JP7476805B2 - ガラス板の成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス板の成形方法に関する。
成形型内に収容したガラス素材を、加熱軟化させてプレスし、ガラス製のプレス成形品を製造する方法が種々用いられている。例えば、板状のガラス素材を、チャンバ内に設けた加熱、プレス及び冷却の各ステージへ順次搬送し、各ステージでプレス成形品を連続的に成形する成形装置が提案されている(特許文献1)。
このような成形装置において、ガラス素材は、プレス時において成形型が規定の温度にされることで、ガラス素材の加工に十分な加熱温度に維持される。また、成形後のガラス素材は、冷却、固化され、最終的には、成形型が酸化されない200℃以下の温度にまで冷却される。上記のように、ガラス素材は、プレス時に成形型の形状が正確に転写され、この成形形状を冷却、固化より保持することで、形状精度の高いプレス成形品となる。
国際公開第2013/103102号
ところで、上記のような成形装置においては、ガラス素材の成形形状の複雑化や量産化に伴い、成形品の生産性、形状や表面性状の品質等、様々な面において改善の余地があった。
本発明は、複雑な形状を有する成形品であっても、設備コストを低減しつつ、高い形状精度及び高いスループットで成形できるガラス板の成形方法の提供を目的とする。
本発明は下記の構成からなる。
(1) ガラス板を加熱して所望の形状に成形するガラス板の成形方法であって、
前記ガラス板を一対の成形型の間に挟む工程と、
前記成形型により、前記ガラス板の外周縁より内側のガラス中央部に0.1MPa以下の第1の加圧力を型締め方向に付与又は加圧力を付与せず、前記ガラス中央部の外周から前記ガラス板の外周縁までの間のガラス外周部に前記第1の加圧力とは異なる0.1~10MPaの第2の加圧力を型締め方向に付与して、前記ガラス板をプレス成形する工程と、
を有するガラス板の成形方法。
(2) ガラス板を加熱して所望の形状に成形するガラス板の成形方法であって、
前記ガラス板を一対の成形型の間に挟む工程と、
前記一対の成形型の一方から、前記ガラス板に0.1MPa以下の加圧力を型締め方向に付与して、前記ガラス板の外周縁より内側のガラス中央部の外周から前記ガラス板の外周縁までの間の環状のガラス外周部を前記一対の成形型の間に挟み込み、前記ガラス外周部の内周側で、前記型締め方向の先方に配置された第1成形型と、前記ガラス板との間に空間を画成する工程と、
前記ガラス板と前記第1成形型との間に画成される前記空間に負圧を供給して、前記ガラス板を前記第1成形型に吸着させる工程と、
を有するガラス板の成形方法。
本発明によれば、複雑な形状を有する成形品であっても、設備コストを低減しつつ、高い形状精度及び高いスループットで成形できる。
図1は、ガラス板を曲面形状に成形する手順を示す概略工程図である。 図2は、成形装置の概略構成図である。 図3は、複数のランプヒータの断面図である。 図4は、図2に示すIII-III線断面を上方から見た模式的な平面図である。 図5は、下型を予熱ステージから冷却ステージに向かう搬送方向に沿って搬送する様子を示す模式的な説明図である。 図6は、成形ステージの拡大断面図である。 図7の(A)は上型の断面図、(B)は下型の成形面を含む断面図である。 図8は、上型を図7の(A)のB方向から見た背面図である。 図9の(A)は変形例の上型の断面図、(B)は変形例の下型の成形面を含む断面図である。 図10は、ガラス板の平面図である。 図11Aは、図7の(A)、(B)に示す下型と上型とを互いに接近させてガラス板を成形加工する様子を段階的に示す概略工程説明図である。 図11Bは、図7の(A)、(B)に示す下型と上型とを互いに接近させてガラス板を成形加工する様子を段階的に示す概略工程説明図である。 図11Cは、図7の(A)、(B)に示す下型と上型とを互いに接近させてガラス板を成形加工する様子を段階的に示す概略工程説明図である。 図12は、第2の成形方法によりガラス板を成形加工する様子の概略を示す工程説明図である。 図13Aは、図9の(A)、(B)に示す変形例の下型と上型とを互いに接近させてガラス板を成形加工する様子を段階的に示す概略工程説明図である。 図13Bは、図9の(A)、(B)に示す変形例の下型と上型とを互いに接近させてガラス板を成形加工する様子を段階的に示す概略工程説明図である。 図13Cは、図9の(A)、(B)に示す変形例の下型と上型とを互いに接近させてガラス板を成形加工する様子を段階的に示す概略工程説明図である。 図14は、第4の成形方法によりガラス板を成形加工する様子の概略を示す工程説明図である。 図15は、複数の予熱ステージと、成形ステージと、複数の冷却ステージとを備える成形装置の概略構成図である。 図16は、予熱ステージ、成形ステージ、冷却ステージにおける下型とガラス板の温度変化の一例を示すグラフである。 図17は、参考例としての従来の成形装置の概略構成図である。 図18は、図15に示す成形装置の他の構成例を示す成形装置の概略構成図である。 図19の(A)は試験例1、2の成形形状、(B)は試験例3の成形形状、(C)は試験例4の成形形状、(D)は試験例5の成形形状を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
ここでは、ガラス板を、少なくとも一部に曲面形状を有する形状に成形する成形装置及び成形方法の具体例を提示して説明するが、本発明は、使用する材料、成形形状、サイズ等の各種製造条件に応じて、適宜に装置の構成や手順を変更することも可能である。
また本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
<ガラス板の成形手順の概要>
図1はガラス板を曲面形状に成形する手順を示す概略工程図である。
ガラス板の成形装置100は、予熱ステージ11と、成形ステージ13と、冷却ステージ15とが、この順で配置され、さらに、予熱ステージ11に成形前のガラス板17を搬入するローディング部19と、冷却ステージ15から成形後のガラス板17Aを搬出するアンローディング部21とを備える。
予熱ステージ11では、搬入されたガラス板17を加熱して軟化させる。成形ステージ13では、予熱ステージ11で加熱されて軟化したガラス板17にプレス成形等を施し、所望の形状に成形させる。冷却ステージ15では、成形ステージ13で成形されたガラス板17を、変形が抑制される程度の温度まで徐冷する。
上記各ステージには、ローディング部19とアンローディング部21からガラス板17が搬入・搬出される。つまり、ローディング部19では、成形前のガラス板17が下型(第1成形型)23上に載置される。ガラス板17が載置された下型23は、予熱ステージ11に搬送されて、予熱ステージ11において所定温度に加熱される。加熱されたガラス板17は、下型23と共に成形ステージ13に搬送される。
成形ステージ13では、成形ステージ13に搭載された上型(第2成形型)25と、下型23と、の間にガラス板17を挟んで型締めする。これにより、ガラス板17が曲面形状に成形される。成形後、上型25が下型23と分離され、下型23に残る加工後のガラス板17Aが下型23と共に冷却ステージ15に搬送される。
冷却ステージ15では、加熱されたガラス板17Aが徐冷される。徐冷後のガラス板17Aは、アンローディング部21で下型23から取り出されて、搬出される。
本構成の成形装置においては、成形ステージ13において、加熱により軟化したガラス板17を、下型23と上型25によりプレスするプレス成形に加えて、ガラス板の自重による曲がり(自重曲げ成形)と、ガラス板の成形型の成形面への吸着(真空吸着)と、ガラス板の成形型の成形面への圧着(圧空成形)とを、目的に応じて組み合わせて実施する。このような複数の加圧源を選択的に用いることにより、高い形状精度の曲面成形を可能にしている。なお、自重曲げ成形については、下型23の上にガラス板17を配置して加熱すれば、ガラス板17に自重曲げが生じるが、これに可制御性を持たせることができる。例えば、自重による曲げ開始温度とプレス成形温度とが、ほとんど乖離がなく、プレス温度までの加熱による自重曲げの影響が少ない場合には、自重曲げ成形の適用はない。一方、プレス前後の自重成形時間を十分に取る場合には、重力が成形後の形状に影響するため、自重曲げ成形が適用される。このように、プレス成形を実施する前の待機時間と待機温度に応じて、自重曲げ成形をコントロールできる。
