以下、本実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1の一例を示す概略構成図である。
インクジェット画像形成装置1は、給紙部10、画像形成部20、排紙部30及び制御部40(図2参照)等を備える。インクジェット画像形成装置1は、制御部40の制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Pを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Pに画像を形成し、画像が形成された記録媒体Pを排紙部30に搬送(排紙)する。
記録媒体Pとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛またはシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
給紙部10は、記録媒体Pを格納する給紙トレイ11と、給紙トレイ11から画像形成部20に記録媒体Pを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。
給紙トレイ11は、一または複数の記録媒体Pを載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレイ11は、給紙トレイ11に載置された記録媒体Pの量に応じて上下動するように設けられており、当該上下動方向について、最上の記録媒体Pが媒体供給部12により搬送される位置で保持される。
媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Pを載置した状態でローラーを回転させることで、記録媒体Pを給紙トレイ11から画像形成部20へ搬送する。
画像形成部20は、搬送ドラム21と、受け渡しユニット22と、媒体加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部26と、デリバリー部27と、を有する。
搬送ドラム21は、円柱面状の外周曲面(搬送面)上に記録媒体Pを保持した状態で、図1の紙面に垂直な方向(以下、「直交方向」と称する)に延びた回転軸の回りで回転することで、記録媒体Pを搬送面に沿った搬送方向に搬送する(図1中の矢印参照)。
搬送ドラム21は、その搬送面上で記録媒体Pを保持するための図示しない爪部および吸気部を備える。記録媒体Pは、爪部により端部が押さえられ、かつ吸気部により搬送面に吸い寄せられることで搬送面に保持される。
搬送ドラム21は、搬送ドラム21を回転させるための図示しない搬送ドラムモーターを有し、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。搬送ドラム21および搬送ドラムモーターは、記録媒体Pをヘッドユニット24のインクジェットヘッド242(図2および図3を参照)に対向させて搬送する役割を担う。
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Pを搬送ドラム21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送ドラム21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Pの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送ドラム21に引き渡す。
媒体加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送ドラム21により搬送される記録媒体Pが所定範囲内の温度となるように、搬送ドラム21の搬送面および記録媒体Pを加熱する。媒体加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、制御部40(図2参照)から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに電力を供給することにより、当該赤外線ヒーターを発熱させる。
ヘッドユニット24は、記録媒体Pが保持された搬送ドラム21の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム21の搬送面に対向するインク吐出面に設けられたノズル開口部(以下、「ノズル」という)から記録媒体Pに対してインクを吐出して画像を記録(形成)する。ヘッドユニット24は、インク吐出面(以下、「ノズル面24a」という)と搬送面との間が所定の距離だけ離隔されるように配置される。
本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が、記録媒体Pの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
各ヘッドユニット24は、インクジェットヘッド242(図2を参照)を備える。インクジェットヘッド242には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズルとを各々有する複数の記録素子が設けられている。この記録素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
インクジェットヘッド242に含まれるノズルの直交方向についての配置範囲は、搬送ドラム21により搬送される記録媒体Pのうち画像が形成される領域の直交方向の幅をカバーしている。ヘッドユニット24は、画像形成時には搬送ドラム21の回転軸に対して位置が固定されて用いられる。すなわち、インクジェット画像形成装置1は、シングルパス方式の装置である。
ヘッドユニット24は、図示しないキャリッジに搭載されている。キャリッジは、図示しないヘッド搬送機構により、所定方向に移動可能に構成されている。
ヘッド搬送機構は、制御部40の制御の下、ヘッドユニット24を以下のように移動させる。すなわち、ヘッド搬送機構は、画像形成の際には、インクジェットヘッド242のノズル面24aを搬送ドラム21の周面と対向する位置(印字領域)に移動させる。一方、各種のメンテナンスの際に、ヘッド搬送機構は、インクジェットヘッド242のノズル面24aを、図示しないクリーニング装置と対向する位置(メンテナンス領域)に移動させる。
定着部26は、搬送ドラム21の直交方向の幅に亘って配置された発光部を有する。定着部26は、制御部40の制御の下、搬送ドラム21に載置された記録媒体Pに対して発光部から紫外線等のエネルギー線を照射する。定着部26の発光部は、記録媒体P上に吐出されたインクに対して所定のエネルギーを付与することにより、インクを硬化させて記録媒体Pに定着させる。
