JP7450821B2 - レーダ信号処理装置、及びレーダ信号処理方法 - Google Patents

レーダ信号処理装置、及びレーダ信号処理方法 Download PDF

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Description

本開示技術はレーダ信号処理装置、レーダ信号処理方法、及び合成開口レーダに関する。
合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar:SAR)は、航空機、衛星、等の移動プラットフォームに搭載して観測を行い、対象の二次元の高分解能画像を得る画像レーダである。合成開口レーダは、天候、昼夜に依らず観測が可能であるため、災害監視、地形図作成、土地利用調査、海上監視、等への応用されている。
一般に合成開口レーダは、チャープ変調によりパルス圧縮されたチャープパルスを用いて、対象の二次元画像を構築する。観測により画像が得られる対象のレンジ方向の幅(Swathともいう、以降「レンジ観測幅」と称する)は、合成開口レーダが備えるアンテナの長さにより制限される。アンテナの長さを固定したままレンジ観測幅を広げようとすると、アジマス分解能が悪くなる。このようにレンジ観測幅とアジマス分解能とは、トレードオフの関係にある。
アジマス分解能を落とさずにレンジ観測幅を広げる工夫がなされた技術も開示されている。例えば非特許文献1には、パルス繰返しインターバル(Pulse Repetition Interval、以降「PRI」と称する)を連続的に可変にすることによりこの課題の解決を試みるStaggered SARが開示されている。
Michelangelo Villanoら著、"Staggered SAR:High-Resolution Wide-Swath Imaging by Continuous PRI Variation"、IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing,Vol. 52, NO. 7, July 2014.
合成開口レーダが抱える課題として、アンビギュイティが挙げられる。アンビギュイティへの対策として、合成開口レーダが用いるチャープパルスを、パルス間でチャープ率を変えるという方法が考えられる。しかしStaggered SARにおいてパルス間でチャープ率を変えると、ブラインド影響範囲がレンジ方向に広がるというデメリットがある。
本開示技術は、Staggered SARにおいて、異なるチャープ率のチャープパルスを用いるメリットが、ブラインド影響範囲がレンジ方向に広がるというデメリットを上回る範囲を見出し、広いレンジ観測幅を有しアンビギュイティ対策もなされている合成開口レーダを提供することを目的とする。
本開示技術に係るレーダ信号処理装置は、PRIが一定ではないチャープパルスを用い、チャープパルスが、少なくとも2通り以上のチャープ率である合成開口レーダのためのレーダ信号処理装置であって、チャープパルスを受信した後、レンジ圧縮又はパルス圧縮を行い、ブラインド領域の補間を行い、画像再生を行い、最小スラントレンジRminから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるkは、

Figure 0007450821000001

を満たす、ただし、floor()は除算結果の小数点以下を切り捨てて整数を返す関数を、Cは光速を、初期時刻を0番目と数えたときに、τ は0番目の送信チャープパルスのパルス幅を、τ kN はk N 番目の送信チャープパルスのパルス幅を、PRI は0番目のパルス繰返しインターバルを、それぞれ表すものとする、というものである
本開示技術に係る合成開口レーダは上記構成を備えるため、異なるチャープ率のチャープパルスを用いるメリットを有する。このことにより本開示技術に係る合成開口レーダは、広いレンジ観測幅を有し、かつアンビギュイティ対策もなされている。
図1Aは、実施の形態1に係るレーダ信号処理装置のハードウエア構成図その1である。また、図1Bは、実施の形態1に係るレーダ信号処理装置のハードウエア構成図その2である。 図2は、実施の形態1に係るレーダ信号処理方法の処理工程を示すフローチャートである。 図3は、パルス圧縮によってブラインド領域の影響範囲が広がることを示した模式図である。 図4は、2つの連続する受信チャープパルスが、同時にブラインドレンジに含まれない条件を示す模式図である。 図5は、チャープ反転によってブラインド領域の影響範囲が広がることを示した模式図である。
まずは本開示技術の前提となるStaggered SARの説明があることにより、本開示技術に係るレーダ信号処理装置、レーダ信号処理方法、及び合成開口レーダの原理が明確となる。
合成開口レーダは、よくデジタルビームフォーミング(Digital Beam Forming、以降単に「DBF」と称する)が用いられる。具体的に合成開口レーダは、よくエレベーション方向のDBF(以降、「EL-DBF」と称する)が用いられる。EL-DBFが用いられることにより合成開口レーダは、同時に受信される異なるレンジから戻る信号を分離し、PRIを跨ぐ観測が可能となる。EL-DBFの適用は、レンジ観測幅の拡大を可能にする。
合成開口レーダにおいてPRIを跨ぐ観測を行った場合、あるタイミングに対応しブラインドレンジ(R)が発生する。ブラインドレンジとは、合成開口レーダが信号を検知できない領域を意味する。具体的に合成開口レーダにおけるブラインドレンジは、合成開口レーダがチャープパルスを送信している時間に生じる。例えば衛星に搭載された合成開口レーダの場合、一般に用いられるアンテナは送受共兼用のアンテナである。このために合成開口レーダは、チャープパルスを送信している時間、地表から返って来たエコーを受信できない。ブラインドレンジは、このような理由により生じる現象である。
より具体的にブラインドレンジ(R)は、以下の式で表されるレンジ方向の領域である。なおレンジ方向とは、合成開口レーダから対象物に向かう方向をいう。

