にその旨の情報を提供し、変形量算出部240は、次のタイミングで取得された油圧荷重実績値Pt及びストローク量実績値Stに基づいて、ステップS101以降の処理を、予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下と判定されるまで繰り返す。そして、予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下と判定された場合(ステップS111/YES)、加圧停止判定部250は、その旨の情報を出力制御部260に提供する。なお、ステップS111における処理は、図5に示す加圧停止判定部250によって実行される処理に対応している。すなわち、ステップS111は、本発明に係る加圧停止判定ステップに対応する。
予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下と判定された後、出力制御部260は、プレス装置100による被矯正材2への負荷を停止する(ステップS113)。ステップS113は、本発明に係る出力制御ステップに対応する。
なお、図12に示した処理手順はあくまでも一例であり、図12に示した各ステップの順序が可能な範囲で前後してもよい。また、ステップS103は、省略されてもよい。
以上、第1の実施形態に係るプレス矯正方法の処理手順について説明した。
(1-4.第1の実施形態のまとめ)
第1の実施形態では、制御装置200は、リアルタイムで、すなわち被矯正材2に対してラムヘッド131をプレスしている間に逐次、油圧荷重の実績値及びストローク量の実績値を取得する。そして、制御装置200は、取得した油圧荷重及びストローク量の関係(すなわち、F-S関係)に基づいて、プレス中にスプリングバック量を逐次計算し、所望の形状が得られるような、すなわちスプリングバック量を考慮した矯正量(すなわち、プレス完了後の被矯正材2の変形量)が目標矯正量と一致するような、除荷タイミングを決定する。そして、当該除荷タイミングに達した時点で、プレスを終了する旨のガイダンスを上記出力装置に出力させる。
このように、第1の実施形態では、現在まさに矯正を行っている被矯正材2についてのF-S関係をリアルタイムで取得し、当該F-S関係に基づいて、矯正後に所望の形状を得るための除荷タイミング、すなわち目標ストローク量が決定される。従って、所望の形状を得るための目標ストローク量を、矯正対象の金属材自体の特性に基づいてより適切に決定することができるため、被矯正材2をより精度良く矯正することが可能になる。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、プレス中に、現在実際にプレスを行っている被矯正材2についてのF-S関係を逐次取得し、当該F-S関係に基づいて、当該被矯正材2についての目標ストローク量を決定する。従って、上記特許文献1、2に記載の技術のように事前に取得されたF-S線図に基づいて目標ストローク量を決定する方法に比べて、矯正後の形状の精度を格段に向上させることができる。
また、上記特許文献1、2に記載の技術では、プレス矯正をこれから行う被矯正材2に対応する、同種の金属材に対するF-S線図を事前に取得しなければならないため、被矯正材2の種類が多岐に渡る場合には、対応することが困難であった。これに対して、第1の実施形態では、実際にプレスを行っている被矯正材2におけるF-S関係をプレス中に逐次取得するため、棒材、管材又は板材等の被矯正材2の形状や、被矯正材2の金属種等によらず、多様な金属材の矯正に対応することが可能になる。
ここで、従来、プレス矯正における目標ストローク量等のプレス条件の決定は、作業者によって手作業で測定された矯正前の被矯正材2の形状に基づいて、当該作業者によって経験則的に決定されていた。このような方法では、作業者がプレス中の被矯正材2の変形挙動を間近で観察しながらプレス条件を決めるため当該作業者に危険を及ぼす恐れがあること、被矯正材2の形状を測定する作業やその後のプレス条件を決定する作業を人手で行っていることによりプレス矯正工程に時間が掛かる恐れがあること、及び作業者の技量によってプレス条件に差が出てしまうため製品の品質にばらつきが生じる恐れがあること等が懸念されていた。
これに対して、第1の実施形態によれば、目標ストローク量を事前に決定しておく必要がなく、当該目標ストローク量は、F-S線図に基づいてプレス中に自動的に決定される。従って、作業の安全性の向上、操業の効率化、及び作業ばらつきの低減(すなわち、操業及び製品品質の安定化)を図ることが可能となる。
(2.第1の実施形態の変形例)
(2-1.第1の実施形態の変形例に想到した背景)
変形例について説明するに先立ち、本発明者らが当該変形例に想到した背景について説明する。本変形例は、矯正の精度を更に向上させるものである。以下、本発明者ら得た矯正の精度を更に向上させるための知見について詳細に説明する。
図13は、一般のプレス矯正システムを用いて、一般のプレス矯正方法を実際に実行した結果得られたF-S線図である。図13では、横軸にプレスを行っている最中におけるストローク量を取り、縦軸にプレスを行っている最中における油圧荷重を取り、両者の関係をプロットしている。
図13において、点Fは除荷した点を示している。この点Fから、弾性域でのF-S線図の傾きE(図中点線で示す)に沿って油圧荷重がプレス前の基準値(装置の構成上、図中破線で示すようにゼロではない所定の値になる)まで下がった点を点Gとする。一般のF-S方式のプレス矯正方法の考え方によれば、点Fで除荷した場合、この点Gに対応するストローク量(すなわち、図中のOGの長さに対応する量)だけプレス後の被矯正材2が変形するはずである(逆に言えば、図13に示すF-S線図が得られたプレス矯正では、このOGの長さに対応する量だけプレス後の被矯正材2を変形させることを目的として、プレス中にリアルタイムでF-S線図を取得しながら、このOGの長さに対応する矯正量を得るための除荷する点として点Fを決定し、当該点Fで除荷したこととなる)。
しかしながら、図13に示すように、実際には、矯正量は、点Gよりもストローク量の大きい点Hとなった。つまり、図13に示す結果では、一般のF-S方式のプレス矯正方法において、被矯正材2の矯正量の予測に誤差が生じており、本来得たいはずのOGの長さに対応する矯正量よりも大きい、OHの長さに対応する矯正量だけ、被矯正材2が変形してしまったことになる。
本発明者らは、このような誤差が生じた原因について考察し、図13から、除荷時におけるF-S線図の傾きE(図中一点鎖線で示す)が、負荷時の弾性域におけるF-S線図の傾きEと異なっている現象が原因であると考えた。
図13のF-S線図は油圧荷重を用いて作図している。油圧荷重は、プレス機の油圧回路内に設けられた圧力計で測定した圧力値から算出されるため、シリンダ内の圧力を正確に反映していない可能性がある。すなわち算出した油圧荷重が誤差を含む可能性がある。
そこでベッドの上に荷重センサ(ロードセル)を配置し、荷重センサをラムヘッドで直接プレスしたときの荷重について荷重センサで測定した値と油圧荷重値の比較を行った。図14は、一般のプレス矯正システムを用いて、荷重センサをラムヘッドで直接プレスしたときの荷重センサによる測定値と油圧荷重値のF-S線図である。図14のように両者は、負荷時と除荷時いずれも差が生じていることが明らかとなったため、油圧荷重が荷重センサの測定値に一致するように、負荷時と除荷時の油圧荷重に対して式(102)と式(103)でそれぞれ補正を行った。
Pt’=Pt+Pm(I) …式(102)
Pt’=Pt+Pm(II) …式(103)
ここで、
Pt’:被矯正材に作用する荷重の算出値(作用荷重)
Pt:油圧荷重
Pm(I):負荷時の油圧荷重の補正量
Pm(II):除荷時の油圧荷重の補正量
ここで荷重誤差Pm(I)とPm(II)は油圧荷重Ptの関数f1(Pt)とf2(Pt)としてそれぞれ下記式(104)、(105)のように定式化した。
Pm(I)=f1(Pt) …式(104)
Pm(II)=f2(Pt) …式(105)
なお、負荷時と除荷時において、荷重センサ測定値と油圧荷重との誤差挙動が異なるのは設備の構成に依存するため、負荷時と除荷時の補正量は等しくなる場合も生じ得る。すなわちPm(I)=Pm(II)となる場合も生じ得る。
油圧荷重の補正処理を行った結果を、図15に示す。図15は、図13に示すF-S線図を、荷重センサによって測定した荷重値に基づき式(102)と式(103)を用いて補正したF-S線図である。なお、図15において、点Fと点F’との間(すなわち、除荷直後の油圧荷重の急激な低下に対応する区間)については、上記の補正処理を行うと、F-S線図が不連続になってしまうため、ここでは図示を省略している。
図15に示すように、負荷時の弾性域での傾きE(図中点線で示す)と、除荷時の傾きE’(図中一点鎖線で示す)と、を比較すると、両者がほぼ同じ傾きになっていることが分かる。つまり、すなわちF-S線図における負荷時の弾性域における傾きEと除荷時の傾きE’との不一致についても、ほぼ解消していると言える。
このように、図15に示す結果から、油圧荷重の算出値の誤差が被矯正材2の矯正量の予測に誤差を引き起こしている原因であり得るとの本発明者らによる検討は、妥当なものであると考えられる。
なお作用荷重Pt’を直接測定し、その測定値を用いてF-S関係を取得すれば、油圧荷重誤差が含まれていない、図15に示すようなF-S線図と同様のものを作成することが可能になる。作用荷重Pt’をより直接的に測定するためには、例えば、ひずみセンサ等の荷重センサをラムヘッド131に取り付ける方法が考えられる。しかしながら、プレス装置においては、一般的に、作用荷重Pt’を直接測定可能に構成されているものは少なく、油圧荷重Ptを測定可能に構成されているものが多い。従って、プレス装置において、作用荷重Pt’を直接測定し、その測定値を用いて求めたF-S関係に基づいて目標ストローク量を算出するシステムを構築しようとすると、ひずみセンサ等の荷重センサを設置する作業、及び当該荷重センサの保守、点検を行う作業等が発生し、コストが増大化し得る。よって、既存の設備を利用することによりコストの増加を抑えつつ、矯正の精度をより向上させるためには、本変形例のように、油圧荷重誤差をあらかじめ算出し、算出した油圧荷重誤差によって油圧荷重Ptを補正してF-S関係を求める方法がより好ましいと考えられる。なお、この際、上述したように、油圧荷重Ptの誤差を取得するために、荷重センサをラムヘッド131に取り付けて作用荷重Pt’を直接測定する方法も、当該荷重センサの取り付けが一時的なものであり、当該荷重センサの保守、点検を長期的に行う必要がないことから、コストの大幅な増加を招くことがないため、有効であると考えられる。
また、当該F-S線図を用いた被矯正材2の矯正量の予測値(図15に示すOG間の長さ)の、実際の矯正量(図15に示すOH間の長さ)に対する誤差も、図13に示すF-S線図における当該誤差に比べて、格段に小さくなっている。このことは、一般のF-S方式のプレス矯正方法において、油圧荷重Ptに基づいて得られたF-S線図を、荷重センサによって測定した荷重値を用いて補正することにより、その矯正の精度をより向上させることができることを示している。かかる補正は、第1の実施形態に係るプレス矯正方法にも適用可能である。すなわち、油圧荷重実績値Ptを荷重センサによって測定した荷重値に基づき補正して被矯正材2に作用する荷重(作用荷重)を算出し、作用荷重Pt’とストローク量実績値Stとを用いた作用荷重-ストローク線図を作図する。そして、第1の実施形態における油圧荷重Ptとストローク量Stの傾きに替えて現時刻tにおける前記作用荷重Pt’とストローク線図Stの傾きに基づいて、現時刻tで油圧荷重Pを除荷した場合の時刻tから油圧荷重が0になる時刻までの作用荷重とストローク量とを算出してもよい。ここで、荷重誤差Pm(I)、Pm(II)は、それぞれ本発明に係る式(1)及び式(2)に示されるPm(I):ラムヘッドによる負荷時の油圧荷重の補正量、Pm(II):除荷時の油圧荷重の補正量に対応する。
本発明者らは、上記検討結果に基づいて、被矯正材をより高精度に矯正することが可能なプレス矯正方法について鋭意検討を行った結果、本発明の変形例に想到した。具体的には、上記の検討結果から、油圧荷重誤差の影響を考慮してF-S線図を作成することにより、より高精度な矯正が実現できる可能性がある。本発明の変形例は、この知見に基づき、シリンダー132における摺動抵抗Prを考慮してプレス矯正を行うものである。
