JP7457311B1 - 太陽電池及び太陽電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、高い耐熱性を有し、生産コストが低い太陽電池及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】第1電極層と、光吸収層と、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層と、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層と、第2電極層と、をこの順に、少なくとも備える、太陽電池。【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池及び太陽電池の製造方法に関する。
太陽電池には、カルコパイライト化合物を用いたカルコパイライト太陽電池や、ケステライト化合物を用いたケステライト太陽電池が存在する。カルコパイライト太陽電池やケステライト太陽電池の種々の物性を向上させるために、非特許文献1~2、特許文献1~2に示されるように種々の検討がなされている。
カルコパイライト太陽電池やケステライト太陽電池は、光吸収層内にNaやK等のアルカリ金属元素を含むことにより、各種物性が向上し高性能化が期待できる。しかしながら、アルカリ金属元素は熱や電界により拡散しやすいため、非特許文献1に記載のように、アルカリ金属元素を含む光吸収層を有する上記太陽電池が高温に晒されると、光吸収層から受光面側の透明導電膜へアルカリ金属元素が拡散し、太陽電池としての性能が劣化してしまう。したがって、太陽電池の通常の使用温度域である45~85℃を超えるような高温環境で、アルカリ金属元素を含む光吸収層を有する上記太陽電池を使用することは難しい。
非特許文献2では、p型カルコパイライト光吸収層やp型ケステライト光吸収層上に積層するn型電子輸送層として通常使われるIn23が、アルカリ金属元素の拡散防止層として働くことが示唆されており、耐熱性を備えた電子輸送層の材料として期待されている。
そこで、光吸収層上にIn23を用いる第1の電子輸送層を形成し、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層を形成する太陽電池が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
中国特許第1820358号明細書 特許第5635497号公報
Prog. Photovolt: Res. Appl.、2015、23、pp.537-545 Appl. Sci.、2020、10、pp.1052
しかしながら、In23は、スパッタリング法によりダメージを受けやすいため、特許文献1及び特許文献2に開示された太陽電池を作製する際、スパッタリング法により、In23を用いる第1の電子輸送層上に第2の電子輸送層を形成すると、第1の電子輸送層がダメージを受け、太陽電池の性能が劣化したり太陽電池として機能しなくなったりすることがわかった。一方で、スパッタリング法による第1の電子輸送層へのダメージを避けるために、上記ダメージが生じにくい原子層積層法等の手法を用いて、第1の電子輸送層上に第2の電子輸送層を形成すると、量産性に劣り、太陽電池の生産コストが高くなる問題が生じることがわかった。
本発明は、高い耐熱性を有し、生産コストが低い太陽電池及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態にかかる太陽電池は、第1電極層と、光吸収層と、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層と、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層と、第2電極層と、をこの順に、少なくとも備える。
太陽電池において、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層と、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層とを含むことにより、耐熱性が向上する傾向にあることを本発明者らは見出した。加えて、第2電子輸送層をスパッタリング法によって成膜することが可能になり、生産コストが低下する傾向にあることを本発明者らは見出した。
本発明の一実施形態にかかる太陽電池の製造方法において、上記太陽電池は、第1電極層と、光吸収層と、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層と、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層と、第2電極層と、をこの順に、少なくとも備え、上記製造方法は、スパッタリング法により、上記光吸収層を含む基材上に上記第1電子輸送層を形成する第1電子輸送層形成工程、並びに酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法により、上記第1電子輸送層上に上記第2電子輸送層を形成する第2電子輸送層形成工程を含む。
太陽電池の製造方法において、太陽電池が、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層と、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層とを含むことにより、耐熱性が向上する傾向にあることを本発明者らは見出した。加えて、第2電子輸送層をスパッタリング法によって成膜することが可能になり、生産コストが低下する傾向にあることを本発明者らは見出した。また、太陽電池の製造方法において、酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法を行うことで、第1電子輸送層にダメージを与えることなく、第1電子輸送層上に第2電子輸送層を形成することができるため、生産コストが低下する傾向にあることを本発明者らは見出した。
本発明によれば、高い耐熱性を有し、生産コストが低い太陽電池及び太陽電池の製造方法を提供することができる。
太陽電池の断面構造の一例を示す図である。 FF値の評価結果を示す図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
1.太陽電池
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池の断面構造の一例を示す図である。
本実施形態の太陽電池100は、例えば、図1に示すように、基板108と、基板108上に設けられた第1電極層101と、第1電極層101上に設けられた正孔輸送層102と、正孔輸送層102上に設けられた光吸収層103と、光吸収層103上に設けられた第1電子輸送層104と、第1電子輸送層104上に設けられた第2電子輸送層105と、第2電子輸送層105上に設けられた第2電極層106と、第2電極層106上に設けられたグリッド電極107とを備える。太陽電池100は、第2電極層106側からの光を受光して発電する。
本実施形態の太陽電池100は、図示しないが、必要に応じて各層の間、上、又は下に他の層を有していてもよい。例えば、正孔輸送層102が、第1正孔輸送層及び第2正孔輸送層を有していてもよく、グリッド電極107上に、外部からの汚染を防ぐための汚染防止層を有していてもよい。
本実施形態の太陽電池100は、図示しないが、正孔輸送層102と、正孔輸送層102の上に設けられた光吸収層103と、光吸収層103の上に設けられた第1電子輸送層104と、第1電子輸送層104の上に設けられた第2電子輸送層105と、第2電子輸送層105の上に設けられた第2電極層106と、を1セットとして、第1電極層101の上に、上記セットを2セット積層してもよく、3セット積層してもよい。また、最上部の第2電極層106の上にグリッド電極107を有していてもよい。
本実施形態の太陽電池100は、第1電極層101と、光吸収層103と、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104と、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層105と、第2電極層106と、をこの順に、少なくとも備える。本実施形態の太陽電池100は、光吸収層103と第2電子輸送層105との間に、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104を有することにより、太陽電池100が高温環境に晒されても、光吸収層103に含まれるアルカリ金属元素が第2電極層106にまで拡散することを防ぐことができ、結果として、太陽電池100は耐熱性に優れる傾向にある。これは、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104が、光吸収層103のアルカリ金属元素の拡散を防ぐための拡散防止層として機能することに起因すると考えられるが、その要因はこれに限定されない。
