JP7461700B2 - プレキャストコンクリート版の接合構造 - Google Patents

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Description

本発明は、橋梁の床版等に用いられるプレキャストコンクリート版を、設置する現場において接合する構造に関するものである。
道路橋等においては、支点間に鋼桁又はコンクリート桁を架け渡し、その上に配列された複数のプレキャストコンクリート版を接合してコンクリート床版とするものが多く採用されている。そして、上記プレキャストコンクリート版の接合は、例えば特許文献1に記載されているように、隣り合うプレキャストコンクリート版の双方からループ状に鉄筋を突き出しておき、これらの鉄筋を埋め込むように接合部のコンクリートを打設する構造が用いられている。
このような接合構造では、接合されたプレキャストコンクリート版の双方間に大きな引張力又はせん断力が作用したときに、ループ状の鉄筋とその内側で接触する接合部のコンクリートとの間に大きな支圧力が作用する。この支圧力は、非特許文献1に記載の「腹圧力」に相当するものであり、この支圧力によるコンクリートの応力度を圧壊が生じない程度に抑える必要がある。つまり、図10に示すように鉄筋51の曲げ半径を大きくして支圧力Puが作用する範囲Hを上下方向に拡大すること、又は鉄筋51の径φを大きくして横方向に支圧力が作用する範囲を拡大することによってコンクリートの支圧応力度が低減される。
一方、特許文献2には、上記支圧応力度が大きくなるのを抑制するために、フープ状に湾曲した鉄筋の内側に鋼板を配置することが提案されている。湾曲した鉄筋の内側に鋼板が配置されることにより、鉄筋の引張力が広く分布してコンクリートに伝達され、支圧応力度が低減されるものである。
特開2009-264040号公報 特開平8-326197号公報
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しかしながら、上記のような従来の接合構造では次のような解決が望まれる課題がある。
隣り合うプレキャストコンクリート版の間に接合部コンクリートを打設した接合構造では、接合部コンクリートとプレキャストコンクリート版との境界部に雨水等が浸入することがある。また、接合部コンクリートはプレキャストコンクリートに比べて微小なひび割れが生じやすく、生じたひび割れ等から雨水が浸入することがある。雨水が浸入することによって鉄筋がさびやすくなり、コンクリートの耐久性が劣化する。
また、プレキャストコンクリート版の接合部に用いられるループ状の鉄筋は、接合部コンクリートに対する支圧応力度を抑制するために曲げ半径を大きく設定しなければならないことがある。また、鉄筋の強度の維持のために曲げ半径が制限されることもある。そして、曲げ半径が制限されることによってプレキャストコンクリート版を厚くする必要が生じることがある。プレキャストコンクリート版の厚さが大きくなると重量が過大となり、適用性、経済性を損なうことになる。
一方、特許文献2に記載されているようにループ状の鉄筋の内側に鋼板を配置するときには、鉄筋を矩形に近い状態に曲折することになり、曲げ半径を大きく維持することが難しくなる。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プレキャストコンクリート版の接合部の耐久性を向上するとともに、プレキャストコンクリート版の厚さを小さくすることが可能となるプレキャストコンクリート版の接合構造を提供することである。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 互いに接合される2つのプレキャストコンクリート版の対向する接合端面の双方から複数の補強部材が突き出し、 対向する前記接合端面間には、前記補強部材を埋め込むように接合部コンクリートが打設されており、 前記補強部材は、 束ねられた多数の連続繊維を合成樹脂によって結着したFRP材であり、 両端部が前記プレキャストコンクリート版中に埋め込まれ、中間部が前記接合端面の上部及び下部から突き出して湾曲し、ループ状に連続しており、 一方の前記プレキャストコンクリート版から突き出してループ状となった複数のFRP材が、他方の前記プレキャストコンクリート版から突き出してループ状となった複数のFRP材の間に突き入れられ、 双方のプレキャストコンクリート版から突き出した前記FRP材の少なくとも湾曲する部分の一部では、断面形状が該FRP材の軸線に対して横方向に張り出すように拡大された扁平な形状となっており、 前記FRP材は、複数の連続繊維を束ねた紐状体を、複数組み合わせて組み紐状に編まれており、前記湾曲する部分では前記紐状体の間隔を粗くして扁平な形状としたものであるプレキャストコンクリート版の接合構造を提供する。
