以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
図1に示されるように、第1実施形態の放射線画像取得システム1は、対象物Aの放射線画像を取得するための装置である。対象物Aは、たとえば、軽元素からなる物質を含有する。放射線画像取得システム1は、たとえば、食品検査やバッテリー検査などの分野に適用される。食品検査の分野では、たとえば異物の噛み込みの有無が検査される。放射線画像取得システム1は、後述する独自の構成を有することにより、特に、軽元素からなる物質の弁別性能に優れている。このような物質としては、たとえば、食品のくず、髪の毛、ビニール、虫、肉の中の骨等が挙げられる。放射線画像取得システム1は、たとえばインラインX線検査に適用される。
放射線画像取得システム1は、対象物Aに向けて白色X線等の放射線を出力する放射線源2と、対象物Aを所定の搬送方向Dに搬送する搬送装置20と、搬送装置20によって搬送される対象物Aを透過した放射線の入力に応じてシンチレーション光を発生させるシンチレータ6と、シンチレータ6の放射線の入力面6aから出力されるシンチレーション光を検出するラインスキャンカメラ3と、放射線画像取得システム1のいくつかの機能を制御し、かつ放射線画像を作成するコンピュータ10と、を備えている。このように、放射線画像取得システム1は、シンチレータ表面観察方式のX線撮影システムである。放射線画像取得システム1は、低エネルギーのX線感度に優れている。
放射線源2は、X線出射部からコーンビームX線を出力する。放射線源2は、コーンビームX線の焦点2aを有する。放射線源2は、たとえばマイクロフォーカスX線源であってもよく、ミリフォーカスX線源であってもよい。放射線源2から出射されるX線は放射線束を形成する。この放射線束が存在する領域が、放射線源2の出力領域14(図3参照)である。放射線画像取得システム1では、出力領域14内のX線のうちの一部である照射領域12内のX線が、シンチレータ6の入力面6aに入力される。すなわち、照射領域12は、出力領域14に包含され、出力領域14よりも狭い領域である。照射領域12は、その中心に位置する中心軸Lを含む。
搬送装置20は、たとえば周回軌道を移動するベルトコンベア21を有しており、ベルトコンベア21の搬送面21a上に、対象物Aが載置または保持されている。ベルトコンベア21は、搬送ステージ或いは搬送部である。搬送装置20は、ベルトコンベア21を駆動する図示しない駆動源を備えている。搬送装置20は、対象物Aを搬送方向Dに一定の速度で搬送するように構成されている。言い換えれば、対象物Aは、搬送装置20によって所定の搬送経路P上で搬送される。本実施形態において、搬送方向Dは水平方向である。また搬送経路Pは直線状であり、搬送経路Pが延びる方向は搬送方向Dに平行である。搬送装置20における対象物Aの搬送タイミングや搬送速度は、予め設定されており、コンピュータ10の制御部10aによって制御される。
なお、放射線画像取得システム1は、あらゆる形態の搬送装置20に対応可能である。たとえば、搬送方向Dおよび搬送経路Pは、水平であってもよいが、水平に対して傾斜していてもよい。搬送経路Pは、直線状でなくてもよく、たとえば曲線状であってもよい。その場合、搬送方向Dは、搬送経路Pのうちの照射領域12に重複する部分における接線であってもよい。搬送装置20は、物理的な搬送面21aを有していなくてもよい。たとえば、搬送装置20は、エアによって対象物Aを浮き上がらせた状態で搬送してもよい。また、搬送装置20は、対象物Aを空中に放出することで対象物Aを搬送してもよい。その場合、搬送経路Pは、たとえば放物線状であってもよい。
搬送装置20は、ベルトコンベア21を有する形態に限られない。搬送装置20は、たとえば、複数のローラを含むローラコンベアを有してもよい。ローラコンベアはベルトを有していないため、ベルトの影響を排除できる。ローラとローラの間に隙間(スリット形状の開口)が形成されている点も、ベルトコンベアに比して有利である。ローラコンベアを用いることにより、ベルトに起因するX線減衰が低減される。後述する放射線源2の配置および照射領域12の配置(斜め照射)を考慮すると、ローラコンベアは有効に利用され得る。ローラコンベアは、低エネルギーのX線感度が重視される放射線画像取得システム1に適した搬送手段である。2つ又はそれ以上のベルトコンベアを搬送方向に設置し、それらのベルトコンベアの隙間からX線を照射する形態としてもよい。この形態の場合、ベルトコンベアを使用しながら、ローラコンベアの場合と同様に、ベルトの影響を排除することができる。
図1~図3に示されるように、放射線画像取得システム1は、搬送装置20に沿うように設置された撮像ユニット30を備える。撮像ユニット30は、たとえば、搬送装置20に対して取り付けられており、搬送装置20に固定されている。撮像ユニット30は、ベルトコンベア21の周回に干渉しないように取り付けられている。搬送装置20がローラコンベアである場合も同様である。撮像ユニット30は、ベルトコンベアまたはローラコンベア等の搬送部の移動に干渉しないよう、搬送部から幾らかの空隙をもって配置されている。
撮像ユニット30は、直方体形状の筐体13を有する。筐体13は、たとえば、X線を遮蔽することができる材質からなる。筐体13は、いわゆる暗箱である。筐体13は、たとえばアルミニウム製または鉄製であってよい。筐体13は防護材を含んでもよく、その防護材として鉛が用いられてもよい。筐体13は、搬送方向Dに長くなった形状を有する。筐体13は、上下方向に対面する上壁部13aおよび底壁部13bと、搬送方向Dに対面する第1側壁部13cおよび第2側壁部13dと、搬送方向Dに直交する水平な検出幅方向に対面する第3側壁部13eおよび第4側壁部13f(図4参照)とを含む。撮像ユニット30は、筐体13の第1側壁部13cおよび第2側壁部13dが非常に小さくなっており、搬送装置20に沿ったコンパクトな装置になっている。搬送方向Dは、図中に示される紙面に平行なx方向に平行である。上記検出幅方向は、図中に示される紙面に垂直なy方向に平行である。上下方向は、図中に示される紙面に平行なz方向に平行である。
上壁部(壁部)13aは、搬送装置20の搬送経路Pに対面するように配置されている。言い換えれば、上壁部13aは、筐体13の6つの壁部のうち搬送装置20にもっとも近接している。この上壁部13aが、搬送装置20に取り付けられてもよい。