上記した各成形方法は、それぞれ次に示す成形手法である。
(1)プレス成形とは、所定の成形型(下型、上型)間にガラス板を設置し、ガラス板を軟化させた状態で、上下の成形型間にプレス荷重を加えて、ガラス板を曲げて成形型になじませて、所定の形状に成形する方法である。
(2)自重曲げ成形とは、所定の成形型上に板状ガラスを設置した後、ガラス板を加熱して軟化させて、重力によりガラス板を曲げて成形型になじませて、所定の形状に成形する方法である。
(3)真空成形とは、所定の成形型上にガラス板を設置し、例えば、ガラス板上にクランプ成形型を設置して、ガラス板の周辺をシールする。その後、成形型とガラス板との間の閉鎖空間をポンプ等で減圧することにより、ガラス板の表裏面に差圧を与えて成形する。
(4)圧空成形法では、所定の成形型上にガラス板を設置し、例えば、ガラス板上にクランプ成形型を設置して、ガラス板の周辺をシールする。その後、ガラス板の上面に対して圧力を圧縮空気によって陽圧を付与し、ガラス板の表裏面に差圧を与えて成形する。
<被成形体のガラス材料>
被成形体であるガラス板は、例えば、厚さが0.5mm以上であり、0.7mm以上が好ましい。また、ガラス板の厚さは、5mm以下であり、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。この範囲であれば、最終製品において割れにくい強度が得られる。
ガラス板を構成するガラス組成としては、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラスを使用できる。特に本構成のガラスの成形装置では、ガラス板にアルミノシリケート、アルミノボロシリケートを使用した場合に優れている。これらのガラス板は、高ヤング率、高膨張係数を有し、ガラス板の加熱によって高い熱応力が発生する。このため、ガラス板の所望の屈曲形状からの偏差が大きくなり、更にガラス板を強化処理した場合に、圧縮応力の値がばらつくことがある。本構成のガラスの成形装置では、ガラス板がこれらのガラス組成であることで、屈曲形状でも形状偏差を小さくでき、圧縮応力のばらつきを抑制できる。
ガラス組成の具体例としては、酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO2を50~80%、Al23を0.1~25%、Li2O+Na2O+K2Oを3~30%、MgOを0~25%、CaOを0~25%及びZrO2を0~5%含むガラスが挙げられるが、特に限定されない。より具体的には、以下のガラスの組成が挙げられる。なお、例えば、「MgOを0~25%含む」とは、MgOは必須ではないが25%まで含んでもよい、の意である。(i)のガラスはソーダライムシリケートガラスに含まれ、(ii)及び(iii)のガラスはアルミノシリケートガラスに含まれる。(v)のガラスはリチウムアルミのシリケートガラスに含まれる。
(i)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO2を63~73%、Al23を0.1~5.2%、Na2Oを10~16%、K2Oを0~1.5%、Li2Oを0~5%、MgOを5~13%及びCaOを4~10%を含むガラス。
(ii)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を50~74%、Al23を1~10%、Na2Oを6~14%、K2Oを3~11%、Li2Oを0~5%、MgOを2~15%、CaOを0~6%及びZrO2を0~5%含有し、SiO2及びAl23の含有量の合計が75%以下、Na2O及びK2Oの含有量の合計が12~25%、MgO及びCaOの含有量の合計が7~15%であるガラス。
(iii)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を68~80%、Al23を4~10%、Na2Oを5~15%、K2Oを0~1%、Li2Oを0~5%、MgOを4~15%及びZrO2を0~1%含有するガラス。
(iv)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を67~75%、Al23を0~4%、Na2Oを7~15%、K2Oを1~9%、Li2Oを0~5%、MgOを6~14%及びZrO2を0~1.5%含有し、SiO2及びAl23の含有量の合計が71~75%、Na2O及びK2Oの含有量の合計が12~20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス。
(v)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を56~73%、Al23を10~24%、B23を0~6%、P25を0~6%、Li2Oを2~7%、Na2Oを3~11%、K2Oを0~2%、MgOを0~8%、CaOを0~2%、SrOを0~5%、BaOを0~5%、ZnOを0~5%、TiO2を0~2%、ZrOを0~4%含有するガラス。
<成形装置の構成>
以下、上記した成形装置の一構成例を詳細に説明する。
図2は成形装置100の概略構成図である。図3は図2に示すIII-III線断面を上方から見た模式的な平面図である。
以下の説明において、同じ作用を奏する部材や部位には同じ符号を付与することで、その説明を省略、又は簡略化することがある。また、図面に記載の態様は、本構成の説明を明瞭にするように模式化されており、実際の製品のサイズや縮尺どおりに正確に表したものではない。
図2に示す成形装置100は、水平方向左側から右側に向かう方向を、ガラス板の搬送方向TDとしており、搬送方向TDの上流側から順に予熱ステージ11、成形ステージ13、冷却ステージ15が配置される。また、予熱ステージ11、成形ステージ13、冷却ステージ15は、チャンバ27の内部空間に収容される。チャンバ27内は窒素ガス等の不活性ガスによりパージされ、ガラス成形時に悪影響を及ぼすガスのガス濃度を低下させている。
チャンバ27は、ガラス板及び下型23をチャンバ27内に搬入する搬入口29と、成形後のガラス板及び下型23を搬出する搬出口31とを有する。搬入口29には図1に示すローディング部19が接続され、同様に搬出口31には図1に示すアンローディング部21が接続される(図示省略)。また、搬入口29と搬出口31には不図示のシャッタが設けられ、ガラス板の搬入、搬出時以外はシャッタを閉じることで、チャンバ27内の雰囲気が一定に維持される。チャンバ27には、複数の開口部101が形成され、それぞれの開口部101には、後述する支持軸37が挿入される。支持軸37とチャンバ27との間は、不図示の蛇腹構造で密封される。チャンバ27は、不活性ガスを密閉する密閉構造の他、不活性ガスを常時供給して、チャンバ27内を陽圧にした半密閉構造であってもよい。
図2に示す予熱ステージ11は、ガラス板の搬送面より上方に、ガラス板及び下型23を所望の加熱温度に加熱する上部ヒータ(昇温用加熱部)35が配置される。上部ヒータ35は、下型23に対面して配置され、不図示の固定枠に支持された複数のランプヒータ36を熱源として備えた構成であることが好ましい。ランプヒータ36としては、例えば、赤外線ランプヒータが用いられる。赤外線ランプヒータの中には、例えば、カーボンランプ、ハロゲンランプ等の公知の各種ヒータが使用可能であり、輻射加熱が可能な発熱体であればよい。
図3は複数のランプヒータ36の断面図である。
ランプヒータ36は、通電により発熱する発熱線材36Aと、発熱線材36Aの周囲を囲む石英等の管材36Bとを有する。管材36Bの内周面又は外周面には、照射窓38を残してセラミックコート層40が形成される。照射窓38の発熱線材36Aを中心とする開口角(中心角)θは、ランプヒータ36の中心から被加熱体である下型23までの距離Ld、ランプヒータ36の配置ピッチLcに応じて決定され、下型23に均等に熱線が照射されるようにする。ここでは一例として、開口角θを60°としている。