Figure 0007450821000002

ここで、Cは光速、τはチャープパルスのパルス幅、kはチャープパルスのインデックスである。インデックスのkは0から始まるとする。すなわち式(1)は、k番目のチャープパルスの送信時に生じるブラインドレンジ(R)を表している。ブラインドレンジを含めたレンジの物理的次元は、距離である。なお上記の式(1)は、PRIが固定の場合の式である。PRIの物理的次元は、時間である。
Staggered SARの場合、チャープパルスのインターバルであるPRIは、以下の式で与えられる。

Figure 0007450821000003

ここで、Δは隣接するPRI間の差分である。式(2)が示す例では、Staggered SARにおけるパルス繰返しインターバルのPRIは、k=0のときに一番長く、等差Δで等差数列的にkが増えるごとに短くなる。これとは逆に、kが増えるごとにPRIを短くする方法も存在する。インデックスのkをインクリメントしていきMとなったときは、またk=0とリセットされ、チャープパルスの送信パターンが繰り返される。
Staggered SARでは、いくつかの連続するチャープパルスを1つのセットとし、そのセットの照射パターンを繰り返すという考え方が採用されている。式(2)では、連続するM個のチャープパルスが1つのセットとして照射タイミングがパターン化される例が示されている。M個のチャープパルスからなるセット、すなわち連続するM個のチャープパルスの並びは、ここでは「パルスセット」と称される。パルスセットの周期は、以下の式のTで表される。

Figure 0007450821000004

式(3)のTで表されるパルスセット周期の物理的次元は、時間である。
式(1)から(3)までにおいて示されているStaggered SARの送信パターンにおいて、h番目のチャープパルスが送信される時間は、以下の式のtTX_hにより表される。

Figure 0007450821000005

式(4)は、インデックスのhがnM以上である、すなわちh番目のチャープパルスがn+1番目のパルスセットに包含されている、との仮定に基づいている。tTX_hの下添え字のTXは、送信機を表すTransmitterの略語である。また式(4)で用いられているfloor関数は、除算結果の小数点以下を切り捨てて整数を返すものである。
式(4)で示されるh番目のチャープパルスに対する受信が開始される時間は、以下の式のtRX_hにより表される。

Figure 0007450821000006

ただしRminは、最小のレンジを表す。レンジの物理的次元は、距離である。tRX_hの下添え字のRXは、受信機を表すReceiverの略語である。式(5)の右辺の最初の項の係数の「2」は、光速で移動するレーダ波が最小レンジにある物標で反射し、往復することを表している。
Staggered SARの場合、h番目のチャープパルスを送信するタイミングで生じるブラインドレンジ(以降、単に「h番目のブラインドレンジ」と称する)Rb_hは、以下の式で表される。

