以下、図面を参照しながら、X線診断装置、立体画像表示装置及び立体画像表示方法の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、図1に示すX線診断装置1を例として説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線診断装置1は、X線高電圧装置11と、X線管12と、X線絞り器13と、X線検出器14と、メモリ15と、ディスプレイ16と、入力インタフェース17と、処理回路18とを備える。
X線高電圧装置11は、処理回路18による制御の下、X線管12に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置11は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管12に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管12が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
X線管12は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管12は、X線高電圧装置11から供給される管電圧を用いて、フィラメントからターゲットに向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。なお、X線管12は、X線発生部の一例である。
X線絞り器13は、X線管12により発生されたX線の照射範囲を絞り込むコリメータ、及び、X線管12により発生されたX線を調節するフィルタを有する。
X線絞り器13におけるコリメータは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータは、絞り羽根をスライドさせることで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管12のX線照射口付近に設けられる。
X線絞り器13におけるフィルタは、被検体Pに対する被曝線量の低減とX線画像の画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体Pに吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像のコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、X線管12から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
例えば、X線絞り器13は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路18による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器13は、処理回路18から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器13は、処理回路18から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
X線検出器14は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器14は、X線管12から照射されて被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路18へと出力する。ここで、X線検出器14は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。なお、X線検出器14は、X線検出部の一例である。
メモリ15は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ15は、処理回路18によって収集された各種のデータを受け付けて記憶する。また、メモリ15は、X線診断装置1に含まれる回路によって実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。なお、メモリ15は、X線診断装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
ディスプレイ16は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ16は、処理回路18による制御の下、ユーザから指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や各種の画像を表示する。例えば、ディスプレイ16は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。なお、ディスプレイ16はデスクトップ型でもよいし、処理回路18と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
なお、ディスプレイ16は、立体画像の表示を行なうことができる。ここで、立体画像とは、ユーザが立体として認識できる画像である。即ち、立体画像とは、横方向及び縦方向に加えて、深さ方向(高さ方向)の情報を持った画像である。
例えば、ディスプレイ16は、立体画像として、視差を有する2枚の2次元画像を並べて表示する。この場合、ユーザは、交差法又は平行法を用いて、立体画像の観察を行なうことができる。
或いは、ディスプレイ16は、立体表示用ディスプレイであってもよい。例えば、ディスプレイ16は、裸眼立体視が可能となるように構成される。一例を挙げると、ディスプレイ16は、表示面にかまぼこ状のレンズを幾つも並べたようなレンチキュラーシートや、ハエの目のような多数のレンズからなるハエの目レンズを張り付けた構造を有する。この場合、ユーザは、立体視用メガネを使用しなくても、レンズによって光の軌跡が変更されることにより、裸眼で立体画像を観察することができる。
別の例を挙げると、ディスプレイ16は、立体視用メガネと同期するディスプレイであってもよい。かかる立体視用メガネは、例えば、左目用の画像が表示されている間はメガネの左側だけ光を透過させ、右目用の画像が表示されている間はメガネの右側だけ光を透過させる。或いは、ディスプレイ16は、表示面に偏光フィルタを張り付けた構造をしており、例えば偶数画素ラインには横偏光、奇数画素ラインには縦偏光を施す。立体視用メガネの左目側では横偏光の光のみを、右目側では縦偏光の光のみを透過させるようになっており、偶数画素ラインに左目用の画像、奇数画素ラインに右目用の画像を表示する。即ち、ディスプレイ16は、立体視用のメガネを用いることで立体視可能となるように画像を表示させてもよい。
入力インタフェース17は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路18に出力する。例えば、入力インタフェース17は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース17は、処理回路18と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース17は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路18へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース17の例に含まれる。
