JP7465444B2 - 熱転写受像シート用支持体、熱転写受像シート、熱転写受像シートの製造方法、熱転写受像シート用支持体の製造方法及びシート貼合装置 - Google Patents

熱転写受像シート用支持体、熱転写受像シート、熱転写受像シートの製造方法、熱転写受像シート用支持体の製造方法及びシート貼合装置 Download PDF

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Description

本開示は、受容層を支持することで熱転写受像シートを構成する熱転写受像シート用支持体及びそれを備える熱転写受像シートに関する。また、本開示は、熱転写受像シートの製造方法、熱転写受像シート用支持体の製造方法及びそれらに用いられ得るシート貼合装置に関する。
熱転写を利用した画像形成方法には、昇華型熱転写方式と溶融型熱転写方式とがある。このうちの昇華型熱転写方式では、基材上に昇華性染料を含有する色材層が設けられた熱転写シートと、支持体上に受容層が設けられた熱転写受像シートと、を互いに重ね合わせ、熱転写受像シートの受容層に熱転写シートの色材層が含有する昇華性染料を移行させることで、熱転写画像を形成する。
熱転写受像シートの支持体は一般に、紙基材、接着層及びフィルムをこの順に備え、フィルム上に受容層を支持している。支持体は、例えば一対のローラの間に紙基材及びフィルムを通しつつ、紙基材とフィルムの間に接着層を形成する樹脂を流し込むことにより、紙基材とフィルムとを接着層を介して貼り合わせることで製造し得る(例えば特許文献1)。
特開2015-193252号公報
上述したように紙基材とフィルムとを貼り合わせる際に、これらを強い力で挟み込むと、紙基材の表面の凹凸に接着層が過度に追従し、これに起因してフィルムの表面の平滑性が大きく損なわれる場合がある。
そして、上述のように平滑性が損なわれたフィルム上に受容層を設けた熱転写受像シートを用いて熱転写画像を形成する際には、受容層がフィルムの表面の凹凸に応じて変形しているか又は変形し易くなっていることで、熱転写画像の表面の地合が良好でなくなる場合がある。そのため、従来、高品質な画像が求められる場合には、表面が平滑なコート紙等が紙基材として用いられていた。
しかしながら、コート紙は、コート紙よりも平滑性が一般に低い上質紙等と比べて高額なため、コート紙等を用いて支持体を形成する場合には製造コストが嵩むという問題がある。そのため、上質紙等を用いて作製した熱転写受像シートにより高品質な熱転写画像を形成可能となれば、製造上及び画像提供上におけるメリットは大きい。
また、熱転写画像の表面の地合が良好でなくなる場合、一般には品質が良好でないと判断されるが、あえて地合ムラのある画像を形成することが望まれる場合や、部分的に地合を変化させることが望まれる場合も考えられる。このような地合の調整を選択的に行うことが可能な熱転写受像シートを実現すれば、新たな価値を提供することが可能となる。
本開示は上記実情を考慮してなされたものであって、その目的は、製造コストを抑制しつつ高品質な熱転写画像を形成できるとともに、画像表面の状態を選択的に変化させることにより多彩な表現で熱転写画像を形成できる熱転写受像シートを提供することである。
本開示にかかる熱転写受像シート用支持体は、基材と、樹脂層と、フィルムとをこの順に積層する熱転写受像シート用支持体であって、前記基材と前記樹脂層との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかに、一つ又は複数の空隙を有し、前記基材、前記樹脂層及び前記フィルムの積層方向における前記空隙の高さは、0.5μm以上15μm以下となる熱転写受像シート用支持体、である。
前記空隙は、前記樹脂層から前記基材に向かう方向へ凹むように形成されてもよい。
前記空隙は、前記積層方向を含む面で前記基材、前記樹脂層及び前記フィルムを切断した際の第1の断面において、0.5μm以上15μm以下の高さを有してもよい。
前記空隙は、1μm以上1000μm以下の幅を有してもよい。
前記空隙は、前記第1の面上で前記積層方向に直交する第1の方向における1mmの範囲において一つ以上存在してもよい。
前記空隙は、前記第1の方向における1mmの範囲において二つ以上存在してもよい。
本開示にかかる熱転写受像シート用支持体は、前記積層方向を含み且つ前記第1の断面と直交する面で前記基材、前記樹脂層及び前記フィルムを切断した際の第2の断面における前記基材と前記樹脂層との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかに、前記積層方向における高さが0.5μm以上15μm以下の、一つ又は複数の第2断面空隙を有してもよい。
前記第2断面空隙は、前記樹脂層から前記基材に向かう方向へ凹むように形成されてもよい。
前記第2断面空隙は、1μm以上1000μm以下の幅を有してもよい。
前記第2断面空隙は、前記第2の断面上で前記積層方向に直交する第2の方向における1mmの範囲において一つ以上存在してもよい。
前記第2断面空隙は、前記第2の方向における1mmの範囲において二つ以上存在してもよい。
前記基材は、紙基材であり、前記第1の断面は、前記紙基材の繊維方向に略平行な方向に延びてもよい。
前記基材の前記樹脂層側の面の表面粗さSRaは、1μm以上3μm以下であり、前記フィルムの前記樹脂層側とは反対側の面の表面粗さSRaは、0.01μm以上0.1μm以下でもよい。
また、本開示にかかる熱転写受像シートは、前記の熱転写受像シート用支持体と、前記熱転写受像シート用支持体の前記フィルム上に設けられる受容層と、を備える。
前記受容層の前記熱転写受像シート用支持体側とは反対側の面の表面粗さSRaは、2.2μm以下でもよい。
また、本開示にかかる熱転写受像シートの製造方法は、基材と、樹脂層と、互いに一体化されたフィルム及び受容層を有する受容材とをこの順に積層する熱転写受像シートの製造方法であって、
前記樹脂層を形成する樹脂を溶融押出により前記基材上又は前記受容材における前記フィルム上に供給する供給工程と、
前記基材と前記受容材とを前記樹脂を挟んで重ね合わせて第1ローラと第2ローラとの間に通すことにより、前記樹脂で形成される前記樹脂層で前記基材と前記受容材における前記フィルムとを接着し前記基材と前記受容材とを貼り合わせる貼合工程と、を備え、
前記第1ローラ及び前記第2ローラのうちの少なくとも一方の外周面が弾性的に変形可能であり、
前記第1ローラ及び前記第2ローラのうちの一方が他方に向けて付勢された状態で前記他方から離れる方向へ押し戻し可能になっているか又は前記第1ローラ及び前記第2ローラが互いに向けて付勢された状態で互いに離れる方向へ押し戻し可能になっており、
前記貼合工程において前記第1ローラと前記第2ローラとの間に前記基材と前記樹脂層と前記受容材とを通す際に、弾性的に変形可能とされた前記第1ローラ及び前記第2ローラのうちの少なくとも一方の外周面が弾性的に変形するか、及び/又は、前記第1ローラと前記第2ローラとが相対的に離れることで、前記基材の表面への前記樹脂層の食い込み量を調整しながら前記基材と前記受容材における前記フィルムとを前記樹脂層で接着する、熱転写受像シートの製造方法である。
前記貼合工程は、前記第1ローラと前記第2ローラとの間にクリアランスが無い状態又は前記第1ローラと前記第2ローラとの間にクリアランスがある状態で行われてもよい。
前記基材と前記樹脂層と前記受容材とが通される前の前記第1ローラと前記第2ローラとの間の前記クリアランスをd1とし、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に通される前の前記基材と前記樹脂層と前記受容材との総厚をhsとし、
前記貼合工程は、d1-hsが、-250μm以上-50μm以下となる状態で行われてもよい。
前記貼合工程では、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に前記基材と前記樹脂層と前記受容材とを通す際に、前記基材と前記樹脂層と前記受容材とに0.05MPa以上0.4MPa以下の圧力をかけてもよい。
前記第1ローラ及び前記第2ローラのうちの前記第1ローラが、前記第2ローラに向けて付勢された状態で前記第2ローラから離れる方向へ押し戻し可能になるように設定されており、熱転写受像シートの製造方法は、前記第1ローラを前記第2ローラに向けて付勢する付勢力を負担しない初期位置から大きく離れるように移動するに従い、前記付勢力の負担割合を増加させて前記第2ローラに向けて付勢された前記第1ローラを前記第2ローラから大きく引き離すように動作するクリアランス調整機構を準備する工程と、前記クリアランス調整機構の移動位置を調整する工程と、を更に備える。
前記クリアランス機構の移動位置を調整する工程では、
前記クリアランス調整機構の移動位置を調整することで、前記第1ローラと前記第2ローラとの間にクリアランスが無い状態において、弾性的に変形可能とされた前記第1ローラ及び前記第2ローラのうちの少なくとも一方の外周面の弾性変形量を調整するか、
又は、
前記第1ローラと前記第2ローラとの間にクリアランスを設けて前記クリアランスの大きさを調整する調整工程を更に備えてもよい。
また、本開示にかかる熱転写受像シートの製造方法は、
基材と、樹脂層と、フィルム及び受容層を有する受容材とをこの順に積層する熱転写受像シートの製造方法であって、
前記樹脂層を形成する樹脂を溶融押出により前記基材上又は前記受容材における前記フィルム上に供給する供給工程と、
前記基材と前記受容材とを前記樹脂を挟んで重ね合わせて第1ローラと第2ローラとの間に通すことにより、前記樹脂で形成される前記樹脂層を介して前記基材と前記受容材とを貼り合わせる貼合工程と、を備え、
前記貼合工程では、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に前記基材と前記樹脂層と前記受容材とを通す際に、前記基材と前記樹脂層と前記受容材とを含む積層体に0.05MPa以上0.4MPa以下の圧力をかける、熱転写受像シートの製造方法である。
また、本開示にかかる熱転写受像シート用支持体の製造方法は、
基材と、樹脂層と、フィルムとをこの順に積層する熱転写受像シート用支持体の製造方法であって、
前記樹脂層を形成する樹脂を溶融押出により前記基材上又は前記フィルム上に供給する供給工程と、
前記基材と前記フィルムとを前記樹脂を挟んで重ね合わせて第1ローラと第2ローラとの間に通すことにより、前記樹脂で形成される前記樹脂層を介して前記基材と前記フィルムとを貼り合わせる貼合工程と、を備え、
前記第1ローラ及び前記第2ローラのうちの少なくとも一方の外周面が弾性的に変形可能であり、
前記第1ローラ及び前記第2ローラのうちの一方が他方に向けて付勢された状態で前記他方から離れる方向へ押し戻し可能になっているか、又は、前記第1ローラ及び前記第2ローラが互いに向けて付勢された状態で互いに離れる方向へ押し戻し可能になっており、
前記貼合工程において前記第1ローラと前記第2ローラとの間に前記基材と前記樹脂層と前記フィルムとを通す際に、弾性的に変形可能とされた前記第1ローラ及び前記第2ローラのうちの少なくとも一方の外周面が弾性的に変形するか、及び/又は、前記第1ローラと前記第2ローラとが相対的に離れることで、前記基材の表面への前記樹脂層の食い込み量を調整しながら前記基材と前記フィルムとを貼り合わせる、熱転写受像シート用支持体の製造方法である。
また、本開示にかかる熱転写受像シート用支持体の製造方法は、
基材と、樹脂層と、フィルムとをこの順に積層する熱転写受像シート用支持体の製造方法であって、
前記樹脂層を形成する樹脂を溶融押出により前記基材上又は前記フィルム上に供給する供給工程と、
前記基材と前記フィルムとを前記樹脂を挟んで重ね合わせて第1ローラと第2ローラとの間に通すことにより、前記樹脂で形成される前記樹脂層を介して前記基材と前記フィルムとを貼り合わせる貼合工程と、を備え、
前記貼合工程では、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に前記基材と前記樹脂層と前記フィルムとを通す際に、前記基材と前記樹脂層と前記フィルムとを含む積層体に0.05MPa以上0.4MPa以下の圧力をかける、熱転写受像シート用支持体の製造方法である。
また、本開示にかかるシート貼合装置は、回転軸が互いに平行になるように配置される第1ローラ及び第2ローラと、前記第1ローラを前記第2ローラに向けて付勢する付勢力を付与する付勢機構と、前記付勢力の少なくとも一部を負担することが可能なクリアランス調整機構と、を備える、シート貼合装置である。
前記前記クリアランス調整機構は、移動部材を有し、前記移動部材が、前記付勢力を負担しない初期位置から、前記付勢力の負担割合を増加させる方向に移動するに従い、前記第1ローラが前記第2ローラからより大きく引き離されてもよい。
前記第1ローラはアームに揺動可能に支持されており、前記アームの揺動に応じて前記第2ローラに対して接触又は離間するようになっていてもよい。
前記移動部材は、傾斜面を有し、前記初期位置から移動することにより前記傾斜面で前記第1ローラに直接的又は間接的に接触し、前記移動部材は、前記初期位置から離れる方向への移動に応じて、前記傾斜面を介して前記第1ローラを前記第2ローラから引き離すように動作してもよい。
前記付勢機構はエアシリンダーでもよい。
本開示によれば、製造コストを抑制しつつ高品質な熱転写画像を形成できるとともに、画像表面の状態を選択的に変化させることにより多彩な表現で熱転写画像を形成できる熱転写受像シートを提供できる。