デリバリー部27は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ272と、記録媒体Pを搬送ドラム21からベルトループ272に受け渡す円筒状の受け渡しドラム271と、を有する。デリバリー部27は、受け渡しドラム271により搬送ドラム21からベルトループ272上に受け渡された記録媒体Pをベルトループ272により搬送し、かかる記録媒体Pを排紙部30に送出する。
排紙部30は、デリバリー部27により画像形成部20から送り出された記録媒体Pが載置される板状の排紙トレイ31を有する。
図2は、インクジェット画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。インクジェット画像形成装置1は、媒体加熱部23と、ヘッドユニット24が有するインクジェットヘッド駆動部(図中の「ヘッド駆動部」)241およびインクジェットヘッド242と、定着部26と、制御部40と、搬送駆動部51と、入出力インターフェース52と、後述するインク供給システム15とを備える。
インクジェットヘッド駆動部241は、制御部40の制御に基づいてインクジェットヘッド242の記録素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、インクジェットヘッド242のノズルから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。なお、インクジェットヘッド242は、実際にはヘッドユニット24内に複数配列されている。
制御部40は、インクジェット画像形成装置1全体の制御を司る役割を担うものであり、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
記憶部44には、入出力インターフェース52を介して外部装置2から入力されたプリントジョブ(印字命令)および当該プリントジョブに係る画像データが記憶される。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム21の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム21を所定の速度およびタイミングで回転させる。また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、媒体供給部12、受け渡しユニット22およびデリバリー部27を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Pの搬送ドラム21への供給および搬送ドラム21からの排出を行わせる。
入出力インターフェース52は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース52は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか、または、これらの組み合わせで構成される。
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース52を介して画像形成命令(印刷ジョブ)および画像データ等を制御部40に供給する。
インク供給システム15は、インクジェット画像形成装置1で使用されるインクを予め貯蔵するとともに、印刷時にインクの温度を調整(制御)しながら当該インクを上述したインクジェットヘッド242に向けて供給するためのシステムである。
本実施の形態では、温度によって、ゲル状と液状とに相変化するインクが用いられる。例えば、常温でゲル状をなし、加温されることにより液状に変化し、かつ、画像形成時にエネルギー線が照射されることにより固形化するUVインクなどのエネルギー線照射型のインクを用いることができる。
インク供給システム15の主な構成としては、図2に示すように、インクの流路の上流側から順に、インクを貯蔵するインク貯蔵タンク16、インク加熱装置17、第1貯留タンク18、および第2貯留タンク19を備える。
本実施の形態において、インク貯蔵タンク16は、本発明の「メインタンク」に対応する。また、第1貯留タンク18は、本発明の「サブタンク」に対応する。
次に、図3(図3Aおよび図3B)を参照して、インク供給システム15のより具体的な構成について説明する。
インク供給システム15は、図3Aに示すように、上述した各構成部(16~19)間およびインクジェットヘッド242の出口および入口に配管t(t1~t6)が接続されることによって、インクを流通させるための流路ないし回路が形成されている。かかる配管の詳細な説明は後述する。
また、インク供給システム15の各部(16~19)または所定の配管tには、図示しないポンプや電磁弁などが備えられており、これらポンプや電磁弁等が制御部40の制御により作動することで、最上流のインク貯蔵タンク16からインクが下流側の各部を経由して、インクジェットヘッド242に供給される。
インク供給システム15における所定のタンク(図3Aに示す例では第1貯留タンク18および第2貯留タンク19)には、流入されるインクを加熱するためのヒーター等の加熱源Hが、備えられている。これら加熱源Hは、例えば、各々のタンク(18、19)の外周面に当接するように設けられている。
さらに、インク供給システム15の上述した各部(16~19)の内の所定のタンクまたは所定の配管tには、インク温度を検知するサーミスター等の温度センサー(図示せず)が備えられている。
制御部40は、かかる温度センサーにより検出されたインク温度に基づいて、加熱源Hの出力(発熱量)を調整する制御を行う。
なお、本実施の形態では、インク加熱装置17にも温度センサーSおよび加熱源Hが設けられており(図3A参照)、これらの詳細については後述する。
インク貯蔵タンク16は、インクの流路の最上流側でインクを収容ないし貯蔵するメインタンクとしての役割を担う。
なお、図3Aではインク貯蔵タンク16を相対的に小さく図示しているが、実際は、例えば10L以上のインクを貯蔵することができる大容量のものである。
概して、本実施の形態のインク供給システム15は、図3Bに示すように、インク貯蔵タンク16の下流に、詳細を後述するインク加熱装置17が連通され、かかるインク加熱装置17の出口に、配管t3を介して第1貯留タンク18が連通されている。
サブタンクとしての第1貯留タンク18は、画像形成時にインク貯蔵タンク16(メインタンク)から供給されるインクを貯留して、貯留したインクを、下流側に設けられた複数の第2貯留タンク19に供給する役割を担う。
図3Aに示す例では、第1貯留タンク18は、出口(インク流出口)が複数(2つ)設けられており、各々のインク流出口に接続された配管t4,t4を通じて、各々の第2貯留タンク19,19にインクを供給する。