処理回路18は、制御機能181、収集機能182、画像生成機能183及び表示制御機能184を実行することで、X線診断装置1全体の動作を制御する。ここで、収集機能182は、収集部の一例である。また、画像生成機能183は、画像収集部の一例である。また、表示制御機能184は、表示制御部の一例である。
例えば、処理回路18は、制御機能181に対応するプログラムをメモリ15から読み出して実行することにより、入力インタフェース17を介してユーザから受け付けた各種の入力操作に基づいて、収集機能182、画像生成機能183及び表示制御機能184といった各種の機能を制御する。
また、例えば、処理回路18は、収集機能182に対応するプログラムをメモリ15から読み出して実行することにより、被検体Pから2次元X線画像(投影データ)を収集する。具体的には、収集機能182は、X線高電圧装置11を制御してX線管12に管電圧を供給させ、X線管12からX線を発生させる。また、収集機能182は、X線絞り器13の動作を制御し、コリメータが有する絞り羽根の開度を調整することで、X線の照射範囲を絞り込む。また、収集機能182は、X線絞り器13の動作を制御し、フィルタの位置を調整することで、X線の線量の分布を制御する。また、収集機能182は、X線検出器14から出力された検出信号に基づいて、2次元X線画像を生成する。
ここで、収集機能182は、トモシンセシス撮影を実行して複数の2次元X線画像を収集することもできる。例えば、収集機能182は、X線管12を保持する保持装置20の動作を制御することで、X線管12を被検体Pに対して移動させる。なお、X線管12を保持する保持装置20については特に限定されるものではない。例えば、X線診断装置1は、保持装置20として、X線管12をスライド移動可能に保持するレールや、X線管12とX線検出器14とを対向した状態で保持するCアーム、ロボットアームなどを備えることができる。そして、収集機能182は、複数の位置それぞれから照射角度を変化させたX線を照射させ、複数の2次元X線画像を収集する。
また、処理回路18は、画像生成機能183に対応するプログラムをメモリ15から読み出して実行することにより、トモシンセシス撮影により収集された複数の2次元X線画像から断層画像を生成する。また、処理回路18は、表示制御機能184に対応するプログラムをメモリ15から読み出して実行することにより、収集機能182により収集された2次元X線画像や画像生成機能183により生成された断層画像といった各種の画像をディスプレイ16に表示させる。
図1に示すX線診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ15へ記憶されている。処理回路18は、メモリ15からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路18は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、図1においては単一の処理回路18にて、制御機能181、収集機能182、画像生成機能183及び表示制御機能184が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路18を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路18が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、処理回路18は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路18は、メモリ15から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線診断装置1とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図1に示す各機能を実現する。
以上、X線診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、処理回路18による処理によって、トモシンセシス撮影による断層画像を用いた診断の精度を向上させる。
まず、X線診断装置1により実行されるトモシンセシス撮影の一例について説明する。なお、以下では、図示しない天板19に載置された被検体Pに対してトモシンセシス撮影を実行する場合を例として説明する。また、被検体Pの体軸方向(天板19の長手方向)をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直で天板19に平行な方向(天板19の短手方向)をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向に垂直な方向をY軸方向として説明する。
例えば、収集機能182は、まず、トモシンセシス撮影に関する各種の撮影条件を設定する。ここで、トモシンセシス撮影に関する撮影条件としては、例えば、X線管12の軌道、X線量、フレームレート等が挙げられる。一例を挙げると、ユーザは、被検体Pの患者情報等に基づき、入力インタフェース17を介して撮影条件の入力操作を行なうことができる。
なお、トモシンセシス撮影におけるX線管12の軌道は特に限定されるものではない。例えば、X線管12の軌道は、直線であってもよいし、曲線であってもよい。一例を挙げると、X線管12がレールにより保持されている場合、収集機能182は、X線管12をレールに沿って直線状に移動させることができる。また、X線管12がCアームにより保持されている場合、収集機能182は、Cアームを回転させることでX線管12を曲線状に移動させることができる。また、X線診断装置1が保持装置20としてCアームやロボットアームを備える場合、X線管12の軌道としてより複雑な軌道を設定することも可能である。例えば、収集機能182は、楕円状の軌道や8の字状の軌道に沿ってX線管12を移動させることもできる。
撮影条件の設定後、収集機能182は、X線管12から被検体Pに対してX線を照射させつつ、設定された軌道に沿ってX線管12を移動させることにより、トモシンセシス撮影を実行する。例えば、X線管12がCアームにより保持されている場合、収集機能182は、まず、X線管12を被検体Pの正面に配置し、X軸を回転軸としてCアームを回転させる。これにより、X線管12は、被検体Pの正面においてZ軸方向に移動する。また、収集機能182は、X線管12を移動させつつ、X線高電圧装置11からX線管12に対する管電圧の供給を制御し、設定されたフレームレートに従って被検体Pに対してX線パルスを繰り返し照射させる。ここで、X線検出器14は、被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路18へと出力する。また、収集機能182は、X線検出器14から出力された検出信号に基づいて2次元X線画像を生成する。
