以下、本発明の実施形態に係る試験装置及び試験方法について、図面を参照して説明する。なお、各図面上の各構成要素の寸法比は、実際の寸法比と必ずしも一致していない。
本発明の一実施形態に係る試験装置1は、アンテナ110を有するDUT100の送信特性又は受信特性を測定するものであり、例えば、DUT100のRF特性やRRM特性を測定するようになっている。このために、試験装置1は、電波暗箱(OTAチャンバーともいう)50と、2つの試験用アンテナ6a、6b(以下、試験用アンテナ6と総称することもある)と、姿勢可変機構56と、統合制御装置10と、NRシステムシミュレータ20と、信号処理部40とを備えている。統合制御装置10とNRシステムシミュレータ20と信号処理部40は、測定装置2を構成している。
図1は、試験装置1の外観構造を示し、図2は、試験装置1の機能ブロックを示す。ただし、図1においては、電波暗箱50について正面から透視した状態における各構成要素の配置態様を示している。
図1及び図2に示すように、電波暗箱50は、周囲の電波環境に影響されない内部空間51を有している。試験用アンテナ6は、電波暗箱50の内部空間51に設置され、DUT100の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号をアンテナ110との間で送信又は受信するようになっている。姿勢可変機構56は、電波暗箱50の内部空間51におけるクワイエットゾーン(QZ)内に配置されたDUT100の姿勢を変化させるようになっている。統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、信号処理部40は、姿勢可変機構56により姿勢を変化させたDUT100に対して1又は2の試験用アンテナ6を用いて、DUT100の送信特性又は受信特性の測定を行うようになっている。
試験装置1は、例えば、図1に示すような複数のラック収納部90aを有するラック構造体90と共に用いられ、各ラック収納部90aに各構成要素を載置した態様で運用される。図1は、ラック構造体90の3つのラック収納部90aに、それぞれ統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、及び電波暗箱50を載置した例を示す。以下、各構成要素について説明する。
(電波暗箱)
電波暗箱50は、無線端末の送信又は受信特性の測定に用いられ、例えば5G用の無線端末の性能試験に際してのOTA試験環境を実現するものである。図1及び図2に示すように、電波暗箱50は、例えば、直方体形状の内部空間51を有する金属製の筐体本体部52により構成されている。電波暗箱50は、内部空間51に、DUT100と、DUT100のアンテナ110と直接又は間接に対向する2つの試験用アンテナ6を、外部からの電波の侵入及び外部への電波の放射を防ぐ状態に収容するようになっている。
また、電波暗箱50の内面全域、つまり、筐体本体部52の底面52a、側面52b及び上面52c全面には、電波吸収体55が貼り付けられ、内部空間51の無響特性を確保すると共に、外部への電波の放射規制機能が強化されている。このように、電波暗箱50は、周囲の電波環境に影響されない内部空間51を形成している。本実施形態で用いる電波暗箱50は、例えば、CATR(Compact Antenna Test Range)方式の無響チャンバー(Anechoic Chamber)である。
(DUT)
被試験対象とされるDUT100は、例えばスマートフォンなどの無線端末である。DUT100の通信規格としては、セルラ(LTE、LTE-A、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、1xEV-DO、TD-SCDMA等)、無線LAN(IEEE802.11b/g/a/n/ac/ad等)、Bluetooth(登録商標)、GNSS(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)、FM、及びデジタル放送(DVB-H、ISDB-T等)が挙げられる。また、DUT100は、5Gセルラ等に対応したミリ波帯の無線信号を送受信する無線端末であってもよい。
本実施形態において、DUT100は例えば5G NRの無線端末である。5G NRの無線端末については、ミリ波帯の他、LTE等で使用する他の周波数帯も含む既定の周波数帯を通信可能周波数範囲とすることが5G NR規格によって規定されている。よって、DUT100のアンテナ110は、DUT100の送信特性又は受信特性の被測定対象である既定の周波数帯(5G NRバンド)の無線信号を送信又は受信するものである。アンテナ110は、例えばMassive-MIMOアンテナ等のアレーアンテナであり、本発明における被試験アンテナに相当する。
本実施形態において、DUT100は、電波暗箱50内での送受信特性に関する測定中、試験用アンテナ6及び必要に応じてリフレクタ7又はミラー9を介して試験信号及び被測定信号を送受信できるようになっている。
(姿勢可変機構)
次に、電波暗箱50の内部空間51に設けられた姿勢可変機構56について説明する。図1に示すように、電波暗箱50の筐体本体部52における内部空間51側の底面52a(床)には、クワイエットゾーン内に配置されたDUT100の姿勢を変化させる姿勢可変機構56が設けられている。姿勢可変機構56は、例えば、2軸の各軸周りに回転する回転機構を備える2軸ポジショナである。姿勢可変機構56は、試験用アンテナ6を設定した状態で、DUT100を2軸周りの回転自由度をもって回転させるようなOTA試験系(Combined-axes system)を構成する。具体的には、姿勢可変機構56は、駆動部56aと、ターンテーブル56bと、支柱56cと、被試験対象載置部としてのDUT載置部56dとを有する。
駆動部56aは、回転駆動力を発生させるステッピングモータなどの駆動用モータからなり、例えば、底面52aに設置される。ターンテーブル56bは、駆動部56aの回転駆動力により、互いに直交する2軸のうちの一方の軸の周りに所定角度回転するようになっている。支柱56cは、ターンテーブル56bに連結され、ターンテーブル56bから一方の軸の方向に延びて、駆動部56aの回転駆動力によりターンテーブル56bと共に回転するようになっている。DUT載置部56dは、支柱56cの側面から2軸のうちの他方の軸の方向に延びて、駆動部56aの回転駆動力により他方の軸の周りに所定角度回転するようになっている。DUT100は、DUT載置部56dに載置される。
なお、上記の一方の軸は、例えば、底面52aに対して鉛直方向に延びる軸(図中のY軸)である。また、上記の他方の軸は、例えば、支柱56cの側面から水平方向に延びる軸である。このように構成された姿勢可変機構56は、DUT載置部56dに保持されているDUT100を、例えば、DUT100の中心を回転中心として、試験用アンテナ6及びリフレクタ7に対して3次元のあらゆる方向にアンテナ110が向く状態に順次姿勢を変化させ得るように回転させることができる。
OTA試験系では、姿勢可変機構56の2つの回転軸の交点である回転中心(原点Oともいう)に、DUT100の中心又はアンテナ110の中心が配置されるようになっている。DUT100が配置される位置は、OTA試験系の原点Oであり、電波暗箱50内に配置されたDUT100の中心又はアンテナ110の中心の位置である。すなわち、原点Oは、姿勢可変機構56によりDUT100を2軸周りに回転させたときの不動の回転中心に対応する。
(リンクアンテナ)
電波暗箱50において、筐体本体部52の所要位置には、DUT100との間でリンク(呼)を確立又は維持するための2種類のリンクアンテナ5、8がそれぞれ保持具57、59を用いて取り付けられている。リンクアンテナ5は、LTE用のリンクアンテナであり、ノンスタンドアローンモード(Non-Standalone mode)で使用される。一方、リンクアンテナ8は、5G用のリンクアンテナであり、5Gの呼を維持するために使用される。リンクアンテナ5、8は、姿勢可変機構56に保持されるDUT100に対して指向性を有するようにそれぞれ保持具57、59によって保持されている。なお、上記のリンクアンテナ5、8を使用する代わりに、試験用アンテナ6をリンクアンテナとして兼用することも可能であるため、以下においては、試験用アンテナ6がリンクアンテナの機能を兼ねるものとして説明する。
(近傍界と遠方界)
次に、近傍界と遠方界について説明する。電波がアンテナからDUT100へ直接伝わる場合をDFF(Direct Far Field)方式といい、電波がアンテナから回転放物面を有するリフレクタ7を反射してDUT100へ伝わる場合をIFF(Indirect Far Field)方式という。
アンテナを放射源とする電波は、同位相の点を結んだ面(波面)が放射源を中心にして球状に拡がりながら伝搬する性質がある。放射源から近い距離では、波面は湾曲した球面(球面波)であるが、放射源から遠くなると波面は平面(平面波)に近くなる。一般に、波面を球面と考える必要のある領域が近傍界(NEAR FIELD)と呼ばれ、波面を平面とみなしてよい領域が遠方界(FAR FIELD)と呼ばれている。DUT100は、正確な測定を行ううえで、球面波を受信するよりも、平面波を受信する方が好ましい。
平面波を受信するためには、DUT100が遠方界に設置される必要がある。DUT100内でのアンテナ110の位置及びアンテナサイズが分かっていないとき、遠方界は、アンテナから2D2/λ以遠の領域となる。ここで、Dは、DUT100の最大直線サイズ、λは電波の波長である。なお、DUT100内でのアンテナ110の位置及びアンテナサイズが分かっているとき、Dはアンテナサイズである。
本実施形態では、試験用アンテナ6aの電波をリフレクタ7の回転放物面で反射させ、DUT100の位置にその反射波を到達させる方式であるCATR方式を利用している。この方式によれば、試験用アンテナ6aとDUT100間の距離を短縮でき、リフレクタ7の反射鏡面での反射後直ぐの距離から平面波の領域が拡がるため、伝搬ロスを低減することもできる。平面波の度合は、同位相の波の位相差で表すことができる。平面波の度合として許容し得る位相差は、例えば、λ/16である。位相差は、例えば、ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)で評価することができる。
