JP7452254B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電力系統に接続されるアーク炉等の負荷の無効電力変動によって発生する電圧フリッカを抑制するための無効電力補償装置及びその制御部からなる電力変換装置に関するものである。
例えば、製鋼用のアーク炉のように負荷変動が大きい装置では、負荷変動に伴う無効電力の変動により、電圧フリッカが発生する。アーク炉を設置しているプラントや事業所では、電力会社が定めた規制値以内に電圧フリッカを抑制する必要があるため、電圧フリッカ抑制用として無効電力補償装置が電力系統に連系されている。
図5に、この種の無効電力補償装置の一例を示す。
図5において、電力系統102に系統インピーダンス103を介して接続される負荷としてのアーク炉104に対して、無効電力補償装置101が並列接続されている。この無効電力補償装置101は、サイリスタ、リアクトル、コンデンサ等からなり、変成器113及び変流器105により検出した電圧、電流に基づいて制御部114が無効電力補償装置101内のサイリスタをオン・オフ制御するように構成されている。
無効電力補償装置101は、アーク炉104が発生する無効電力を補償して電圧フリッカを抑制する。
すなわち、アーク炉104が発生する無効電力をQ、無効電力補償装置101が出力する無効電力をQ、電力系統102の無効電力をQ(=Q-Q)とすると、Q=Qとなるように無効電力補償装置101を制御することにより、電力系統102の無効電力はQ=0となる。これにより、電力系統102の電圧変動ひいては電圧フリッカを抑制することができる。
なお、図5では無効電力補償装置101を他励式無効電力補償装置として示してあるが、自励式無効電力補償装置の場合も基本的動作は同一である。
アーク炉104の操業状態は、スクラップを溶解する溶解期と、脱酸、脱硫、非金属介在物除去等の還元精錬を行う精錬期とに大別することができる。
図6に示すように、溶解期は比較的大きな負荷電流が速い周期で変動し、精錬期は溶解期に対して比較的小さい負荷電流が遅い周期で変動する。図6における縦軸のIfrmsは、アーク炉104に流入する負荷電流Iの実効値である。
上記の精錬期のように負荷電流が小さい期間では、電圧フリッカの発生量が少なくなる一方、電力系統102の力率は悪化する。
ここで、特許文献1には、上述した溶解期及び精錬期の特徴に着目した無効電力補償装置の制御方式が開示されている。
この制御方式では、アーク炉の昇降速度を検出して溶解期と精錬期とを判別し、電圧フリッカが大きい溶解期ではフリッカ補償制御を行うと共に、力率が悪化する精錬期では制御方式を力率改善制御に切り替えることにより、受電点の力率を改善し、アーク炉への投入電力を削減して低コストでの操業を可能にしている。
特許第6472054号公報([0035]~[0040]、図1等)
さて、無効電力補償装置の最大電流値は精錬期より溶解期の方が大きいが、精錬期はほぼ一定の負荷電流が常時流れ続けるため、損失に着目すると、精錬期の方が溶解期より大きくなる傾向がある。このため、特許文献1のように無効電力補償装置以外の電力コストの削減を図る場合には、容量が大きい無効電力補償装置を備える必要があり、トータルで見るとコストが高くなってしまうという問題がある。
そこで本発明の解決課題は、装置の熱余裕及び負荷の状態を考慮して無効電力補償装置を制御することにより、少ない容量で十分な無効電力補償性能を得るようにした電力変換装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、電力系統に接続された負荷の無効電力によって発生する電圧フリッカを抑制するために、前記電力系統に無効電力を注入する無効電力補償装置及びその制御部からなる電力変換装置において、
前記制御部は、前記負荷の操業状態に応じて制御定数の異なる2つのモードの何れかにより前記無効電力補償装置を制御することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した電力変換装置において、
前記負荷がアーク炉である場合に、前記2つのモードは、前記操業状態としての溶解期に対応する第1モードと精錬期に対応する第2モードとからなり、前記第1モードにおける制御定数が前記第2モードにおける制御定数より大きいことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載した電力変換装置において、
前記第2モードにおける制御定数を、負荷電流が過去の運転における制御定数を超えた時間に基づいて設定することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項2に記載した電力変換装置において、
前記第2モードにおける制御定数を、所定時間にわたる負荷電流の積分値が過去の運転における制御定数を超えた時間に基づいて設定することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1~4の何れか1項に記載した電力変換装置において、
