JP7462592B2 - 電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン単電池が複数積層された積層型電池モジュールを有する電池システムに関するものである。
従来より、例えば車載用のバッテリとして、リチウムイオン二次電池等の電池が適用されている。リチウムイオン二次電池では、充電・放電の過程において、その内部抵抗により発熱が生じ、特に大電流が通過する大型電池においては発熱量が大きい。そのため、電池の温度上昇を抑制すべく、空冷を行うための空気を流す貫通孔や、より高い冷却効果を得るための冷却水を流す貫通孔を電池内部に設ける工夫がなされている。
特開平11-73984号公報
しかしながら、従来技術のように用途別の貫通孔がそれぞれ電池内部に設けられると、電池内部における貫通孔の形成領域の割合がその分大きくなり、電池容量の低下を招くという問題がある。また、用途別の貫通孔が設けられる場合、特許文献1に記載されているように電池の貫通孔(流路)に別部材を連結する構成とすると、部材点数が増加して構成が複雑になるという問題もある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、リチウムイオン電池に設ける貫通孔の形成領域を削減した簡易な構成でありながら、電池の温度上昇を抑制することを可能とする電池システムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような知見に基づいて鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
[1]
樹脂集電体層を含む正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、樹脂集電体層を含む負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、を備えるリチウムイオン単電池が複数積層されてなり、積層方向に貫通する貫通孔が形成された積層型電池モジュールと、
前記貫通孔に第1ガスを供給するガス供給部と、
前記貫通孔に冷却液を供給する冷却液供給部と、
前記積層型電池モジュールの温度を検知する温度センサと、
前記温度センサから出力される検知信号に基づいて、制御モードを切り替える制御部と、
を備えることを特徴とする電池システム。
[2]
前記制御部は、前記温度センサから出力される検知信号に基づいて、異常制御モードに切り替えることを特徴とする、
[1]に記載の電池システム。
[3]
前記積層型電池モジュールを収容する収容部と、
前記収容部内に液体を供給する液体供給部と、
を更に備えており、
前記制御部は、前記異常制御モード時に、前記積層型電池モジュールを水没させるように前記液体供給部からの前記液体の供給を制御することを特徴とする、
[2]に記載の電池システム。
[4]
前記制御部は、前記温度センサから出力される検知信号に基づいて、通常制御モード又は高温制御モードに切り替え制御することを特徴とする、
[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の電池システム。
[5]
前記通常制御モードは、前記温度センサにより検知された温度が第1範囲の場合に、前記制御部によって実行されるモードであり、
前記高温制御モードは、前記温度センサにより検知された温度が前記第1範囲よりも高い第2範囲の場合に、前記制御部によって実行されるモードであることを特徴とする[4]に記載の電池システム。
[6]
前記貫通孔内の湿度を検知する湿度センサと、
前記高温制御モードから前記通常制御モードに切り替える際に、前記貫通孔内に第2ガスを供給するエアコンプレッサと、
を更に備えており、
前記制御部は、前記湿度センサから出力される検知信号に基づいて、前記エアコンプレッサからの前記第2ガスの供給を制御することを特徴とする[4]又は[5]に記載の電池システム。
[7]
前記制御部は、前記高温制御モードから前記通常制御モードに切り替える際に、前記エアコンプレッサから前記貫通孔内に前記第2ガスを供給し、前記湿度センサから出力される検知信号に基づいて前記貫通孔内の湿度が外気の湿度の所定範囲内に入ったと判定した場合に、前記エアコンプレッサからの前記第2ガスの供給を停止することを特徴とする[6]に記載の電池システム。
[8]
前記ガス供給部は前記エアコンプレッサを兼ねており、前記第1ガスと前記第2ガスとが同一のガスであることを特徴とする[6]又は[7]に記載の電池システム。
[9]
前記貫通孔の内周面を覆う補強部材が設けられていることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の電池システム。
[10]
前記正極集電体及び前記負極集電体は、導電性フィラーを有する導電性樹脂組成物を含み、
前記正極活物質層及び前記負極活物質層は、電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材で被覆された被覆電極活物質粒子を含むことを特徴とする[1]乃至[9]のいずれか1つに記載の電池システム。
[11]
前記液体供給部は、前記貫通孔内に螺旋状に配された液冷管を有しており、前記液冷管内に前記液体を供給することを特徴とする[3]に記載の電池システム。
[12]
前記液冷管は、前記貫通孔内の中央部位で最も配置密度が高いことを特徴とする[11]に記載の電池システム。
本発明によれば、リチウムイオン電池に設ける貫通孔の形成領域を削減した簡易な構成でありながら、電池の温度上昇を抑制することができる。