次に、画像生成機能183は、複数の2次元X線画像に基づいて断層画像を生成する。例えば、画像生成機能183は、まず、2次元X線画像に対して種々の画像処理を実行する。一例を挙げると、画像生成機能183は、複数の2次元X線画像それぞれからDC成分(直流成分)を除去する。そして、画像生成機能183は、処理後の複数の2次元X線画像に対してFBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理を実行することによって、断層画像を再構成する。例えば、Z軸方向にX線管12を移動させてトモシンセシス撮影を実行していた場合、画像生成機能183は、XZ平面に平行な断層画像を再構成することができる。ここで、画像生成機能183は、再構成面をY軸方向にずらした複数の断層画像を再構成することもできる。
表示制御機能184は、画像生成機能183により生成された複数の断層画像を表示させる。例えば、表示制御機能184は、ディスプレイ16において、複数の断層画像のいずれかを表示させたり、複数の断層画像を順次表示させたりする。例えば、ユーザは、複数の断層画像を順に表示させて病変の有無を判断したり、病変が現れた断層画像に注目して観察を行なったりすることができる。
ここで、トモシンセシス撮影による断層画像の解像度は一般に異方性を有する。例えば、Z軸方向に沿ってX線管12を移動させてトモシンセシス撮影を実行していた場合にはXZ平面に平行な断層画像を再構成することができるが、X軸方向及びZ軸方向の解像度と比較して、Y軸方向の解像度は一般に低くなる。換言すると、トモシンセシス撮影による断層画像においては、深さ方向の解像度が一般に低くなる。
このため、トモシンセシス撮影による断層画像においては、深さ方向に分布する複数の構造が1つの断層画像に含まれてしまう場合がある。また、ユーザとしては、これら複数の構造の前後関係を断層画像から把握することができない。そして、複数の構造の前後関係を把握することができないことにより、断層画像に基づく診断の精度が低下してしまう場合があった。
そこで、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、以下詳細に説明する処理によって、断層画像に含まれる複数の構造の前後関係を把握することを可能とし、診断の精度を向上させる。
図2は、第1の実施形態に係るトモシンセシス撮影の一例を示す図である。図2においては、天板19の上に仰向けに載置された被検体Pを、被検体Pの正面側から図示する。即ち、図2においては、+Y方向が被検体Pの背面側に対応し、-Y方向が被検体Pの正面側に対応する。
また、図2においては、X線診断装置1が2つのX線管12(X線管12a及びX線管12b)を備える場合について説明する。X線管12a及びX線管12bは、被検体Pの正面側に配置されている。なお、図2においては図示を省略するが、X線管12aに対しては、X線管12aから照射されたX線の制御を行なうX線絞り器13aが設けられる。同様に、X線管12bに対しては、X線管12bから照射されたX線の制御を行なうX線絞り器13bが設けられる。
例えば、X線診断装置1は、保持装置20として、X線管12aをスライド移動可能に保持するレール21aと、X線管12bをスライド移動可能に保持するレール21bとを備える。レール21a及びレール21bは、Z軸方向に沿って、例えば検査室の天井に設けられる。換言すると、X線管12a及びX線管12bは、レール21a及びレール21bによって天吊りされる。
例えば、収集機能182は、図2に示すようにX線管12aを移動させて、被検体Pに対して複数の位置からX線を照射させる。例えば、収集機能182は、X線高電圧装置11からX線管12に対する管電圧の供給を制御し、図2において矢印で示すX線管12aの軌道上の複数の位置それぞれから、X線パルスを照射させる。なお、X線を照射した際のX線管12aの複数の位置は、第1位置群の一例である。また、X線検出器14は、被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路18へと出力する。また、収集機能182は、X線検出器14から出力された検出信号に基づいて、図2に示す2次元X線画像I11、2次元X線画像I12・・・2次元X線画像I1nを生成する。即ち、収集機能182は、X線管12aを用いたトモシンセシス撮影を実行して2次元X線画像I11~I1nを収集する。
同様に、収集機能182は、X線管12bを移動させて、被検体Pに対して複数の位置からX線を照射させる。例えば、収集機能182は、X線高電圧装置11からX線管12に対する管電圧の供給を制御し、図2において矢印で示すX線管12bの軌道上の複数の位置それぞれから、X線パルスを照射させる。なお、X線を照射した際のX線管12bの複数の位置は、第2位置群の一例である。また、X線検出器14は、被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路18へと出力する。また、収集機能182は、X線検出器14から出力された検出信号に基づいて、図2に示す2次元X線画像I21、2次元X線画像I22・・・2次元X線画像I2nを生成する。即ち、収集機能182は、X線管12bを用いたトモシンセシス撮影を実行して2次元X線画像I21~I2nを収集する。
なお、収集機能182は、X線管12aを用いたトモシンセシス撮影とX線管12bを用いたトモシンセシス撮影とを並行して行なうことができる。例えば、収集機能182は、図2に示すように、Z軸方向の位置が一致するようにX線管12aとX線管12bとを並進移動させつつ、交互にX線を照射させる。例えば、収集機能182は、7.5fpsで、X線管12aとX線管12bとから交互にX線を照射させる。これにより、収集機能182は、2次元X線画像I11~I1nと2次元X線画像I21~I2nとを略同時に収集することができる。
次に、画像生成機能183は、収集機能182により収集された複数の2次元X線画像を用いて断層画像を生成する。例えば、画像生成機能183は、2次元X線画像I11~I1nに基づく再構成処理を行なって、図2に示す断層画像I31を生成する。また、画像生成機能183は、2次元X線画像I21~I2nに基づく再構成処理を行なって、図2に示す断層画像I41を生成する。なお、断層画像I31は、第1断層画像の一例である。また、断層画像I41は、第2断層画像の一例である。
ここで、断層画像I31及び断層画像I41は、いずれもXZ平面に平行であり、Y軸方向の位置が一致している。図2においては断層画像I31及び断層画像I41のみを示すが、画像生成機能183は、2次元X線画像I11~I1nに基づく断層画像及び2次元X線画像I21~I2nに基づく断層画像を、Y軸方向に異なる複数の位置それぞれについて生成することとしても構わない。
次に、表示制御機能184は、断層画像I31と断層画像I41とを用いて、立体視可能な立体画像をディスプレイ16に表示させる。即ち、断層画像I31がX線管12aから照射されたX線に基づく断層画像であるのに対し、断層画像I41は、X線管12aとX軸方向に位置がずれたX線管12bから照射されたX線に基づく断層画像である。従って、断層画像I31と断層画像I41との間には、X線管12aとX線管12bとの間のX軸方向の距離に応じた視差が生じている。このため、表示制御機能184は、ディスプレイ16において、断層画像I31と断層画像I41とを用いた立体視を行なうことができる。
