JP7473207B2 - 末梢血流障害の治療剤 - Google Patents

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Description

本発明は、再生医療における細胞製剤に関する。より具体的には、末梢動脈疾患などの末梢血流障害の血管再生療法に有効な多能性幹細胞を含有する細胞製剤に関する。
65歳以上の高齢者人口の割合は、予測を大きく上回るスピードで増加している。
その一方で、食生活の欧米化や車社会を中心とした生活様式の変化により、メタボリックシンドロームなどの新しい生活習慣病の概念が生まれ、社会の疾病構造が大きく変化している。特に動脈硬化性疾患が増え、虚血性心疾患の増加とともに末梢動脈疾患(PAD:peripheral arterial disease)が増加している。
PADは、主に四肢の慢性動脈閉塞症のことを意味し、閉塞性動脈硬化症(ASO:arteriosclerosis obliterans)、閉塞性血栓血管炎(TAO:thromboangiitis obliterans、いわゆるバージャー病)、膝窩動脈捕捉症候群などが含まれる。
PADは虚血肢という足の症状として現れる。しかし単なる足の病気ではなく、加齢や糖尿病を背景とした動脈硬化により末梢の血管の閉塞が起こり、虚血肢として現れたものである。このためPADは同じ動脈硬化性疾患である虚血性心疾患や脳疾患を伴うことが多い。予後は非常に悪く、死亡率は悪性腫瘍よりも高いといわれている。早期発見により適切な治療を行うことが重要である。
現在のPADの治療方針は、下肢の循環障害への対応、全身の主要臓器(脳、心臓、腎臓)への対応、動脈硬化のリスクファクター(喫煙、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、運動不足、ストレスなど)への対応などであり、治療方法としては、大きく内科的治療と外科的治療に分類される。
PADの内科的治療としては、運動療法、温熱療法などの理学療法や、シロスタゾール、ペラプロストナトリウム、塩酸サルポグレラート、塩酸チクロピジン、イコサペント酸エチル、アルプロスタジル、アルプロスタジルアルファデクス、アルガトロバン、パトロキソビン、ペントキシフィリンなどの抗血小板薬、抗血栓薬および血管拡張薬などをはじめとする薬物療法が行なわれている。
また、PADの外科的治療としては、バルーン拡張術、ステント留置術、アテレクトミーなどの血管内治療や、血栓内膜摘除術、バイパス術、交感神経切除術などの外科的手術が行われている。
しかし、下肢の壊死が重症な場合には、上記内科的治療や外科的治療を行っても効果が得られないことも多く、このような場合には救命を目的として肢趾切断となる患者が後を絶たない。
したがって、閉塞性動脈硬化症(ASO:arteriosclerosis obliterans)、閉塞性血栓血管炎(TAO:thromboangiitis obliterans、いわゆるバージャー病)、膝窩動脈捕捉症候群などを含むPADにおいて、血管の再生、それに基づく下肢虚血改善効果等を可能とする新たな治療方法が望まれている。
近年、当該PADの治療においても、再生医療による研究がなされている。
その一つとして、成人の骨髄及び末梢血単核球中に血管内皮細胞に分化しうる血管内皮前駆細胞が存在することが報告され、骨髄由来単核細胞移植は下肢虚血動物モデルにおいて、血管新生や側副血行路の発達により下肢血流量増加作用を発揮することが確認された。(非特許文献1)
しかしながら、骨髄単核球移植による治療は多量の骨髄液採取を必要とし、侵襲が大きく、また、新鮮分離細胞のため骨髄細胞中の幹細胞及び前駆細胞量に個人差があり臨床効果に大きな差が出ることが明らかとなっている。
また、間葉系幹細胞を用いた当該再生医療研究として、ラット下肢虚血モデル、マウス下肢虚血モデル、ウサギ下肢虚血モデルを用い、間葉系細胞を移植することにより血管再生促進効果、下肢虚血の改善効果が報告されている。(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)
しかしながら、移植細胞の血管への長期生着や血管構成細胞への分化が見られないなど、再生医療の効果として十分なものとは言えない。
一方、本発明者らの一人である出澤の研究により、間葉系細胞画分に存在し、遺伝子導入やサイトカイン等による誘導操作なしに得られる、SSEA-3(Stage-Specific Embryonic Antigen-3)を表面抗原として発現している多能性幹細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring cells;Muse細胞)が間葉系細胞画分の有する多能性を担っており、組織再生を目指した疾患治療に応用できる可能性があることが分かってきた(例えば、特許文献1;非特許文献5~7)。しかしながら、末梢動脈疾患の治療にMuse細胞を使用し、期待される治療効果が得られることを明らかにした例はない。
