JP7450871B2 - 細胞製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞製造装置に関する。
ある細胞の細胞核を別の細胞の細胞質内へ移植する細胞核移植は、細胞の性質を変える方法として、医療や産業に重要な役割を果たしている。
例えば、細胞核を除去した受精卵に、別個体の体細胞由来の核を移植した後、受精卵を子宮に戻すことでクローン個体を産出する方法や、子宮に戻さず体外で胚盤胞へ発生させて胚性幹細胞 (Embryonic Stem cells: ES細胞) を樹立する体細胞由来胚性幹細胞 (nuclear transfer Embryonic stem cells: NtES細胞) 樹立方法などがある。こうして得られたクローン個体やNtES細胞は、畜産や再生医療の基礎研究に寄与している。
細胞核移植以外に、細胞の性質を変える技術として、センダイウイルス法やプロトプラスト-ポリエチレングリコール法、電気的細胞融合法などの細胞融合技術が挙げられる。細胞融合は、2つ以上の細胞を融合させ、1つの細胞を形成する技術である。この方法では、細胞融合後の1つの細胞内に2つ以上の細胞に由来する細胞核が存在するため、融合細胞は医療利用に制限がある。
細胞融合技術の内、電界集中型細胞融合法は、2つの細胞を、細胞核の直径以下の幅や径のスリットや孔 (オリフィス) を介して接触させ、スリットやオリフィスでパルス的に電界を集中させることで、2つの細胞膜の接点で電気的に細胞膜が部分的に破壊され、復元する過程で細胞を融合する方法である(例えば、特許文献1、2参照)。この方法では、オリフィスや流路の最大径や最大幅が細胞核径より小さいことにより、細胞核の混合を防ぐことが可能である(例えば、特許文献1、2参照)。近年、Polydimethyl siloxane (PDMS)を使用して作製された流路を用いて様々な電界集中型細胞融合法が検討されている。例えば、PDMSで製造された2つの平行流路間をオリフィスのみで繋ぎ、各流路末端に細胞供給口と吸引口をそれぞれ設けた流路を用い、オリフィスで細胞対を形成後、細胞融合させる方法がある。例えば、細胞供給口にJurkat細胞または樹状細胞を導入し、吸引口方向へ流路上で細胞を移動させ、オリフィスでJurkat細胞と樹状細胞を融合させ、Jurkat細胞の細胞質を樹状細胞へ移動させた後、界面活性剤を添加し、Jurkat細胞側の流路に流れを生じさせて両細胞を切り離すことで、細胞質が移動できるようになった(例えば、非特許文献1参照)。
この電界集中型細胞融合法を基に細胞質交換法が開発された(例えば、特許文献3参照)。細胞質交換法では、標的体性細胞とiPS細胞を用いた場合、次の(A)~(D)の手順を経て体性細胞の細胞質をiPS細胞の細胞質へ交換する(図1参照)。
(A)標的体性細胞と1個目のiPS細胞を電界集中型細胞融合(1回目)する。
(B)iPS細胞のみを切り離すことで、体性細胞の細胞質を除去する。
(C)新たな2個目のiPS細胞と、切り離し元の標的体性細胞の電界集中型細胞融合(2回目)する。
(D)体性細胞を切り離すことで、iPS細胞の細胞質を体性細胞へ導入する。
この方法では、細胞質交換細胞は、PDMSで作製された流路内の第一と第二の2つの細胞供給流路から供給された体性細胞とiPS細胞を使用して、細胞質交換部で2回の電界集中型細胞融合後に作製される。作製された細胞質交換細胞は、第3の細胞回収流路を経て流路外へ回収可能である(例えば、特許文献4参照)。
特開2009-178105号公報 特開2007-174901号公報 特開2018-074982号公報 特開2018-148809号公報
Cytoplasmic transfer without nuclei mixing between dendritic cells and tumor cells achieved by one to-one electrofusion via micro-orifices in a microfluidic device. 18th International Conference on Miniaturized. Systems for Chemistry and Life Sciences. October 26-30, 2014, San Antonio, Texas, USA
細胞質交換流路では、流路内で仕切られた3つの流路として、2つの細胞供給流路と1つの細胞回収流路を必要する。細胞質交換では、1つのポンプの吸引吐出により、2つの細胞供給流路を繋ぐ細胞融合部を通過する交差せん断流を利用して、細胞の分離方向を制御し、細胞供給流路を通過するせん断流を利用して細胞を切り離す。細胞核交換法で望ましい細胞の所定の位置の移動や、細胞分離方向の制御のためには、より安定したせん断流の供給が重要である。
本発明は、2つの細胞供給流路と1つの細胞回収流路で構成される流路内の流れを安定化し、容易に細胞を所定の位置に移動させ、安定に細胞核を交換するための細胞製造装置を提供することを目的とする。