第1の実施形態による電池システムに適用される積層型電池モジュールを示す模式図である。 第1の実施形態による電池システムの概略構成を示す模式図である。 第2の実施形態による電池システムの概略構成を示す模式図である。 第3の実施形態による電池システムに適用される積層型電池モジュール及び冷却液供給部の一部を示す模式図である。 第3の実施形態による電池システムの概略構成を示す模式図である。 積層型電池モジュールが水没した様子を示す模式図である。
以下、本発明の諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施形態]
先ず、第1の実施形態として、発熱したリチウムイオン電池を冷却する電池システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。この電池システムは、例えば車載用バッテリ等として用いられる。
図1は、本実施形態による電池システムに適用される積層型電池モジュールを示す模式図であり、(a)が概略斜視図、(b)が(a)のI-I'に沿った概略断面図、(c)がリチウムイオン単電池の貫通孔の存在しない部位における概略断面図である。
本実施形態による電池システムに適用される積層型電池モジュール100は、リチウムイオン単電池1が複数積層されて直列に接続された組電池10を備える。なお、図1(b)では、図示の便宜上、リチウムイオン単電池1が4層積層された様子を例示するが、リチウムイオン単電池1を数十層~数百層積層する場合がある。
リチウムイオン単電池1は、正極電極11及び負極電極13がセパレータ12を介して積層され、正極電極11、セパレータ12、及び負極電極13の外周部を取り囲み封止するシール部14が設けられ、封止された内部に電解液が封入されて構成されている。正極電極11は、正極樹脂集電体21及び正極活物質層22が積層されてなる。負極電極13は、負極樹脂集電体23及び負極活物質層24が積層されてなる。
(正極樹脂集電体)
正極樹脂集電体21としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。また、これらの合金又は金属酸化物を用いても良い。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、更に好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電性フィラーの材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでも良い。
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01μm~10μmであることが好ましく、0.02μm~5μmであることがより好ましく、0.03μm~1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であっても良く、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であっても良い。
導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であっても良い。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性の良い金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。導電性フィラーが導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1μm~20μmであることが好ましい。
樹脂集電体中の導電性フィラーの重量割合は、5重量%~90重量%であることが好ましく、20重量%~80重量%であることがより好ましい。特に、導電性フィラーがカーボンの場合、導電性フィラーの重量割合は、20重量%~30重量%であることが好ましい。
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーの他に、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいても良い。また、複数の樹脂集電体を積層して用いても良く、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
正極樹脂集電体21の厚さは特に限定されないが、5μm~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体として用いる場合には、積層後の全体の厚さが5μm~150μmであることが好ましい。
正極樹脂集電体21は、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。導電性樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。なお、正極樹脂集電体21は、フィルム成形以外の成形方法によっても得ることができる。
(正極活物質層)
正極活物質層22は、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。