本開示の一実施の形態にかかる熱転写受像シートを層構成の構成体を積層した方向を含む平面で切断した層構成を示す断面図である。 図1に示す熱転写受像シートの一部を構成する熱転写受像シート用支持体を層構成の構成体を積層した方向を含む平面で切断した層構成を示す断面図である。 図2に示す熱転写受像シート用支持体の基材と樹脂層との境界を模式的に示す拡大図である。 図2に示す熱転写受像シート用支持体の基材と樹脂層との境界のSEM画像を示す図である。 図2に示す熱転写受像シート用支持体とは異なる熱転写受像シート用支持体の基材と樹脂層との境界のSEM画像を示す図である。 図1に示す熱転写受像シートと当該熱転写受像シートに昇華性染料を転写するための熱転写シートとを示す図である。 図6Aに示す熱転写受像シートと熱転写シートとを用いた熱転写の様子を示す図である。 図6Bに示す熱転写後の熱転写受像シートを示す図である。 図6Aに示す熱転写受像シートとは異なる熱転写受像シートと当該熱転写受像シートに昇華性染料を転写するための熱転写シートとを示す図である。 図7Aに示す熱転写受像シートと熱転写シートとを用いた熱転写の様子を示す図である。 図7Bに示す熱転写後の熱転写受像シートを示す図である。 図1に示す熱転写受像シートの使用方法の一例を示す図である。 図8Aに示す使用方法により形成される熱転写画像の一例を示す図である。 図1に示す熱転写受像シートを製造するための製造システムを示す図である。 図9に示す製造システムの一部を構成するシート貼合装置を拡大して示す図である。 図10に示すシート貼合装置のクリアランス調整機構によるクリアランス調整の一例を示す図である。 図10に示すシート貼合装置のクリアランス調整機構によるクリアランス調整の一例を示す図である。 実施例及び比較例の製造条件に関する表を示す図である。 実施例及び比較例の評価結果に関する表を示す図である。
以下、本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のし易さの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を実物のそれらから変更し誇張している場合がある。また、以下の説明では図面の方向を基準として上下方向等を用いて実施の形態を説明する場合がある。ただし、本開示は、実施の形態で説明される方向に限定されるものではない。
<<熱転写受像シート>>
まず、本開示の一実施の形態にかかる熱転写受像シート1について説明する。図1は熱転写受像シート1の層構成を示す断面図である。図1に示す熱転写受像シート1は、熱転写受像シート用支持体10と、受容層22と、を備える。受容層22は、熱転写受像シート1の最表面に位置する層である。本実施の形態では、熱転写受像シート用支持体10上にプライマー層21を介して受容層22が設けられている。
<熱転写受像シート用支持体>
図2は、熱転写受像シート1の一部を構成する熱転写受像シート用支持体10の層構成を示す断面図である。熱転写受像シート用支持体10は、基材11と、樹脂層12と、フィルム20とをこの順に積層し、樹脂層12で基材11とフィルム20とを接着している。本実施の形態では、フィルム20上にプライマー層21を介して受容層22が設けられることになる。また、基材11の樹脂層12側の面とは反対側の面には裏面層13が設けられている。なお、熱転写受像シート用支持体10は少なくとも基材11と、樹脂層12と、フィルム20とを備えるものであって受容層22を支持できるものであればよく、その層構成は特に限られるものではない。
(基材)
基材11としては、上質紙、コート紙、レジンコート紙、アート紙、キャストコート紙、板紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等を用い得る。基材11の厚みについて特に限定はなく、例えば10μm以上300μm以下である。特に好ましくは、100μm以上200μm以下である。
詳細は後述するが、本実施の形態では基材11と樹脂層12との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかに空隙30(図3等参照)が形成される。この空隙30は例えば基材11の表面の凹状部の内側空間を樹脂層12で充填しないように樹脂層12と基材11とを積層することで形成されたり、基材11の内部に形成されている空隙が潰れないように樹脂層12と基材11とを積層することで形成されている。基材11の表面粗さが比較的大きい場合であっても、例えば基材11の表面の凹状部の内側空間を樹脂層12で充填しないように樹脂層12と基材11とを積層した場合には、樹脂層12の基材11側とは反対側の面が平滑となり、製造コストを抑制しながらフィルム20や受容層22を平滑にできる。つまり、表面が平滑な高価な基材を用いなくても基材11及び樹脂層12上のフィルム20や受容層22を平滑にし得るため、結果的に高品質画像を得るための製造コストの抑制が図れる。また詳細は後述するが、例えば基材11と樹脂層12との境界に空隙30をあえて形成した場合には、多彩な表現で熱転写画像を形成することも可能となる。
本実施の形態における基材11は、製造コストを抑制できるという観点及び基材11の粗さを利用して空隙30を積極的に形成できるという観点から選択される。
具体的には例えば、基材11の表面粗さSRaは、1μm以上5μm以下が好ましく、1μm以上3μm以下がより好ましい。これにより、多彩な表現での熱転写画像の形成と、画像品質の向上と、が両立できる。
なお、本開示において、表面粗さSRaは、JIS B 0601:1982に準拠し、東京精密(株)製のサーフコム 1400Gを用いて、下記の測定条件にて3次元の断面測定を行い、得られた断面曲線データに対して、「傾斜補正:曲線補正」して算出された、中心面平均粗さを意味する。また、基材のMD方向とは、MachineDirectionの略であり、熱転写受像シート用支持体作製の際のロール紙の流れ方向を意味し、TD方向とは、Transverse Directionの略であり、MD方向に直角な方向を意味する。
なお、印画物を単独で見る場合など、基材のMD方向、TD方向が明確にできない場合は、基材の繊維(パルプ)が主に配向している方向をMDとする。この方向は、実際に抄紙する工程のMD、TDとは異なることもあるが、表面粗さの標準的な評価方法、すなわち、ランダムパターン、非ランダムパターンに関わらず、粗さが最大になるよう評価するに準じることとなる。
<測定条件>
・測定範囲:TD方向40mm×MD方向20mm
・測定方向:TD方向(後述の第2方向D2)に針をスイープしながら測定。
・測定ピッチ(X):19.541μm
・測定ピッチ(Y):290.000μm
・測定点数(X):2018点
・測定ライン数(Y):70ライン
・λsフィルタ:なし
・傾斜補正:なし
・測定速度:1.500mm/s
・移動戻り速度:3.000mm/s
・Y軸戻り位置:測定開始位置
・ピックアップ種類:標準ピックアップ
・極性反転:正転
また、基材11の表面の平滑度は、10秒以上5000秒以下が好ましい。さらに好ましくは、20秒以上500秒以下である。
なお、本開示において、平滑度はJIS P 8155:2010に準拠して測定される。
このような基材11としては、市販の基材を用いることもでき、例えば、上質紙として、三菱製紙(株)製の金菱N、金菱A、ダイヤフォーム、ブロード上質H、クリームエレガ、クリームエレガバルキー、ダイヤバルキー、三菱嵩高書籍用紙55A、三菱嵩高書籍用紙65A、や、日本製紙(株)製のNPI上質、NPI上質バルキー、NPIフォーム、しらおい、大王製紙(株)製のユトリロ上質、王子製紙(株)製のOKプリンス上質紙、OK上質紙、丸住製紙(株)製のスターパック、リンデンコミック、SSコミック用紙、中越パルプ(株)製の雷鳥上質等を、好適に使用可能である。また、コート紙としては、A1,A2,A3の各種グレードが存在し、A1に比べA2,A3のコート紙は安価となる。コート紙として三菱製紙(株)製のパールコート、レアルホワイトグロス、カサディアグロス、日本製紙(株)製のオーロラコート、アルティマグロス、シルバーダイヤS、ペガサスバルキー8、オーロラS、大王製紙(株)製の、王子製紙(株)製のユトリロコート等を、好適に使用可能である。
(フィルム)
フィルム20は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性の高いポリエステル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリアミド、ポリメチルペンテン等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムや、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルム、内部にミクロボイドを有するフィルム等でもよい。
中でもミクロボイドを有する所謂ボイドフィルムは、鮮明な画像を形成する上で有利である。ボイドフィルムとしては、以下に示す二つの方法により、ボイド(微細空孔)を生じさせることができる。一つは、ポリマー中に無機微粒子を混練し、そのコンパウンドを延伸するときに無機微粒子を核としてミクロボイドを生じさせる方法である。もう一つは、主体とする樹脂に対して非相溶なポリマー(一種類でも複数でも良い)をブレンドしたコンパウンドを作成する。このコンパウンドは微視的にみるとポリマー同士が微細な海島構造を形成している。このコンパウンドを延伸すると海島界面の剥離または、島を形成するポリマーの大きな変形によってミクロボイドが発生する。フィルム20として用いるボイドフィルムの厚さは、通常10μm以上100μm以下であり、好ましくは20μm以上50μm以下である。
フィルム20の樹脂層12側とは反対側の面(受容層22側の面)の表面粗さSRaは、0.01μm以上0.8μm以下が好ましく、0.01μm以上0.5μm以下がより好ましい。これにより、生産性の向上、製造コストの低減及び受容層の平滑性の維持が可能となる。熱転写受像シート1は、基材11、樹脂層12、フィルム20、プライマー層21及び受容層22をこの順に積層してラミネートされることで形成されるが、フィルム20の表面粗さSRaが上記範囲である場合、受容層22の表面も平滑に仕上がる。
(樹脂層)
基材11とフィルム20とを貼り合わせて接着するための樹脂層12は、溶融押出した樹脂によって形成されており、すなわち、溶融押出した樹脂が冷却に伴って固化することで樹脂層12は形成される。樹脂層12の形成に用いる樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂として、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-ポリプロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合体、無水マレイン酸をポリオレフィンにグラフト変性した樹脂等を使用できる。樹脂層12の形成に用いる樹脂は、上記材料のうちの一種でもよいし、二種以上を組み合わせたものでもよい。
これらの中でも、ポリオレフィンが好ましい。特にLDPE(低密度ポリエチレン)であって、JIS K 6760:1995によって測定された密度が、0.93g/cm以下であることが好ましく、0.90g/cm以上0.93g/cm以下であることがより好ましく、0.915g/cm以上0.925g/cm以下であることが特に好ましい。樹脂層12の形成に用いる樹脂として上記密度範囲のLDPEを用いた場合には、接着性を有するため、単独で使用できる。また、弾性率が低いため、印画品質が良く、カールバランスを取りやすくなる。
樹脂層12の形成に用いる樹脂の融点は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
また、LDPEを用いた場合、融点は105℃以上110℃以下が好ましい。
なお、本開示における融点はJIS K 7121:2012によって測定される値である。
樹脂層12の厚みは特に限られるものではないが、乾燥状態で10μm以上20μm以下が好ましい。これにより、印画品質と受像紙のカールバランスとを両立できる。
(裏面層)
裏面層13は、熱転写受像シート1の用途等に応じて所望の機能を有するものを適宜選択して用いることができる。中でも、熱転写受像シート1の搬送性向上機能や、カール防止機能を有する裏面層13とすることが好ましい。裏面層13は、ポリオレフィン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、スチレン樹脂及びポリウレタン等の樹脂材料を主成分として形成できる。
裏面層13は溶融押出した樹脂によって形成されてもよく、すなわち、溶融押出した樹脂が冷却に伴って固化することで裏面層13が形成されてもよい。
裏面層13の形成に用いる樹脂は、融点が100℃以上のポリオレフィンが好ましく、融点が120℃以上のポリオレフィンがより好ましい。特にポリオレフィンはHDPE(高密度ポリエチレン)であって、密度が0.93g/cm以上であることが好ましく、0.93g/cm以上0.96g/cm以下であることがより好ましく、0.94g/cm以上0.95g/cm以下であることが特に好ましい。裏面層13の形成に用いる樹脂として上記密度範囲のHDPEを用いた場合には、搬送性向上機能や、カール防止機能を確保できる。