また、従来の太陽電池において、耐熱性を向上させるために、太陽電池における電子輸送層を2層構造として、光吸収層側の電子輸送層が硫化インジウムを含むようにする場合、硫化インジウムを含む電子輸送層の上にもう一方の電子輸送層をスパッタリング法で成膜すると、硫化インジウムを含む電子輸送層がダメージを受けやすいため、スパッタリング法を用いてもう一方の電子輸送層を形成することができなかった。そのため、従来の太陽電池では、原子層積層法や化学溶液堆積法等の高コストの成膜法を用いて、硫化インジウムを含む電子輸送層へのダメージを抑えつつ、もう一方の電子輸送層を形成する必要があった。また、化学溶液堆積法等の成膜法はウェットプロセスである一方、太陽電池の製法において、ほとんどの工程がドライプロセスであるため、他方の電子輸送層の成膜時のみにウェットプロセスを用いると、高コストであるだけでなく、製造に時間がかかるという欠点もあった。
一方、本実施形態の太陽電池100は、第2電子輸送層105として、水素元素が添加されたn型酸化物半導体を用いることにより、第2電子輸送層105をスパッタリング法によって第1電子輸送層104上に形成することができるようになり、原子層積層法や化学溶液堆積法等の高コストの成膜法を用いる必要がなくなる。これは、スパッタリング法による水素元素が添加されたn型酸化物半導体の成膜は、スパッタリング法による水素元素が添加されていないn型酸化物半導体の成膜に比べて、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体へのダメージが低減できる環境下で行うことができるためと考えられるが、その要因はこれに限定されない。また、スパッタリング法は、太陽電池の製法における電子輸送層の成膜以外の工程と同様にドライプロセスであるため、太陽電池100の製造時に、ウェットプロセス用の環境とドライプロセス用の環境との両方を用意することなく、ドライプロセス用の環境のみを用意して太陽電池100を製造できるため、この点においても生産コストを低下させることができる傾向にあり、製造にかかる時間を低減することもできる傾向にある。
したがって、本実施形態の太陽電池100は、高い耐熱性を有し、生産コストが低くなると考えられる。ただし、その要因は上記のものに限定されない。
基板108を除いた太陽電池100の厚さは、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上10.0μm以下であり、1.1μm以上8.0μm以下であり、1.2μm以上6.0μm以下である。
本発明の太陽電池100は、各層を十分に薄く形成することで、薄膜太陽電池を構成し得る。
以下、太陽電池100に含まれ得る各構成について詳説する。
なお、本実施形態において、ある化合物の名称で表現した場合、純粋な該化合物そのものだけでなく、その化合物の特性を失わない範囲で、微量の元素等が添加された該化合物も含む。
また、本実施形態において、太陽電池の各層における元素が、異なる酸化状態で存在し得るため、すべての酸化状態は、特に明確に記載されない限り、その元素の名称で呼ばれる。例えば、「水素元素」は、水素原子、水素イオン、水素化物イオン、化合物の状態の水素、及び単体の状態の水素を意味する。
1.1.基板
基板108としては、特に限定されないが、例えば、青板硝子、低アルカリガラス等のガラス基板、ステンレス板、アルミ箔等の金属基板、ポリイミド樹脂基板、エポキシ樹脂基板等の樹脂基板を用いることができる。基板108の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上500μm以下であり、20μm以上250μm以下であり、30μm以上100μm以下である。基板108の厚さが上記範囲内であることにより、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
1.2.第1電極層
第1電極層101は、例えば、後述の光吸収層103で生じた正孔による電流を取り出すために設けられる。第1電極層101としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、Mo、Cr、又はTi等の金属を材料とする金属導電層;金属以外の導電性無機化合物を材料とする導電性無機化合物導電層;導電性有機化合物を材料とする導電性有機化合物導電層を用いることができる。第1電極層101の厚さは、特に限定されないが、例えば、200nm以上800nm以下であり、300nm以上700nm以下である。第1電極層101の厚さが上記範囲内であることにより、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
1.3.正孔輸送層
本実施形態の太陽電池100は、正孔輸送層102を有してもよい。正孔輸送層102は、例えば、後述の光吸収層103で生じた正孔を光吸収層103から効率的に取り出し、後述の光吸収層103で正孔と同時に生じる電子と正孔とが再結合することを防ぐ機能を有する。正孔輸送層102は、p型半導体であることが好ましい。p型半導体に含まれる物質としては、特に限定されないが、例えば、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化ガリウム銅、酸化アルミニウム銅、セレン化モリブデン、セレン化硫化モリブデン等の無機化合物が挙げられる。正孔輸送層102におけるp型半導体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正孔輸送層102は、前述の無機化合物から実質的になることが好ましく、前述の無機化合物であることが好ましい。また、正孔輸送層102における前述の無機化合物の含有量は、正孔輸送層102の総量に対して、好ましくは、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下であり、99質量%以上100質量%以下である。
正孔輸送層102の厚さは、好ましくは、10nm以上100nm以下であり、15nm以上80nm以下であり、20nm以上60nm以下である。正孔輸送層102の厚さが上記範囲内であることにより、後述の光吸収層103で生じた正孔を光吸収層103から効率的に取り出し、後述の光吸収層103で正孔と同時に生じる電子と正孔とが再結合することを防ぐ機能を有しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
1.4.光吸収層
光吸収層103は、例えば、近赤外光、可視光、紫外光等の光を吸収して電子と正孔とを生じる機能を有する。近赤外光、可視光、紫外光等の光としては、例えば、太陽光が挙げられる。光吸収層103は、好ましくは、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む。カルコパイライト化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ケステライト化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カルコパイライト化合物としては、好ましくは、I-III-VI2族カルコパイライト化合物が挙げられる。I-III-VI2族カルコパイライト化合物としては、特に限定されないが、例えば、CuAlS2、CuAlSe2、CuAlTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgAlTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、及びこれらの組み合わせが挙げられる。「これらの組み合わせ」とは、特に限定されないが、例えば、CuGaS2及びCuInSe2を組み合わせたときのCu(InxGa1-x)(Sey1-y2(0≦x≦1、0≦y≦1)が挙げられる。これらのカルコパイライト化合物の中でも、CuGaS2、CuGaSe2、CuInS2、CuInSe2、Cu(InxGa1-x)(Sey1-y2(0≦x≦1、0≦y≦1)が好ましく、Cu(InxGa1-x)(Sey1-y2(0≦x≦1、0≦y≦1)がより好ましい。なお、本実施形態において、CIS化合物というときは、Cu、In、Seを含むカルコパイライト化合物であり、CIGS化合物というときは、Cu、In、Ga、Seを含むカルコパイライト化合物であり、CIGSS化合物というときは、Cu、In、Ga、Se、Sを含むカルコパイライト化合物である。