撮像ユニット30は、シンチレータ6の入力面6aから、入力面6aの法線B方向に出力されるシンチレーション光を撮像できるように構成されている。そのために、撮像ユニット30は、入力面6aの法線B方向に出力されるシンチレーション光を反射する第1ミラー7を備える。すなわち、撮像ユニット30は、ミラーとして、1つのみの第1ミラー7を備える。第1ミラー7は、その反射面7aを入力面6aに斜めに対面させるようにして、入力面6aの法線Bに重なる位置に配置されている。
筐体13内には、シンチレータ6と、第1ミラー7と、ラインスキャンカメラ3とが設置されている。シンチレータ6、第1ミラー7、およびラインスキャンカメラ3は、筐体13内で固定されている。シンチレータ6および第1ミラー7は、第1側壁部13cの近傍に配置されている。ラインスキャンカメラ3は、第2側壁部13dの近傍に配置されている。シンチレータ6は、たとえばシンチレータホルダ8に保持されて、たとえば水平に配置されている。第1ミラー7は、たとえばミラーホルダ9に保持されて、水平に対して傾斜するように配置されている。
シンチレータ6は、平板状の波長変換部材である。シンチレータ6は、検出幅方向(y方向)に長い長方形状である(図4参照)。シンチレータ6は、たとえばGd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、CsI:Tl、CdWO4、CaWO4、Gd2SiO5:Ce、Lu0.4Gd1.6SiO5、Bi4Ge3O12、Lu2SiO5:Ce、Y2SiO5、YAlO3:Ce、Y2O2S:Tb、YTaO4:Tm、YAG:Ce、YAG:Pr等からなる。シンチレータ6の厚さは数μm~数mmの範囲で検出する放射線のエネルギー帯によって適切な値に設定されている。シンチレータ6は、対象物Aを透過したX線を可視光に変換する。比較的低いエネルギーのX線は、シンチレータ6の入力面6aで変換され、入力面6aから出力される。また、比較的高いエネルギーのX線は、シンチレータ6の裏面6bで変換され、裏面6bから出力される。本実施形態では、シンチレータホルダ8は上方に向けて開放されており、シンチレータ6の入力面6aを露出させている。一方で裏面6bは閉鎖されていてもよいが、露出していてもよい。なお、シンチレータ6は、1枚のシンチレータから構成されていてもよいし、2枚のシンチレータを貼り合わせるなど組み合わせたものでもよい。2枚のシンチレータの組み合わせる際に2枚のシンチレータの間に遮光や反射の性質を有した板や膜を挟んでもよい。2枚のシンチレータの種類は同じでもよく、異なっていてもよい。
第1ミラー7は、たとえば、アルミ蒸着したガラスや、鏡面加工した金属からなるミラーである。第1ミラー7は、検出幅方向(y方向)に長い長方形状である(図4参照)。第1ミラー7は、入力面6aから法線B方向に出力されたシンチレーション光を反射させるのに十分な面積をもった反射面7aを備える。第1ミラー7は、反射面7aとシンチレータ6の入力面6aとの間に、たとえば鋭角を形成している。ここで、第1ミラー7が入力面6aに対して角度をなすということは、第1ミラー7がシンチレータ6に近接することを意味するものではない。第1ミラー7がシンチレータ6に近接してもよいが第1ミラー7がシンチレータ6から離間してもよい。第1ミラー7がシンチレータ6から離間する場合には、反射面7aの延長面と入力面6aの延長面とによって角度が定義される。第1ミラー7は、入力面6aの法線B方向に出力されるシンチレーション光を反射する。
上記の鋭角は、40度以上50度以下の範囲内の角度であることが好ましい。鋭角は、45度であることが更に好ましい。鋭角は、放射線源2の配置や後述するスリット15の位置に基づいて決定されてもよい。鋭角の大きさによって、ラインスキャンカメラ3の配置が適宜に調整されてもよい。鋭角の大きさによって、別の1つまたは複数のミラーが更に設置されてもよい。
ラインスキャンカメラ3は、対象物Aの移動に合わせて撮像を行う。ラインスキャンカメラ3は、シンチレータ6の入力面6aから出力されるシンチレーション光を集光するレンズ部3aと、レンズ部3aにより集光されたシンチレーション光を検出するセンサ部3bとを有するレンズカップリング型の検出器である。レンズ部3aは、1つのレンズを含み、このレンズの焦点がシンチレータ6の入力面6aに合わせられている。センサ部3bは、イメージセンサ3cを含む。イメージセンサ3cは、たとえば、TDI(時間遅延積分)駆動が可能なエリアイメージセンサである。イメージセンサ3cは、たとえば、CCDエリアイメージセンサである。
イメージセンサ3cは、複数のCCDがピクセル方向に一列に並べられた素子列が、対象物Aの移動方向に対応して、積分方向に複数段並べられた構成を有する。図2に示されるように、ラインスキャンカメラ3は、対象物Aの搬送方向Dに対応するスキャン方向d1と、スキャン方向d1に直交するライン方向d2とを有する。このスキャン方向d1が上記の積分方向であり、図中のz方向に平行である。ライン方向d2が上記のピクセル方向であり、図中のy方向に平行である。スキャン方向d1は、第1ミラー7を介して、搬送方向Dから変換された方向である。本実施形態では、スキャン方向は、搬送方向Dから90度だけ変換されている。
イメージセンサ3cは、制御部10aによって、対象物Aの移動に合わせて電荷転送を行うように制御される。すなわち、イメージセンサ3cは、搬送装置20による対象物Aの移動に同期して、受光面3dにおける電荷転送を行う。これにより、S/N比のよい放射線画像を得ることができる。なお、イメージセンサ3cがエリアイメージセンサである場合には、コンピュータ10の制御部10aが放射線源2とラインスキャンカメラ3を制御して、ラインスキャンカメラ3の撮像タイミングに合わせて放射線源2を点灯させる構成であってもよい。ステージにエンコーダを設けて、エンコーダからの信号でラインスキャンカメラ3を制御してもよい。
第1ミラー7の反射面7aとシンチレータ6の入力面6aとの間の鋭角が45度である場合、ラインスキャンカメラ3のレンズ部3aの光軸F(図3参照)は、たとえば搬送方向Dに平行である。ラインスキャンカメラ3は、入力面6aの法線B方向に出力されるシンチレーション光を検出する。
シンチレータ6は、入力面6aが搬送方向Dに平行で、且つ上記のライン方向d2に平行であるように配置されている。すなわち、シンチレータ6の入力面6aは、xy平面に平行である。