裏面層13の厚みは特に限られるものではないが、乾燥状態で15μm以上40μm以下が好ましく、20μm以上30μm以下がより好ましい。これにより表面側のLDPE/ボイドフィルムの積層部と同程度の張力バランスをとることができ、熱転写受像シート用支持体あるいは熱転写受像シートのカールを低減できる。
<受容層>
受容層22は、熱転写シートから移行してくる染料を受容し、形成された画像を維持するためのものである。受容層22の表面の表面粗さSRaは、好ましくは2.2μm以下である。受容層22を形成するための樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリスルフォン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、およびエポキシ樹脂等が挙げられる。
受容層22には、熱転写シートとの離型性を向上させるため、離型剤を含んでもよい。離型剤としてはポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類、フッ素系またはリン酸エステル系界面活性剤、シリコーンオイル、シリコーン樹脂が挙げられる。シリコーンオイルとしては、反応性シリコーンオイル、固化型シリコーンオイル等の各種変性シリコーンオイルなどが挙げられる。中でも、変性シリコーンオイルが好ましい。変性シリコーンオイルとしてはアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、エポキシ-アラルキル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン等を好ましく用いる事ができるが、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、エポキシ-アラルキル変性シリコーンが特に好ましい。また、これらの離型剤を2種以上組み合わせて用いる事も好ましい。これらの変性シリコーンオイルの添加量は受容層を構成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下が好ましい。
また受容層22には、白色度を向上させて画像の鮮明度をさらに高める目的で、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、および微粉末シリカ等の顔料や充填剤が添加されてもよい。また、フタル酸エステル化合物、セバシン酸エステル化合物、およびリン酸エステル化合物等の可塑剤を添加してもよい。また受容層22にはさらに、架橋剤、固化剤、触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等が含まれてもよい。
受容層22は、熱可塑性樹脂および他の必要な添加剤、例えば離型剤等を、有機溶剤や水に溶解もしくは有機溶剤や水に分散させた塗工液を、塗布および乾燥して形成できる。塗布手段としては、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、およびグラビア版を用いたリバースロールコーティング法等が挙げられる。このように形成される受容層22の厚みは、乾燥状態で0.5μm以上50μm以下が好ましく、2μm以上10μm以下がより好ましい。
<プライマー層>
プライマー層21はフィルム20と受容層22との接着性を向上させるために設けられている。プライマー層21を構成する樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、およびポリプロピレン等が挙げられる。
プライマー層21には、白色性や隠蔽性を付与するために酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、および炭酸カルシウム等の白色材料を添加してもよい。さらに、白色性を高めるためにスチルベン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、およびベンゾオキサゾール系化合物等を蛍光増白剤として添加したり、画像の耐光性を高めるためにヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびベンゾフェノン系化合物等を紫外線吸収剤あるいは酸化防止剤として添加したり、あるいは帯電防止性を付与するためにカチオン系アクリル樹脂、ポリアニリン、および各種導電性フィラー等を添加できる。プライマー層21の厚みは、0.1μm以上10μm以下が好ましい。
なお、受容層22とプライマー層21は、基材11と、樹脂層12と、フィルム20とを積層してなる熱転写受像シート用支持体10を作製した後、熱転写受像シート用支持体10のフィルム20上にプライマー層21、受容層22の順で設けられてもよい。あるいは、フィルム20と受容層22とをプライマー層21で接着してなる受容材を作製した後、この受容材と基材11とを樹脂層12によって接着してもよい。
<熱転写受像シート用支持体における基材と樹脂層の境界>
図3は基材11と樹脂層12の境界を模式的に示す拡大図である。上述したが、本実施の形態では基材11と樹脂層12との境界に一つ又は複数の空隙30が形成される。図3においては、基材11と樹脂層12の境界の一部に形成された四つの空隙30が示されている。以下、熱転写受像シート用支持体10における基材11と樹脂層12の境界の構成について説明する。
空隙30は樹脂層12と基材11の境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかに形成されており、図3に示される空隙30は境界に形成され、樹脂層12から基材11に向かう方向へ凹むように形成されている。詳しくは、基材11のうち樹脂層12側を向く面に存在する凹状部により、空隙30が形成されている。基材11、樹脂層12及びフィルム20の積層方向(熱転写受像シート用支持体10の厚み方向)における空隙30の高さHは0.5μm以上15μm以下である。また図3は、上記積層方向に直交する面と平行な図中第1の方向D1に延びる積層方向を含む面(第1方向切断面)で基材11、樹脂層12及びフィルム20を切断した際の第1の断面を示している。図3の符号Wで示される第1の方向D1における空隙30の幅は、1μm以上1000μm以下である。すなわち、空隙30は上記積層方向に直交する面と平行な第1の方向D1に基材11、樹脂層12及びフィルム20を切断した際の第1の断面において、0.5μm以上15μm以下の高さHを有するとともに、1μm以上1000以下の幅Wを有していることになる。
なお、境界とは、上述した互いに向き合う樹脂層12と基材11との境目となる部分を意味し、境界付近とは、境界のうちの樹脂層12と基材11とが接している部分から基材11側へ基材11の厚みの10%までの範囲、及び、境界のうちの樹脂層12と基材11とが接している部分から樹脂層12側へ樹脂層12の厚みの10%までの範囲を意味する。
第1の方向D1は所謂MD(Machine Direction)であり、熱転写受像シート1がロール状に巻き回されている場合にはその長手方向、言い換えると巻き回し方向である。また、基材11が紙基材であり繊維方向が存在する場合には通常、繊維方向がMDと一致するため、通常、第1の方向D1は繊維方向と平行又は略平行になる。なお、紙基材の繊維方向は例えば表面の顕微鏡観察で確認できる。一方で、基材11が紙基材であり繊維方向が存在する場合であっても、0.5μm以上15以下の高さHを有するとともに1μm以上1000以下の幅Wを有する空隙30が繊維方向とは異なる方向における断面の境界において存在する場合もあり得る。
上述の空隙30は第1の方向D1における1mmの範囲において一つ以上存在することが好ましく、二つ以上存在することがより好ましい。ただし、第1の方向D1における1mmの範囲における空隙30の数は50個以下が好ましい。これにより、樹脂層12と基材11の接着性低下を抑制しつつ、十分に本開示の効果を奏する。
また熱転写受像シート1は、第1方向D1と直交する第2方向D2に延びる積層方向を含む面(第2方向切断面)で基材11、樹脂層12及びフィルム20を切断した際の第2の断面上での基材11と樹脂層12との境界においても、一つ又は複数の空隙(以下、第2断面空隙と呼ぶ。)を有する。この第2断面空隙は、図示しないが積層方向における高さが0.5μm以上15μm以下で且つ幅が1μm以上1000μm以下となる。第2断面空隙も上記空隙30と同様に樹脂層12から基材11に向かう方向へ凹むように形成されている。そして第2断面空隙は、前記第2の方向D2における1mmの範囲において一つ以上存在することが好ましく、二つ以上存在することがより好ましい。ただし、上述と同様に、第2の方向D2における1mmの範囲における第2断面空隙の数は50個以下が好ましい。これにより、樹脂層12と基材11の接着性低下を抑制しつつ、十分に本開示の効果を奏できる。
図4は基材11と樹脂層12との境界のSEM画像を示す図であり、二つの空隙30が示されている。上述したように、空隙30は、図4にも示すように例えば基材11の表面の凹状部の内側空間を樹脂層12で充填しないように樹脂層12と基材11とを積層することで形成される。このことは、第2断面空隙についても同様である。熱転写受像シート1は、基材11、樹脂層12、フィルム20、プライマー層21及び受容層22をこの順に積層してラミネートされることで形成されるが、基材11と樹脂層12との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかに空隙30が形成されるように上記各層がラミネートされた際には、樹脂層12のフィルム20側の面及びフィルム20の受容層22側の面に凹凸が生じ難くなり、これら各面が平滑になる。その結果、受容層22の表面も平滑に形成され得る。この際、受容層22の表面の表面粗さSRaは2.2μm以下が好ましい。これにより、熱転写画像の良好な品質を確保できる。
また空隙30が基材11と樹脂層12との境界に形成される場合、熱転写時の熱圧を調整することにより、言い換えると熱転写時の加熱量及び/又は印圧の大きさを調整することにより、ある部分では空隙30が保持されるように受容層22に熱転写を行うとともに、他の部分では受容層22が空隙30に向けて部分的に凹むように熱転写を行うことで、熱転写画像において部分的に地合を変化させることが可能となり、装飾が工夫された熱転写画像を形成することも可能である。
一方で、図5は、熱転写受像シート用支持体10とは異なる比較にかかる熱転写受像シート用支持体110の基材111と樹脂層112との境界のSEM画像を示す図である。図5に示す熱転写受像シート用支持体110は、基材111、樹脂層112及びフィルム120をこの順で積層してなり、本件発明の熱転写受像シート用支持体10と比べて強い圧力が生じるラミネートにより形成されている。その結果、図5に示すように基材111の表面の凹状部に樹脂層112が入り込んでいる。このような状態であると、樹脂層112のフィルム120側の面及びフィルム120の受容層側の面に凹凸が生じてしまうか又は生じ易くなり、これらの平滑性が損なわれ得る。その結果、熱転写画像形成の際に、受容層の表面がフィルム120の表面の凹凸に応じて変形しているか又は変形し易くなることがあり、画像品質が低下する場合がある。また熱転写時の熱圧を調整したとしても、熱転写画像において意図的に地合を変化させた箇所を形成することは困難である。したがって、本実施の形態にかかる熱転写受像シート1は、空隙が形成されないように製造される熱転写受像シートよりも熱転写画像の品質を向上できる点及び多彩な表現の画像が得られる点で有意義となる。
なお基材11と樹脂層12との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかにおける空隙30の有無は、例えば熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10を、積層方向を含む面にて切断し、断面を露出させ、当該断面の1000倍のSEM画像を取得して観察することで確認できる。具体的には、熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10を第1の方向D1及び積層方向を含む面にて切断し、断面を露出させ、当該断面の1000倍のSEM画像を取得して観察することで確認できる。また、基材11と樹脂層12との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかにおける第2断面空隙の有無は、例えば熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10を第2の方向D2及び積層方向を含む面にて切断し、断面を露出させ、当該断面の1000倍のSEM画像を取得して観察することで確認できる。上述のような切断を実施する際には、裏面層13の側から刃物やイオンビーム等によって熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10を切断するのがよく、この場合、切断に起因した空隙30の潰れを抑制できる。また、空隙の確認は、非破壊方式でも可能である。この場合、X線CT撮像で三次元的に内部構造を観察して、空隙の存在及び寸法を確認するのがよい。熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10の側面を観察しても、側面から露出した空隙30を確認できる場合もある。