例えば、表示制御機能184は、立体画像として、断層画像I31と断層画像I41とを並べてディスプレイ16に表示させる。この場合、ユーザは、交差法又は平行法を用いて立体画像の観察を行なうことができる。また、例えば、表示制御機能184は、断層画像I31及び断層画像I41を用いた2視差画像を、立体視用メガネと同期可能なディスプレイ16に表示させる。この場合、ユーザは、立体視用メガネを用いて立体画像の観察を行なうことができる。また、例えば、表示制御機能184は、断層画像I31及び断層画像I41を用いた2視差画像を、裸眼立体視可能なディスプレイ16に表示させる。この場合、ユーザは、立体視用メガネを用いずとも立体画像の観察を行なうことができる。
断層画像I31及び断層画像I41に基づく立体画像を参照したユーザは、断層画像上に現れた病変について観察を行なうことができる。また、深さ方向(Y軸方向)に複数の構造が分布している場合、ユーザは、これら複数の構造を立体的に視認することができる。従って、ユーザは、複数の構造の前後関係を立体画像から把握し、精度良く診断を行なうことができる。
なお、図2においてはX線管12a及びX線管12bがレール21a及びレール21bによって天吊りされるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線管12a及びX線管12bは、ロボットアームにより保持されることとしても構わない。以下、X線管12a及びX線管12bがロボットアームにより保持される場合について図3A及び図3Bを用いて説明する。図3A及び図3Bは、第1の実施形態に係る保持装置20の一例を示す図である。
図3A及び図3Bに示すロボットアーム22a及びロボットアーム22bは、保持装置20の一例である。具体的には、ロボットアーム22aは、X線管12a及びX線絞り器13aを保持する。また、ロボットアーム22bは、X線管12b及びX線絞り器13bを保持する。なお、図3Aはロボットアーム22a及びロボットアーム22bを-Y方向(被検体Pの正面側)から図示したものであり、図3Bはロボットアーム22a及びロボットアーム22bを+X方向(被検体Pの側面側)から図示したものである。また、ロボットアーム22aは第1のアームの一例であり、ロボットアーム22bは第2のアームの一例である。
ロボットアーム22a及びロボットアーム22bによりX線管12a及びX線管12bを保持する場合、収集機能182は、高い自由度で、トモシンセシス撮影におけるX線管12a及びX線管12bの軌道を設定することができる。例えば、トモシンセシス撮影による断層画像には、X線管の軌道に応じた陰影障害が生じるケースがある。そこで、収集機能182は、注目部位に陰影障害が生じないように、X線管12a及びX線管12bの軌道を設定することとしてもよい。
なお、図3A及び図3Bにおいては、ロボットアーム22a及びロボットアーム22bそれぞれが3つの関節を有する場合を示すが、関節の数は任意である。また、ロボットアーム22a及びロボットアーム22bについては、図3Bに示すように、レール22cで保持することとしても構わない。例えば、レール22cは、X軸方向に沿ってスライド移動可能にロボットアーム22a及びロボットアーム22bを支持するとともに、床置きされる。これにより、トモシンセシス撮影におけるX線管12a及びX線管12bの軌道の設定の自由度を更に向上させることができる。
ここで、X線管12a及びX線管12bの位置がX軸方向にずれている限り、表示制御機能184は、断層画像I31と断層画像I41とを用いて立体画像を表示させることが可能である。例えば、X線管12a及びX線管12bの位置がX軸方向にずれていれば、X線管12a及びX線管12bの軌道が直線でない場合でも、生成される断層画像I31と断層画像I41との間には視差が生じる。また、X線管12a及びX線管12bの位置がX軸方向にずれていれば、X線管12aの軌道とX線管12bの軌道とが異なる形状の場合でも、生成される断層画像I31と断層画像I41との間には視差が生じる。
また、図2においては、被検体Pから見てX線管12a及びX線管12bが左右対称に配置されるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。一例を挙げると、収集機能182は、図4に示すように、X線管12aを被検体Pの正面に配置して、X線管12aを用いたトモシンセシス撮影を実行してもよい。即ち、収集機能182は、被検体Pに対して正対する複数の位置を第1位置群に含むようにしてもよい。なお、図4は、第1の実施形態に係るトモシンセシス撮影の一例を示す図である。
1つのX線管のみを使用する場合、X線管は被検体正面に配置される場合が多い。即ち、図4に示すX線管12aの配置は、通常の臨床における配置と言える。従って、図4に示すようにトモシンセシス撮影を実行する場合、収集機能182は、X線管12aの配置を通常の臨床から変更する手間を低減することができる。なお、X線管12bについては、図4に示すように、被検体Pの正面からオフセットして斜入させることができる。
また、図2においては、X線管12aとX線管12bとが互いに干渉しないように、X軸方向に距離をあけて配置されるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。一例を挙げると、収集機能182は、図5A及び図5Bに示すようにX線管12aとX線管12bとを配置してもよい。なお、図5A及び図5Bは、第1の実施形態に係るトモシンセシス撮影の一例を示す図である。
即ち、X線管12aとX線管12bとを並べて距離Dで配置した場合には干渉が生じるが、収集機能182は、X線管12aとX線管12bとをZ軸方向に所定の距離ずらして配置することで、X線管12aとX線管12bとの干渉を回避することができる。更に、収集機能182は、X線管12aとX線管12bとの間の所定の距離を保ちつつ、X線管12aとX線管12bとをZ軸方向に移動させて、図2に示した2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。
ここで、X線管12aとX線管12bとの間のX軸方向の距離が大きいほど、表示される立体画像の被写界深度も大きくなる。また、X線管12aとX線管12bとの間の距離が人間の眼の間の距離と同程度である場合、ユーザは、立体画像を違和感なく観察することができる。但し、X線管12a及びX線管12bはそれぞれがある程度の大きさを有するため、眼の間の距離と同程度までX線管12aとX線管12bとを近づけることができない場合がある。このような場合でも、収集機能182は、X線管12aとX線管12bとをZ軸方向に所定の距離ずらすことにより、X軸方向において、眼の間の距離と同程度までX線管12aとX線管12bとを近づけることを可能とし、立体画像の被写界深度を調整することができる。