また、第1貯留タンク18は、入口(インク流入口)も複数(この例では3つ)設けられており、インク流入口の一つは上述した配管t3を介してインク加熱装置17に連通されている。また、第1貯留タンク18における他の二つのインク流入口は、各々、配管t6を介してインクジェットヘッド242のインク排出口と連通している。
第2貯留タンク19は、入口(インク流入口)が配管t4を介して第1貯留タンク18と連通し、出口(インク流出口)が配管t5を介して対応するインクジェットヘッド242のインク流入口と連通している。
第2貯留タンク19は、画像形成時に第1貯留タンク18(サブタンク)から供給されるインクを一時的に貯留し、配管t5を通じてインクジェットヘッド242にインクを供給する。
なお、簡明のため、図3Aではインクジェットヘッド242を2個だけ示しているが、実際には、より多くのインクジェットヘッド242を追加することができる。この場合、追加されたインクジェットヘッド242の数だけ第2貯留タンク19および配管t4~t6を追加すればよい。
インクジェットヘッド242は、入口(インク流入口)が配管t5を介して第2貯留タンク19に連通され、出口(インク流出口)が配管t6を介して第1貯留タンク18に連通されている。
この例では、配管t5を通じて第2貯留タンク19からインクジェットヘッド242に供給されたインクのうちの残インク、すなわちインクジェットヘッド242により吐出されなかったインクは、図示しないポンプ等の動作により、配管t6を通じて第1貯留タンク18内に戻される(回収される)。回収されたインクは、第1貯留タンク18から再び配管t4等を通じてインクジェットヘッド242に供給されることで、再利用される。
ところで、従来のインク供給システム、例えば特許文献1に記載の技術では、インク貯蔵タンク16に貯蔵(収容)された常温のインクを第1貯留タンク18に供給し、第1貯留タンク18に設けられたヒーター等の加熱源H(適宜、図3を参照)でインクを加熱する構成となっていた。
ここで、第1貯留タンク18の加熱源Hは、上述のように当該タンク(容器)の外周面に当接するように設けられている。
しかしながら、かかる従来構成においては、第1貯留タンク18内のインクに温度ムラ(インク温度のバラツキ)が発生する問題があり、具体的には、第1貯留タンク18内のインクの位置(言い換えると加熱源Hとの距離)に応じた温度分布が発生していた。
このため、従来技術によれば、第1貯留タンク18の出口から各々の第2貯留タンク19に供給されるインクの温度にバラツキ(温度差)が発生し、ひいては各々のインクジェットヘッド242から吐出されるインクの温度にバラツキが発生する場合があった。
ここで、各々のインクジェットヘッド242から吐出されるインクの温度にバラツキが発生した場合、画像形成時やインク乾燥(硬化)時における画質の低下を招き、画像不良を発生させるおそれがある。
かかる問題に対処するため、従来は、第2貯留タンク19の加熱源Hによる温度制御、あるいは第1貯留タンク18の加熱源Hの配置を工夫する等により対応しようとしたが、十分な効果が得られなかった。
なお、インクジェットヘッド242内にヒーターなどの加熱源や温度センサー等を備える機種では、インクジェットヘッド242内でもインクの温度制御を実行することができる。しかしながら、画像形成の直前段階でインクの温度制御を行う場合、インクが加熱過多となりやすい問題がある。
かかる問題点につき本発明者らが鋭意研究を行った結果、各々のインクジェットヘッド242から吐出されるインクの温度のバラツキを抑制するためには、インク流路のより上流側において予め温度調整を行っておき、第1貯留タンク18の加熱源Hによる加熱(負担する加熱量)を出来る限り少なくすることが重要である、との知見を得るに至った。
すなわち、本実施の形態におけるインク供給システム15では、インク貯蔵タンク16から供給されるインクが第1貯留タンク18に流入する前に、当該インクを加熱する「加熱部」を備える構成とする。
ここで、加熱部の構成の一案として、インク経路の最上流側に位置するメインタンクとしてのインク貯蔵タンク16にヒーター等の加熱源を配置して、インク貯蔵タンク16内に貯蔵されるインク全体を加熱することも考えられる。
このような加熱部の構成は、例えば1回の印刷ジョブでインク貯蔵タンク16内のインクを全て使用するような大規模な印刷を行うケース等では有用である、とも考えられる。
一方で、インク貯蔵タンク16内に貯蔵されるインクの容量や周囲の温度等によっては、インク貯蔵タンク16内のインク全体を目標温度まで昇温するのに多くの時間および電力を要するというデメリットがある。
また、1回の印刷ジョブでインク貯蔵タンク16内に収容されるインクの一部だけ使用し、次の印刷ジョブまで時間が経過している場合、インク貯蔵タンク16内のインクの温度が低下するため、その分だけ余計(無駄)な電力を消費することになる。
さらには、インク貯蔵タンク16に設置するヒーター等の配置あるいはインク貯蔵タンク16内のインクの残量等によっては、従来と同様にインクの位置(ヒーターとの距離)に応じた温度分布が発生する。
これは、言い換えると、本実施の形態における「加熱部」は、第1貯留タンク18(サブタンク)内のインクを加熱する加熱源Hよりもインクの加熱ムラを少なくできることが必要である、ということである。
上記のような問題に鑑みると、本実施の形態における「加熱部」は、メインタンクであるインク貯蔵タンク16に設けるのではなく、インク貯蔵タンク16と第1貯留タンク18(サブタンク)との間に設けられる流路(インク経路)上に配置されることが望ましいと考えられる。
すなわち、一般に、配管等の流路(インク経路)の断面形状は、インク貯蔵タンク16および第1貯留タンク18の容器の断面形状と比較して、格段に小さい。
言い換えると、かかる流路(インク経路)上に加熱源(ヒーター等)を配置する場合、加熱源と当該流路内のインクとの最大距離(距離差)を大幅に減らすことができる。このため、インク貯蔵タンク16から供給(流出)されるインクをより集中的に加熱し、より均一化された温度状態(すなわち加熱ムラが少ない状態)のインクをインク貯蔵タンク16に供給することができる。
かくして、本実施の形態におけるインク供給システム15では、図3Aおよび図3Bに示すように、インク貯蔵タンク16から第1貯留タンク18までのインク経路に流通されるインクを加熱し昇温するインク加熱装置17を配置することとした。
かかる構成のインク供給システム15によれば、大容量のインク貯蔵タンク16の下流側、かつインクの流路が複数に分かれる第1貯留タンク18の上流側におけるインク経路でインクの昇温が行われ、昇温されたインクが、流路(配管t3)を通じて第1貯留タンク18に供給される。
このため、本実施の形態によれば、第1貯留タンク18の加熱源Hの出力(必要となる発熱量)を、言い換えると第1貯留タンク18の加熱源Hに供給すべき電力を、必要最小減に減らすことができ、あるいは第1貯留タンク18の加熱源Hを使わないようにすることもできる。