<熱転写受像シートを用いた熱転写による画像形成>
以下、安価な表面が粗い基材11と樹脂層12との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかに空隙30を設けた本実施の形態にかかる熱転写受像シート1を用いた熱転写画像の形成と、図5に示した基材111と樹脂層112との境界に空隙30が存在しない熱転写受像シート用支持体110を有する熱転写受像シート100を用いた熱転写画像の形成と、を説明する。
図6Aは、本実施の形態にかかる熱転写受像シート1と、当該熱転写受像シート1に昇華性染料を転写するための熱転写シート200とを示す。熱転写シート200は公知のものであってもよく、シート状の支持基材201と、支持基材201の一方の面に面順次に設けられた熱転写性色材層202と、オーバーコート層(保護層)とを備えている。熱転写性色材層202は昇華性染料を含有する層であり、例えば互いに色の異なる複数の染料含有部分を含む。
熱転写により熱転写画像を形成する際には、図6Bに示すように、熱転写受像シート1の受容層22と熱転写シート200の熱転写性色材層202とが接触するように重ね合わされて、熱転写性色材層202が受容層22に押し当てられるようにサーマルヘッド220によって印圧を付与しつつ、昇華染料を移行させる位置において熱転写性色材層202に電圧を印加して加熱を行う。
以上のような熱転写によって形成される熱転写画像においては、図6Cに示すように、受容層22に染料202iが保持される。ここで、本実施の形態にかかる熱転写受像シート1では受容層22の表面が平滑であることで、形成された熱転写画像の地合が良好となり、良好な画像品質を得ることが可能となる。
一方で、図7Aは、安価な表面が粗い紙の基材111と樹脂層112との境界に空隙30が存在しない、図6Aに示したものとは異なる熱転写受像シート100と、図6Aに示した熱転写シート200とが示されている。熱転写受像シート100は、基材111、樹脂層112、フィルム120、プライマー層121及び受容層122をこの順で積層してなる。熱転写受像シート100では、図5に示したように基材111の表面の凹状部の内側空間に樹脂層112が入り込んでいることに起因して、樹脂層112のフィルム120側の面が粗くなっている。その結果、フィルム120とプライマー層121との境界に空隙130が存在したり、フィルム120の受容層122側の面が粗くなったり、受容層122の表面が粗くなったりしている。
この場合、図7Bに示すように、熱転写性色材層202が受容層122に押し当てられるようにサーマルヘッド220によって印圧を付与しつつ、昇華染料を移行させる位置において熱転写性色材層202に電圧を印加して加熱を行った際に、受容層122がフィルムの表面の凹凸に応じて変形しているか又は変形し易くなっていることで、熱転写画像の地合が良好でなくなる場合がある。具体的には、図7Cに示すように熱転写後の受容層122の表面が粗くなってしまい、熱転写画像の品質が顕著に低下する状況が生じ得る。
したがって、本実施の形態にかかる熱転写受像シート1によれば、製造コストを抑制しつつ高品質な熱転写画像を形成できる。つまり、比較的、表面が粗い基材を用いた場合でも高品質な熱転写画像を得ることが可能となるため、製造コストを抑制しつつ高品質な熱転写画像を形成できる。
<熱転写受像シートの使用例>
一方で、上述したように本実施の形態にかかる熱転写受像シート1は、熱転写時の熱圧を調整することにより、ある部分では空隙30が保持されるように受容層22に熱転写を行うとともに、他の部分では受容層22が空隙30に向けて部分的に凹むように熱転写を行うことで、熱転写画像において部分的に地合を変化させることが可能となる。図8A及び図8Bは、そのような熱転写受像シート1の使用方法を示している。もちろん、受像紙全面に比較的低い熱圧をかけることで印画物を形成すれば、全面が地合い良好な印画物を作製できる。逆に、受像紙全面に比較的高い熱圧をかけて印画物を形成すれば、原紙の粗い地合いを反映した印画物となる。
すなわち、図8Aの符号A1で示す部分では、受容層22が空隙30に向けて部分的に凹むように熱転写が行われ、符号A2で示す部分では、空隙30が保持されるように受容層22に熱転写が行われている。この場合、図8Bに示す熱転写画像のように、画像表面における二つの円で囲まれた範囲ACでは、表面が絹目状になり、それ以外の部分の表面は平滑となるような装飾を行うことが可能となる。
以上に説明したように本実施の形態にかかる熱転写受像シート1は、基材11と、樹脂層12と、フィルム20とをこの順に積層し、樹脂層12が基材11とフィルム20とを接着する熱転写受像シート用支持体10を備える。そして、熱転写受像シート用支持体10は基材11と樹脂層12との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかに、一つ又は複数の空隙30を有し、空隙30の高さは0.5μm以上15μm以下となっている。
このように空隙30が形成される熱転写受像シート用支持体10又は熱転写受像シート1は、ラミネートを経て形成される場合に、樹脂層12のフィルム20側の面及びフィルム20の受容層22側の面に凹凸が生じ難くなり、これら各面が平滑になる。その結果、受容層22の表面も平滑にできるため、表面が平滑な高品質の熱転写画像を形成できる。なお上記空隙30は基材11の凹凸に起因するものであるため、基材11として平滑な基材を用いれば、樹脂層12のフィルム20側の面及びフィルム20の受容層22側の面に凹凸が生じ難くなり受容層22の表面も平滑になり得る。しかしながら、この場合には、基材のコストが高くなることで製造コストが嵩む。これに対して本実施の形態では、安価な比較的粗い基材を基材11として用いても、受容層22の表面に平滑にし得るため、コスト面で有利となる。
また、本実施の形態にかかる熱転写受像シート1では、熱転写時の熱圧を調整することにより、ある部分では空隙30が保持されるように受容層22に熱転写を行うとともに、他の部分では受容層22が空隙30に向けて部分的に凹むように熱転写を行うことで、熱転写画像において部分的に地合を変化させることが可能となる。もちろん、受像紙全面に比較的低い熱圧をかけることで印画物を形成すれば、全面が地合い良好な印画物を作製できる。逆に、受像紙全面に比較的高い熱圧をかけて印画物を形成すれば、原紙の粗い地合いを反映した印画物となる。
よって、本実施の形態にかかる熱転写受像シート用支持体10又は熱転写受像シート1によれば、製造コストを抑制しつつ高品質な熱転写画像を形成できるとともに、画像表面の状態を選択的に変化させることにより多彩な表現で熱転写画像を形成できるようになる。
<<熱転写受像シートの製造システム>>
次に、熱転写受像シート1を製造可能な製造システム50の一例を図9乃至図12を用いて説明する。図9に示す製造システム50は、樹脂貼合装置60と、シート貼合装置70と、を備える。樹脂貼合装置60は基材11と裏面層13とを一体化するための装置であり、シート貼合装置70は、基材11の裏面層13側の面とは反対側の面にフィルム20を一体化するか、又は、フィルム20、プライマー層21及び受容層22が積層されてなる受容材24を一体化するための装置である。以下、製造システム50の各部について詳述する。
<樹脂貼合装置>
樹脂貼合装置60は、回転軸が互いに平行になるように配置される第1プレスローラ61及び第1チルローラ62と、裏面層13を形成する樹脂を溶融押出する第1ダイ63と、を有している。図9においては第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間を後述する基材11及び裏面層形成樹脂13Rが通過することに伴い、第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面とが互いに離れ、「隙間」が形成されている。一方で、樹脂貼合装置60では、第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間にクリアランスを設ける状態にするか又はクリアランスが無い状態にするかを、設定可能になっている。
なお、この第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間に設けられる「クリアランス」と、上述の「隙間」は、意味合いが異なる。「クリアランス」とは、後述する基材11及び裏面層形成樹脂13Rが通過していない状態で、第1プレスローラ61の中心と第1チルローラ62の中心とを結ぶ方向において、第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間に存在する間隔のことである。クリアランスが無いという場合には、第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面とが接していることを意味する。一方、「隙間」とは、後述する基材11及び裏面層形成樹脂13Rが通過することに伴い、第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間に生じる隙間のことである。
本実施の形態で行う樹脂貼合装置60による貼合では、クリアランスを設ける状態にしても、クリアランスが無い状態にしても、第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間を後述する基材11及び裏面層形成樹脂13Rが通過する際には、図9に示すように第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面とが互いに離れた状態になり、「隙間」が生じる。具体的には、第1プレスローラ61と第1チルローラ62は、接触した状態で設定されているにも関わらず、基材11及び裏面層形成樹脂13Rが、これら2つの間に搬入されることにより、「隙間」が生じ得る。もちろん、第1プレスローラ61と第1チルローラ62の間に、「クリアランス」を設けてもよい。ただし、第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間にクリアランスを設ける場合には、クリアランスの大きさは、基材11及び裏面層形成樹脂13Rの合計厚みよりも小さくなるように設定される。
図9においては第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間に「基材11と溶融樹脂の厚みに相当する『隙間』」が存在する。
第1プレスローラ61はゴムローラであり、第1チルローラ62は金属製ローラであり、第1プレスローラ61の外周面は第1チルローラ62の外周面よりも弾性変形し易くなっている。第1プレスローラ61及び第1チルローラ62の種別は特に限られるものではなく、例えば第1プレスローラ61及び第1チルローラ62の両方がゴムローラで構成されてもよい。また図示の例では、第1プレスローラ61がその回転によって基材11を搬送するようになっているが、第1チルローラ62が基材11を搬送する構成であってもよい。
第1ダイ63は溶融樹脂押出機における溶融樹脂の吐出口部分であり、ダイヘッドとも呼ばれる部分である。第1ダイ63は、第1プレスローラ61及び第1チルローラ62の上方に配置され、基材11が第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間に送り込まれる前に、基材11の第1プレスローラ61側の面とは反対側の面に樹脂(以下、裏面層形成樹脂13R)を供給するようになっている。第1ダイ63は水平方向の位置を調整可能となっており、図示の例では第1ダイ63が第1プレスローラ61側に位置し、第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間に送り込まれる前における第1プレスローラ61上の基材11に裏面層形成樹脂13Rを供給する。なお、第1ダイ63は第1チルローラ62側に配置されることで、第1チルローラ62上や第1チルローラ62上の基材11に裏面層形成樹脂13Rを供給することもできる。
第1ダイ63は裏面層形成樹脂13Rをカーテン状に一定の量で溶融押出し、これにより一定の速度で搬送中の基材11上に一定の厚みの裏面層形成樹脂13Rからなる裏面層13が形成される。そして裏面層13が設けられた基材11が第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間に送り込まれて挟み込まれることで、基材11に裏面層13が一体化した状態が安定するように貼合される。裏面層13は裏面層形成樹脂13Rが固化されることで形成されるが、第1チルローラ62が金属製であり裏面層形成樹脂13Rの冷却を促進させるため、裏面層13の固化が促進される。なお、第1チルローラ62の材質は特に限られるものではないが、樹脂の冷却の観点から金属製が好ましい。
第1プレスローラ61がゴムローラで構成される場合、その外周面のゴム硬度は、40以上95以下、特に50以上85以下が好ましい。ゴム硬度が40よりも小さいと、基材11と裏面層13との接着状態が不安定になる傾向があり、ゴム硬度が95よりも大きくなるとゴムつぶれ量変化が小さくなり、ローラの逃げ量が大きくなる傾向があり、ローラの変動が大きくなるため、上記数値範囲がよい。
なお、本開示におけるゴム硬度は、JIS K 6253:1997に準拠するデュロメータ(タイプA)によって測定されたゴム硬度のことを意味する。