また、上部ヒータ35のよる加熱領域(ランプヒータ36が配列された領域)は、下型23の水平面における外縁よりも広いことが好ましく、その場合、下型23の全体を均一に加熱できる。
上部ヒータ35の上方には、前述した支持軸37により支持された水冷板39が配置される。上部ヒータ35と対向する水冷板39の表面には反射膜が設けられることが望ましい。水冷板39には冷却水の流路が形成され、支持軸37を通じて供給及び排出される冷却水が循環される。この水冷板39は、上部ヒータ35による下型23やガラス板以外の周囲部材への不要な加熱を抑制する。
下型23の下方には、隙間を有して熱拡散板41が配置される。また、熱拡散板41の下方には下部ヒータ(昇温用加熱部)43が配置される。熱拡散板41は、熱伝導性に優れた材質からなり、下部ヒータ43の発熱を下型23に均一に輻射伝熱させる。熱拡散板41の材質としては、例えば、炭化タングステン、カーボン、超硬合金、銅、鉄、ステンレス鋼材等が使用可能である。下部ヒータ43は、接触加熱式のステージヒータ等が利用可能であるが、上部ヒータ35と同じ輻射加熱式の構成にしてもよい。
また、下部ヒータ43の下方には水冷板47が配置される。水冷板47は、チャンバ27の下部に固定された支持体45により支持され、下部ヒータ43による熱拡散板41と下型23以外の周囲部材への不要な加熱を抑制する。水冷板47は、前述した水冷板39と同様な構成であり、支持体45から冷却水が供給及び排出される。
冷却ステージ15において下型23と熱拡散板41との間の隙間は、特に限定はされないが、大きすぎると加熱効率が低下し、小さすぎるとガラス板の温度偏差の抑制が困難となるため、隙間の下限値としては1mmとする。また、隙間の上限値としては10mmとする。
下型23のガラス板が載置される上面側と、上部ヒータ35、水冷板39及び支持軸37の側方のステージ外周と、を囲むように、断熱枠体51が配置される。断熱枠体51は、ステージ内に配置される下型23に載置されたガラス板の側方を覆う。
断熱枠体51は、例えば、珪酸カルシウムを主体とする材料を抄造した断熱ボード等が使用できる。その他にも、例えば、ステンレス鋼材等の金属板であってもよい。断熱枠体は、図4に示すように、下型23の外周よりも外側の広い範囲を囲む、水平断面が長方形の枠体であることが好ましい。断熱枠体51には、枠上部を覆う蓋体を備えていてもよい。
また、成形ステージ13、冷却ステージ15においても、同様の構成の断熱枠体53,55が配置されることが好ましい。得られるガラス板の成形品質を向上させるには、各ステージ内におけるガラス板の温度偏差を低減することが特に重要である。そのため、各ステージの全てに断熱枠体を備えさせることが好ましい。これによれば、断熱枠体51,53,55に覆われた内部空間の温度分布をそれぞれ均一にできる。さらに、断熱枠体51,53,55の外側がチャンバ27によって囲まれるため、断熱枠体51,53,55内では、外部との熱の流入及び流出が生じにくくなり、より均一な温度分布が得られる。これにより、熱効率が向上して、各ステージにおける処理時間を短縮でき、また、各ステージにおけるガラス板の温度偏差を低減できる。
図4に示すように、予熱ステージ11、成形ステージ13、冷却ステージ15には、それぞれ下型23が配置される。各下型23には、搬送方向TDに直交する両脇側の側面23a、23bに、一対の型支持用ロッド61がそれぞれ外側に突出して設けられる。それぞれの型支持用ロッド61は、下型23を挟んだ両脇に配置された型搬送部63A,63Bに支持される。型搬送部63A,63Bは、詳細な機構の説明は省略するが、搬送方式がウォーキングビーム方式の搬送機構により、各ステージに沿って配置される複数の下型23を、搬送方向TDに沿って搬送する。
図5は下型23を予熱ステージ11から冷却ステージ15に向かう搬送方向TDに沿って搬送する様子を示す模式的な説明図である。
型搬送部63A,63Bは、複数の下型23のそれぞれから突出した型支持用ロッド61を支持し、ウォーキングビーム方式により、複数の下型23を予熱ステージ11から成形ステージ13へ、成形ステージ13から冷却ステージ15へ同時に搬送する。この搬送時における下型23の上下方向の変位は、断熱枠体51,53,55や熱拡散板41等の固定側部材と干渉しない範囲で行われる。
次に、図2に示す冷却ステージ15を説明する。
冷却ステージ15の下型23の上方には、熱拡散板65と、予熱ステージ11と同様の上部ヒータ(降温用加熱部)67、水冷板59がこの順に配置される。熱拡散板65は、前述した熱拡散板41と同様の構成である。水冷板59は、チャンバ27の上部に固定され、冷却水の流路が形成された支持軸71によって支持される。
冷却ステージ15の下型23の下方には、予熱ステージ11と同様に、熱拡散板73、下部ヒータ(降温用加熱部)75、水冷板77が配置される。水冷板77は、チャンバ27の下部に固定された支持体79により支持され、下部ヒータ75による熱拡散板73と下型23以外の周囲部材への不要な加熱を抑制する。水冷板77は、前述した水冷板39と同様な構成であり、支持体79から冷却水が供給及び排出される。
冷却ステージ15の下型23と熱拡散板65との間、及び下型23と熱拡散板73との間は、それぞれ密着させてもよいが、隙間を設けることで下型23の温度分布をより均一にできるため好ましい。
次に、図2に示す成形ステージ13を説明する。
図6は成形ステージ13の拡大断面図である。
成形ステージ13の下型23の上方には、上型25、熱拡散板81、上部ヒータ(保温用加熱部)83、断熱板85、水冷板87がこの順で配置される。
上型25は不図示のプランジャに接続され、下型23に型締めされる成形位置と、成形位置上方の退避位置との間で昇降移動可能に支持される。上型25は、下型23の搬送時等、成形時以外は退避位置に配置される。また、上型25を成形ステージ13内に固定して、下型23の搬送時に、下型23が上昇することで型締めする構成にしてもよい。その場合、上型移動機構を省略でき、設備コストを低減できる。
水冷板87は、チャンバ27の上部に固定された支持軸89により支持され、上部ヒータ83による上型25と熱拡散板81以外の周囲部材への不要な加熱を抑制する。水冷板87は、前述した水冷板39と同様な構成であり、支持軸89から冷却水が供給及び排出される。
断熱板85は、例えばセラミックス、ステンレス鋼、ダイス鋼、高速度鋼(ハイス鋼)などの公知の断熱材を用いることができる。金属系の材料を用いる場合には、表面にCrN、TiN、TiAlN等のコーティング処理を施すことが好ましい。また、断熱板85の表面を粗面構造にしてもよい。その場合、水冷板39との間に微小な隙間が生じ、より高い断熱効果が得られる。
成形ステージ13の下型23の下方には、熱拡散板91、下部ヒータ(保温用加熱部)93、断熱板85、水冷板97がこの順で配置される。水冷板97は、チャンバ27の下部に固定された支持体99により支持され、下部ヒータ93による熱拡散板91と下型23以外の周囲部材への不要な加熱を抑制する。水冷板97は、前述した水冷板39と同様な構成であり、支持体99から冷却水が供給及び排出される。
成形ステージ13の上型25は、上下方向に駆動される不図示のシリンダに取り付けられ、シリンダの駆動によって、上下動可能に支持される。シリンダとしては、エアシリンダ、油圧シリンダ、電動サーボモータ等を使用したサーボシリンダ等を使用できる。
成形ステージ13の上型25は、熱拡散板81に面接触されており、上部ヒータ83からの熱が均等に上型25に伝わるようになっている。また、成形ステージ3の下型23は、熱拡散板91に面接触されており、下部ヒータ93からの熱が均等に下型23に伝わるようになっている。なお、成形条件等によっては、上型25と熱拡散板81との間、及び下型と熱拡散板91との間を離間させてもよい。