したがって、本実施の形態によれば、第1貯留タンク18の出口から分岐的に各々の第2貯留タンク19に供給されるインクの温度にムラが発生しなくなり、ひいてはインクジェットヘッド242に供給されるインクさらにはインクジェットヘッド242から吐出されるインクの温度ムラを抑制ないし最小化することができる。
ここで、インク加熱装置17によるインクの昇温または加熱の程度、言い換えると、流路(配管t3)を通じて第1貯留タンク18に供給されるインクの温度は、特に限定されるものではない。
一方、インク加熱装置17により加熱されて第1貯留タンク18に供給されるインクの温度は、第1貯留タンク18の出口から配管t4を通じて各々の第2貯留タンク19に供給されるインクの温度にムラが発生しない効果(少なくとも抑制される効果)が得られるような温度とする必要がある。
加えて、使用されるインクの種類によっては、臨界温度を超えるような過度な加熱(昇温)が行われた場合に、熱重合などの不可逆な反応が発生してインク本来の性能が発揮されなくなる場合がある。このため、インク加熱装置17を含むインク供給システム15内で、上記のような臨界温度までインクを加熱(昇温)させないように構成する必要がある。
また、上述したインクの温度ムラを最小化するためには、印刷ジョブの実行時に第1貯留タンク18の加熱源Hの出力(発熱量)を可能な限り抑えること、理想的には第1貯留タンク18の加熱源Hを稼働させない(加熱しなくて済むようにする)ことが望ましい。これは、インクの温度ムラの発生する主たる原因(いわゆる元凶)が第1貯留タンク18の加熱源Hにあると考えられるからである。
上述した種々の事項に鑑みると、インク加熱装置17により加熱され第1貯留タンク18に供給されるインクの温度は、従来、第1貯留タンク18に設定されていた温度、すなわち第1貯留タンク18から複数の配管t4に流出されるインクに対する設定温度とするとよい。
なお、第1貯留タンク18の加熱源Hを稼働させない場合、第1貯留タンク18内のインクの温度低下分を考慮して、複数の配管t4に流出するインクの設定温度に、上記の温度低下分の値を加えた温度としてもよい。
上記のような構成とした場合、サブタンクである第1貯留タンク18は、内部のインクを加熱(昇温)する役割が軽減され或いは失われ、代わりに、内部のインクを保温する役割に重点が置かれるようになる。このため、必要に応じて第1貯留タンク18の容器の周囲に断熱性の部材を取り付けるとよい。
本実施の形態では、メインタンクであるインク貯蔵タンク16は従来通りの構成とし、上述のように、インク貯蔵タンク16の下流かつ第1貯留タンク18の上流でインクの昇温(加熱)を行う。
このため、本実施の形態のインク供給システム15によれば、実際にインクジェットヘッド242に供給されるインクのみに対して温度制御をすることができ、後の印刷ジョブで使用されるインク貯蔵タンク16内のインク(いわば未流出インク)に対しては加熱が行われない。
したがって、本実施の形態によれば、無駄な電力の消費を防止することができ、かつ、インク貯蔵タンク16内の未流出インクを加熱することにより発生し得る種々のデメリットを防止することができる。
以下、図4~図7を参照して、インク加熱装置17の構成を詳細に説明する。
ここで、図4は、図3Aおよび図3Bに示す3つのインク加熱部17A~17Cのうちの一つ(インク加熱部17A)の外観斜視図である。また、図5はインク加熱部17Aの縦断面図であり、図6は、インク加熱部17Aの横断面を模式的に示す図である。
本実施の形態において、個々のインク加熱部(例えばインク加熱部17A)は、本発明の「加熱部」に対応する。
なお、インク加熱部17Aは、実際の使用時には、図示しない蓋体(カバー部材)が装着されることになるが、説明の便宜のため、図4および図5ではかかるカバー部材を取り外した状態を示している。
また、他のインク加熱部17B,17Cは、インク加熱部17Aと同一の構成であるため、図示および説明を省略する。
インク加熱部17Aは、平面矩形状の筐体170における中央上部から下方にかけて凹部173が設けられることにより、筐体170の中央が開口状に窪んでいる。筐体170は、例えばアルミニウムなどの金属からなる。
また、インク加熱部17Aにおける筐体170の一端側(図5中の左側)の側部には、インクを筐体170(凹部173)内に導入するための供給口171が形成され、他端側(図5中の右側)の側部には、筐体170(凹部173)内のインクを外部に排出するための排出口172が形成されている。
さらに、筐体170における凹部173内には、複数(図4に示す例では7個)のリブ174が互いに所定間隔(例えば2.5mmの隙間)を空けて配列(立設)されている。以下、凹部173内の構成についてより詳しく説明する。
本実施の形態において、筐体170の供給口171と連通する凹部173の底側には、供給口171から流入されたインクを一旦貯留するための空間ないし部屋である貯留室173pが設けられている(図5を参照)。
また、凹部173におけるインクの流通方向に沿った供給口171の下流側には、貯留室173pを区画する壁面が略垂直方向に延び、かかる壁面に連続する傾斜面173aが設けられている。
さらに、筐体170の凹部173内には、傾斜面173aに連続し、排出口172の形成された内壁まで達するインク搬送面173bが、筐体170の底面と略平行方向に形成されている。
上述した凹部173内でインクが移動する経路(言い換えるとインクが接触する部分)、特に、インク搬送面173bは、本発明の「接触部材」に対応する。
そして、本実施の形態では、図4および図5に示すように、インク接触面としてのインク搬送面173bに、インクを接触させるための更なる「接触部材」として、複数のリブ174が立設するように配列されている。ここで、インク搬送面173bおよびリブ174は、供給口171から供給されたインクが、移動しながら昇温(熱交換)が行われる熱交換用流路としての役割を担う。
さらに、インク加熱部17Aの筐体170は、図5および図6に示すように、上述したインク搬送面173bの下方の位置に、長穴175および溝部176が形成されている。
上記のうち、長穴175は、ヒーターなどの加熱源H(図3Aを参照)を挿入および抜き取り可能なサイズ(三次元形状)を有する。言い換えると、加熱源Hは、母材である筐体170の長穴175に対して挿脱可能な幅および高さを有する。
ここで、長穴175は、筐体170の底面に対して平行であり、かつインク搬送面173b(接触部材)に対しても平行である。本実施の形態において、長穴175は、上述したインク搬送面173b(接触部材)に沿って加熱源Hを設置する(装着ないし搭載する)ための「第1の設置部」としての役割を担う。
