JP7484963B2 - 製鉄ダスト集塵水の濃化処理方法および焼結用造粒原料の製造方法 - Google Patents

製鉄ダスト集塵水の濃化処理方法および焼結用造粒原料の製造方法 Download PDF

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本発明は、高炉ダストや転炉ダスト等の製鉄ダストを含む集塵水の濃化処理方法とそうした処理によって得られた集塵水を用いて行う焼結用造粒原料の製造方法に関する。
高炉から排出される高炉ガスや転炉から排出される転炉ガスは、主として多量の鉄分からなる粉塵を含んでおり、これらは主として乾式および/または湿式集塵器を介して処理されることで、その多くは再び製鉄用原料として再利用されるのが普通である。中でも湿式処理された高炉ダスト等の集塵水については、一般的にはシックナーに集められ、下方より掻き出される製鉄スラッジと上澄液とに分離され、前者を製鉄原料として利用する方法が一般的である。
こうした集塵水の処理に関して、従来、例えば特許文献1では、アルミナ製造プロセスで発生するスラリーの回収時に、沈降濃縮されたスラリーの上澄層と濃密層との界面位置を測定して、その界面高さを所定の範囲内に制御する方法を開示している。また、特許文献2には、気体と液体とを曝気処理を通じて効率よく接触させるためのバブリング装置と共に高炉または転炉の集塵水の処理方法が開示されている。
さらに、いわゆる製鉄ダストの利用について、例えば特許文献3には、製鉄ダストの脱水ケーキを大気養生した後に、その養生ケーキを造粒して塊成化物とし、これをシャフト炉や転炉、電気炉等の製鉄原料として再利用する方法が開示されている。
特開2000-55714号公報 特開2012-86161号公報 特開2011-149095号公報
前記特許文献1に開示されている製鉄ダスト集塵水の処理方法は、単に上澄層と濃密層との界面高さを制御する方法を開示するに止まり、いわゆる沈降濃縮されたスラリーの濃度を調整する方法を提案するものではない。一方、特許文献2に開示されている方法は、集塵水のpH調整を目的としてバブリング用ガスと集塵水とを曝気処理する方法の提案であり、いわゆるそのままで製鉄原料とくに焼結用原料として利用できるようにするためのスラリー濃度の調整を目的とした処理を提案するものではない。
さらに、特許文献3は、製鉄ダスト自体を塊成化する目的で処理する方法の提案であって、いわゆる製鉄ダストを含む集塵水を高濃度化処理して、そのまま焼結用原料として特に造粒焼結原料を製造する際の濃化集塵水の利用について提案するものではない。
そこで、本発明の目的は、製鉄ダストを含む集塵水そのものを製鉄用原料として利用可能な状態にするための処理方法を提案すること、およびそうした処理によって得られた濃化集塵水それ自体を焼結用造粒原料製造時の造粒化資材として直接用いるための方法を提案することにある。
前述した従来技術が抱えている課題を解決しかつ上記の目的を実現するための方法として本発明は、第一に、製鉄ダスト類を含有する集塵水をタンク等沈殿槽に導き、沈降法によって上澄層と沈殿層とに分離する予備処理工程と、上記上澄層を構成している上水の少なくとも一部を排水することによって該集塵水の濃度を調整する濃化工程と、上記濃化工程での処理の後に、前記沈殿槽(タンク)内の濃化集塵水を攪拌することによって、固形分の沈降を抑制すると共に該濃化集塵水の均質化を図る均一化工程と、を含むことを特徴とする製鉄ダスト集塵水の濃化処理方法を提案する。
なお、本発明に係る前記濃化処理方法においては、
(1)前記濃化工程として、超音波界面レベル計を用いて上澄層と沈殿層との界面位置を検知して、両者の界面位置を調整すること、
(2)前記濃化工程として、前記集塵水に対する製鉄ダスト類の割合を30%~50%の範囲内に調整すること、
(3)前記均一化工程として、沈殿槽内の濃化処理済み集塵水を気体を用いて攪拌すること、
が、より好ましい実施形態である。
また、本発明は、第二に、製鉄ダスト類を含有する集塵水を沈殿槽に導き、沈降法によって上澄層と沈殿層とに分離する予備処理工程と、上記上澄層を構成している上水の少なくとも一部を排水することによって該集塵水の濃度を調整する濃化工程と、上記濃化工程での処理の後に、沈殿槽内の濃化集塵水を攪拌することによって、固形分の沈降を抑制すると共に該濃化集塵水の均質化を図る均一化工程と、を含み、均質化を図った前記濃化集塵水を、焼結用原料の造粒に当っての造粒水として用いることを特徴とする焼結用造粒原料の製造方法を提案する。