(試験用アンテナ)
次に、試験用アンテナ6について説明する。
図5は、本実施形態に係る試験装置1の電波暗箱50の天板を取り除いて上方から見た平面図であり、図6は、電波暗箱50の正面側の側板(図6における下側の側板)を取り除いて正面側から見た正面図である。
試験用アンテナ6は、第1の試験用アンテナとして1個のリフレクタ反射型の試験用アンテナ6aと、第2の試験用アンテナとして1個のミラー反射型の試験用アンテナ6b(図6参照)とを含んでいる。リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aは、リフレクタ7を介してアンテナ110との間でDUT100の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号(以下、測定用の無線信号ともいう)を送信又は受信するようになっている。ミラー反射型の試験用アンテナ6bは、ミラー9を介して、DUT100が備えるアンテナ110との間で、DUT100の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を送信又は受信するようになっている。
(リフレクタ反射型の試験用アンテナ)
リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aは、リフレクタ7と共に用いられ、一次放射器として機能する。試験用アンテナ6aとしては、例えば、ホーンアンテナ等の指向性を持ったミリ波用のアンテナを用いることができる。リフレクタ7は、曲面状に湾曲した例えばアルミニウム製の反射面を有し、測定用の無線信号の電波を反射するものであり、真円型のパラボラの回転放物面の一部を切り出したオフセットパラボラ型の構造を有するものである。リフレクタ7は、図1に示すように、電波暗箱50の側面52bの所要位置にリフレクタ保持具58を用いて取り付けられている。
リフレクタ7は、その回転放物面から定まる焦点位置に配置されている一次放射器としての試験用アンテナ6aから放射された試験信号の電波を回転放物面で受け、姿勢可変機構56に保持されているDUT100に向けて反射させる(送信時)。また、リフレクタ7は、上記試験信号を受信したDUT100がアンテナ110から放射する被測定信号の電波を回転放物面で受け、試験用アンテナ6aに向けて反射させる(受信時)。リフレクタ7は、これら送信と受信が同時に可能な位置及び姿勢で配設されている。すなわち、リフレクタ7は、試験用アンテナ6aとDUT100のアンテナ110との間で送受信される無線信号の電波を、回転放物面で反射するようになっている。
この構成により、試験用アンテナ6aから放射された電波(例えば、DUT100に対する試験信号)を回転放物面で該回転放物面の軸方向と平行な方向に反射させるとともに、回転放物面の軸方向と平行な方向にて回転放物面に対して入射する電波(例えば、DUT100から送信された被測定信号)を該回転放物面で反射させ、試験用アンテナ6aへと導くことができる。別言すれば、リフレクタ7は、試験用アンテナ6aから放射された球面波の電波を平面波の電波に変換してDUT100に送ると共に、DUT100から放射されリフレクタ7に入射する平面波の電波を試験用アンテナ6aに集束させるものである。オフセットパラボラは、パラボラ型に比べて、リフレクタ7自体が小さくて済むうえに、鏡面が垂直に近づくような配置が可能であるので、電波暗箱50の構造を小型化し得る。
図6に示すように、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aは、DUT100の配置位置(原点O)を通る水平面HPより下方に配置されている。試験用アンテナ6aから放射されリフレクタ7で反射した電波ビームはZ軸負方向に伝搬され、所要半径r1(図5)のクワイエットゾーンを形成するようになっている。リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aは、水平偏波アンテナ6aH、垂直偏波アンテナ6aVを有している(図2参照)。
(ミラー反射型の試験用アンテナ)
ミラー反射型の試験用アンテナ6bは、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aと同様、水平偏波と垂直偏波を送受信可能であって、それぞれの偏波を送受信する水平偏波アンテナ6bH、垂直偏波アンテナ6bVを有している(図2参照)。ミラー反射型の試験用アンテナ6bは、測定用の無線信号の電波を反射する平面状のミラー9を介して、DUT100のアンテナ110との間で無線信号を送信又は受信するようになっている(図6参照)。ミラー9は、例えばアルミニウム製であり、平坦な鏡面を有している。
ミラー反射型の試験用アンテナ6bから放射された電波ビームは、図6に示すように、ミラー9において鏡面反射され、クワイエットゾーンへと放射されるようになっている。また、クワイエットゾーンに配置されているDUT100のアンテナ110から放射された電波ビームは、ミラー9において鏡面反射され、ミラー反射型の試験用アンテナ6bで受信されるようになっている。
(ミラー)
ミラー9は、その反射面がDUT100の配置位置P0を通る水平面HPと交差するように配置されている(図6参照)。具体的には、ミラー9は、DUT100の配置位置P0を中心に半径r2の仮想球面S上でかつ水平面HP上に配置されている(図5参照)。図5、図6によれば、ミラー9の反射面上において電波ビームの中心が反射する反射点P2、P3、P4、P5、P6が仮想球面S上でかつ水平面HP上に位置していることが理解できる。
(アンテナ可動機構の概要)
図6に示すように、ミラー反射型の試験用アンテナ6bとミラー9とは、アンテナ保持部610によって両者が一定の位置関係を保つ状態で保持されている。アンテナ保持部610は、コンバータ収容部620(図5では実線で示し、図6では点線で示している。)とともに移動対象保持部600を構成している。
コンバータ収容部620には、コンバータ45、46(図8参照)が収容されている。コンバータ45、46は、後述するように、試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ6bH、垂直偏波アンテナ6bVのそれぞれとNRシステムシミュレータ20との間で送受信する信号の周波数変換処理を行う機能部である。コンバータ収容部620は、本発明の周波数変換器収容部に相当する。
移動対象保持部600は、図5、図6に示すように、移動機構700を構成する可動台77に載置され、移動機構700によって、可動台77ごと、図5、図6の位置P1から位置P5を含むエリアを矢印で示す方向D1に往復移動できるようになっている。図5、図6において、可動台77は、その位置(例えば、位置P5)にある場合には実線で描かれ、移動してその位置(例えば、位置P4、P3、P2、P1)にない場合には点線にて描かれるようになっている。図5、図6によれば、可動台77は、位置P5~P1の範囲内の円上を方向D1に移動可能である。
図5、図6において、可動台77に積載される移動対象保持部600は、ミラー反射型の試験用アンテナ6b及びミラー9を保持するアンテナ保持部610と、コンバータ45、46を収容するコンバータ収容部620と、により構成されている。このように、本実施形態に係る試験装置1では、可動台77に載置されるアンテナ保持部610及びコンバータ収容部620から成る移動対象保持部600と、可動台77を移動させる移動機構700とによってアンテナ可動機構60が構成されている。
アンテナ可動機構60は、移動対象保持部600を、図5、図6に示す位置P1、P2、P3、P4、P5を経由しつつ方向D1に、移動機構700の円弧状の軌道に沿って往復移動させることができるようになっている。この移動に際し、アンテナ保持部601に保持される試験用アンテナ6bとミラー9は、電波暗箱50の内部空間51を上から見た場合には、共に、図5に示すように、位置P1、P2、P3、P4、P5を含む任意の測定位置に移動、停止可能に移動するようになっている。このとき、内部空間51を横からみると、試験用アンテナ6bは、図6に示すように、ミラー9の移動に追従して、位置P11、P12、P13、P14、P15を含む任意の測定位置に移動、停止可能に水平移動するようになっている。これにより、試験用アンテナ6bが上述した円弧状のどの位置にあっても、試験用アンテナ6bとDUT100との間のミラー9を介した通信が維持される。
アンテナ可動機構60による試験用アンテナ6b、及びミラー9(すなわち、アンテナ保持部610)の任意の位置への移動は、統括制御装置10のアンテナ位置制御部18からアンテナ可動機構60の移動機構700を駆動制御することにより行われる。
上述した構成のアンテナ可動機構60を有する電波暗箱50内でのミラー9、試験用アンテナ6b、及びコンバータ45、46の配置を図7に示している。
図7に示すように、アンテナ可動機構60は、移動対象保持部600と移動機構700とによって構成され、さらに移動対象保持部600は、アンテナ保持部610及びコンバータ収容部620により構成されている。アンテナ保持部600においては、ミラー9と試験用アンテナ6bが所定の位置関係を保って保持された状態(図6参照)で、アンテナ可動機構60により原点Oを通るy軸を中心にθ方向に回転移動できるようになっている。試験用アンテナ6bは、水平面HPより下方に配置され、ミラー9は、ミラー面上の電波ビームの反射点P5が水平面HP上に位置するように、配置されている。
試験用アンテナ6bから放射された電波ビームは、ミラー9で反射してDUT100が配置されている原点Oに送られる。また、DUT100のアンテナ110から放射された電波ビームは、ミラー9で反射して試験用アンテナ6bに送られる。仮に、ミラー9が無いとすると、電波暗箱50の外部に試験用アンテナ6Aが配置されることとなり、遠方界測定に要するアンテナ間距離(O-PA間距離)を確保することができない。ミラー9により電波ビームの伝搬経路を曲げることにより、試験用アンテナ6bを電波暗箱50内に配置すると共に、遠方界測定に必要なアンテナ間距離を確保することができる。