以下、第1の実施形態の変形例について具体的に説明する。なお、第1の実施形態の変形例は、上述した第1の実施形態において、プレス中にF-S関係を取得する際に、油圧荷重誤差を考慮して当該F-S関係を取得するものに対応し、その他の事項は第1の実施形態と略同様である。従って、以下の変形例についての説明では、第1の実施形態と相違する事項について主に説明を行い、重複する事項についてはその詳細な説明を省略する。
(2-2.プレス矯正システムの構成)
変形例に係るプレス矯正システムの構成は、図3を参照して説明した第1の実施形態に係るプレス矯正システム10と略同様であるため、その詳細な説明は省略する。ただし、変形例では、制御装置200の機能が異なる。ここでは、図16を参照して変形例に係る制御装置400の機能構成について説明する。図16は、本変形例の制御装置400が有する作図部410の機能について説明するための図である。
制御装置400は、その機能として、作用荷重算出部480と、作図部410と、傾き算出部220と、塑性域判定部230と、変形量算出部240と、加圧停止判定部250と、出力制御部260と、記憶部270と、通信部280と、を有する。なお、これらの機能のうち、傾き算出部220、塑性域判定部230、変形量算出部240、加圧停止判定部250、出力制御部260、記憶部270、及び通信部280の機能は、第1の実施形態に係るこれらの機能と同様である。
作用荷重算出部480は、プレス中に取得される油圧荷重の実績値Ptに基づいて、被矯正材2に作用する荷重である作用荷重Pt’を算出する。ここで、本変形例では、第1の実施形態と同様に、プレス矯正システム10において、プレス中に油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stが、逐次、プレス装置100から制御装置400に送信される。このプレス中に制御装置400に逐次送信される油圧荷重の実績値Ptには、荷重誤差Pmの影響が含まれている。そこで、作用荷重算出部480は、後述する作図部410によってこの荷重誤差Pmの影響を排除したF-S関係を取得するために、荷重誤差Pmの値を算出し、荷重誤差Pmを油圧荷重の補正量Pmとして、作用荷重Pt’を算出する。
本変形例では、油圧荷重Ptと荷重誤差Pmとの関係が予め取得され、制御装置400がアクセス可能な記憶部270に格納されている。作用荷重算出部480は、記憶部270にアクセスし、油圧荷重Ptと荷重誤差Pmとの関係を参照することにより、プレス中に取得される油圧荷重の実績値Ptに基づいて、現在の油圧荷重の実績値Ptに対応する荷重誤差Pmを算出する。そして、作用荷重算出部480は、油圧荷重の実績値Ptと荷重誤差Pm(油圧荷重の補正量Pm)を基に、作用荷重Pt’を算出する。例えば、作用荷重Pt’は、下記式(106)に基づいて求められてもよい。
Pt’=Pt+Pm …式(106)
作用荷重算出部480は、算出した荷重誤差Pmについての情報を、作図部410に提供する。
傾き算出部220は、作図部410により作用荷重Pt’と前記ストローク量の実績値Stの組み合わせが取得される毎にストローク量の実績値Stに対する作用荷重Pt’の傾きを算出してもよい。
塑性域判定部230は、傾き算出部220により算出されたストローク量の実績値Stに対する作用荷重Pt’の傾きに基づいて、被矯正材2の変形が塑性域における変形か否かを判定してもよい。具体的には、塑性域判定部230は、作図部410によって算出された作用荷重Pt’についてのF-S線図の傾きに基づいて、現在の被矯正材2の変形が塑性域における変形かどうかを判定する。塑性域判定部230は、判定結果についての情報を、変形量算出部240に提供する。
変形量算出部240は、塑性域判定部230により塑性域における変形と判定された場合に、油圧荷重の実績値Ptに代えて作用荷重Pt’を用い、第1の実施形態と同様の処理を行う。すなわち、変形量算出部240は、塑性域判定部230により塑性域における変形と判定された場合に、塑性域での現時刻tにおける作用荷重Pt’及びストローク量の実績値Stと、弾性域の傾きEに基づいて、現時刻tで油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の作用荷重の予測値Pp’と前記ストローク量の予測値Spを算出してもよい。
また、変形量算出部240は、塑性域判定部230により塑性域における変形と判定された場合に、塑性域での現時刻tにおける作用荷重Pt’及びストローク量の実績値Stと、現時刻tにおけるPt’/Stと、に基づいて、時刻t+Δtで油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の作用荷重の予測値Pp’とストローク量の予測値Spを算出してもよい。
作図部410は、作用荷重算出部480により算出された作用荷重Pt’とストローク量の実績値Stの組み合わせをXY平面上に逐次プロットしてもよい。これにより、作用荷重Pt’とストローク量の実績値Stの関係を示す作用荷重-ストローク線図が更に作図される。詳細には、まず、プレス中に取得される油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stに基づいて、F-S線図の傾きを算出する。このとき、変形例では、作図部410は、例えば、上記式(106)を用いて、作用荷重Pt’を算出し、当該作用荷重Pt’を用いて、図16に示すような作用荷重-ストローク線図を作成する。また、傾き算出部220は、作用荷重とストローク量によるF-S線図の傾きetを算出する(すなわち、図15に示すような荷重誤差Pmによって補正されたF-S線図における、負荷時の傾きを算出する)。
作図部410は、作用荷重の予測値Pp’とストローク量の予測値Spの組み合わせをXY平面上に逐次プロットしてもよい。また、作図部410は、塑性域での現時刻tにおける前記作用荷重Pt’及びストローク量の実績値Stと、現時刻tにおけるPt’/Stと、に基づいて、時刻t+Δtで油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の作用荷重の予測値Pp’とストローク量の予測値Spの組み合わせをXY平面上に逐次プロットしてもよい。
加圧停止判定部250は、作用荷重の予測値Pp’が被矯正材の変形開始時の作用荷重Pi’と等しくなるときのストローク量の予測値Spを予測矯正量Sc’とし、予測矯正量Sc’と目標矯正量Saとの差が所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定してもよい。なお、ここで言う作用荷重の予測値Pp’は、現時刻tにおける前記作用荷重の算出値Pt’及び前記ストローク量の実績値St、並びに当該塑性域となる前の弾性域の傾きEに基づいて算出される作用荷重の予測値、または、現時刻tにおける前記作用荷重の算出値Pt’及び前記ストローク量の実績値St、並びに現時刻tにおけるPt’/Stに基づいて算出される作用荷重の予測値のいずれであってもよい。
出力制御部260は、加圧停止判定部250により予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差が所定の閾値ΔSth以下であると判定されたときに、プレスを停止する信号の出力を制御してもよい。また、出力制御部260は、変形量算出部240により算出された現時刻t以降の作用荷重の予測値Pp’とストローク量の予測値Spがプロットされたグラフを逐次表示する出力を制御してもよい。また、出力制御部260は、例えば、図16に示したように、上記式(106)により補正して得られた作用荷重-ストローク線図を表示装置300に表示する制御信号を出力してもよい。また、出力制御部260は、現時刻tにおける油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stと、塑性域での現時刻tにおけるストローク量の実績値Stに対する油圧荷重の実績値Ptの比Pt/Stと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの油圧荷重及びストローク量の組み合わせ、及び、時刻t+Δtの時点で油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の作用荷重の予測値Pp’とストローク量の予測値Spの組み合わせと、をXY平面に逐次表示する出力を制御してもよい。すなわち、出力制御部260は、変形量算出部240により算出された時刻t+Δt以降の作用荷重の予測値Pp’とストローク量の予測値Spがプロットされたグラフを逐次表示する出力を制御してもよい。また、出力制御部260は、作用荷重の予測値Pp’が被矯正材2の変形開始時の作用荷重Pi’と等しくなるときのストローク量の予測値Spを逐次表示する出力を制御してもよい。
以上、変形例に係る制御装置400の機能構成について説明した。
(2-3.プレス矯正方法)
図17を参照して、変形例に係るプレス矯正方法の処理手順について説明する。図17は、変形例に係るプレス矯正方法の処理手順の一例を示すフロー図である。各処理の内容について、既に説明している事項については、ここではその詳細な説明を省略する。また、図17に示す各処理のうち、ステップS201、ステップS209~ステップS215における処理は、図12に示すステップS101、ステップS107~ステップS113における処理と、それぞれ同様の処理である。
図17を参照すると、変形例に係るプレス矯正方法では、まず、制御装置400がプレス装置100から油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stを取得する(ステップS201)。次に、作用荷重算出部480が油圧荷重の実績値Ptと、荷重誤差Pmとに基づいて現在の作用荷重を算出する(ステップS203)。ステップS203は、本発明に係る作用荷重算出ステップに対応する。
次に、作図部410が作用荷重Pt’及びストローク量実績値Stの組み合わせをXY平面上にプロットする(ステップS205)。続いて、傾き算出部220は、作用荷重Pt’及びストローク量実績値StからF-S線図の傾きetを算出する(ステップS207)。傾き算出部220は、算出したF-S線図の傾きetについての情報を、塑性域判定部230及び変形量算出部240に提供する。
ステップS207の後、塑性域判定部230は、傾きetに基づいて、現在の被矯正材2の変形が塑性域における変形(塑性変形)か否かを判定する(ステップS209)。具体的には、塑性域判定部230は、算出された傾きetに基づいて、当該傾きの変化量の絶対値Δe(=|et-e(t-1)|)が、所定の閾値Δethよりも大きいか否かを判定する。ステップS209では、最新のタイミングで取得された作用荷重Pt’及びストローク量の実績値Stに基づく傾きetと、1つ前のタイミングで取得された作用荷重及びストローク量の実績値に基づく傾きe(t-1)との差分を取ることにより、傾きの変化量の絶対値Δeが算出され、当該Δeが閾値Δethと比較される。ステップS209における処理は、塑性域判定部230によって実行される処理に対応している。
ステップS209において、傾きの変化量の絶対値Δeが閾値Δeth以下であると判定された場合(ステップS209/NO)、現在の被矯正材2の変形が弾性域での変形であることを示しているため、この場合には、ステップS201に戻り、ステップS201~ステップS209における処理を繰り返す。
一方、ステップS209において、傾きの変化量の絶対値Δeが閾値Δethよりも大きいと判定された場合(ステップS209/YES)、ステップS211に進む。ステップS211では、変形量算出部240が、現時点での作用荷重Pt’及びストローク量の実績値Stと、作図部410によって算出されたF-S線図の弾性域の傾きEと、に基づいて、作用荷重の予測値Pp’とストローク量予測値Spとを算出する。弾性域での傾きEを、傾きの変化量の絶対値Δeが閾値Δethよりも大きくなったタイミングまでに求められた傾きe1、e2、・・・、e(n-1)の平均値として設定する。