ケステライト化合物としては、好ましくは、I2-II-IV-VI4族ケステライト化合物が挙げられる。I2-II-IV-VI4族ケステライト化合物としては、特に限定されないが、例えば、Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4、Cu2ZnGeS4、Cu2ZnGeSe4、Cu2MnSnS4、Cu2MnSnSe4、Cu2MnGeS4、Cu2MnGeSe4、Ag2ZnSnS4、Ag2ZnSnSe4、Ag2ZnGeS4、Ag2ZnGeSe4、Ag2MnSnS4、Ag2MnSnSe4、Ag2MnGeS4、Ag2MnGeSe4、及びこれらの組み合わせが挙げられる。「これらの組み合わせ」とは、特に限定されないが、例えば、Cu2ZnSnS4及びAg2ZnSnSe4を組み合わせたときの(CuxAg1-x2ZnSn(SySe1-y4(0≦x≦1)が挙げられる。Cu2ZnSn(SxSe1-x4(0≦x≦1、0≦y≦1)が挙げられる。これらのケステライト化合物の中でも、Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4、Ag2ZnSnS4、Ag2ZnSnSe4、(CuxAg1-x2ZnSn(SySe1-y4(0≦x≦1、0≦y≦1)が好ましく、(CuxAg1-x2ZnSn(SySe1-y4(0≦x≦1、0≦y≦1)がより好ましい。なお、本実施形態において、CZTS化合物というときは、Cu、Zn、Sn、Sを含むケステライト化合物であり、ACZTS化合物というときは、Ag、Cu、Zn、Sn、Sを含むケステライト化合物であり、ACZTSS化合物というときは、Ag、Cu、Zn、Sn、S、Seを含むケステライト化合物である。
光吸収層103における上記カルコパイライト化合物及び上記ケステライト化合物の含有量は、光吸収層103が、可視光、紫外光等の光を吸収して電子と正孔とを生じる機能を有すれば特に限定されない。より具体的には、特に限定されないが、上記カルコパイライト化合物及び上記ケステライト化合物の含有量は、光吸収層103の総質量に対して、50質量%以上100質量%以下であり、60質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上100質量%以下であり、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下である。
光吸収層103は、アルカリ金属元素を含むことが好ましい。アルカリ金属元素の中でも、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムを含むことがより好ましい。光吸収層103がアルカリ金属元素を含むことにより、太陽電池の変換効率が向上する傾向にある。
光吸収層103におけるアルカリ金属元素の含有量は、好ましくは、0質量%以上2.0質量%以下であり、0質量%以上1.0質量%以下であり、0質量%以上0.5質量%以下である。
光吸収層103におけるアルカリ金属元素の含有量は、特に限定されないが、例えば、ICP、EDX、SIMSを用いて測定できる。
光吸収層103の厚さは、好ましくは、0.5μm以上10.0μm以下であり、0.5μm以上7.5μm以下であり0.5μm以上5.0μm以下であり、0.5μm以上3.0μm以下である。光吸収層103の厚さが上記範囲内であることにより、可視光、紫外光等の光を吸収して電子と正孔とを生じる機能を有しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
本実施形態の太陽電池100は、光吸収層103を2層有していてもよい。この場合、1層目の光吸収層103が含む物質と、2層目の光吸収層103が含む物質とは異なってもよく、同一でもよいが、異なる場合が好ましい。太陽電池100が光吸収層103を2層有することにより、光吸収層103が吸収できる光の波長領域を拡大できる傾向にあり、結果として、太陽電池の性能が向上する傾向にある。また、本実施形態の太陽電池100は、光吸収層103を3層以上有していてもよい。
1.5.第1電子輸送層
第1電子輸送層104は、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体であり、光吸収層103に含まれるアルカリ金属元素が第2電極層106にまで拡散することを防ぐ機能、及び光吸収層103で生じた電子を光吸収層103から効率的に取り出し、光吸収層103で電子と同時に生じる正孔と電子とが再結合することを防ぐ機能を有する。ここで、他種元素とは、硫黄元素及びインジウム元素以外の元素を意味する。他種元素としては、好ましくは、酸素元素、アルカリ金属元素が挙げられる。他種元素は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、アルカリ金属元素は、好ましくは、ナトリウム及びカリウムであり、アルカリ金属元素は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他種元素が添加された硫化インジウムにおいて、第1電子輸送層104による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、硫黄元素及びインジウム元素の総モルに対する他種元素のモル比が、0超2.0以下であり、0.1以上1.8以下であり、0.2以上1.6以下であり、0.3以上1.4以下である。
酸素元素が添加された硫化インジウムにおいて、第1電子輸送層104による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、硫黄元素に対する酸素元素のモル比αが、0超2.4以下であり、0.1以上2.2以下であり、0.2以上2.0以下であり、0.3以上1.9以下であり、0.4以上1.8以下であり、0.5以上1.7以下である。
アルカリ金属元素が添加された硫化インジウムにおいて、第1電子輸送層104による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、インジウム元素に対するアルカリ金属元素のモル比βが、0超1.3以下であり、0.1以上1.2以下であり、0.2以上1.1以下であり、0.3以上1.0以下であり、0.4以上0.9以下であり、0.5以上0.8以下である。
酸素元素及びアルカリ金属元素が添加された硫化インジウムにおいて、第1電子輸送層104による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、硫黄元素に対する酸素元素のモル比α及びインジウム元素に対するアルカリ金属元素のモル比βが、0<α≦2.4及び0超<β≦1.3であり、0.1≦α≦2.2及び0.1≦β≦1.2であり、0.2≦α≦2.0及び0.2≦β≦1.1であり、0.3≦α≦1.9及び0.3≦β≦1.0であり、0.4≦α≦1.8及び0.4≦β≦0.9であり、0.5≦α≦1.7及び0.5≦β≦0.8である。
n型半導体である第1電子輸送層104は、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムから実質的になることが好ましく、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムであることが好ましい。また、n型半導体である第1電子輸送層104における硫化インジウム及び他種元素が添加された硫化インジウムの含有量は、第1電子輸送層104の総量に対して、好ましくは、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下であり、99質量%以上100質量%以下である。
第1電子輸送層104の厚さは、好ましくは、10nm以上40nm以下であり、15nm以上35nm以下であり、17nm以上30nm以下である。第1電子輸送層104の厚さが上記範囲内であることにより、光吸収層103に含まれるアルカリ金属元素が第2電極層106にまで拡散することを防ぐ機能、及び光吸収層103で生じた電子を光吸収層103から効率的に取り出し、光吸収層103で電子と同時に生じる正孔と電子とが再結合することを防ぐ機能を有しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。また、硫化インジウムはバンドギャップが2.1eV程度であり、太陽光の透過性が高くはないが、第1電子輸送層104の厚さが上記範囲内であることにより、第1電子輸送層104における太陽光の透過性が向上し、太陽電池の性能が向上する傾向にある。また、硫化インジウムは高抵抗であるが、第1電子輸送層104の厚さが上記範囲内であることにより、その高抵抗が太陽電池の性能に悪影響を及ぼすことを抑制し、太陽電池の性能が向上する傾向にある。