図7の(A)は上型25の断面図、(B)は下型23の成形面111を含む断面図である。図8は上型25を図7の(A)のB方向から見た背面図である。
図7の(A)及び図8に示すように、型締め方向の後方に配置される上型25は、環状の突起部113を有する。突起部113は、図7の(B)に示す下型23の成形面111の外縁部に対応する上型25に、下型23に向けて突出して設けられる。突起部113は、上型25の外周から中心に向けて徐々に突出量が大きくなる傾斜面113aを有する。成形面111は、ガラス板の成形形状に合わせた形状にされる。つまり、図8に示す環状の突起部113の内側は、底面が平坦状の有底溝25aとなる。
図7の(B)に示す型締め方向の先方に配置される下型23は、成形面111に開口する複数の真空成形用の吸引孔115を有する。吸引孔115は、不図示の吸引ポンプ等の吸引源に接続される。吸引ポンプの駆動により、所定のタイミングで下型23とガラス板17との間の空間内のガスを吸引し、ガラス板17を成形面111に密着させる。
下型23及び上型25は、カーボン、ステンレス鋼、セラミックス、超硬合金等の素材で構成できる。特に、熱分布を均一化する観点からはカーボンを用いることが好ましい。
また、上型25の突起部113の形状はこれに限らない。突起部113は、上記した有底溝25aを形成せず、突出面が平坦状であってもよい。
図9の(A)は変形例の上型25Aの断面図、(B)は変形例の下型23Aの成形面111Aを含む断面図である。
変形例の上型25Aは、変形例の下型23Bに向けて突出する突起部113Aを有する。突起部113Aには、上型25Aの外周から中心に向けて徐々に突出量が大きくなる傾斜面113aが形成され、頂部は平坦状の頂面113bが形成される。
また、下型23Aは、図7の(A)に示す下型23と同様に、ガラス板の成形形状に合わせた形状の成形面111Aを有する。そして、成形面111Aの曲率が最大となる位置に吸引孔115が設けられている。本構成の場合は、上型25Aの傾斜面113aに対応する傾斜面111aと、頂面113bに対応する底面111bとが接続される平面視環状の領域が最大の曲率となる。この環状の領域の少なくとも一部に開口するように、複数の吸引孔115が設けられている。
本構成の上型25Aの突起部113Aと下型23Aの成形面111Aは、互いの対応する位置において、突起部113Aの曲率が成形面111Aの曲率より小さい。これによれば、ガラス板17が傾斜面111aと113aに挟まれる際に、ガラス板17との接触面積が小さくなり、ガラス板17の変形や移動がしやすくなる。よって、ガラス板17を成形面111Aに忠実に沿わせることができ、形状精度を向上できる。
そして、図2に示す予熱ステージ11、成形ステージ13、冷却ステージ15における各上部ヒータ35,67,83及び各下部ヒータ43,75,93は、いずれも不図示の温度制御部に接続され、それぞれ個別の設定温度にセットされる。温度制御部は、例えば比例制御、PI制御、PID制御等の制御動作により、各ステージで加熱、保温、徐冷処理を実現する。
なお、上記した成形装置100は、ガラス板の搬送方向TDを水平方向にしているが、例えば鉛直方向等、水平方向から傾斜した方向としてもよい。その場合、下型23と上型25とが上下に配置されないことがあるが、ガラス板の加熱温度を調整し、ガラス板の粘度を下げすぎなくすることで、重力の影響を抑えながら下型23と上型25との間で成形できる。
<ガラス板材の成形手順>
次に、上記構成の成形装置100を用いて、ガラス板17を曲面形状に成形する具体的な手順と、その作用を説明する。
図1に示すローディング部19の下型23に、成形前のガラス板17を、不図示のロボットアーム等の移送手段、又は作業者の人手によって載置する。
ローディング部19の下型23は、図4に示す型搬送部63A,63Bによって、ガラス板17を載置したまま予熱ステージ11に搬送される。下型23は、ガラス板17が載置される前に常温よりも高い温度に予め加熱されていると、予熱ステージ11での加熱時間を短縮できるため好ましい。例えば、ガラス板17が載置される際の下型23の温度は、300℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましい。
(予熱工程)
図2に示す予熱ステージ11では、上部ヒータ35及び下部ヒータ43により、下型23上のガラス板17を目標加熱温度(例えば、500℃~700℃)になるまで加熱する。
ガラス板17のプレス成形に適した温度は、ガラス板17自体の組成によって異なるが、温度が低すぎるとガラス板17が十分に軟化しない。そのため、予熱ステージ11では、好ましくはガラス板17のガラス転移点Tg以上、より好ましくはTg+40℃以上、更に好ましくはTg+80℃以上となるように加熱する。一方、ガラス板17の温度が高すぎるとガラス板17が過剰に軟化して形状維持に適さない状態となる。したがって、予熱ステージ11では、ガラス板17を、好ましくはTg+200℃以下、より好ましくはTg+150℃以下、更に好ましくはTg+120℃以下となるように加熱する。
また、上記と同様の観点から、予熱ステージ11では、ガラス板17の粘度が、好ましくは5.22×1011Pa・s以上、より好ましくは1.97×1010Pa・s以上、更に好ましくは1.81×10Pa・s以上となるように加熱する。また、予熱ステージ11では、ガラス板17の粘度が好ましくは5.94×10Pa・s以下、より好ましくは4.16×10Pa・s以下、更に好ましくは1.65×10Pa・s以下となるように加熱する。
得られるガラス板成形品の面品質の観点からは、予熱ステージ11ではガラス板17を均一に加熱することが好ましい。つまり、予熱ステージ11で加熱中のガラス板17の温度偏差を低減することが好ましい。具体的には、予熱ステージ11で加熱中のガラス板17の温度偏差は好ましくは30℃未満、より好ましくは20℃未満、更に好ましくは10℃未満である。
また、加熱時の下型23のガラス板17に接触する領域の温度分布は、好ましくは30℃未満、より好ましくは25℃未満、更に好ましくは20℃未満である。
(成形工程)
目標加熱温度に加熱されたガラス板17は、下型23と共に成形ステージ13に搬送される。成形ステージ13では、加熱されたガラス板17にプレス等の外力を型締め方向に付与して所望の形状に成形する。
成形ステージ13では、退避位置に配置された上型25が下降して、下型23との間にガラス板17を挟み、ガラス板17を成形加工する。この成形加工についての詳細は後述する。成形ステージ13では、予熱ステージ11により加熱されたガラス板17の温度が一定に維持されるように、上部ヒータ83及び下部ヒータ93によって保温される。
成形ステージ13におけるガラス板17の温度は、上記した予熱ステージ11における加熱温度からの変動を、20℃以下に抑えることが好ましい。また、得られるガラス板成形体の面品質の観点からは、成形ステージ13ではガラス板17を均一に加熱することが好ましい。具体的には、成形ステージ13で成形中のガラス板17の温度偏差は、20℃以内であることが好ましい。
ガラス板17が成形加工されると、上型25が上昇して退避位置に戻る。そして、下型23は、成形済みのガラス板17Aと共に冷却ステージ15に搬送される。
(冷却工程)
冷却ステージ15では、上部ヒータ67及び下部ヒータ75の設定温度が目標加熱温度より低い温度に設定され、ガラス板17Aと下型23が徐冷される。冷却ステージ15では、加熱、成形されたガラス板17Aの形状が安定するまでガラス板17を徐冷する。
冷却ステージ15では、上部ヒータ67及び下部ヒータ75による加熱温度を調整しながら、ガラス板17Aを徐冷する。冷却ステージ15における冷却速度が速すぎると、ガラス板17Aに変質や温度偏差が生じやすくなる。そのため、冷却ステージ15におけるガラス板17Aの冷却速度は、好ましくは30sで20℃、より好ましくは30℃、更に好ましくは40℃にする。また、冷却時のガラス板17Aの温度分布は、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下、更に好ましくは20℃以下にする。