特許第5185443号明細書 国際公開第WO2011/007900号パンフレット
Hou X et al. Mol Biol Rep 37:1467-1475 (2010) Liu J., Hao H., Xia L., et al. Hypoxia pretreatment of bone marrow mesenchymal stem cells facilitates angiogenesis by improving the function of endothelial cells in diabetic rats with lower ischemia. PLoS ONE. 2015;10(5) Xie N., Li Z., Adesanya T. M., et al. Transplantation of placenta-derived mesenchymal stem cells enhances angiogenesis after ischemic limb injury in mice. Journal of Cellular and Molecular Medicine. 2016;20(1):29-37 Cunping Yin, Yuan Liang, Jian Zhang, Guangping Ruan, Zian Li, Rongqing Pang, and Xinghua Pan, Umbilical Cord-Derived Mesenchymal Stem Cells Relieve Hindlimb Ischemia through Enhancing Angiogenesis in Tree Shrews. Stem Cells International, Volume 2016 (2016), Article ID 9742034, 9 pages Kuroda Y et al. Proc Natl Acad Sci USA,2010: 107: 8639-8643. Wakao S et al. Proc Natl Acad Sci USA,2011: 108: 9875-9880. Kuroda Y et al. Nat Protc, 2013: 8: 1391-1415. Kondo K et al. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2009; 29: 61-66.
本発明は、末梢動脈疾患を含む末梢血流障害の治療のための細胞製剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、マウス下肢虚血モデルにおいて、ヒトMuse細胞を血管等から投与、あるいは対象の末梢動脈部位及びその周辺に直接投与することにより、Muse細胞が傷害された末梢動脈部位に集積・生着して障害を生じている末梢動脈部位の血管を再生し、末梢動脈部位の血管障害の改善又は回復をもたらすことを見出し、それにより、Muse細胞が末梢動脈疾患を含む末梢血流障害の治療に好適に使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞に由来するSSEA-3陽性の多能性幹細胞を含む、末梢血流障害を治療するための細胞製剤。
[2]末梢血流障害が末梢動脈疾患である、[1]に記載の細胞製剤。
[3]末梢動脈疾患が、四肢の慢性動脈閉塞症である、[2]に記載の細胞製剤。
[4]末梢動脈疾患が、閉塞性動脈硬化症である、[2]または[3]に記載の細胞製剤。
[5]末梢動脈疾患が、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)である、[2]または[3]に記載の細胞製剤。
[6]末梢動脈疾患が、膝窩動脈捕捉症候群である、[2]または[3]に記載の細胞製剤。
[7]前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の細胞製剤:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ。
[8]前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の細胞製剤:
(i)SSEA-3陽性;
(ii)CD105陽性;
(iii)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(iv)三胚葉のいずれかの胚葉に分化する能力を持つ;