本発明の一実施態様は、第1の細胞の細胞核を有し、前記第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞の製造装置であって、第1の細胞供給部と、第2の細胞供給部と、前記第1の細胞供給部に接続する第1の流路と、前記第2の細胞供給部に接続する第2の流路と、前記第1の流路と前記第2の流路を隔てる壁に設けられ、前記第1の流路と前記第2の流路を繋ぐ孔と、前記第1の流路側の壁に前記孔を囲むように設けられた凹形状の第1の細胞設置部と、前記第1の流路内に設けられ、前記第1の流路に開口する開口部を有する第3の流路と、前記第3の流路に接続する細胞回収部と、前記第1の流路と前記第2の流路が、それぞれ前記第1の細胞供給部と前記第2の細胞供給部の逆側の端で合一して構成される共通流路と、前記共通流路が、前記第1の流路と前記第2の流路の逆側の端に接続するポンプと、前記孔に対して電圧を印加するための直流交流信号発生装置と、を有し、前記凹形状の第1の細胞設置部は第1の縁を有し、前記壁の中心面に対して、前記第1の液体の流れに対して第1の縁の最も近い点と最も遠い点からの垂線の長さをそれぞれh1およびh2とするとき、それらの長さの関係がh1<h2である、製造装置である。前記第1の縁の最も近い点から前記孔にいたる前記第1の斜面と前記第1の縁の最も遠い点から前記孔にいたる前記第2の斜面が、それぞれ第1の直線部分および第2の直線部分を有し、前記壁の中心面に対する前記第1の直線部分および第2の直線部分の傾きを、それぞれθ1及びθ2とするとき、θ1<θ2であってもよい。前記第2の流路側の壁に前記孔を囲むように設けられた凹形状の第2の細胞設置部を有してもよい。前記凹形状の第2の細胞設置部は第2の縁を有し、前記壁の中心面に対して、前記第2の液体の流れに対して第1の縁の最も遠い点と最も近い点からの垂線の長さをそれぞれh3およびh4とするとき、それらの長さの関係がh3<h4であってもよい。前記第2の縁の最も遠い点から前記孔にいたる前記第3の斜面と前記第2の縁の最も近い点から前記孔にいたる前記第4の斜面が、それぞれ第3の直線部分および第4の直線部分を有し、前記壁の中心面に対する前記第3の直線部分および第4の直線部分の傾きを、それぞれθ3及びθ4とするとき、θ3<θ4であってもよい。
本発明のその他の実施態様は、第1の細胞の細胞核を有し、前記第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞の製造装置であって、第1の細胞供給部と、第2の細胞供給部と、前記第1の細胞供給部に接続する第1の流路と、前記第2の細胞供給部に接続する第2の流路と、前記第1の流路と前記第2の流路を隔てる平面上の壁に設けられ、前記第1の流路と前記第2の流路を繋ぐ孔と、前記第1の流路内に設けられ、前記第1の流路に開口する開口部を有する第3の流路と、前記第3の流路に接続する細胞回収部と、前記第1の流路と前記第2の流路が、それぞれ前記第1の細胞供給部と前記第2の細胞供給部の逆側の端で合一して構成される共通流路と、前記共通流路が、前記第1の流路と前記第2の流路の逆側の端に接続するポンプと、前記孔に対して電圧を印加するための直流交流信号発生装置と、を有し、第1の流路内において、前記孔と前記共通流路側の端との間で、前記第1の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、および/または第2の流路内において、前記第2の細胞供給部側の端と前記孔との間で、前記第2の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、製造装置である。前記第1の流路において、前記壁と逆側に第1の抵抗体が設置されることによって前記第1の流路が前記壁と逆側において狭くなっていてもよい。前記第2の流路において、前記壁と逆側に第2の抵抗体が設置されることによって前記第2の流路が前記壁と逆側において狭くなっていてもよい。
本発明のさらなる実施態様は、第1の細胞の細胞核を有し、前記第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞の製造装置であって、第1の細胞供給部と、第2の細胞供給部と、前記第1の細胞供給部に接続する第1の流路と、前記第2の細胞供給部に接続する第2の流路と、前記第1の流路と前記第2の流路を隔てる壁に設けられ、前記第1の流路と前記第2の流路を繋ぐ孔と、前記第1の流路側の壁に前記孔を囲むように設けられた凹形状の第1の細胞設置部と、前記第1の流路内に設けられ、前記第1の流路に開口する開口部を有する第3の流路と、前記第3の流路に接続する細胞回収部と、前記第1の流路と前記第2の流路が、それぞれ前記第1の細胞供給部と前記第2の細胞供給部の逆側の端で合一して構成される共通流路と、前記共通流路が、前記第1の流路と前記第2の流路の逆側の端に接続するポンプと、前記孔に対して電圧を印加するための直流交流信号発生装置と、を有し、前記凹形状の第1の細胞設置部は第1の縁を有し、前記壁の中心面に対して、前記第1の液体の流れに対して第1の縁の最も近い点と最も遠い点からの垂線の長さをそれぞれh1およびh2とするとき、それらの長さの関係がh1<h2であり、第1の流路内において、前記孔と前記共通流路側の端との間で、前記第1の流路が前記壁と逆側において狭くなっているか、および/または第2の流路内において、前記第2の細胞供給部側の端と前記孔との間で、前記第2の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、製造装置である。前記第1の縁の最も近い点から前記孔にいたる前記第1の斜面と前記第1の縁の最も遠い点から前記孔にいたる前記第2の斜面が、それぞれ第1の直線部分および第2の直線部分を有し、前記壁の中心面に対する前記第1の直線部分および第2の直線部分の傾きを、それぞれθ1及びθ2とするとき、θ1<θ2であってもよい。前記第1の流路において、前記壁と逆側に第1の抵抗体が設置されることによって前記第1の流路が前記壁と逆側において狭くなっていてもよい。前記第2の流路において、前記壁と逆側に第2の抵抗体が設置されることによって前記第2の流路が前記壁と逆側において狭くなっていてもよい。
本発明によって、2つの細胞供給流路と1つの細胞回収流路で構成される流路内の流れを安定化し、容易に細胞を所定の位置に移動させ、安定に細胞核を交換するための細胞製造装置を提供することができるようになった。