具体的には、図7において、O-P5間距離とP5-P15間距離とを足し合わせた距離は、遠方界測定に要するアンテナ間距離であるO-PA間距離に等しくなっている。P5は、試験用アンテナ6bから放射された電波ビームがミラー9上で反射する反射点を示し、P15は、試験用アンテナ6bの開口中心であり、PAは仮想的な試験用アンテナ6Aの開口中心である。O-P5間の伝搬経路は水平面HP上にある。なお、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aから放射された電波ビームは、リフレクタ7上の反射点P0で反射されてDUT100が配置された原点Oに送られ、P0-O間の伝搬経路も、水平面HP上にある。
リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aは、いわゆる間接遠方界(IFF)を形成し、ミラー反射型の試験用アンテナ6bは、直接遠方界(DFF)を形成するようになっている。間接遠方界とは、球面波を平面波に変換するようなリフレクタを用いる反射型のアンテナにより形成される遠方界をいい、直接遠方界とは、そのようなリフレクタを用いないアンテナにより直接形成される遠方界をいう。なお、ミラー反射型の試験用アンテナ6bは、ミラー9を用いて電波ビームを反射させているが、試験用アンテナ6bから遠方界までに電波ビームの進む距離は、ミラーのない場合と同じであるので、DEF型のアンテナと考えることができる。
例えば、アンテナ110のアンテナサイズDが分かっている場合には、ミラー反射型の試験用アンテナ6bから対応するミラー9を経由してDUT100のアンテナ110までの距離は、2D2/λより大きくするとよい。Dはアンテナ110のアンテナサイズ、λはミラー反射型の試験用アンテナ6から送信される電波の波長である。これにより、DUT100の遠方界測定を行うことができる。
ミラー反射型の試験用アンテナ6b及びミラー9は、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aのリフレクタ7を反射してクワイエットゾーンを通る電波ビームの経路外に配置されている。この構成により、本実施形態に係る試験装置1は、良好なクワイエットゾーンを形成することができる。
また、本実施形態では、ミラー反射型の試験用アンテナ6bが形成するクワイエットゾーンは、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aが形成するクワイエットゾーンと同一であるとしているが、これに限定されない。ミラー反射型の試験用アンテナ6bが形成するクワイエットゾーンと、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aが形成するクワイエットゾーンとが異なっていてもよい。例えば、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aが形成するクワイエットゾーンの方を広くしておくと、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aを単独で使用してRF特性等を測定する場合に、広いクワイエットゾーンを利用することができる。
(到来角度)
図5及び図6に示すように、アンテナ可動機構60は、試験用アンテナ6aからの電波到来方向(Z軸負方向)を基準にDUT100に対して異なる複数の到来角度で無線信号を送信又は受信することができるように、試験用アンテナ6b及びミラー9の位置を各々円上で移動させるようになっている。複数の到来角度は、例えば30°、60°、90°、120°、150°である。このように、所定の角度範囲内を均等に漏れなく測定できるので、DUT100のRRM特性等の送受信特性の遠方界測定を精度よく行うことができる。これにより、例えば規格3GPP TR 38.810 V16.2.0 (2019-03)に規定されたRRM特性を精度よく測定することができる。
ここで、「到来角度(AoA(Angle of Arrival))」とは、DUT100が配置されている原点Oを通る特定の直線(例えばZ軸)に対して、試験用アンテナ6から原点Oに到来する電波ビーム又は電波ビームの中心が形成する角度をいう。到来角度は、2つの試験用アンテナによっても規定することができる。この場合は、一の試験用アンテナから原点Oに到来する電波ビームの方向である電波到来方向を基準に、他の試験用アンテナから原点Oに到来する電波ビーム又は電波ビームの中心が形成する角度を「到来角度」又は「相対的な到来角度」という。
(アンテナ可動機構)
次に、アンテナ可動機構60について詳しく説明する。
アンテナ可動機構60は、試験用アンテナ6aからの電波到来方向を基準に遠方界に設置されたDUT100に対して複数の到来角度で無線信号を直接的に送信又は受信することができるように、試験用アンテナ6bの位置を円上で移動させるようになっている。さらにアンテナ可動機構60は、試験用アンテナ6bと一緒に、試験用アンテナ6bが送受信する信号の周波数変換処理を行うコンバータ45、46についても上述した円上で移動させるようになっている。
これを実現するために、アンテナ可動機構60は、図8に示すように、試験用アンテナ6b、ミラー9、コンバータ45、46等の移動対象を保持する移動対象保持部600と、移動対象保持部600の移動を行う移動機構700とを備えている。
移動機構700による移動対象保持部600の移動は、可動台77を、円運動部701を構成する案内用レール73に沿って円弧状に移動させることによって、可動台77に載置されている移動対象保持部600についても上記円弧状の軌道に沿って移動させるという原理に基づいている。
(移動対象保持部)
移動対象保持部600は、アンテナ可動機構60が移動させる移動対象を保持するものであり、図8に示すように、アンテナ保持部610と、コンバータ収容部620とを有している。
アンテナ保持部610とコンバータ収容部620は、移動機構700によって円上を往復移動される可動台77の上に載置され、移動機構700により、可動台77とともに上述した円弧状の軌道に沿って方向D1に往復移動できるようになっている。
(アンテナ保持部)
アンテナ保持部610は、図8に示すように、試験用アンテナ6bと平面状のミラー9を保持するようになっている。試験用アンテナ6bとミラー9は、所要の間隔をあけてアンテナ保持部610に保持されている。ミラー9は、試験用アンテナ6bから放射された無線信号の電波を反射してDUT100のアンテナ110に送るとともに、DUT100のアンテナ110から放射された無線信号の電波を反射して試験用アンテナ6bに送るようになっている。アンテナ可動機構60は、試験用アンテナ6bとともに平面状のミラー9の位置を移動させるようになっている。
この構成により、試験用アンテナ6bとDUT100のアンテナ110との間で送受信される無線信号の経路をミラー9により変えることができるので、電波暗箱50の限られた狭い内部空間51であっても遠方界測定に必要なアンテナ間距離を確保することができる。
図8に示すように、アンテナ保持部610は、試験用アンテナ6bとミラー9を長手方向に間隔を置いて保持する長細い棒状あるいは柱状の支柱61を有している。具体的には、支柱61の一端に、支柱61の長手方向に直交する方向に延びたミラー取付部62が設けられ、ミラー取付部62の端部にミラー9が所定の角度で傾斜して取り付けられている。また、図8に示すように、支柱61の長手方向中間にて、該長手方向に直交する方向に延びたアンテナ取付部63が設けられ、アンテナ取付け部63の端部に角度調整台64が取り付けられ、角度調整台64に試験用アンテナ6bが所定の角度となるように取り付けられている。支柱61の他端は、支持板65の上面に取り付けられ、支持板65は、固定具65aによって、移動機構700を構成する可動台77に固定されている。支柱61は、支柱61の長手方向が鉛直方向となるように構成されている。
試験用アンテナ6bの角度と、ミラー9の角度は、試験用アンテナ6bから放射された無線信号の電波ビームがミラー9で反射してDUT100に送られるように設定されている。
本実施形態では、アンテナ保持部610の支柱61を支持するために支持板65を用いているが、支柱61の端部を可動台77に直接固定するようにしてもよい。
上述した構成を有するアンテナ保持部610は、図8に示すように、試験用アンテナ6bとミラー9との間の上述した電波ビームの経路を妨げないように、試験用アンテナ6bを側方(アンテナ取付部63側を除く三方)から取り囲む電磁波遮蔽機構611をさらに有している。また、アンテナ保持部610において、ミラー9は、図8に示すように、ミラー領域の一部を切り欠いた切欠き部9aを有している。これら電磁波遮蔽機構611、及び切欠き部9aを有するミラー9の構成については、後で図10~図13を参照して詳しく説明する。
(コンバータ収容部)
コンバータ収容部620は、図8に示すように、可動台77上のアンテナ保持部610に隣接する位置に取り付けられている。図8の例において、コンバータ収容部620は、例えば、アンテナ可動機構60を移動対象収容部600の背面側から見た場合におけるアンテナ保持部610の左隣の位置に取り付けられている。
コンバータ収容部620は、直方体形状の外観を有する金属製のボックス621で構成される。ボックス621は、その底部が、所定の固定具によって可動台77の載置面77aに固定されている。ボックス621は、クワイエットゾーンに対応する面、すなわち、図8に示す状態での裏側全面に電波吸収体が貼り付けられている。
ボックス621は、内部空間が、例えば、上下2段に仕切られ、上方の内部空間にはコンバータ45が載置され、下方の内部空間には、コンバータ46が載置されている。
コンバータ45、46は、試験用アンテナ6bとNRシステムシミュレータ20との間に設けられる信号処理部40(図4参照)のうちの第2信号処理部40bの構成要素であり、それぞれ、試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ6bH、垂直偏波アンテナ6bVと接続されている。コンバータ45は、例えば、試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ6bHに送信する信号の周波数変換(アップコンバート)を行うアップコンバータ、水平偏波アンテナ6bHにより受信された信号の周波数変換(ダウンコンバート)を行うダウンコンバータの機能を兼ね備えたものである。他方、コンバータ46は、例えば、試験用アンテナ6bの水垂直偏波アンテナ6bVに送信する信号のアップコンバートを行うアップコンバータ、垂直偏波アンテナ6bHにより受信された信号のダウンコンバートを行うダウンコンバータの機能を兼ね備えたものである。