一方、溝部176は、インク搬送面173b(接触部材)に沿って温度センサーS(図3Aを参照)を設置する(装着ないし搭載する)ための「第2の設置部」としての役割を担う。
図6に示すように、長穴175および溝部176は、断面が円形であり、円筒状の加熱源Hおよび温度センサーSを挿脱(抜き差し)できるようになっている。
なお、長穴175および溝部176或いは抜き差しされる加熱源Hおよび温度センサーSの断面形状は、図6に示す例に限定されるものではなく、例えば、楕円形状、矩形状、多角形状など、種々の形状とされ得る。
また、本実施の形態において、筐体170の長穴175に設置された加熱源Hは、インクを貯留する第1貯留タンク18(サブタンク)に供給するためのインクを、直接ではなく間接的に加熱する役割を担う。
すなわち、長穴175に設置された加熱源Hは、インクに直接接触することなく、直接的には上述したインク搬送面173b(接触部材)を加熱することによって、筐体170内を移動するインクを加熱する。かかる構成とすることにより、加熱源Hによって加熱されるインクの温度が急上昇することを防止ないし抑制することができる。
また、上述のように、使用するインクの種類によっては、臨界温度を超えた場合に熱重合(不可逆反応)を引き起こし、当該インクの性能が発揮できなくなる。これに関し、インクを加熱源Hで直接加熱する構成とした場合、加熱源Hの表面温度が直ちにインクに伝達されることによってインクの温度が急激に上昇し、上述した臨界温度を超えやすくなるとの問題がある。
一方、本実施の形態では、上述のように筐体170における長穴175内のインクが流通(接触)する部分を加熱源Hによって加熱し、インクを間接的に加熱する構成を採用しているため、加熱源Hの表面温度が直ちにインクに伝達されることはない。したがって、本実施の形態によれば、インク温度が急上昇することに起因する上記の問題を有効に防止することができる。
上述の例では、加熱源Hは直接的には筐体170を加熱する構成であり、より具体的には、内部にインクを貯留できる容器状部材における長穴175に設置した加熱源Hによって容器状部材を加熱し、かかる部材に接触しながら移動するインクを間接的に昇温させる構成とした。
流通するインクを間接的に昇温させる他の構成例として、インクが流通する管(この例では配管t1、t3等)の周囲(外面)に加熱源Hを取り付けて、当該管の内部で流通するインクを加熱する(昇温させる)構成としてもよい。この場合、加熱源Hによって加熱される管、特に当該管の内面が、本発明の「接触部材」に対応する。また、この場合、加熱される管の内面に、さらなる接触部材としてのリブを、流路方向(管の長手方向)に沿って設けてもよい。
一方、「第2の設置部」としての溝部176は、上述したインク搬送面173b(接触部材)と長穴175(第1の設置部)との間の位置に形成され、温度センサーS(図3A等を参照)を挿入および抜き取り可能なサイズ(三次元形状)を有する。
かかる溝部176は、筐体170のインク搬送面173b(接触部材)および長穴175(第1の設置部)に対して平行に伸びている。望ましくは、溝部176は、長穴175すなわち加熱源Hが配置される位置から5mm程度離れた位置とする。
なお、溝部176に抜き差しされる温度センサーSとしては、例えばサーミスターを使用することができるが、温度の検知に用いることができる他の素子ないし装置であってもよい。
また、図6に示す例では、溝部176(および温度センサーS)の断面形状が長穴175(および加熱源H)の断面形状よりも小さくなっているが、かかる断面形状の大小関係は任意であり、この逆の構成あるいは両者が等しい構成であってもよい。
なお、従来は、インクが通過する母材を加熱する構成としては、母材の側面または周囲にヒーター等の加熱源Hを取り付けることが一般的であり、また、温度センサーSについても母材の側面に取り付けることが一般的であった。
これに対して、本実施の形態では、母材としての筐体170の内部に加熱源Hを挿脱(設置および脱着)可能な構成とすることで、母材自体を効率良く加熱することができる。
また、本実施の形態では、母材としての筐体170の内部に温度センサーSを設置する構成を採用することにより、図5および図6に示すように、加熱源Hのより近くで温度を検知することができ、インクの温度の管理および制御をよりリニア(直接的)に行うことができる。
上述のように、本実施の形態のインク加熱部17A~17Cは、加熱源Hを筐体170の内部に配置する構成とすることで、インクが臨界温度を超えることを抑止しつつ、筐体170全体を速やかに昇温することができる。
一方で、このような構成を採用した場合であっても、加熱源Hの出力やインクの流入状態等によっては、筐体170内を移動するインクの一部が急激に加熱される(過熱状態となる)ケースが想定される。
仮に、加熱源Hの表面温度が過度に上昇した場合、筐体170内部におけるインクとの接触部分の温度も急激に上昇し、この結果、当該接触部分の過度な温度上昇によってインクの温度が過度に上昇する等の問題が発生するおそれがある。
上記のような問題をも考慮して、本実施の形態では、上述したように、加熱源Hの近傍に温度センサーSを設置することにより、筐体170内部に流入されるインクが過熱状態となることを、事前に防止することができる。
さらに、本実施の形態では、図3Aおよび図3Bに示すように、上述した加熱源Hおよび温度センサーSを組み込んだインク昇温装置(加熱部)を複数(図示の例ではインク加熱部17A,17B,および17Cの3つ)使用し、かつ各々のインク加熱部17A~17Cを流通方向に沿って直列に接続するように流路を構成している。
具体的には、図4で上述したインク加熱部17Aの供給口171は、配管t1によりインク貯蔵タンク16と連通している。一方、インク加熱部17Aの排出口172は、配管t2-1によりインク加熱部17Bの供給口171と連通している。
また、インク加熱部17Bの排出口172は、配管t2-2によりインク加熱部17Cの供給口171と連通している。さらに、インク加熱部17Cの排出口172は、配管t3により第1貯留タンク18の入口と連通している。
上記のような直列接続の構成を採用した本実施の形態によれば、インクが第1貯留タンク18に供給されるまでの昇温時間を出来るだけ長く確保し、インクの昇温効率を高めることができる。
より具体的には、仮にインク貯蔵タンク16と第1貯留タンク18との間にインク加熱部17Aだけを設ける構成とした場合、インク加熱部17A内に流通されるインクを常温から目標温度まで加熱するのに必要となる熱量、言い換えるとインク加熱部17A内の加熱源Hで消費される電力が大きくなる。
ここで、必要となる熱量(電力)は、インクを目標温度まで加熱するための熱量(電力)のみならず、母材(インク加熱部17Aの筐体170)を加熱するための熱量(電力)も必要となる。