従来の細胞質交換法における、体性細胞の細胞質をiPS細胞の細胞質へ交換する方法の模式図である。 本発明の一実施形態において、本開示の装置を真上から観察した時の基本構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態において、細胞設置部を有する装置の孔周辺を拡大した図である。 本発明の一実施形態において、流路を構成する構造が狭くなっている装置を表す模式図である。 本発明の一実施形態において、流路に抵抗体が設けられている装置を表す模式図である。 本発明の一実施形態において、細胞設置部を有する装置を用いた時の、孔周辺の液体の流れを示す模式図である。 本発明の一実施形態において、細胞設置部を有する装置を用いた時の、核交換細胞の作製方法を示す模式図である。 本発明の一実施形態において、第1の流路または第2の流路に抵抗体が設けられている装置を用いた時の、孔周辺の液体の流れを示す模式図である。 本発明の一実施形態において、第1の流路および第2の流路に抵抗体が設けられている装置を用いた時の、孔周辺の液体の流れを示す模式図である。 本発明の一実施形態において、第1の流路に抵抗体が設けられている装置を用いた時の、核交換細胞の作製方法を示す模式図である。 本発明の一実施形態において、第2の流路に抵抗体が設けられている装置を用いた時の、核交換細胞の作製方法を示す模式図である。 本発明の一実施形態において、第1の流路および第2の流路に抵抗体が設けられている装置を用いた時の、核交換細胞の作製方法を示す模式図である。 本発明の一実施例において、本開示の装置を用いて、実際に核交換細胞を作製した時の観察像を示す顕微鏡写真である。
以下、実施例を挙げながら、本発明の実施形態を詳細に述べる。
本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
==細胞質を交換するための装置==
(1)基本構成
以下、本発明の装置の一実施態様を、図2を用いて詳細に説明する。
本発明の一実施態様の装置は、第1の細胞供給部201と、第2の細胞供給部202と、第1の細胞供給部201に接続する第1の流路203と、第2の細胞供給部202に接続する第2の流路204と、第1の流路203と第2の流路204を隔てる壁205に設けられ、第1の流路203と第2の流路204を繋ぐ孔206と、第1の流路203と第2の流路204が、それぞれ第1の細胞供給部201と第2の細胞供給部202の逆側の端で合一して構成される共通流路209と、共通流路209が、第1の流路203と第2の流路204の逆側の端に接続するポンプ210と、孔206に対して電圧を印加するための直流交流信号発生装置212と、を有する。直流交流信号発生装置212は、電力増幅器213及び電極211を備えていてもよい。
ここで、孔206とは、第1の流路203及び第2の流路204を連通する通路のことを言う。孔206の最大幅または最大径を、第1の細胞供給部201から供給される第1の細胞の核および第2の細胞供給部202から供給される第2の細胞の核の径より小さくしておき、細胞核が孔を通過できないようにしておくことが好ましい。具体的には、孔の最大幅または最大径は、第1の細胞の種類および第2の細胞の種類によって適宜調整すればよいが、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。孔206の数は単数であっても複数であってもよいが、複数ある場合、同じ形状であることが好ましい。
壁205は垂直またはほぼ垂直であることが好ましい。
(2)第3の流路
この製造装置は、第1の流路203内に設けられ、第1の流路203に開口する開口部214を有する第3の流路207と、第3の流路207に接続する細胞回収部208と、を備えていてもよい。
第1の流路203に開口する第3の流路207の開口部214は、第1の細胞の細胞核を有し第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞(以下、細胞質交換細胞と称する)が通過できる大きさであればよく、その最小幅または最小径は、細胞質交換細胞の大きさによって適宜調整すればよい。例えば、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。開口部214の最小幅または最小径は、細胞質交換細胞が通過できるのであれば、細胞質交換細胞の直径よりも小さくてもよい。実際、接続口の最小幅または最小径を細胞質交換細胞の直径よりも若干小さくしておき、流路内の溶液の流速を早くすることによって、細胞を歪ませて第3の流路207内へ細胞を導入するようにすると、一旦第3の流路207に入った細胞質交換細胞は流路外に逆流しにくくなる。第3の流路207は、もう一端で細胞回収部208に接続されており、孔206を通じて作製された細胞質交換細胞を、第3の流路207に送り込んで、細胞回収部208で回収することにより、細胞質の交換処理をされていない細胞や処理途中の細胞から、細胞質交換細胞を分離して回収することが容易になる。
(3)第1の細胞設置部
この製造装置は、第1の流路203側の壁205に孔206を囲むように設けられた凹形状の第1の細胞設置部301を有する。凹形状の第1の細胞設置部301は、第1の流路203への開口部の周囲を縁取る第1の縁と、第1の細胞供給部201から共通流路209へ流れる第1の液体の流れに対して、第1の縁の最も近い点から孔にいたる第1の斜面304と第1の縁の最も遠い点から孔にいたる第2の斜面305とを有する。壁205の中心面303に対し、液体の流れに対し第1の縁の最も近い点と最も遠い点からの垂線の長さをそれぞれh1およびh2とするとき、それらの長さの関係がh1<h2であることが好ましい。h1<h2とすることにより、孔206を通る安定した交差せん断流が生じ、例えば、第1の流路203を第1の細胞供給部201から共通流路209へ流れる細胞が、第1の細胞設置部301におさまりやすくなる。ここで、h1は5μm以上が好ましく、15μm以上が好ましく、25μm以上が好ましい。h2は10μm以上が好ましく、また20μm以上が好ましく、30μm以上が好ましい。また、第1の流路203及び第2の流路204は、実質的に平行に走っていることが好ましい。なお、本明細書で、壁205の中心面303とは、孔206を通り、第1の流路203および/または第2の流路204を流れる液体の流れに平行な面のうち、垂直な面のことをいう。