Figure 0007450821000007

ここでτは、h番目の送信チャープパルスのパルス幅である。チャープパルスのパルス幅の設定方法は、すべてを同じ固定パルス幅とする方法と、PRIに比例させるようにduty比を固定する方法と、が考えられる。前述のとおり連続するM個のチャープパルスが1つのセットとして照射タイミングが繰り返されているため、h番目の送信チャープパルスのパルス幅は、h-nM番目の送信チャープパルスのパルス幅と同じである。
以降に登場する下添え字のないτは、固定パルス幅とした場合のチャープパルスのパルス幅を表す。
式(6)から、h+1番目のチャープパルスを送信するタイミングで生じるブラインドレンジ(以降、単に「h+1番目のブラインドレンジ」と称する)Rb_h+1も、同様に求めることができる。

Figure 0007450821000008

ただし簡単のため、式(7)は、h+1番目の送信チャープパルスもn+1番目のパルスセットに包含されている、との仮定に基づく。
レンジ方向において、h番目のブラインドレンジとh+1番目のブラインドレンジが重ならない条件は、式(6)と式(7)とから、以下のように導かれる。

Figure 0007450821000009

ただし式(8)において等号が成立するときは、h番目のブラインドレンジとh+1番目のブラインドレンジがちょうど接するときである。式(8)は単に、チャープパルス幅がPRIよりも小さくなくてはならない、ということを示している。
次に、チャープパルスを受信するタイミングをブラインドレンジに含めないための条件が、以下の式により明らかになる。例えば、0番目のパルスセット(n=0)において、0番目のチャープパルスが受信され、その後にh番目のチャープパルスが送信され、その後に1番目のチャープパルスが受信される、という状況が想定される。

Figure 0007450821000010

ここで、式(9)は0番目のチャープパルス受信後にh番目のチャープパルス送信がなされる条件式であり、式(10)はh番目のチャープパルス送信後に1番目のチャープパルス受信がなされる条件式である。
次に、2つの連続する受信チャープパルスが、同時にブラインドレンジに含まれない条件が検討される。この条件を検討する理由は、ブラインドレンジが原因で入手できなかった情報を、他の受信チャープパルスの情報で補間することを考えるためである。特に隣接する受信チャープパルスの情報が、補間において重要となる。補間の具体的方法は、後述の詳細な説明により明らかとなる。
第1段階は、時系列でみたとき、受信チャープパルスがPRIとなる時間領域と、あるk番目の送信チャープパルスのPRIk*となる時間領域との関係から導かれる。

Figure 0007450821000011

ここで式(11)において、チャープパルスのパルス幅はτで一定と仮定されている。式(11)は、隣接するPRI間の差分のΔについて、その最小値のΔminを与えている。
ここで式(11)におけるkは、以下の不等式を満たす最大の値である。

Figure 0007450821000012

式(11)と式(12)とに示される内容の詳細は、非特許文献1に開示されている。
第2段階は、式(12)を満たすkの最大値に関する。式(12)を満たすkの最大値は、ΔにΔminを代入した以下の式変形により求まる。