この接合構造では、接合部コンクリートとプレキャストコンクリート版との境界部や生じたひび割れに雨水等が浸入しても、補強部材はFRP材であって錆びることがない。したがって、接合部の耐久性が向上する。
また、補強部材の湾曲する部分で、断面が扁平となって接合部コンクリートに対して接触する面積が拡大されているので、引張力が作用したときに接合部コンクリートに作用する支圧応力度が低減され、曲げ半径を小さく設定しても接合部コンクリートの圧壊が抑制される。
さらに、プレキャストコンクリート版の接合部における補強部材として鉄筋を用いると、鉄筋の強度の維持及び接合部コンクリートに対する支圧応力度を抑制するために曲げ半径が制限され、コンクリート版の厚さを小さく設定するのが難しくなるが、本接合構造では、補強部材にFRP材を用い、湾曲する部分すなわち接合部コンクリートに圧接される部分で幅が拡大されているので曲げ半径を小さくし、コンクリート版の厚さを薄く設定することが可能となる。
また、この接合構造ではFRP材を構成する連続繊維が複数の紐状体に束ねられ、組み紐状に編まれていることにより、FRP材の断面内におけるそれぞれの紐状体の位置が軸線に沿って変動する。これにより、FRP材を湾曲しても一部の紐状体に緩みが生じるのを抑えることができる。したがって、湾曲する部分における断面内の内側と外側とで周長に差が生じることによる連続繊維間の応力度の差を低減することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のプレキャストコンクリート版の接合構造において、 前記補強部材の湾曲する部分の中心軸線の形状が半円形状となっており、該湾曲する部分の全域で断面が扁平な形状となっているものとする。
この接合構造では、補強部材が円弧状に湾曲しているので、引張力が導入されたときに湾曲する部分の内側で接触する接合部コンクリートに対して円弧の中心に向かうほぼ均等な支圧応力度が作用する。そして、この湾曲する部分の全域でFRP材の幅が拡大されていることによって接合部コンクリートに作用する支圧応力度を広い範囲にほぼ均等にして作用させることができ、支圧応力度を小さく抑えることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のプレキャストコンクリート版の接合構造において、 前記接合部コンクリートに埋め込まれ、該接合部コンクリートを補強する前記補強部材を含む棒状又は線状の部材のすべてが非導電性の連続繊維を用いたFRP材であるものとする。
この接合構造では、接合部コンクリートに埋め込まれる補強用の部材が非導電性となっているので、プレキャストコンクリート版に埋め込まれている鉄筋やPC鋼材との間で微少電流が生じるのを抑制することができる。これにより、鉄筋やPC鋼材に電気腐食が生じるのが低減され、床版の耐久性が向上する。
以上説明したように、本発明のプレキャストコンクリート版の接合構造では、プレキャストコンクリート版の接合部の耐久性が向上するとともに、プレキャストコンクリート版の厚さを小さくすることが可能となる。
本発明の一実施形態であるプレキャストコンクリート版の接合構造を示す概略断面図及び接合部コンクリートの打設前における概略平面図である。 図1に示す接合構造で接合されるプレキャストコンクリート版の接合端部を示す概略斜視図である。 図1及び図2に示すプレキャストコンクリート版の接合構造で用いることができる補強部材の例を示す概略斜視図及び断面図である。 図3に示す補強部材の連続繊維の配列状態を示す展開図である。 本発明に係るプレキャストコンクリート版の接合構造で用いることができる補強部材の他の例を示す概略斜視図及び断面図である。 図5に示す補強部材の連続繊維の配列状態を示す展開図である。 図1及び図2に示すプレキャストコンクリート版の接合構造で用いられる補強部材2に代えて用いることができる補強部材の他の例を参考として示す概略斜視図及び断面図である。 図7に示す補強部材の連続繊維の配列状態を示す展開図である。 図1及び図2に示すプレキャストコンクリート版の接合構造で用いられる補強部材2に代えて用いることができる補強部材の他の例を参考として示す概略斜視図及び断面の状態を示す拡大斜視図である。 プレキャストコンクリート版の接合部に配置されるループ状の補強部材とこれを埋め込むコンクリートとの間に作用する支圧力を説明する概略図である。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるプレキャストコンクリート版の接合構造を示す概略断面図及び接合部コンクリートの打設前における平面図である。また、図2は、図1に示す構造で接合されるプレキャストコンクリート版の接合端部を示す概略斜視図である。