また、この装置において、第1の縁の最も近い点と最も遠い点から孔206にいたる第1の斜面304及び第2の斜面305がそれぞれ第1の直線部分及び第2の直線部分を有し、壁205の中心面303に対する第1の直線部分及び第2の直線部分の傾きを、それぞれθ1及びθ2とするとき、θ1<θ2であることが好ましい。θ1<θ2とすることにより、孔206を通る安定した交差せん断流が生じ、例えば、第1の流路203を第1の細胞供給部201から共通流路209へ流れる細胞が、第1の細胞設置部301におさまりやすくなる。ここで、θ1は0°以上が好ましく、35°以上が好ましく、45°以上が好ましい。また、θ2は90°以下が好ましく、75°以下が好ましく、50°以下が好ましい。なお、本明細書で、斜面が直線部分を有するとは、孔206を通り、壁205の中心面303に垂直な壁205の断面において、斜面の一部または全部が直線状であることを言う。直線状の部分は、斜面の長さのうち、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。
本実施形態で、孔206とは、第1の流路203及び第2の流路204を連通する通路のことを言うが、斜面を有する第1の細胞設置部301は含まないものとする。孔206の数は単数であっても複数であってもよいが、複数である場合、それぞれの第1の細胞設置部301の形状は同じか、ほぼ同じであることが好ましい。孔206の数が複数である場合、壁205の中心面303は、すべての孔206を通るように構成されることが好ましい。
(4)第2の細胞設置部
この製造装置は、第2の流路204側の壁205に孔206を囲むように設けられた凹形状の第2の細胞設置部302を有してもよい。凹形状の第2の細胞設置部302は、第2の流路204への開口部の周囲を縁取る第2の縁と、第2の細胞供給部202から共通流路209へ流れる第2の液体の流れに対して、第2の縁の最も遠い点から孔206にいたる第3の斜面306と第2の縁の最も近い点から孔206にいたる第4の斜面307とを有する。壁205の中心面303に対して、液体の流れに対し第2の縁の最も遠い点と最も近い点からの垂線の長さをそれぞれh3およびh4とするとき、それらの長さの関係がh3<h4であることが好ましい。h3<h4とすることにより、孔206を通る安定した交差せん断流が生じ、例えば、孔206から離れた細胞が、第2の流路204を共通流路209へ流れやすくなる。ここで、h4は10μm以上が好ましく、また20μm以上が好ましく、30μm以上が好ましい。h3は5μm以上が好ましく、15μm以上が好ましく、25μm以上が好ましい。
また、この装置において、第2の縁の最も遠い点と最も近い点から孔206にいたる第3の斜面及び第4の斜面がそれぞれ第3の直線部分及び第4の直線部分を有し、孔206の中央面303に対する第3の直線部分及び第4の直線部分の傾きを、それぞれθ3及びθ4とするとき、θ3<θ4であることが好ましい。θ3<θ4とすることにより、孔206を通る安定した交差せん断流が生じ、例えば、孔206から離れた細胞が、第2の流路204を共通流路209へ流れやすくなる。ここで、θ3は0°以上が好ましく、35°以上が好ましく、45°以上が好ましい。θ4は90°以下が好ましく、75°以下が好ましく、50°以下が好ましい。
本実施形態で、孔206には、斜面を有する第2の細胞設置部302は含まれないものとする。孔206の数は単数であっても複数であってもよいが、複数である場合、それぞれの第2の細胞設置部302の形状は同じか、ほぼ同じであることが好ましい。
(5)各流路内での抵抗増加のための構成
この製造装置は、第1の流路203内において、孔206と共通流路209側の端との間で、第1の流路203が壁205と逆側において狭くなっているか、または第2の流路204内において、第2の細胞供給部202側の端と孔206との間で、第2の流路204が壁205と逆側において狭くなっているか、またはこれら両方が狭くなっていてもよい。このような構成では、ポンプの吸引・吐出により、第1の流路203内の流れおよび/または第2の流路204内の流れは流路が狭くなっている部分で抑制され、相対的に孔206を通過する流れが増えるようになり、孔206を横切る安定な交差せん断流が生じる。 具体的な構造は特に限定されないが、例えば、図4に示すように、第1の流路203または第2の流路204において、それぞれ、孔206と共通流路209側の端との間または第2の細胞供給部202側の端と孔206との間において、壁205と逆側で流路を構成する構造そのものが狭くなっていてもよい。あるいは図5に示すように、第1の流路203内の孔206と共通流路209側の端との間に第1の抵抗体501を設けてもよく、または第2の流路204内に第2の細胞供給部202の端と孔206のと間に第2の抵抗体502を設けてもよく、または両方を同時に設けてもよい。
==細胞質を交換する方法==
本発明の一実施形態に係る第1の細胞の細胞質の交換方法は、第1の細胞の細胞質を除去する第1の工程と、第2の細胞の細胞質を第1の細胞へ導入する第2の工程を含む、細胞質の交換方法であって、
(1)第1の工程の後で第2の工程が行われる、または
(2)第1の細胞の細胞質の40%~60%と、第2の細胞の細胞質の40%~60%とが交換される第1の細胞質交換工程によって、第1の工程と第2の工程が同時に行われる、方法である。
(2)の場合、細胞質交換工程後の第1の細胞の細胞質の40%~60%と、新たな第2の細胞の細胞質の40%~60%とが交換される第2の細胞質交換工程がさらに行われてもよく、この第2の細胞質交換工程がさらに1回以上行われてもよい。この工程を繰り返すことによって、第1の細胞の細胞質が第2の細胞の細胞質に交換される割合が高くなる。