徐冷後のガラス板17Aは、チャンバ27の外部に搬送された後、図1に示すように、アンローディング部21で取り出される。アンローディング部21では、300°以上、好ましくは500℃以上の温度を有する下型に載置された、成形、徐冷後のガラス板17Aが、型面から取り出される。ガラス板17の取り出しは、不図示のロボットアーム等の移送手段による搬出でもよく、作業者の人手による搬出であってもよい。
<温度分布の均一化効果>
上記したガラス板17,17Aの均一な温度分布は、断熱枠体51,53,55による熱の閉じ込め効果、及び断熱枠体51,53,55の外側のチャンバ27による外部からの高い遮熱効果、更に、熱拡散板41,65,73,81,91によるヒータの均熱化効果、等の相乗効果によって達成される。また、予熱ステージ11の上部ヒータ35による輻射加熱と、下部ヒータ43からの伝熱加熱、成形ステージ13の上部ヒータ83及び下部ヒータ93からの伝熱加熱、並びに、冷却ステージ時の上部ヒータ67及び下部ヒータ75による熱拡散板65,73を介した輻射加熱によって、各ステージでそれぞれ異なる加熱形態にしている。また、各ステージの上部ヒータ及び下部ヒータは、それぞれ個別の設定温度で加熱可能であり、きめ細かな温度制御が可能になっている。
このようなステージ毎、ヒータ毎で個別に加熱制御することで、ガラス板17,17Aの温度分布を高いレベルで均一化できる。また、場所に応じた微調整が容易になり、設計通りの加熱処理を正確に実現できる。さらに、加熱雰囲気が断熱枠体51,53,55とチャンバ27によって覆われることで、外部への熱流出が抑制され、その結果、加熱制御、降温制御の応答性が高められて、所望の温度へ均一に、且つ短時間で到達させることができる。
また、型搬送部63A,63Bが、ウォーキングビーム方式で下型23を搬送する構成であるため、ステージ間の移動速度が高められる。よって、ステージ間での放熱による熱損失が抑えられ、これによっても温度分布の均一化が図れる。
なお、上記した熱拡散板41,65,73,81,91は、成形条件によっては配置を省略することもできるが、熱拡散板を設けることにより、各ステージにおけるガラス板17,17Aの温度偏差が小さく抑えられる。
<成形工程の詳細>
次に、成形ステージ13におけるガラス板17の成形方法、及び成形型の構造について詳細に説明する。
まず、成形に用いるガラス板17の形状について定義する。
図10はガラス板17の平面図である。
ガラス板17は、ガラス形状の外周縁17aよりも内側のガラス中央部121と、ガラス中央部121の中央部外周121aから外周縁17aまでの間のガラス外周部123とを有する。なお、図10においては外周部123にハッチを付与している。成形工程では、ガラス中央部121の少なくとも一部を曲面形状に成形する。
(第1の成形方法)
図11A、図11B、図11Cは、図7の(A)、(B)に示す下型23と上型25とを互いに接近させてガラス板17を成形加工する様子を段階的に示す概略工程説明図である。
図11Aに示すように、下型23の成形面111には、ガラス板17の外周縁17aが接触した状態でガラス板17が載置される。この下型23に向けて上型25を下降させると、上型25の突起部113が、下型23に載置されたガラス板17に接触する。
上型25は、ガラス板17に接触する部分と、接触しない部分とを有し、突起部113の傾斜面113aだけがガラス板17のガラス外周部123に接触する。そして、図11Bに示すように、上型25が更に下降すると、突起部113の傾斜面113aの傾斜によって、ガラス板17が下側に凸となる形状にプレスされる。つまり、上型25は、ガラス板17に環状に接触するだけでも、ガラス板17を下型23に向けて変形させることができる。また、ガラス板17は、自身の自重によっても下側に撓み、下型23の成形面111に沿うように変形する。
次に、図11Cに示すように、吸引孔115から負圧を供給することでガラス板17を成形面111に真空吸着させる。これにより、ガラス板17が成形面111に密着して、ガラス板17に成形面111の曲面形状が転写される。よって、プレス成形のみではガラス板17と成形面111とが密着しにくい部分も、確実に密着させることができ、プレス成形のみでは困難となる複雑な形状であっても容易に成形可能となる。
吸引孔115の位置、個数、大きさ等は特に限定されないが、成形面111において、プレス成形のみではガラス板17を密着させにくい部分に吸引孔115を形成することが好ましい。また、吸引孔115の大きさは、ガラス板17に吸引孔115の痕跡が残存しない、又は残存しても目立たない程度に適宜調整することが好ましい。
通常、ガラス板のプレス成形においては、ガラス板の全面を成形型に接触させた状態で挟み込んで成形する。そのため、得られるガラス板成形品の面品質を確保するため、比較的低い温度で成形している。そのため、ガラス板を所望の形状に変形させるには、比較的長い時間を要していた。そのため、複雑な形状を成形する場合は面品質を確保できる低温域で成形が困難となっていた。一方、上記構成の下型23と上型25を用いて成形する場合には、上型25がガラス板17のガラス中央部121に接触することがない。このため、比較的高い温度で成形しても、ガラス中央部121に成形型との接触による面荒れ等の悪影響が及ぶことなく、面品質の優れたガラス板成形品が得られる。このように、本構成の成形ステージ13では、比較的高温での成形が可能であるため、短時間で成形を完了できる。すなわち、上記の成形型を用いれば、面品質に優れたガラス板成形品が短時間で得られる。
なお、本構成の下型23及び上型25は、ガラス中央部121の全体が一定の曲率で屈曲したガラス板成形品を得るための型であるが、下型23及び上型25の形状は、図示例の形状に限らない。下型23及び上型25の形状は、成形する目標形状に応じて、適宜変更が可能である。
本構成の下型23及び上型25は、プレス成形、真空成形、及び重力による自重曲げ成形を組み合わせた成形を実現するが、材料や成形条件等によっては、真空成形を除いたプレス成形及び重量による成形だけでも成形が可能である。
(第2の成形方法)
第1の成形方法では、プレス成形、真空成形、自重曲げ成形との3種類の成形を組み合わせているが、第2の成形方法では、更に圧空成形を組み合わせる。
図12は第2の成形方法によりガラス板17を成形加工する様子の概略を示す工程説明図である。この場合の成形型は、上型25Bの環状の突起部113の内側に、圧空成形用のガス噴出孔125が形成されたこと以外は、第1の成形方法の成形型と同様の構成である。
ガス噴出孔125は、通常、上型25Bのガラス板17に接触しない部分に設けられる。ガス噴出孔125の個数、大きさ等は特に限定されない。
上記構成の下型23及び上型25Bを用いて、プレス成形と圧空成形を併用する場合は、上型25Bの突起部113をガラス板17のガラス外周部123に接触させた後、ガス噴出孔125からガスを噴出する。すると、ガラス板17は下型23の成形面111に押し当てられる。つまり、突起部113は環状に形成され、ガラス板17との接触も環状になるため、下型23の成形面111とガラス板17との間に閉空間129が形成される。この閉空間129にガスが供給され、閉空間129内の圧力が陽圧になる。これによってガラス板17が成形面111に押圧される。
また、上記の圧空成形と共に、前述した真空成形、重力による成形も同時に実施されることで、ガラス板17を成形面111に、より速く、より確実に沿わせることができ、成形完了までの所要時間を短縮できる。このように、プレス成形に、真空成形、圧空成形、自重曲げ成形の少なくともいずれかを組み合わせることにより、複雑な形状の成形が簡単に実現でき、成形時間を更に短縮できる。
また、真空成形、圧空成形は、プレス成形の実施中に、任意のタイミングで行うことができ、実施順は、プレス成形、真空成形、圧空成形の順であってもよく、プレス成形、圧空成形、真空成形の順であってもよい。プレス成形を真空成形と圧空成形より先に実施することで、ガラス板17の成形面111に対する位置決めをより確実に行える。