この結果、インク加熱部17Aの筐体170の熱容量が大きくなってしまい、内部の加熱源Hでインクを加熱(昇温)する際、当該インクに温度分布が発生しやすくなり、第1貯留タンク18に供給されるインクに温度ムラが発生するおそれがある。
総じて、インク加熱装置17を構成するインク加熱部の数を少なくするほど、インク温度の柔軟な調整等を行うことが難しくなる。
上記のような問題点に鑑みて、本実施の形態では、インク加熱装置17におけるインク加熱部の構成数を複数(この例では17A~17Cの3つ)とし、且つ各々を直列に接続して流路を長くしている。かかる構成によれば、インクの昇温効率を向上させるとともに、インク加熱部の一個当たりの熱容量を小さくし、インクの温度分布(加熱ムラ)を低減することができる。
また、上述のように、本実施の形態では、各々のインク加熱部17A~17C内のインクの流路には、接触部材としての複数のリブ174を所定間隔で配列(立設)した構成としている。
このような構成とすることにより、インク加熱部17A~17Cの母材としての筐体170の大型化を抑制しつつ、インクとインク搬送面173b(接触部材)との間での熱交換性を確保し、インクの昇温性能を一層高めることができる。
より詳しくは、従来、インクを加熱する構成としては、図示しない母材内に一本の長い流路を波状に(すなわち一対の内側面に対して何度も往復的に進行するように)設け、当該波状の流路内にインクを流しながら加熱する構成を採用していた。
かかる波状の流路を用いた従来構成では、インクと流路との接触面積を増やそうとすると、母材自体が大きくなりやすいという課題があった。
これに対し、本実施の形態では、インクが接触し流通する経路に複数のリブ174を配列し、供給口171から流入されるインクが各々のリブ174の面に沿って分岐されるとともに、並列的に移動できるようにした。
かかる構成によれば、母材としての筐体170を小型に保ちながら、加熱部の母材とインクとの接触面積を大幅に増やして、インクと母材間での熱交換性ひいてはインクの加熱(昇温)性能を大幅に向上させることができる。
なお、各々のリブ174間の隙間(離間する距離)の具体的な数値は、特に限定されないが、狭すぎる或いは広すぎることによる以下のようなデメリットが発生しないような数値に設定されるべきである。
すなわち、リブ174同士の隙間が狭すぎる場合には、インク搬送面173bにおけるインクの流れによどみや滞留が生じやすくなる。そして、インク搬送面173bでインクに滞留が生じると、インク加熱部17A~17Cの内部にインクがとどまり続ける原因となり、ひいてはインクが過熱状態となり画像品質が低下する等の不具合が発生するおそれがある。
一方、リブ174同士の隙間を広くしすぎると、インク加熱部17A~17C内に配列できるリブ174の数が減るので、その分だけインクとの接触面積(言い換えると接触部材の領域)が減り、インクの加熱効率が下がる。
総じて、使用するインクの粘度等も考慮した上で、筐体170の凹部173の空間内に、インクの滞留等が発生しない程度の隙間(間隔)で複数のリブ174を配置することで、インクの滞留の発生を未然に防止し、かつ効率良くインクを昇温することができる。
一具体例では、各々のリブ174同士の隙間(数値)は、インク加熱部17A,17B,17Cで同一に設定する。或いは、各々のリブ174同士の隙間(数値)は、相対的に粘度の高いインクが流入される上流側のインク加熱部17Aでは広めに設定し、粘度が低くなる下流側のインク加熱部17Bおよび17Cでは幾分狭く設定してもよい。
なお、上記構成とした場合でも、例えばインク加熱部17A~17Cよりも下流側の配管の詰まりやインク貯蔵タンク16からの異物の混入などの何らかの外的要因により、筐体170の凹部173の空間内にインクの滞留等が発生する事態が発生し得る。
上記の事態に鑑みると、インク供給システム15内のいずれかの温度センサーによって検出された温度が予め定められた閾値以上になった場合に、インク昇温装置(インク加熱部17A~17C)内の加熱源Hによる加熱(言い換えると加熱源Hへの電力供給)を停止させる機能を設けることが望ましい。
具体的には、本実施の形態では、制御部40は、第1貯留タンク18に備えられている温度センサー(図示せず)によって検出された温度が予め定められた閾値以上になった場合に、インク加熱装置17の全ての加熱源Hの稼働を停止する処理を行う。
すなわち、使用するインクの種類によっては、当該インクがある温度以上になると熱重合を引き起こし、想定される性能を引き出せなくなり、さらには流路に付着して種々の不具合を引き起こす原因となる。かかる不具合を防止するため、制御部40は、インク供給システム15の各所に配置した温度センサーによる検出温度(測定値)を監視して、検出温度が予め定められた閾値以上になった場合に、インク加熱装置17の全ての加熱源Hの稼働を停止する処理を行う。
加えて、制御部40は、インク加熱部17A~17Cに搭載されている温度センサーSによって検出された温度が予め定められた閾値以上になった場合、対応する加熱源Hの出力(熱量)を減少または停止させる(すなわち加熱量を下げる)制御を行う。かかる制御を行うことによって、上記の問題に対応しつつ、第1貯留タンク18に供給されるインクの温度の均一性を一層高めることができる。
このうち、インク加熱装置17に搭載される温度センサーSは、直接的には、設置されるインク加熱部(17A~17C)の母材すなわち筐体170の温度を測定する。ここで、筐体170内で加熱されるインクは、通常、加熱源Hによって加熱(昇温)される筐体170の温度よりも高い温度にはならない。
また、本実施の形態では、筐体170内の加熱源Hとインク搬送面173b(接触部材)との間に温度センサーSが配置される。したがって、制御部40は、かかる温度センサーSによる検出温度(測定値)を監視することにより、上述のような不具合の発生を防止することができる。
以下、上述した実施の形態のより具体的な構成や変形例等について説明する。
図示しないが、インク加熱装置17、特に最下流のインク加熱部17Cと第1貯留タンク18との間の空間や接続される配管t3には、熱を遮蔽する断熱材などを配置して断熱構造とするとよい。
すなわち、インク加熱装置17と第1貯留タンク18とが断熱されていない場合、インク加熱装置17および第1貯留タンク18との距離等によっては、インク加熱装置17が放出する熱と第1貯留タンク18が放出する熱が互いに伝熱しあう。この場合、双方の熱の影響により、制御部40による温度制御の際に誤差が発生し易くなる。
上記のような誤差の発生を出来るだけ防止するために、上記のような断熱構造とし、インク加熱装置17および第1貯留タンク18間での熱の受け渡しを抑制する。かかる構成とすることにより、各々の領域すなわちインク加熱装置17および第1貯留タンク18でのインクのより精確な温度管理および温度制御が実現される。