本発明の一実施形態に係る細胞質の交換方法を用いて、第1の細胞の細胞核を有し、第2の細胞の細胞核を有さず、第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞を製造することができる。
こうして製造された細胞において、第1の細胞の細胞膜の割合は特に限定されないが、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
また、第2の細胞の細胞質の割合は特に限定されないが、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
以下に、図6から図12を用いて、本発明の一実施形態に係る細胞の製造方法を具体的に説明するが、本発明は本実施形態に限定されない。装置構成としては、以下の3通りが考えうるが、いずれも本方法に対し、同じ効果をもたらす。
[1](1)から(4)までの構成を有する装置
[2](1)(2)(5)の構成を有する装置
[3](1)から(5)までの構成を有する装置
本実施形態では、第1の流路203と第2の流路204を備え、第1の流路203の壁205と第2の流路204の壁205は孔206で連通している流路を用い、第1の細胞の細胞核を有し、第2の細胞の細胞核を有さず、第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞を製造する。
第1の工程として、まず、第1の流路203にあって、残したい細胞核と、除去したい細胞質と、細胞膜と、を有する第1の細胞と、第2の流路にある中間体を、流路中の溶液の流れによって、両方の流路の壁を貫通して設けられた孔の入り口を構成する第1の細胞設置部301と第2の細胞設置部302近傍に誘導する(図7-1、図10-1、図11-1、図12-1)。必要に応じて交流電界を発生させ、その中で細胞を誘導してもよい。流路の壁205は絶縁体で構成されるのが好ましい。溶液は、細胞を生きた状態で操作できるものであれば特に限定されず、例えば生理食塩水や細胞培養用培地などを例示できる。中間体は特に限定されず、対になった細胞と融合して細胞の細胞質を受け入れられるものであればよいが、具体的な例としては、細胞やリポソームが例示できる。細胞である場合、第1の細胞または第2の細胞と同じ種類であっても異なる種類であってもよい。孔206の形状は特に限定されず、スリット状、円状、長円状であってもよく、壁205の厚みと同じ深さを有するため、厚い壁205の場合は流路状であってもよい。
第2の工程として、誘電泳動力により、孔206を挟んで第1の細胞と中間体の第1の対を形成させる(図7-1、図10-1、図11-1、図12-1)。誘電泳動力は、交流印加による電界集中により流路の壁で生じる。
第3の工程として、第1の対に電圧を印加することで、第1の細胞と中間体とを融合して第1の融合細胞を作製する (図7-1、図10-1、図11-1、図12-1)。この時印加する電圧は、従来細胞融合に用いられることが知られている強さとすることができるが、0.1~50Vであることが好ましく、0.5V~20Vであることがより好ましく、1~10Vであることがさらに好ましく、1~3Vであることがさらに好ましく、約2Vであることがさらに好ましい。また印加する時間は、特に限定されないが、1μsec~1msecであることが好ましく、1μsec~500μsecであることがより好ましく、1μsec~100μsecであることがさらに好ましいが、可能な限り短い時間であることがより好ましい。中間体が細胞である場合、本工程では、細胞融合後、第1の細胞と中間体の細胞質がお互いに混入する。
第4の工程として、第1の細胞の細胞質を中間体へ移動させる(図7-2、図10-2、図11-2、図12-2)。この工程では、シリンジ210を引くことによって生じる吸引力によって、第1の流路203内と第2の流路204内において、第1の細胞供給部201と第2の細胞供給部202から共通流路209への流れが生じる。そして、第1の流路203内の流れの一部が、孔206を通って第2の流路204内へ流れる交差せん断流となる。この交差せん断流が、第1の細胞の細胞質が中間体の細胞質へ移る原動力となる。移動させる細胞質の割合は特に限定されないが、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
第5の工程として、細胞質が導入された中間体の細胞は、第2の流路204内の流れにより、第1の細胞から切り離され、第2の流路204および共通経路209を通って、シリンジ210に回収される
このように、本実施形態では、第1の工程から第5の工程までの工程において、第2の細胞供給部204から供給される中間体を用いることにより、第1の細胞の細胞質を除去することができる。なお、第1の工程から第5の工程において、装置が(3)から(5)に記載の好ましい構成を少なくとも一つ備えること、すなわち、第1の細胞設置部301においてh1<h2および/またはθ1<θ2であること、および/または第2の細胞設置部302においてh3<h4および/またはθ3<θ4であること、および/または各流路内での抵抗増加のための構成が設けられていることにより、安定的な交差せん断流が生じ、不要な逆流の発生を抑制でき、安定的に、効率的に、細胞質除去を成立させることができる(図6-1;図8と図9の左図)。例えば、交差せん断流を安定させることによって、第1の細胞を、第1の細胞設置部301の第1の細胞供給部201側の斜面に沿って孔206に誘導し易くし、孔206上で安定して保持できるようにする。さらに、交差せん断流が孔206を通過するときには、細胞質の移入を容易にし、その後、第2の流路203内へ入ることによって、中間体の細胞を第2の細胞設置部302から容易に引き離すことができるようにする。