Figure 0007450821000013

よってkは、式(13)で示された式の変形から、最終的に以下で与えられる。

Figure 0007450821000014

式(14)で用いられているfloor関数も、式(4)と同様に、除算結果の小数点以下を切り捨てて整数を返すものである。
式(13)と式(14)とに示される内容の詳細は、非特許文献1に開示されている。
実施の形態1.
本開示技術に係るレーダ信号処理装置は、Staggered SARをベースの技術としつつ、パルス間でチャープ率を変えることを特徴としている。パルス間でチャープ率を変えるということは、或るチャープパルスと別のチャープパルスとを比較したときに、それぞれのチャープパルスを構成するチャープ信号が異なるチャープ率のものであることを意味する。特に時系列で見て隣り合うチャープパルス同士は、チャープ率が異なる。本開示技術に係るレーダ信号処理装置が採用するチャープパルスは、線形チャープ信号を短い時間で実施しパルスとみなせるもの、でよい。チャープ率とは、チャープ信号の周波数の瞬時変化率である。
本開示技術に係るレーダ信号処理装置は、以下の図に沿った説明により明らかになる。
図1Aは、実施の形態1に係るレーダ信号処理装置のハードウエア構成図その1である。また、図1Bは、実施の形態1に係るレーダ信号処理装置のハードウエア構成図その2である。
図2は、実施の形態1に係るレーダ信号処理方法の処理工程を示すフローチャートである。図2に示されるとおり実施の形態2に係るレーダ信号処理方法は、パルス間のチャープ率の差異による影響を排除するステップ(図2のST10で示されるステップ)と、ブラインド領域の補間を行うステップ(図2のST12で示されるステップ)と、画像再生を行うステップ(図2のST14で示されるステップ)と、を含む。
図1Aに示されるとおり実施の形態1に係るレーダ信号処理装置は、専用のハードウエアにより実現されてよい。専用のハードウエアで構成される場合、レーダ信号処理装置は、受信装置10と、処理回路20と、ディスプレイ30と、を含む。処理回路20は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサー、並列プログラム化したプロセッサー、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが考えられる。パルス間のチャープ率の差異による影響を排除するステップ(図2のST10で示されるステップ)と、ブラインド領域の補間を行うステップ(図2のST12で示されるステップ)と、画像再生を行うステップ(図2のST14で示されるステップ)と、のそれぞれは、別々のハードウエアで実現されてもよいし、まとめて1つのハードウエアで実現されてもよい。
図1Bに示されるとおり実施の形態1に係るレーダ信号処理装置は、ソフトウエアにより実現されてもよい。言い換えれば実施の形態1に係るレーダ信号処理装置は、メモリ24に格納されるプログラムを実行するプロセッサ22により実現されてもよい。図1Bに示されるレーダ信号処理装置は、受信装置10と、プロセッサ22と、メモリ24と、ディスプレイ30と、を含む。プロセッサ22は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサー、マイクロコンピュータ、プロセッサー、DSPとも称される)で実現されてよい。
レーダ信号処理装置が図1Bに示される構成の場合、パルス間のチャープ率の差異による影響を排除するステップ(図2のST10で示されるステップ)と、ブラインド領域の補間を行うステップ(図2のST12で示されるステップ)と、画像再生を行うステップ(図2のST14で示されるステップ)と、のそれぞれは、ソフトウエア、ファームウエア、又はソフトウエアとファームウエアとの組合せにより実現される。ソフトウエア及びファームウエアはプログラムとして記述され、メモリ24に格納される。プロセッサ22は、メモリ24に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各ステップの処理を行う。
ここでメモリ24は、例えばRAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM,EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリであってよい。またメモリ24は、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等によって実現されてもよい。
レーダ信号処理装置は、一部分を専用のハードウエアで実現し、他の部分をソフトウエア又はファームウエアで実現してもよい。このようにレーダ信号処理装置は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、又はこれらの組合せによって、図2に示される各ステップの機能が実現される。
前述のとおり本開示技術に係るレーダ信号処理装置は、パルス間でチャープ率を変えることを特徴としている。すなわち本開示技術に係るレーダ信号処理装置が用いるチャープパルスは、少なくとも2通り以上のチャープ率のチャープパルスである。パルス間でチャープ率を変える具体的な方法は、例えば交互にアップチャープとダウンチャープとを繰り返すものであってもよい。アップチャープとダウンチャープを繰り返すということは、チャープ率が交互に正負反転するということである。交互にアップチャープとダウンチャープとを繰り返すときもチャープパルスのパルス幅は、固定であってもPRIに比例したものであってもよい。隣接するチャープパルスをアップチャープとダウンチャープとに変える操作は、「パルス間アップダウン変調」とここでは称する。
パルス間アップダウン変調がなされると、そのままでは他の受信チャープパルスの情報を用いた補間を行うことができない。そこで本開示技術に係るレーダ信号処理装置は、パルス間のチャープ率の差異による影響を排除するステップ(図2のST10で示されるステップ)を実行する。
パルス間のチャープ率の差異による影響を排除する方法は、2通り考えられる。1つ目は、レンジ圧縮又はパルス圧縮と称される方法である。2つ目は、チャープパルスのチャープ率をそろえる変換を行う方法である。実施の形態1では、レンジ圧縮又はパルス圧縮と称される方法を用いた態様が明らかにされる。チャープパルスのチャープ率をそろえる変換を行う方法は、実施の形態2において明らかにされる。
レンジ圧縮又はパルス圧縮は、線形チャープパルスを用いるレーダ分野では広く使われている技術である。具体的にレンジ圧縮又はパルス圧縮は、受信チャープパルスにマッチドフィルタを適用することでパルスの情報を得るものである。マッチドフィルタは、参照信号である送信チャープパルスを時間軸上でずらしながら、受信チャープパルスとの相互相関を求めるものである。レンジ圧縮又はパルス圧縮はフーリエ変換と似た概念であるが、得られる結果が異なる。フーリエ変換が周波数領域の情報が得られるのに対し、レンジ圧縮又はパルス圧縮は、時間領域の情報が得られる。
図3は、パルス圧縮によってブラインド領域の影響範囲が広がることを示した模式図である。図3に示されるグラフにおいて、横軸はFast Timeを、縦軸はチャープパルス中のチャープ信号の周波数を、それぞれ示している。図3の左側はレンジ圧縮前のブラインド領域を、図3の右側はレンジ圧縮後のブラインド領域の影響範囲を、それぞれ表している。図3に示されるとおりレンジ圧縮は、ブラインド領域の影響範囲(以降、「ブラインド影響範囲」と称する)を、Fast time方向すなわちレンジ方向に2倍広げる、というdraw backがある。
h番目のチャープパルスを送信するタイミングで生じるレンジ圧縮後のブラインド影響範囲のRbcom_hは、具体的には以下の式により表される。