(v)腫瘍性増殖を示さない;及び
(vi)セルフリニューアル能を持つ。
[8]生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞に由来するSSEA-3陽性の多能性幹細胞の、末梢血流障害を治療するための細胞製剤の製造のための使用。

[9]前記[1]~[7]のいずれかに記載の細胞製剤の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、末梢血流障害の治療方法。
[10]前記細胞製剤は静脈内に投与される、[9]の末梢血流障害の治療方法。
[11]前記細胞製剤は複数回投与される、[9]または[10]の末梢血流障害の治療方法。
本発明では、末梢動脈疾患などの末梢血流障害を患っている対象に対し、Muse細胞を血管等から投与あるいは対象の末梢血管部位及びその周辺に直接投与することにより、Muse細胞が障害を受けた末梢血管部位に集積・生着して障害を生じている末梢血管部位の血管を再生し、末梢血管部位の血流障害の改善又は回復させることができる。
Muse細胞は、障害を受けた末梢血管部位へ効率的に遊走して生着することができ、生着した部位で血管を構成し、移植に先立って治療対象細胞への分化誘導が不要である。また、非腫瘍形成性であり安全性にも優れる。さらに、Muse細胞は免疫拒絶を受けないことから、ドナーから製造された他家製剤による治療も可能である。従って、上記に示す優れた性能を有するMuse細胞によって、末梢動脈疾患などの末梢血流障害を患う患者の治療に容易に実行可能な手段を提供することができる。
間葉系幹細胞や自家骨髄細胞では静脈投与で細胞が障害部位に到達することが難しい、あるいは到達するとしてもその効率が非常に低いため筋肉注射で投与されることが一般的であるが、筋肉注射は連続治療が困難であるという問題がある。これに対し、Muse細胞等は静脈投与だけで障害部位に選択的に到達・集積することが可能であり、また静脈投与であるために複数回投与も可能である。これらのことから複数回の治療を行うことで、間葉系幹細胞や自家骨髄細胞よりも優れた治療効果が得られる可能性が示唆される。
図1は下肢虚血モデルマウス(ヌードマウス)に各細胞を投与した場合の血流レーザードップラー測定による結果を示すグラフである。縦軸は虚血肢/非虚血肢の血流比を示す。図中、Ve: Vehicle BM: bone marrow nMuse: non Muse細胞 Muse: Muse細胞、を示す。 図2は各細胞を投与後、6日目の血管新生因子である血管新生関連遺伝子の発現量を測定した結果を示すグラフである。 図3は各細胞を投与後、28日目の虚血骨格筋内血管密度を測定した結果を示す写真である。左がMuse細胞投与、右がVehicleを示す。 図4はMuse細胞、非Muse細胞、BMMNC(骨髄単核細胞)またはPBSを筋肉または静脈に注射したBALBcマウス虚血後肢における血流のレーザードップラー分析の結果を示す図である。Aは虚血肢/非虚血肢の血流比の経時変化を示し(**P<0.01 PBS vs. Muse i.v., ##P<0.01 non Muse i.v. vs. Muse i.v.)、Bは術後7日、Cは術後14日の血流比を示す(**群間の有意差(P 0.01))。なお、結果は平均±SEM(n = 5)で表し、B、Cにおけるドットは各マウスに対応する。 図5はPBSまたはMuse細胞投与14日後の虚血性内転筋の組織切片を抗CD31抗体およびDAPIで染色した結果を示す図(顕微鏡写真)である。スケールバー50μm。
本発明は、SSEA-3陽性の多能性幹細胞(Muse細胞)を含む、末梢血流障害を治療するための細胞製剤に関する。本発明を以下に詳細に説明する。
1.適用疾患
本発明のSSEA-3陽性の多能性幹細胞(Muse細胞)を含む細胞製剤は、末梢動脈疾患の治療に使用される。
本発明において、「末梢血流障害」とは、末梢血管の障害や交感神経の障害などにより末梢の血流が低下することによって起こる障害を意味する。
末梢血管の障害としては、末梢動脈疾患(PAD:peripheral arterial disease)および末梢静脈疾患が挙げられる。
「末梢動脈疾患」には、器質的末梢動脈疾患および機能的末梢動脈疾患が含まれ、器質的末梢動脈疾患としては、閉塞性動脈硬化症(ASO:arteriosclerosis obliterans)、閉塞性血栓血管炎(TAO:thromboangiitis obliterans、いわゆるバージャー病)、急性動脈閉塞症(急性動脈塞栓症、急性動脈血栓症を含む)、大動脈炎症候群、ベーチェット病、膝窩動脈捕捉症候群、膝窩動脈外膜嚢腫、遺残坐骨動脈などが挙げられ、機能的末梢動脈疾患としてはレイノー病などが挙げられる。