図1~図4に示されるように、筐体13の上壁部13aには、放射線源2から出力されたX線を通過させるためのスリット15が形成されている。図4に示されるように、スリット15は、検出幅方向(y方向)に長い長方形状である。スリット15は、長方形状の周縁15aを含む。図3に示されるように、シンチレータ6の入力面6aは、スリット15を通過した照射領域12内のX線を入力する。
スリット15および照射領域12についてより詳しく説明すると、図3に示されるように、放射線源2から出力された出力領域14のX線のうち、照射領域12のみがスリット15を通過するようになっている。残りの領域のX線は筐体13内には進入しない。すなわち、スリット15は、照射領域12を規定する。スリット15の中央を、照射領域12の中心軸Lが通っている。照射領域12は、スリット15の周縁15aとシンチレータ6の入力面6aとを直線状に結ぶ領域(四角錐状の領域)として規定される。言い換えれば、照射領域12は、放射線源2の焦点2aとシンチレータ6の入力面6aとを直線状に結ぶ領域として規定される。ここで、「シンチレータ6の入力面6a」とは、シンチレーション光の出力に有効にはたらく領域のみを意味する。たとえば、矩形の入力面6a全体のうち、シンチレータホルダ8によって覆われている領域などは、照射領域12を規定するにあたっての「シンチレータ6の入力面6a」には含まれない。
図1および図2に示されるように、スリット15は、搬送方向Dにおいて、シンチレータ6および第1ミラー7と、ラインスキャンカメラ3との間に位置している。放射線源2が、第1ミラー7の反射面7aを含む第1仮想平面P1とシンチレータ6の入力面6aを含む第2仮想平面P2との間に焦点2aが位置するように配置されている(図2参照)。また、スリット15は、搬送方向Dにおいてシンチレータ6の下流に位置している。そして、図3に示されるように、第1ミラー7は、X線の照射領域12の外部に位置している。言い換えれば、第1ミラー7は、照射領域12に干渉しないような位置および姿勢(傾きも含む)で設置されている。第1ミラー7は、反射面7aが照射領域12の境界面に沿うように、入力面6aの法線Bに対して傾斜して配置されている。ラインスキャンカメラ3のレンズ部3aが集光するシンチレーション光は、照射領域12をz方向(入力面6aの法線B方向)に横断し、その後照射領域12をx方向(搬送方向D)に横断する。
なお、放射線源2は、種々の態様で設置されてもよい。たとえば、図5(a)に示されるように、照射角すなわち出力領域14の狭い放射線源2を斜めに設置してもよい。この場合、出力領域14が照射領域12と同等であってもよい。また図5(b)に示されるように、照射角すなわち出力領域14の広い放射線源2を鉛直方向に設置してもよい。この場合、出力領域14の中心軸は鉛直方向(z方向)に向けられるが、照射領域12の中心軸Lはシンチレータ6の入力面6aに交差する。放射線源2が、第1ミラー7の反射面7aを含む第1仮想平面P1上、または、第1仮想平面P1よりも上側(第2仮想平面P2とは反対側)に位置するように配置されてもよい。
コンピュータ10は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイス等を有する。コンピュータ10は、放射線源2およびラインスキャンカメラ3を制御する制御部10a(制御プロセッサ)と、ラインスキャンカメラ3から出力された放射線画像データに基づいて、対象物Aの放射線画像を作成する画像処理部10b(画像処理プロセッサ)と、を有する。画像処理部10bは、放射線画像データを入力し、入力した放射線画像データに対して画像処理等の所定の処理を実行する。コンピュータ10には表示装置11が接続されている。画像処理部10bは、作成した放射線画像を表示装置11に出力する。制御部10aは、ユーザの入力等により記憶された放射線源2の管電圧や管電流の値に基づいて、放射線源2を制御する。制御部10aは、ユーザの入力等により記憶されたラインスキャンカメラ3の露光時間等に基づいて、ラインスキャンカメラ3を制御する。制御部10aと画像処理部10bとは、別々のプロセッサでもよいし、同じプロセッサでもよい。また、コンピュータ10は、制御部10aの機能と画像処理部10bの機能を実行できるようにプログラムされていてもよい。なお、コンピュータ10は、マイコンやFPGA(Field-Programmable Gate Array)で構成されていてもよい。
続いて、放射線画像取得システム1の動作すなわち放射線画像の取得方法について説明する。まず、搬送装置20を用いて、対象物Aを搬送方向Dに搬送する(搬送工程)。それと同時に、対象物Aに向けて、放射線源2から白色X線等の放射線を出力する(放射線出力工程)。対象物Aを透過した放射線は入力面6aに入力される(入力工程)。このとき、放射線は第1ミラー7に干渉しないので、第1ミラー7による影響が排除されている。次に、シンチレータ6によって放射線からシンチレーション光への変換が行われる(変換工程)。入力面6aから出力されるシンチレーション光は、第1ミラー7によって反射させられる(反射工程)。そしてラインスキャンカメラ3のレンズ部3aによって、シンチレーション光がイメージセンサ3cに結像される(結像工程)。イメージセンサ3cは、レンズ部3aにより結像されたシンチレーション光(シンチレーション像)を撮像する(撮像工程)。この撮像工程では、対象物Aの移動に同期して電荷転送(TDI動作)が行われる。ラインスキャンカメラ3は、撮像により得られた放射線画像データをコンピュータ10の画像処理部10bに出力する。
コンピュータ10の画像処理部10bは、放射線画像データを入力し、入力した放射線画像データに対して画像処理等の所定の処理を実行し、放射線画像を作成する(画像作成工程)。画像処理部10bは、作成した放射線画像を表示装置11に出力する。表示装置11は、画像処理部10bから出力された放射線画像を表示する。以上の工程を経て、対象物Aの表面観察による放射線画像が得られる。