なお、本発明に係る前記濃化工程においては、前記集塵水に対する製鉄ダスト類の割合を30%~45%の範囲内に調整すること、がより好ましい実施形態である。
前述した要旨構成に係る本発明方法によれば、基本的には製鉄ダストのより有効な利用が可能になると共に、そのためのより簡便な製鉄ダスト集塵水の処理が可能となる方法を提案することができる。とくに、製鉄ダスト集塵水を濃化処理した後に撹拌による均一化処理によって得られる濃化集塵水をそのまま製鉄用原料、すなわち焼結用造粒原料製造時の造粒化資材兼焼結用原料の一部として用いることができる。
一方で、製鉄ダスト集塵水を従来のように沈降・脱水・乾燥して使用する手間がなくなり、設備投資等の負担も軽減され、製鉄ダスト処理が容易になる。
しかも、本発明については、製鉄ダスト集塵水の処理に際し、これを製鉄原料として用いるための処理が単にこの集塵水の濃化処理を主とする方法によって達成されるため、燃料の使用が抑えられることから、脱炭素化技術の一端を担う技術として極めて有効な方法を提案するものと言える。
集塵水の貯留用沈殿槽とこの槽に対して界面レベル計等を設置した様子を示す装置の略線図である。 界面位置と沈殿層の濃度との関係を示す図である。 焼結用造粒原料製造設備の一例を示す略線図である。 濃化集塵水(スラリー)を焼結用造粒原料の製造に用いたときの造粒粒子の平均径に与える影響を示す図である。 濃化集塵水(スラリー)を焼結用造粒原料の製造に用いたときの冷間通気性に与える影響を示す図である。 濃化集塵水(スラリー)を焼結用造粒原料の製造に用いたときの焼成時間に与える影響を示す図である。 濃化集塵水(スラリー)を焼結用造粒原料の製造に用いたときの+5mm生産率に与える影響を示す図である。
製鉄所等で発生する製鉄ダストとしては、高炉ダスト、スラッジ、転炉等の製鋼ダスト、ミルスケールなどからなるものがある。これらは金属鉄や酸化鉄を多量に含有する優れた鉄源の一種である。そこで、こうした製鉄ダストを製鉄原料の一つとして使用する場合、従来は、脱水された製鉄ダストの脱水ケーキをまず大気中で大気養生によって乾燥し、必要に応じて粉砕して得られる粉末状態のものを造粒してコールドペレットや焼成ペレットの状態にしてから使用するのが普通であった。
しかし、本発明の好ましい実施形態では、製鉄ダストの集塵水を従来のように脱水し、乾燥し、整粒するなどの処理を経て得られる一般的な製鉄原料の状態にしてから用いるのではなく、単に濃化処理した集塵水の状態のものを直接、これを製鉄原料として使用できるようにすることにある。
<第1実施形態>
そのために、本発明の第1の実施形態では、図1に例示するような貯留タンク1を利用して製鉄工場で発生した製鉄ダスト(固形物)を含む集塵水を予備処理し、次いで濃化処理した後、さらに均一化処理を行うことを特徴としている。
即ち、その集塵水の処理に当っては、まず沈殿槽である貯留タンク1に対し、集塵水供給管2と上水抜取り管3とを配設したものを用いる。その集塵水供給管2を通じて貯留タンク1内に導入された製鉄ダストが含まれる集塵水は、時間の経過とともに沈降現象を伴って製鉄ダストの濃度が低い上澄層と製鉄ダストの濃度が高い沈殿層とに分離する(予備処理工程)。なお、一例として、貯留タンク1の上部に生じる上澄層の固形物濃度(製鉄ダストの濃度)は3%以下となり、貯留タンク1の下部に生じる沈殿層の固形物濃度(製鉄ダストの濃度)は8%以上となる。ここで、本実施形態において、特に記載がない場合、「濃度」とは「重量%濃度(mass%)」のことである。
本発明の好ましい実施形態においては、前記貯留タンク1の上部には超音波界面レベル計からなる界面レベル測定機器4を設置し、前記上澄層と沈殿層の界面位置を自動的に検知できるようにする。具体的には、貯留タンク1の上部から照射された超音波が沈殿層に含まれる製鉄ダストに当たって跳ね返ってくる時間を測定することで、貯留タンク1の上部に存在する上澄層と、下部に存在する沈殿層との界面位置(集塵水表層からの距離)を検知することが可能である。なお、上記界面レベル測定機器4としては、超音波界面レベル計に限らず、超音波濃度計やレーザー式・光式の濃度計や浮き玉等を使用してもよい。