また第1チルローラ62は、表面粗さRmaxが、5μm以上35μm以下が好ましく、8μm以上30μm以下がより好ましく、10μm以上20μm以下が特に好ましい。これにより、裏面層の製造不良を抑制できる。また、裏面層13の表面粗さを低減することに繋がり、シート貼合装置70による貼り合わせ時に接着ムラが生じることを抑制できる。さらに、捌き性が良好になる。また、第1チルローラ62は、表面粗さRaが、1μm以上8μm以下が好ましく、特に2μm以上5μm以下が好ましい。
なお、本開示において、第1チルローラ62の表面粗さRmaxは、JIS B 0601:1982に準拠し、(株)小坂研究所製のサーフコーダ SE-40を用いて、下記の測定条件にて2次元の断面測定を行い、得られた断面曲線データに対して、「カットオフ」処理して算出された、「最大高さ」を意味する。また、第1チルローラ62の表面粗さRaは同様に算出された、「中心線平均粗さ」を意味する。これらは、後述の第2チルローラ72でも同様である。
<測定条件>
測定条件:
Length:2.5mm
Rrive Speed:0.5m/s
Cutoff:R+W(なおRは「粗さ」、Wは「うねり」を意味する)
また、第1プレスローラ61は、表面粗さRaが、0.6μm以上5μm以下が好ましく、0.9μm以上3μm以下がより好ましい。
なお、本開示において、第1プレスローラ61の表面粗さRaは、JIS B 0601:2001に準拠し、キーエンス(株)製のレーザー顕微鏡VK-150を用いて測定された、「算術平均粗さ」を意味する。具体的には、第1プレスローラから10mm×10mmの測定サンプルを切り出し、2mm×2mmの測定対象を観察して算出する。これは、後述の第2プレスローラ71でも同様である。
第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間を通過した基材11及び樹脂層12は、シート貼合装置70に送られる。ここで、本実施の形態では、樹脂貼合装置60とシート貼合装置70との間に反転装置90が設けられている。反転装置90は、基材11と樹脂層12との向きを表裏反転させる。
<シート貼合装置>
次いでシート貼合装置70について説明する。シート貼合装置70は、樹脂貼合装置60により樹脂貼合処理が行われた後に、シート貼合処理を行う。シート貼合装置70は、回転軸が互いに平行になるように配置される第2プレスローラ71及び第2チルローラ72と、樹脂層12を形成する樹脂を溶融押出する第2ダイ73と、第2プレスローラ71を第2チルローラ72に向けて付勢する付勢機構74と、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスを調整するクリアランス調整機構75と、を有している。ここでシート貼合装置70は本開示のシート貼合装置に対応するものであり、本開示で言う第1のローラは第2プレスローラ71に対応しており、本開示で言う第2のローラが第2チルローラ72に対応している。
図示の例では第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間を後述する裏面層13が設けられた基材11及び受容材24の積層体が通過することに伴い、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面とが互いに離れ、「隙間」が形成されている。シート貼合装置70においても、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間にクリアランスを設ける状態にするか又はクリアランスが無い状態にするかを、設定可能になっている。つまり、図示の例では、後述のローラフォロア77と移動部材81が接しており、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間にクリアランスが設けられているが、クリアランスが無い状態に設定されてもよい。つまり、これらは互いに接触していてもよい。本実施の形態で行う貼合では、クリアランスを設ける状態にしても、クリアランスが無い状態にしても、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間を後述する裏面層13が設けられた基材11及び受容材24の積層体が通過する際には、図9に示すように第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面とが互いに離れた状態になり、「隙間」が形成される。ただし、クリアランスを設ける場合のその大きさは、裏面層13が設けられた基材11及び受容材24の積層体の厚みよりも小さくなるように設定される。詳細は後述するが、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間にクリアランスを設けるか否か及びクリアランスを設ける場合のクリアランスの大きさの調整は、上記付勢機構74及びクリアランス調整機構75を用いることで行うことができる。
なお、シート貼合装置70において「クリアランス」とは、基材11、樹脂層12、フィルム20が通過していない状態で、第2プレスローラ71の中心と第2チルローラ72の中心とを結ぶ方向において、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に存在する間隔のことである。クリアランスが無いという場合には、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面とが接していることを意味する。一方、シート貼合装置70において「隙間」とは、基材11、樹脂層12、フィルム20が通過することに伴い、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に生じる隙間のことである。
第2プレスローラ71はゴムローラであり、第2チルローラ72は金属製ローラであり、第2プレスローラ71の外周面は第2プレスローラ71の外周面よりも弾性変形し易くなっている。第2プレスローラ71及び第2チルローラ72の種別は特に限られるものではなく、例えば第2プレスローラ71及び第2チルローラ72の両方がゴムローラで構成されてもよい。ただし、第2プレスローラ71及び第2チルローラ72のうちの少なくとも一方を弾性変形可能なものとするのがよい。
図示の例では、第2プレスローラ71がその回転によって裏面層13が設けられた基材11を搬送して第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に案内し、第2チルローラ72がその回転によって、フィルム20が外周側に位置する状態で受容材24を搬送して第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に案内するようになっている。ただし、第2プレスローラ71が受容材24を第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間まで案内し、第2チルローラ72が、裏面層13が設けられた基材11を第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間まで案内するようになっていてもよい。
また第2ダイ73は溶融樹脂押出機における溶融樹脂の吐出口部分であり、ダイヘッドとも呼ばれる部分である。第2ダイ73は、第2プレスローラ71及び第2チルローラ72の上方に配置され、受容材24が第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に送り込まれる前に、受容材24の第2チルローラ72側の面とは反対側の面、すなわちフィルム20上に樹脂(以下、樹脂層形成樹脂12R)を供給するようになっている。第2ダイ73は水平方向の位置を調整可能となっており、図示の例では第2ダイ73が第2チルローラ72側に位置し、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に送り込まれる前における第2チルローラ72上の受容材24に樹脂層形成樹脂12Rを供給するが、第2ダイ73は第2プレスローラ71側に配置されることで、基材11に樹脂層形成樹脂12Rを供給することもできる。図9に示す通り、第2ダイ73は、第2プレスローラ71及び第2チルローラ72の上方に配置され、受容材24が第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に送り込まれる前に、受容材24の第2チルローラ72側の面とは反対側の面、すなわちフィルム20上に樹脂(以下、樹脂層形成樹脂12R)を供給する。これにより、基材11内部へ樹脂が浸透することを抑制できる。
第2ダイ73は樹脂層形成樹脂12Rをカーテン状に一定の量で溶融押出し、これにより一定の速度で搬送中の受容材24上に一定の厚みの樹脂層形成樹脂12Rからなる樹脂層12が形成される。そして樹脂層形成樹脂12Rが設けられた受容材24と基材11との積層体が、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に送り込まれて挟み込まれることで、基材11と受容材24とが樹脂層12によって一体化される。この際、樹脂層12は樹脂層形成樹脂12Rが固化されることで形成され、固化に伴い基材11と受容材24とを接着する。
第2プレスローラ71がゴムローラで構成される場合、その外周面のゴム硬度は、30以上90以下、特に50以上80以下が好ましい。上述したように、本実施の形態にかかる熱転写受像シート1は空隙30を有し、空隙30は、基材11の表面の凹状部の内側空間を樹脂層12で充填しないように樹脂層12と基材11とを積層することで形成される。ゴム硬度が30以上のとき、ゴムが回転することで起きるグリップの有無によるゴム変形量の変動が均一化する。これにより溶融樹脂が基材11の凹状部へ侵入する量も一定となり、表面から見た際にも均一な面を形成できる。この溶融樹脂が基材11の凹状部の内側空間へ充填される深さは、溶融樹脂が基材11の最表面に接した熱溶融した柔軟な状態から、基材11の凹状部内部空間へ浸透するとともに固化した樹脂硬度の硬度バランスがとれた深さまで侵入していくこととなる。ゴム硬度90よりも小さい時、このバランスは最適化され、原紙表面に理想的な空隙を形成できる。
また、第2プレスローラ71は、表面粗さRaが、0.6μm以上5μm以下が好ましく、0.9μm以上3μm以下がより好ましく、0.9μm以上1μm以下が特に好ましい。第2プレスローラ71の表面が粗いと、樹脂層12の平滑性が損なわれる虞があるため、第2プレスローラ71の表面は極力平滑がよい。
また、第2チルローラ72は、表面粗さRmaxが、2μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.7μm以下である。また、第2チルローラ72は、表面粗さRaが3μm以下、好ましく1μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。第2チルローラ72の表面が粗いと、受容層22又はフィルム20の基材11側とは反対側の面の平滑性が損なわれる虞があるため、第2チルローラ72の表面は極力平滑がよい。
以下、シート貼合装置70におけるクリアランス調整に関する構成について説明する。シート貼合装置70においては、第2プレスローラ71がアーム76に揺動可能に支持されており、アーム76の揺動に応じて第2プレスローラ71が第2チルローラ72に対して接触又は離間するようになっている。アーム76は、その一端側で第2プレスローラ71を支持し、その他端側で付勢機構74と連結している。またアーム76の揺動支点Pは第2プレスローラ71の支持部と付勢機構74との連結部との間に設けられている。
シート貼合装置70による貼り合わせを行う際には、付勢機構74がアーム76を揺動させるための力をアーム76の他端側から付与し、これにより、第2プレスローラ71が第2チルローラ72に向けて移動する。本実施の形態では、付勢機構74がエアシリンダーであり、付勢機構74がアーム76を揺動させるための力をアーム76の他端側から付与した際、クリアランスを設けない場合には、第2プレスローラ71は第2チルローラ72に押し付けられた状態で静止する。一方で、クリアランスを設ける場合には、アーム76が後述のローラフォロア77を介してクリアランス調整機構75に押し付けられた状態で、第2プレスローラ71が静止する。この際、エアシリンダーのシリンダー内部には圧縮空気が充填された状態となり、エアシリンダーは空気ばねのように機能する。すなわち、付勢機構74が付与する付勢力は、第2プレスローラ71が第2チルローラ72に向けて付勢された状態であっても、第2プレスローラ71が第2チルローラ72から離れる方向へ移動可能(押し戻し可能)になる程度に調整されている。なお、付勢機構74はエアシリンダーに限られるものではなく、例えば油圧シリンダー等でもよい。付勢機構74は、第2プレスローラ71を第2チルローラ72に押し付ける力(圧力)、又は、アーム76をクリアランス調整機構75に押し付ける力(圧力)を調整可能であり、例えば0.14MPa以上0.60MPa以下の範囲で調整できる。後述の実施例では、当該圧力を「シリンダ圧」と呼称する。また、上記説明では、付勢機構74とアーム76の間に揺動支点Pがある場合について説明したが、3点の位置関係において揺動支点Pが端に位置する場合も同様である。また、揺動支点Pを有さない、第2プレスローラがサーボ式で稼働する際にも、サーボ自体の押し付け力、あるいは、サーボ機構を可変とすることで、クリアランス調整が可能である。