また、各成形を同時に実施することで、ガラス板17と成形面111との密着性をより向上でき、ガラス板17にしわが生じやすい形状の加工も容易となる。
(第3の成形方法)
図13A、図13B、図13Cは、図9の(A)、(B)に示す変形例の下型23Aと上型25Aとを互いに接近させてガラス板17を成形加工する様子を段階的に示す概略工程説明図である。
図13Aに示すように、下型23Aの成形面111Aには、ガラス板17の外周縁17aが接触した状態でガラス板17が載置される。この下型23Aに向けて上型25Aを下降させると、上型25Aの突起部113Aの頂面113bが、下型23Aの成形面111Aに載置されたガラス板17に接触する。
このときの上型25Aの頂面113bは、ガラス板17に面接触することで上型25Aの下降に伴うガラス板17への圧力を分散させている。つまり、軽接触状態となる。そして、図13Bに示すように、上型25が更に下降して、突起部113Aの傾斜面113aによって、ガラス板17が下側に凸となる形状に軽荷重(0.1MPa以下)でプレスされる。このとき、下型23Aの底面111bとガラス板17との間には、吸引孔115に連通する隙間117が形成されている。換言すれば、上型25Aの突起部113Aの頂面113bと、下型23Aの成形面111Aの底面111bとは、型締めしても接触しない形状にされている。
次に、図13Cに示すように、吸引孔115から隙間117内に負圧を供給することでガラス板17を成形面111Aに真空吸着させる。これにより、ガラス板17が成形面111Aに密着して、ガラス板17に成形面111Aの曲面形状が転写される。なお、図13Bから図13Cへと成形が進む過程において、プレス圧力は図13Bの軽荷重(0.1MPa以下)よりも低く保つことが好ましい。
吸引孔115が、下型23Aの成形面111Aにおける曲率が最大となる位置に設けられることで、ガラス板17と成形面111Aとの間の隙間117は、底面111bの中央側から周辺側に向けて徐々にガラス板17が成形面111Aに密着して消失するようになる。そして、最後に成形面111Aの曲率の最大となる部分にガラス板17が密着する。このようにして、ガラス板17は、上型25Aにおける突起部113Aの頂面113bに当接した状態から、下型23Aにおける成形面111Aの底面111bに隙間を生じさせずに受け渡される。
なお、ガラス外周部123は、上型25Aの傾斜面113aと下型23Aの傾斜面111aとの間で軽くプレスされた状態であるため、吸引孔115からの吸引によってガラス外周部123は容易に底面111b側に変形可能である。したがって、ガラス板17は、ガラス外周部123で局所的に拘束されることなく、ガラス板17の全体が成形面111Aに沿って、略均等な圧力で貼り付いた状態となる。
この成形方法によれば、ガラス板17を下型23Aの成形面111Aに沿わせて形状を転写する動作が、実質的に真空吸着によって行われる。そのため、ガラス面内に均一の圧力分布を生じさせるため、ガラス板17の板面に上型25Aのプレスによる局所的な型あたりが原因の圧痕や皺を生じさせることなく、高品質な成形が行える。また、真空吸着により所望の形状に加工するため、プレス成形のみでは困難となる複雑な形状であっても、高精度、且つ高品質な成形が可能となる。
(第4の成形方法)
第4の成形方法では、第3の成形方法に圧空成形を更に組み合わせる。
図14は、第4の成形方法によりガラス板17を成形加工する様子の概略を示す工程説明図である。この場合の成形型は、上型25Cの突起部113Aの内部に、圧空成形用のガス噴出孔125が形成されたこと以外は、第3の成形方法の成形型と同様の構成である。
前述した第2の成形方法の場合と同様に、ガス噴出孔125の開口は、通常、上型25Bのガラス板17に接触しない部分に設けられる。ガス噴出孔125の個数、大きさ等は特に限定されない。
上記構成の下型23A及び上型25Cを用いて、プレス成形と圧空成形を併用する場合は、上型25Cの突起部113Aをガラス板17のガラス外周部123に接触させた後、ガス噴出孔125からガスを噴出する。すると、ガラス板17は下型23Aの成形面111Aに押し当てられる。つまり、突起部113Aとガラス板17との接触領域が環状になるため、下型23Aの成形面111Aとガラス板17との間に閉空間129が形成される。この閉空間129にガスが供給され、閉空間129内の圧力が陽圧になる。これによってガラス板17が成形面111Aに押圧される。
上記したガス噴出孔125からのガスの噴出は、吸引孔115によるガラス板17の真空吸着後で行ってもよく、真空吸着前に行ってもよい。
<他の成形装置の構成例>
上記のガラス板の成形装置100は、予熱ステージ11、及び冷却ステージ15をそれぞれ複数備えた構成にしてもよい。
図15は複数の予熱ステージ11と、成形ステージ13と、複数の冷却ステージ15とを備える成形装置200の概略構成図である。
予熱ステージ11は、下型23の搬送方向TDに沿って4箇所(PH1~PH4)に設けられ、冷却ステージ15は、下型23の搬送方向TDに沿って4箇所(C1~C4)に設けられる。成形ステージ13は、予熱ステージ11と冷却ステージ15との間の1箇所(PM1)に設けられる。
予熱ステージ11のPH1~PH4は、搬送方向TDに沿って段階的に加熱温度が高く設定される。これにより、下型23とガラス板17とは、搬送方向TDへ搬送するにつれて徐々に昇温し、成形温度である目標加熱温度に達するまで加熱される。
冷却ステージ15のC1~C4は、搬送方向TDに沿って段階的に加熱温度が低く設定される。これにより、下型23とガラス板17とは、搬送方向TDへ搬送するにつれて徐々に降温し、目標加熱温度からの徐冷が施される。
図16は予熱ステージ11、成形ステージ13、冷却ステージ15における下型23とガラス板17の温度変化の一例を示すグラフである。
図15に示すローディング部19(LD)から予熱ステージ11のPH1に供給されたガラス板17は、予め所定の温度Tcまで加熱された下型23に載置され、室温TRMから加熱される。下型23とガラス板17は、PH2,PH3,PH4へ搬送されるにつれて温度が上昇し、成形ステージ13(PM)に搬送される前に成形温度である目標加熱温度TPMに達する。
成形ステージ13(PM)では、ガラス板17が、目標加熱温度TPMの一定温度で保持されながら成形される。
成形後、冷却ステージ15のC1~C4に搬送され、下型23と成形後のガラス板17Aの温度は徐々に低下する。C4から図15に示すアンローディング部21(ULD)に搬送されたガラス板17Aは、自然放冷される。
予熱ステージ11と冷却ステージ15の各ステージでは、それぞれのステージで下型23とガラス板17,17Aとが均一に設定温度になるように温度管理される。ステージの数は多いほど、温度の変化幅を広くできる。また、タクトタイムの観点からは、ステージの数を減らすことが好ましい。各ステージの数は、加工対象となるガラス板のサイズや、加工形状等に応じて適宜設定される。例えば、ガラス板のサイズが大きい場合や複雑な形状の成形を行う場合は、急激な温度変化を避けるため、予熱ステージ11及び冷却ステージ15の数を増やすことが好ましい。
図17は参考例としての従来の成形装置の概図である。
従来の成形装置では、ガラス板17を下型131と上型135とによって全面プレスする構成であり、加熱温度が前述した成形温度(目標設定温度)よりも低く設定される。そのため、ガラス板17を、成形形状が安定するまで型締め状態で保持させる必要がある。その結果、成形時間TPM2が図16に示す成形時間TPM1より長くなる。
一方、図15に示す本構成の成形装置200は、ガラス外周のみに接触するプレス成形と、真空成形、圧空成形、重力による成形とを組み合わせてガラス板17を成形するため、加熱温度を従来よりも高い温度にまで設定でき、しかも、各成形の相乗効果によって成形型の成形面にガラス板が密着し、成形形状がいち早く安定する。つまり、ガラス板のスプリングバックが生じにくくなる。これにより、成形ステージ13は1つのステージだけで済み、設備コストを削減でき、スループットが向上する。