第6の工程として、第1の細胞に移植したい細胞質と、必要のない細胞核を有する第2の細胞を、孔の入り口を構成する、第2の細胞設置部302近傍に誘導する (図7-3、図10-3、図11-3、図12-3)。必要に応じて交流電界を発生させ、その中で細胞を誘導してもよい。そして、誘電泳動力により、孔を挟んで第1の細胞と第2の細胞の第2の対を形成させる (図7-3、図10-3、図11-3、図12-3)。誘電泳動力は、交流印加による電界集中により流路の壁205で生じる。
第7の工程として、第2の対に電圧を印加することで第1の細胞と第2の細胞を融合して第2の融合細胞を作製する (図7-3、図10-3、図11-3、図12-3)。この時印加する電圧は、従来細胞融合に用いられることが知られている強さであればよいが、1~10Vであることが好ましく、2Vであることがさらに好ましい。また印加する時間は、100μsecであることが好ましく、100μsec以下で可能な限り短い時間であることがさらに好ましい。
第8の工程として、第2の細胞の細胞質を第1の細胞へ移動させる (図7-4、図10-4、図11-4、図12-4)。この工程では、シリンジ210を押すことによって生じる吐出力によって、第1の流路203内と第2の流路204内において、共通流路209から第1の細胞供給部201と第2の細胞供給部202への流れが生じる。そして、第2の流路204内の流れの一部が、孔を通って第1の流路203内へ流れる交差せん断流となる。この交差せん断流が、第2の細胞の細胞質が第1の細胞の細胞質へ移る原動力となる。移動させる細胞質の割合は特に限定されないが、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
第9の工程として、第1の細胞を、第2の細胞から切り離す (図7-4、図10-4、図11-4、図12-4)。
このように、本実施形態では、第6の工程から第9の工程までの工程によって、第2の細胞の細胞質を第1の細胞へ導入することができる。なお、第6の工程から第9の工程において、装置が(3)から(5)に記載の好ましい構成を備えること、すなわち、第1の細胞設置部301においてh1<h2および/またはθ1<θ2であること、および/または第2の細胞設置部302においてh3<h4および/またはθ3<θ4であること、および/または各流路内での抵抗増加のための構成が設けられていることにより、安定的な交差せん断流が生じ、不要な逆流の発生を抑制でき、安定的に、効率的に、細胞質導入を成立させることができる(図6-2;図8と図9の左図)。例えば、交差せん断流を安定させることによって、第2の細胞を、第2の細胞設置部302の第2の細胞供給部202側の斜面に沿って孔に誘導し易くし、孔206上で安定して保持できるようにする。さらに、交差せん断流が孔206を通過するときには、細胞質の移入を容易にし、その後、第1の流路203内へ入ることによって、第1の細胞を第1の細胞設置部301から容易に引き離すことができるようにする。
さらに、第10の工程として、シリンジ210を押し続けることにより、第2の細胞の細胞質と第1の細胞の細胞核を持つ第1の細胞を第3の流路207へ導入し、細胞回収部208へ移動させることができる。
そして、第11の工程として、第2の細胞の細胞質と第1の細胞の細胞核を持つ第1の細胞を細胞回収部208から回収する。このように、第10の工程と第11の工程で、第2の細胞の細胞質を有する第1の細胞を流路から回収することができる。
本方法において、第1の細胞と第2の細胞の細胞種は特に限定されないが、第1の細胞は体細胞であることが好ましく、線維芽細胞または血球細胞であることがさらに好ましい。また、第2の細胞は幹細胞であることが好ましく、iPS細胞、ES細胞、神経幹細胞、上皮幹細胞、肝幹細胞、生殖幹細胞、造血幹細胞、間葉幹細胞、骨格筋幹細胞からなる群から選択されるのがさらに好ましい。第1の細胞は体細胞とし、第2の細胞を幹細胞とすることにより、例えば、幹細胞の細胞核を体細胞の細胞核に交換したことと同様の効果が得られる。
本実施例では、図2および図3に示した構成を有する装置を用い、Jurkat細胞の細胞質を、細胞質を除去した別のiPS細胞内へ移植した。具体的に用いた各機器と条件は、以下の通りである。
・ファンクションジェネレーター
交流印加条件:周波数1MHz、電圧5V
パルス印加条件:時間100μs、電圧10V
・デジタルオシロスコープ
・バイポーラ電力増幅装置
・位相差・蛍光顕微鏡
また、蛍光染色試薬は、以下のものを用いた。なお、Calcein、Calcein Red-Orange、Hoechst 33342はそれぞれ、細胞質を緑色に、細胞質を赤色に、細胞核を青色に染色する。
・Calcein, AM - Special Packaging (Excitation/Emission (nm): 494/514 C3100MP、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ・米国)
・CellTraceTM Calcein Red-Orange, AM - Special Packaging (Excitation/Emission (nm): 577/590、C34851、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)
・CellstainR Hoechst 33342 solution (Excitation/Emission (nm): 350/461、346-07951、(株)同仁化学研究所、東京・日本)
Jurkat細胞懸濁液(1x10個/mL、RPMI+10%FBS)とiPS細胞懸濁液(1x10個/mL、StemFitAN06)を1mLずつ2本の15mL遠心管に加え、一方の遠心管AにCalcein AM 1μL、もう一方の遠心管BにはCalcein red-orange 1μLとHoechst33342 1μLを加えて、37℃で3分間インキュベーションして細胞質と細胞核を染色した。余分な染色試薬を除くため、遠心管をそれぞれ600rpmと1000rpmで2分間遠心した後、上清を除去した。