上述のように付勢機構74がアーム76を揺動させるための力をアーム76の他端側から付与した際、クリアランス調整機構75は、詳しくはアーム76に設けられたローラフォロア77(接触部)と接触して第2プレスローラ71の移動を制限することで、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間のクリアランスの大きさを調整することが可能となる。あるいは、クリアランスが無い場合には第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との接触の程度を調整することが可能となる。このようなクリアランス調整機構75は、第2プレスローラ71を第2チルローラ72に向けて付勢する付勢力の少なくとも一部を負担することが可能となっている。詳しくは、クリアランス調整機構75は、後述の移動部材81が、第2プレスローラ71を第2チルローラ72に向けて付勢する付勢機構74による付勢力を負担しない初期位置(図11に示す状態)から、当該付勢力の負担割合を増加させる方向(図9における上方向)に移動するに従い、第2チルローラ72に向けて付勢された第2プレスローラ71を、第2チルローラ72からより大きく引き離す。
これにより、第2プレスローラ71を第2チルローラ72に向けて付勢する付勢力の一部を、クリアランス調整機構75が負担する・負担しないに関わらず、基材、樹脂、フィルムが通過する際に、第2プレスローラ71が第2チルローラ72から離れる方向に移動できる。
図10はシート貼合装置70を示し、特にクリアランス調整機構75が拡大して示されている。本実施の形態におけるクリアランス調整機構75は、傾斜面81Sを備える移動部材81と、保持部材82とを有する。
移動部材81は、付勢機構74による付勢力を負担しない上記初期位置から、当該付勢力の負担割合を増加させる方向(図9における上方向)に移動することにより、傾斜面81Sでローラフォロア77と接触する。ここで、「付勢力の負担割合を増加させる方向」とは、すなわち、付勢機構74による付勢力に抗して、第2プレスローラ71を第2チルローラ72から引き離す方向である。
保持部材82は、移動部材81を移動位置に応じて保持する。
このようなクリアランス調整機構75では、移動部材81の、初期位置から離れる方向(付勢力の負担割合を増加させる方向(図9における上方向))への移動に応じて、傾斜面81S及びローラフォロア77を介して、アーム76を第2チルローラ72から引き離すように構成される。
図11及び図12はクリアランス調整機構75によるクリアランス調整の一例を示す図である。図11においては、移動部材81が付勢機構74による付勢力を負担しない、具体的には移動部材81がローラフォロア77と接触しない又は接触しても付勢力を負担しない、初期位置に配置されている状態であって、第2プレスローラ71と第2チルローラ72とが接触している状態を示している。この場合、第2プレスローラ71が第2チルローラ72に押し付けられた状態で静止している。そして、移動部材81が付勢機構74による付勢力を全く負担しない場合、第2プレスローラ71の外周面は大きくつぶれた状態になる。ここで、クリアランス調整機構75は、移動部材81を上記初期位置から上方へ移動させることで第2プレスローラ71の外周面のつぶれ量(弾性変形量)を低減できる。
一方で、図12は移動部材81が上記初期位置から上方に移動した状態を示している。図12に示す状態では、移動部材81が付勢機構74による付勢力を全て負担しており、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間にクリアランスCが設けられている。ここで、クリアランス調整機構75は、移動部材81を上方へ移動させることでクリアランスCをさらに大きくでき、移動部材81を下方へ移動させることでクリアランスCを小さくできる。
なお、クリアランスCの寸法は、第2プレスローラ71の中心と第2チルローラ72の中心とを結ぶ方向における第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間の距離xである。このようなクリアランスCの大きさは、例えば第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間の拡大画像から求めてもよい。またクリアランス調整機構75の移動部材81の位置に基づいて計算してもよい。クリアランスCの寸法は第2プレスローラ71と第2チルローラの隙間に、隙間ゲージを差し込んで実測できる。
以上のようにシート貼合装置70は、クリアランス調整機構75の移動部材81の移動に応じて、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間のクリアランスの大きさの調整、及び、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面とが接触する場合の第2プレスローラ71の外周面のつぶれ量を調整できる。そして、このような調整によって、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に基材11と樹脂層12と受容材24とを通す際にこれらの積層体にかかる圧力を調整することが可能となる。
詳しくは、本実施の形態におけるシート貼合装置70では、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランス又は接触状態を調整することによって、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に基材11と樹脂層12と受容材24とを通す際に、第2プレスローラ71の外周面が弾性的に変形するか、及び/又は、第2プレスローラ71と第2チルローラ72とが相対的に離れる状態になるようにすることで、基材11と樹脂層12と受容材24とにかかる圧力が過剰に大きくなることを回避する。上述したように本実施の形態にかかる熱転写受像シート1は空隙30を有しており、この空隙30は、基材11の表面の凹状部の内側空間を樹脂層12で充填しないように樹脂層12と基材11とを積層することで形成される。すなわち、本実施の形態にかかるシート貼合装置70によれば、基材11と樹脂層12と受容材24とにかかる圧力が過剰に大きくなることを回避することにより、基材11の表面への樹脂層12の食い込み量を調整しながら、基材11と、受容材24におけるフィルム20と、を樹脂層12で接着する。これにより、基材11の表面の凹状部の内側空間を樹脂層12で充填しないように樹脂層12と基材11とを積層できる。
<熱転写受像シートの製造方法>
以下、製造システム50を用いた熱転写受像シート1の製造方法の一例を、図9等を参照しつつ説明する。ここで説明する製造方法は、クリアランス調整機構75を用いて第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランス又は接触状態を調整する調整工程と、樹脂貼合装置60を用いて裏面層形成樹脂13Rを供給する第1供給工程と、樹脂貼合装置60を用いて基材11と裏面層13とを貼り合わせる第1貼合工程と、シート貼合装置70を用いて樹脂層形成樹脂12Rを供給する第2供給工程と、シート貼合装置70を用いて基材11と受容材24とを貼り合わせる第2貼合工程と、を備える。
<調整工程>
調整工程では、クリアランス調整機構75の移動部材81の位置調整により、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランス又は接触状態での第2プレスローラ71の外周面のつぶれ量(第2プレスローラ71の弾性変形量)が調整される。
本件発明者は、基材11と樹脂層12と受容材24とにかかる圧力が過剰に大きくなることを回避して基材11と樹脂層12との界面に空隙30を形成する場合には、基材11と樹脂層12と受容材24とが通される前の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスをd1とし、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に通される前の基材11と樹脂層12と受容材24との総厚をhsとしたとき、d1-hsが、-250μm以上-50μm以下になることが好適であり、-230μm以上-50μm以下になることが特に好適を見出した。この好適な数値範囲は、基材11と樹脂層12と受容材24との総厚hsが、100μm以上300μm以下を前提とする。また本件発明者は、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に基材11と樹脂層12と受容材24とを通す際に、これらを含む積層体に0.05MPa以上0.4MPa以下の圧力がかかるようにすることが好適をさらに見出している。後述の実施例では、当該圧力を「ニップ圧」と呼称する。本実施の形態では、基材11と樹脂層12と受容材24との総厚hsを考慮し、d1-hsが-250μm以上-50μm以下となり、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に基材11と樹脂層12と受容材24とを通す際にこれらの積層体に0.05MPa以上0.4MPa以下の圧力がかかるように第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランス又は接触状態が調整される。0.05MPa以上0.4MPa以下の範囲とすることで、エア噛みの抑制、接着状態を安定にするとともに、面質良好な積層体とすることができる。
この調整時には、付勢機構74も駆動される。この際、付勢機構74がアーム76を介して第2プレスローラ71に付与する圧力は一定の値とされる。本実施の形態では、付勢機構74が出力する圧力と、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランス又は接触状態と、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間を通る裏面層13を含む基材11と樹脂層12と受容材24とを含む積層体にかかる圧力と、の関係が予め特定されている。調整工程では、付勢機構74が出力する圧力と、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間を通る基材11と樹脂層12と受容材24とを含む積層体にかけることが所望される圧力とを決めた上で、上記関係を参照することで、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランス又は接触状態を所望の状態に調整できる。
なお上記圧力は基材11と樹脂層12と受容材24との積層方向で基材11と樹脂層12と受容材24とにかける圧力のことである。また、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間を通る基材11と樹脂層12と受容材24とにかかる圧力は、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に例えば感圧紙を通して通過後の感圧紙の状態から特定できる。なお、本件発明者は、後述する各実施例における条件において、基材11と樹脂層12と受容材24との積層体にかかる圧力を、感圧紙を積層体に見立てて計測し、この際、計測された圧力は最大で約0.4MPa程度であった。また、第2プレスローラ71及び第2チルローラ72のそれぞれに対応するロードセルにて、積層体(基材11、樹脂層12、受容材24)通過時の圧力を計測することでも、当該積層体にかかる圧力を計測できる。このような計測により、後述する各実施例における条件において、基材11と樹脂層12と受容材24との積層体にかかる圧力を計測した場合も、計算された圧力は、最大で約0.4MPa程度であった。そして、各実施例では、受容層22の表面が平滑な熱転写受像シート1が得られていた。したがって、基材11と樹脂層12と受容材24との積層体にかかる圧力の好ましい範囲の上限は、0.4MPa以下にした。一方で、基材11と樹脂層12と受容材24との積層体にかかる圧力が、0.05MPaより小さいと、基材11と樹脂層12と受容材24との接着状態が不安定になり得る。また、エア噛込みが生じ易くなる。そのため、基材11と樹脂層12と受容材24との積層体にかかる圧力の好ましい範囲の上下限は、0.05MPaとした。この範囲とすることで、エア噛みの抑制、接着状態を安定にするとともに、面質良好な積層体とすることができる。
上述のような調整工程の後には、樹脂貼合装置60の各ローラやシート貼合装置70の各ローラが駆動される。
<第1供給工程>
第1供給工程は、樹脂貼合装置60の第1プレスローラ61及び第1チルローラ62、シート貼合装置70の第2プレスローラ71及び第2チルローラ72、並びに付勢機構74が駆動された後に行われる。樹脂貼合装置60の第1プレスローラ61及び第1チルローラ62が回転すると、基材11が第1チルローラ62によって搬送される。第1供給工程では、基材11が第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間に送り込まれる前に、基材11の第1プレスローラ61側の面とは反対側の面に裏面層形成樹脂13Rが供給される。上述したが、裏面層形成樹脂13Rは第1ダイ63からカーテン状に一定の量で溶融押出される。これにより一定の速度で搬送中の基材11上に一定の厚みの裏面層形成樹脂13Rからなる裏面層13が形成される。