コンバータ45、46は、図8に示すように、一方の入出力端が、それぞれ、試験用アンテナ6bの例えば水平偏波アンテナ6bH、垂直偏波アンテナ6bVにRFケーブル47a、47bにより接続されている。また、コンバータ45、46は、他方の入出力端(試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ6bH、垂直偏波アンテナ6bVとの接続側の反対側)が、例えば、それぞれ、RFケーブル48a、48bにより、NRシステムシミュレータ20に電気的に接続することが可能となっている。
コンバータ45、46は、例えば、図4に示す第2信号処理部40b(図4参照)における機能回路部分に相当するものであり、NRシステムシミュレータ20側から制御することが可能となっている。図8に示すコンバータ45、46の上述した他方の入出力端側の構成において、コンバータ45は一方の制御用ケーブル49aを介してNRシステムシミュレータ20から、例えば、アップコンバータ、ダウンコンバータの切り替え等の各種の制御が行えるようになっている。同様に、コンバータ46も、他方の制御用ケーブル49aを介してNRシステムシミュレータ20から、アップコンバータ、ダウンコンバータの切り替え等の制御が行えるようになっている。コンバータ45、46は、それぞれ、電源ケーブル49b、49bを介して電源の供給を受けられるようになっている。
上述した構成により、本実施形態に係る試験装置1では、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ6bHに向けて送出された信号は、RFケーブル48a、コンバータ45、RFケーブル47aを通って水平偏波アンテナ6bHまで送られて電波として放射される。また、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ6bの垂直偏波アンテナ6bVに向けて送出された信号は、RFケーブル48b、コンバータ46、RFケーブル47bを通って垂直偏波アンテナ6bHまで送られて電波として放射される。
これに対して、試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ6bHから入力する信号はRFケーブル47a、コンバータ45、RFケーブル48aを通ってNRシステムシミュレータ20の被試験信号として取り込まれる。また、試験用アンテナ6bの垂直偏波アンテナ6bVから入力する信号はRFケーブル47b、コンバータ46、RFケーブル48bを通ってNRシステムシミュレータ20の被試験信号として取り込まれるようになっている。
図8においては、信号処理部40の第2信号処理部40b(図4参照)が、試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ6bH、垂直偏波アンテナ6bVごとに1つずつのコンバータ45、46(共に、アップコンバータの機能とダウンコンバータの機能を併有)を有する場合におけるコンバータ収容部620に対する収容形態を挙げている。本発明はこれに限らず、例えば、水平偏波アンテナ6bH、垂直偏波アンテナ6bVごとにアップコンバータとダウンコンバータを2個ずつ別体(合計4個)で設けた構成としてもよい。要するに、本発明において、コンバータ45、46は、水平偏波と垂直偏波毎に個別に設けられ、それぞれ、アップコンバータ、又はダウンコンバータ、若しくはその両方の機能を有するものをコンバータ収容部620内に適宜に配置する構成とすることができる。
(移動機構)
移動機構700は、図8に示すように、円運動部701、駆動部702を備えている。
(円運動部)
円運動部701は、案内用レール73、駆動用レール74、可動台77を有している。円運動部701は、可動台77を案内用レール73に沿って方向D1に移動させることができるように構成されている。駆動用レール74は、例えば、モータ等の駆動源によって回転駆動されるギアに噛み合って可動台77を方向D1に移動せしめる機構である。
(駆動部)
駆動部702は、案内用レール73とともに円運動部701を構成する駆動用レール74に設けられるギアと噛み合う駆動ギアと、該駆動ギアを回転駆動するモータ等の駆動源により構成されている。
上述した構成を有するアンテナ可動機構60を有する本実施形態に係る試験装置1によれば、モータ等の駆動源により可動台77が駆動源の回転の方向に対応した方向D1(図8参照)に移動する。モータ等の駆動源により、試験用アンテナ6bが、例えば、図5、図6のP5に示す位置となるように可動台77を方向D1に移動させることが可能である。この場合、試験用アンテナ6bは、試験用アンテナ6aよりDUT100に到来する電波ビームの方向を基準に、例えば、到来角度150°で電波ビームを放射することができるようになる。
同様に、アンテナ位置制御部18によって上記駆動源を回転駆動し、試験用アンテナ6bが、それぞれ、例えば、図5、図6のP4、P3、P2、P1に示す位置となるように可動台77を方向D1に移動させることにより、試験用アンテナ6aよりDUT100に到来する電波ビームの方向を基準に、試験用アンテナ6bは、例えば、到来角度120°、90°、60°、30°で電波ビームを放射することができるようになる。
試験用アンテナ6bを到来角度150°、120°、90°、60°、30°に対応するP5、P4、P3、P2、P1の位置に移動する制御に合わせて、当該試験用アンテナ6bとともにアンテナ保持部610に保持されるミラー9は、それぞれ、図6に示すように、P15、P14、P13、P12、P11の位置に移動することとなる。
なお、本実施形態に係る試験装置1において、アンテナ位置制御部18は、試験用アンテナ6bを上述した到来角度150°、120°、90°、60°、30°のいずれかの位置で停止させるばかりではなく、到来角度150°から30°の範囲内の任意の角度となるようにアンテナ可動機構60を駆動制御できるようになっている。
上述した構成により、本実施形態に係る試験装置1は、試験を行う到来角度の数だけ試験用アンテナを設ける必要がなく、アンテナ数を削減することができる。また、所定範囲内で任意の到来角度が形成されるように試験用アンテナ6bを移動することができる。しかも、DUT100が保持されている中央の姿勢可変機構56を避けて、アンテナ可動機構60を周辺に設置することができ、アンテナ可動機構60の占有(設置)面積及び占有空間(体積)も小さく抑えられ、電波暗箱50の限られた内部空間51を効率的に使用することができる。
本実施形態では、アンテナ可動機構60は、電波暗箱50の底面52a(図8参照)に配置しているが、配置場所はこれに限定されず、天井に配置してもよいし、水平に限らず、垂直あるいは傾斜して配置してもよい。
(電磁波遮蔽機構)
次に、アンテナ保持部610の電磁波遮蔽機構611について、図10~図12を参照してさらに詳しく説明する。図10は、本実施形態に係る試験装置1の電波暗箱50の天板を取り除いて上方から見たときの平面図であり、図5に示した構造に対するより詳細な構造を示している。
図10に示すように、本実施形態に係る試験装置1では、電波暗箱50の内部空間51において、アンテナ保持部610は、原点Oを中心として、方向D1に、案内用レール73上(円上)を移動する可動台77に取り付けられている。可動台77の移動範囲は、例えば、図5における到来角度30°から到来角度150°の範囲内である。
アンテナ保持部610は、ミラー9と、ミラー9の鉛直方向直下(図10を紙面の真上から見たときの紙面の奥側)にある試験用アンテナ6b(便宜的に、点線で示している)とを保持し、試験用アンテナ6bから放射される電子ビームをミラー9によって原点Oの方向に反射させるとともに、姿勢可変機構56のDUT載置部56dに載置されるDUT100のアンテナ100(原点0の位置にある)から放射される電子ビームをミラー9によって反射させて試験用アンテナ6bまで導くようになっている。このような電子ビームの送受信のための経路を、図10においては、原点Oから試験用アンテナ6bに対して延びる点線で示し、符号R1を付している。
DUT100との間で経路R1によりミラー反射方式での電子ビームの送受信を可能とするアンテナ保持部610では、電波暗箱50内での試験用アンテナ6b(ミラー9の鉛直方向直下に存在)に対するクワイエットゾーン、若しくはリフレクタ7との図10に示す如くの平面配置構造を考慮したときに、試験用アンテナ6bからの電子ビームが、ミラー9を介さず、所謂、直接波として、クワイエットゾーン、若しくは、リフレクタ7に放射され、電波の干渉を引き起す状況が想定される。
このための対策として、本実施形態に係る試験装置1では、アンテナ保持部610に、試験用アンテナ6bと、原点O、若しくはリフレクタ7との間の電子ビーム(直接波)を遮断するための電磁波遮蔽機構611を設けている。
具体的に、電磁波遮蔽機構611は、例えば、図8に示すように、試験用アンテナ6bの三方を、鉛直方向上部に向けて所定の高さまで取り囲むように配置された遮蔽板1(符号612を付す。以下、遮蔽板612と称することもある。)、遮蔽板2(符号613を付す。以下、遮蔽板613と称することもある。)、及び遮蔽板3(符号614を付す。以下、遮蔽板614と称することもある。)を有して構成されている。遮蔽板1、遮蔽板2は、それぞれ、本発明の第1の遮蔽板、第2の遮蔽板を構成している。
ここで遮蔽板612、613、614は、電磁波遮蔽機構611を水平方向に切断した場合の断面形状が、試験用アンテナ6bが配置される側が開口する例えばコの字型となるように連結されている。図8に示すように、遮蔽板612は、試験用アンテナ6bからクワイエットゾーンへの直接波の放射経路を塞ぐ位置に配置されている。また、遮蔽板613は、試験用アンテナ6bからリフレクタ7への直接波の放射経路を塞ぐ位置に配置されている。遮蔽板614は、遮蔽板612と対向する位置に、遮蔽板613の端部に連結するように取り付けられている。遮蔽板614は、試験用アンテナ6bからクワイエットゾーンの反対側の領域へ電磁波が放射されるのを防ぐ電磁波遮蔽機能を果たすものである。