1.6.第2電子輸送層
第2電子輸送層105は、水素元素が添加されたn型酸化物半導体であり、光吸収層103で生じた電子を光吸収層103から効率的に取り出し、光吸収層103で電子と同時に生じる正孔と電子とが再結合することを防ぐ機能を有する。
水素元素が添加されたn型酸化物半導体のバンドギャップが、好ましくは、3.3eV以上であり、3.4eV以上であり、3.5eV以上であり、3.6eV以上である。また、水素元素が添加されたn型酸化物半導体のバンドギャップは、特に限定されないが、例えば、3.3eV以上5.0eV以下であり、3.4eV以上4.5eV以下であり、3.5eV以上4.0eV以下である。バンドギャップが上記数値範囲内であることにより、第2電子輸送層105の透過性が向上するため、光吸収層103が吸収する光量が増大し、結果として、太陽電池の変換効率が向上する傾向にある。
バンドギャップの測定方法としては、公知の手法を用いることができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、分光透過率測定や分光量子効率測定等によって測定される。
水素元素が添加されたn型酸化物半導体のキャリア濃度が、好ましくは、1.0×1020cm-3以下であり、5.0×1019cm-3以下であり、2.5×1019cm-3以下である。また、水素元素が添加されたn型酸化物半導体のキャリア濃度は、特に限定されないが、例えば、1.0×1016cm-3以上1.0×1020cm-3以下であり、1.0×1017cm-3以上5.0×1019cm-3以下であり、1.0×1018cm-3以上2.5×1019cm-3以下である。キャリア濃度が上記数値範囲内であることにより、光吸収層103で生じた電子を光吸収層103から効率的に取り出せるため、光吸収層103で電子と同時に生じる正孔と電子とが再結合することを防ぐことが可能になり、結果として、太陽電池の変換効率が向上する傾向にある。
キャリア濃度の測定方法としては、公知の手法を用いることができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、ホール測定等によって測定される。
水素元素が添加されたn型酸化物半導体の屈折率が、好ましくは、2.1以上である。また、水素元素が添加されたn型酸化物半導体の屈折率は、特に限定されないが、例えば、2.1以上2.8以下であり、2.1以上2.6以下である。第1電子輸送層104は、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体であり、硫化インジウムの屈折率は2.8程度と大きい値をとるため、第1電子輸送層104の屈折率も大きくなる。そのため、第2電子輸送層105として屈折率が低い半導体を用いると、電子輸送層同士の界面において光の反射が大きくなり、結果として太陽電池の性能を低下させる傾向にある。一方、第2電子輸送層105として屈折率が上記数値範囲内の、水素元素が添加されたn型酸化物半導体を用いることで、第1電子輸送層104と第2電子輸送層105との界面における光の反射を抑えることができ、結果として太陽電池の変換効率が向上する傾向にある。
屈折率の測定方法としては、公知の手法を用いることができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、分光透過率測定や分光エリプソメトリー測定等によって測定される。
水素元素が添加されたn型酸化物半導体の比抵抗率が、好ましくは、1.6×10-2Ωcm以上であり、1.8×10-2Ωcm以上であり、2.0×10-2Ωcm以上である。また、水素元素が添加されたn型酸化物半導体の比抵抗率は、特に限定されないが、例えば、1.6×10-2Ωcm以上1.0×102Ωcm以下であり、1.8×10-2Ωcm以上10.0Ωcm以下であり、2.0×10-2Ωcm以上1.0Ωcm以下である。比抵抗率が上記数値範囲内であることにより、太陽電池の変換効率が向上する傾向にある。
比抵抗率の測定方法としては、公知の手法を用いることができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、4探針法により測定される。
水素元素が添加されたn型酸化物半導体としては、バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であり、かつ、屈折率が2.1以上であるものが好ましい。さらに、水素元素が添加されたn型酸化物半導体としては、バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であり、屈折率が2.1以上であり、かつ、比抵抗率が1.6×10-2Ωcm以上であるものが好ましい。
バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であり、屈折率が2.1以上であり、かつ、比抵抗率が1.6×10-2Ωcm以上である水素元素が添加されたn型酸化物半導体におけるn型酸化物半導体に含まれる物質としては、好ましくは、酸化チタン、硫黄元素が添加された酸化亜鉛、又はチタン元素が添加された酸化亜鉛が挙げられる。この中でも、チタン元素が添加された酸化亜鉛が好ましい。n型酸化物半導体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄元素が添加された酸化亜鉛において、第2電子輸送層105による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、酸素元素に対する硫黄元素のモル比が、0以上0.7以下であり、0.1以上0.4以下である。
チタン元素が添加された酸化亜鉛において、第2電子輸送層105による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、亜鉛元素に対するチタン元素のモル比が、0以上0.3以下であり、0.05以上0.2以下である。
水素元素が添加されたn型酸化物半導体において、第2電子輸送層105による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、全ての金属元素に対する水素元素のモル比が、0.001以上0.030以下であり、0.005以上0.020以下であり、0.007以上0.015以下であり、0.009以上0.013以下である。
水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層105は、後述する第2電子輸送層形成工程における手法によって形成された電子輸送層であってもよい。
n型酸化物半導体である第2電子輸送層105は、酸化チタン、硫黄元素が添加された酸化亜鉛、又はチタン元素が添加された酸化亜鉛から実質的になることが好ましく、酸化チタン、硫黄元素が添加された酸化亜鉛、又はチタン元素が添加された酸化亜鉛であることが好ましい。また、n型酸化物半導体である第2電子輸送層105における酸化チタン、硫黄元素が添加された酸化亜鉛、及びチタン元素が添加された酸化亜鉛の含有量は、第2電子輸送層105の総量に対して、好ましくは、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下であり、99質量%以上100質量%以下である。
第2電子輸送層105の厚さは、好ましくは、50nm以上120nm以下であり、55nm以上110nm以下であり、60nm以上100nm以下である。第2電子輸送層105の厚さが上記範囲内であることにより、光吸収層103で生じた電子を光吸収層103から効率的に取り出し、光吸収層103で電子と同時に生じる正孔と電子とが再結合することを防ぐ機能を有しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
1.7.第2電極層
第2電極層106は、例えば、光吸収層103で生じた電子による電流を取り出すために設けられる。また、太陽電池100において、第2電極層106を通過した光を光吸収層103が吸収するため、光吸収層103が吸収する光量を増大させるために、第2電極層106は透明電極層であることが好ましい。透明電極とは、高い電気伝導性と高い可視光透過性を兼ね備えた材料を用いた電極である。高い電気伝導性とは、特に限定されないが、例えば、比抵抗率が5.0×10-3Ωcm以下であることを意味する。高い可視光透過性とは、特に限定されないが、例えば、400~1300nmの波長領域での平均透過率が80%以上であることを意味する。透明電極の材料としては、公知の材料を用いることができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、水素含有酸化インジウム(IOH)、フッ素含有酸化スズ(FTO)、ホウ素含有酸化亜鉛(ZnO:B)、アルミニウム含有酸化亜鉛(ZnO:Al)等が挙げられる。