「末梢動脈疾患」としては、四肢の慢性動脈閉塞症に該当する疾患が好ましく、上記の疾患のうち、閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎および膝窩動脈捕捉症候群が好ましい。
レイノー病としては、一次性レイノー症候群および二次性レイノー症候群を含み、その原因は特に限定されず、膠原病によるもの、外傷によるもの、振動によるもの、胸郭出口症候群によるもの、慢性閉塞性動脈疾患によるもの、血液疾患によるもの、神経疾患によるもの、などが例示される。
「末梢静脈疾患」としては、静脈血栓症(深部静脈血栓症等)、慢性静脈不全、下肢静脈瘤、静脈瘤性湿疹、静脈瘤性潰瘍などが挙げられる。
交感神経の障害としては、交感神経の反射異常が挙げられ、反射性交感神経性委縮症、カウザルギー、幻肢痛、中枢性疼痛などの末梢血流障害を引き起こしうる交感神経の障害が含まれる。
2.細胞製剤
(1)多能性幹細胞(Muse細胞)
本発明の細胞製剤に使用される多能性幹細胞は、本発明者らの一人である出澤が、ヒト生体内にその存在を見出し、「Muse(Multilineage-differentiating Stress Enduring)細胞」と命名した細胞である。Muse細胞は、骨髄液、脂肪組織(Ogura,F.,et al.,Stem Cells Dev.,Nov 20,2013(Epub)(published on Jan 17,2014))や皮膚の真皮結合組織等から得ることができるほか、広く組織や臓器の結合組織に存在することが知られている。また、この細胞は、多能性幹細胞と間葉系幹細胞の両方の性質を有する細胞であり、例えば、細胞表面マーカーである「SSEA-3(Stage-specific embryonic antigen-3)」陽性細胞、好ましくはSSEA-3陽性かつCD105陽性の二重陽性細胞として同定される。したがって、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、SSEA-3単独又はSSEA-3及びCD105の発現を指標として生体組織から分離することができる。Muse細胞の分離法、同定法、及び特徴などの詳細は、特許文献2(国際公開第WO2011/007900号)に開示されている。また、Muse細胞が様々な外的ストレスに対する耐性が高いことを利用して、蛋白質分解酵素処理や、低酸素条件、低リン酸条件、低血清濃度、低栄養条件、熱ショックへの暴露、有害物質存在下、活性酸素存在下、機械的刺激下、圧力処理下など各種外的ストレス条件下での培養によりMuse細胞を選択的に濃縮することができる。なお、本明細書においては、末梢動脈疾患を治療するための細胞製剤として、SSEA-3を指標として用いて、生体の間葉系組織又は培養間葉系組織から調製された多能性幹細胞(Muse細胞)又はMuse細胞を含む細胞集団を単に「SSEA-3陽性細胞」と記載することがある。また、本明細書においては、「非Muse細胞」とは、生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞に含まれる細胞であって、「SSEA-3陽性細胞」以外の細胞を指すことがある。
Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、細胞表面マーカーであるSSEA-3又はSSEA-3及びCD105を指標として生体組織(例えば、間葉系組織)から調製することができる。ここで、「生体」とは、哺乳動物の生体をいう。本発明において、生体には、受精卵や胞胚期より発生段階が前の胚は含まれないが、胎児や胞胚を含む胞胚期以降の発生段階の胚は含まれる。哺乳動物には、限定されないが、ヒト、サル等の霊長類、マウス、ラット、モルモット等のげっ歯類、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ、ヤギ、フェレット等が挙げられる。本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞は、生体の組織から直接マーカーを持って分離される点で、胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞と明確に区別される。また、「間葉系組織」とは、骨、滑膜、脂肪、血液、骨髄、骨格筋、真皮、靭帯、腱、歯髄、臍帯、臍帯血、羊膜などの組織及び各種臓器に存在する組織をいう。例えば、Muse細胞は、骨髄や皮膚、脂肪組織、血液、歯髄、臍帯、臍帯血、羊膜などから得ることができる。例えば、生体の間葉系組織を採取し、この組織からMuse細胞を調製し、利用することが好ましい。また、上記調製手段を用いて、線維芽細胞や骨髄間葉系幹細胞などの培養間葉系細胞からMuse細胞を調製してもよい。