次に、電磁波遮蔽機構611の電波遮断機能について説明する。まず、遮蔽板1の電波遮断機能について図11を参照して説明する。図11において、(a)は本実施形態に係る試験装置1の試験用アンテナ6bとクワイエットゾーン間での遮蔽板1(遮蔽板612)による電波遮蔽機能を説明するための模式図であり、(b)は遮蔽板1を有しない参考例の装置(例えば、従来装置)における同区間での電波干渉状況を説明するための模式図である。
図11(b)に示すように、遮蔽板1を有しない参考例の装置の構成によれば、ミラー反射型の試験用アンテナ6bから放射された電波(球面波)がミラー9により反射されてその反射波がDUT100に達する動作(及び、DUT100から放射されて逆の経路で試験用アンテナ6bに到達する動作)が行われるときに、試験用アンテナ6bから放射される直接波(球面波)が、ミラー9により反射されてDUT100に達する反射波(平面波)に干渉することが考えられる。このとき、ミラー反射型の試験用アンテナ6bで受信された信号に基づくDUT100のRRM特性については、上述した干渉の度合いに応じて周波数特性の低下を来すことがある。
これに対し、本実施形態に係る試験装置1のアンテナ保持部610は、図11(a)に示すような遮蔽板612を設けた構成を有するため、ミラー反射型の試験用アンテナ6bから放射される直接波(球面波)が遮蔽板612によって遮蔽され、DUT100に到達することはない。これにより、本実施形態に係る試験装置1のアンテナ保持部610では、試験用アンテナ6bから放射される直接波(球面波)が、ミラー9により反射されてDUT100に達する反射波(平面波)に干渉することがなくなり、DUT100のRRM特性についての周波数特性を向上させることができる。
次に、遮蔽機構613の電波遮断機能について図12を参照して説明する。図12において、(a)は本実施形態に係る試験装置1の試験用アンテナ6bとリフレクタ7間での遮蔽板2(遮蔽板613)による電波遮蔽機能を説明するための模式図であり、(b)は遮蔽板2を有しない参考例の装置(例えば、従来装置)における同区間での電波干渉状況を説明するための模式図である。
図12(b)に示すように、遮蔽板2を有しない参考例の装置のアンテナ保持機構の構成によれば、リフレクタ反射型の試験用アンテナ6aから放射され、リフレクタ7により反射されてその反射波(平面波)がDUT100に達する動作(及び、DUT100から放射されて逆の経路で試験用アンテナ6aに到達する動作)と、ミラー反射型の試験用アンテナ6bから放射された電波(球面波)がミラー9により反射されてその反射波がDFF希望派としてDUT100に達する動作(及び、DUT100から放射されて逆の経路で試験用アンテナ6bに到達する動作)と、が行われるとき、ミラー反射型の試験用アンテナ6bから放射された電波(直接波)が、リフレクタ7による上記反射波に干渉する事態が発生することが考えられる。この場合、干渉の度合いに応じて、試験用アンテナ6aで受信された信号に基づくDUT100のRF特性について周波数特性の低下を招来することとなる。
これに対し、本実施形態に係る試験装置1のアンテナ保持部610は、図12(a)に示すような遮蔽板613(遮蔽板2)を設けた構成を有するため、ミラー反射型の試験用アンテナ6bから放射される直接波(球面波)がリフレクタ7との間に設けた遮蔽板613によって遮蔽され、DUT100に到達することはない。これにより、本実施形態に係る試験装置1のアンテナ保持部610では、試験用アンテナ6bから放射される直接波(球面波)が、リフレクタ7により反射されてDUT100に達する反射波(平面波)に干渉することがなくなり、DUT100のRF特性についての周波数特性を向上させることができる。
(ミラーの一部切欠き構造)
次に、アンテナ保持部610に保持されるミラー9の構成について、図13を参照してさらに詳しく説明する。
本実施形態に係る試験装置1では、DUT100のRF特性の測定をさらに精度よく行うために、リフレクタ7の一部を隠すように突出する領域ができるだけ小さくなるように、アンテナ保持部610が保持するミラー9の形状を工夫している。
図13は、本実施形態に係る試験装置1のアンテナ保持部610により保持されるミラー9の構成を示す正面図である。図13に示すように、本実施形態において、アンテナ保持部610により保持されるミラー9は、平面の基本の形状が矩形形状であり、その矩形形状の4つの角のうち、上述のリフレクタ7の一部を覆い隠すように突出する領域に対応する角について、一部分を切り欠いた切欠き部9aを設けた構成を有している。本発明はこれに限らず、DUT100のRF特性の測定内容に応じて、矩形形状のミラー9と、切欠き部9aを設けたミラー9を適宜使い分けることが可能である。
上述した切欠き部9aを有するミラー9の構成によれば、電波暗箱50の内部構造にあって、アンテナ保持部610の支柱61から延びるミラー取付部62の端部のさらに先で、リフレクタ7の一部を覆う隠す領域のサイズを小さくすることができる。すなわち、ミラー9に設けた切欠き部9aは、正面から見た場合のリフレクタ7の一部を覆い隠す領域を小さくする(覆い隠されていない領域を大きくする)。これにより、DUT100でのリフレクタ7からの反射波の受信状況の変動を小さく抑えることができ、試験用アンテナ6aを用いたDUT100のRF特性の測定結果を向上させることが可能となる。
図13においては、一例として、矩形形状の1つの角を三角形上に切り欠いた切欠き部9aを有するミラー9の構造を挙げているが、本発明はこれに限らず、ミラー9の基本形状、切欠き部9aの形状等については種々の変形、或いは応用が可能である。いずれの構成においても、切欠き部9aを有するミラー9を採用することで、DUT100によるリフレクタ7からの反射波の受信状況の変動を小さく抑え、DUT100のRF特性の測定結果を向上させ得る、という作用効果が期待できる。
次に、本実施形態に係る試験装置1の測定装置2を構成する統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、及び信号処理部40について図2~図4を参照して説明する。
(統合制御装置)
統合制御装置10は、以下に説明するように、NRシステムシミュレータ20、姿勢可変機構56、及びアンテナ可動機構60を統括的に制御するものである。このために、統合制御装置10は、例えばイーサネット(登録商標)等のネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20、姿勢可変機構56、及びアンテナ可動機構60と相互に通信可能に接続されている。
図3は、統合制御装置10の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、統合制御装置10は、制御部11、操作部12、及び表示部13を有している。制御部11は、例えば、コンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、例えば、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)11aと、ROM(Read Only Memory)11bと、RAM(Random Access Memory)11cと、外部インタフェース(I/F)部11dと、図示しないSSD(Solid State Drive)やハードディスク装置等の不揮発性の記憶媒体と、各種入出力ポートとを有する。
CPU11aは、NRシステムシミュレータ20等を対象とする統括的な制御を行うようになっている。ROM11bは、CPU11aを立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラム及び制御用のパラメータ等を記憶するようになっている。RAM11cは、CPU11aが動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するようになっている。外部インタフェース(I/F)部11dは、所定の信号が入力される入力インタフェース機能と所定の信号を出力する出力インタフェース機能を有している。
外部I/F部11dは、ネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20に対して通信可能に接続されている。また、外部I/F部11dは、電波暗箱50における姿勢可変機構56やアンテナ可動機構60ともネットワーク19を介して接続されている。入出力ポートには、操作部12及び表示部13が接続されている。操作部12は、コマンド等の各種情報を入力するための機能部であり、表示部13は、上記各種情報の入力画面や測定結果等の各種情報を表示する機能部である。
上述したコンピュータ装置は、CPU11aがRAM11cを作業領域としてROM11bに格納されたプログラムを実行することにより制御部11として機能する。制御部11は、図3に示すように、呼接続制御部14、信号送受信制御部15、DUT姿勢制御部17、及びアンテナ位置制御部18を有している。呼接続制御部14、信号送受信制御部15、DUT姿勢制御部17、及びアンテナ位置制御部18も、CPU11aがRAM11cの作業領域でROM11bに格納された所定のプログラムを実行することにより実現されるものである。
呼接続制御部14は、試験用アンテナ6を駆動してDUT100との間で制御信号(無線信号)を送受信させることにより、NRシステムシミュレータ20とDUT100との間に呼(無線信号を送受信可能な状態)を確立する制御を行う。
信号送受信制御部15は、操作部12におけるユーザ操作を監視し、ユーザによりDUT100の送信特性及び受信特性の測定に係る所定の測定開始操作が行われたことを契機に、呼接続制御部14での呼接続制御を経て、NRシステムシミュレータ20に対して信号送信指令を送信する。更に、信号送受信制御部15は、NRシステムシミュレータ20に対して、試験用アンテナ6を介して試験信号を送信させる制御を行うとともに、NRシステムシミュレータ20に信号受信指令を送信し、試験用アンテナ6を介して被測定信号を受信させる制御を行う。