第2電極層106における上記材料の含有量は、第2電極層106が、透明電極として機能すれば特に限定されない。より具体的には、特に限定されないが、上記材料の含有量は、第2電極層106の総質量に対して、50質量%以上100質量%以下であり、60質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上100質量%以下であり、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下である。
第2電極層106の厚さは、特に限定されないが、例えば、100nm以上1500nm以下であり、200nm以上1000nm以下である。第2電極層106の厚さが上記範囲内であることにより、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
1.8.グリッド電極
グリッド電極107は、例えば、第2電極層106から電気を取り出すために設けられる。グリッド電極107の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、Mo、Cr、Ag、Cu、Ni、Al又はTi等の金属;金属以外の導電性無機化合物;導電性有機化合物を用いることができる。
グリッド電極107における上記材料の含有量は、グリッド電極107が電極として機能すれば特に限定されない。より具体的には、特に限定されないが、上記材料の含有量は、グリッド電極107の総質量に対して、50質量%以上100質量%以下であり、60質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上100質量%以下であり、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下である。
グリッド電極107の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上50μm以下である。グリッド電極107の厚さが上記範囲内であることにより、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
2.太陽電池の製造方法
本実施形態の太陽電池100の製造方法において、上記太陽電池100は、第1電極層101と、光吸収層103と、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104と、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層105と、第2電極層106と、をこの順に、少なくとも備え、上記製造方法は、スパッタリング法により、上記光吸収層103を含む基材上に上記第1電子輸送層104を形成する第1電子輸送層形成工程、並びに酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法により、上記第1電子輸送層104上に上記第2電子輸送層105を形成する第2電子輸送層形成工程を含む。
本実施形態の製造方法により製造される太陽電池100は、光吸収層103と第2電子輸送層105との間に、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104を有することにより、太陽電池100が高温環境に晒されても、光吸収層103に含まれるアルカリ金属元素が第2電極層106にまで拡散することを防ぐことができ、結果として、太陽電池100は耐熱性に優れる傾向にある。これは、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104が、光吸収層103のアルカリ金属元素の拡散を防ぐための拡散防止層として機能することに起因すると考えられるが、その要因はこれに限定されない。
従来の太陽電池の製造方法では、太陽電池の耐熱性を向上させるために、太陽電池における電子輸送層を2層構造として、光吸収層側の電子輸送層が硫化インジウムを含むようにする場合、硫化インジウムを含む電子輸送層の上にもう一方の電子輸送層をスパッタリング法で成膜すると、硫化インジウムを含む電子輸送層がダメージを受けやすいため、スパッタリング法を用いてもう一方の電子輸送層を形成することができなかった。そのため、従来の太陽電池では、原子層積層法や化学溶液堆積法等の高コストの成膜法を用いて、硫化インジウムを含む電子輸送層へのダメージを抑えつつ、もう一方の電子輸送層を形成する必要があった。また、化学溶液堆積法等の成膜法はウェットプロセスである一方、太陽電池の製法において、ほとんどの工程がドライプロセスであるため、他方の電子輸送層の成膜時のみにウェットプロセスを用いると、高コストであるだけでなく、製造に時間がかかるという欠点もあった。
一方、本実施形態の太陽電池100の製造方法は、酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリングすることで、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104へのダメージを抑えつつ、第1電子輸送層104上にn型酸化物半導体である第2電子輸送層105をスパッタリング法により形成することができ、原子層積層法や化学溶液堆積法等の高コストの成膜法を用いる必要がなくなる。酸素源を含む環境下でスパッタリングを行うと酸素プラズマなどの、酸素源から発生する活性種が生じ、この酸素プラズマなどの活性種が発生しすぎると、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104にダメージを与えると考えられる。一方、本実施形態の製造方法においては、スパッタリング時に供給されるガスが水素源を含むため、供給ガスにおける酸素源濃度が適切な範囲内となることに加えて、水素が酸素と相互作用するため、酸素プラズマなどの活性種の発生が適度に抑制される。その結果、硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104への酸素プラズマなどの活性種によるダメージが低減されるため、第1電子輸送層104へのダメージを抑えつつ、第1電子輸送層104上にn型酸化物半導体である第2電子輸送層105をスパッタリング法により形成することができると考えられる。しかしながら、その要因は上記のものに限定されない。
また、スパッタリング法は、太陽電池の製法における電子輸送層の成膜以外の工程と同様にドライプロセスであるため、太陽電池100の製造時に、ウェットプロセス用の環境とドライプロセス用の環境との両方を用意することなく、ドライプロセス用の環境のみを用意して太陽電池100を製造できるため、この点においても生産コストを低下させることができる傾向にあり、製造にかかる時間を低減することもできる傾向にある。
したがって、本実施形態の製造方法により製造される太陽電池100は、高い耐熱性を有し、生産コストが低くなると考えられる。ただし、その要因は上記のものに限定されない。
以下、本実施形態の太陽電池100の製造方法に含まれ得る各工程について詳説する。なお、本実施形態において、ウェットプロセスとは、溶液を用いた工程を意味する。また、ドライプロセスとは、溶液を用いない工程を意味する。
2.1.第1電極層形成工程
第1電極層形成工程では、例えば、基板108上に第1電極層101を形成してもよい。第1電極層101を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング法により、金属導電層である第1電極層101を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:1.0~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度及び被スパッタ基板の温度は制御されなくてもよい。なお、被スパッタ基板とは、スパッタリングを行う際のステージ上の基板であって、スパッタリングターゲット由来の化合物がその上に積層する、基板のことである。第1電極層形成工程においては、例えば、基板108を被スパッタ基板としてもよい。
2.2.正孔輸送層形成工程