正極活物質層22が非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22に応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22の破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22は、正極活物質層13を、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22にする等の方法で得ることができる。
なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn24等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCox2、LiMn1-yCoy2、LiNi1/3Co1/3Al1/32及びLiNi0.8Co0.15Al0.052)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMaM'bM"c2(M、M'及びM"はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/32)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV25)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用しても良い。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであっても良い。
正極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01μm~100μmであることが好ましく、0.1μm~35μmであることがより好ましく、2μm~30μmであることが更に好ましい。
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であっても良い。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015-005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
被覆材には、導電剤が含まれていても良い。導電剤としては、正極樹脂集電体21に含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
正極活物質層22には、粘着性樹脂が含まれていても良い。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。従って、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極用バインダ)と粘着性樹脂とは異なる材料である。
正極活物質層22には、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていても良い。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(FSO22及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22及びLiC(CF3SO23等の有機酸のリチウム塩等が挙げられ、LiN(FSO22(LiFSIともいう)が好ましい。
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ-バレロラクトン等)等を挙げることができる。
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。非水溶媒は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
非水溶媒のうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、特に好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。最も好ましいのはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液である。
正極活物質層22には、導電助剤が含まれていても良い。導電助剤としては、正極集電体11に含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
正極活物質層22における導電助剤の重量割合は、3重量%~10重量%であることが好ましい。
正極活物質層22は、例えば、正極活物質及び電解液を含むスラリーを正極樹脂集電体21又は基材の表面に塗布し、余分な電解液を除去する方法によって作製することができる。基材の表面に正極活物質層22を形成した場合、転写等の方法によって正極活物質層22を正極樹脂集電体21と組み合わせれば良い。上記スラリーには、必要に応じて、導電助剤や粘着性樹脂が含まれていても良い。また、正極活物質は被覆正極活物質であっても良い。
正極活物質層22の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150μm~600μmであることが好ましく、200μm~450μmであることがより好ましい。
(負極樹脂集電体)
負極樹脂集電体23としては、正極樹脂集電体21で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極樹脂集電体23の厚さは特に限定されないが、5μm~150μmであることが好ましい。