ステップS211の後、加圧停止判定部250は、予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定する(ステップS213)。予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth超である場合(ステップS213/NO)、加圧停止判定部250は、変形量算出部240にその旨の情報を提供し、変形量算出部240は、次のタイミングで取得された作用荷重Pt’及びストローク量実績値Stに基づいて、ステップS201以降の処理を、予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下と判定されるまで繰り返す。そして、予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下と判定された場合(ステップS213/YES)、加圧停止判定部250は、その旨の情報を出力制御部260に提供する。なお、ステップS213における処理は、加圧停止判定部250によって実行される処理に対応している。
予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差ΔSが所定の閾値ΔSth以下と判定された後、出力制御部260は、プレス装置100による被矯正材2への負荷を停止する(ステップS215)。
以上、変形例に係るプレス矯正方法の処理手順について説明した。なお、図17に示した処理手順はあくまでも一例であり、図17に示した各ステップの順序が可能な範囲で前後してもよい。
(2-4.変形例のまとめ)
以上説明したように、変形例によれば、第1の実施形態に係るプレス矯正方法において、F-S関係に基づいて目標ストローク量を決定する際に、荷重誤差Pmが考慮される。具体的には、プレス中に取得される油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stを用いてF-S線図の傾きを求める際に、荷重誤差Pmの値を用いて当該油圧荷重の実績値が補正され、その補正されて得られた作用荷重Pt’を用いてF-S線図の傾きが求められる。従って、この傾きに基づいて求められる現時点で除荷した場合の被矯正材2の矯正量を、より精度良く予測することが可能となる。よって、変形例によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、その矯正の精度を更に向上させることが可能になる。
(3.第2の実施形態)
(3-1.第2の実施形態に想到した背景)
第2の実施形態について説明するに先立ち、本発明者らが第2の実施形態に想到した背景について説明する。第1の実施形態に係るプレス矯正は、プレス荷重とストローク量との関係に基づいてプレス矯正を行うことで、所望のプレス矯正量を得る。本実施形態は、プレス荷重とストローク量との関係に代えて、曲げモーメントと曲率との関係に基づいてプレス矯正を行い、矯正の精度を更に向上させるものである。以下、図18を参照して、本発明者ら得た矯正の精度を更に向上させるための知見について詳細に説明する。図18は、被矯正材の表面高さhと曲率κとの関係を説明するための図である。
被矯正材が金属板である場合、その平坦度不良は、長手方向の曲がり及び幅方向の曲がりが主である。従来のプレス矯正では、金属板の面内の全体に亘って、表面高さが所定の基準内に収まるように曲がりを取り除く。しかし、図18に示すように、矯正後の金属板の表面高さhが最大許容表面高さhmax以下となっていても、曲率κが大きな曲がりが残っている場合がある。このような場合、プレス矯正後の金属板の二次加工等において、精度不良を招く可能性がある。上記のような観点から、本発明者らは、金属板の平坦性をより高い水準で担保するためには、平坦度の指標として、曲率κを用いることがより適切であるという知見を得た。本発明者らは、このような知見に基づき、第2の実施形態に想到した。
以下、第2の実施形態に係るプレス矯正システムについて具体的に説明する。
(3-2.プレス矯正システムの構成)
第2の実施形態に係るプレス矯正システムの構成は、図3を参照して説明した第1の実施形態に係るプレス矯正システム10と略同様であるため、その詳細な説明は省略する。ただし、本実施形態では、制御装置200の機能が異なる。ここでは、図19を参照して変形例に係る制御装置500の機能構成について説明する。図19は、本実施形態に係るプレス矯正システムが有する制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
制御装置500は、その機能として、変換部590と、作図部510と、傾き算出部520と、塑性域判定部530と、変形量算出部540と、加圧停止判定部550と、出力制御部560と、記憶部570と、通信部580と、を有する。
変換部590は、プレス中の油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出する。ここで、図20を参照して、曲げモーメントMt及び曲率κtの算出方法を説明する。図20は、変換部590による曲げモーメント及び曲率の算出方法を説明するための図である。
一般に、曲げモーメントMtは、支点から荷重点までの距離xと、プレス開始後の時刻tにおける荷重F(t)と、から、以下の式で表される。
Mt=M(x,F(t))
プレス矯正における変形を図20のような梁の曲げと近似すると、曲げの支点は、シム板120と被矯正材2との接点であり、例えば、図20では、点A及び点Cである。図20に示すように、2つのシム板120の間隔をLとし、被矯正材2における2つのシム板120間の中央に対応する位置をプレスする場合、一方の支点(点A又は点Cのいずれか)から荷重点までの距離xは、L/2と表される。また、プレス開始後の時刻tにおける荷重F(t)には、油圧荷重の実績値Ptを用いることができる。
よって、曲げモーメントMtは、油圧荷重の実績値Ptと、シム板120の間隔Lと、プレス位置xと、から、算出することができる。例えば、図20のような場合には、プレス位置に作用する曲げモーメントMtはMt=F(t)・L/2と表せる。
曲率κtは、シム板120の間隔Lと、測定中のストローク量の実績値Stと、から、被矯正材2のたわみを関数近似し、その関数に微分処理を施すことで算出できる。具体的には、シム板120と被矯正材2との接点と、荷重点と、を通るように、被矯正材2のたわみを多項式近似し、得られた近似式から曲率κtを算出する。例えば、図20では、支点である点A及び点C並びに荷重点である点Bが通るように多項式近似し、近似式から曲率κtを算出する。なお、多項式近似は、例えば、二次関数による近似や四次関数による近似を行えばよい。
点A及び点Cの位置は、シム板120の厚さによって決定され、点Bは、ストローク量の実績値Stから算出可能である。
よって、曲率κtは、シム板120の間隔Lと、ストローク量の実績値Stから、算出することができる。
以上により、変換部590は、プレス中の油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出することができる。
作図部510は、変換部590で算出された曲げモーメントMt及び曲率κtの組み合わせをXY平面上に逐次プロットし、時刻tまでの曲げモーメントMtと曲率κtとの関係を示す図が得られる。以下では、曲げモーメントと曲率との関係を示す図をM-κ線図と呼称することがある。
ここで、図21、22を参照して、作図部510が作図するM-κ線図を説明する。図21、22は、それぞれ、プレス矯正時の曲げモーメントMと曲率κとの関係の一例を示すグラフである。図21、22は、横軸に曲率、縦軸に曲げモーメントをとったグラフである。ここでは、上方に凸である曲がりの曲率を負とし、下方に凸である曲がりの曲率を正と定義した。例えば、被矯正材の矯正前の曲がりが上方に凸である位置をプレスする場合を考える。このような位置は、図21上の点A1で示される。
上に向かって凸形状(点A)の被矯正材2を矯正する場合、あらかじめ弾性復元(スプリングバック)を見込んで、下に向かって凸形状になるまでラムヘッド131を押し込む。このときのM-κ線図は、最初は被矯正材2は弾性変形(弾性域)のため、曲げモーメント及び曲率は略一定の傾き(割合)の関係を保ちながら増加する。更にラムヘッド131を押し込んでいき、被矯正材が塑性変形を始めると、M-κ線図の傾きは弾性変形の時よりも小さくなる。この傾きが変化した以降の領域を塑性域と呼ぶ。塑性域のある時点(点A)で除荷すると、スプリングバックを生じ、曲げモーメント及び曲率は弾性域と等しい傾きに沿って減少し、曲げモーメントがゼロとなる点Aに達する。すなわちプレス中の曲率変化量からスプリングバック量を引いた量が矯正で加えた曲率変化に相当する。 除荷を開始して油圧荷重が基準値(図21に示す例ではゼロ)になったときの曲率を矯正後の残留曲率κresと呼び、図21ではゼロである(点A)。
曲率κを平坦度の指標としたプレス矯正では、矯正位置の残留曲率κresをゼロ(平坦)に近づける必要があるため、残留曲率κresがゼロになるような除荷点Aを同定することが求められる。例えば、図22では、点Bで除荷した場合、被矯正材2における矯正位置の曲がりは上に凸状(κres1<0)であり、プレス量が不足している。点Bで除荷した場合、被矯正材2における矯正位置の曲がりは下に凸状(κres3>0)であり、プレス量が過剰である。点Bで除荷した場合、被矯正材2における矯正位置は平坦(κres3=0)であり、プレス量が適切である。
ここまで、作図部510が作図するM-κ線図について説明した。
傾き算出部520は、曲率κtに対する曲げモーメントMtの傾きを算出する。傾き算出部520は、曲げモーメントMtと曲率κtの組み合わせが取得される毎に曲率κtに対する曲げモーメントMtの傾きを算出してもよい。例えば、傾き算出部520は、図23に示すように、所定の時間間隔ΔT毎に、曲率κtに対する曲げモーメントMtの傾きe’tを逐次算出する。すなわち、傾き算出部520は、図23に示すように、時間間隔ΔT毎に求めた曲率κtに対する曲げモーメントMtの傾きe’tを、順に、傾きe’1、e’2、・・・として、記憶部570に記憶させる。傾き算出部520は、算出した傾きについての情報を、塑性域判定部530及び変形量算出部540に提供する。なお、傾き算出部520は、当該傾きe’tを、曲げモーメントの増分ΔMごとに、あるいは曲率の増分Δκごとに算出してもよい。
傾き算出部520は、傾きe’tに基づいて、曲げモーメントMt及び曲率κtから弾性域のM-κ線図の傾きEを算出する。ここで、塑性域判定部530の機能の説明とともに、傾き算出部520による傾きEの算出方法を説明する。塑性域判定部530は、傾き算出部520によって算出された曲率κtに対する曲げモーメントMtの傾きに基づいて、被矯正材2の変形が塑性域(塑性変形)か否かを判定する。具体的には、塑性域判定部530は、M-κ線図の傾きe’tが弾性域と塑性域とで異なることを利用して、逐次算出されるM-κ線図の傾きe’tから当該傾きの変化量の絶対値Δe’を算出し、当該変化量の絶対値Δe’が所定の閾値Δe’thよりも大きくなった場合に、被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定する。図23に示す例であれば、M-κ線図の傾きe’tがe’nになった段階で、塑性域判定部530は、被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定する。塑性域判定部530は、判定結果についての情報を、変形量算出部540に提供する。なお、閾値Δe’thは、例えばプレス矯正を行っている被矯正材2と同種の金属材に対する過去に行われたプレス矯正の実績値等から、弾性域と塑性域を好適に区別し得るような値として適宜設定され得る。
被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定されると、傾き算出部520は、弾性域においてそれまでに取得された傾きe’1、e’2、・・・、e’(n-1)の平均値から、弾性域の傾きEを算出する。具体的には、当該弾性域での傾きEは、上記式(101)におけるeiをe’iに置き換えた式に従って算出され得る。ただし、弾性域での傾きEを求める方法はかかる例に限定されず、例えば、当該弾性域での傾きEは、弾性域におけるあるタイミングで算出された傾きe’n(例えば、E=e’(n-1)、すなわち傾きの変化量の絶対値Δe’が閾値Δe’thよりも大きくなった直前のタイミングで算出された傾きe’(n-1))として設定されてもよい。ここまで、傾き算出部520による傾きEの算出方法を説明した。