この接合構造では、互いに接合する2つのプレキャストコンクリート版1は接合端面1aが対向するように配置され、双方の接合端面1aから複数のループ状の補強部材2が突き出している。そして、上記補強部材2が突き出す方向とほぼ直角方向に複数の横方向補強部材3が配置され、これらの補強部材2及び横方向補強部材3を埋め込むように接合部コンクリート4が打設されたものである。
上記プレキャストコンクリート版1は、道路橋の床版となるものであり、例えば複数の鋼桁(図示しない)の上に支持されたものである。そして、鋼桁の軸線方向に複数が配列され、接合端面1aは鋼桁の軸線とほぼ直角方向に設定されている。これらのプレキャストコンクリート版1は、鉄筋コンクリート又はプレストレストコンクートで形成されるものであり、コンクリート内には路面上に作用する荷重を支持するのに十分な鉄筋又は鉄筋とPC鋼材が配置されている。
上記補強部材2は、高い強度を有する連続繊維を束ね、合成樹脂によって結着したFRP材である。また、横方向補強部材も同様に連続繊維を束ね、合成樹脂で結着したFRP材が用いられている。連続繊維は、アラミド繊維、鉱物繊維、炭素繊維、鋼繊維等を用いることができるが、非導電性の材料で形成されたものが望ましい。
複数の上記補強部材2のそれぞれは、図1及び図2に示すように、一部がプレキャストコンクリート版1内に埋め込まれるとともに、接合端面1aの上部とその下方から突き出し、これらが湾曲してループ状に連続するものとなっている。プレキャストコンクリート版1に埋め込まれた部分は、ループ状に突き出した部分に引き抜こうとする方向の力が作用したときにも十分に抵抗することができる長さを有するものである。接合端面1aから突き出して湾曲する部分の形状は円弧状とするのが望ましいが、その他の形状で曲げられてループ状に連続するものであってもよい。
なお、図2では横方向補強部材の一部の描出を省略している。
上記補強部材2は、図3に示すように、プレキャストコンクリート版1に埋め込まれる部分11が直線状で断面はほぼ円形又は縦横の寸法がほぼ同じとなる形状である。そして、湾曲する部分12では横方向に幅が拡大された扁平な形状となっている。プレキャストコンクリート版1から突き出した直線状の部分で徐々に幅を拡大するように断面が変形し、湾曲する部分12の全域でほぼ等幅の扁平な断面形状となるものである。扁平な断面形状となっている部分の幅は、プレキャストコンクリート版1に埋め込まれる部分の太さの1.5倍から2.0倍程度となっている。
この補強部材2を構成する繊維は、図4に示すように、組紐状に編み上げられたものであり、複数の連続繊維を束ねた紐状体2aを複数組み合わせて形成される。図4に示す例では、16本の紐状体を編むことによって太い組紐とし、これに合成樹脂を含浸してロッド状にしたものである。そして、湾曲する部分12では編み合わされたそれぞれの紐状体2aの間隔を粗くし、扁平な形状に配置して幅を拡大している。それぞれの紐状体2aは太い組紐の中心線の周りをらせん状に配置されたものであり、8本ずつが逆方向に傾斜して互いに編み合わされたものである。
このような接合構造では、プレキャストコンクリート版1から突き出して接合部コンクリート4に埋め込まれる補強部材2がFRP材からなるものであり、これらの補強部材2が腐食することによる接合部の劣化が防止される。一般に現場で打設された接合部コンクリートは工場等で製作されるプレキャストコンクリート版よりも微細なひび割れが生じやすく、接合部コンクリート4に鉄筋が埋め込まれていると早期に腐食が生じるおそれがある。また、融雪剤等の影響によって早期に腐食が進行することもある。上記接合構造では補強部材2としてFRP材が用いられていることにより、補強部材2の腐食による接合部コンクリート4の劣化が回避される。特に横方向補強部材3にもFRP材を用いることにより、プレキャストコンクリート版1に配置された鉄筋やPC鋼材との間で局部電池が発生するのが防止され、電気的に腐食が促進されるのを抑制することができる。
また、補強部材2は湾曲する部分12で断面が扁平となっているので、接合部コンクリート4に対して接触する面積を拡大することができる。これにより、補強部材2に引張力が作用したときに接合部コンクリート4に作用する支圧応力度を低減することができるとともに、支圧応力度を所定の値以下に抑えた状態で、湾曲する部分12の上下方向の領域を小さくすることができる。つまり、湾曲する部分12の曲率半径を小さくしてプレキャストコンクリート版1から突き出す上下の位置の間隔を小さくすることでき、プレキャストコンクリート版1の厚さを小さくすることが可能となる。また、補強部材2は、多数の細い連続繊維によって引張力を負担するものであり、曲率半径を小さくしても強度に及ぼす影響を小さく抑えることができる。