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層23を得る方法等は、正極活物質層22が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22を得る方法と同様である。
負極活物質としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。上記負極活物質のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施しても良い。
これらの中でも、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましく、炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素がさらに好ましく、珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素-炭素複合体が更に好ましい。
負極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01μm~100μmが好ましく、0.1μm~20μmであることがより好ましく、2μm~10μmであることが更に好ましい。
本明細書において、負極活物質の体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であっても良い。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
負極活物質層24は、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。
電解液の組成は、正極活物質層22に含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
負極活物質層24には、導電助剤が含まれていても良い。導電助剤としては、正極活物質層22に含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
負極活物質層24における導電助剤の重量割合は、2重量%~10重量%であることが好ましい。
負極活物質層24には、粘着性樹脂が含まれていても良い。粘着性樹脂としては、正極活物質層22の任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
負極活物質層24は、例えば、負極活物質及び電解液を含むスラリーを負極樹脂集電体23又は基材の表面に塗布し、余分な電解液を除去する方法によって作製することができる。基材の表面に負極活物質層24を形成した場合、転写等の方法によって負極活物質層24を負極樹脂集電体23と組み合わせれば良い。上記スラリーには、必要に応じて、導電助剤や粘着性樹脂等が含まれていても良い。また、負極活物質は被覆負極活物質であっても良い。
負極活物質層24の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150μm~600μmであることが好ましく、200μm~450μmであることがより好ましい。
(セパレータ)
セパレータ12としては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、上記多孔性フィルムの積層フィルム(多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム等)、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン単電池に用いられるセパレータが挙げられる。
リチウムイオン単電池1は、正極活物質層22及び負極活物質層24の外周を封止することで電解液が封入された構成である。正極活物質層22及び負極活物質層23の外周を封止する方法としては、例えば、シール部14を用いて封止する方法が挙げられる。シール部14は、正極樹脂集電体21及び負極樹脂集電体23の間に配置されており、セパレータ12の外周を封止する機能を有する。
シール部14としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
リチウムイオン単電池1の製造方法としては、例えば、正極樹脂集電体21、正極活物質層22、セパレータ12、負極活物質層23、及び負極樹脂集電体24をこの順に重ね合わせた後、電解液を注入し、正極活物質層22及び負極活物質層24の外周をシール部14で封止することで得ることができる。正極活物質層22及び負極活物質層24の外周をシール部14で封止する方法としては、液状の封止材を塗布し硬化して封止する方法が挙げられる。
また、シール部14は、上述した電解液に対して耐久性のある高分子材料からなり、正極活物質層22又は負極活物質層24を収容する貫通孔を有する枠体であっても良い。シール部14が枠体である場合には、正極樹脂集電体21又は負極樹脂集電体23を枠体の一方の枠面に接合して貫通孔の一端を封止し、枠体の他方の枠面上にセパレータを挿入した状態で枠体同士を接着して封止する方法でリチウムイオン単電池1を得ることができる。