また、本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞を含む細胞集団は、生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞に外的ストレス刺激を与えることにより、該外的ストレスに耐性の細胞を選択的に増殖させてその存在比率を高めた細胞を回収することを含む方法によっても調製することができる。
前記外的ストレスは、プロテアーゼ処理、低酸素濃度での培養、低リン酸条件下での培養、低血清濃度での培養、低栄養条件での培養、熱ショックへの暴露下での培養、低温での培養、凍結処理、有害物質存在下での培養、活性酸素存在下での培養、機械的刺激下での培養、振とう処理下での培養、圧力処理下での培養又は物理的衝撃のいずれか又は複数の組み合わせであってもよい。
前記プロテアーゼによる処理時間は、細胞に外的ストレスを与えるために合計0.5~36時間行うことが好ましい。また、プロテアーゼ濃度は、培養容器に接着した細胞を剥がすとき、細胞塊を単一細胞にばらばらにするとき、又は組織から単一細胞を回収するときに用いられる濃度であればよい。
前記プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ又はN末端スレオニンプロテアーゼであることが好ましい。更に、前記プロテアーゼがトリプシン、コラゲナーゼ又はジスパーゼであることが好ましい。
なお、本発明の細胞製剤においては、使用されるMuse細胞は、細胞移植を受けるレシピエントに対して自家であってもよく、又は他家であってもよい。
上記のように、Muse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団は、例えば、SSEA-3陽性又はSSEA-3及びCD105の二重陽性を指標にして生体組織から調製することができるが、ヒト成人皮膚には、種々のタイプの幹細胞及び前駆細胞を含むことが知られている。しかしながら、Muse細胞は、これらの細胞と同じではない。このような幹細胞及び前駆細胞には、皮膚由来前駆細胞(SKP)、神経堤幹細胞(NCSC)、メラノブラスト(MB)、血管周囲細胞(PC)、内皮前駆細胞(EP)、脂肪由来幹細胞(ADSC)が挙げられる。これらの細胞に固有のマーカーの「非発現」を指標として、Muse細胞を調製することができる。より具体的には、Muse細胞は、CD34(EP及びADSCのマーカー)、CD117(c-kit)(MBのマーカー)、CD146(PC及びADSCのマーカー)、CD271(NGFR)(NCSCのマーカー)、NG2(PCのマーカー)、vWF因子(フォンビルブランド因子)(EPのマーカー)、Sox10(NCSCのマーカー)、Snai1(SKPのマーカー)、Slug(SKPのマーカー)、Tyrp1(MBのマーカー)、及びDct(MBのマーカー)からなる群から選択される11個のマーカーのうち少なくとも1個、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個のマーカーの非発現を指標に分離することができる。例えば、限定されないが、CD117及びCD146の非発現を指標に調製することができ、さらに、CD117、CD146、NG2、CD34、vWF及びCD271の非発現を指標に調製することができ、さらに、上記の11個のマーカーの非発現を指標に調製することができる。
また、本発明の細胞製剤に使用される上記特徴を有するMuse細胞は、以下:
(i)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
(ii)三胚葉のいずれの胚葉の細胞に分化する能力を持つ;
(iii)腫瘍性増殖を示さない;及び
(iv)セルフリニューアル能を持つ
からなる群から選択される少なくとも1つの性質を有してもよい。好ましくは、本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞は、上記性質を全て有する。
ここで、上記(i)について、「テロメラーゼ活性が低いか又は無い」とは、例えば、TRAPEZE XL telomerase detection kit(Millipore社)を用いてテロメラーゼ活性を検出した場合に、低いか又は検出できないことをいう。テロメラーゼ活性が「低い」とは、例えば、体細胞であるヒト線維芽細胞と同程度のテロメラーゼ活性を有しているか、又はHela細胞に比べて1/5以下、好ましくは1/10以下のテロメラーゼ活性を有していることをいう。