また、下型23の温度を予め所定の温度Tcまで加熱しておくことで、目標設定温度までの到達時間をより短縮でき、タクトタイムを短縮できる。
図18は図15に示す成形装置200の他の構成例を示す成形装置300の概図である。
本構成の成形装置300は、図15に示す予熱ステージ11、成形ステージ13、及び冷却ステージ15を有する複数の成形ラインを備える。成形装置300は、図18において、第1成形ライン141と、第2成形ライン143との2ラインを備えた構成を示しているが、3ライン以上備えていてもよい。
成形装置300の第1成形ライン141のローディング部19は、第2成形ライン143のアンローディング部21に接続され、第1成形ライン141のアンローディング部21は、第2成形ライン143のローディング部19に接続される。そして、第1成形ライン141の下型23と第2成形ライン143の各下型23は、それぞれに共通に使用され、各ラインを循環する。
本構成によれば、一方の成形ラインのアンローディング部21に搬送された下型23を、他方の成形ラインのローディング部19に戻すことで、型温度の低下が抑えられ、成形装置300の稼働時には、常に所定の温度Tc以上に維持される。よって、下型23の温度変化幅が小さくなり、下型23への温度サイクル負荷を軽減できる。また、加熱のためのエネルギ消費が抑えられ、ランニングコストを低減できる。
さらに、複数の成形ラインを直列に配置する構成と比較して、成形装置200の設置スペースを小さくでき、これによっても設備コストを削減できる。
<成形工程の詳細>
次に、成形ステージ13での成形工程における好ましい成形条件について説明する。
本構成の成形装置100,200,300においては、以下に示す成形条件に基づいてガラス板を成形することが好ましい。
(加圧条件)
プレス成形では、図10に示すガラス板17のガラス中央部121とガラス外周部123のそれぞれの領域に異なる圧力を付与してガラス板17をプレス成形する。具体的には、真空成形、圧空成形を実施しない場合、ガラス中央部121に付与する圧力Pctは、0~0.1MPaであり、ガラス外周部123に付与する圧力Pegは、0.1~10MPaであることが好ましい。
真空成形、圧空成形を実施しない場合、ガラス板17のガラス中央部121には、重力以外の圧力は作用しない。一方、ガラス板17のガラス外周部123には、ガラス中央部121より高い圧力が付与されて、ガラス板17が成形型に固定される。これにより、ガラス板17の位置ずれのない安定したプレス成形が行える。また、ガラス板17と接触する突起部113や成形面111(図7の(A),(B)参照)の傾斜方向、傾斜角度によって、プレス成形によるガラス板17の変形方向(下に凸又は上に凸)、変形量を決定できる。
ガラス板17を、プレス成形と真空成形を併用して成形する場合、プレスによりガラス中央部121に付与する圧力Pctは、0~0.1MPaであり、ガラス外周部123に付与する圧力Pegは、0.1~10MPaであることが好ましい。そして、プレス成形と真空成形によるガラス板17へ付与する圧力の合計は、ガラス外周部123の圧力Pegが、ガラス中央部121の圧力Pctより高い圧力(Peg>Pct)にする。
さらに、ガラス板17を、プレス成形と真空成形と圧空成形とを併用して成形する場合、プレスによりガラス中央部121に付与する圧力Pctは、0~0.1MPaであり、ガラス外周部123に付与する圧力Pegは、0.1MPa~10MPaであることが好ましい。そして、プレス成形と真空成形と圧空成形によるガラス板17へ付与する圧力の合計は、ガラス外周部123の圧力Pegが、ガラス中央部121の圧力Pctより高い圧力(Peg>Pct)にする。この場合、ガラス中央部121には真空成形に加えて圧空成形による圧力も付与されるため、プレス成形と真空成形だけの場合よりもガラス中央部に付与される圧力は大きい。
上記条件は、プレス成形前後に自重成形による曲げ効果を含んでいてもよく、含まれてなくてもよい。
(ガラス板の温度)
ガラス板17を所望の形状に成形する際、成形時の温度の下限値は、好ましくは400℃、より好ましくはTg+40℃、更に好ましくはTg+80℃である。また成形時の温度の上限値は、好ましくは750℃、より好ましくは680℃、更に好ましくは650℃である。
成形温度を上記範囲にすることで、ガラス板17の成形形状が短時間で保持され、成形時間を短縮できる。
(ガラス板の粘性)
ガラス板17を所望の形状に成形する際、成形時のガラス板17の粘性は、上記したガラス板17の材種等により異なるが、成形性の観点からは1×10-5Pa・s以下が好ましい。
特に、成形性の指標となるφ(=∫(P/ρ)dt、[P:面内圧力、ρ:粘性])が、ガラス板のガラス外周部で1×10-8.7~1×102.5、ガラス中央部で1×10-12~1×10-0.5egであることが好ましい。
(ガラス板の寸法精度)
上記した製造装置及び成形方法によれば、形状精度に優れたガラス板成形体が得られる。ガラス板成形体の形状品質の評価指標としては、例えば、設計形状(デザイン面)と比較した面内形状偏差が挙げられる。
面内形状偏差とは、設計形状に沿って法線を設定したとき、ガラス板成形体の形状を、法線方向におけるデザイン面からの距離の絶対値が面内で最小になるように曲面近似を行い、その曲面近似された面とデザイン面との法線方向のずれ量の偏差値を面内形状偏差と定義する。
本構成の製造装置及び成形方法により得られるガラス板成形体は、面内形状偏差が好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.4mm以下である。
表1にガラス板の成形条件と、その成形結果を纏めて示す。
図1に示す成形装置を用いて、寸法100×50mm(厚さt=1.1mm)のガラス板(素材:ドラゴントレイル(登録商標))を、自重曲げのみの成形、全面プレス成形、ガラス外周部をプレスするエッジプレス成形のプレス成形のみ、プレス成形及び真空成形を組み合わせた成形、の各成形法により成形した。
ガラス板の成形形状は、図19の(A)に示す単一の曲率半径を有する試験例1、2と、図19の(B)に示すS字形状の試験例3と、図19の(C)に示すJ字形状の試験例4と、図19の(D)に示す鞍形状の試験例5とした。試験例1の曲率半径Rは2000mm、試験例2の曲率半径R0は800mmである。また、S字形の試験例3の曲率半径は、一方の端部から順にR1が2000mm、R2が100mm、R3が2000mmである。J字形の試験例4は、平坦状から曲率半径R4が50mmの曲面が接続された形状を有する。鞍形の試験例5は、曲率半径R5が800mmの凸面と、この凸面と直交する方向に曲率半径R6が2000mmの凹面を有する。
試験例1~4では、全面プレス成形の圧力を0.1MPaとし、試験例5では全面プレス成形の圧力を0.1MPa以下と、0.1MPaを超える圧力との両方で行った。
それぞれの成形法により得られた成形体を、成形のタクトタイム、形状精度、面品質に関して評価した。評価基準は以下に示す通りである。・タクトタイム(成形に要する時間)
◎:30s未満
○:30s以上、100s未満
△:100s以上、200s未満
▲:200s以上、500s未満
×:501s以上
・形状精度(デザイン形状からの偏差)
◎:0.2mm未満
○:0.2mm以上、0.4mm未満
△:0.4mm以上、0.6mm未満
▲:0.6mm以上、0.8mm未満
×:1.0mm以上
・面品質(画像処理による計数される欠点の数)
◎:0~5個
○:6~10個
△:11~50個
▲:51~100個
×:101個以上
Figure 0007476805000001
自重曲げ成形だけの場合、いずれの試験例もタクトタイムを速めることができなかった。
全面プレス成形の場合、圧力を0.1MPa以下にすると、ガラス板の全面が成形型と接触するため、成形後のガラス表面の表面粗さが増大して、面品質が低下した。しかし、試験例5では、0.1MPaを超える圧力を付与すると、面品質が向上した。
エッジプレス成形でプレスのみの場合、単曲形の試験例1,2では、タクトタイム、形状精度が良好で、特に面品質に優れる結果になった。しかし、成形形状が比較的複雑となる試験例3,4,5では、タクトタイム、形状精度、面品質のいずれもNGとなった。