また、信号送受信制御部15は、2つの試験用アンテナ6を用いて行うRRM特性等の送受信特性の試験では、到来角度の設定を行うようになっている。具体的には、所定の複数の到来角度(例えば、30°、60°、90°、120°、150°)のうち1つの到来角度を選択して測定条件として設定(RAM11c等に記憶)する。到来角度はユーザが選択してもよいし、制御部11等が自動で選択するようにしてもよい。
アンテナ位置制御部18は、設定された到来角度に基づいて、試験用アンテナ6bの位置を制御する。図5及び図6に示すように、例えば、設定した到来角度が30°の場合、試験用アンテナ6bを位置P11に移動させ、ミラー9を位置P1に移動させるように制御する。同様に、設定した到来角度が60°、90°、120°、150°の場合、試験用アンテナ6bをそれぞれ位置P12、P13、P14、P15に移動させ、ミラー9をそれぞれ位置P2、P3、P4、P5に移動させるように制御する。このため、例えば、ROM11bには、あらかじめ、到来角度と試験用アンテナ6bの位置との対応関係を示す到来角度-アンテナ位置対応テーブル18aが記憶されている。到来角度-アンテナ位置対応テーブル18aは、制御実行時にRAM11cの作業領域に展開されて使用される。なお、到来角度の設定や、試験用アンテナ6bの位置の制御は、NRシステムシミュレータ20の制御部22が行うようにしてもよい。
なお、アンテナ位置制御部18は、試験用アンテナ6bの位置を、到来角度が30°、60°、90°、120°、150°のそれぞれに対応する位置となるように制御することに限らず、任意の到来角度の位置となるように制御できるようになっている。この制御は、例えば、アンテナ位置制御部18が、位置検出セン79の検知出力に基づいて可動台77の位置を認識しながら、可動台77の位置がユーザによって設定されている任意の到来角度の位置となるように駆動源82を正逆いずれかの方向に回転駆動することにより実現可能である。
本実施形態に係る試験装置1では、可動台77を移動させる制御によって、可動台77に載置されているアンテナ保持部610の試験用アンテナ6b、及びミラー9を、所定の距離を維持したまま上述した到来角度、例えば、30°から150°の範囲内で任意の到来角度の位置へと移動させることができる。
可動台77には、アンテナ保持部610とともにコンバータ収容部620が載置されている(図8参照)。これにより、本実施形態に係る試験装置1では、アンテナ保持部610に保持される試験用アンテナ6b、及びミラー9の移動に合わせて、コンバータ収容部620内に収容されているコンバータ45、46も一緒に(試験用アンテナ6b、ミラー9に対して一定の位置関係を保った状態で)移動させることができる。
アンテナ保持部610とコンバータ収容部620との間においては、試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ(6bH)、及び垂直偏波アンテナ(6bV)と、コンバータ45、46とが、それぞれ、ケーブル47a、47b(図8参照)により電気的に接続されている。試験用アンテナ6bとコンバータ45、46とが一緒に移動する本実施形態に係るアンテナ可動機構60の構成によれば、試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ6bHとコンバータ45を接続するケーブル47a、試験用アンテナ6bの垂直偏波アンテナ6bVとコンバータ46を接続するケーブル47bは試験用アンテナ6b、及びミラー9の移動に際しても何等動くことがなく、当該移動に合わせて屈曲やねじれ等が発生することがない。
さらにコンバータ45、46は、ケーブル支持案内部704に収容されるケーブル群を介してNRシステムシミュレータ20と電気的に接続されている。このため、本実施形態に係る試験装置1は、アンテナ保持部610とコンバータ収容部620を有する移動対象保持部600の方向D1への移動に際し、上述したケーブル群がケーブル支持案内部704によって保護されて当該移動に応じた屈曲やねじれ等の発生を免れる。このようなケーブル支持案内部704を有するアンテナ可動機構60の構成によれば、移動対象保持部600の方向D1への移動に際し、試験用アンテナ6bとNRシステムシミュレータ20とを電気的に接続する経路でのケーブル群の断線等の可能性を大幅に低減できる。
再び図3に戻って説明を続ける。DUT姿勢制御部17は、姿勢可変機構56に保持されているDUT100の測定時の姿勢を制御するものである。この制御を実現するために、例えば、ROM11bには、あらかじめ、DUT姿勢制御テーブル17aが記憶されている。DUT姿勢制御テーブル17aは、例えば、駆動部56aとしてステッピングモータを採用している場合には、該ステッピングモータの回転駆動を決定する駆動パルス数(運転パルス数)を制御データとして格納している。
DUT姿勢制御部17は、DUT姿勢制御テーブル17aをRAM11cの作業領域に展開し、該DUT姿勢制御テーブル17aに基づき、上述したように、アンテナ110が3次元のあらゆる方向に順次向くようにDUT100が姿勢変化するよう姿勢可変機構56を駆動制御する。
(NRシステムシミュレータ)
図4に示すように、本実施形態に係る試験装置1のNRシステムシミュレータ20は、信号測定部21、制御部22、操作部23、及び表示部24を有している。信号測定部21は、信号発生部21a、デジタル/アナログ変換器(DAC)21b、変調部21c、RF部21dの送信部21eにより構成される信号発生機能部と、RF部21dの受信部21f、アナログ/デジタル変換器(ADC)21g、解析処理部21hにより構成される信号解析機能部とを有している。なお、信号測定部21は、使用する2つの試験用アンテナ6a、6bに対応できるように、2セット設けるようにしてもよい。
信号測定部21の信号発生機能部において、信号発生部21aは、基準波形を有する波形データ、具体的には、例えば、I成分ベースバンド信号と、その直交成分信号であるQ成分ベースバンド信号を生成する。DAC21bは、信号発生部21aから出力された基準波形を有する波形データ(I成分ベースバンド信号及びQ成分ベースバンド信号)をデジタル信号からアナログ信号に変換して変調部21cに出力する。変調部21cは、I成分ベースバンド信号と、Q成分ベースバンド信号とのそれぞれに対してローカル信号をミキシングし、更に両者を合成してデジタル変調信号を出力する変調処理を行う。RF部21dは、変調部21cから出力されたデジタル変調信号から各通信規格の周波数に対応した試験信号を生成し、生成した試験信号を送信部21eにより信号処理部40に出力する。
信号処理部40は、使用する一の試験用アンテナ6aとの間で送受信する信号の周波数変換等の信号処理を行う第1信号処理部40aと、使用する他の試験用アンテナ6bとの間で送受信する信号の周波数変換等の信号処理を行う第2信号処理部40bと、を備えている。第1信号処理部40aは、使用する一の試験用アンテナ6aに送信する試験信号に信号処理を施して試験用アンテナ6aに出力する。第2信号処理部40bは、使用する他の試験用アンテナ6bに送信する試験信号に信号処理を施して試験用アンテナ6bに出力する。
また、信号測定部21の信号解析機能部において、RF部21dは、上記試験信号をアンテナ110により受信したDUT100から送信された被測定信号を、信号処理部40を経由して受信部21fで受信したうえで、該被測定信号をローカル信号とミキシングすることで中間周波数帯の信号(IF信号)に変換する。ADC21gは、RF部21dの受信部21fでIF信号に変換された被測定信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換して解析処理部21hに出力する。
解析処理部21hは、ADC21gが出力するデジタル信号である被測定信号を、デジタル処理によって、I成分ベースバンド信号とQ成分ベースバンド信号とにそれぞれ対応する波形データを生成したうえで、該波形データに基づいてI成分ベースバンド信号及びQ成分ベースバンド信号を解析する処理を行う。解析処理部21hは、DUT100に対する送信特性(RF特性)の測定において、例えば、等価等方放射電力(Equivalent Isotropically Radiated Power:EIRP)、全放射電力(Total Radiated Power:TRP)、スプリアス放射、変調精度(EVM)、送信パワー、コンスタレーション、スペクトラムなどを測定可能である。また、解析処理部21hは、DUT100に対する受信特性(RF特性)の測定において、例えば、受信感度、ビット誤り率(BER)、パケット誤り率(PER)などを測定可能である。ここで、EIRPは、DUT100のアンテナ110の主ビーム方向の無線信号強度である。また、TRPは、DUT100のアンテナ110から空間に放射される電力の合計値である。
解析処理部21hは、DUT100のRRM特性について、例えば、一方の試験用アンテナからもう一方の試験用アンテナへのハンドオーバ動作が正常に行われるか否か等を解析することもできるようになっている。
制御部22は、上述した統合制御装置10の制御部11と同様、例えば、CPU、RAM、ROM、各種入出力インタフェースを含むコンピュータ装置によって構成される。CPUは、信号発生機能部、信号解析機能部、操作部23及び表示部24の各機能を実現するための所定の情報処理や制御を行う。
操作部23、表示部24は、上記コンピュータ装置の入出力インタフェースに接続されている。操作部23は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部24は、上記各種情報の入力画面や測定結果など、各種情報を表示する機能部である。
本実施形態では、統合制御装置10とNRシステムシミュレータ20とを別装置としているが、1つの装置として構成してもよい。この場合には、統合制御装置10の制御部11とNRシステムシミュレータ20の制御部22とを統合して1つのコンピュータ装置により実現してもよい。
(信号処理部)
次に、信号処理部40について説明する。