本実施形態の放射線画像取得システム1および撮像ユニット30では、搬送装置20によって搬送される対象物Aに、放射線源2から放射線が照射される。対象物Aを透過した放射線が、筐体13の上壁部13aに形成されたスリット15を通過する。筐体13内には、シンチレータ6と、第1ミラー7と、ラインスキャンカメラ3とが設置されており、撮像に必要な機器がユニット化されている。筐体13内に入射した放射線は、シンチレータ6の入力面6aに入力される。そして、その入力面6aからシンチレーション光が出力される。シンチレータ6の入力面6aに近い領域では、比較的低いエネルギーの放射線が変換される。よって、ラインスキャンカメラ3は、低エネルギーの放射線感度に優れた放射線画像を取得できる。このことは、たとえば対象物Aに含まれた、軽元素からなる物質の検出に有利にはたらく。シンチレータ6の入力面6aが、搬送方向Dに平行であり、且つラインスキャンカメラ3のライン方向d2に平行であるので、対象物Aの中の異なる部分(たとえば搬送方向Dにおける上流端と下流端など)において、拡大率は変化しない。たとえば、図6(b)に示されるように、入力面6aが搬送方向Dに対して角度を有すると、X線投影像の拡大率の違いから、TDI積算の際に放射線画像IMG2がぼやけてしまう(図6(d)参照)。本実施形態では、図6(a)に示されるように、入力面6aが搬送方向Dに平行なので、放射線画像IMG1がぼやけることが防止される(図6(c)参照)。さらには、拡大率が変化せず、第1ミラー7が放射線の照射領域12の外部に位置しているので、対象物Aを透過した放射線は、第1ミラー7を通ることなくシンチレータ6の入力面6aに入力される。これにより、放射線に対する第1ミラー7の影響が排除される。すなわち、シンチレータ6の入力面6aから出力されるシンチレーション光を第1ミラー7の影響なく検出することができる。その結果として、この放射線画像取得システム1および撮像ユニット30は、対象物の放射線画像を鮮明かつ高感度に取得することを可能にする。また、放射線画像取得システム1によれば、より高速に放射線画像を取得することができる。さらには、S/N比のよい放射線画像を取得することができる。
また、シンチレータ表面観察方式を用いた場合、高管電圧下において軽減素の撮像が可能である。放射線源2は、管電圧および管電流の出力に制約があり、低管電圧の場合、管電流の制約により出力が得られにくいという特性を有する。シンチレータ表面観察方式を用いることにより、管電流の制約を受けにくくなり、放射線源2の効率の良いところでX線撮像することが可能である。その結果として、タクトタイムの向上が期待できる。
ラインスキャンカメラ3は、入力面6aの法線B方向に出力されるシンチレーション光を検出する。図7(b)に示されるように、入力面6aの法線B方向に対して傾斜した方向に出力されるシンチレーション光を検出した場合には、レンズの拡大率の違いに起因してTDI積算による放射線画像IMG4にあおり(パース)が生じる(図7(d)参照)。その場合、放射線画像IMG4がぼやけてしまう。これに対して、図7(a)に示されるように、ラインスキャンカメラ3が入力面6aの法線B方向に出力されるシンチレーション光を検出すると、放射線画像IMG3にあおり(パース)は生じない(図7(c)参照)。その結果、鮮明な放射線画像IMG3が得られる。ところで、ラインスキャンカメラ3が搬送ステージに干渉することなく入力面6aを撮影するには、図7(a)に示されるように入力面6aと搬送ステージとの間に距離を確保する必要があるとも思われる。そうすると、FDD(Focus-Detector Distance;焦点2aからシンチレータ6までの距離)とFOD(Focus-Object Distance;焦点2aから対象物Aまでの距離)との差を確保する必要が生じる。しかし、入力面6aと対象物Aとの距離が大きくなるとX線幾何学倍率が大きくなり、X線投影像が拡大される。拡大率が大きくなると焦点ボケの影響も大きくなってしまう。そこで、拡大率をできるだけ等倍(1倍)に近づけることが望ましい。本実施形態では、第1ミラー7を介在させることで、入力面6aと対象物Aとの距離を縮小しつつ、入力面6aの法線B方向に出力されるシンチレーション光がラインスキャンカメラ3によって検出される。よって、ラインスキャンカメラ3が、あおり(パース)のない画像を取得できる。放射線画像がぼやけることが防止される。
スリット15は、搬送方向Dにおいて、シンチレータ6および第1ミラー7と、ラインスキャンカメラ3との間に位置している。また別の観点では、放射線源2が、第1ミラー7の反射面7aを含む第1仮想平面P1とシンチレータ6の入力面6aを含む第2仮想平面P2との間に焦点2aが位置するように配置されている。これらの構成によれば、シンチレータ6と第1ミラー7の間の鋭角の範囲内に、放射線をうまく導入することができる。すなわち、シンチレータ6と第1ミラー7の間の鋭角の範囲内に、照射領域12をうまく形成することができる。一方で、ラインスキャンカメラ3に必要とされる光路長を確保しやすい。
図8(a)に示されるように、シンチレータ6の入力面6aと搬送方向Dが平行でることが求められ、またラインスキャンカメラ3は入力面6aの法線B方向に出力されるシンチレーション光を検出することが求められる。しかも、対象物Aと入力面6aとの距離をできるだけ縮小したい。その結果、第1ミラー7が採用される。しかし、図8(b)に示されるように、第1ミラー7を設置すると、第1ミラー7がX線の照射領域12に被ってしまう。それにより、X線に含まれる軟X線成分が減衰してしまう。その結果、低エネルギーの放射線感度を損ねてしまう。その解決策として、図8(c)に示されるように、X線の照射領域12が第1ミラー7と被らないように、照射領域12の位置と角度が調整される。たとえば、照射領域12の中心軸Lが入力面6aに対して45度になるように、放射線源2の位置およびスリット15の位置が調整される。
シンチレータ6と第1ミラー7の間の鋭角は、40度以上50度以下の範囲内の角度である。この構成によれば、入力面6aの法線B方向に出力されたシンチレーション光は、第1ミラー7によって反射され、搬送方向Dに対して10度以内の傾斜角をもってラインスキャンカメラ3によって検出される。よって、搬送装置20に沿って、ラインスキャンカメラ3を設置しやすい。撮像ユニット30全体が搬送装置20に沿ったスリムな形状となり、撮像ユニット30のコンパクト化が図られる。鋭角が45度であると、この効果は一層好適に発揮される。
照射領域12は、搬送方向Dにおいてシンチレータ6の下流に形成される。この構成によれば、第1ミラー7を所望の位置に配置しつつ、第1ミラー7が放射線の照射領域12に干渉しないように、照射領域12を形成しやすい。