正孔輸送層形成工程では、例えば、第1電極層101上に正孔輸送層102を形成してもよい。正孔輸送層102を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング法により、無機化合物を含むp型半導体である正孔輸送層102を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度及び被スパッタ基板の温度は制御されなくてもよい。また、光吸収層103を形成する際に、第1電極層101の元素と、光吸収層103に含まれる元素との化合物を形成し、第1電極層101と光吸収層103の間に、正孔輸送層102を形成する方法でもよい。
2.3.光吸収層形成工程
光吸収層形成工程では、例えば、正孔輸送層102上に光吸収層103を形成してもよい。正孔輸送層102を有しない場合は、第1電極層101上に光吸収層103を形成してもよい。光吸収層103を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング法により、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む光吸収層103を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度及び被スパッタ基板の温度は制御されなくてもよい。また、スパッタ後に、窒素またはセレン及び硫黄雰囲気中で、350℃以上650℃以下でアニールしてもよい。
光吸収層103がアルカリ金属元素を含むとき、光吸収層形成工程は、アルカリ金属元素が添加されたスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む光吸収層103を形成することが好ましい。また、基板108又は第1電極層101にアルカリ金属元素を添加しておき、光吸収層103形成時に、光吸収層103にアルカリ金属元素を熱拡散させる方法でもよい。
2.4.第1電子輸送層形成工程
第1電子輸送層形成工程では、スパッタリング法により、光吸収層103を含む基材上に第1電子輸送層104を形成する。第1電子輸送層形成工程では、例えば、上記基材が、最表層に光吸収層103を有し、光吸収層103が、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含んでもよい。
スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、第1電子輸送層104が、硫化インジウムを含むn型半導体であるときは、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度は制御されなくてもよい。一方、スパッタリング中は、光吸収層103を含む基材を150℃以上250℃以下で加熱することが好ましく、160℃以上250℃以下で加熱することが好ましく、170℃以上250℃以下で加熱することが好ましく、180℃以上250℃以下で加熱することが好ましく、190℃以上250℃以下で加熱することが好ましく、200℃以上250℃以下で加熱することが好ましい。なお、基板108として金属基板を用いた場合は、上記基材の温度と加熱の温度はほぼ同一になる。
第1電子輸送層104が、酸素元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体であるときは、特に限定されないが、例えば、成膜雰囲気をアルゴン・酸素混合ガス雰囲気とし、他の成膜条件は、n型半導体が硫化インジウムを含む場合の条件と同様にしてスパッタリングを行うことで、酸素元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104を形成できる。
第1電子輸送層104が、アルカリ金属元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体であるときは、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属元素が添加されたスパッタリングターゲットを用いて、他の成膜条件は、n型半導体が硫化インジウムを含む場合の条件と同様にしてスパッタリングを行うことで、アルカリ金属元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104を形成できる。
第1電子輸送層104が、酸素元素及びアルカリ金属元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体であるときは、特に限定されないが、例えば、成膜雰囲気をアルゴン・酸素混合ガス雰囲気とし、アルカリ金属元素が添加されたスパッタリングターゲットを用いて、他の成膜条件は、n型半導体が硫化インジウムを含む場合の条件と同様にしてスパッタリングを行うことで、酸素元素及びアルカリ金属元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104を形成できる。
2.5.第2電子輸送層形成工程
第2電子輸送層形成工程では、酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法により、第1電子輸送層104上に第2電子輸送層105を形成する。
スパッタリングターゲットは、成膜するn型酸化物半導体に含まれる元素を含んでいればよく、成膜するn型酸化物半導体に含まれる金属元素を含むことが好ましく、成膜するn型酸化物半導体に含まれる金属の酸化物を含むことが好ましい。成膜するn型酸化物半導体における金属元素、並びに酸素元素及び硫黄元素を含むその他の元素の含有率は、特に限定されないが、例えば、スパッタリングターゲットに添加する元素を調整することで制御することができる。
スパッタリングターゲットとしては、酸化チタンか、酸化亜鉛及び硫化亜鉛の混合物か、又は酸化亜鉛及び酸化チタンの混合物が好ましく、酸化亜鉛と酸化チタンの混合物がより好ましい。n型酸化物半導体が酸化チタンを含むときは、スパッタリングターゲットとして酸化チタンを用いることが好ましく、n型酸化物半導体が硫黄元素が添加された酸化亜鉛を含むときは、スパッタリングターゲットとして酸化亜鉛及び硫化亜鉛の混合物を用いることが好ましく、n型酸化物半導体がチタン元素が添加された酸化亜鉛を含むときは、スパッタリングターゲットとして酸化亜鉛と酸化チタンの混合物を用いることが好ましい。スパッタリングターゲットである酸化亜鉛と酸化チタンの混合物における酸化チタンの含有量は、該混合物の総質量に対して、好ましくは、4.0質量%以上20質量%以下であり、5.0質量%以上19質量%以下であり、6.0質量%以上18質量%以下である。
スパッタリング中に供給するガスは、酸素源及び水素源を含む。該ガスは、アルゴンガスを主成分とすることが好ましい。酸素源としては、酸素元素を含むガスであれば特に限定されないが、例えば、H2O蒸気、O2ガス、O3ガスが挙げられ、O2ガスが好ましい。水素源としては、水素元素を含むガスであれば特に限定されないが、例えば、H2O蒸気、H2ガスが挙げられ、H2ガスが好ましい。
スパッタリング中に供給するガスにおける酸素源の濃度は、酸素分子換算で、好ましくは、0.8体積%以上1.6体積%以下であり、0.9体積%以上1.5体積%以下であり、1.0体積%以上1.5体積%以下である。酸素分子換算の酸素源の濃度は、具体的には以下のとおり計算する。酸素源がH2O蒸気のとき、H2O蒸気は酸素元素を1つ含むため、上記ガスにおけるH2O蒸気の濃度が1.0体積%であるとき、酸素分子換算の酸素源の濃度は、1.0体積%の半分である0.5体積%となる。酸素源がO2ガスのとき、O2ガスは酸素元素を2つ含むため、上記ガスにおけるO2ガスの濃度が1.0体積%であるとき、酸素分子換算の酸素源の濃度は、1.0体積%となる。
スパッタリング中に供給するガス中に含まれる、酸素元素に対する水素元素のモル比が、好ましくは、1.0倍以上2.0倍以下であり、1.2倍以上2.0倍以下であり、1.4倍以上2.0倍以下である。酸素元素に対する水素元素のモル比は、具体的には以下のとおり計算する。酸素源としてO2ガス、水素源としてH2O蒸気を用いた上記ガスであって、上記ガスにおける酸素源の濃度が0.8体積%、上記ガスにおける水素源の濃度が1.6体積%であるとき、水素源であるH2O蒸気は、1分子当たり水素元素2個及び酸素元素1個を有し、酸素源であるO2ガスは、1分子当たり酸素元素2個を有する。したがって、酸素元素に対する水素元素のモル比は、(1.6×2)÷(1.6+0.8×2)=1.0倍と計算される。
スパッタリング中に供給するガスにおけるアルゴンガスの濃度は、特に限定されないが、例えば、90.0体積%以上99.0%体積%以下であり、91.0体積%以上98.5%体積%以下であり、92.0体積%以上98.0%体積%以下であり、93.0体積%以上97.5%体積%以下であり、94.0体積%以上97.0%体積%以下である。