前記制御定数が、前記無効電力補償装置に与える補償電流指令の制限値であることを特徴とする。
本発明においては、負荷の操業状態に応じて無効電力補償装置における制御定数、具体的には、補償電流指令の制限値を変化させる。
例えば、負荷がアーク炉である場合、操業状態が溶解期であって無効電力補償装置が熱的に余裕のある場合には半導体スイッチング素子を電流限界値にて運転するように制御定数を設定し、操業状態が精錬期であって無効電力補償装置に熱的な余裕がない場合には定格容量にて運転するように制御定数を溶解期より小さい値に設定することにより、無効電力補償装置の容量を必要最小限にして装置のコストを低減することができる。
本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成図である。 図1における補償電流演算手段の一例を示すブロック図である。 図1における補償電流制限手段の一例を示すブロック図である。 本発明の実施形態における負荷電流、第1指令制限値及び第2指令制限値の一例を示す波形図である。 従来技術を示す構成図である。 アーク炉の操業状態と負荷電流との関係を示す波形図である。
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、この実施形態に係る電力変換装置の全体構成図である。図5と同様に、電力系統102には、系統インピーダンス103を介して負荷としてのアーク炉104が接続されている。
また、無効電力補償装置(自励式SVC)101を含む電力変換装置100が、系統インピーダンス103とアーク炉104との間に接続されている。
なお、電力系統102及び電力変換装置100等は三相回路であるが、図1では単線図により表示している。
電力変換装置100において、電流検出器105により検出した負荷電流Iが補償電流演算手段108に入力され、第1補償電流指令Iref1が演算される。この第1補償電流指令Iref1は補償電流制限手段109により制限されて第2補償電流指令Iref2が生成される。
一方、電流検出器107により検出した無効電力補償装置101の出力電流Ioutが電流制御演算手段110に入力されており、電流制御演算手段110は、出力電流Ioutが第2補償電流指令Iref2に一致するように演算を行う。
また、電流制御演算手段110の出力と電圧検出器106により検出した連系点電圧Vpccとが加算手段112により加算されて電圧指令Vrefが算出され、この電圧指令VrefはPWM(パルス幅変調)演算手段111に入力される。
PWM演算手段111では、電圧指令Vrefとキャリアとを比較する等の演算を行ってPWMパルスを生成し、このPWMパルスを用いて無効電力補償装置101内の半導体スイッチング素子を駆動することにより、所望の無効電力を出力して電力系統102との連系点に注入する。
次に、図2は図1における補償電流演算手段108の一例を示すブロック図である。
無効電力補償装置101は無効電力Qを補償するため、負荷電流Iから有効電流を除いた電流を出力する必要がある。このため、まず、負荷電流Iをベクトル回転手段108aに入力して回転座標変換し、d軸成分Ifdとq軸成分Ifqとに分解する。なお、回転座標系は連系点電圧Vpccに同期して回転する座標系であり、連系点電圧Vpcc方向をd軸と定義し、このd軸から90°進んだ方向をq軸と定義する。
負荷電流d軸成分Ifdは移動平均手段108bに入力され、その出力Ifd2と前記d軸成分Ifdとの偏差を減算手段108cにより求めることにより、有効電流を除去した負荷電流d軸成分(有効電流除去後)Ifd3が求められる。そして、このIfd3と負荷電流q軸成分Ifqとをベクトル回転手段108dに入力して逆回転座標変換を行うことにより、無効電力補償装置101が出力するべき電流指令(無効電流指令)を求めることができる。
次いで、図3は図1における補償電流制限手段109の一例を示すブロック図である。
第1補償電流指令Iref1は乗算手段109fに入力されると共に、絶対値演算手段109aに入力されて三相各相の第1負荷電流指令(絶対値)Ifabs1が演算される。これらの第1負荷電流指令(絶対値)Ifabs1は最大値選択演算手段109bに入力されて三相のうちの最大値が選択され、この最大値は1次遅れフィルタ109cを介して第2負荷電流指令(絶対値)Ifabs2となり、除算手段109eに入力されている。
また、アーク炉104の操業状態(溶解期または精錬期)に応じて、入力信号を第1指令制限値または第2指令制限値に切り替える切替手段109dが設けられており、この切替手段109dの出力信号は指令制限設定値として除算手段109eに入力される。ここで、上記の第1指令制限値及び第2指令制限値は、請求項における制御定数に相当する。
なお、切替手段109dの切替操作は、アーク炉104の操業状態を把握している運用管理者により実行される。