信号処理部40は、NRシステムシミュレータ20と試験用アンテナ6の間に設けられ、使用する一の試験用アンテナ6aとの間で送受信する信号の周波数変換等の信号処理を行う第1信号処理部40aと、使用する他の試験用アンテナ6bとの間で送受信する信号の周波数変換等の信号処理を行う第2信号処理部40bと、を備えている。
第1信号処理部40aは、アップコンバータ、ダウンコンバータ、増幅器、周波数フィルタ等を備え、使用する一の試験用アンテナ6aに送信する試験信号に対して、周波数変換(アップコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を施して試験用アンテナ6aに出力する。また、第1信号処理部40aは、使用する一の試験用アンテナ6aから入力される被測定信号に対して、周波数変換(ダウンコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を施して信号測定部21に出力するようになっている。
第2信号処理部40bは、アップコンバータ、ダウンコンバータ、増幅器、周波数フィルタ等を備え、使用する他の試験用アンテナ6bに送信する試験信号に対して、周波数変換(アップコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を施して試験用アンテナ6bに出力する。また、第2信号処理部40bは、使用する他の試験用アンテナ6bから入力される被測定信号に対して、周波数変換(ダウンコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を施して信号測定部21に出力するようになっている。
上述したアップコンバート、ダウンコンバートは、試験用アンテナ6bを構成する水平偏波アンテナ6bH又は垂直偏波アンテナ6bVに送信する信号、平偏波アンテナ6bH又は垂直偏波アンテナ6bVから入力する信号毎にそれぞれ実施される。このため、図10に示すコンバータ45、46は、それぞれ、例えば、水平偏波アンテナ6bH、又は垂直偏波アンテナ6bVに送信する信号を高い周波数に変換するアップコンバータ、水平偏波アンテナ6bH、又は垂直偏波アンテナ6bVから入力する信号を低い周波数に変換するダウンコンバータとして搭載する構成としてもよい。
(試験方法)
次に、本実施形態に係る試験装置1を用いて行う試験方法について、図9のフローチャートを参照して説明する。以下では、2つの試験用アンテナを用いて行う試験(例えばRRM特性等の送受信特性の測定)について説明するが、これは試験方法の一例であり、試験の種類により具体的な試験方法が異なるのは勿論である。
まず、ユーザは、電波暗箱50の内部空間51内に設けられた姿勢可変機構56のDUT載置部56dに対して試験対象のDUT100をセットする(ステップS1)。
次いで、ユーザは、統合制御装置10の操作部12を用いて、DUT100の送信特性及び受信特性についての測定の開始を制御部11に指示する測定開始操作を行う。この測定開始操作は、NRシステムシミュレータ20の操作部23により行うようにしてもよい。
制御部11は、予め定められた到来角度のうち1つを設定する(ステップS2)。例えば、予め定められた到来角度が30°、60°、90°、120°、150°の場合、制御部11は、そのうちの1つの到来角度(例えば30°)を選択し、測定すべき到来角度として設定(例えばRAM11cに記憶)する。到来角度の設定はユーザが行ってもよい。
次いで、制御部11は、ステップS2で設定された到来角度となるように、試験用アンテナ6bの位置を移動させる(ステップS3)。例えば、設定された到来角度が30°の場合、試験用アンテナ6bを位置P11に、ミラー9を位置P1に移動させ、到来角度が60°の場合、試験用アンテナ6bを位置P12に、ミラー9を位置P2に移動させ、到来角度が90°の場合、試験用アンテナ6bを位置P13に、ミラー9を位置P3に移動させ、到来角度が120°の場合、試験用アンテナ6bを位置P14に、ミラー9を位置P4に移動させ、到来角度が150°の場合、試験用アンテナ6bを位置P15に、ミラー9を位置P5に移動させるように制御する。
ステップS3での試験用アンテナ6b、及びミラー9の移動は、アンテナ位置制御部18により、アンテナ保持部610、コンバータ収容部620を載置した可動台77が目的の位置に達するまで駆動源82を回転駆動することにより行うことができる。これにより、ステップS3においては、第2の試験用アンテナ6bの位置を移動させることで、第2の試験用アンテナ6bに対してRFケーブル47a、47bにより接続されるコンバータ45、46を第2の試験用アンテナ6bと一定の位置関係を保った状態で移動させることができる。
引き続き、制御部11の呼接続制御部14は、試験用アンテナ6を使用し、DUT100との間で制御信号(無線信号)を送受信することにより呼接続制御を実施する(ステップS4)。具体的には、NRシステムシミュレータ20は、DUT100に対して試験用アンテナ6を介して所定周波数を有する制御信号(呼接続要求信号)を無線送信する。一方、該呼接続要求信号を受信したDUT100は、接続要求された周波数を設定したうえで制御信号(呼接続応答信号)を返信する。NRシステムシミュレータ20は、この呼接続応答信号を受信し正常に応答が行われたことを確認する。これら一連の処理が呼接続制御である。この呼接続制御により、NRシステムシミュレータ20とDUT100との間に、試験用アンテナ6を介して所定周波数の無線信号を送受信可能な状態が確立される。
なお、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ6を介して送られてくる無線信号をDUT100により受信する処理は、ダウンリンク(DL)処理と称される。逆に、DUT100により試験用アンテナ6を介してNRシステムシミュレータ20に対して無線信号を送信する処理は、アップリンク(UL)処理と称される。試験用アンテナ6は、リンク(呼)を確立する処理、ならびにリンク確立後のダウンリンク(DL)及びアップリンク(UL)の処理を実行するために用いられるものであり、リンクアンテナの機能を兼ねている。
ステップS4での呼接続の確立後、統合制御装置10のDUT姿勢制御部17は、クワイエットゾーン内に配置されたDUT100の姿勢を姿勢可変機構56により所定の姿勢に制御する(ステップS5)。
姿勢可変機構56によりDUT100が所定の姿勢に制御された後、統合制御装置10の信号送受信制御部15は、NRシステムシミュレータ20に対して信号送信指令を送信する。NRシステムシミュレータ20は、この信号送信指令に基づき、選択された試験用アンテナ6を介してDUT100に試験信号を送信する(ステップS6)。
NRシステムシミュレータ20による試験信号送信制御は、以下のように実施される。NRシステムシミュレータ20(図4参照)において、信号発生部21aは、上記信号送信指令を受けた制御部22の制御下で、試験信号を生成するための信号を発生する。次いで、DAC21bは、信号発生部により発生された信号をデジタル/アナログ変換処理する。次いで、変調部21cは、デジタル/アナログ変換により得られたアナログ信号に変調処理を行う。次いで、RF部21dは、変調信号から各通信規格の周波数に対応した試験信号を生成し、送信部21eは、この試験信号(DLデータ)を信号処理部40に送る。
信号処理部40は、電波暗箱50内又は外に設けられており、周波数変換(アップコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を行い、試験用アンテナ6に送り、試験用アンテナ6が該信号をDUT100に向けて出力する。なお、2つの試験用アンテナの信号処理を行うために、信号処理部40では複数の信号の処理を並行して行うことができる。
なお、信号送受信制御部15は、ステップS6で試験信号送信の制御を開始した後、DUT100の送信特性及び受信特性の測定が終了するまでの間、試験信号を適宜のタイミングで送信するよう制御する。
一方、DUT100は、試験用アンテナ6を介して送られてくる試験信号(DLデータ)を、ステップS5による上記姿勢制御に基づいて順次変化する異なる姿勢の状態でアンテナ110により受信するとともに、該試験信号に対する応答信号である被測定信号を送信する。
ステップS6で試験信号の送信を開始した後、引き続き、信号送受信制御部15による制御下で受信処理が行われる(ステップS7)。この受信処理では、試験用アンテナ6が、上記試験信号を受信したDUT100から送信される被測定信号を受信し、信号処理部40に出力する。信号処理部40は、周波数変換(ダウンコンバート)、増幅、周波数選択等の信号処理を行い、NRシステムシミュレータ20に出力する。
NRシステムシミュレータ20は、信号処理部40により周波数変換された被測定信号を測定する測定処理を実行する(ステップS8)。
具体的には、NRシステムシミュレータ20のRF部21dの受信部21fは、信号処理部40により信号処理された被測定信号を入力する。RF部21dは、制御部22の制御下で、受信部21fに入力された被測定信号をより周波数が低いIF信号に変換する。次いで、ADC21gは、制御部22の制御下で、IF信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して解析処理部21hに出力する。解析処理部21hは、I成分ベースバンド信号とQ成分ベースバンド信号とにそれぞれ対応する波形データを生成する。更に、解析処理部21hは、制御部22の制御下で、生成された波形データに基づいて被測定信号を解析する。なお、2つの試験用アンテナの信号処理を行うために、信号処理部40は複数の信号の処理を並列で行うことができる。
より具体的には、NRシステムシミュレータ20において、解析処理部21hは、制御部22の制御下で、被測定信号の解析結果に基づいてDUT100の送信特性及び受信特性を測定する。
例えば、DUT100の送信特性(RF特性)については次のように行う。まず、NRシステムシミュレータ20が、制御部22の制御下で、試験信号としてアップリンク信号送信のリクエストフレームを送信する。DUT100は、該アップリンク信号送信のリクエストフレームに応答してアップリンク信号フレームを被測定信号としてNRシステムシミュレータ20に送信する。解析処理部21hは、このアップリンク信号フレームに基づいてDUT100の送信特性を評価する処理を行う。