ラインスキャンカメラ3の光軸Fは搬送方向Dに平行である。上述したように、シンチレータ6の入力面6aは搬送方向Dに平行である。この構成によれば、各要素に対し、角度に関する複雑な調整等が不要である。たとえば、ラインスキャンカメラ3の光軸Fの調整や、ラインスキャンカメラ3のレンズの焦点距離に伴う視野角に応じた第1ミラー7とレンズの距離調整が容易になる。
続いて、図9を参照して、第2実施形態に係る放射線画像取得システム1Aおよび30Aについて説明する。放射線画像取得システム1Aが第1実施形態の放射線画像取得システム1と違う点は、撮像ユニット30Aが、筐体13A内に設置され、入力面6aとは反対側の裏面6bから出力されるシンチレーション光を検出する第2ラインスキャンカメラ4を更に備えた点である。シンチレータホルダ8は上方および下方に向けて開放されており、シンチレータ6の入力面6aおよび裏面6bを露出させている。第2ラインスキャンカメラ4は、ラインスキャンカメラ3と同様の構成を有している。すなわち、第2ラインスキャンカメラ4は、レンズ部4aと、イメージセンサ4cを含むセンサ部4bとを有する。第3ミラー17は、たとえばミラーホルダ19に保持されて、水平に対して傾斜するように配置されている。第3ミラー17は、その反射面17aを裏面6bに斜めに対面させるようにして、裏面6bの法線Cに重なる位置に配置されている。第2ラインスキャンカメラ4のレンズ部4aの光軸Gは、たとえば搬送方向Dに平行である。第2ラインスキャンカメラ4は、第3ミラー17の反射面17aを介して、裏面6bの法線C方向に出力されるシンチレーション光を検出する。第2ラインスキャンカメラ4の搬送方向Dの位置は、たとえば、ラインスキャンカメラ3における光路長と第2ラインスキャンカメラ4における光路長とが等しくなるように設定される。なお、同じレンズを使用する場合、たとえば、同じ焦点距離を有するレンズを使用する場合、光路長が等しくなるように設定するのがよい。一方、異なるレンズを使用する場合、たとえば、異なる焦点距離を有するレンズを使用する場合には、光路長は、必ずしも等しくならない。
2つのカメラを用いる場合に、種々の態様が採用され得る。たとえば、第2ラインスキャンカメラ4とラインスキャンカメラ3(第1ラインスキャンカメラ)は、2つのカメラとして独立し個別に制御できるようになっていてもよい。第2ラインスキャンカメラ4とラインスキャンカメラ3が、制御基板を共有するなどして、1つの制御系から2つのセンサを制御できるようになっていてもよい。ラインスキャンカメラ3と第2ラインスキャンカメラ4で視野が異なる場合に、画像処理にて位置合わせを行ってもよい。ラインスキャンカメラ3と第2ラインスキャンカメラ4で画角が異なる場合に、座標変換を含む画像処理にて位置合わせを行ってもよい。ラインスキャンカメラ3と第2ラインスキャンカメラ4で画素数が異なる場合に、座標変換や拡大・縮小により画素合わせをしてもよい。ラインスキャンカメラ3と第2ラインスキャンカメラ4で露光時間が異なるなどに起因して取得ライン数が異なる場合に、補間や平均化、または間引き処理によりライン数を等しくしてもよい。ラインスキャンカメラ3と第2ラインスキャンカメラ4で拡大率が異なる場合に拡大率補正処理によって拡大率をあわせてもよい。ラインスキャンカメラ3と第2ラインスキャンカメラ4でイメージセンサが異なる場合に、補正処理をして画素数などをあわせてもよい。
シンチレータ6の裏面6bに近い領域では、比較的高いエネルギーの放射線が変換される。ラインスキャンカメラ3が、低エネルギーの放射線感度に優れた放射線画像を取得する一方で、第2ラインスキャンカメラ4が、高エネルギーの放射線画像を同時に取得する。これにより、デュアルエナジー方式の撮像ユニットが実現される。このようなシンチレータ両面観察方式は、従来型のデュアルエナジーユニットよりも大きいエネルギー差を得ることができ、異物検出性能が向上する。この撮像ユニット30Aは、たとえば、軽元素からなる物質(髪の毛、ビニール、虫等)の弁別性能に優れる。
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。本発明には、種々の変形形態が含まれ得る。
たとえば、図10に示されるように、第2実施形態の第1変形形態として、縦型の筐体13Bを備えたシンチレータ両面観察方式の撮像ユニット30Bが提供されてもよい。この撮像ユニット30Bでは、入力面6aの法線B方向に出力されたシンチレーション光を反射させる2つのミラーである第1ミラー7と第2ミラー7Bとが設置される。また、裏面6bの法線C方向に出力されたシンチレーション光を反射させる2つのミラーである第3ミラー17と第4ミラー17Bとが設置される。この形態は、後述の2センサ1レンズ方式においても実施可能である。
図11に示されるように、第2実施形態の第2変形形態として、縦型の筐体13Cを備えたシンチレータ両面観察方式の撮像ユニット30Cが提供されてもよい。この撮像ユニット30Bでは、入力面6aの法線B方向に出力されたシンチレーション光を反射させる2つのミラーである第1ミラー7と第2ミラー7Cとが設置される。第1ミラー7および第2ミラー7Cの両方が、照射領域12の外部に位置する。X線の中心軸Lの傾斜角度θ1は、たとえば45度である。裏面6bの法線C方向に出力されたシンチレーション光を反射させるミラーはなく、第2ラインスキャンカメラ4が、法線Cに重なる位置に配置されている。この形態では、筐体13の上壁部13aとの距離が短くなっている。
図12に示されるように、第2実施形態の第3変形形態として、横型の筐体13Dを備えたシンチレータ両面観察方式の撮像ユニット30Dが提供されてもよい。この撮像ユニット30Dでは、ラインスキャンカメラ3と第2ラインスキャンカメラ4が、筐体13D内の斜め下に設置されている。第1ミラー7の傾斜角度はたとえば30度~40度である。第3ミラー17の傾斜角度はたとえば50度~60度である。X線の中心軸Lの傾斜角度θ1は、たとえば45度である。第1ミラー7の傾斜角度は、X線がケラれないような最低の角度に設定されており、45度よりも小さい。
図13に示されるように、第1実施形態の第1変形形態として、斜めに設置された搬送装置20に撮像ユニット30が取り付けられた放射線画像取得システム1Eが提供されてもよい。既存の検査装置において、放射線源2が水平に設置され、搬送装置20が斜めに設置されている場合がある。たとえば、対象物Aは、滑走面である搬送面21a上を自由落下する。そのような場合に、撮像ユニット30も斜めに設置することができる。このように、撮像ユニット30は、設置される角度や姿勢を選ばないので、既存の検査装置に容易に組み込める。撮像ユニット30の汎用性が高められている。この放射線画像取得システム1Eでは、スリット15は、たとえば、搬送方向Dにおいてシンチレータ6の上流に位置している。なお、図13に示される斜め搬送型式の放射線画像取得システム1Eにおいて、両面観察方式が適用されてもよい。