また、図2においては、X線管12a及びX線管12bが直線状の軌道に沿って動く場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。一例を挙げると、収集機能182は、図6A及び図6Bに示すように、X線管12a及びX線管12bを円軌道に沿って移動させてもよい。なお、図6A及び図6Bは、第1の実施形態に係るトモシンセシス撮影の一例を示す図である。図6Aにおいては、天板19の上に載置された被検体Pを省略して説明する。また、図6Bにおいては、被検体Pを載置する天板19を省略して説明する。
例えば、収集機能182は、X線管12aを、点c1を中心とする円軌道に沿って回転移動させる。また、収集機能182は、X線管12bを、点c1と異なる点c2を中心とする円軌道に沿って回転移動させる。即ち、収集機能182は、第1位置群を含む軌道と第2位置群を含む軌道とが互いに異なる中心を有する円軌道となるように制御する。
例えば、収集機能182は、X線管12a及びX線管12bを回転移動させて、Y軸方向から見て被検体Pの体軸に近い複数の位置からX線を照射させる。一例を挙げると、収集機能182は、円軌道のうち直線と近似できる部分であって、Y軸方向から見て被検体Pの体軸に近い部分に含まれる複数の位置から、X線を照射させる。ここで、収集機能182は、図6Bに示すように、X線管12a及びX線管12bを、異なる回転方向に且つ角度をずらした状態で回転移動させることにより、X線管12aとX線管12bとの接触を回避することができる。
また、これまで、2つのX線管(X線管12a及びX線管12b)を用いる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、収集機能182は、X線管12を1つのみ使用し、第1位置群及び第2位置群を含む軌道で移動させることで、図2に示した2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。
一例を挙げると、収集機能182は、図7に示すように、X線管12をU字状の軌道で移動させることで、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。なお、図7は、第1の実施形態に係るトモシンセシス撮影の一例を示す図である。
具体的には、収集機能182は、まず、X線管12を+Z軸方向に略直線の軌道で移動させ、当該軌道上の複数の位置からX線を照射させて、2次元X線画像I11~I1nを収集する。ここで、X線を照射した際のX線管12の複数の位置は、第1位置群の一例である。
次に、収集機能182は、X線管12を+X軸方向に移動させる。なお、図7においてはX線管12を曲線状に移動させる場合を示すが、収集機能182は、X線管12を直線状に移動させることとしてもよい。次に、収集機能182は、X線管12を-Z軸方向に略直線の軌道で移動させ、当該軌道上の複数の位置からX線を照射させて、2次元X線画像I21~I2nを収集する。ここで、X線を照射した際のX線管12の複数の位置は、第2位置群の一例である。
即ち、収集機能182は、第1位置群を含む略直線の軌道、第1位置群を含む軌道の一端と第2位置群を含む軌道の一端とを接続する軌道、第2位置群を含む略直線の軌道の順にX線管12を移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。
別の例を挙げると、収集機能182は、図8Aに示すように、X線管12をジグザグの軌道で移動させることで、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。なお、図8Aは、第1の実施形態に係るトモシンセシス撮影の一例を示す図である。
具体的には、収集機能182は、まず、図8Aに示すジグザグの矢印の始点の位置からX線を照射させて、2次元X線画像I11を収集する。ここでX線を照射した際のX線管12の位置は、第1位置群に含まれる位置の1つである。次に、収集機能182は、X線管12を+X方向に移動させ、X線を照射させて、2次元X線画像I21を収集する。ここでX線を照射した際のX線管12の位置は、第2位置群に含まれる位置の1つである。
次に、収集機能182は、X線管12を斜め方向(-X方向及び+Z方向から成る方向)に移動させ、X線を照射させて、2次元X線画像I21を収集する。ここでX線を照射した際のX線管12の位置は、第1位置群に含まれる位置の1つである。次に、収集機能182は、X線管12を+X方向に移動させ、X線を照射させて、2次元X線画像I22を収集する。同様にして、収集機能182は、2次元X線画像I1n及び2次元X線画像I2nまでの複数の2次元X線画像を収集する。即ち、収集機能182は、X線管12を、第1位置群に含まれる位置と第2位置群に含まれる位置とを接続する線分を複数含んだジグザグ軌道で移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。
なお、図8Aに示すようにX線管12をジグザグ軌道で移動させる際、収集機能182は、図8Bに示すようにX線管12のみを移動させてもよいし、図8Cに示すようにX線管12とX線検出器14の双方を移動させてもよい。なお、図8B及び図8Cは、第1の実施形態に係るトモシンセシス撮影の一例を示す図である。
図8Bに示すように、X線管12のみを移動させる場合、収集機能182は、第1位置群に含まれる位置と第2位置群に含まれる位置との間でX線照射角度を角度θだけ変化させるために、X線管12を位置x11から位置x13まで移動させる必要がある。一方で、図8Cに示すように、X線管12とX線検出器14の双方を移動させる場合、収集機能182は、第1位置群に含まれる位置と第2位置群に含まれる位置との間でX線照射角度を角度θだけ変化させるために、X線管12を位置x21から位置x23まで移動させれば足りることとなる。即ち、図8Cに示す場合、収集機能182は、X線管12の移動距離を短縮し、機械的な摩耗やX線管12を移動させるための所要時間を低減することができる。一例を挙げると、X線管12及びX線検出器14がCアームにより保持されている場合、収集機能182は、Z軸を回転軸としてCアームを回転させることで、図8Cに示すように、X線管12を移動させるとともに、被検体Pの周りでX線管12と点対称にX線検出器14を移動させることができる。
次に、X線診断装置1による処理の手順の一例を、図9を用いて説明する。図9は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS101は、収集機能182に対応するステップである。ステップS102は、画像生成機能183に対応するステップである。ステップS103及びステップS104は、表示制御機能184に対応するステップである。
まず、処理回路18は、トモシンセシス撮影を実行して、2次元X線画像を収集する(ステップS101)。例えば、処理回路18は、第1位置群及び第2位置群に含まれる複数の位置からX線を照射させることで、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集する。