また、DUT100の受信特性(RF特性)については例えば次のように行う。解析処理部21hは、制御部22の制御下で、NRシステムシミュレータ20から試験信号として送信した測定用フレームの送信回数と、測定用フレームに対してDUT100から被測定信号として送信されるACK及びNACKの受信回数の割合をエラー率(PER)として算出する。
また、DUT100のRRM特性については、例えば解析処理部21hが、制御部22の制御下で、一の試験用アンテナから他の試験用アンテナへのハンドオーバ動作が正常に行われるか否か等をDUT100の姿勢を変えて試験するようにしてもよい。
ステップS8において、解析処理部21hは、制御部22の制御下で、DUT100の送信特性及び受信特性の測定結果を図示しないRAM等の記憶領域に記憶する。この測定結果は、表示部24又は表示部13に表示するようにしてもよい。
次いで、統合制御装置10の制御部11は、所望の全ての姿勢に関してDUT100の送信特性及び受信特性の測定が終了したか否かを判定する(ステップS9)。ここで、測定が終了していないと判定された場合(ステップS9でNO)、ステップS5に戻って処理を続行する。
制御部11は、全ての姿勢について測定が終了していると判定された場合(ステップS9でYES)、全ての到来角度について測定が終了しているか否かを判定する(ステップS10)。
制御部11は、全ての到来角度について測定が終了していないと判定された場合(ステップS10でNO)、ステップS2に戻って処理を続行する。制御部11は、全ての到来角度について測定が終了していると判定された場合(ステップS10でYES)、試験を終了する。
(作用・効果)
以上述べたように、本実施形態に係る試験装置1は、アンテナ110を有するDUT100の送信特性又は受信特性を測定する試験装置1であって、周囲の電波環境に影響されない内部空間51を有する電波暗箱50と、内部空間51におけるクワイエットゾーン(QZ)内に配置されたDUT100の姿勢を順次変化させる姿勢可変機構56と、内部空間51に収容され、DUT100の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号をアンテナ110との間で送信又は受信する試験用アンテナ6a及び試験用アンテナ6bと、試験用アンテナ6aが放射した無線信号を反射して平面波の無線信号に変換するリフレクタ7と、試験用アンテナ6aからの電波到来方向を基準に遠方界に設置されたDUT100に対して複数の到来角度で無線信号を送信又は受信することができるようにミラー反射型の試験用アンテナ6bの位置を移動させるとともに、第2の試験用アンテナ6bに対してRFケーブル47a、47bにより接続されるコンバータ45、46を第2の試験用アンテナ6bと一定の位置関係を保った状態で移動させるアンテナ可動機構60と、を備えて構成されている。
本実施形態に係る試験装置1は、試験用アンテナ6bの位置を移動させるとともに、試験用アンテナ6bに対してRFケーブル47a、47bにより接続されるコンバータ45、46を試験用アンテナ6bと一定の位置関係を保った状態で移動させるアンテナ可動機構60を備えている。この構成により、本実施形態に係る試験装置1では、DUT100のRRM特性等の送受信特性についての遠方界測定を行う場合に、遠方界測定用の試験用アンテナ6bを、一緒に移動するコンバータ45、46と短いRFケーブル47a、47bで接続し、RFケーブル47a、47bの屈曲、伸長を発生させずに移動させることができる。RFケーブル47a、47bの屈曲、伸長の繰り返しが生じないため、RFケーブル47a、47bの屈曲の発生により周波数特性が変化することはなく、また、RFケーブル47a、47bに使用している金属が金属疲労を起こし、外導体破損による周波数特性の悪化、シールド性悪化や内導体の断線が発生するということもなくなる。さらには、試験用アンテナ6bとコンバータ45、46を接続するRFケーブル47a、47bのケーブル長を、試験用アンテナ6bと固定配置されたコンバータとを接続するために長いRFケーブルを用いていた従来の構成に比べて大幅に短くすることができ、従来のRFケーブルの可動域に相当する部分の有効利用が可能になる。
また、本実施形態に係る試験装置1において、アンテナ可動機構60は、試験用アンテナ6bを保持するアンテナ保持部610と、コンバータ45、46を収容するコンバータ収容部620と、アンテナ保持部610及びコンバータ収容部620を円上で移動させる移動機構700と、を備えた構成を有する。
この構成により、本実施形態に係る試験装置1は、アンテナ移動機構60によりアンテナ保持部610及びコンバータ収容部620を円上で移動させることで、アンテナ保持部610により保持される試験用アンテナ6bと、コンバータ収容部620に収容されるコンバータ45、46とを、常に、一定の位置関係を保った状態で移動させることができ、移動のための制御も容易に行うことができる。
また、本実施形態に係る試験装置1において、試験用アンテナ6bは、水平偏波アンテナ6bHと垂直偏波アンテナ6bVと、を備え、コンバータ収容部620は、水平偏波と垂直偏波毎に個別に設けられ、それぞれ、アップコンバータ、又はダウンコンバータ、若しくはその両方の機能を有するコンバータ45、46を収容する構成である。
この構成により、本実施形態に係る試験装置1は、試験用アンテナ6bの水平偏波アンテナ6bHと垂直偏波アンテナ6bVと、にそれぞれのRFケーブル47a、47bによって接続されるコンバータ45、46を、水平偏波アンテナ6bH及び垂直偏波アンテナ6bVとともに移動させることができ、移動に際して、RFケーブル47a、47bの屈曲、伸長が発生することもない。
また、本実施形態に係る試験装置1は、試験用アンテナ6bから放射された無線信号を反射してアンテナ110に送るとともに、DUT100から放射された無線信号を反射して試験用アンテナ6bに送るミラー9をさらに備え、アンテナ保持部610は、試験用アンテナ6bとミラー9を長手方向に間隔をおいて保持する構成である。
この構成により、本実施形態に係る試験装置1は、試験用アンテナ6bとアンテナ110との間で送受信される無線信号の経路をミラー9により変えることができ、電波暗箱50の限られた内部空間51においても遠方界測定に必要なアンテナ間距離を確保することができる。
また、本実施形態に係る試験装置1において、アンテナ保持部610は、試験用アンテナ6b及びミラー9を保持する柱状の支柱61と、支柱61の側を除く周囲の側から試験用アンテナ6bを囲むように設けられる電磁波遮蔽機構611と、をさらに有し、電磁波遮蔽機構611は、試験用アンテナ6bとクワイエットゾーンとの間に設けられる第1の遮蔽板612と、試験用アンテナ6bとリフレクタ7との間に設けられる第2の遮蔽板613と、を有する構成である。
この構成により、本実施形態に係る試験装置1は、試験用アンテナ6bから放射される直接波(球面波)をクワイエットゾーンとの間に設けた第1の遮蔽板612により遮蔽することができる。これにより、試験用アンテナ6bから放射されミラー9により反射されてDUT100に達する反射波(平面波)に対する直接波の干渉を防ぎ、DUT100のRRM特性についての周波数特性を向上させることができる。さらに、本実施形態に係る試験装置1では、試験用アンテナ6bから放射される直接波(球面波)をリフレクタ7との間に設けた第2の遮蔽板613により遮蔽することができる。これにより、試験用アンテナ6bから放射される直接波(球面波)が、試験用アンテナ6aから放射されリフレクタ7により反射されてDUT100に達する反射波(平面波)に干渉することを防ぎ、DUT100のRF特性についての周波数特性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る試験方法は、上記いずれかに記載の試験装置1を用いる試験方法であって、複数の到来角度のうち一の到来角度を選択するステップ(S2)と、選択された到来角度となるように、アンテナ可動機構60により、試験用アンテナ6bの位置を移動させるとともに、第2の試験用アンテナ6bに対してRFケーブル47a、47bにより接続されるコンバータ45、46を第2の試験用アンテナ6bと一定の位置関係を保った状態で移動させるステップ(S3)と、クワイエットゾーン内に配置されたDUT100の姿勢を順次変化させるステップ(S5)と、DUT100の姿勢が変化されるごとに、試験用アンテナ6a及び試験用アンテナ6bを用いてDUT100の送信特性又は受信特性の測定を行うステップ(S8)と、を含むことを特徴とする。
上述のように、本実施形態に係る試験方法に用いる試験装置1は、試験用アンテナ6bの位置を移動させるとともに、第2の試験用アンテナ6bに対してRFケーブル47a、47bにより接続されるコンバータ45、46を第2の試験用アンテナ6bと一定の位置関係を保った状態で移動させるアンテナ可動機構60を備えている。そして、本試験方法は、選択された到来角度となるように、アンテナ可動機構60により、試験用アンテナ6bの位置を移動させるとともに、第2の試験用アンテナ6bに対してRFケーブル47a、47bにより接続されるコンバータ45、46を第2の試験用アンテナ6bと一定の位置関係を保った状態で移動させるステップ(S3)を含んでいる。
これにより、本試験方法は、DUT100のRRM特性等の送受信特性についての遠方界測定を行う場合に、遠方界測定用の試験用アンテナ6bを、一緒に移動するコンバータ45、46と短いRFケーブル47a、47bで接続し、RFケーブル47a、47bの屈曲、伸長を発生させずに移動させることができる。RFケーブル47a、47bの屈曲、伸長の繰り返しが生じないため、RFケーブル47a、47bの屈曲の発生により周波数特性が変化することはなく、また、RFケーブル47a、47bに使用している金属が金属疲労を起こし、外導体破損による周波数特性の悪化、シールド性悪化や内導体の断線が発生するということもなくなる。さらには、試験用アンテナ6bとコンバータ45、46を接続するRFケーブル47a、47bのケーブル長を、試験用アンテナ6bと固定配置されたコンバータとを接続するために長いRFケーブルを用いていた従来の構成に比べて大幅に短くすることができ、従来のRFケーブルの可動域に相当する部分の有効利用が可能になる。