スパッタリング中に、光吸収層103を含む基材及び該基材上に形成された第1電子輸送層104を含む積層体を100℃以上200℃以下で加熱することが好ましく、125℃以上175℃以下で加熱することが好ましい。なお、基板108として金属基板を用いた場合は、上記積層体の温度と加熱の温度はほぼ同一になる。
スパッタリング法のその他の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度は制御されなくてもよい。
2.6.第2電極層形成工程
第2電極層形成工程では、例えば、第2電子輸送層105上に第2電極層106を形成してもよい。第2電極層106を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング法により、透明電極層である第2電極層106を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度及び被スパッタ基板の温度は制御されなくてもよい。
2.7.グリッド電極形成工程
グリッド電極形成工程では、例えば、第2電極層106上にグリッド電極107を形成してもよい。グリッド電極107を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられる。具体的には、例えば、スパッタリング法や蒸着法、ペースト状の導電材料を第2電極層106上に印刷する手法、または導電性ワイヤーを圧着する方法が挙げられる。
3.太陽電池の使用方法
本実施形態の太陽電池100は、従来の太陽電池と同様に、太陽電池の温度が45~85℃程度となる、通常の温度環境下で用いることができる。また、本実施形態の太陽電池100は、従来の太陽電池とは異なり、太陽電池の温度が85℃を超えるような、高温の温度環境下(例えば、宇宙、成層圏、砂漠、熱帯、ビルの屋上、自動車のルーフ、飛行機の外壁上等)でも好適に用いることができる。
また、本実施形態の太陽電池100は、街灯、センサー、デジタルサイネージ等に用いる独立電源デバイスとして用いることができる。また、本実施形態の太陽電池100は、モバイルエネルギーデバイスとしても用いることができる。
<付記>
本開示の実施形態は、以下の態様を含む。
[1]
第1電極層と、
光吸収層と、
硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層と、
水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層と、
第2電極層と、をこの順に、少なくとも備える、
太陽電池。
[2]
前記第1電子輸送層が、前記光吸収層上に設けられ、
前記第2電子輸送層が、前記第1電子輸送層上に設けられている、
[1]に記載の太陽電池。
[3]
前記第1電子輸送層の厚さが、10nm以上40nm以下であり、
前記第2電子輸送層の厚さが、50nm以上120nm以下である、
[1]又は[2]に記載の太陽電池。
[4]
前記光吸収層が、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む、
[1]~[3]のいずれか1つに記載の太陽電池。
[5]
前記n型酸化物半導体は、バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であり、かつ、屈折率が2.1以上である酸化物半導体である、
[1]~[4]のいずれか1つに記載の太陽電池。
[6]
前記n型酸化物半導体が、酸化チタン、硫黄元素が添加された酸化亜鉛、又はチタン元素が添加された酸化亜鉛を含む、
[5]に記載の太陽電池。
[7]
太陽電池の製造方法であって、
前記太陽電池は、
第1電極層と、
光吸収層と、
硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層と、
水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層と、
第2電極層と、をこの順に、少なくとも備え、
前記製造方法は、
スパッタリング法により、前記光吸収層を含む基材上に前記第1電子輸送層を形成する第1電子輸送層形成工程、並びに
酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法により、前記第1電子輸送層上に前記第2電子輸送層を形成する第2電子輸送層形成工程を含む、
太陽電池の製造方法。
[8]
前記基材は、最表層に前記光吸収層を有し、
前記光吸収層が、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む、
[7]に記載の製造方法。
[9]
前記第2電子輸送層形成工程において供給される前記ガス中の酸素源の濃度が、酸素分子換算で、0.8体積%以上1.6体積%以下である、
[7]又は[8]に記載の製造方法。
[10]
前記第2電子輸送層形成工程において供給される前記ガス中に含まれる、酸素元素に対する水素元素のモル比が1.0倍以上2.0倍以下である、
[7]~[9]のいずれか1つに記載の製造方法。
[11]
前記n型酸化物半導体は、バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であり、かつ、屈折率が2.1以上である酸化物半導体である、
[7]~[10]のいずれか1つに記載の製造方法。
[12]
前記n型酸化物半導体が、酸化チタン、硫黄元素が添加された酸化亜鉛、又はチタン元素が添加された酸化亜鉛を含む、
[11]に記載の製造方法。
[13]
前記n型酸化物半導体が、チタン元素が添加された酸化亜鉛であり、
前記第2電子輸送層形成工程は、4.0質量%以上20質量%以下の酸化チタンを含む、酸化亜鉛と酸化チタンとの混合物をスパッタリングターゲットに用いて実施される、
[7]~[12]のいずれか1つに記載の製造方法。
[14]
前記第1電子輸送層形成工程は、前記基材を150℃以上250℃以下で加熱しながら実施され、
前記第2電子輸送層形成工程は、前記基材及び前記基材上に形成された前記第1電子輸送層を含む積層体を100℃以上200℃以下で加熱しながら実施される、
[13]に記載の製造方法。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。また、特に記載がない限り、室温(25℃)、1気圧下で行われた。
1.太陽電池の作製
実施例1では、基板108として、厚さ50μmのチタン箔を用いた。この基板108上に、スパッタリング法を用いて、金属モリブデンを含む第1電極層101を厚さ600nmで形成した。
次に、第1電極層101上に、スパッタリング法を用いて、アルカリ金属元素であるナトリウム元素及びカリウム元素、並びにCIGSS化合物を含む光吸収層103を厚さ2μmで形成した。また、光吸収層103を形成する際に、第1電極層101と光吸収層103の間に、セレン化モリブデンを含む正孔輸送層102が厚さ50nmで形成された。
次に、光吸収層103上に、スパッタリング法を用いて、硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層104を厚さ30nmで形成した。スパッタリング法の条件は、以下のとおりである。
スパッタリングターゲット:硫化インジウム
成膜雰囲気:アルゴン雰囲気
成膜時の被スパッタ基板の加熱温度:200℃
次に、第1電子輸送層104上に、スパッタリング法を用いて、水素元素が添加され、チタン元素が添加された酸化亜鉛を含むn型酸化物半導体である第2電子輸送層105を厚さ70nmで形成した。RBS/HFS法により、第2電子輸送層105中の水素元素量を測定したところ、全ての金属元素に対する水素元素のモル比が0.011となった。また、スパッタリング法の条件は、以下のとおりである。
スパッタリングターゲット:酸化亜鉛と酸化チタンの混合物(混合比率は表1~3に記載)
成膜雰囲気:アルゴン・水素ガス・酸素ガス雰囲気(供給した混合ガスにおける水素ガスの割合:1.6体積%、混合ガスにおける酸素ガスの割合:1.2体積%)
成膜時の被スパッタ基板の加熱温度:160℃
次に、第2電子輸送層105上に、スパッタリング法を用いて、水素含有酸化インジウム(IOH)を含む透明電極層である第2電極層106を厚さ300nmで形成した。
上述のようにして、実施例1の太陽電池を作製した。実施例2~11の太陽電池も、表1~3中に記載のパラメータを使用した以外は、実施例1と同様に作製した。なお、表1~3中、「第1電子輸送層成膜温度(℃)」及び「第2電子輸送層成膜温度(℃)」は、成膜時の被スパッタ基板の加熱温度を示す。また、「TiO2比率(%)」は、第2電子輸送層105を形成する際に用いたスパッタリングターゲットにおける、TiO2の割合を示す。