次に、処理回路18は、第1断層画像及び第2断層画像を生成する(ステップS102)。例えば、処理回路18は、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nに基づいて、断層画像I31及び断層画像I41を生成する。また、処理回路18は、断層画像I31及び断層画像I41と同様にして、Y軸方向に異なる複数の位置それぞれについて、第1断層画像及び第2断層画像を生成する。
次に、処理回路18は、第1断層画像及び第2断層画像を用いて、立体視可能な立体画像をディスプレイ16に表示させる(ステップS103)。また、処理回路18は、表示する高さを変更するか否かを判定する(ステップS104)。即ち、Y軸方向に異なる複数の位置それぞれについて第1断層画像及び第2断層画像を生成していた場合において、立体画像を表示するY軸方向の位置を変更するか否かを判定する。ここで、高さを変更する場合(ステップS104肯定)、処理回路18は、ユーザから指示された高さの立体画像をディスプレイ16に表示させる。一方で、高さを変更しない場合(ステップS104否定)、処理回路18は、処理を終了する。
上述したように、第1の実施形態によれば、X線管12は、X線を発生させる。また、X線検出器14は、被検体Pを透過したX線を検出して検出信号を出力する。また、収集機能182は、X線管12を移動させて被検体Pに対して複数の位置からX線を照射させることで、X線検出器14から出力された検出信号に基づく2次元X線画像を複数収集する。また、画像生成機能183は、第1位置群からX線を照射させて収集された2次元X線画像I11~I1nに基づいて第1断層画像を生成し、第2位置群からX線を照射させて収集された2次元X線画像I21~I2nに基づいて第2断層画像を生成する。また、表示制御機能184は、第1断層画像と第2断層画像とを用いて、立体視可能な立体画像をディスプレイ16に表示させる。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、トモシンセシス撮影による断層画像において深さ方向に複数の構造が分布している場合でも、複数の構造の前後関係を把握することを可能とし、診断の精度を向上させることができる。
また、図2に示したように、X線診断装置1は、X線管12としてX線管12a及びX線管12bを備えることができる。この場合、収集機能182は、X線管12aを移動させて第1位置群に含まれる複数の位置からX線を照射させることで、2次元X線画像I11~I1nを収集する。また、収集機能182は、X線管12bを移動させて第2位置群に含まれる複数の位置からX線を照射させることで、2次元X線画像I21~I2nを収集する。
ここで、収集機能182は、X線管12a及びX線管12bを用いて、2次元X線画像I11~I1nと2次元X線画像I21~I2nとを並行して収集することができる。また、画像生成機能183は、2次元X線画像I11~I1nに基づいて第1断層画像を生成し、2次元X線画像I21~I2nに基づいて第2断層画像を生成する。従って、X線診断装置1は、第1断層画像と第2断層画像とを略同時に収集し、呼吸や心拍といった動きのある部位についても、不整合の少ない立体画像を表示させることができる。
また、図3A及び図3Bに示したように、X線診断装置1は、X線管12aを移動可能に保持するロボットアーム22a、及び、X線管12bを移動可能に保持するロボットアーム22bを備えることができる。従って、X線診断装置1は、トモシンセシス撮影におけるX線管の軌道を高い自由度で設定することができる。例えば、X線診断装置1は、X線管の軌道を適切に設定することで、陰影障害の影響を低減した断層画像を収集することができる。
また、図4に示したように、第1位置群は、被検体Pに対して正対する複数の位置を含むことができる。即ち、収集機能182は、X線管12aを被検体Pの正面に配置して、トモシンセシス撮影を実行することができる。従って、X線診断装置1は、X線管の配置を通常の臨床から変更する手間を低減することができる。
また、図5A及び図5Bに示したように、収集機能182は、X線管12aとX線管12bとを軌道方向(Z軸方向)に所定の距離ずらした状態において、X線管12aとX線管12bとを軌道方向に移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。従って、X線診断装置1は、X線管12a及びX線管12bのサイズによらず、X線管12aとX線管12bとの間のX軸方向における距離を近づけてトモシンセシス撮影を実行し、立体画像の被写界深度を調整することができる。例えば、X線診断装置1は、眼の間の距離と同程度までX線管12aとX線管12bとを近づけてトモシンセシス撮影を実行し、ユーザにとって違和感の少ない立体画像を提供することができる。
また、図6A及び図6Bに示したように、収集機能182は、第1位置群を含む軌道と第2位置群を含む軌道とを互いに異なる中心を有する円軌道とし、X線管12aとX線管12bとを円軌道上で回転移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。ここで、図6A及び図6Bに示した円軌道を実現する手段は特に限定されるものではないが、円軌道で物体を移動させる装置は比較的容易に製造可能である。即ち、X線診断装置1は、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを比較的容易に収集することができる。
また、収集機能182は、X線管12を第1位置群及び第2位置群を含む軌道で移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。従って、X線診断装置1は、X線管12を1つしか備えない場合であっても立体画像をユーザに提供し、診断の精度を向上させることができる。
また、図7に示したように、収集機能182は、X線管12をU字状の軌道で移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。具体的には、収集機能182は、第1位置群を含む略直線の軌道、第1位置群を含む軌道の一端と第2位置群を含む軌道の一端とを接続する軌道、第2位置群を含む略直線の軌道の順にX線管12を移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。なお、このような軌道でX線管12を移動させることにより、X線診断装置1は、機械的な摩耗を抑制することができる。
また、図7に示したように、収集機能182は、X線管12をジグザグの軌道で移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。具体的には、収集機能182は、第1位置群に含まれる位置と第2位置群に含まれる位置とを接続する線分を複数含んだ軌道で移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。この場合、収集機能182は、2次元X線画像I11~I1nと2次元X線画像I21~I2nとを並行して収集することができる。また、画像生成機能183は、2次元X線画像I11~I1nに基づいて第1断層画像を生成し、2次元X線画像I21~I2nに基づいて第2断層画像を生成する。従って、X線診断装置1は、第1断層画像と第2断層画像とを略同時に収集し、呼吸や心拍といった動きのある部位についても、不整合の少ない立体画像を表示させることができる。