本実施形態において、図1に示すように、組電池10には、リチウムイオン二次単電池1の積層方向と平行に貫通する貫通孔が並んで形成されている。なお、リチウムイオン二次単電池1の積層方向は、組電池10の上面(又は下面)と直交する方向でなくとも良い。また、貫通孔は、積層方向と平行に形成されていなくても良い。図1では2つの貫通孔を例示しているが、貫通孔は1つのみ又は3つ以上形成される場合もある。貫通孔の内周面を覆うように、組電池10の全面に防水性の絶縁膜2が形成されている。貫通孔及び絶縁膜2により、貫通孔3a,3bが構成されている。貫通孔3a,3bは、組電池10の冷却時に空気等のガス(第1ガス)又は水等の冷却液が供給されるものである。貫通孔3a,3bは、いずれも第1ガス又は冷却液の供給を兼ねた第1ガス及び冷却液の共通貫通孔として用いられる。貫通孔が3つ以上設けられる場合でも、同様に第1ガス及び冷却液の共通貫通孔として用いられる。
なお、組電池10の表面の少なくとも一部、ここでは組電池10の貫通孔3a,3bの出入り口を除く全面を覆うように、外装フィルムを設けても良い。外装フィルムは、可撓性を有する絶縁材料からなり、電池に用いられている公知の材質を用いることが可能であり、好ましくはラミネートフィルムである。ラミネートフィルムとしては、外側にナイロンフィルム、中心にアルミニウム箔、内側に変性ポリプロピレン等の接着層を有した3層ラミネートフィルムを好ましく用いることができる。
ここで、貫通孔3a,3b内で絶縁膜2及び両縁部を覆う補強部材を形成するようにしても良い。補強部材は、例えば絶縁性材料又は防水層等からなるものである。貫通孔3a,3bに補強部材を設けることにより、例えばケーブル等を挿通させる場合に、ケーブル等が貫通孔3a,3bの壁面に当接することによる貫通孔3a,3bの破損や絶縁膜2の剥離等の発生を防止することができる。
本実施形態による電池システムは、上記のように構成された積層型電池モジュール100を備えて、以下のように構成される。図2は、本実施形態による電池システムの概略構成を示す模式図である。
この電池システムは、積層型電池モジュール100、ガス供給部31、冷却液供給部32、バルブ33,34、温度センサ35、及び制御部36を有している。制御部36は、温度センサ35により測定された積層型電池モジュール100の温度に応じて、ガス供給部31、冷却液供給部32、及びバルブ33,34の動作を制御する。
ガス供給部31は、積層型電池モジュール100の組電池10の発熱時に組電池10を冷却すべく、積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3bに空気等のガス(第1ガス)を供給するものである。冷却液供給部32は、積層型電池モジュール100の組電池10の発熱時に組電池10を冷却すべく、積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3bに水等の冷却液を供給するものである。
バルブ33は、その開閉により、ガス供給部31による積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3bへの第1ガスの供給又は停止を行うものである。バルブ34は、その開閉により、冷却液供給部32による積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3bへの冷却液の供給又は停止を行うものである。貫通孔3a,3bは、第1ガスの供給及び冷却液の共用供給路とされており、貫通孔3a,3bと接続されたパイプ37a,37bは、バルブ33,34の両方と連通しており、ガス供給部31が用いられる際には貫通孔3a,3bの全てに第1ガスが供給され、冷却液供給部32が用いられる際には貫通孔3a,3bの全てに冷却液が供給される。
温度センサ35は、積層型電池モジュール100の組電池10の温度を測定する温度計である。
本実施形態による電池システムは、温度センサ35により検知された温度が第1範囲、例えば常温~50℃未満の範囲内である場合を通常制御モード、温度センサ35により検知された温度が第2範囲、例えば50~100℃未満の範囲内である場合を高温制御モードとして、制御部36の制御により以下のように駆動する。
制御部36は、温度センサ35から出力される検知信号に基づいて、積層型電池モジュール100の組電池10の温度測定値が第1範囲内の通常温度であると判断した場合には、通常制御モードを実行してバルブ33を開けると同時にバルブ34を閉じる。これにより、積層型電池モジュール100の組電池10の貫通孔3a,3bにはガス供給部31から空気が供給され、組電池10が冷却される。一方、制御部36は、温度センサ35から出力される検知信号に基づいて、積層型電池モジュール100の組電池10の温度測定値が第2範囲内の高温であると判断した場合には、高温制御モードを実行してバルブ34を開けると同時にバルブ33を閉じる。これにより、積層型電池モジュール100の組電池10の貫通孔3a,3bには冷却液供給部32から冷却液が供給され、組電池10が冷却される。
積層型電池モジュール100は通常、図1のように、その使用時には貫通孔3a,3bが鉛直方向となるように配置されるが、貫通孔3a,3bが水平方向となるように配置される場合もある。このとき、使用後に貫通孔3a,3b内に冷却液が残存しやすくなる。そこで、貫通孔3a,3bの途中に冷却液の排出路を形成し、残存した冷却液を排出するようにしても良い。