Figure 0007450821000015

ここでRbcom_hの下添え字のcomは、圧縮を意味するCompressionを表す。
本開示技術は、パルス間アップダウン変調を採用するStaggered SAR方式のレーダ信号処理装置において、PRIの必要条件を明らかにする。
第1条件は、PRIの逆数であるPRF(Pulse Repetition Frequencyの略、パルス繰返し周波数を意味する)の最小値が、瞬時ドップラー帯域幅より大きいことである。この条件は、ヒット方向のサンプリング定理を満足するために必要な条件である。
第2条件は、ブラインドレンジの影響が目標の位置依存性を生じないことである。この条件は、画像内における画質が均質となるために必要な条件である。この条件により、パルス列の切り替え周期の上限が制約される。
第3条件は、ブラインド影響範囲がヒット方向に連続しないことである。この条件により、パルス列の切り替え周期の下限が制約される。本開示技術は、パルス間アップダウン変調を採用するStaggered SAR方式と比較して、特にこの第3条件が異なるため、明らかにする必要がある。図4は、第3条件を模式的に表した図である。具体的に図4には、2つの連続する受信チャープパルスが、同時にブラインドレンジに含まれない条件を模式的に表している。
第3条件の第1段階は、式(11)の内容を、パルス間アップダウン変調を採用するStaggered SAR方式のレーダ信号処理装置に当てはめる。

Figure 0007450821000016

このように式(16)は、PRIの変化量の最小値であるΔminを与える。ここでKは空間パルス数であり、最小スラントレンジRminから戻るパルスを受信するまでのパルス数である。空間パルス数であるkは、以下の不等式を満たす最大の値である。

Figure 0007450821000017
第3条件の第2段階は、式(17)を満たす空間パルス数のKの最大値に関する。式(17)を満たす空間パルス数のkの最大値は、以下の式変形により求まる。

Figure 0007450821000018

よって空間パルス数のKは、式(18)で示された式の変形から、最終的に以下で与えられる。

Figure 0007450821000019

ここでτkNはkN番目のパルス幅であるが、前述のとおり本開示技術は固定パルス幅方式が採用されていても差し支えない。固定パルス幅方式が採用された場合、τkNはτと等しい。
式(19)は、最小スラントレンジRminから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるKについて求めたが、最大スラントレンジRmaxについても同様に考えられる。最大スラントレンジRmaxから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるkは、以下のように求められる。