一般に太さ又は厚さのある部材を湾曲させると湾曲する部分の内周側と外周側とで軸線方向の長さに差が生じる。これにより、軸線方向の引張力が作用したときに応力度の差が生じるおそれがある。多数の連続繊維を束ねた部材であれば、連続繊維が並行に配置されたものを湾曲させると外周側と内周側とで応力度に顕著な差が生じるおそれがある。しかし、上記実施の形態の補強部材2では、連続繊維を組紐として用いているので、湾曲する部分12でそれぞれの連続繊維は補強部材2の断面内で位置が連続的に変動するものとなっており、それぞれの連続繊維の長さの差が小さく抑えられる。したがって、連続繊維間の応力差が小さくなっており、連続繊維間で大きな応力度の差が生じることによる強度の低下を避けることができる。
図5は、本発明に係るプレキャストコンクリート版の接合構造で用いることができる補強部材の他の例を示す概略斜視図及び概略断面図である。また、図6は、図5に示す補強部材の連続繊維の配列状態を示す展開図である。
この補強部材5は、図3及び図4に示す補強部材2と同様に連続繊維を束ね、合成樹脂によって結着したFRP材である。そして、同様に両端部がプレキャストコンクリート版1に埋め込まれるとともに、プレキャストコンクリート版1の接合端面から突き出した部分がループ状になっている。この補強部材5は、図5に示すように、プレキャストコンクリート版に埋め込まれる直線状の部分21も断面が扁平な形状となっており、ループ状に湾曲した部分22では、幅が拡大するものである。
この補強部材5も、多数の連続繊維を束ねた複数の紐状体5aを組紐状に編み上げられているが、図3及び図4に示す補強部材2と編み方が異なるものとなっており、いわゆる平組紐とするものである。つまり、図6に示すように、それぞれの紐状体5aは、扁平となった幅内において補強部材の軸線に対して傾斜する方向に配列され、両側縁間で繰り返し反復移動してジグザグ形状となっている。そして、両側縁間で交叉するそれぞれの紐状体が互いに編み合わされたものである。これらの紐状体5aは、湾曲する部分22では紐状体間の間隔を粗くし、幅を拡大するものとなっている。
このような補強部材5をプレキャストコンクリート版1の接合構造に用いても、図3及び図4に示す補強部材2を用いたときと同様の効果を得ることができる。
図7は、図1及び図2に示すプレキャストコンクリート版の接合構造で用いられる補強部材2に代えて用いることができる補強部材の他の例を参考として示す概略斜視図及び概略断面図である。また、図8は、図7に示す補強部材の連続繊維の配列状態を示す展開図である。
この補強部材6は、束ねられた連続繊維を合成樹脂によって結着したFRP材であるが、プレキャストコンクリート版1に埋め込まれる直線状の部分31では、連続繊維がほぼ平行に配列された状態で束ねられ、断面の形状はほぼ円形となっている。そして、プレキャストコンクリート版1の接合端面から突き出してループ状に湾曲する部分32では連続繊維が幅方向に拡がるように配列されて扁平な断面形状となっている。
束ねられた連続繊維は、補強部材6の幅が拡大された範囲の始点と終点との間で、各連続繊維の位置が中心軸線回りに180°回転した位置に移動する。つまり、幅が拡大する範囲で連続繊維の束が180°ねじられている。そして、図8に示すように、それぞれの連続繊維6aは拡大された幅内で緩やかに曲線を描きながら扁平な断面形状を形成するものとなっており、このように配列された状態で合成樹脂が連続繊維間に含浸されている。
上記連続繊維6aは、補強部材6の幅が拡大され、断面が扁平な形状となった範囲では、展開図上で正弦曲線又はこれに近似する曲線を描き、湾曲する部分32でほぼ半波長となる。そして、それぞれの連続繊維6aが展開図上で描く曲線の位相が少しずつずれていることによって、軸線方向にほぼ均等な断面形状で連続繊維6aが分布するものとなっている。
なお、図8に曲線で示す連続繊維6aは,束ねられた多数の連続繊維の一部を代表して示すものであり、実際の補強部材6では、図8中に示す複数の連続繊維6aの間にも多数の連続繊維が存在している。
このような補強部材6では、湾曲する部分32の一方の端部32aで湾曲する部分の外周側にあった連続繊維が他方の端部32bで内周側となり、一方の端部32aで内周側にあった連続繊維は他方の端部32bで外周側となる。したがって、湾曲した部分32の間で連続繊維のそれぞれはほぼ同じ長さとなり、湾曲する部分32に引張力が作用したときに、それぞれの連続繊維間で応力度に大きな差が生じるのを抑えることができる。
また、このような湾曲する部分32で幅が拡大されたFRP材をプレキャストコンクリート版の接合構造に補強部材として用いることによって、図3及び図4に示す補強部材2を用いたときと同様の効果を得ることができる。
図9は、図1及び図2に示すプレキャストコンクリート版の接合構造で用いられる補強部材2に代えて用いることができる補強部材の他の例を参考として示す概略斜視図である。