比較例1の太陽電池は、第1電子輸送層以外は、実施例1の太陽電池と同様に作製した。比較例1の太陽電池において、光吸収層上に、化学溶液堆積法を用いて、硫化カドミウムを含むn型半導体である第1電子輸送層を厚さ30nmで形成した。
比較例2の太陽電池は、第1電子輸送層を形成する工程を行わなかったこと及び第2電子輸送層を形成する工程の条件を変えたこと以外は、実施例1の太陽電池と同様に作製した。比較例2の太陽電池において、光吸収層上に、スパッタリング法を用いて、水素元素が添加され、チタン元素が添加された酸化亜鉛を含むn型酸化物半導体である第2電子輸送層を厚さ100nmで形成した。スパッタリング法の条件は、以下のとおりである。
スパッタリングターゲット:酸化亜鉛と酸化チタンの混合物(混合比率は表1~3に記載)
成膜雰囲気:アルゴン・水素ガス・酸素ガス雰囲気(供給した混合ガスにおける水素ガスの割合:1.6体積%、混合ガスにおける酸素ガスの割合:1.2体積%)
成膜時の被スパッタ基板の加熱温度:160℃
比較例3の太陽電池は、第2電子輸送層を形成する工程を行わなかったこと及び第2電極層を第1電子輸送層上に形成したこと以外は、実施例1の太陽電池と同様に作製した。
2.評価方法
2.1.耐熱性(FF値)
実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた太陽電池を、分光スペクトルAM1.5の光を放射照度1kW/m2で照射しながら、200℃で30分加熱し、初期安定化した。その後、FF値を測定した。さらに、FF値測定後、それぞれの太陽電池を分光スペクトルAM1.5の光を放射照度1kW/m2で照射しながら、150℃で208時間加熱した。その後、FF値を測定した。FF値とは、太陽電池の出力特性であるI-V曲線における最適動作点での出力(最大出力:Pmax)を、開放電圧(Voc)及び短絡電流(Isc)の積で除した値であり、太陽電池の電流電圧特性の良さを表す指標である。
FF値(%)=Pmax÷(Voc×Isc)×100
I-V曲線は、太陽電池の標準試験条件下(分光スペクトルAM1.5の光を放射照度1kW/m2で入射し太陽電池温度が25℃である試験条件)で測定した。
2.2.変換効率
実施例2~11及び比較例3で得られた太陽電池について、変換効率を測定した。変換効率とは、I-V曲線における最適動作点での出力(最大出力:Pmax)を太陽電池が受ける光エネルギーEで除した値である。
変換効率(%)=Pmax÷E×100
I-V曲線は、FF値を測定した際と同じ条件で測定した。
Figure 0007457311000002
Figure 0007457311000003
Figure 0007457311000004
3.評価結果
図2に、実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた太陽電池のI-V曲線を示す。図2中、Aが比較例1に、Bが比較例2に、Cが実施例1に対応する。また、表1に実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた太陽電池のFF値を示す。これらより、実施例1の太陽電池は、比較例1及び比較例2の太陽電池と比較して、加熱による電流電圧特性の劣化が抑えられており、且つ、加熱前後の両方において、優れた電流電圧特性を有することがわかる。なお、図2中のCでは、加熱後のI-V曲線が加熱前のI-V曲線に重なっている。
表2、3に、実施例2~11及び比較例3で得られた太陽電池の変換効率を示す。これらより、実施例2~11の太陽電池は、比較例3の太陽電池と比較して、優れた変換効率を有することがわかる。
本発明の太陽電池は耐熱性に優れるため、高温環境など様々な環境で用いられる太陽電池として、産業上の利用可能性を有する。
100…太陽電池、101…第1電極層、102…正孔輸送層、103…光吸収層、104…第1電子輸送層、105…第2電子輸送層、106…第2電極層、107…グリッド電極、108…基板

Claims (13)

  1. 第1電極層と、
    光吸収層と、
    硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層と、
    水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層と、
    第2電極層と、をこの順に、少なくとも備え
    前記第1電子輸送層が、前記光吸収層上に設けられ、
    前記第2電子輸送層が、前記第1電子輸送層上に設けられ、
    前記第1電子輸送層の厚さが、10nm以上40nm以下である、
    太陽電池。
  2. 記第2電子輸送層の厚さが、50nm以上120nm以下である、
    請求項1に記載の太陽電池。
  3. 前記光吸収層が、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む、
    請求項1又は2に記載の太陽電池。
  4. 前記n型酸化物半導体は、バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であり、かつ、屈折率が2.1以上である酸化物半導体である、
    請求項1又は2に記載の太陽電池。
  5. 前記n型酸化物半導体が、酸化チタン、硫黄元素が添加された酸化亜鉛、又はチタン元素が添加された酸化亜鉛を含む、
    請求項に記載の太陽電池。
  6. 太陽電池の製造方法であって、
    前記太陽電池は、
    第1電極層と、
    光吸収層と、
    硫化インジウム又は他種元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体である第1電子輸送層と、
    水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層と、
    第2電極層と、をこの順に、少なくとも備え、
    前記第1電子輸送層が、前記光吸収層上に設けられ、
    前記第2電子輸送層が、前記第1電子輸送層上に設けられ、
    前記第1電子輸送層の厚さが、10nm以上40nm以下であり、
    前記製造方法は、
    スパッタリング法により、前記光吸収層を含む基材上に前記第1電子輸送層を形成する第1電子輸送層形成工程、並びに
    酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法により、前記第1電子輸送層上に前記第2電子輸送層を形成する第2電子輸送層形成工程を含む、
    太陽電池の製造方法。
  7. 前記基材は、最表層に前記光吸収層を有し、
    前記光吸収層が、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む、
    請求項に記載の製造方法。
  8. 前記第2電子輸送層形成工程において供給される前記ガス中の酸素源の濃度が、酸素分子換算で、0.8体積%以上1.6体積%以下である、
    請求項6又は7に記載の製造方法。
  9. 前記第2電子輸送層形成工程において供給される前記ガス中に含まれる、酸素元素に対する水素元素のモル比が1.0倍以上2.0倍以下である、
    請求項6又は7に記載の製造方法。
  10. 前記n型酸化物半導体は、バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であり、かつ、屈折率が2.1以上である酸化物半導体である、
    請求項6又は7に記載の製造方法。
  11. 前記n型酸化物半導体が、酸化チタン、硫黄元素が添加された酸化亜鉛、又はチタン元素が添加された酸化亜鉛を含む、
    請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記n型酸化物半導体が、チタン元素が添加された酸化亜鉛であり、
    前記第2電子輸送層形成工程は、4.0質量%以上20質量%以下の酸化チタンを含む、酸化亜鉛と酸化チタンとの混合物をスパッタリングターゲットに用いて実施される、
    請求項6又は7に記載の製造方法。
  13. 前記第1電子輸送層形成工程は、前記基材を150℃以上250℃以下で加熱しながら実施され、
    前記第2電子輸送層形成工程は、前記基材及び前記基材上に形成された前記第1電子輸送層を含む積層体を100℃以上200℃以下で加熱しながら実施される、
    請求項12に記載の製造方法。
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