<第1貼合工程>
第1貼合工程では、上述のようにして裏面層13が設けられた基材11が第1プレスローラ61の外周面と第1チルローラ62の外周面との間に送り込まれて挟み込まれることで、基材11に裏面層13が一体化した状態が安定するように貼合される。
<第2供給工程>
裏面層13が一体化された基材11は、第2プレスローラ71の回転によって第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に案内され、これと同時に、第2チルローラ72がその回転によって受容材24を搬送して第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に案内する。第2供給工程では、受容材24が第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に送り込まれる前に、受容材24の第2チルローラ72側の面とは反対側の面、すなわちフィルム20上に樹脂層形成樹脂12Rが供給される。上述したが、樹脂層形成樹脂12Rは第2ダイ73からカーテン状に一定の量で溶融押出される。これにより一定の速度で搬送中の受容材24上に一定の厚みの樹脂層形成樹脂12Rからなる樹脂層12が形成される。
<第2貼合工程>
第2貼合工程では、上述のようにして樹脂層12が設けられた受容材24と基材11との積層体が、第2プレスローラ71の外周面と第2チルローラ72の外周面との間に送り込まれて挟み込まれることで、基材11と受容材24とが樹脂層12によって一体化した状態が安定するように貼合される。ここで、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間を通る基材11と樹脂層12と受容材24とにかかる圧力は、調整工程による調整により過剰に大きくなることが回避される。
以上のような製造方法により、基材11と樹脂層12との境界に空隙30を有する熱転写受像シート用支持体10又は熱転写受像シート1を製造できる。なお、以上に説明した製造方法では、基材11と受容材24とを樹脂層12により一体化したが、基材11とフィルム20とを樹脂層12により一体化した後に、フィルム20上に受容層22を積層してもよい。この場合、シート貼合装置70の第2チルローラ72でフィルム20のみを搬送するようにする。
次に、本開示の実施例とその比較例について説明する。
以下に説明する実施例1~7、9~17の熱転写受像シートは、上述の実施の形態で説明した熱転写受像シート1と同じ構成であり、基材11と、樹脂層12と、裏面層13と、フィルム20と、プライマー層21と、受容層22とを備える。実施例8は、熱転写受像シート用支持体であり、基材11と、樹脂層12と、裏面層13と、フィルム20とを備える。なお、平滑度、SRa、地合い、接着性、コストの評価は、この支持体の断熱層表面にプライマー、受容層を形成し評価した。
実施例1~17は、上述した製造システム50によって製造されており、基材11の表面の凹状部の内側空間が樹脂層12で充填されないようクリアランス調整機構75によって第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランス又は接触状態が調整された上で製造されている。
一方で、比較例1、2は熱転写受像シートであるが、実施例1~7、9~17とは異なる製造条件で製造されている。詳しくは、比較例1、2は、上述した製造システム50によって製造されているが、この際、クリアランス調整機構75を用いていない。そのため、比較例1、2では、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間において樹脂層12と基材11とが大きい圧力を受けている。
以下、各実施例及び各比較例で用いた部材の材質や製造条件を説明する。図13には、各実施例及び各比較例の製造条件が示されている。
<実施例1>
基材11として上質紙を用いた。上質紙の平滑度は60秒であり、表面粗さSRaは3.5μmであり、厚みは178μmであり、密度は0.87g/cmである。
裏面層13は、HDPE(高密度ポリエチレン)とLDPE(低密度ポリエチレン)とを8:2の割合で混合させたポリオレフィンによって、厚み24μmとなるように形成した。裏面層13の厚み24μmは、裏面層13を形成する裏面層形成樹脂13Rが溶融押出により基材11上に塗布された際の厚みである。上記ポリオレフィンの融点は127℃であり、密度は0.948g/cmである。
樹脂層12は、LDPE(低密度ポリエチレン)であるポリオレフィンによって、厚み15μmとなるように形成した。樹脂層12の厚み15μmは、樹脂層12を形成する樹脂層形成樹脂12Rが溶融押出によりフィルム20上に塗布された際の厚みである。上記ポリオレフィンの融点は107℃であり、密度は0.916g/cmである。
フィルム20は、厚み35μmのボイドフィルムである。ボイドフィルムの材質はポリプロピレンである。
フィルム上に、下記組成のプライマー層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ0.8μmのプライマー層を形成した。
<プライマー層用塗工液>
・ポリエステル 4.2質量部
(ポリエスター(登録商標)WR-905 日本合成化学工業(株))
・酸化チタン 8.4質量部
(TCA-888 堺化学工業(株))
・イソプロピルアルコール(IPA) 10質量部
・水 30質量部
上記のようにして形成したプライマー層上に、下記組成の受容層形成用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ3μmの受容層を形成し、本開示の熱転写受像シートを得た。
<受容層形成用塗工液>
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 60質量部
(ソルバイン(登録商標)C 日信化学工業(株))
・エポキシ変性シリコーン樹脂 1.2質量部
(X-22-3000T 信越化学工業(株))
・メチルスチル変性シリコーン樹脂 0.6質量部
(X-24-510 信越化学工業(株))
・メチルエチルケトン 2.5質量部
・トルエン 2.5質量部
第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に入り込む前の上記各部材(11、12、13、20、21、22)でなる積層体の厚みは251μmである。なお、上記した基材11の厚み178μmと、裏面層13の厚み24μmと、樹脂層12の厚み15μmと、フィルム20の厚み35μmと、プライマー層21の厚み0.8μmと、受容層22の厚み3μmとを単純に加算すると、255.8μmとなり、上記した積層体の厚み251μmよりも大きい。第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に入り込む前の積層体が、単純に加算した厚みよりも小さいのは、裏面層13が、樹脂貼合装置60の第1プレスローラ61及び第1チルローラ62の間で挟み込まれる際に、紙基材裏面の凹凸部に裏面樹脂の一部が侵入するためである。このような厚みの 減少は、以下の他の実施例や比較例でも、同様に生じている。
上記積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさは、50μmである。
このようなクリアランスは、クリアランス調整機構75が付勢機構74による付勢力を全て負担することで形成される。
ここで、基材11と樹脂層12と受容材24とが通される前の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスをd1とし、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に通される前の基材11と樹脂層12と受容材24との総厚をhsとしたとき、d1-hsは、-201μmとなる(表中、「差分」参照)。
第2プレスローラ71はゴムローラであり、ゴム硬度が、Hs70である。また、第2プレスローラ71の外周面の表面粗さRaは、0.99である。
第2チルローラ72の表面粗さRaは、0.08であり、表面粗さRmaxは、0.69である。
第2ダイ73は、樹脂層形成樹脂12Rを、第2プレスローラ71の中心と第2チルローラ72の中心とを結ぶ方向における第2チルローラ72の第2プレスローラ71側の端点から、当該結ぶ方向において第2プレスローラ71の中心側に9mmの位置で落下させる。
付勢機構74はエアシリンダーであり、そのプレス圧力(シリンダー圧)は0.42MPaである。プレスローラは2本のアームのレバー比により0.88MPaで押されることとなる。別途、感圧紙(富士フィルム超極低圧用LLLW)を受像紙に見立て積層体厚み(251μm)と「ローラ間クリアランス(50μm)」の差分(-201μm)に合わせて測定した圧力(ニップ圧)は0.20MPa以下であった。
ニップ圧の測定は、実施例2~17及び比較例1、2においても行った。各実施例及び比較例について測定したニップ圧の値は、図13に示す表に示されている。
<実施例2>
基材11として、平滑度が50秒であり、表面粗さSRaが3.5μmであり、厚みが147μmであり、密度が0.87g/cmである上質紙を用いた。
また、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に入り込む前の積層体の厚みは220μmである。d1-hsは、-170μmとなる。
その他の条件は、実施例1と同じである。
<実施例3>
基材11として、平滑度が410秒であり、表面粗さSRaが2.6μmであり、厚みが155μmであり、密度が1.02g/cmである上質紙を用いた。
また、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に入り込む前の積層体の厚みは228μmである。d1-hsは、-178μmとなる。
その他の条件は、実施例1と同じである。
<実施例4>
基材11として、平滑度が110秒であり、表面粗さSRaが2.2μmであり、厚みが165μmであり、密度が0.91g/cmである上質紙を用いた。
また、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に入り込む前の積層体の厚みは238μmである。d1-hsは、-188μmとなる。
その他の条件は、実施例1と同じである。
<実施例5>
基材11として、平滑度が410秒であり、表面粗さSRaが2.8μmであり、厚みが160μmであり、密度が1.01g/cmである上質紙を用いた。
また、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に入り込む前の積層体の厚みは233μmである。d1-hsは、-183μmとなる。
その他の条件は、実施例1と同じである。
<実施例6>
基材11として、平滑度が140秒であり、表面粗さSRaが2.1μmであり、厚みが155μmであり、密度が0.93g/cmである上質紙を用いた。
また、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に入り込む前の積層体の厚みは228μmである。d1-hsは、-178μmとなる。
その他の条件は、実施例1と同じである。
<実施例7>
付勢機構74であるエアシリンダーのプレス圧力が0.14MPaである。
その他の条件は、実施例2と同じである。
<実施例8>
実施例8では、シート貼合装置70においてフィルム20のみが基材11に樹脂層12を介して貼り合わされる。フィルム20の厚みは35μmである。d1-hsは、-166μmとなる。
その他の貼合わせ条件は、実施例2と同じである。
また、表裏貼合わせた後、プライマー、受容層を塗布し、熱転写受像シートを作製した。
<実施例9>
実施例9では、第2ダイ73が、樹脂層形成樹脂12Rを、第2プレスローラ71の中心と第2チルローラ72の中心とを結ぶ方向における第2チルローラ72の第2プレスローラ71側の端点に落下させる。
その他の条件は、実施例2と同じである。
<実施例10>
積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、150μmである。
また、第2プレスローラ71のゴム硬度が、Hs60である。
その他の条件は、実施例2と同じである。
<実施例11>
積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、100μmである。
その他の条件は、実施例10と同じである。
<実施例12>
積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、50μmである。
その他の条件は、実施例10と同じである。
<実施例13>
積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、0μmである。実施例13では、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との隙間はないが、これらが互いに押し合っている状態ではない。
その他の条件は、実施例10と同じである。
<実施例14>
積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、0μmである。そして、第2プレスローラ71の外周面が50μmつぶれるように第2プレスローラ71と第2チルローラ72とが押し合っている。なお、表中の(-50)は、第2プレスローラ71の外周面のつぶれ量(弾性変形量)である。