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
例えば、上述した実施形態では、複数のX線管12を使用し、又は、少なくともX軸方向への移動を含む軌道でX線管12を移動させることにより、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。即ち、収集機能182は、1つのX線管12を、X軸方向への移動を含まない軌道で移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することも可能である。
例えば、収集機能182は、X線管12をZ軸方向に移動させるとともに、X線管12においてフィラメントからターゲットへ照射される電子の軌道を制御して、ターゲット上の焦点位置を変化させる。一例を挙げると、収集機能182は、フィラメントとターゲットとの間の電場を制御することにより、電子の軌道を制御することができる。なお、このような電場の制御は、グリッド制御とも呼ばれる。
例えば、収集機能182は、まず、X線管12におけるX線焦点がターゲット上の第1の焦点位置となるように制御することで、2次元X線画像I11を収集する。ここで、X線を照射した際のX線焦点の位置は、第1位置群に含まれる位置の1つである。次に、収集機能182は、X線管12におけるX線焦点がターゲット上の第2の焦点位置となるように制御することで、2次元X線画像I21を収集する。ここで、X線を照射した際のX線焦点の位置は、第2位置群に含まれる位置の1つである。
次に、収集機能182は、X線管12をZ軸方向に移動させ、X線焦点がターゲット上の第1の焦点位置となるように制御することで2次元X線画像I12を収集し、X線焦点がターゲット上の第2の焦点位置となるように制御することで2次元X線画像I22を収集する。同様にして、収集機能182は、2次元X線画像I1n及び2次元X線画像I2nまでの複数の2次元X線画像を収集する。即ち、収集機能182は、1つのX線管12を直線状の軌道で移動させつつX線焦点を制御することで、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを収集することができる。
また、上述した実施形態では、Z軸方向をX線管12の軌道方向として説明したが、X線管12の軌道方向については特に限定されるものではない。例えば、収集機能182は、図2に示したX線管12a及びX線管12bをZ軸方向にずらして並べるとともに、X軸方向に並進移動させて、2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nの収集を行なってもよい。なお、この場合、2次元X線画像I11~I1nに基づいて生成される第1断層画像と2次元X線画像I21~I2nに基づいて生成される第2断層画像との間には、X線管12aとX線管12bとの間のZ軸方向の距離に応じた視差が生じる。そして、表示制御機能184は、第1断層画像と第2断層画像とを用いて、Z軸方向の視差を表わした立体画像を表示させることができる。
また、上述した実施形態では、X線管12が被検体Pよりも上方に配置されるオーバーチューブ型を例として説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、X線管12が被検体Pよりも下方に配置されるアンダーチューブ型の場合にも同様に適用が可能である。
また、上述した実施形態では、被検体Pが天板19に載置されている場合を例として説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、被検体Pが立位の場合にも同様に適用が可能である。なお、この場合、X線診断装置1は天板19を備えないこととしても構わない。
また、上述した実施形態では、立体視可能な立体画像として、2つの断層画像を用いた2視差画像について説明した。即ち、上述した実施形態では、いわゆる両眼視差について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。
一例を挙げると、収集機能182は、図2に示した2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nに加えて、第1位置群及び第2位置群に含まれる位置とは異なる複数の位置を含む第3位置群からX線を照射させて、2次元X線画像I51~I5nを更に収集する。また、画像生成機能183は、2次元X線画像I51~I5nに基づいて断層画像I61を生成する。この場合、表示制御機能184は、立体視可能な立体画像として、断層画像I31、断層画像I41及び断層画像I61を用いた3視差画像をディスプレイ16に表示させることができる。
即ち、表示制御機能184は、少なくとも第1断層画像と第2断層画像とを用いて、立体視可能な立体画像を表示させる。例えば、表示制御機能184は、第1断層画像と第2断層画像に加えて7つの断層画像を使用し、9視差画像をディスプレイ16に表示させることとしてもよい。
また、上述した実施形態では、第1断層画像と第2断層画像とを用いて立体視可能な立体画像を表示させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、表示制御機能184は、断層画像と2次元X線画像とを用いて立体視可能な立体画像を表示させることも可能である。一例を挙げると、表示制御機能184は、図2に示した断層画像I31と2次元X線画像I21とを用いて、立体視可能な立体画像を表示させることができる。
なお、断層画像I31は、Y軸方向のある位置における情報のみを含んだ画像である。一方で、2次元X線画像I21は、Y軸方向の各位置の情報を含んだ画像である。即ち、2次元X線画像I21には、断層画像I31に含まれない情報も含まれることとなる。例えば、図2に示したように、断層画像I31には被検体Pの肋骨の一部のみしか現れていないが、2次元X線画像I21には被検体Pの肋骨の全体が現れることとなる。
ここで、断層画像I31と2次元X線画像I21とを用いて立体画像を表示させた場合、2次元X線画像I21にのみ含まれている情報はユーザにはノイズとして認識され、断層画像I31と2次元X線画像I21との双方に含まれている情報はユーザには立体画像として認識される。即ち、ノイズが含まれることとはなるものの、表示制御機能184は、断層画像I31と2次元X線画像I21とを用いて、立体視可能な立体画像を表示させることができる。また、この場合、図2に示した2次元X線画像I22~I2nについては収集する必要がないため、X線診断装置1は、被検体Pの被ばく量を低減するとともに、画像を保管するためのメモリ容量を削減することができる。
また、上述した実施形態では、X線診断装置1における処理回路18が立体画像の表示処理を行なうものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、立体画像の表示処理は、X線診断装置1に含まれない立体画像表示装置3において行なわれてもよい。