図14に示されるように、図13に示した斜め搬送に適用される更なる変形例として、シンチレータ6および第1ミラー7の部分のみ斜めの形状をなす筐体13Fが提供されてもよい。この撮像ユニット30Fでは、筐体13Fの内部に2つのミラーである第1ミラー7と第2ミラー7Fとが設置される。これらの第1ミラー7と第2ミラー7Fとによって、シンチレーション光を水平に取り出すことができる。ラインスキャンカメラ3は、水平に配置される。この撮像ユニット30Fによれば、たとえばラインスキャンカメラ3が設置された筐体を水平に設置して、放射線源2からのX線も垂直に(鉛直に)照射できる。対象物Aは斜めに搬送されるが、斜めになっている区間を短くできるというメリットがある。なお、図14に示される斜め搬送型式かつ水平設置型の撮像ユニットにおいて、両面観察方式が適用されてもよい。
撮像ユニットが斜めに設置される形態は、たとえば、対象物Aを空中に放出するような搬送装置に対しても有効に適用できる。
また、上記各実施形態のラインスキャンカメラ3または第2ラインスキャンカメラ4に代えて、マルチレンズマルチセンサのカメラが適用されてもよい。すなわち、1台の高解像度カメラの替わりに、複数台の低画素カメラを使用することができる。センサの低画素化により、シンチレータ6とカメラの間の距離を小さくすることができる。その結果、筐体全体を小型化することができる。
図15に示されるように、2台のカメラ25A,25Bを並列にして設置してもよい。たとえば、2台のカメラ25A,25Bは、搬送方向Dと直交する方向に並べられる。カメラ25A,25Bの各カメラ基板25a、25bに対して、共通のメイン基板26が接続される。この形態によれば、高分解能が得られ、筐体のサイズを抑えることができる。並列されるカメラの台数を3台以上としてもよい。高解像度の2台のカメラを並列にしてもよいし、1または複数台の低解像度カメラと1または複数台の高解像度カメラとを併用してもよい。たとえば、2台のカメラを並列した場合には画素ピッチを半分にでき、3台のカメラを並列した場合には画素ピッチを3分の1にできる。
また、図16(a)または図16(b)に示されるように、1レンズ2センサのカメラが適用されてもよい。つまり、1つのイメージサークル内に、2つのTDIセンサ(又はラインセンサ)28,28が配置される。この場合、レンズは1つのみで足りるので、コスト又はサイズの面で有利になり得る。なお、焦点距離L1を一定とした場合に、検出幅を広くするためには距離L2を長くする必要があり、レンズ27とミラー7,17との間の距離L2が長くなると、シンチレータ6とミラー7,17との間の距離L3も長くなる。一方、センサ28,28間の距離L4には限界がある。
また、TDIセンサではなく、エリアセンサを用いてストップアンドゴーでの撮像を行う方法も考えられる。たとえば、図17に示されるように、1つのセンサ29上に、低エネルギー蛍光像領域29aと高エネルギー蛍光像領域29bとを設けてもよい。任意の領域29a,29bを切り出してタイリングすることで、低エネルギーの放射線画像と低高エネルギーの放射線画像を撮像することができる。この方法によれば、1レンズ1センサでの撮像が可能である。
また、シンチレータホルダ8またはミラーホルダ9に関しても、種々の変形態様が考えられる。図18に示されるように、シンチレータ6に対する第1ミラー7および第3ミラー17の位置を調整可能な調整機構35が設置されてもよい。この調整機構35は、たとえば第1ミラー7のミラーホルダ9および第3ミラー17のミラーホルダ19に連結されて、第1ミラー7および第3ミラー17を入力面6aの法線B方向および裏面6bの法線C方向に沿ってそれぞれ移動させる。これにより、シンチレーション光の高さを任意に変更可能である。第1ミラー7および第3ミラー17が連動してシンチレータ6に関して対称に移動してもよいし、第1ミラー7および第3ミラー17が別個に移動してもよい。
また図19(a)および図19(b)に示されるように、第1ミラー7および第3ミラー17が共通のミラーユニットホルダ36に固定されていてもよい。法線B,C方向に距離が比較的小さいミラーユニットホルダ36と、これとは別に、法線B,C方向に距離が比較的大きいミラーユニットホルダ37とを用意し、これらを交換することで、シンチレーション光の高さを変更可能である。
また図20(a)および図20(b)に示されるように、シンチレータホルダ8を前後させることで、シンチレータ6に対する第1ミラー7および第3ミラー17の位置を調整可能な調整機構38が設置されてもよい。図21に示されるように、たとえば搬送方向Dに細長いシンチレータ6Aをシンチレータホルダ8に保持させて、放射線の照射位置(図中の中心軸Lの位置)を搬送方向Dに変更することで、シンチレータ6に対する第1ミラー7および第3ミラー17の位置を調整してもよい。この場合、シンチレータ6と第1ミラー7および第3ミラー17との位置関係(距離)を無段階に柔軟に変更可能である。
図22(a)および図22(b)に示されるように、放射線入射窓であるスリット15の位置を変更できる機構が設けられてもよい。たとえば、筐体13Aの上壁部13aには大きめの開口45が形成されており、この開口45よりも小さなスリット15が形成された調整プレート47が設置されてもよい。この場合、調整プレートは筐体13Aの壁部の一部である。調整プレート47は、たとえば四隅に位置する4つのビス46等で上壁部13aに固定される。調整プレート47には搬送方向Dに長い4つの長孔47aが形成されおり、これらの長孔47aにビス46が挿通されている。調整プレート47は、長孔47aの範囲内で、搬送方向Dの位置を変更可能になっている。
上述したように、シンチレータ6と第1ミラー7および第3ミラー17との距離を物理的に変更する手段と、シンチレータ6と第1ミラー7および第3ミラー17との相対的な位置を変更することにより距離を変更する手段とが考えられる。