上記(ii)について、Muse細胞は、in vitro及びin vivoにおいて、三胚葉(内胚葉系、中胚葉系、及び外胚葉系)に分化する能力を有し、例えば、in vitroで誘導培養することにより、肝細胞(肝芽細胞又は肝細胞マーカーを発現する細胞を含む)、神経細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、骨細胞、脂肪細胞等に分化し得る。また、in vivoで精巣に移植した場合にも三胚葉に分化する能力を示す場合がある。さらに、静注により生体に移植することで傷害を受けた臓器(心臓、皮膚、脊髄、肝、筋肉等)に遊走及び生着し、組織に応じた細胞に分化する能力を有する。
上記(iii)について、Muse細胞は、増殖速度約1.3日で増殖するが、浮遊培養では1細胞から増殖し、胚様体様細胞塊を作り一定の大きさになると14日間程度で増殖が止まる、という性質を有するが、これらの胚様体様細胞塊を接着培養に移行すると、再び細胞増殖が開始され、細胞塊から増殖した細胞が約1.3日の増殖速度で広がっていく。さらに精巣に移植した場合、少なくとも半年間は癌化しないという性質を有する。
また、上記(iv)について、Muse細胞は、セルフリニューアル(自己複製)能を有する。ここで、「セルフリニューアル」とは、1個のMuse細胞から浮遊培養で培養することにより得られる胚様体様細胞塊に含まれる細胞から3胚葉性の細胞への分化が確認できると同時に、胚様体様細胞塊の細胞を再び1細胞で浮遊培養に持っていくことにより、次の世代の胚様体様細胞塊を形成させ、そこから再び3胚葉性の分化と浮遊培養での胚様体様細胞塊が確認できることをいう。セルフリニューアルは1回又は複数回のサイクルを繰り返せばよい。
(2)細胞製剤の調製及び使用
本発明の細胞製剤は、限定されないが、上記(1)で得られたMuse細胞又はMuse細胞を含む細胞集団を生理食塩水や適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁させることによって得られる。この場合、自家又は他家の組織から分離したMuse細胞数が少ない場合には、細胞移植前に細胞を培養して、所定の細胞数が得られるまで増殖させてもよい。なお、すでに報告されているように(国際公開第WO2011/007900号パンフレット)、Muse細胞は、腫瘍化しないため、生体組織から回収した細胞が未分化のまま含まれていても癌化の懸念が低く安全である。また、回収したMuse細胞の培養は、特に限定されないが、通常の増殖培地(例えば、10%仔牛血清を含むα-最少必須培地(α-MEM)など)において行うことができる。より詳しくは、上記国際公開第WO2011/007900号パンフレットを参照して、Muse細胞の培養及び増殖において、適宜、培地、添加物(例えば、抗生物質、血清)等を選択し、所定濃度のMuse細胞を含む溶液を調製することができる。ヒト対象に本発明の細胞製剤を投与する場合には、ヒトの腸骨から骨髄液を採取し、例えば、骨髄液からの接着細胞として骨髄間葉系幹細胞を培養して有効な治療量のMuse細胞が得られる細胞量に達するまで増やした後、Muse細胞をSSEA-3の抗原マーカーを指標として分離し、自家又は他家のMuse細胞を細胞製剤として調製することができる。あるいは、例えば、骨髄液から得られた骨髄間葉系幹細胞を外的ストレス条件下で培養して有効な治療量に達するまでMuse細胞を増殖、濃縮した後、自家又は他家のMuse細胞を細胞製剤として調製することができる。
また、Muse細胞の細胞製剤への使用においては、該細胞を保護するためにジメチルスルフォキシド(DMSO)や血清アルブミン等を、細菌の混入及び増殖を防ぐために抗生物質等を細胞製剤に含有させてもよい。さらに、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を細胞製剤に含有させてもよい。当業者は、これら因子及び薬剤を適切な濃度で細胞製剤に添加することができる。このように、Muse細胞は、各種添加物を含む医薬組成物として使用することも可能である。
上記で調製される細胞製剤中に含有するMuse細胞数は、末梢血流障害の治療において所望の効果が得られるように、対象の性別、年齢、体重、患部の状態、使用する細胞の状態等を考慮して、適宜、調整することができる。なお、対象とする個体はヒトなどの哺乳動物を含むがこれに限定されない。また、本発明の細胞製剤は、所望の治療効果が得られるまで、複数回(例えば、2~10回)、適宜、間隔(例えば、1日に2回、1日に1回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、1カ月に1回、2カ月に1回、3カ月に1回、6カ月に1回)をおいて投与されてもよい。したがって、対象の状態にもよるが、治療上有効量としては、例えば、一個体あたり一回につき1×10細胞~1×1010細胞で1~10回の投与量が好ましい。一個体における投与総量としては、限定されないが、1×10細胞~1×1011細胞、好ましくは1×10細胞~1×1010細胞、さらに好ましくは1×10細胞~1×10細胞などが挙げられる。