Figure 0007450821000020

ここでτkFはkF番目のパルス幅であるが、固定パルス幅方式が採用された場合、τkFはτと等しい。
以上のとおり実施の形態1に係るレーダ信号処理装置は上記構成を備えるため、異なるチャープ率のチャープパルスを用いるメリットが、ブラインド影響範囲がレンジ方向に広がるというデメリットを上回る範囲を見出し、広いレンジ観測幅を有しアンビギュイティ対策もなされている合成開口レーダを実現できる。
実施の形態2.
実施の形態1では、パルス間のチャープ率の差異による影響を、レンジ圧縮又はパルス圧縮と称される方法により排除する態様のレーダ信号処理装置が示された。実施の形態2では、チャープ率を1つに揃える態様のレーダ信号処理装置が明らかにされる。特に明記される場合を除き実施の形態2では、実施の形態1で用いられた符号と同一のものが用いられる。また実施の形態1と重複する説明は、適宜省略される。
実施の形態2に係るレーダ信号処理装置の処理工程は、実施の形態1について示された図2のフローチャートの内容と大差がない。実施の形態1において、パルス間のチャープ率の差異による影響を排除するステップ(図2のST10で示されるステップ)は、具体的にはンジ圧縮又はパルス圧縮と称される方法であった。実施の形態2において、パルス間のチャープ率の差異による影響を排除するステップ(図2のST10で示されるステップ)は、具体的には、チャープ率を1つに揃えるという処理である。
実施の形態2に係るレーダ信号処理装置は、隣合うチャープパルスで正負の符号のみが異なるチャープ率のパルス信号を採用する。このようなチャープ率のチャープパルスを採用することは、パルス間のチャープ率の差異による影響を排除するステップ(図2のST10で示されるステップ)を、チャープ反転で実現できることを意味する。
図5は、チャープ反転によってブラインド領域の影響範囲が広がることを示した模式図である。図5に示されるグラフにおいて、横軸はFast Timeを、縦軸はチャープパルス中のチャープ信号の周波数を、それぞれ示している。図5の左側はチャープ反転前のブラインド領域を、図3の右側はチャープ反転後のブラインド領域の影響範囲を、それぞれ表している。図5に示されるとおりレンジ圧縮は、ブラインド影響範囲を、Fast time方向すなわちレンジ方向に3倍に広げる、というdraw backがある。
h番目のチャープパルスを送信するタイミングで生じるチャープ反転後のブラインド影響範囲のRbinv_hは、具体的には以下の式により表される。

Figure 0007450821000021

ここでRbinv_hの下添え字のinvは、反転を意味するInversionを表す。
実施の形態1で示されたレンジ圧縮による方法では、すべてのヒットでブラインドレンジが拡散される。一方上記のチャープ反転によりチャープ率を揃える方法では、チャープ反転が行われるチャープパルスに、すなわち1つ飛びのチャープパルスにブラインドレンジ拡散が見られる、という差がある。
実施の形態2における第3条件の第1段階は、以下の数式で表される。

Figure 0007450821000022

式(22)は、実施の形態2におけるPRIの変化量の最小値を与える。
実施の形態1のときと同様の計算により、最小スラントレンジRminから戻るパルスを受信するまでのパルス数である空間パルス数のkN_2が求められる。

Figure 0007450821000023
実施の形態1のときと同様の計算により、最大スラントレンジRmaxから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるkF_2が求められる。

Figure 0007450821000024
以上のとおり実施の形態2に係るレーダ信号処理装置は上記構成を備えるため、実施の形態1とは異なる方法で、異なるチャープ率のチャープパルスを用いるメリットが、ブラインド影響範囲がレンジ方向に広がるというデメリットを上回る範囲を見出し、広いレンジ観測幅を有しアンビギュイティ対策もなされている合成開口レーダを実現できる。
本開示技術に係るレーダ信号処理装置は、合成開口レーダの信号処理用に用いることができ、産業上の利用可能性を有する。
10 受信装置、20 処理回路、22 プロセッサ、24 メモリ、30 ディスプレイ。

Claims (6)

  1. PRIが一定ではないチャープパルスを用い、前記チャープパルスが、少なくとも2通り以上のチャープ率である合成開口レーダのためのレーダ信号処理装置であって、
    前記チャープパルスを受信した後、レンジ圧縮又はパルス圧縮を行い、
    ブラインド領域の補間を行い、
    画像再生を行い、
    最小スラントレンジRminから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるkは、