本実施の形態では、上述のように、インクの加熱時間を確保すべく、3つのインク加熱部17A~17Cを直列的(シリアル)に接続する構成とした。
この場合、各々のインク加熱部17A~17Cの設定温度は、上流側(インク加熱部17A)から下流側(インク加熱部17B~17C)にかけて順次高くなるように設定するとよい。かかる設定値の概要を図7のグラフに示す。
図7に示すグラフは、インクが流れる距離とインク温度との関係を表すものであり、縦軸にインク温度を、横軸にインクが流れる距離(インク貯蔵タンク16の出口からのインク経路の長さ)を示す。ここで、横軸の距離D0に対応するインク温度T0は、インク貯蔵タンク16の出口で測定されるインクの温度、言い換えると常温(環境温度)下でのインク温度である。
また、距離D1に対応するインク温度T1は、インク加熱部17A内で測定されるべきインクの温度(目標値)である。同様に、距離D2、D3に対応するインク温度T2、T3は、各々、インク加熱部17B、17C内の温度センサーSによって測定されるべきインクの温度(目標値)である。
このうち、インク温度T3は、第1貯留タンク18に供給するための最終的な目標温度(昇温上限値)であり、かかる温度T3は、上述した設定温度T1~T3のうち最も高い温度に設定されていることが分かる。
このように、本実施の形態では、インクの流路における上流側(インク貯蔵タンク16およびインク加熱部17A)から下流側(インク加熱部17B~17C)にかけて、各々の温度センサーSによる測定温度が順次高くなるように、インク加熱装置17内の各々の加熱源Hに供給する電力を制御部40によって制御する構成とする。
かくして、本実施の形態では、上述のようにインクの加熱時間を確保しつつ段階的にインクの温度を上昇させる構成とすることにより、以下のようなデメリットを解消ないし抑制することができる。
例えば、上流側のインク加熱部17Aで昇温上限値(インク温度T3)に設定し、その下流のインク加熱部17Bおよび17Cでも昇温上限値(インク温度T3)に設定して、各々の加熱源Hに供給する電力を制御部40によって制御する場合を考えてみる。
このような設定とした場合、常温(インク温度T0)のインクが貯留されているインク貯蔵タンク16から、流路(配管t1)を通じてインクをインク加熱部17Aに流通させて加熱する際の温度上昇値(温度勾配ΔT)が大きくなる(すなわち肥大化する)。
この場合、インクがインク加熱部17A内を流通している間に当該インクの温度をインク加熱部17A内の加熱源HでT0からT3まで一気に上昇させる必要があるが、温度T3丁度となるように制御することが容易でなく、誤差が大きくなりやすい問題がある。
そして、仮にインク加熱部17A内でインク温度がT3を超えた場合、かかる超過分の温度を下流側で下げることが困難である。この場合、冷却部等の付加的な構成の追加が必要となり、冷却部等を設けない場合、上述した重合反応等による不具合が生じるおそれもある。
総じて、上流側のインク加熱部17Aで昇温上限値(インク温度T3)に設定した場合、温度勾配ΔTの肥大化に基づく誤差の発生時、特にインク加熱部17A内でインク温度がT3を超えた場合に、第1貯留タンク18に供給されるインクの温度にばらつきが発生する問題がある。
これに対し、図7に示すように、常温(T0)からのインクの昇温を段階的に行う本実施の形態によれば、仮にインク加熱部17Aによる昇温時にインクの温度が目標値(インク温度T1)を超えるような誤差が発生した場合でも、かかる誤差を下流側のインク加熱部17Bおよびインク加熱部17Cによる昇温の制御で解消(吸収)することができる。
総じて、本実施の形態によれば、各々の加熱源Hでの無駄な電力消費を抑えつつ、インク加熱部17Cの供給口171から第1貯留タンク18に供給されるインクの温度(T3)の誤差をできる限り小さくすることができる。
したがって、本実施の形態のインク供給システム15によれば、第1貯留タンク18のインク流出口から複数の配管t4を通じて各々の第2貯留タンク19に供給されるインクにおけるインク温度のばらつき(温度ムラ)も防止ないし抑制することができる。
なお、例えば夏期と冬期での環境温度の変化(気温差)等に鑑みると、制御部40は、上記の設定温度の設定値(T1~T3、特にインク温度T1)を、環境温度(すなわちインク温度T0)に応じて変更する処理を行うようにするとよい。
一具体例では、制御部40は、印刷ジョブの実行の際に、環境温度(℃)とインク温度T1とを対応付けた図示しない設定テーブルを参照して、環境温度が低い場合、環境温度が高い場合と比べてインク加熱部17Aによる目標値(T1)を下げるように制御する。
このような制御を行うことにより、インク加熱部17Aによる昇温時における上述した温度勾配(ΔT)を抑制することができ、インク加熱装置17(インク加熱部17C)から第1貯留タンク18に供給されるインクの温度(T3)の誤差を最小化することができる。
また、各々のインク加熱部17A~17Cに設けられている加熱源Hの設定温度を上流側から段階的に高くなるように設定することで、各々のインク加熱部17A~17Cでの温度上昇値(温度勾配ΔT)を小さい値に抑え、ひいては第1貯留タンク18に供給されるインクの温度のばらつきを低減することができる。
図8は、本実施の形態における更なる構成例を、図3Bと対比して示す図である。
図8に示す構成例では、複数(ここでは3つ)のインク加熱部17A、17B、および17Cにおける隣り合う空間に、断熱層180を充填する(介在させる)ように配置している。
ここで、図3Bに示すように、隣り合うインク加熱部17A、17B、および17C間で断熱のための構成を設けない場合、設定温度が異なる2つもしくは3つの加熱源Hが各々、隣接している加熱源Hから放出される熱の影響を受け、設定温度以上に上昇する等の問題が発生し得る。
かかる問題に対処すべく、本実施の形態では、隣り合うインク加熱部17A、17B、および17C間に断熱層180を設けることによって、設定温度からの乖離や実際の温度(測定温度)のばらつきを一層抑制することができる。
さらに、本実施の形態では、制御部40は、インク加熱部17A、17B、および17C)に流入するインクの流量に応じて、各々の加熱源Hの出力を調整(制御)する。
すなわち、一般に、産業用のインクジェット画像形成装置では、インクジェットヘッド242から吐出されるインクの吐出量によって、最上流のインク貯蔵タンク16から流れ出るインクの流量ひいてはインク加熱部17Aに流入されるインクの流速が変動する。
また、使用するインクの種類によっては、環境温度によって常温でのインクの粘度が変わり、インク貯蔵タンク16からインク加熱部17Aに流入されるインクの流速が変動し得る。