また、図23に示されるように、筐体13Aの底壁部13bに、複数の保持穴50を形成しておき、その保持穴50にピン49を係合させることで、第2ラインスキャンカメラ4(およびラインスキャンカメラ3)の搬送方向Dにおける位置を調整してもよい。カメラの焦点距離やシンチレータ6の長さによって、第1ミラー7および第3ミラー17とラインスキャンカメラ3および第2ラインスキャンカメラ4との距離が変わる。複数のレンズ(焦点距離)やシンチレータ6の長さに対して、カメラの位置を容易に調整することができる。
ラインスキャンカメラや第2ラインスキャンカメラは、TDIセンサを含む態様に限られない。ラインスキャンカメラや第2ラインスキャンカメラは、1つまたは複数のラインスキャンセンサを含んでもよい。すなわち、2以上の複数列を有するマルチラインセンサを用いて時間遅延積分と同様の処理を行ってもよいし、マルチラインセンサのそれぞれのラインの信号を読みだし信号処理によってラインセンサ画像などの画像を作成してもよい。シングルラインセンサを用いて画像を作成してもよい。シングルラインセンサであっても画素内で拡大率の影響を受けるので、画像がぼやける可能性がある。拡大率の影響を受けた場合、画素内を蛍光像が斜めに移動することにより解像度の低下が生じ、画像がぼやける可能性がある。本開示の放射線画像取得システムおよび撮像ユニットによれば、放射線画像がぼやけることを防止できる。
フォトダイオードアレイのデジタル信号加算を行ってもよい。多段フォトダイオードアレイを用いる場合には、速度を厳密に合わせる必要が軽減される。フォトダイオードアレイを用いる場合であれば、検出部が斜めでもよい。すなわち、入力面6aが搬送方向Dに平行でなくてもよい。拡大率の補正やラインディレイを行ってから加算または平均化などの画像処理を行うことで、本開示の放射線画像取得システムが狙いとする効果を得ることができる。
放射線の照射領域12は、筐体13のスリット15によって形成されるのではなく、放射線源2とシンチレータ6との間に、複数の遮蔽壁(または遮蔽板)からなる照射領域規定部が設置されてもよい。その場合に、照射角すなわち出力領域14の広い放射線源2が用いられてもよい。
本開示の一態様は、所定の搬送経路上で搬送方向に搬送される対象物の放射線画像を取得するための撮像ユニットであって、搬送経路に対面するように配置される壁部を有し、放射線を通過させるためのスリットが壁部に形成された筐体と、筐体内に設置され、スリットを通過した放射線を入力する入力面を有するシンチレータと、筐体内に設置され、入力面から出力されるシンチレーション光を反射する1つまたは複数のミラーと、筐体内に設置され、ミラーで反射されたシンチレーション光を検出するラインスキャンカメラであって、搬送方向に対応するスキャン方向とスキャン方向に直交するライン方向とを有するラインスキャンカメラと、を備え、シンチレータは、入力面が搬送方向に平行で且つライン方向に平行であるように配置され、ミラーは、スリットの周縁とシンチレータの入力面とを結ぶ照射領域の外部に位置している。
この撮像ユニットでは、搬送経路上で搬送される対象物を透過した放射線が、筐体の壁部に形成されたスリットを通過する。筐体内には、シンチレータと、1つまたは複数のミラーと、ラインスキャンカメラとが設置されており、撮像に必要な機器がユニット化されている。筐体内に入射した放射線は、シンチレータの入力面に入力され、その入力面からシンチレーション光が出力される。シンチレータの入力面に近い領域では、比較的低いエネルギーの放射線が変換される。よって、ラインスキャンカメラは、低エネルギーの放射線感度に優れた放射線画像を取得できる。このことは、たとえば軽元素からなる物質の検出に有利にはたらく。シンチレータの入力面が、搬送方向に平行であり、且つラインスキャンカメラのライン方向に平行であるので、対象物の中の異なる部分(たとえば搬送方向における上流端と下流端など)において、拡大率は変化しない。よって、放射線画像がぼやけることが防止される。さらにはミラーが放射線の照射領域の外部に位置しているので、対象物を透過した放射線は、ミラーを通ることなくシンチレータの入力面に入力される。これにより、放射線に対するミラーの影響が排除される。その結果として、この撮像ユニットは、対象物の放射線画像を鮮明かつ高感度に取得することを可能にする。
いくつかの態様において、ミラーは、入力面の法線に重なる位置に配置された第1ミラーであって、第1ミラーの反射面と入力面との間に鋭角を形成する第1ミラーを有し、ラインスキャンカメラは、入力面の法線方向に出力されるシンチレーション光を検出する。入力面の法線方向に対して傾斜した方向に出力されるシンチレーション光を検出した場合には、レンズの拡大率の違いに起因して画像にあおり(パース)が生じる。その場合、画像がぼやける可能性がある。これに対して、上記構成によれば、第1ミラーが、入力面の法線方向に出力されるシンチレーション光を反射し、そのシンチレーション光がラインスキャンカメラによって検出される。よって、ラインスキャンカメラは、あおり(パース)のない画像を取得できる。放射線画像がぼやけることが防止される。
いくつかの態様において、スリットは、搬送方向において、シンチレータおよび第1ミラーと、ラインスキャンカメラとの間に位置している。この構成によれば、シンチレータと第1ミラーの間の鋭角の範囲内に、放射線をうまく導入することができる。すなわち、シンチレータと第1ミラーの間の鋭角の範囲内に、照射領域をうまく形成することができる。一方で、ラインスキャンカメラに必要とされる光路長を確保しやすい。
いくつかの態様において、鋭角は40度以上50度以下の範囲内の角度である。この構成によれば、入力面の法線方向に出力されたシンチレーション光は、第1ミラーによって反射され、搬送方向に対して10度以内の傾斜角をもってラインスキャンカメラによって検出される。よって、筐体を搬送方向に長くして、その筐体内にラインスキャンカメラを設置できる。撮像ユニット全体が搬送経路に沿ったスリムな形状となり、撮像ユニットのコンパクト化が図られる。
いくつかの態様において、スリットは、搬送方向においてシンチレータの上流又は下流に位置している。この構成によれば、ミラーを所望の位置に配置しつつ、そのミラーが放射線の照射領域に干渉しないように、照射領域を形成しやすい。
いくつかの態様において、ラインスキャンカメラの光軸は搬送方向に平行である。各要素に対し、上記したように、シンチレータの入力面は搬送方向に平行である。この構成によれば、角度に関する複雑な調整等が不要である。たとえば、ラインスキャンカメラの光軸の調整や、ラインスキャンカメラのレンズ焦点距離に伴う視野角に応じたミラーとレンズの距離調整が容易になる。