変形量算出部540は、塑性域判定部530により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける曲げモーメントMt及び曲率κtと、弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出する。詳細には、変形量算出部540は、塑性域判定部530によって被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定された場合に、現時点での曲げモーメントMt及び曲率κtと、傾き算出部520によって算出されたM-κ線図の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで油圧荷重Pを除荷した場合の時刻tから油圧荷重が0になる時刻までの曲げモーメントと曲率とを算出する。具体的には、弾性域でのM-κ線図の傾きEは傾き算出部520によって算出されているため、変形量算出部540は、除荷時の傾きE’をE’=Eとして求める。
また、現在の被矯正材2の状態に対応するM-κ線図上の点は、現時点での曲げモーメントMt及び曲率κtによって同定される。従って、変形量算出部540は、これらの情報に基づいて、現時刻tで油圧荷重を除荷した場合の時刻tから油圧荷重が0になるまでの曲げモーメントと曲率とを算出する。なお、以下では、変形量算出部540により予測された曲げモーメントを曲げモーメント予測値Mpと記載し、変形量算出部540により予測された曲率を曲率予測値κpと記載することもある。
変形量算出部540によって算出された曲げモーメント予測値Mp及び曲率予測値κpの組み合わせのうち、曲げモーメント予測値Mpが被矯正材2の変形開始時の曲げモーメントMiと等しくなるときの曲率予測値κpを予測曲率κcとする(なお装置の構成上、変形開始時の油圧荷重はゼロではない所定の値になることから、変形開始時の曲げモーメントもゼロではない所定の値になる)。図23では、現在の被矯正材2の状態が点B、B、Bのいずれかに示す状態であれば、当該点B、B、Bから除荷時の傾きE’に従って除荷し、曲げモーメント予測値Mpと被矯正材2の変形開始時の曲げモーメント荷重Miとが等しくなった点C、C、Cにおける曲率に対応する値κ、κ、κが、それぞれ、当該点B、B、Bにおいて除荷した場合の予測曲率κcになる。
現時刻tで油圧荷重Pを除荷した場合の時刻tから油圧荷重が0になるまでの曲げモーメント予測値Mp及び曲率予測値κpの組み合わせは、作図部510によってXY平面上にプロットされてもよい。
さらに、変形量算出部540は、塑性域判定部530によって被矯正材2の変形が塑性域に入ったと判定された場合に、現時刻tにおける曲げモーメントMt及び曲率κtと、現時刻tにおける傾きMt/κtと、に基づいて、時刻t+Δtで油圧荷重Pを除荷した場合の時刻t+Δtから油圧荷重が0になる時刻までの曲げモーメント予測値Mpと曲率予測値κpとを算出してもよい。このとき現時刻tにおける傾きMt/κtは、例えば、時刻t-ΔTから現時刻tまでの曲げモーメントMt及び曲率κtとから求める。詳細な算出方法は、第1の実施形態では変形量算出部240がF-S線図を用いるのに対し、変形量算出部540がM-κ線図を用いる点で異なるが、第1の実施形態における変形量算出部240が行う算出方法と略同様であるため、ここでの説明は省略する。傾き(M/κ)は、例えば、図21に示したように、被矯正材2のプレス変形が進行するに従い小さくなる。そのため、わずかにプレス量が増えただけでも曲率κは大きく変化し得る。そのため、一般に、プレスを終了すべき旨のガイダンスを受けたオペレータがプレスを終了する旨の指示を入力する場合や、プレス装置を加圧停止の信号を受けて自動で除荷させるような場合など、除荷されるまでにタイムラグがあるため、残留曲率κresが目標曲率κcよりも大きくなりやすい。
しかしながら、上記により、現時刻tからΔtだけ経過した後に除荷した場合の曲率が予測可能であるため、オペレータがプレス装置100を操作して加圧を停止する場合、より高精度で被矯正材を矯正することが可能となる。またプレス装置100を自動停止する場合には、制御のタイムラグによって過剰に変形を加えてしまうことを抑制できる。
作図部510は、現時刻tにおける曲げモーメントMt及び曲率κtと、現時刻tにおける塑性域での傾きMt/κtと、に基づいて、算出された曲げモーメント予測値Mp及び曲率予測値Ppの組み合わせをXY平面上にプロットしてもよい。また、作図部510は、現時刻tにおける、曲げモーメントMt及び曲率κtと、傾きMt/κtと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの曲げモーメント及び曲率の組み合わせ、及び、時刻t+Δtで油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメント予測値Mpと曲率予測値κpの組み合わせをXY平面上に逐次プロットしてもよい。
加圧停止判定部550は、曲げモーメント予測値Mpが被矯正材の変形開始時の曲げモーメントMiと等しくなるときの曲率予測値κpを予測曲率κcとし、予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定する。これにより、変形量算出部540によって算出された現時点で除荷した場合の変形量が、矯正後に所望の形状を得るための目標範囲に含まれるかどうかが判定される。
目標曲率κaは、公知の鋼板の平坦度仕様を基に定めることができる。また、閾値Δκthは、最大許容曲率κmaxを用いて、例えば、-κmax≦Δκth≦κmaxを満足するように定められる。最大許容曲率κmaxは、例えば、次のように定められる。金属板では、一般に、測定範囲L[m]あたりの最大許容表面高さhmax[m]が規定されているため、これらを用いてκmax=8×hmax/L[1/m]と表される。
予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下であれば、実際の曲率を目標曲率κaから許容される範囲内とすることが可能となる。
出力制御部560は、加圧停止判定部550の判定結果に応じて、所定の信号の出力を制御する。出力制御部560は、例えば、加圧停止判定部550が予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが閾値Δκth以下であると判定したときに、プレス装置100に負荷を停止する停止信号を出力する。停止信号が入力されたプレス装置100は、被矯正材2への負荷を停止する。
出力制御部560は、加圧停止判定部550が予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが閾値Δκth以下であると判定したときに、現時点で除荷した場合の曲率が目標範囲に含まれる旨の情報を取得したタイミングで、上述したプレス矯正システム10に備えられる出力装置の駆動を制御し、除荷すべき旨、すなわちプレスを終了すべき旨のガイダンスを出力してもよい。この場合、当該ガイダンスを受けたオペレータがプレスを終了する旨の指示を入力することにより、そのタイミングでプレスが終了され、除荷後の曲率が目標曲率κaとなるような、所望の形状に被矯正材2が矯正されることとなる。
また、出力制御部560は、別途設けられ得る表示装置300に、作図部510により作成される各種M-κ線図の表示を制御する制御信号を出力する。出力制御部560は、例えば、シリンダー132に備えられたラムヘッド131による板状の被矯正材2のプレス中に取得されるラムヘッド131の現時刻tにおける曲げモーメントMtと曲率κtの組み合わせ、及び、曲げモーメントMtと、曲率κtと、弾性域の傾きEと、に基づいて予測された、現時刻tにおいて油圧荷重が除荷されたときの現時刻t以降の曲げモーメント予測値Mpと曲率予測値κpの組み合わせがプロットされたXY平面を逐次表示する出力を制御してもよい。当該制御信号が入力された表示装置300は、作図部510により逐次プロットされて描かれるM-κ線図、及び最新の時刻において除荷した際の除荷直線をリアルタイムに表示してもよい。当該制御信号が入力された表示装置300は、最新の時刻における除荷直線のみならず、それまでに取得された任意の時刻における除荷直線を表示してもよい。また、当該制御信号が入力された表示装置300は、任意の状態、例えば、塑性域における任意の点での傾きMt/κtに基づいた外挿線を表示してもよいし、外挿線上の任意の点における除荷直線を表示してもよい。当該制御信号が入力された表示装置300は、更に、目標曲率κaまたは予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκを表示してもよい。また、出力制御部560は、変形量算出部540により算出された現時刻t以降の曲げモーメント予測値Mpと曲率予測値κpがプロットされたXY平面を逐次表示する出力を制御してもよい。また、出力制御部560は、変形量算出部540により算出された、現時刻tにおける、曲げモーメントMt及び曲率κtと、塑性域での現時刻tにおける曲率κtに対する曲げモーメントMtの比Mt/κtと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの曲げモーメント及び曲率の組み合わせ、及び、時刻t+Δtの時点で油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメント予測値Mpと曲率予測値κpがプロットされたXY平面を逐次表示する出力を制御してもよい。また、出力制御部560は、曲げモーメント予測値Mpが被矯正材2の変形開始時の曲げモーメントMiと等しくなるときの曲率予測値κpを逐次表示する出力を制御してもよい。
出力制御部560は、上記の出力の少なくともいずれかを制御してもよいし、複数の出力を制御してもよい。出力制御部560は、例えば、上記の、油圧シリンダーに備えられたラムヘッドによる板状の被矯正材のプレス中に取得されるラムヘッドの現時刻tにおける、油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、に基づいて算出された、曲率κtと曲げモーメントMtの組み合わせ、及び、曲率κtと、曲げモーメントMtと、弾性域の傾きEと、に基づいて予測された、現時刻tにおいて油圧荷重が除荷されたときの現時刻t以降の曲率の予測値κpと曲げモーメントの予測値Mpの組み合わせがプロットされたXY平面、又は、現時刻tにおける、曲げモーメントMt及び曲率κtと、塑性域での現時刻tにおける曲率κtに対する曲げモーメントMtの比Mt/κtと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの曲げモーメント及び曲率の組み合わせ、及び、時刻t+Δtの時点で油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメントの予測値Mpと前記曲率の予測値κpの組み合わせがプロットされたXY平面の少なくともいずれかを逐次表示する出力を制御してもよい。
出力制御部560が表示装置300にM-κ線図を表示する出力を行う場合、上述した表示のそれぞれは、互いに可能な範囲で組み合わされてよい。オペレータが表示装置300に表示されたM-κ線図を確認しながらプレス矯正システム10を操作する場合、プレス矯正が行われている被矯正材2の状態をより正確に把握することができ、被矯正材2の矯正量をより高い精度で目標の矯正量とすることが可能となる。なお、本発明に係る出力制御装置は、上述した出力制御部560の機能を有する装置である。
記憶部570は、作図部510、傾き算出部520、塑性域判定部530、変形量算出部540、加圧停止判定部550、出力制御部560または変換部590が、それぞれの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、又は、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。この記憶部570に対して、作図部510、傾き算出部520、塑性域判定部530、変形量算出部540、加圧停止判定部550、出力制御部560または変換部590が、自由にデータのリード/ライト処理を行うことが可能である。