本発明の細胞製剤に使用されるMuse細胞は、傷害を受けた末梢血管部位へと遊走し、生着する性質を有する。したがって、細胞製剤の投与部位や投与形態は特に限定されず、末梢血流障害部位またはその近傍に注射などの方法により局所投与されてもよいし、血管内に注射などの方法によって投与してもよい。投与される血管の種類(静脈及び動脈)は特に限定されず、疾患に応じて適宜選択されるが、静脈内注射が好ましく、静脈内注射を複数回行うことにより、治療効果を長期間持続可能であるためより好ましい。
本発明の細胞製剤は、末梢血流障害を患う患者の障害が生じた末梢血管部位の血管を再生することができる。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1:下肢虚血モデルマウスの作製
本実施例におけるマウスを用いた実験プロトコールは、「京都府立医大動物実験等に関する規定」を遵守し、実験動物は、京都府立医大動物実験センターの監督下において該規定に沿って作製された。より具体的には、以下の手順により作製した。
8-10週齢の雌性BALB/Cヌードマウスをイソフルランの吸入により麻酔(誘導時:4%、維持時: 2%)した。下肢を切開し、実体顕微鏡(KONAN OPERATION MICROSCOPE KOM)下で、左総大腿動静脈、および左浅大腿動静脈末梢を5-0絹糸で結紮した。このようにして作製されたマウスを下肢虚血モデルマウスとして以下の実験に使用した。
実施例2:ヒトMuse細胞の調製
ヒトMuse細胞の分離及び同定に関する国際公開第WO2011/007900号に記載された方法に準じて、Muse細胞を得た。Muse細胞のソースとしては市販の間葉系幹細胞(MSC、Lonza社)を用いた。移植に使用されるMuse細胞は、障害を受けた末梢動脈部位に生着したことを確認するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現し、細胞がこれにより標識されるように、予めレンチウイルス-GFP遺伝子をMuse細胞に導入した。GFPで標識されたMuse細胞をGFPとSSEA-3の二重の陽性細胞としてFACSにて分離した。またMSCからMuse細胞を分離した残りの細胞を非Muse細胞として使用した。また、GFP陽性MSCもFACSにて単離し、MSC群として使用した。
実施例3:下肢虚血モデルマウスに対する各細胞の投与
実施例1で作製した下肢虚血モデルマウスを4群に分け、モデル作製後、1日目に、各群のマウスにMuse細胞(3×10個、100μL)(Muse)、非Muse細胞(3×10個、100μL)(nMuse)、MSC(2×10個、100μL)(BM)あるいはVehicle(リン酸緩衝液)(Ve)を左大腿部2箇所に分けて投与した。一群の動物数は 5匹とした。
実施例4:レーザードップラーによる継時的下肢血流評価
下肢虚血モデルマウス作製後、0、3、7、10及び14日に、二次元レーザー血流画像装置[laser doppler perfusion image (LDPI) analyzer (OMEGAZONE OZ-1, OMEGAWAVE, Inc. Tokyo, Japan)を用いて血流を測定した。各個体の左右両方の下肢血流を測定し、左側(患側)/右側(健側)の比を算出し、これをLDPIインデックスとした。
図1に示す通り、Muse細胞群では14日以降も血流改善が継続し、虚血した左下肢は健康な右下肢と同程度まで血流が改善した。一方、非Muse細胞群(nMuse)、MSC群(BM)及びVehicle群(Ve)では10日までは一定の血流改善を示すが14日以降は改善が見られなかった。
実施例5:血管新生因子である血管新生関連遺伝子の発現量の測定
細胞投与後6日目の左側(患側)の下肢骨格筋のmRNAを抽出して、血管新生関連遺伝子として代表的なVEGF及びbFGF(特に、FGF-2)の発現量をreal-time RT-PCRの絶対定量法で測定した。測定方法は非特許文献8に基づいて行った。その結果を図2に示す。Muse細胞群は、Vehicle群と比較してこれら血管新生因子である血管新生関連遺伝子(mRNA)発現量が有意に高かった。
実施例6:虚血骨格筋内血管密度の測定