沈殿した細胞に対して、細胞融合用緩衝液(200mMソルビトール、0.1mM酢酸カルシウム、0.5mM酢酸マグネシウム、1mg/mL牛血清アルブミン)1mLを加えて細胞を懸濁した。再び遠心管を上記と同条件で遠心して、細胞を沈殿させ、上清を1mL除去した。この細胞洗浄工程をさらに2回繰り返した。最後に、細胞融合緩衝液を150μL加えて細胞を懸濁し、細胞融合用細胞懸濁液とした。以下、図11の写真を参考にしながら、各工程を説明する。
<細胞融合1回目>
図2および図3に示した装置上の第1の細胞供給部201へ遠心管Aの細胞懸濁液(細胞A含有)を加え、第2の細胞供給部202へ遠心管Bの細胞懸濁液(細胞B含有)を加えた。ポンプとしてピペットマンを用い、細胞を細胞供給口から第1の流路203および第2の流路204へ移動させると、各細胞を、細胞設置部近傍へ容易に移動させることができた(図13-1)。
交流印加による誘電泳動力により細胞Aを第1の細胞設置部301へ導き、また、細胞Bを第2の細胞設置部302へ導き、孔を挟んで細胞AとBの対を形成させた。図13-1に位相差、図13-2と図13-3に蛍光視野の画像を示す。そして、パルスを1回以上印加しながら、パルス印加過程を位相差と蛍光視野で観察して、細胞融合による蛍光色素の移動を確認した(図13-4と図13-5)。
<細胞核の回収>
交流印加を停止して、ピペットマン210によって吸引し、細胞Aの細胞質を細胞Bへ移動させた(図13-7)。引き続きピペットマン210によって吸引し、細胞Aから細胞Bを分離した(図13-8)。細胞Aを第1の細胞設置部301でさらに安定的に保持するため再び交流を印加することで、細胞Aの核を孔に維持した(図13-8)。
<細胞融合2回目>
再びピペットマン210で細胞を吸引し、別の細胞Bを第2の細胞設置部302近傍へ導いた。交流印加による誘電泳動力により細胞Bを第2の細胞設置部302へ導いて、孔を挟んで細胞AとBの対を形成させた。図13-1に位相差、図13-9と図13-10に蛍光視野の画像を示す。そして、パルスを1回以上印加しながら、パルス印加過程を位相差と蛍光視野で観察し、細胞融合による蛍光色素の移動を確認した(図13-11)。
<細胞質の移植>
交流印加を停止して、ピペットマン210で押圧し、細胞Aへ細胞Bの細胞質を移動させた(図13-13)。そしてピペットマン210で押圧し続け、細胞Aを細胞Bから分離した(図13-14)。分離した細胞Aは、第3の流路207を経て細胞回収部208へ移動し、細胞Aは細胞回収部208から流路外へ回収可能となった。これにより、細胞Aの細胞核は、細胞質との関係において、細胞Bの細胞質内へ移植したのと同様の効果が得られた。
101 孔
102 壁
201 第1の細胞供給部
202 第2の細胞供給部
203 第1の流路
204 第2の流路
205 壁
206 孔
207 第3の流路
208 細胞回収部
209 共通経路
210 ポンプ
211 電極
212 直流交流信号発生装置
213 電力増幅器
214 開口部
301 第1の細胞設置部
302 第2の細胞設置部
303 中心面
304 第1の斜面
305 第2の斜面
306 第3の斜面
307 第4の斜面
501 第1の流路の抵抗体
502 第2の流路の抵抗体

Claims (12)

  1. 第1の細胞の細胞核を有し、前記第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞の製造装置であって、
    第1の細胞供給部と、
    第2の細胞供給部と、
    前記第1の細胞供給部に接続する直線状の第1の流路と、
    前記第2の細胞供給部に接続し、前記第1の流路に平行な直線状の第2の流路と、
    前記第1の流路と前記第2の流路を隔てる壁に設けられ、前記第1の流路と前記第2の流路を繋ぐ孔と、
    前記第1の流路側の壁に前記孔を囲むように設けられた凹形状の第1の細胞設置部と、
    前記第1の流路内に設けられ、前記第1の流路に開口する開口部を有する第3の流路と、
    前記第3の流路に接続する細胞回収部と、
    前記第1の流路と前記第2の流路が、それぞれ前記第1の細胞供給部と前記第2の細胞供給部の逆側の端で合一して構成される共通流路と、
    前記共通流路が、前記第1の流路と前記第2の流路の逆側の端に接続するポンプと、
    前記孔に対して電圧を印加するための直流交流信号発生装置と、
    を有し、
    前記凹形状の第1の細胞設置部は第1の縁を有し、前記壁の中心面に対して、前記第1の流路を流れる液体の流れに対して第1の縁の最も近い点と最も遠い点からの垂線の長さをそれぞれh1およびh2とするとき、それらの長さの関係がh1<h2であり、
    前記第1の流路を流れる前記液体の流れは、前記壁の前記中心面に平行な、前記第1の細胞供給部から前記共通流路への方向の直線状の流れである、製造装置。
  2. 前記第1の縁の最も近い点から前記孔にいたる前記第1の縁の最も近い点から前記孔にいたる第1の斜面と前記第1の縁の最も遠い点から前記孔にいたる第2の斜面が、それぞれ第1の直線部分および第2の直線部分を有し、前記中心面に対する前記第1の直線部分および第2の直線部分の傾きを、それぞれθ1及びθ2とするとき、θ1<θ2である、請求項1に記載の製造装置。
  3. 前記第2の流路側の壁に前記孔を囲むように設けられた凹形状の第2の細胞設置部を有する、請求項1又は2に記載の製造装置。
  4. 前記凹形状の第2の細胞設置部は第2の縁を有し、前記壁の中心面に対して、前記第2の流路を流れる液体の流れに対して第1の縁の最も遠い点と最も近い点からの垂線の長さをそれぞれh3およびh4とするとき、それらの長さの関係がh3<h4であり、