以上説明したように、本実施形態の電池システムによれば、積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3bがそれぞれ第1ガスの供給及び冷却液の共用供給路とされるため、電池内部における貫通孔の形成領域の割合を可及的に小さく抑えることができ、部材点数を減少させることが可能となる。このように、本実施形態の電池システムは、リチウムイオン電池に設ける貫通孔の形成領域を削減した簡易な構成でありながら、電池内部の温度上昇を確実に抑制することができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態と同様に、積層型電池モジュール100を備えた電池システムを開示する。図3は、本実施形態による電池システムの概略構成を示す模式図である。第1の実施形態の電池システムと同様の構成部材については同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
この電池システムは、積層型電池モジュール100、ガス供給部31、冷却液供給部32、バルブ33,34、温度センサ35、及び制御部36に加えて、湿度センサ41及びエアコンプレッサ42を有している。
湿度センサ41は、積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3b内の湿度を測定する湿度計である。エアコンプレッサ42は、上述した高温制御モードから通常制御モードに切り替える際に、積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3b内に空気等のガス(第2ガス)を供給するものである。
電池システムにおいて、高温制御モードが実行されて積層型電池モジュール100の組電池10が冷却され、温度センサ35による組電池10の温度測定値が第2範囲内の値から第1範囲内の値となったときには、制御部36は高温制御モードから通常制御モードに切り替える。高温制御モードの終了時には、高温制御モードの実行により積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3b内には冷却液の水分が若干残存していることがある。この場合、残存した水分に起因して、貫通孔3a,3bでは外気よりも湿度が高い状態となっている。
本実施形態では、高温制御モードを終了した後、通常制御モードを開始する前に、エアコンプレッサ42により貫通孔3a,3b内に残存する冷却液の水分を除去する。
具体的に、制御部36は、高温制御モードを終了して貫通孔3a,3bへの冷却液の供給を停止した際に、湿度センサ41から出力される検知信号に基づいて、積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3b内の湿度測定値が外気の湿度よりも高いと判断した場合には、エアコンプレッサ42を駆動して貫通孔3a,3b内に空気等のガス(第2ガス)を供給する。制御部36は、エアコンプレッサ42の駆動により貫通孔3a,3b内の湿度が低下し、貫通孔3a,3b内の湿度測定値が外気の湿度の所定範囲内に入った、或いは、貫通孔3a,3b内の湿度測定値と外気の湿度とが同一となったと判断した場合には、エアコンプレッサ42の駆動を終了して第2ガスの供給を停止し、通常制御モードを実行してガス供給部31を駆動し、貫通孔3a,3b内に第1ガスを供給する。
本実施形態の電池システムによれば、第1の実施形態において奏される上述の諸効果に加え、高温制御モードから通常制御モードに切り替える際に、エアコンプレッサ42の駆動により積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3b内に残存する冷却液の水分を速やかに除去し、通常制御モードによる空冷を確実に行うことができる。
[変形例]
本実施形態では、エアコンプレッサ42を備えた電池システムを例示したが、エアコンプレッサ42を用いることなくガス供給部31がエアコンプレッサ42の機能を兼ねるようにしても良い。この場合、例えば、ガス供給部31は、積層型電池モジュール100の組電池10を空冷するための通常のガス供給速度(風量)とする上述の通常制御モードと、貫通孔3a,3b内に残存する水分を除去するための第1供給モードよりも大きいガス供給速度(風量)とする高圧供給モードとを切り替えて実行することができる。
変形例において、制御部36は、高温制御モードを終了して貫通孔3a,3bへの冷却液の供給を停止した際に、湿度センサ41から出力される検知信号に基づいて、積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3b内の湿度測定値が外気の湿度よりも高いと判断した場合には、ガス供給部31を高圧供給モードに設定して駆動し、貫通孔3a,3b内に第1ガスを供給する。制御部36は、高圧供給モードの実行により貫通孔3a,3b内の湿度が低下し、貫通孔3a,3b内の湿度測定値が外気の湿度の所定範囲内に入った、或いは、貫通孔3a,3b内の湿度測定値と外気の湿度とが同一となったと判断した場合には、ガス供給部31を高圧供給モードから通常制御モードに切り替え、ガス供給部31を通常制御モードで実行して、貫通孔3a,3b内に第1ガスを供給する。
変形例の電池システムによれば、電池システムを構成する部品点数を低減させることができるも、本実施形態において奏される上述の諸効果を得ることが可能となる。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、積層型電池モジュールを備えた電池システムを開示する。この電池システムは、例えば大型蓄電所等に適用されるものであり、本実施形態の積層型電池モジュールは第1及び第2の実施形態の積層型電池モジュールよりも大型(例えば1000kWh程度の蓄電池)である。