細胞投与後28日の左側(患側)の下肢骨格筋の組織を4%パラホルムアルデヒド(Paraformaldehude:PFA)によって固定し、パラフィン切片を作成した後、抗Isolectin GS-IB4抗体, Alexa Fluor 568 Conjugate(Thermo Fisher Scientific社整、300倍希釈で使用)を用いて虚血下肢骨格筋における血管内皮細胞の免疫組織化学染色を行い、骨格筋線維あたりの血管内皮細胞の割合を血管密度として測定した。その結果を図3に示す。Muse細胞群(図3左)では、Vehicle群(図3右)と比較してこれら虚血骨格筋内の血管密度が高いことがわかる。
実施例7:野生型マウスを用いた下肢虚血モデルにおける評価
野生型BALBcマウス(オス12週齢)を用いて、実施例1と同様にして、下肢虚血モデルマウスを作製した。作製した下肢虚血モデルマウスを群に分け、モデル作製後1日目に、各群のマウスに、Muse細胞(3×10個、200μL)(Muse)、非Muse細胞(3×10個、200μL)(non Muse)、あるいは骨髄単核細胞(2×10個、200μL)(BMMNC)を尾静脈内(i.v.)または筋肉内(i.m.)に注射した。対照として、PBSを尾静脈に注射した。一群の動物数は5匹とした。
術前、術直後、術後1日目、3日目、7日目、14日目に、それぞれの群において、血流を実施例4と同様にレーザードップラー血流分析器によって評価し、虚血後肢と非虚血後肢とで血流量を測定し、その比を算出した。結果を図4のAに示す。また、7日目および14日目の結果を図4のBおよびCに示す。
その結果、野生型マウスにおいても、ヒトMuse細胞は筋注、静注のいずれにおいても下肢の虚血を改善させることが分かった。ヒトMuse細胞静注は、Muse細胞筋注、およびマウス自家骨髄単核球筋注とほぼ同等の効果があるということは、Muse細胞は静脈から患部に到達して生着し、虚血改善効果を発揮するということを示している。
次に、対照群またはMuse細胞静注群のマウスの虚血性内転筋を術後14日目に採取し、組織解析を行った。採取された虚血性内転筋を4%PFA中で1時間固定し、30%ショ糖溶液中で一晩インキュベートした。次いで、組織を最適切断温度(OCT)化合物(Sakura Finetek)に包埋し、液体窒素中で急速凍結し、クリオスタット上で切断した。組織切片を1:5,000の希釈でウサギ抗CD31(ab182981;Abcam)と一晩インキュベートした。ヤギ抗ウサギAlexa594(Abcam)を二次抗体として用いた。DAPI(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)を有するProlong GOLD Antifadeでマウントした後、BZ X800光学顕微鏡(Keyence)を用いて画像化を行った。結果を図5に示す。Muse投与群では内皮細胞マーカーであるCD31の発現が有意に亢進しており、Muse細胞は虚血後肢の血管新生を促進して虚血状態を改善することが示唆された。
本発明の細胞製剤は、末梢動脈疾患などの末梢血流障害を患う患者に投与することにより、障害を受けた末梢血管部位に集積・生着して、障害を生じている末梢血管部位の血管を再生し、末梢血管部位の血流障害の改善又は回復させることができる。

Claims (6)

  1. 生体の間葉系組織又は培養間葉系細胞から、SSEA-3の抗原マーカーを指標として分離されたか、または、外的ストレス条件下で培養することにより濃縮された多能性幹細胞を含む、末梢血流障害を治療するための細胞製剤であって、
    前記多能性幹細胞が、以下の性質の全てを有する多能性幹細胞である、細胞製剤:
    (i) SSEA-3陽性;
    (ii) CD105陽性;
    (iii)テロメラーゼ活性が低いか又は無い;
    (iv) 三胚葉のいずれかの胚葉に分化する能力を持つ;
    (v) 腫瘍性増殖を示さない;及び
    (vi) セルフリニューアル能を持つ
  2. 末梢血流障害が、末梢動脈疾患である、請求項1に記載の細胞製剤。
  3. 末梢動脈疾患が、四肢の慢性動脈閉塞症である、請求項2に記載の細胞製剤。
  4. 末梢動脈疾患が、閉塞性動脈硬化症である、請求項2または3に記載の細胞製剤。
  5. 末梢動脈疾患が、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)である、請求項2または3に記載の細胞製剤。
  6. 末梢動脈疾患が、膝窩動脈捕捉症候群である、請求項2または3に記載の細胞製剤。
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