除算手段109eでは、指令制限設定値を第2負荷電流指令(絶対値)Ifabs2により除算し、その結果を上限値100%のリミッタ109fにより制限して負荷電流指令制限係数αが求められる。この負荷電流指令制限係数αは前記乗算手段109gに入力され、第1補償電流指令Iref1との乗算結果が第2補償電流指令Iref2として出力される。
なお、前述した1次遅れフィルタ109cを下り方向(Ifabs1からIfabs2に向かう方向)のみに作用する特性とすることにより、負荷電流Iの過渡的な変化に対しても適切に制限された第2補償電流指令Iref2を求めることができる。
図4は、本実施形態における負荷電流、第1指令制限値及び第2指令制限値の一例を示す波形図である。
図4に示すように、アーク炉104の操業状態が溶解期である場合の第1指令制限値に対して、精錬期である場合の第2指令制限値を小さく設定する。
すなわち、損失が小さい(無効電力補償装置101は熱的に余裕がある)溶解期では、第1指令制限値を無効電力補償装置101の内部の半導体スイッチング素子の定格電流値に制限して動作させ、損失が大きい(無効電力補償装置101は熱的に余裕がない)精錬期では、第1指令制限値より小さい第2指令制限値により補償電流を制限することにより、無効電力補償装置101を熱限界状態にて運転することが可能である。
これにより、装置の熱余裕に応じて無効電力補償量を制限できるため、無効電力補償装置101の能力をその容量に応じて最大限活用したシステムを実現することができる。
なお、精錬期における第2指令制限値の設定方法としては、負荷電流が過去の運転における第2指令制限値を超えた時間(超過時間)が所定の時間閾値より長い場合には第2指令制限値を大きくし、前記超過時間が前記時間閾値より短い場合には第2指令制限値を小さくすれば良い。また、前記超過時間については、例えば、所定時間内に負荷電流が第2指令制限値を超えた時間の割合を判断基準としても良いし、第2指令制限値を超えた時間の最長値を判断基準としても良い。
更に、過去の運転における第2指令制限値を超えた負荷電流の所定時間当たりの積分値が所定の積分値閾値を超えた場合に第2指令制限値を大きくし、前記積分値が前記積分値閾値より小さい場合に第2指令制限値を小さくしても良い。ここで、負荷電流の所定時間当たりの積分値としては、例えば、前回運転時の平均値を判断基準としても良いし、所定時間単位で区切った場合の最大値を判断基準としても良い。
100:電力変換装置
101:無効電力補償装置
102:電力系統
103:系統リアクトル
104:アーク炉(負荷)
105,107:電流検出器
106:電圧検出器
108:補償電流演算手段
108a,108d:ベクトル回転手段
108b:移動平均手段
108c:減算手段
109:補償電流制限手段
109a:絶対値演算手段
109b:最大値選択演算手段
109c:1次遅れフィルタ
109d:切替手段
109e:除算手段
109f:リミッタ
109g:乗算手段
110:電流制御演算手段
111:PWM演算手段
112:加算手段

Claims (5)

  1. 電力系統に接続された負荷の無効電力によって発生する電圧フリッカを抑制するために、前記電力系統に無効電力を注入する無効電力補償装置及びその制御部からなる電力変換装置において、
    前記制御部は、前記負荷の操業状態に応じて制御定数の異なる2つのモードの何れかにより前記無効電力補償装置を制御することを特徴とする電力変換装置。
  2. 請求項1に記載した電力変換装置において、
    前記負荷がアーク炉である場合に、前記2つのモードは、前記操業状態としての溶解期に対応する第1モードと精錬期に対応する第2モードとからなり、前記第1モードにおける制御定数が前記第2モードにおける制御定数より大きいことを特徴とする電力変換装置。
  3. 請求項2に記載した電力変換装置において、
    前記第2モードにおける制御定数を、
    負荷電流が過去の運転における制御定数を超えた時間に基づいて設定することを特徴とする電力変換装置。
  4. 請求項2に記載した電力変換装置において、
    前記第2モードにおける制御定数を、
    所定時間当たりの負荷電流の積分値が、過去の運転における制御定数を超えた時間に基づいて設定することを特徴とする電力変換装置。
  5. 請求項1~4の何れか1項に記載した電力変換装置において、
    前記制御定数が、前記無効電力補償装置に与える補償電流指令の制限値であることを特徴とする電力変換装置。
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JP2017131081A (ja) 2016-01-22 2017-07-27 東芝三菱電機産業システム株式会社 無効電力補償装置
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