一例を挙げると、X線診断装置1は、図10に示すように、ネットワークNWを介して立体画像表示装置3と接続される。立体画像表示装置3は、例えば、メモリ31、ディスプレイ32、入力インタフェース33、及び処理回路34を備える。なお、図10は、第2の実施形態に係る立体画像表示装置3の構成の一例を示すブロック図である。
メモリ31は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ31は、X線診断装置1から送信され、又は、処理回路34によって生成された各種のデータを受け付けて記憶する。また、メモリ31は、立体画像表示装置3に含まれる回路によって実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。なお、メモリ31は、立体画像表示装置3とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、処理回路34による制御の下、ユーザから指示を受け付けるためのGUIや各種の画像を表示する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。なお、ディスプレイ32はデスクトップ型でもよいし、処理回路34と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、立体画像表示装置3は、ディスプレイ32として、立体表示用ディスプレイを備えることとしてもよい。
入力インタフェース33は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路34に出力する。例えば、入力インタフェース33は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース33は、処理回路34と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース33は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、立体画像表示装置3とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路34へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース33の例に含まれる。
処理回路34は、制御機能341、画像取得機能342及び表示制御機能343を実行することで、立体画像表示装置3全体の動作を制御する。ここで、画像取得機能342は、画像取得部の一例である。また、表示制御機能343は、表示制御部の一例である。
例えば、処理回路34は、制御機能341に対応するプログラムをメモリ31から読み出して実行することにより、入力インタフェース33を介してユーザから受け付けた各種の入力操作に基づいて、画像取得機能342、表示制御機能343といった各種の機能を制御する。
また、処理回路34は、画像取得機能342に対応するプログラムをメモリ31から読み出して実行することにより、第1断層画像及び第2断層画像を取得する。一例を挙げると、画像取得機能342は、X線診断装置1の画像生成機能183によって生成された第1断層画像及び第2断層画像を、ネットワークNWを介して取得する。別の例を挙げると、画像取得機能342は、X線診断装置1の収集機能182によって収集された2次元X線画像I11~I1n及び2次元X線画像I21~I2nを、ネットワークNWを介して取得する。そして、画像取得機能342は、2次元X線画像I11~I1nに基づいて第1断層画像を生成し、2次元X線画像I21~I2nに基づいて第2断層画像を生成する。
また、処理回路34は、表示制御機能343に対応するプログラムをメモリ31から読み出して実行することにより、立体視可能な立体画像をディスプレイ32に表示させる。例えば、表示制御機能343は、立体視可能な立体画像として、第1断層画像及び第2断層画像を用いた2視差画像を表示させる。また、例えば、表示制御機能343は、立体視可能な立体画像として、第1断層画像と、2次元X線画像I21~I2nのいずれかとを用いた2視差画像を表示させる。
図10に示す立体画像表示装置3においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ31へ記憶されている。処理回路34は、メモリ31からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路34は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、図10においては単一の処理回路34にて、制御機能341、画像取得機能342及び表示制御機能343が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路34を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路34が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、処理回路34は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路34は、メモリ31から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、立体画像表示装置3とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図10に示す各機能を実現する。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
また、図1においては、単一のメモリ15が処理回路18の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。また、図10においては、単一のメモリ31が処理回路34の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ15を分散して配置し、処理回路18は、個別のメモリ15から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。同様に、複数のメモリ31を分散して配置し、処理回路34は、個別のメモリ31から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ15又はメモリ31にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
また、上述した実施形態で説明した立体画像表示方法は、予め用意された立体画像表示プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この立体画像表示プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この立体画像表示プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、トモシンセシス撮影による断層画像を用いた診断の精度を向上させることができる。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。