次に、前記予備処理工程において、沈降法により上澄層と沈殿層とに分離させた集塵水は、その後、上澄層を構成する上水(製鉄ダストをほとんど含まない水)の一部を上水抜取り管3を介して排水することにより、集塵水の濃度(界面位置から算出することができる)を所定のレベルに調整する(濃化工程)。
以下、前記上澄層と沈殿層とのレベル調整(界面位置調整)をする濃化処理方法についての考え方を図2にもとづき説明する。
図2は、界面位置と沈殿層の濃度との関係を示すものである。この図に示すように、例えば、集塵水濃度というのは、初期集塵水高さを1900mmとしたとき、上澄層と沈殿層の分離前、すなわち界面位置が0mmである場合の初期集塵水濃度(沈殿層濃度)が8%であったのに対し、上澄層と沈殿層の分離が進んで界面位置が1600mmになった場合、沈殿層の濃度は40%に達することが分かる。なお、この場合、集塵水密度は4.8g/cmとして計算した。
ここで、「界面位置が1600mmになった場合の沈殿層の濃度」は、「上水を高さ1600mm抜き取った場合の集塵水の濃度」と言い換えることができる。即ち、初期の集塵水濃度や集塵水密度、濃化後の界面位置、及び貯留タンク1の容積等が分かれば、上水を抜き取った後の集塵水の濃度を予測することが可能である。なお、初期の集塵水濃度・密度の測定方法としては、任意の方法を用いることができるが、例えば集塵水からサンプルを採取し、そのサンプルの濃度・密度を測定する方法等が挙げられる。
なお、本発明において求められる集塵水の濃度、すなわち集塵水に対する製鉄ダスト類の割合としては、30%~50%の範囲内に調整することが好ましい。その理由は、濃度30%未満の場合、集塵水中に含まれる製鉄ダストの濃度が低すぎて、後述する製鉄原料として用いることができない。一方で、その濃度が50%超の場合は逆に濃度が高すぎて濃化処理のための撹拌が十分にできず集塵水の濃度を均一にすることが困難になると共に、搬送性が低下することに加え、液状製鉄原料としての利用が阻害される。
次に、上澄層と沈殿層との界面位置の測定、調整により、該上澄層が必要な量の上水となるようにその少なくとも一部を排水して調整する。この処理により、所定の濃度(30~50%)の集塵水になると考えられるレベルにまで達したとき、次にエアコンプレッサ(気体)を用いるバブリング装置5、または撹拌羽根を使って該濃化集塵水を撹拌して固形分(製鉄ダスト、スラッジ)の沈降を抑制すると共に濃度の均一化を図り、液状の製鉄原料となるようにする(均一化工程)。
<第2実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係る焼結用造粒原料の製造方法について説明する。前述した製鉄ダスト集塵水に対し、予備処理、濃化処理及び均一化処理を施すことによって得られる濃化集塵水について、本発明ではこれを焼結用原料の一部として使用すること、同時にその焼結用原料の造粒に際して必要となる造粒水の役割をも付与することで、所謂その両方の役割を兼用させることにしたのである。
図3は、本発明の焼結用原料の製造設備列の略線図である。この図に示すように、高炉ダストや転炉ダストの湿式処理によって発生する集塵水(水分の多い製鉄スラッジ、スラリー)は、前述したように、まず貯留タンク1に集められ、そこに静置して上澄層と沈殿層とに分離させる。次いで、濃化に必要なレベルになるように上水の界面レベル調整を経て望ましい濃化レベルに導いてから主としてバブリングを施すことにより、均質化処理する。このようにして得られた濃化-均質化した集塵水を、造粒焼結原料製造装置であるドラムミキサー6内に造粒水として散水ノズルから噴霧する。すなわち、製鉄ダスト集塵水の濃化処理によって得られる濃化集塵水を、焼結用原料の造粒に当っての造粒水として用いるのである。
この場合、スラリー(製鉄ダスト等の微粉粒子が懸濁した水、即ち濃化集塵水)を造粒水として使用して焼結用造粒原料の製造を行うことになる。そのため、この濃化集塵水中に含まれる微粉粒子がバインダーとして寄与し、微粉粒子の付着力によって焼結用原料の造粒性を向上させることができる。なお、第1実施形態では、集塵水の濃度、すなわち集塵水に対する製鉄ダスト類の割合を30%~50%の範囲内に調整していた。しかし、第2実施形態のように集塵水を造粒水として噴霧する場合は、集塵水の濃度が45%超だと散水ノズルが詰まって流量が低下する等、集塵水の噴霧性が悪化するおそれがある。そのため、集塵水の濃度は30%~45%の範囲内に調整することが好ましい。