その他の条件は、実施例10と同じである。
なお、実施例14の製造時には、クリアランス調整機構75が付勢機構74による付勢力の一部を負担している。
<実施例15>
積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、0μmである。そして、第2プレスローラ71の外周面が150μmつぶれるように第2プレスローラ71と第2チルローラ72とが押し合っている。
その他の条件は、実施例10と同じである。
なお、実施例15の製造時にも、クリアランス調整機構75が付勢機構74による付勢力の一部を負担している。
<実施例16>
積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、0μmである。そして、第2プレスローラ71の外周面が250μmつぶれるように第2プレスローラ71と第2チルローラ72とが押し合っている。
その他の条件は、実施例10と同じである。
なお、実施例16の製造時にも、クリアランス調整機構75が付勢機構74による付勢力の一部を負担している。
<実施例17>
積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、0μmである。実施例17では、第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間に隙間はないが、これらが互いに押し合っている状態ではない。
その他の条件は、実施例2と同じである。
<比較例1>
比較例1では、積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、0μmである。そして、第2プレスローラ71の外周面が2000μm程度つぶれるように第2プレスローラ71と第2チルローラ72とが押し合っている。
その他の条件は、実施例2と同じである。
比較例1の製造時には、クリアランス調整機構75が付勢機構74による付勢力を全く負担していない。すなわち、第2プレスローラ71と第2チルローラ72とので積層体が大きい圧力を受ける。
別途、感圧紙(富士フィルム(株)製、超極低圧用LLLW)を受像紙に見立て積層体厚み(220μm)に合わせて測定した圧力は0.74MPaであった。
<比較例2>
比較例2では、積層体が入り込む前(サンドラミネート前)の第2プレスローラ71と第2チルローラ72との間のクリアランスの大きさが、0μmである。そして、第2プレスローラ71の外周面が2000μm程度つぶれるように第2プレスローラ71と第2チルローラ72とが押し合っている。
その他の条件は、実施例7と同じである。
比較例2の製造時にも、クリアランス調整機構75が付勢機構74による付勢力を全く負担していない。すなわち、第2プレスローラ71と第2チルローラ72とので積層体が大きい圧力を受ける。
別途、感圧紙(富士フィルム(株)製、超極低圧用LLLW)を受像紙に見立て積層体厚み(220μm)に合わせて測定した圧力は0.41MPaであった。
<評価>
上記実施例及び比較例に対する評価は、(1)受容層又はフィルムの表面の平滑度、(2)受容層又はフィルムの表面の表面粗さ、(3)熱転写画像の表面の地合、(4)基材とフィルムとの接着性、(5)製造コスト、の観点から行った。(1)~(5)の詳細は、以下の通りである。
(1)平滑度
評価に使用する平滑度(秒)は、JIS P 8155:2010に準拠して測定した。受容層又はフィルム(実施例8)の表面の平滑度が高い場合には、熱転写画像の表面が平滑となり、高品質な熱転写画像が得られると評価できる。
(2)表面粗さ
評価に使用する表面粗さSRaは、JIS B 0601:1982に準拠して測定した。受容層又はフィルム(実施例8)の表面粗さが小さい場合には、熱転写画像の表面が平滑となり、高品質な熱転写画像が得られると評価できる。
(3)地合
画像の地合は、昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS(株)製、MEGAPIXELIII)を用いて、実施例及び比較例にかかる熱転写受像シート、又は、実施例にかかる熱転写受像シート用支持体を用いて作製した熱転写受像シートに、グレー画像を印画して、下記の評価基準にて、目視観察による地合の評価を行なった。
(評価基準)
A:グレー画像が均一であり、表面の凹凸が観察されず、良好な平滑性、質感、風合いを有するものであった。
B:グレー画像がほぼ均一であり、表面の凹凸が多少観察されるものの平滑性、質感、風合いに多少劣るが、実用上問題なかった。
C:グレー画像が均一に形成できず、表面の凹凸が目立ち地合がかなり気になるものであり、平滑性、質感、風合いに欠けるものであった。
(4)接着性
熱転写受像シートにメンディングテープ(ニチバン(株)製)を貼り付けた後、熱転写受像シートの面に対してメンディングテープの面が45度の角をなす位置関係となるように、メンディングテープを熱転写受像シートから剥離して、基材11とフィルム20間の接着性を評価した。評価基準は下記の通りである。(評価基準)
A:基材とフィルムの界面で剥離が生じなかった。
B:基材とフィルムの界面の一部で剥離が生じた、もしくはフィルムに、熱によるダメージが見られた。
C:基材とフィルムの界面の大部分で剥離が生じた。
(5)製造コスト
実施例1~17及び比較例1、2において用いた基材が、高品質の熱転写画像を得る際に熱転写受像シートにおいて一般的に用いる、平滑度2000秒以上、表面粗さSRa1.0以下のコート紙(例えば)よりも安価であるときには、A(良)と評価する。
上述の評価結果が図14に示されている。また、図14には、各実施例及び各比較例の熱転写受像シートの断面のSEM画像における空隙の有無の確認結果が示されている。SEM画像取得時の加速電圧は、3.0kVとした。確認を行った断面は、MD(第1の方向D1)の断面と、TD(第2の方向D2)の断面である。
MDの断面における空隙は、熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10を第1の方向D1及び積層方向を含む面にて切断し、断面を露出させ、当該断面の1000倍のSEM画像を取得して、第1の方向D1における1mmの範囲を観察した。
TDの断面における空隙(第2断面空隙)は、熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10を第2の方向D2及び積層方向を含む面にて切断し、断面を露出させ、当該断面の1000倍のSEM画像を取得して、第2の方向D2における1mmの範囲を観察した。
上述の切断を実施する際には、受容層22の側から刃物によって熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10を切断した。
図14に示すように、実施例1~17における受容層22の表面平滑度は、35000秒以上、特に50000秒以上のものが多く非常に平滑であった。また、実施例1~17の表面粗さSRaは、2.2μm以下であり、この点から平滑性が評価できた。そして、実際に熱転写を行った後の画像観察においても、いずれも地合は良好であった。また、基材11とフィルム20との接着性も実施例10を除き良好であった。さらに、実施例1~17は、全て上質紙を用いているため製造コストの点でも有利である。なお、実施例10の接着性に影響が生じたのは、ラミネート時の圧力が他の実施例に比べて小さいかったことに起因するものと推認される。
一方で、比較例1、2における受容層の表面の平滑度は、20000よりも小さく、表面粗さSRaは、2.4以上であり、実施例に比べて平滑性が損なわれていた。そして、実際に熱転写を行った後の画像観察においても、地合が良好とは言えなかった。
図14の表中の最上段における「高さ0.5μm以上幅1μm以上の空隙の総計」は、第1の方向D1における1mmの範囲での空隙の個数と、第2の方向D2における1mmの範囲での空隙の個数と、の合計を示す項目である。図14の表中の最上段における「MD方向断面」の表中下方には、第1の方向D1で確認された空隙の個数及びサイズが示されている。また図14の表中の最上段における「TD方向断面」の表中下方には、第2の方向D2で確認された空隙の個数及びサイズが示されている。
各実施例では空隙30が各方向で1~2個、確認されている。実施例5では、第2の方向D2での断面で空隙が確認されていないが、これは積層体にかかる圧力が多少大きくなったことに起因するものと推認される。一方、比較例1、2では、空隙はほとんど確認できなかった。
各実施例において空隙30が確認されている結果から、クリアランス調整機構75を用いて適正な製造条件を設定した場合には、空隙30が形成される熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10を製造できることが確認された。そして、空隙30が形成される熱転写受像シート1又は熱転写受像シート用支持体10では、受容層22が平滑となり、熱転写を行った場合に、地合が良好で平滑な高品質な熱転写画像を形成できることも確認された。
以上、本開示の実施の形態及び実施例を説明したが、本開示は上述の実施の形態又は実施例に限られるものではなく、上述の実施の形態においては各種の変更を行うことができる。例えば上述の実施の形態は、昇華型熱転写方式を前提としたが、本開示は、溶融型熱転写方式でも適用できる。
1…熱転写受像シート
10…熱転写受像シート用支持体
11…基材
12…樹脂層
12R…樹脂層形成樹脂
13…裏面層
13R…裏面層形成樹脂
20…フィルム
21…プライマー層
22…受容層
24…受容材
30…空隙
50…製造システム
60…樹脂貼合装置
61…第1プレスローラ
62…第1チルローラ
63…第1ダイ
70…シート貼合装置
71…第2プレスローラ
72…第2チルローラ
73…第2ダイ
74…付勢機構
75…クリアランス調整機構
76…アーム
77…ローラフォロア
81…移動部材
81S…傾斜面
82…保持部材

Claims (15)

  1. 基材と、樹脂層と、フィルムとをこの順に積層する熱転写受像シート用支持体であって、
    前記基材と前記樹脂層との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかに、一つ又は複数の空隙を有し、
    前記基材、前記樹脂層及び前記フィルムの積層方向における前記空隙の高さは、0.5μm以上15μm以下である、熱転写受像シート用支持体。
  2. 前記空隙は、前記樹脂層から前記基材に向かう方向へ凹むように形成されている、請求項1に記載の熱転写受像シート用支持体。
  3. 前記空隙は、前記積層方向を含む面で前記基材、前記樹脂層及び前記フィルムを切断した際の第1の断面において、0.5μm以上15μm以下の高さを有する、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート用支持体。
  4. 前記空隙は、1μm以上1000μm以下の幅を有する、請求項3に記載の熱転写受像シート用支持体。
  5. 前記空隙は、前記第1の断面上で前記積層方向に直交する第1の方向における1mmの範囲において一つ以上存在する、請求項3又は4に記載の熱転写受像シート用支持体。
  6. 前記空隙は、前記第1の方向における1mmの範囲において二つ以上存在する、請求項5に記載の熱転写受像シート用支持体。
  7. 前記積層方向を含み且つ前記第1の断面と直交する面で前記基材、前記樹脂層及び前記フィルムを切断した際の第2の断面における、前記基材と前記樹脂層との境界及び境界付近のうちの少なくともいずれかに、前記積層方向における高さが0.5μm以上15μm以下の、一つ又は複数の第2断面空隙を有する、請求項4乃至6のいずれかに記載の熱転写受像シート用支持体。
  8. 前記第2断面空隙は、前記樹脂層から前記基材に向かう方向へ凹むように形成されている、請求項7に記載の熱転写受像シート用支持体。
  9. 前記第2断面空隙は、1μm以上1000μm以下の幅を有する、請求項7又は8に記載の熱転写受像シート用支持体。
  10. 前記第2断面空隙は、前記第2の断面上で前記積層方向に直交する第2の方向における1mmの範囲において一つ以上存在する、請求項7乃至9のいずれかに記載の熱転写受像シート用支持体。
  11. 前記第2断面空隙は、前記第2の方向における1mmの範囲において二つ以上存在する、請求項10に記載の熱転写受像シート用支持体。
  12. 前記基材は、紙基材であり、
    前記第1の断面は、前記紙基材の繊維方向に略平行な方向に延びる、請求項3乃至11のいずれかに記載の熱転写受像シート用支持体。
  13. 前記基材の前記樹脂層側の面の表面粗さSRaは、1μm以上3μm以下であり、
    前記フィルムの前記樹脂層側とは反対側の面の表面粗さSRaは、0.01μm以上0.1μm以下である、請求項1乃至12のいずれかに記載の熱転写受像シート用支持体。
  14. 請求項1乃至12のいずれかに記載の熱転写受像シート用支持体と、
    前記熱転写受像シート用支持体の前記フィルム上に設けられる受容層と、を備える、熱転写受像シート。
  15. 前記受容層の前記熱転写受像シート用支持体側とは反対側の面の表面粗さSRaは、2.2μm以下である、請求項14に記載の熱転写受像シート。
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