一方、エッジプレス成形でプレス成形と真空成形を組み合わせた場合、試験例1~4において良好な結果が得られ、試験例5では面品質がNGとなった。つまり、試験例5の鞍形状の場合は、全面プレス成形で0.1MPaを超える圧力を付与すると良好な結果が得られた。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) ガラス板を加熱して所望の形状に成形するガラス板の成形方法であって、
前記ガラス板を一対の成形型の間に挟む工程と、
前記成形型により、前記ガラス板の外周縁より内側のガラス中央部に0.1MPa以下の第1の加圧力を型締め方向に付与又は加圧力を付与せず、前記ガラス中央部の外周から前記ガラス板の外周縁までの間のガラス外周部に前記第1の加圧力とは異なる0.1~10MPaの第2の加圧力を型締め方向に付与して、前記ガラス板をプレス成形する工程と、
を有するガラス板の成形方法。
このガラス板の成形方法によれば、ガラス板のガラス中央部とガラス外周部とを異なる加圧力でプレス成形することで、加圧力の低いガラス中央部の面品質の低下を抑制できる。
(2) 前記型締め方向の先方に配置された第1成形型と前記ガラス板との間に負圧を供給して、前記ガラス板を前記第1成形型に吸着させる工程を有する(1)に記載のガラス板の成形方法。
このガラス板の成形方法によれば、ガラス板を負圧により第1成形型に吸着させることができ、ガラス板をより確実に、しかも高速に所望の形状に成形できる。
(3) ガラス板を加熱して所望の形状に成形するガラス板の成形方法であって、
前記ガラス板を一対の成形型の間に挟む工程と、
前記一対の成形型の一方から、前記ガラス板に0.1MPa以下の加圧力を型締め方向に付与して、前記ガラス板の外周縁より内側のガラス中央部の外周から前記ガラス板の外周縁までの間の環状のガラス外周部を前記一対の成形型の間に挟み込み、前記ガラス外周部の内周側で、前記型締め方向の先方に配置された第1成形型と、前記ガラス板との間に空間を画成する工程と、
前記ガラス板と前記第1成形型との間に画成される前記空間に負圧を供給して、前記ガラス板を前記第1成形型に吸着させる工程と、
を有するガラス板の成形方法。
このガラス板の成形方法によれば、ガラス板を第1成形型の成形面に沿わせて形状を転写する動作が、実質的に真空吸着によって行われる。そのため、ガラス板の板面に第2成形型のプレスによる圧痕や皺を生じさせることなく、高品質な成形が行える。また、真空吸着により所望の形状に加工するため、プレス成形のみでは困難となる複雑な形状であっても、高精度、且つ高品質な成形が可能となる。
(4) 前記ガラス板に曲面形状を転写する前記第1成形型の成形面のうち、曲率が最大となる部分の少なくとも一部に吸引孔が設けられ、前記吸引孔から前記空間に負圧を供給する、(3)に記載のガラス板の成形方法。
このガラス板の成形方法によれば、ガラス板と成形面との間の隙間は、負圧の供給に伴って、曲率が最大となる部分に向けて徐々に消失するようになり、ガラス板と成形面とが、双方の間に隙間が残ることなく密着される。
(5) 前記一対の成形型は、いずれか一方に突起部、いずれか他方に前記突起部に対応する凹状の成形面が設けられ、
前記突起部と前記成形面の対応する位置では、前記突起部の曲率が前記成形面の曲率より小さい(3)又は(4)に記載のガラス板の成形方法。
このガラス板の成形方法によれば、ガラス板が突起部の傾斜面と成形面の傾斜面に挟まれる際に、ガラス板との接触面積が小さくなり、ガラス板の変形や移動がしやすくなる。よって、ガラス板を成形面に忠実に沿わせることができ、形状精度を向上できる。
(6) 前記型締め方向の後方に配置された第2成形型と前記ガラス板との間に陽圧を供給して、前記ガラス板を前記型締め方向の前方に配置された第1成形型に押圧する工程と、を有する(1)~(5)のいずれか1つに記載のガラス板の成形方法。
このガラス板の成形方法によれば、ガラス板のガラス中央部が第1成形型に押し当てられるため、ガラス板をより確実に、しかも高速に所望の形状に成形できる。
(7)前記ガラス板の成形は、前記ガラス板を加熱して、前記ガラス板の粘度を5.94×10Pa・s~5.22×1011Pa・sにして実施する(1)~(6)のいずれか1つに記載のガラス板の成形方法。
このガラス板の成形方法によれば、ガラス板を成形性に優れる粘度にすることで、成形型へのなじみが良好となり、所望の形状にいち早く成形できる。
(8) 前記ガラス板の成形後のガラス板成形体は、設計形状と比較した面内形状偏差が0.3mm以内である(1)~(7)のいずれか1つに記載のガラス板の成形方法。
このガラス板の成形方法によれば、形状精度の高いガラス板成形体が得られる。
本出願は、2019年2月8日出願の日本特許出願(特願2019-21562)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
11 予熱ステージ
13 成形ステージ
15 冷却ステージ
17,17A ガラス板
17a 外周縁
23,23A 下型(第1成形型)
25,25A,25B,25C 上型(第2成形型)
27 チャンバ
35 上部ヒータ(昇温用加熱部)
36 ランプヒータ
41 熱拡散板
43 下部ヒータ(昇温用加熱部)
51,53,55 断熱枠体
63A,63B 型搬送部
65 熱拡散板
67 上部ヒータ(保温用加熱部)
73 熱拡散板
75 下部ヒータ(保温用加熱部)
81 熱拡散板
83 上部ヒータ(降温用加熱部)
91 熱拡散板
93 下部ヒータ(降温用加熱部)
100 成形装置
111,111A 成形面
113,113A 突起部
113a 傾斜面
115 吸引孔
121 ガラス中央部
121a 中央部外周
123 ガラス外周部
125 ガス噴出孔
131 下型(第1成形型)
135 上型(第2成形型)
141 第1成形ライン(成形ライン)
143 第2成形ライン(成形ライン)

Claims (6)

  1. ガラス板を加熱して所望の形状に成形するガラス板の成形方法であって、
    前記ガラス板を一対の成形型の間に挟む工程と、
    前記一対の成形型の一方から、前記ガラス板に0.1MPa以下の加圧力を型締め方向に付与して、前記ガラス板の外周縁より内側のガラス中央部の外周から前記ガラス板の外周縁までの間の環状のガラス外周部を前記一対の成形型の間に挟み込み、前記ガラス外周部の内周側で、前記型締め方向の先方に配置された第1成形型と、前記ガラス板との間に空間を画成する工程と、
    前記ガラス板と前記第1成形型との間に画成される前記空間に負圧を供給して、前記ガラス板を前記第1成形型に吸着させる工程と、
    を有するガラス板の成形方法。
  2. 前記ガラス板に曲面形状を転写する前記第1成形型の成形面のうち、曲率が最大となる部分の少なくとも一部に吸引孔が設けられ、前記吸引孔から前記空間に負圧を供給する、請求項に記載のガラス板の成形方法。
  3. 前記一対の成形型は、いずれか一方に突起部、いずれか他方に前記突起部に対応する凹状の成形面が設けられ、
    前記突起部と前記成形面の対応する位置では、前記突起部の曲率が前記成形面の曲率より小さい請求項1又は2に記載のガラス板の成形方法。
  4. 前記型締め方向の後方に配置された第2成形型と前記ガラス板との間に陽圧を供給して、前記ガラス板を前記型締め方向の前方に配置された前記第1成形型に押圧する工程と、
    を有する請求項1~のいずれか1項に記載のガラス板の成形方法。
  5. 前記ガラス板の成形は、前記ガラス板を加熱して、前記ガラス板の粘度を5.94×10Pa・s~5.22×1011Pa・sにして実施する請求項1~のいずれか1項に記載のガラス板の成形方法。
  6. 前記ガラス板の成形後のガラス板成形体は、設計形状と比較した面内形状偏差が0.3mm以内である請求項1~のいずれか1項に記載のガラス板の成形方法。
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