図4は、本実施形態による電池システムに適用される積層型電池モジュール及び冷却液供給部の一部を示す模式図であり、(a)が一部切り欠いて断面を部分的に示した概略斜視図、(b)が(a)を側面からみた概略断面図である。図5は、本実施形態による電池システムの概略構成を示す模式図である。図4及び図5では、第1及び第2の実施形態の電池システムと同様の構成部材については同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
本実施形態による電池システムに適用される積層型電池モジュール200は、第1の実施形態の積層型電池モジュール100と同様に、リチウムイオン単電池1が複数積層されて直列に接続された組電池10を備える。なお、図4(b)では、図示の便宜上、リチウムイオン単電池1が4層積層された様子を例示するが、リチウムイオン単電池1を数十層~数百層積層する場合がある。
リチウムイオン単電池1は、正極電極11及び負極電極13がセパレータ12を介して積層され、正極電極11、セパレータ12、及び負極電極13の外周部を取り囲み封止するシール部14が設けられ、電解液が封入されて構成されている。正極電極11は、正極樹脂集電体21及び正極活物質層22が積層されてなる。負極電極13は、負極樹脂集電体23及び負極活物質層24が積層されてなる。
本実施形態において、組電池10には、リチウムイオン二次単電池1の積層方向と平行に貫通孔が形成されている。図4では1つの貫通孔を例示しているが、貫通孔は2つ以上形成される場合もある。貫通孔の内周面を覆うように、組電池10の全面に防水性の絶縁膜2が形成されている。貫通孔及び絶縁膜2により、貫通孔3Aが構成されている。貫通孔3Aは、組電池10の冷却時に空気等のガス(第1ガス)又は水等の冷却液が供給されるものである。貫通孔3Aは、第1ガス又は冷却液の供給を兼ねた第1ガス及び冷却液の共通貫通孔として用いられる。貫通孔が2つ以上設けられる場合でも、同様に第1ガス及び冷却液の共通貫通孔として用いられる。
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、貫通孔3A内で絶縁膜2及び両縁部を覆う補強部材を形成するようにしても良い。
この電池システムは、図5に示すように、積層型電池モジュール200、ガス供給部31、冷却液供給部32、バルブ33,34、温度センサ35、湿度センサ41、エアコンプレッサ42、収容部51、液体供給部52、及び制御部36を有している。
収容部51は、積層型電池モジュール200を収容する液槽であり、積層型電池モジュール200の通常使用時には、積層型電池モジュール200を単に収容している。液体供給部52は、制御部36の制御により、積層型電池モジュール200が収容された収容部51内に水等の液体を供給するものである。
本実施形態においては、積層型電池モジュール200が大型であり、積層型電池モジュール200の貫通孔3Aも大径に形成されている。そのため、第1の実施形態の積層型電池モジュール100のように貫通孔3a,3bに対して直接的に冷却液を供給する態様には適さない場合がある。
本実施形態では、図4(a)に示すように、冷却液供給部32が液冷管53を有しており、この液冷管53が積層型電池モジュール200の貫通孔3Aの内周面に当接するように貫通孔3A内に螺旋状に配されている。冷却液供給部32から液冷管53を通じて冷却液が供給されることにより、液冷管53が当接する貫通孔3Aの内周面から組電池10が冷却される。貫通孔3A内に液冷管53を配する場合、ガス供給部31としては、例えば貫通孔3Aの入口に位置整合するように空冷ファンを設ける構成等が適用できる。
積層型電池モジュール200では、その使用時において組電池1の中央部位が最も高温となる。本実施形態では、図4(b)に示すように、液冷管53は、貫通孔3A内の中心部位で最も配置密度が高くなるように貫通孔3A内に配置される。この構成により、組電池1の中央部位が最も冷却効果が高くなり、組電池1の全体を効率良く冷却することができる。
積層型電池モジュールにおいては、充放電時に誤作動が発生すると、リチウムイオン電池に高電圧が印加されたり大電流が通電されたりすることにより、電池の容量を大きく超えた充放電がなされることがある。また、電池のセパレータ等に不具合がある場合、内部短絡が生じて大電流が流れることがある。このような場合、電池の温度が異常に上昇し、発煙や発火が生じる危険性がある。本実施形態では、このような不測の事態にも安全に対処すべく、電池システムが以下のように作動する。
本実施形態において、制御部36は、温度センサ35から出力される検知信号に基づいて、積層型電池モジュール200の温度が所定値、例えば100℃に達したと判断した場合には、異常制御モードに切り替え制御する。異常制御モードでは、制御部36は、液体供給部52を駆動して、積層型電池モジュール200が収容された収容部51内に水等の液体を供給する。これにより、図6に示すように、積層型電池モジュール200は収容部51内で水没し、発煙や発火の発生が防止される。
本実施形態の電池システムによれば、第1及び第2の実施形態において奏される上述の諸効果に加え、積層型電池モジュール200に異常な温度上昇が生じても、積層型電池モジュール200の発煙や発火等を未然に確実に防止することができる。
なお、第1及び第2の実施形態では、積層型電池モジュール100の貫通孔3a,3bに対して直接的に冷却液を供給する態様を開示したが、積層型電池モジュール100でも本実施形態と同様に、液冷管を貫通孔3a,3b内に配する態様としても良い。