通信部580の機能は、第1の実施形態に係る通信部280の機能と同一であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
以上、プレス矯正システム10の概略構成について説明した。
(3-3.プレス矯正方法)
続いて、図24を参照して、第2の実施形態に係るプレス矯正方法の処理手順について説明する。図24は、本実施形態に係るプレス矯正方法の処理手順の一例を示すフロー図である。なお、図24に示す各処理は、図19に示す制御装置500によって実行される処理に対応している。各処理の内容について、図19に示す各機能における処理として既に説明している事項については、ここではその詳細な説明を省略する。
図24を参照すると、本実施形態に係るプレス矯正方法では、まず、制御装置500がプレス装置100から油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stを取得する(ステップS301)。次に、変換部590が、油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出する(ステップS303)。作図部510が曲げモーメントMt及び曲率κtの組み合わせをXY平面上にプロットする(ステップS305)。続いて、傾き算出部520は、曲げモーメントMt及び曲率κtからM-κ線図の傾きe’tを算出する(ステップS307)。ステップS307は、本発明に係る傾き算出ステップに対応する。
ステップS307の後、塑性域判定部530は、傾きe’tに基づいて、現在の被矯正材2の変形が塑性域における変形(塑性変形)か否かを判定する(ステップS309)。具体的には、塑性域判定部530は、算出された傾きe’tに基づいて、当該傾きの変化量の絶対値Δe’(=|e’t-e’(t-1)|)が、所定の閾値Δe’thよりも大きいか否かを判定する。ステップS309では、最新のタイミングで取得された曲げモーメントMt及び曲率κtに基づく傾きe’tと、1つ前のタイミングで取得された曲げモーメントMt及び曲率κtに基づく傾きe’(t-1)との差分の絶対値を取ることにより、傾きの変化量の絶対値Δe’が算出され、当該Δe’が閾値Δe’thと比較される。ステップS309における処理は、図19に示す塑性域判定部530によって実行される処理に対応している。すなわち、ステップS309は、本発明に係る塑性域判定ステップに対応する。
ステップS309において、傾きの変化量の絶対値Δe’が閾値Δe’th以下であると判定された場合(ステップS309/NO)、現在の被矯正材2の変形が弾性域での変形であることを示しているため、この場合には、ステップS301に戻り、ステップS301~ステップS307における処理を繰り返す。
一方、ステップS309において、傾きの変化量Δe’が閾値Δe’thよりも大きいと判定された場合(ステップS309/YES)、ステップS311に進む。ステップS311では、変形量算出部540が、現時点での曲げモーメントMt及び曲率κtと、傾き算出部520によって算出されたM-κ線図の弾性域の傾きEと、に基づいて、曲げモーメント予測値Mpと曲率予測値κpとを算出する。弾性域での傾きEを、傾きの変化量の絶対値Δe’が閾値Δe’thよりも大きくなったタイミングまでに求められた傾きe’1、e’2、・・・、e’(n-1)の平均値として設定する。変形量算出部540は、算出した現時点で除荷した場合の予測曲率κcについての情報を、加圧停止判定部550に提供する。ステップS311は、本発明に係る変形量算出ステップに対応する。
ステップS311の後、加圧停止判定部550は、予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定する(ステップS313)。予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth超である場合(ステップS313/NO)、加圧停止判定部550は、変形量算出部540にその旨の情報を提供し、変形量算出部540は、次のタイミングで取得された曲げモーメントMt及び曲率κtに基づいて、ステップS301以降の処理を、予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下と判定されるまで繰り返す。そして、予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下と判定された場合(ステップS313/YES)、加圧停止判定部550は、その旨の情報を出力制御部560に提供する。なお、ステップS33における処理は、図19に示す加圧停止判定部550によって実行される処理に対応している。すなわち、ステップS313は、本発明に係る加圧停止判定ステップに対応する。
予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下であると判定された後、出力制御部560は、プレス装置100による被矯正材2への負荷を停止する(ステップS315)。ステップS315は、本発明に係る出力制御ステップに対応する。
なお、図24に示した処理手順はあくまでも一例であり、図24に示した各ステップの順序が可能な範囲で前後してもよい。また、ステップS305は、省略されてもよい。
以上、第2の実施形態に係るプレス矯正方法の処理手順について説明した。
(3-4.第2の実施形態のまとめ)
第2の実施形態では、制御装置500は、リアルタイムで、すなわち被矯正材2に対してラムヘッド131をプレスしている間に逐次、油圧荷重の実績値及びストローク量の実績値を取得し、油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出することができる。そして、制御装置500は、算出した曲げモーメントMt及び曲率κtの関係(すなわち、M-κ関係)に基づいて、プレス中にスプリングバック量を逐次計算し、所望の形状が得られるような、すなわちスプリングバック量を考慮した曲率(すなわち、プレス完了後の被矯正材2の曲率)が目標曲率と一致するような、除荷タイミングを決定する。そして、当該除荷タイミングに達した時点で、プレスを終了する旨のガイダンスを上記出力装置に出力させる。
このように、第2の実施形態では、現在まさに矯正を行っている被矯正材2についてのM-κ関係をリアルタイムで取得し、当該M-κ関係に基づいて、矯正後に所望の形状を得るための除荷タイミング、すなわち目標曲率が決定される。従って、所望の形状を得るための目標曲率を、矯正対象の金属材自体の特性に基づいてより適切に決定することができる。被矯正材2をより精度良く矯正することが可能になる。更に、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、曲率を平坦度の指標としている。そのため、第2の実施形態によれば、曲率が大きい曲がりが残存していることによって生じ得る、二次加工時の精度不良をより一層抑制することが可能となる。
また、第2の実施形態によれば、実際にプレスを行っている被矯正材2におけるM-κ関係をプレス中に逐次取得するため、第1の実施形態と同様に、棒材、管材又は板材等の被矯正材2の形状や、被矯正材2の金属種等によらず、多様な金属材の矯正に対応することが可能になる。
また、第2の実施形態によれば、目標曲率を事前に決定しておく必要がなく、当該目標曲率は、M-κ線図に基づいてプレス中に自動的に決定される。従って、作業の安全性の向上、操業の効率化、及び作業ばらつきの低減(すなわち、操業及び製品品質の安定化)を図ることが可能となる。
(4.第2の実施形態の変形例)
以下、第2の実施形態の変形例について具体的に説明する。なお、第2の実施形態の変形例は、上述した第2の実施形態において、プレス中にM-κ関係を取得する際に、油圧荷重誤差を考慮して当該M-κ関係を取得するものに対応し、その他の事項は上述した第2の実施形態と略同様である。従って、以下の変形例についての説明では、上述した第2の実施形態と相違する事項について主に説明を行い、重複する事項についてはその詳細な説明を省略する。
(4-1.制御装置)
本変形例に係る制御装置600は、第1の実施形態の変形例に係る制御装置200の作用荷重算出部480を有する点で制御装置500とは異なる。作用荷重算出部480については、既に説明しているため、ここでの詳細な説明は省略する。
変換部590は、油圧荷重の実績値Ptに代えて作用荷重Pt’を用いて補正曲げモーメントMt’を算出してもよい。第1の実施形態の変形例の説明の中で説明したように、油圧荷重の実績値Ptは誤差を含む場合があるため、作用荷重算出部480が負荷時の油圧荷重の実績値Ptを上記式(102)で補正し、除荷時の油圧荷重の実績値Ptを上記式(103)で補正する。この補正された値を作用荷重Pt’として、変換部590は、この作用荷重Pt’と、シム板120の間隔Lと、プレス位置xと、から、補正曲げモーメントMt’を算出する。
傾き算出部520は、曲率κtに対する補正曲げモーメントMt’の傾きを算出してもよい。例えば、傾き算出部520は、補正曲げモーメントMt’と曲率κtの組み合わせが取得される毎に曲率κtに対する補正曲げモーメントMt’の傾きを算出してもよい。
塑性域判定部530は、傾き算出部520により算出された、曲率κtに対する補正曲げモーメントMt’の傾きに基づいて、被矯正材2の変形が塑性域における変形か否かを判定してもよい。具体的には、塑性域判定部530は、作図部610によって作成された補正曲げモーメントMt’についてのM-κ線図の傾きに基づいて、現在の被矯正材2の変形が塑性域における変形かどうかを判定する。塑性域判定部530は、判定結果についての情報を、変形量算出部540に提供する。
変形量算出部540は、塑性域判定部530により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける補正曲げモーメントMt’及び曲率κtと、弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mp’と曲率の予測値κpを算出してもよい。
また、変形量算出部540は、塑性域での現時刻tにおける補正曲げモーメントMt’及び曲率κtと、現時刻tにおけるMt’/κtと、に基づいて、時刻t+Δtで油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメント予測値Mp’と曲率予測値κpを算出してもよい。
作図部610は、補正曲げモーメントMt’と曲率κtの組み合わせをXY平面上に逐次プロットしてもよい。これにより、補正曲げモーメントMt’と曲率κtの関係を示す補正曲げモーメント-曲率線図が更に作図される。また、傾き算出部520は、補正曲げモーメントMt’と曲率κtによるM-κ線図の傾きe’tを算出する。
作図部610は、補正曲げモーメントの予測値Mp’と曲率の予測値κpの組み合わせをXY平面上に逐次プロットしてもよい。また、作図部610は、塑性域での現時刻tにおける補正曲げモーメントMt’及び曲率κtと、現時刻tにおけるMt’/κtと、に基づいて、時刻t+Δtで油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の補正曲げモーメント予測値Mp’と曲率予測値κpの組み合わせをXY平面上に逐次プロットしてもよい。
加圧停止判定部550は、補正曲げモーメント予測値Mp’が被矯正材の変形開始時の補正曲げモーメントMi’と等しくなるときの曲率予測値κpを予測曲率κcとし、予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定してもよい。なお、ここで言う補正曲げモーメント予測値Mp’は、現時刻tにおける補正曲げモーメントMt’及び曲率κt、並びに当該塑性域となる前の弾性域の傾きEに基づいて算出される補正曲げモーメントの予測値、または、現時刻tにおける補正曲げモーメントMt’及び曲率κt、並びに現時刻tにおけるMt’/κtに基づいて算出される補正曲げモーメントの予測値のいずれであってもよい。