撮像ユニットのいくつかの態様において、筐体内に設置され、入力面とは反対側の面から出力されるシンチレーション光を検出する第2ラインスキャンカメラを更に備える。シンチレータの入力面とは反対側の面に近い領域では、比較的高いエネルギーの放射線が変換される。ラインスキャンカメラが、低エネルギーの放射線感度に優れた放射線画像を取得する一方で、第2ラインスキャンカメラが、高エネルギーの放射線画像を同時に取得する。これにより、デュアルエナジー方式の撮像ユニットが実現される。このようなシンチレータ両面観察方式は、従来型のデュアルエナジーユニットよりも大きいエネルギー差を得ることができ、異物検出性能が向上する。この撮像ユニットは、たとえば、軽元素からなる物質の弁別性能に優れる。
本開示の別の態様として、対象物に向けて放射線を出力する放射線源と、対象物を搬送方向に搬送する搬送装置と、照射領域が搬送装置の搬送経路を含むように、搬送装置に対して取り付けられた上記いずれかの撮像ユニットと、を備える放射線画像取得システムが提供されてもよい。この放射線画像取得システムでは、上記いずれかの撮像ユニットを備えることで、放射線画像がぼやけることが防止され、また放射線に対するミラーの影響が排除される。よって、この放射線画像取得システムは、対象物の放射線画像を鮮明かつ高感度に取得することを可能にする。
本開示の更に別の態様は、対象物の放射線画像を取得する放射線画像取得システムであって、対象物に向けて放射線を出力する放射線源と、対象物を搬送方向に搬送する搬送装置と、搬送装置によって搬送される対象物を透過した放射線を入力する入力面を有するシンチレータと、入力面から出力されるシンチレーション光を反射する1つまたは複数のミラーと、ミラーで反射されたシンチレーション光を検出するラインスキャンカメラであって、搬送方向に対応するスキャン方向とスキャン方向に直交するライン方向とを有するラインスキャンカメラと、を備え、シンチレータは、入力面が搬送方向に平行で且つライン方向に平行であるように配置され、ミラーは、放射線源の焦点とシンチレータの入力面とを結ぶ照射領域の外部に位置している。
この放射線画像取得システムでは、搬送装置によって搬送される対象物に、放射線源から放射線が照射される。対象物を透過した放射線が、シンチレータの入力面に入力される。そして、その入力面からシンチレーション光が出力される。シンチレータの入力面に近い領域では、比較的低いエネルギーの放射線が変換される。よって、ラインスキャンカメラは、低エネルギーの放射線感度に優れた放射線画像を取得できる。このことは、たとえば軽元素からなる物質の検出に有利にはたらく。シンチレータの入力面が、搬送方向に平行であり、且つラインスキャンカメラのライン方向に平行であるので、対象物の中の異なる部分(たとえば搬送方向における上流端と下流端など)において、拡大率は変化しない。よって、放射線画像がぼやけることが防止される。さらにはミラーが放射線の照射領域の外部に位置しているので、対象物を透過した放射線は、ミラーを通ることなくシンチレータの入力面に入力される。これにより、放射線に対するミラーの影響が排除される。その結果として、この放射線画像取得システムは、対象物の放射線画像を鮮明かつ高感度に取得することを可能にする。
いくつかの態様において、ミラーは、入力面の法線に重なる位置に配置された第1ミラーであって、第1ミラーの反射面と入力面との間に鋭角を形成する第1ミラーを有し、ラインスキャンカメラは、入力面の法線方向に出力されるシンチレーション光を検出する。入力面の法線方向に対して傾斜した方向に出力されるシンチレーション光を検出した場合には、レンズの拡大率の違いに起因して画像にあおり(パース)が生じる。その場合、画像がぼやける可能性がある。これに対して、上記構成によれば、第1ミラーが、入力面の法線方向に出力されるシンチレーション光を反射し、そのシンチレーション光がラインスキャンカメラによって検出される。よって、ラインスキャンカメラは、あおり(パース)のない画像を取得できる。放射線画像がぼやけることが防止される。
いくつかの態様において、放射線源が、第1ミラーの反射面を含む第1仮想平面と入力面を含む第2仮想平面との間に焦点が位置するように配置される。この構成によれば、シンチレータと第1ミラーの間の鋭角の範囲内に、放射線源からの放射線をうまく導入することができる。すなわち、シンチレータと第1ミラーの間の鋭角の範囲内に、照射領域をうまく形成することができる。
いくつかの態様において、鋭角は40度以上50度以下の範囲内の角度である。この構成によれば、入力面の法線方向に出力されたシンチレーション光は、第1ミラーによって反射され、搬送方向に対して10度以内の傾斜角をもってラインスキャンカメラによって検出される。よって、搬送装置に沿って、ラインスキャンカメラを設置しやすい。撮像ユニット全体が搬送装置に沿ったスリムな形状となり、撮像ユニットのコンパクト化が図られる。
いくつかの態様において、照射領域は、搬送方向においてシンチレータの上流又は下流に形成される。この構成によれば、ミラーを所望の位置に配置しつつ、そのミラーが放射線の照射領域に干渉しないように、照射領域を形成しやすい。
いくつかの態様において、ラインスキャンカメラの光軸は搬送方向に平行である。上記したように、シンチレータの入力面は搬送方向に平行である。この構成によれば、各要素に対し、角度に関する複雑な調整等が不要である。たとえば、ラインスキャンカメラの光軸の調整や、ラインスキャンカメラのレンズ焦点距離に伴う視野角に応じたミラーとレンズの距離調整が容易になる。
放射線画像取得システムのいくつかの態様において、入力面とは反対側の面から出力されるシンチレーション光を検出する第2ラインスキャンカメラを更に備える。シンチレータの入力面とは反対側の面に近い領域では、比較的高いエネルギーの放射線が変換される。ラインスキャンカメラが、低エネルギーの放射線感度に優れた放射線画像を取得する一方で、第2ラインスキャンカメラが、高エネルギーの放射線画像を同時に取得する。これにより、デュアルエナジー式の撮像ユニットが実現される。このようなシンチレータ両面観察方式は、従来型のデュアルエナジーユニットよりも大きいエネルギー差を得ることができ、異物検出性能が向上する。この放射線画像取得システムは、たとえば、軽元素からなる物質の弁別性能に優れる。