例えば、環境温度が高く且つベタ画像の印刷時など、インク貯蔵タンク16から流れ出るインクの流量が過大化する場合、インク加熱部17A~17Cによって加熱(すなわち熱交換)される時間が短くなり、想定した総加熱量(理論値)に達しなくなる問題が発生し得る。
上記問題に対応するため、制御部40は、インク加熱部17A、17B、および17Cに流入するインクの流量が多い場合には各々の加熱源Hの出力を上げ(発熱量を増やす)、逆すなわち流量が少ない場合には各々の加熱源Hの出力を下げる(発熱量を減らす)ように制御を行う。
このような制御を行うことにより、インク貯蔵タンク16からインク加熱装置17に供給されるインクの流量(流速)が変動した場合でも、インク加熱部17A~17Cにおける各々の加熱源Hによってインクを加熱する総加熱量と理論値との誤差を最小化して、上述した問題を有効に防止ないし抑制することができる。
次に、図9のフローチャートを参照して、制御部40が行う加熱源Hの出力調整に関する制御内容およびインク貯蔵タンク16から供給されるインクの移動動作等について説明する。
印刷ジョブを受信した後のステップS1において、制御部40は、対応する電磁弁およびポンプを作動させて、メインタンクであるインク貯蔵タンク16からインクを流出させるとともに、インク供給システム15内における複数の加熱源Hを稼働させる。
この後、インク貯蔵タンク16から流出されたインク(この例ではゲル状のインク)は、配管t1を経由して供給口171(流入部)からインク加熱部17Aの内部(凹部173の貯留室173p)に流入される。
ここで、貯留室173p内のインクは、加熱源Hによる熱が伝達されない間はゲル状のままであるが、当該熱が伝達されることにより粘度が低下して液状となる。いずれにせよ、ポンプ等の作動によりインク貯蔵タンク16からインクが継続的に流出されることにより、貯留室173p内のインクの液面が上昇してゆく(適宜、図5を参照)。
続いて、貯留室173p内のインクの液面が供給口171の上端位置よりも高くなると、インクは、傾斜面173aを登るように移動し、リブ174が立設しているインク搬送面173b(以下、単に「搬送面173b」という)に押し出される。
そして、搬送面173bに押し出されたインクは、複数のリブ174の端部(適宜、図4および図5中の左側を参照)で分岐させられ、加熱されている各々のリブ174の面と接触し、熱交換により加熱(昇温)されながら、排出口172に向けて搬送面173bを移動(流動)してゆく。
そして、排出口172が形成された内側面にインクが達し、インクの液面が排出口172の下端位置よりも高くなると、インクは、排出口172を通じて下流側(図4中の白抜き矢印を参照)に流出し、配管t2-1を経由してインク加熱部17Bの凹部173内に流入される。
さらに、インクは、上述と同様に、排出口172および配管t2-2を通じて下流側のインク加熱部17Cの凹部173内に流入され、排出口172および配管t3を通じて下流側の第1貯留タンク18に流入される。
ステップS2において、制御部40は、インク加熱部17A、17B、および17Cに設置された各々の温度センサーSの出力(検出温度)を監視して、検出されたインク温度が、各々の設定温度(図7に示す温度T1,T2,T3)に達しているか否かを判定する。
ここで、制御部40は、いずれかの温度センサーSによって検出されたインク温度が対応する設定温度に達していないと判定した場合(ステップS2、NO)、対応するインク加熱部(17A~17C)内の加熱源Hの出力(加熱量)が不足していると判断してステップS3に移行する。
ステップS3において、制御部40は、出力(加熱量)が不足していると判断されたインク加熱部(17A~17Cのいずれか)における加熱源H(加熱部)の出力(加熱量)を増加させるように当該加熱源Hを制御し、上述したステップS2の判定処理に戻る。
そして、制御部40は、各々の温度センサーSによって検出されたインク温度のすべてが対応する設定温度(温度T1,T2,T3)に達したと判定した場合(ステップS2、YES)、各々の加熱源H(加熱部)の出力を維持してステップS4に移行する。
ステップS4において、制御部40は、上記の温度センサーSによって検出されたインク温度が、各々の閾値を超えたか否かを判定する。一具体例では、「各々の閾値」は、各々の設定温度(温度T1,T2,T3)から1℃~数℃程度高い値とする。
ここで、制御部40は、いずれかの温度センサーSによって検出されたインク温度が対応する閾値を超えたと判定した場合(ステップS4、YES)、対応するインク加熱部(17A~17C)内の加熱源Hの出力(加熱量)が高いことに起因する不具合が発生し得ると判断して、ステップS5に移行する。
一方、制御部40は、各々の温度センサーSによって検出されたインク温度のすべてが対応する閾値を超えていないと判定した場合(ステップS4、NO)、インク温度は適切であると判断して、処理をステップS6にスキップする。
ステップS5において、制御部40は、出力(加熱量)が高すぎると判断されたインク加熱部(17A~17Cのいずれか)における加熱源H(加熱部)の出力(加熱量)を減少させる(または出力を停止させる)ように当該加熱源Hを制御し、ステップS6に移行する。
ステップS6において、制御部40は、印刷ジョブが終了したか否かを判定する。ここで、制御部40は、印刷ジョブが終了していないと判定した場合(ステップS6、NO)、ステップS2に処理を戻し、上述したステップS2~ステップS6の処理を繰り返し実行する。
一方、制御部40は、印刷ジョブが終了したと判定した場合(ステップS6、YES)、上述した一連の処理を終了する。
このように、本実施の形態では、メインタンクとしてのインク貯蔵タンク16から供給されるインクを、インク加熱装置17(インク加熱部17A~17C)によって十分に加熱(昇温)し且つ適切な温度に調整(温度制御)して、均一な温度で第1貯留タンク18(サブタンク)に供給することができる。
したがって、本実施の形態のインク供給システム15によれば、第1貯留タンク18内の加熱源Hで必要となる熱量(負担する加熱量)が大幅に減少し或いは不要となり、各々のインクジェットヘッド242に供給されるインクの温度ムラ(温度差)を防止ないし大幅に抑制することができ、ひいては記録媒体Pに印刷される画像の品質を担保することができる。
上述した実施の形態では、加熱源Hおよび温度センサーSをインク加熱部(17A~17C)の筐体170における排出口172が設けられた面(後側の面)から挿脱する構成としていたが、かかる構成に限定されない。他の例として、インク加熱部(17A~17C)の筐体170における両側面のいずれかの面から加熱源Hおよび温度センサーSを挿脱する構成としてもよい。
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。