出力制御部560は、例えば、加圧停止判定部550が予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが閾値Δκth以下であると判定したときに、プレス装置100に負荷を停止する停止信号を出力してもよい。また、出力制御部560は、別途設けられ得る表示装置300に、作図部610により作成される各種M-κ線図の表示を制御する制御信号を出力してもよい。また、出力制御部560は、例えば、上記式(106)により補正して得られた作用荷重に基づいて作成された補正曲げモーメントについてのM-κ線図を表示装置300に表示する制御信号を出力してもよい。また、出力制御部560は、現時刻tにおける曲げモーメントMt及び曲率κtと、塑性域での現時刻tにおける曲率κtに対する曲げモーメントMtの比Mt/κtと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの曲げモーメント及び曲率の組み合わせ、及び、時刻t+Δtの時点で油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の補正曲げモーメント予測値Mp’と曲率予測値κpの組み合わせと、をXY平面に逐次表示する出力を制御してもよい。すなわち、出力制御部560は、変形量算出部540により算出された時刻t+Δt以降の補正曲げモーメント予測値Mp’と曲率予測値κpがプロットされたグラフを逐次表示する出力を制御してもよい。また、出力制御部560は、補正曲げモーメント予測値Mp’が被矯正材2の変形開始時の補正曲げモーメントMi’と等しくなるときの曲率予測値κpを逐次表示する出力を制御してもよい。
以上、変形例に係る制御装置600の機能構成について説明した。
(4-2.プレス矯正方法)
図25を参照して、本変形例に係るプレス矯正方法の処理手順について説明する。図25は、第2の実施形態の変形例に係るプレス矯正方法の処理手順の一例を示すフロー図である。各処理の内容について、既に説明している事項については、ここではその詳細な説明を省略する。また、図25に示す各処理のうち、ステップS401、ステップS411~ステップS417における処理は、図24に示すステップS101、ステップS309~ステップS315における処理と、それぞれ同様の処理である。
図25を参照すると、本変形例に係るプレス矯正方法では、まず、制御装置600がプレス装置100から油圧荷重の実績値Pt及びストローク量の実績値Stを取得する(ステップS401)。次に、作用荷重算出部480が油圧荷重の実績値Ptと、荷重誤差Pmとに基づいて現在の作用荷重Pt’を算出する(ステップS403)。ステップS403は、本発明に係る作用荷重算出ステップに対応する。
次に、変換部590が、作用荷重Pt’と、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、補正曲げモーメントMt’及び曲率κtを算出する(ステップS405)。
次に、作図部610が補正曲げモーメントMt’及び曲率κtの組み合わせをXY平面上にプロットする(ステップS407)。続いて、傾き算出部520は、補正曲げモーメントMt’及び曲率κtから補正曲げモーメントMt’についてのM-κ線図の傾きe’tを算出する(ステップS409)。傾き算出部520は、算出したM-κ線図の傾きe’tについての情報を、塑性域判定部530及び変形量算出部540に提供する。
ステップS409の後、塑性域判定部530は、傾きe’tに基づいて、現在の被矯正材2の変形が塑性域における変形(塑性変形)か否かを判定する(ステップS411)。具体的には、塑性域判定部530は、算出された傾きe’tに基づいて、当該傾きの変化量の絶対値Δe’(=|e’t-e’(t-1)|)が、所定の閾値Δe’thよりも大きいか否かを判定する。ステップS411では、最新のタイミングで取得された補正曲げモーメントMt’及び曲率κtに基づく傾きe’tと、1つ前のタイミングで取得された補正曲げモーメント及び曲率に基づく傾きe’(t-1)との差分を取ることにより、傾きの変化量の絶対値Δe’が算出され、当該Δe’が閾値Δe’thと比較される。ステップS411における処理は、塑性域判定部530によって実行される処理に対応している。
ステップS411において、傾きの変化量の絶対値Δe’が閾値Δe’th以下であると判定された場合(ステップS411/NO)、現在の被矯正材2の変形が弾性域での変形であることを示しているため、この場合には、ステップS401に戻り、ステップS401~ステップS409における処理を繰り返す。
一方、ステップS411において、傾きの変化量の絶対値Δe’が閾値Δe’thよりも大きいと判定された場合(ステップS411/YES)、ステップS413に進む。ステップS413では、変形量算出部540が、現時点での補正曲げモーメントMt’及び曲率κtと、M-κ線図の弾性域の傾きEと、に基づいて、補正曲げモーメントの予測値Mp’と曲率予測値κpとを算出する。弾性域での傾きEを、傾きの変化量の絶対値Δe’が閾値Δe’thよりも大きくなったタイミングまでに求められた傾きe’1、e’2、・・・、e’(n-1)の平均値として設定する。
ステップS413の後、加圧停止判定部550は、予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定する(ステップS413)。予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth超である場合(ステップS413/NO)、加圧停止判定部550は、変形量算出部540にその旨の情報を提供し、変形量算出部540は、次のタイミングの補正曲げモーメントMt’及び曲率κtに基づいて、ステップS401以降の処理を、予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下と判定されるまで繰り返す。そして、予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下であると判定された場合(ステップS413/YES)、加圧停止判定部550は、その旨の情報を出力制御部560に提供する。なお、ステップS415における処理は、加圧停止判定部550によって実行される処理に対応している。
予測曲率κcと目標曲率κaとの差Δκが所定の閾値Δκth以下であると判定された後、出力制御部560は、プレス装置100による被矯正材2への負荷を停止する(ステップS417)。
以上、変形例に係るプレス矯正方法の処理手順について説明した。なお、図25に示した処理手順はあくまでも一例であり、図25に示した各ステップの順序が可能な範囲で前後してもよい。
(4-3.第2の実施形態の変形例のまとめ)
以上説明したように、本変形例によれば、第2の実施形態に係るプレス矯正方法において、M-κ関係に基づいて目標ストローク量を決定する際に、荷重誤差Pmが考慮される。具体的には、プレス中に取得される油圧荷重の実績値Ptが荷重誤差Pmの値を用いて補正され、その補正されて得られた作用荷重Pt’を用いて補正曲げモーメントMt’が算出される。そして、補正曲げモーメントMt’についてのM-κ線図が作成され、M-κ線の傾きが求められる。従って、この傾きに基づいて求められる現時点で除荷した場合の被矯正材2の曲率を、より精度良く予測することが可能となる。よって、変形例によれば、第2の実施形態と同様の効果が得られるとともに、その矯正の精度を更に向上させることが可能になる。
(5.ハードウェア構成について)
次に、図26を参照しながら、本発明の実施形態に係る制御装置200、400、500、600のハードウェア構成について、詳細に説明する。図26は、本発明の実施形態に制御装置200、400、500、600のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
制御装置200、400、500、600は、主に、CPU(Central Processing Unit)901と、ROM(Read Only Memory)903と、RAM(Random Access Memory)905と、バス907と、を備える。制御装置200、400、500、600は、必要に応じて、更に、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、又はリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、制御装置200、400、500、600内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。作図部210、410、510、610、傾き算出部220、520、塑性域判定部230、530、変形量算出部240、540、加圧停止判定部250、550、出力制御部260、560、及び作用荷重算出部480は、CPU901によって実現され得る。また、記憶部270、570の機能は、ROM903又はRAM905によって実現され得る。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、制御装置200、400、500、600の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。更に、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。ユーザは、この入力装置909を操作することにより、制御装置200、400、500、600に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプなどの表示装置や、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、制御装置200、400、500、600が行った各種処理により得られた結果を出力する。
また、出力装置911は、制御装置200、400、500、600が行った各種処理により得られた結果を、テキストで表示してもよいし、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力してもよい。出力装置911により表示装置300の機能は実現され得る。
ストレージ装置913は、制御装置200、400、500、600の記憶部270,570の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、制御装置200、400、500、600に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、又は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を制御装置200、400、500、600に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS-232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、制御装置200は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線もしくは無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、社内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。通信部280、580の機能は、通信装置919によって実現され得る。
以上、本発明に係る制御装置200、400、500、600の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
(6.補足)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した各実施形態及びそれらの変形例は組み合わせてもよい。
本発明の効果を確認するために、本発明に係るプレス矯正方法を実際の操業に用いているプレス装置に適用し、以下の条件の下で同様の特性を有する複数の被矯正材(鋼板)に対してプレス矯正を施す実験を行った。
(条件)
被矯正材の板厚t=約50(mm)
シム板間の距離Ls=約450(mm)
被矯正材のヤング率E=約210000(MPa)
被矯正材の降伏応力σy=約480(MPa)
被矯正材の加工硬化係数Fn=約1500(MPa)
被矯正材の矯正前の曲率κ0=約0.005(1/m)
変形例における負荷時の荷重誤差Pm(I)についての補正係数δ=0.10
変形例における除荷時の荷重誤差Pm(II)についての補正係数η=0.51