    Figure 0007450821000025

    を満たす、ただし、floor()は除算結果の小数点以下を切り捨てて整数を返す関数を、Cは光速を、初期時刻を0番目と数えたときに、τは0番目の送信チャープパルスのパルス幅を、τkNはkN番目の送信チャープパルスのパルス幅を、PRIは0番目のパルス繰返しインターバルを、それぞれ表すものとする、
    レーダ信号処理装置。
  2. PRIが一定ではないチャープパルスを用い、前記チャープパルスが、少なくとも2通り以上のチャープ率である合成開口レーダのためのレーダ信号処理装置であって、
    前記チャープパルスを受信した後、レンジ圧縮又はパルス圧縮を行い、
    ブラインド領域の補間を行い、
    画像再生を行い、
    最大スラントレンジRmaxから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるkは、

    Figure 0007450821000026

    を満たす、ただし、floor()は除算結果の小数点以下を切り捨てて整数を返す関数を、Cは光速を、初期時刻を0番目と数えたときに、τは0番目の送信チャープパルスのパルス幅を、τkFはkF番目の送信チャープパルスのパルス幅を、PRIは0番目のパルス繰返しインターバルを、それぞれ表すものとする、
    レーダ信号処理装置。
  3. 隣合うチャープパルスで正負の符号のみが異なるチャープ率のパルス信号が用いられる合成開口レーダのためのレーダ信号処理装置であって、
    前記チャープパルスを受信した後、チャープ反転を行い、
    ブラインド領域の補間を行い、
    画像再生を行い、
    最小スラントレンジRminから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるkN_2は、

    Figure 0007450821000027

    を満たす、ただし、floor()は除算結果の小数点以下を切り捨てて整数を返す関数を、Cは光速を、初期時刻を0番目と数えたときに、τは0番目の送信チャープパルスのパルス幅を、PRIは0番目のパルス繰返しインターバルを、それぞれ表すものとする
    レーダ信号処理装置。
  4. 隣合うチャープパルスで正負の符号のみが異なるチャープ率のパルス信号が用いられる合成開口レーダのためのレーダ信号処理装置であって、
    前記チャープパルスを受信した後、チャープ反転を行い、
    ブラインド領域の補間を行い、
    画像再生を行い、
    最大スラントレンジRmaxから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるkF_2は、

    Figure 0007450821000028

    を満たす、ただし、floor()は除算結果の小数点以下を切り捨てて整数を返す関数を、Cは光速を、初期時刻を0番目と数えたときに、τは0番目の送信チャープパルスのパルス幅を、PRIは0番目のパルス繰返しインターバルを、それぞれ表すものとする
    レーダ信号処理装置。
  5. PRIが一定ではないチャープパルスを用い、前記チャープパルスが、少なくとも2通り以上のチャープ率である合成開口レーダのためのレーダ信号処理方法であって、
    前記チャープパルスを受信した後、レンジ圧縮又はパルス圧縮を行い、
    ブラインド領域の補間を行い、
    画像再生を行い、
    最小スラントレンジRminから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるkは、

    Figure 0007450821000029

    を満たす、ただし、floor()は除算結果の小数点以下を切り捨てて整数を返す関数を、Cは光速を、初期時刻を0番目と数えたときに、τは0番目の送信チャープパルスのパルス幅を、τkNはkN番目の送信チャープパルスのパルス幅を、PRIは0番目のパルス繰返しインターバルを、それぞれ表すものとする
    レーダ信号処理方法。
  6. PRIが一定ではないチャープパルスを用い、前記チャープパルスが、少なくとも2通り以上のチャープ率である合成開口レーダのためのレーダ信号処理方法であって、
    前記チャープパルスを受信した後、レンジ圧縮又はパルス圧縮を行い、
    ブラインド領域の補間を行い、
    画像再生を行い、
    最大スラントレンジRmaxから戻るパルスを受信するまでのパルス数であるkは、

    Figure 0007450821000030

    を満たす、ただし、floor()は除算結果の小数点以下を切り捨てて整数を返す関数を、Cは光速を、初期時刻を0番目と数えたときに、τは0番目の送信チャープパルスのパルス幅を、τkFはkF番目の送信チャープパルスのパルス幅を、PRIは0番目のパルス繰返しインターバルを、それぞれ表すものとする
    レーダ信号処理方法。
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