この実施例は、10μm以下の製鉄ダスト(高炉ダスト、転炉ダスト、ミルスケール等)を湿式集塵器を使って回収する際に生じた濃化集塵水を、造粒時の焼結原料中に添加し混ぜて使用することで、生産性にどのような影響があるのかを調べた例である。その結果、低濃度の集塵水では、焼結原料中の適正水分維持の制約により、少量しか添加することができない。なお、好ましくは固形分40%程度の濃化集塵水を用いた方が、製鉄ダストを多量に添加できるため、生産性向上への寄与が大きい。一方で、あまりに高濃度の集塵水を用いたのでは流動性やハンドリング性が低下し、ノズルの詰まりやポンプの消耗が生じやすいことも分かった。さらに、こうした濃化集塵水を長時間静置すると濃度が高さ方向で不均一になるため取扱いが困難になることも分かった。また、集塵水のハンドリング性を高めることで濃化集塵水の焼結用原料としての使用が拡大できることも分かった。
下記の表1は、固形分40%の集塵水を一日放置した後の高さ方向の濃度分布を示したものである。表に示す結果から分かるように、均質化処理をしていない場合(比較例)、均質性が悪く、また撹拌機かガスバブリングのどちらがいいかと言うと、ガスバブリングの方がメンテナンス性の点で優れていることが分かった。
Figure 0007484963000001
次に、実施例1で用いた濃化集塵水を用いた鍋試験、濃化集塵水を用いなかった鍋試験での造粒焼結原料製造時の流系の大きさ、冷間通気性、焼成時間および生産性に与える影響について調べた。以下、この試験の条件について表2、表3に示す。
Figure 0007484963000002
Figure 0007484963000003
表2、表3に示す条件の下で鍋試験による焼結用造粒原料の焼結性などに及ぼす影響を、それぞれ図4~図6に示した。即ち、図4は造粒粒子の平均径、図5は冷間通気性、図6は焼結時間、図7は+5mm生産率について調べた結果を示すものであり、これらの図に示すとおり本発明に従う実施例(T2、T4)の方がT1、T2(比較例)に比べいずれも良好な結果を示していることが分かった。
本発明は、特に焼結用造粒原料の製造方法に適用した例について述べているが、その他高炉用原料ペレットの製造方法などとしても適用が可能である。
1.貯留タンク(沈殿槽の一例)
2.集塵水供給管
3.上水抜取り管
4.界面レベル測定機器
5.バブリング装置
6.ドラムミキサー(造粒機の一例)

Claims (3)

  1. 製鉄ダスト類を含有する集塵水を沈殿槽に導き、沈降法によって上澄層と沈殿層とに分離する予備処理工程と、
    上記上澄層を構成している上水の少なくとも一部を排水することによって該集塵水の濃度を調整する際に、超音波界面レベル計を用いて上澄層と沈殿層との界面位置を検知して、両者の界面位置を調整することによって、前記集塵水に対する製鉄ダスト類の割合を30%~50%の範囲内に調整する濃化工程と、
    上記濃化工程での処理の後に、沈殿槽内の濃化集塵水を攪拌することによって、固形分の沈降を抑制すると共に該濃化集塵水の均質化を図る均一化工程と、
    を含むことを特徴とする製鉄ダスト集塵水の濃化処理方法。
  2. 前記均一化工程においては、沈殿槽内の濃化処理済み集塵水を気体を用いて攪拌することを特徴とする請求項1に記載の製鉄ダスト集塵水の濃化処理方法。
  3. 製鉄ダスト類を含有する集塵水を沈殿槽に導き、沈降法によって上澄層と沈殿層とに分離する予備処理工程と、
    上記上澄層を構成している上水の少なくとも一部を排水することによって該集塵水の濃度を調整する際に、超音波界面レベル計を用いて上澄層と沈殿層との界面位置を検知して、両者の界面位置を調整することによって、前記集塵水に対する製鉄ダスト類の割合を30%~50%の範囲内に調整する濃化工程と、
    上記濃化工程での処理の後に、沈殿槽内の濃化集塵水を攪拌することによって、固形分の沈降を抑制すると共に該濃化集塵水の均質化を図る均一化工程と、
    を含み、
    均質化を図った上記濃化集塵水を、焼結用原料の造粒に当っての造粒水として用いることを特徴とする焼結用造粒原料の製造方法。
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