当該実験では、上述した第1の実施形態に係るプレス矯正方法、変形例に係るプレス矯正方法に従って、それぞれ上記の条件でプレス矯正を行い、その結果を比較した。なお、当該実験では、所望の形状が得られるまでプレスを行うのではなく、等しい目標矯正量Saに対して第1の実施形態に係るプレス矯正方法、変形例に係るプレス矯正方法とをそれぞれ用いてプレスを行い、各方法における予測値と矯正前後における被矯正材の矯正量の実測値との差を比較した。
結果を下記表1に示す。表1では、矯正前後における被矯正材の矯正量の実測値と、第1の実施形態に係るプレス矯正方法において算出される被矯正材の矯正量hと、変形例に係るプレス矯正方法において算出される被矯正材の矯正量h’を記載するとともに、これら算出された矯正量h、h’と実測値との誤差を、予測誤差として記載している。また、表1における「除荷時油圧荷重P(ton)」は、除荷時における油圧荷重Ptの値を示している。
Figure 0007485927000002
上記表1に示すように、本発明にかかるプレス矯正システムによれば、精度良く被矯正材を矯正することが可能である。
更に、変形例では、特に除荷時の油圧荷重Pが比較的大きい場合において、第1の実施形態よりも、矯正量h’をより精度良く予測できていることが分かる。これは、変形例では、荷重誤差Pmの影響を排除したF-S関係を用いて目標ストローク量を算出しているからである。従って、変形例に係るプレス矯正方法に従って計算される矯正量h’が目標矯正量に一致するようにプレス矯正を行うことにより、実際の矯正量がその計算された矯正量h’と略一致するような、すなわち、より精度の高い矯正を行うことが可能となる。
本発明の変形例の効果について更に確認するために、厚板工場において、第1の実施形態に係るプレス矯正方法、変形例に係るプレス矯正方法をそれぞれ用いて、板厚40mm、板幅2000mm、板長12000mmの板材(金属種:40kgf/mm鋼)について、1枚ずつプレス矯正を実行した。これら2枚の板材としては、プレス前において略同様の形状を有するものを選定した。具体的には、これら2枚の板材は、ともに、プレス前において、板幅方向に反った形状を有し、その急峻度λは約1.0%であった。本実施例では、このような形状を有する板材について、第1の実施形態に係るプレス矯正方法、変形例に係るプレス矯正方法をそれぞれ用いて、急峻度λが0.1%以下になるまでプレス矯正を行い、その際のプレス回数の総数を比較した。ここで、急峻度λとは、反りのピッチL,反り高さhとしたときにλ=h/Lで定義した量であり、以下の方法で求めた。すなわち、プレス後の板幅方向の表面高さ分布を測定し、最大値をhとした。今回対象とした被矯正材は幅方向全域に渡る反りを有していたことから、反りピッチLは板幅に等しいとした。
結果を下記表2に示す。なお、表2において、「予測誤差の平均値(mm)」は、矯正量の予測誤差のプレス10回分の平均値である。
Figure 0007485927000003
表2に示すように、第1の実施形態に係るプレス矯正方法を適用した場合には、10回プレスを行った段階では、急峻度が0.5%であり、所望の平坦度(急峻度0.1%以下)を有するまで被矯正材を矯正するためのプレス回数は22回(追加プレス回数:12回)であった。第1の実施形態に係るプレス矯正方法により、所望の矯正量が得られるようなラムヘッドの目標ストローク量をより適切に決定することで、精度良く被矯正材を矯正することが可能であった。また、この際の予測誤差の当初のプレス10回分における平均値は1.8mmであった。
変形例に係るプレス矯正方法を適用した場合には、10回プレスを行うことにより、急峻度が0.1%以下となり、プレス矯正を終了することができた。また、この際の予測誤差のプレス10回分の平均値は0.5mmであり、第1の実施形態における予測誤差の当初のプレス10回分における平均値1.8mmより小さくなった。変形例に係るプレス矯正方法では、第1の実施形態に係るプレス矯正方法に比べて、矯正量の予測誤差が小さいために、1回のプレスにおける矯正の精度が高く、結果的に、より少ない回数のプレスで所望の形状を得ることができたと考えられる。
以上から、変形例に係るプレス矯正方法を適用することにより、第1の実施形態に係るプレス矯正方法に比べて、矯正量の予測誤差をより小さくすることができ、その結果、より少ないプレス回数で所望の形状が得られることが確認できた。つまり、変形例に係るプレス矯正方法を適用することにより、矯正の精度をより向上させることができるため、その結果、生産性をより向上させることができることが確認できた。
第2の実施形態及び同実施形態の変形例の効果を確認するために、本発明に係るプレス矯正方法を実際の操業に用いているプレス装置に適用し、以下の条件の下で同様の特性を有する複数の被矯正材(鋼板)に対してプレス矯正を施す実験を行った。
(条件)
被矯正材:板厚t=50(mm)
板幅w=2000(mm)
長さl=5000(mm)
ヤング率E=200(GPa)
降伏応力σy=800(MPa)
被矯正材の形状:板幅方向の反り
矯正前の曲率(初期曲率)κ=0.015/m(上に向かって凸状)
シム板間の距離Ls=640(mm)
許容最大表面高さhmax=2.0mm
許容最大曲率κmax=0.004/m
第2の実施形態の例、第2の実施形態の変形例では、それぞれ上述した第2の実施形態に係るプレス矯正方法、第2の実施形態の変形例に従ってプレス矯正を行った。なお、第2の実施形態の変形例では、下記式(107)及び式(108)を用いて、プレス中の油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptから前記被矯正材に作用する荷重である作用荷重Pt’に補正した。
Pt’=Pt+Pm(I) …式(107)
Pt’=Pt+Pm(II) …式(108)
荷重誤差Pm(I)には、油圧荷重Ptに補正係数δ=0.10を乗じた値を用いた。また、荷重誤差Pm(II)には、油圧荷重Ptni補正係数η=0.51を乗じた値を用いた。
比較例では、本発明に係る制御装置は使用せず、オペレータが矯正前の被矯正材の形状を金尺等によって測定し、その測定結果に基づいて、オペレータの経験に基づいて被矯正材をプレスした。また、第1の実施形態の例として、上述した第1の実施形態に係るプレス矯正方法に従ってプレス矯正を行った。
上記のそれぞれの例では、同じ被矯正板の板幅方向両端部と中央部の3か所に対して、それぞれ長手方向に5か所プレスした。合計で15回プレスして、各矯正位置での残留曲率κresのうち最も大きい値と、最大表面高さhを測定した。
結果を下記表3に示す。表3に、上記各例における矯正前後の曲率と最大表面高さhを示す。
Figure 0007485927000004
上記表3に示すように、本発明にかかるプレス矯正システムによれば、精度良く被矯正材を矯正することが可能である。
第2の実施形態にかかるプレス矯正システムによれば、曲率を平坦度の指標とすることで、第1の実施形態と比較して、残留曲率κresをより小さくすることができる。更に、第2の実施形態の変形例に係るプレス矯正システムによれば、より精度の高い矯正を行うことが可能である。
2 被矯正材
10 プレス矯正システム
100 プレス装置
110 ベッド
120 シム板
130 押圧機構
131 ラムヘッド
132 シリンダー
200、400、500、600 制御装置
210、410、510、610 作図部
220、520 傾き算出部
230、530 塑性域判定部
240、540 変形量算出部
250、550 加圧停止判定部
260、560 出力制御部
270、570 記憶部
280、580 通信部
300 表示装置
480 作用荷重算出部
590 変換部

Claims (12)

  1. 油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで板状の被矯正材をプレスするプレス装置と、
    前記ラムヘッドのストローク量を制御する制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、
    前記ストローク量の実績値Stに対する油圧荷重の実績値Ptの傾きを算出する傾き算出部と、
    前記傾き算出部により算出された前記ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定部と、
    前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する変形量算出部と、
    前記油圧荷重の予測値Ppが前記被矯正材の変形開始時の油圧荷重Piと等しくなるときの前記ストローク量の予測値Spを予測矯正量Scとし、前記予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差が所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定する加圧停止判定部と、
    前記加圧停止判定部により前記予測矯正量Scと前記目標矯正量Saとの差が所定の前記閾値ΔSth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御部と、を有し、
    前記変形量算出部は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する、又は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、現時刻tにおけるPt/Stと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する、プレス矯正システム。
  2. 下記式(1)及び下記式(2)を用いて前記油圧荷重の実績値Ptを前記被矯正材に作用する荷重である作用荷重Pt’に補正する作用荷重算出部を更に備える、
    請求項1に記載のプレス矯正システム。
    Pt’=Pt+Pm(I) …式(1)
    Pt’=Pt+Pm(II) …式(2)
    ここで、
    Pt:前記油圧荷重の実績値
    Pm(I):前記ラムヘッドによる負荷時の前記油圧荷重の補正量
    Pm(II):前記除荷時の前記油圧荷重の補正量
    である。
  3. 前記出力制御部は、更に、前記変形量算出部により算出された現時刻t若しくは時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spがプロットされたグラフ、又は前記変形量算出部により算出された現時刻t若しくは時刻t+Δt以降の作用荷重の予測値Pp’と前記ストローク量の予測値Spがプロットされたグラフを逐次表示する出力を制御する、請求項2に記載のプレス矯正システム。
  4. 油圧シリンダーに備えられたラムヘッドによる板状の被矯正材のプレス中に取得される前記ラムヘッドの現時刻tにおける油圧荷重の実績値Ptとストローク量の実績値Stの組み合わせ、及び、前記油圧荷重の実績値Ptと、前記ストローク量の実績値Stと、弾性域の傾きEと、に基づいて予測された、現時刻tにおいて前記油圧荷重が除荷されたときの現時刻t以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spの組み合わせがプロットされたXY平面、又は、現時刻tにおける、前記油圧荷重の実績値Ptと、前記ストローク量の実績値Stと、塑性域での現時刻tにおける前記ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの比Pt/Stと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの前記油圧荷重及び前記ストローク量の組み合わせ、及び、前記時刻t+Δtの時点で前記油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spの組み合わせがプロットされたXY平面の少なくともいずれかを逐次表示する出力を制御する、出力制御装置。
  5. 油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで板状の被矯正材をプレスするプレス矯正方法であって、
    ラムヘッドのストローク量の実績値Stに対する油圧荷重の実績値Ptの傾きを算出する傾き算出ステップと、
    前記傾き算出ステップにおいて算出された前記ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定ステップと、