第1~第3の実施形態による電池システムにおいて、制御部36としては、例えば、CPUと、RAMと、ROMと、HDD等の記憶媒体と、表示部と、操作部とを有するコンピュータが適用される。当然ながら、制御部36はこの形態に限定されず、PDA、タブレットPC、携帯電話等の情報端末等でも良い。制御部36の表示部としては、例えば、液晶表示装置等の各種表示デバイスが適用される。制御部36の操作部としては、キーボードやタッチパネル等の各種入力装置が適用される。ROM又は記憶媒体には、電池システムを制御するためのコンピュータプログラムが格納される。このコンピュータプログラムは、ガス供給部31、冷却液供給部32、バルブ33,34、温度センサ35、湿度センサ41、エアコンプレッサ42、及び液体供給部52の駆動を実現するためのプログラムである。そして、制御部36のCPUは、ROM又は記憶媒体からコンピュータプログラムを読み出し、RAMを作業領域として用いて実行する。これにより、制御部36は、電池システムの各部を制御する。
1 リチウムイオン単電池
3a,3b,3A 貫通孔
2 絶縁膜
10 組電池
11 正極電極
12 セパレータ
13 負極電極
14 シール部
21 正極樹脂集電体
22 正極活物質層
23 負極樹脂集電体
24 負極活物質層
31 ガス供給部
32 冷却液供給部
33,34 バルブ
35 温度センサ
36 制御部
37a,37b パイプ
41 湿度センサ
42 エアコンプレッサ
51 収容部
52 液体供給部
53 液冷管
100,200 積層型電池モジュール

Claims (12)

  1. 樹脂集電体層を含む正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、樹脂集電体層を含む負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、を備えるリチウムイオン単電池が複数積層されてなり、積層方向に貫通する貫通孔が形成された積層型電池モジュールと、
    前記貫通孔に第1ガスを供給するガス供給部と、
    前記貫通孔に冷却液を供給する冷却液供給部と、
    前記積層型電池モジュールの温度を検知する温度センサと、
    前記温度センサから出力される検知信号に基づいて、制御モードを切り替える制御部と、
    を備えることを特徴とする電池システム。
  2. 前記制御部は、前記温度センサから出力される検知信号に基づいて、異常制御モードに切り替えることを特徴とする、
    請求項1に記載の電池システム。
  3. 前記積層型電池モジュールを収容する収容部と、
    前記収容部内に液体を供給する液体供給部と、
    を更に備えており、
    前記制御部は、前記異常制御モード時に、前記積層型電池モジュールを水没させるように前記液体供給部からの前記液体の供給を制御することを特徴とする、
    請求項2に記載の電池システム。
  4. 前記制御部は、前記温度センサから出力される検知信号に基づいて、通常制御モード又は高温制御モードに切り替え制御することを特徴とする、
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電池システム。
  5. 前記通常制御モードは、前記温度センサにより検知された温度が第1範囲の場合に、前記制御部によって実行されるモードであり、
    前記高温制御モードは、前記温度センサにより検知された温度が前記第1範囲よりも高い第2範囲の場合に、前記制御部によって実行されるモードであることを特徴とする請求項4に記載の電池システム。
  6. 前記貫通孔内の湿度を検知する湿度センサと、
    前記高温制御モードから前記通常制御モードに切り替える際に、前記貫通孔内に第2ガスを供給するエアコンプレッサと、
    を更に備えており、
    前記制御部は、前記湿度センサから出力される検知信号に基づいて、前記エアコンプレッサからの前記第2ガスの供給を制御することを特徴とする請求項4又は5に記載の電池システム。
  7. 前記制御部は、前記高温制御モードから前記通常制御モードに切り替える際に、前記エアコンプレッサから前記貫通孔内に前記第2ガスを供給し、前記湿度センサから出力される検知信号に基づいて前記貫通孔内の湿度が外気の湿度の所定範囲内に入ったと判定した場合に、前記エアコンプレッサからの前記第2ガスの供給を停止することを特徴とする請求項6に記載の電池システム。
  8. 前記ガス供給部は前記エアコンプレッサを兼ねており、前記第1ガスと前記第2ガスとが同一のガスであることを特徴とする請求項6又は7に記載の電池システム。
  9. 前記貫通孔の内周面を覆う補強部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電池システム。
  10. 前記正極集電体及び前記負極集電体は、導電性フィラーを有する導電性樹脂組成物を含み、
    前記正極活物質層及び前記負極活物質層は、電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材で被覆された被覆電極活物質粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電池システム。
  11. 前記液体供給部は、前記貫通孔内に螺旋状に配された液冷管を有しており、前記液冷管内に前記液体を供給することを特徴とする請求項3に記載の電池システム。
  12. 前記液冷管は、前記貫通孔内の中央部位で最も配置密度が高いことを特徴とする請求項11に記載の電池システム。
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