この補強部材7では、連続繊維が複数の束7aに別けられ、図9(b)に示すようにこれらの束7aが平たく並べられている。そして、これらの束7aは、扁平な形状が維持されるように横糸43で拘束され、柔軟に変形する薄い筒状体44の内側に挿入されている。このような補強部材7が、図9(a)示すように扁平な面が曲面を形成するように湾曲し、筒状体44の内側には連続繊維を結着するための合成樹脂が充填されて連続繊維の束7aに含浸されている。
この補強部材7の湾曲した部分42の両側にある直線状の部分41がプレキャストコンクリート版に埋め込まれ、直線状の部分42の一部及び湾曲した部分42がプレキャストコンクリート版の接合面から突き出すように配置されるものである。
上記連続繊維の束7aのそれぞれは、連続繊維がほぼ平行に配列されたものであってもよいが、湾曲した部分42の軸線が描く円弧とほぼ同じ長さで、軸線回りに180°回転するピッチで撚りが入れられているものとするのが望ましい。このように撚りを導入することにより、湾曲する部分42で連続繊維のそれぞれの長さの差が小さく抑えられる。これにより、連続繊維間の応力度の差を小さく抑えることが可能となる。
このような補強部材7を用いたプレキャストコンクリート版の接合構造においても、補強部材7の腐食による接合部の劣化が抑制されるとともに、補強部材7は扁平な断面形状を有することによって湾曲する部分42で広い幅に支圧力が作用することになる。したがって、支圧力を低減すること又は湾曲する範囲を小さく抑えてプレキャストコンクリート版の厚さを小さくすることが可能となる。
以上に説明したプレキャストコンクリート版の接合構造は、本発明の実施の形態であって、本発明はこれらに限定されるものではない。したがって、本発明の範囲内で材料、部材の形状、寸法等を適宜に変更して実施することができる。
例えば、接合する2つのプレキャストコンクリート版の対向する接合面は、鉛直な面に限らず、下側で間隔が縮小されるように傾斜してものであってもよいし、下部が両側から突き出して接合部のコンクリートを打設するときの型枠として機能するものであってもよい。
1:プレキャストコンクリート版, 1a:プレキャストコンクリート版の接合端面,
2:補強部材, 2a:連続繊維を束ねた紐状体, 3:横方向補強部材, 4:接合部コンクリート, 5:補強部材, 5a:連続繊維を束ねた紐状体, 6:補強部材,
6a:連続繊維 7:補強部材, 7a:連続繊維の束,
11:補強部材のプレキャストコンクリート版に埋め込まれる直線状の部分, 12:補強部材の湾曲した部分,
21:補強部材の直線状の部分, 22:補強部材の湾曲した部分,
31:補強部材の直線状の部分, 32:補強部材の湾曲した部分,
41:補強部材の直線状の部分, 42:補強部材の湾曲した部分, 43:横糸, 44:筒状体,
51:鉄筋

Claims (3)

  1. 互いに接合される2つのプレキャストコンクリート版の対向する接合端面の双方から複数の補強部材が突き出し、
    対向する前記接合端面間には、前記補強部材を埋め込むように接合部コンクリートが打設されており、
    前記補強部材は、
    束ねられた多数の連続繊維を合成樹脂によって結着したFRP材であり、
    両端部が前記プレキャストコンクリート版中に埋め込まれ、中間部が前記接合端面の上部及び下部から突き出して湾曲し、ループ状に連続しており、
    一方の前記プレキャストコンクリート版から突き出してループ状となった複数のFRP材が、他方の前記プレキャストコンクリート版から突き出してループ状となった複数のFRP材の間に突き入れられ、
    双方のプレキャストコンクリート版から突き出した前記FRP材の少なくとも湾曲する部分の一部では、断面形状が該FRP材の軸線に対して横方向に張り出すように拡大された扁平な形状となっており、
    前記FRP材は、複数の連続繊維を束ねた紐状体を、複数組み合わせて組み紐状に編まれており、前記湾曲する部分では前記紐状体の間隔を粗くして扁平な形状としたものであることを特徴とするプレキャストコンクリート版の接合構造。
  2. 前記補強部材の湾曲する部分の中心軸線の形状が半円形状となっており、該湾曲する部分の全域で断面が扁平な形状となっていることを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート版の接合構造。
  3. 前記接合部コンクリートに埋め込まれ、該接合部コンクリートを補強する前記補強部材を含む棒状又は線状の部材のすべてが非導電性の連続繊維を用いたFRP材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレキャストコンクリート版の接合構造。
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