    前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する変形量算出ステップと、
    前記油圧荷重の予測値Ppが前記被矯正材の変形開始時の油圧荷重Piと等しくなるときの前記ストローク量の予測値Spを予測矯正量Scとし、前記予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差が所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定する加圧停止判定ステップと、
    前記予測矯正量Scと前記目標矯正量Saとの差が所定の前記閾値ΔSth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御ステップと、
    を含み、
    前記変形量算出ステップでは、前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spが算出される、又は、前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、現時刻tにおけるPt/Stと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spが算出される、プレス矯正方法。
  6. 油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで、当該ラムヘッドのストローク量を制御して板状の被矯正材をプレスする際に、
    コンピュータを、
    前記ストローク量の実績値Stに対する油圧荷重の実績値Ptの傾きを算出する傾き算出部と、
    前記傾き算出部により算出された前記ストローク量の実績値Stに対する前記油圧荷重の実績値Ptの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定部と、
    前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する変形量算出部と、
    前記油圧荷重の予測値Ppが前記被矯正材の変形開始時の油圧荷重Piと等しくなるときの前記ストローク量の予測値Spを予測矯正量Scとし、前記予測矯正量Scと目標矯正量Saとの差が所定の閾値ΔSth以下であるか否かを判定する加圧停止判定部と、
    前記予測矯正量Scと前記目標矯正量Saとの差が所定の前記閾値ΔSth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御部と、
    として機能させ、
    前記変形量算出部が、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出する、又は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記油圧荷重の実績値Pt及び前記ストローク量の実績値Stと、現時刻tにおけるPt/Stと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記油圧荷重の予測値Ppと前記ストローク量の予測値Spを算出するための、プログラム。
  7. 油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで板状の被矯正材をプレスするプレス装置と、
    前記ラムヘッドのストローク量を制御する制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、
    前記プレス中の前記油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出する、変換部と、
    前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの傾きを算出する傾き算出部と、
    前記傾き算出部により算出された、前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定部と、
    前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出する変形量算出部と、
    前記曲げモーメントの予測値Mpが前記被矯正材の変形開始時の前記曲げモーメントMiと等しくなるときの前記曲率の予測値κpを予測曲率κcとし、前記予測曲率κcと目標曲率κaとの差が所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定する加圧停止判定部と、
    前記加圧停止判定部により前記予測曲率κcと前記目標曲率κaとの差が所定の前記閾値Δκth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御部と、
    を有し、
    前記変形量算出部は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出する、又は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、現時刻tにおけるMt/κtと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出する、プレス矯正システム。
  8. 下記式(3)及び下記式(4)を用いて前記油圧荷重の実績値Ptを前記被矯正材に作用する荷重である作用荷重Pt’に補正する作用荷重算出部を更に備え、
    前記変換部は、前記油圧荷重の実績値Ptに代えて前記作用荷重Pt’を用いて補正曲げモーメントMt’を算出する、請求項7に記載のプレス矯正システム。
    Pt’=Pt+Pm(I) …式(3)
    Pt’=Pt+Pm(II) …式(4)
    ここで、
    Pt:前記油圧荷重の実績値
    Pm(I):前記ラムヘッドによる負荷時の前記油圧荷重の補正量
    Pm(II):前記除荷時の前記油圧荷重の補正量
    である。
  9. 前記出力制御部は、更に、前記変形量算出部により算出された現時刻t若しくは時刻t+Δt以降の前記曲げモーメントの予測値Mpと前記曲率の予測値κpがプロットされたグラフ、又は前記変形量算出部により算出された時刻t若しくはt+Δt以降の前記補正曲げモーメントの予測値Mp’と前記曲率の予測値κpがプロットされたグラフを逐次表示する出力を制御する、請求項8に記載のプレス矯正システム。
  10. 油圧シリンダーに備えられたラムヘッドによる板状の被矯正材のプレス中に取得される前記ラムヘッドの現時刻tにおける、前記油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、に基づいて算出された、曲率κtと曲げモーメントMtの組み合わせ、及び、前記曲率κtと、前記曲げモーメントMtと、弾性域の傾きEと、に基づいて予測された、現時刻tにおいて前記油圧荷重が除荷されたときの現時刻t以降の前記曲率の予測値κpと前記曲げモーメントの予測値Mpの組み合わせがプロットされたXY平面、又は、現時刻tにおける、前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、塑性域での現時刻tにおける前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの比Mt/κtと、に基づいて予測された時刻t+Δtでの前記曲げモーメント及び前記曲率の組み合わせ、及び、前記時刻t+Δtの時点で前記油圧荷重が除荷した場合における時刻t+Δt以降の前記曲げモーメントの予測値Mpと前記曲率の予測値κpの組み合わせがプロットされたXY平面の少なくともいずれかを逐次表示する出力を制御する、出力制御装置。
  11. 油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで板状の被矯正材をプレスするプレス矯正方法であって、
    前記プレス中の前記油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出する、変換ステップと、
    前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの傾きを算出する傾き算出ステップと、
    前記傾き算出部により算出された、前記曲率κtに対する前記曲げモーメントの実績値Mtの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定ステップと、
    前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、前記曲げモーメントの予測値Mpと前記曲率の予測値κpを算出する変形量算出ステップと、
    前記曲げモーメントの予測値Mpが前記被矯正材の変形開始時の前記曲げモーメントMiと等しくなるときの前記曲率の予測値κpを予測曲率κcとし、前記予測曲率κcと目標曲率κaとの差が所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定する加圧停止判定ステップと、
    前記加圧停止判定ステップにおいて前記予測曲率κcと前記目標曲率κaとの差が所定の前記閾値Δκth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御ステップと、
    を含み、
    前記変形量算出ステップでは、前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpが算出される、又は、前記塑性域判定ステップにおいて塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、現時刻tにおけるMt/κtと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpが算出される、プレス矯正方法。
  12. 油圧シリンダーに備えられたラムヘッドで、当該ラムヘッドのストローク量を制御して板状の被矯正材をプレスする際に、
    コンピュータを、
    前記プレス中の前記油圧シリンダーによる油圧荷重の実績値Ptと、ストローク量の実績値Stと、シム板間隔Lと、プレス位置xと、から、曲げモーメントMt及び曲率κtを算出する、変換部と、
    前記曲率κtに対する前記曲げモーメントMtの傾きを算出する傾き算出部と、
    前記傾き算出部により算出された、前記曲率κtに対する前記曲げモーメントの実績値Mtの前記傾きに基づいて、前記被矯正材の変形が塑性域における変形か否かを判定する塑性域判定部と、
    前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、前記曲げモーメントの予測値Mpと前記曲率の予測値κpを算出する変形量算出部と、
    前記曲げモーメントの予測値Mpが前記被矯正材の変形開始時の前記曲げモーメントMiと等しくなるときの前記曲率の予測値κpを予測曲率κcとし、前記予測曲率κcと目標曲率κaとの差が所定の閾値Δκth以下であるか否かを判定する加圧停止判定部と、
    前記加圧停止判定部により前記予測曲率κcと前記目標曲率κaとの差が所定の前記閾値Δκth以下であると判定されたときに、前記プレスを停止する信号の出力を制御する出力制御部と、
    として機能させ、
    前記変形量算出部が、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、当該塑性域となる前の弾性域の傾きEと、に基づいて、現時刻tで前記油圧荷重を除荷した場合における現時刻t以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出する、又は、前記塑性域判定部により塑性域における変形と判定された場合に、現時刻tにおける前記曲げモーメントMt及び前記曲率κtと、現時刻tにおけるMt/κtと、前記傾きEと、に基づいて、時刻t+Δtで前記油圧荷重を除荷した場合における時刻t+Δt以降の曲げモーメントの予測値Mpと曲率の予測値κpを算出するためのプログラム。
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