    前記第2の流路を流れる前記液体の流れは、前記壁の前記中心面に平行な、前記共通流路から前記第2の細胞供給部への方向の直線状の流れである請求項3に記載の製造装置。
  5. 前記第2の縁の最も遠い点から前記孔にいたる第3の斜面と前記第2の縁の最も近い点から前記孔にいたる第4の斜面が、それぞれ第3の直線部分および第4の直線部分を有し、前記中心面に対する前記第3の直線部分および第4の直線部分の傾きを、それぞれθ3及びθ4とするとき、θ3<θ4である、請求項4に記載の製造装置。
  6. 第1の細胞の細胞核を有し、前記第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞の製造装置であって、
    第1の細胞供給部と、
    第2の細胞供給部と、
    前記第1の細胞供給部に接続する直線状の第1の流路と、
    前記第2の細胞供給部に接続し、前記第1の流路に平行な直線状の第2の流路と、
    前記第1の流路と前記第2の流路を隔てる平面上の壁に設けられ、前記第1の流路と前記第2の流路を繋ぐ孔と、
    前記第1の流路内に設けられ、前記第1の流路に開口する開口部を有する第3の流路と、
    前記第3の流路に接続する細胞回収部と、
    前記第1の流路と前記第2の流路が、それぞれ前記第1の細胞供給部と前記第2の細胞供給部の逆側の端で合一して構成される共通流路と、
    前記共通流路が、前記第1の流路と前記第2の流路の逆側の端に接続するポンプと、
    前記孔に対して電圧を印加するための直流交流信号発生装置と、
    を有し、
    、および/または
    前記第1の流路を流れる液体の流れは、前記壁の中心面に平行な、前記第1の細胞供給部から前記共通流路への方向の直線状の流れであって、前記第1の流路内において、前記孔と前記共通流路側の端との間で、前記第1の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、および/または前記第2の流路を流れる液体の流れは、前記壁の前記中心面に平行な、前記共通流路から前記第2の細胞供給部への方向の直線状の流れであって、前記第2の流路内において、前記第2の細胞供給部側の端と前記孔との間で、前記第2の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、製造装置。
  7. 前記第1の流路において、前記壁と逆側に第1の抵抗体が設置されることによって前記第1の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、請求項6に記載の製造装置。
  8. 前記第2の流路において、前記壁と逆側に第2の抵抗体が設置されることによって前記第2の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、請求項6に記載の製造装置。
  9. 第1の細胞の細胞核を有し、前記第1の細胞の細胞膜と第2の細胞の細胞質とを含む細胞の製造装置であって、
    第1の細胞供給部と、
    第2の細胞供給部と、
    前記第1の細胞供給部に接続する直線状の第1の流路と、
    前記第2の細胞供給部に接続し、前記第1の流路に平行な直線状の第2の流路と、
    前記第1の流路と前記第2の流路を隔てる壁に設けられ、前記第1の流路と前記第2の流路を繋ぐ孔と、
    前記第1の流路側の壁に前記孔を囲むように設けられた凹形状の第1の細胞設置部と、
    前記第1の流路内に設けられ、前記第1の流路に開口する開口部を有する第3の流路と、
    前記第3の流路に接続する細胞回収部と、
    前記第1の流路と前記第2の流路が、それぞれ前記第1の細胞供給部と前記第2の細胞供給部の逆側の端で合一して構成される共通流路と、
    前記共通流路が、前記第1の流路と前記第2の流路の逆側の端に接続するポンプと、
    前記孔に対して電圧を印加するための直流交流信号発生装置と、
    を有し、
    前記凹形状の第1の細胞設置部は第1の縁を有し、前記壁の中心面に対して、前記第1の流路を流れる液体の流れに対して第1の縁の最も近い点と最も遠い点からの垂線の長さをそれぞれh1およびh2とするとき、それらの長さの関係がh1<h2であり、
    前記第1の流路を流れる前記液体の流れは、前記壁の前記中心面に平行な、前記第1の細胞供給部から前記共通流路への方向の直線状の流れであって、第1の流路内において、前記孔と前記共通流路側の端との間で、前記第1の流路が前記壁と逆側において狭くなっているか、および/または前記第2の流路を流れる液体の流れは、前記壁の前記中心面に平行な、前記共通流路から前記第2の細胞供給部への方向の直線状の流れであって、前記第2の流路内において、前記第2の細胞供給部側の端と前記孔との間で、前記第2の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、製造装置。
  10. 前記第1の縁の最も近い点から前記孔にいたる第1の斜面と前記第1の縁の最も遠い点から前記孔にいたる第2の斜面が、それぞれ第1の直線部分および第2の直線部分を有し、前記中心面に対する前記第1の直線部分および第2の直線部分の傾きを、それぞれθ1及びθ2とするとき、θ1<θ2である、請求項9に記載の製造装置。
  11. 前記第1の流路において、前記壁と逆側に第1の抵抗体が設置されることによって前記第1の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、請求項9または10に記載の製造装置。
  12. 前記第2の流路において、前記壁と逆側に第2の抵抗体が設置されることによって前記第2の流路が前記壁と逆側において狭くなっている、請求項9または10に記載の製造装置。
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